説明

タイヤ偏摩耗量測定装置

【課題】偏摩耗量の測定作業の効率化を図りつつ偏摩耗量の測定精度を確保する上で有利なタイヤ偏摩耗量測定装置を提供する。
【解決手段】デプスゲージ20のスピンドル24の先端を弾性板18の下面の位置に合致させた状態でゼロセットスイッチを操作し、測定部の移動量を原点(ゼロ)に設定しておく。弾性板18の長手方向をタイヤ2の周方向と平行させ、当て付け面16を摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に当接しつつその長さ方向に沿って延在させる。この状態で操作部26を下方に動かしスピンドル24の先端を測定すべきトレッド面2Aの箇所に当接させる。これにより、デプスゲージ20の測定部によって、弾性板18の当て付け面16とトレッド面2Aの箇所との間に形成される距離がトレッド面2Aに生じる偏摩耗量として測定され表示部に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ偏摩耗量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行に伴って発生するタイヤのトレッド面の偏摩耗量を測定する装置として、サイズの異なるトレッド面の曲率半径と同一の曲率半径を有する凹状円弧を端縁として成形された測定板と、測定板の端縁をタイヤのトレッド面に当て付けた状態で端縁とトレッド面との距離を側定するスケールとを備えるものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−139404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来装置では、端縁の曲率半径が異なる測定板を多数用意しておき、測定対象となるタイヤの曲率半径と合致する測定板を選び出す必要があり、測定作業の効率化を図る上で不利がある。
また、実際のタイヤの曲率半径と選び出した測定板の曲率半径とが精度よく一致するとは限らないため、偏摩耗量を高精度に測定する上で不利がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、偏摩耗量の測定作業の効率化を図りつつ偏摩耗量の測定精度を確保する上で有利なタイヤ偏摩耗量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、タイヤのトレッド面に生じる偏摩耗量を測定するタイヤ偏摩耗量測定装置であって、細長形状で弾性を有し、前記トレッド面に当て付けることで摩耗量の少ないトレッド面の箇所に当接しつつ延在する当て付け面が形成された弾性部材と、前記弾性部材の長さ方向の中間部で支持され、前記当て付け面が前記摩耗量の少ないトレッド面の箇所に当て付けられた状態で前記中間部において前記当て付け面と前記トレッド面との間に形成される距離を前記偏摩耗量として測定する距離測定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
弾性部材の当て付け面を摩耗量の少ないトレッド面の箇所に当接しつつ延在させた状態で当て付け面とトレッド面との間に形成される距離を偏摩耗量として距離測定手段で測定するようにしたので、測定作業の効率化を図る上で有利となる。また、弾性部材の当て付け面をトレッド面に当て付けて測定を行うので、偏摩耗量の測定精度を確保する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(A)は第1の実施の形態におけるタイヤ偏摩耗量測定装置10の構成を示す正面図、(B)はタイヤ偏摩耗量測定装置10による偏摩耗量の測定状態を示す正面図である。
【図2】偏摩耗量の測定誤差の発生メカニズムを説明する模式図である。
【図3】(A)は第2の実施の形態におけるタイヤ偏摩耗量測定装置10の構成を示す正面図、(B)はタイヤ偏摩耗量測定装置10による偏摩耗量の測定状態を示す正面図である。
【図4】(A)は第3の実施の形態におけるタイヤ偏摩耗量測定装置10の測定状態を示す正面図、(B)はタイヤ偏摩耗量測定装置10の平面図である。
【図5】(A)は第4の実施の形態におけるタイヤ偏摩耗量測定装置10の測定状態を示す正面図、(B)はタイヤ偏摩耗量測定装置10の平面図である。
【図6】(A)は第5の実施の形態におけるタイヤ偏摩耗量測定装置10の測定状態を示す正面図、(B)はタイヤ偏摩耗量測定装置10の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1(B)に示すように、タイヤ2のトレッド部には、タイヤ周方向に延在する複数の縦溝と、タイヤ周方向と交差する方向に延在する複数の横溝202とが形成され、それら縦溝と横溝202によりトレッド部に複数の陸部204が形成されており、トレッド面2Aはこの陸部204の表面で形成されている。
タイヤ2の回転に伴い、トレッド面2Aの踏み込み側の摩耗量と、蹴り出し側の摩耗量とに差が生じ、トレッド面2Aに偏摩耗が生じることがある。
【0009】
図1(A)、(B)に示すように、タイヤ偏摩耗量測定装置10は、弾性部材12と、距離測定手段14とを備えている。
弾性部材12は、細長形状で弾性を有し、タイヤ2のトレッド面2Aに当て付けることで摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に当接しつつその長さ方向に沿って延在する当て付け面16が形成されている。
本実施の形態では、弾性部材12は幅よりも長さが大きい細長形状の平坦な弾性板18で形成されている。
弾性板18の厚さ方向の一方の面である下面が当て付け面16を構成している。
また、弾性板18の長さ方向の中間部である中央部で弾性板18の幅方向の中央部に孔1802が貫通形成されている。
このような弾性板18の材料として、金属、合成樹脂、ゴム、あるいはこれらを組み合わせた材料など、従来公知のさまざまな材料が使用可能である。
なお、弾性部材12は、板に限定されるものではなく、細長形状の棒であってもよいが、本実施の形態のように弾性板18とすると当て付け面16を安定してトレッド面2Aに当て付ける上で有利となる。
【0010】
距離測定手段14は、弾性部材12の長さ方向の中間部で支持され、当て付け面16が摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に当て付けられた状態で、弾性部材12の長さ方向の中間部において当て付け面16とトレッド面2Aとの間に形成される距離を偏摩耗量として測定するものである。
本実施の形態では、距離測定手段14は、デプスゲージ20で構成されている。
デプスゲージ20は、ケース22と、測定子であるスピンドル24と、操作部26と、不図示の測定部と、不図示の表示部と、不図示のゼロセットスイッチとを含んで構成されている。
【0011】
ケース22は、断面が矩形の細長形状を呈し、下面が平坦なベース面2202として形成されている。
本実施の形態では、距離測定手段14は、ケース22のベース面2202が弾性板18の厚さ方向の他方の面である上面に当て付けられて取着されている。
これによりスピンドル24は軸状を呈し、孔1802を通り下面側に出没可能に配置されている。
【0012】
操作部26は、ケース22の上面から上方に突出し、ケース22内部でスピンドル24の上部に一体的に結合されている。したがって、操作部26を上下に動かすことでスピンドル24が上下に移動する。
前記測定部は、ケース22内に設けられスピンドル24の移動量を測定するものである。
前記表示部は、前記測定部によって測定された移動量を表示するものである。
前記ゼロセットスイッチは、前記測定部で測定される移動量として原点(ゼロ)を設定するために操作されるものである。
【0013】
次に、タイヤ偏摩耗量測定装置10の使用方法について説明する。
まず、デプスゲージ20のスピンドル24の先端を弾性板18の下面の位置に合致させた状態で前記ゼロセットスイッチを操作し、前記測定部の移動量を原点(ゼロ)に設定しておく。
次に、図1(B)に示すように、弾性板18の長手方向をタイヤ2の周方向と平行させつつ、スピンドル24の先端が測定すべきトレッド面2Aの箇所に対向するように弾性板18の位置決めを行う。この場合、測定すべきトレッド面2Aの箇所とは、トレッド面2Aが最も摩耗した箇所、すなわち、陸部204の踏み込み側のトレッド面2Aの箇所である。
位置決めができたならば、弾性板18の上面の長手方向の両端寄りの箇所を指Fでそれぞれトレッド面2Aに向けて押さえ付け、これにより、当て付け面16を摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に当接しつつ、すなわち、陸部204の蹴り出し側のトレッド面2Aの箇所に当接しつつ、その長さ方向に沿って延在させる。
この状態で操作部26を下方に動かしスピンドル24の先端を測定すべきトレッド面2Aの箇所に当接させる。
これにより、デプスゲージ20の測定部によって、弾性板18の当て付け面16とトレッド面2Aの箇所との間に形成される距離がトレッド面2Aに生じる偏摩耗量として測定され表示部に表示される。
なお、本実施の形態では、弾性板18の長手方向をタイヤ2の周方向と平行させた状態で偏摩耗量を測定する場合について説明したが、弾性板18の長手方向をタイヤ2の幅方向と平行させた状態で偏摩耗量を測定することもできる。
【0014】
以上説明したように、本実施の形態によれば、弾性板18の当て付け面16を摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に当接しつつ延在させた状態で、当て付け面16とトレッド面2Aとの間に形成される距離を偏摩耗量として距離測定手段14で測定するようにした。
したがって、従来装置のように、端縁の曲率半径が異なる測定板を多数用意して選択する必要が無いため、測定作業の効率化を図る上で有利となる。
また、弾性板18の当て付け面16をトレッド面2Aに当て付けて測定を行うので、偏摩耗量の測定精度を確保する上で有利となる。
【0015】
なお、弾性部材12である弾性板18の長さは、測定対象となる陸部204のタイヤ周方向長さの3倍以上が好ましく、5倍以上がより好ましい。
弾性板18の長さが短すぎると、弾性部材12の当て付け面16をトレッド面2Aに安定して当て付ける上で不利となる。
また、弾性板18の幅は、3mmから20mm程度が好ましく、10mmから15mm程度がより好ましい。
弾性板18の幅が3mmを下回ると、距離測定手段14の取り付けが困難となる。
弾性板18の幅が20mmを上回ると、弾性板18の長手方向をタイヤ2の周方向と平行させた状態で偏摩耗量を測定する場合、トレッド面2Aの幅方向における曲率半径の影響を受けて当て付け面16をトレッド面2Aに安定して当て付ける上で不利となる。
【0016】
また、デプスゲージ20のベース面2202が弾性部材12の弾性板18の上面に当て付けられて取着されている部分を固定部としたとき、この固定部は、取り付け部16がトレッド面2Aに当て付けられた状態であっても、トレッド面2Aに沿って湾曲せず平坦な状態を保っている。
図2に示すように、タイヤ回転軸から前記固定部までの距離をL1、タイヤ回転軸からトレッド面2Aまでの距離をL2としたとき、デプスゲージ20で測定される偏摩耗量の測定誤差EはL2−L1となる。
固定部の弾性板18の長さ方向の寸法をL3とすると、この寸法L3が大きいほど測定誤差Eが増加する傾向となる。
そこで、固定部の弾性板18の長さ方向の寸法L3を、測定対象となるタイヤ2の半径の1/30以下とすることにより、測定誤差Eを0.1mm以下とすることができ好ましい。
【0017】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材には同一の符号を付して説明を省略しあるいは説明を簡単に行う。
図3(A)、(B)に示すように、第2の実施の形態は、第1の実施の形態の変形例である。
第2の実施の形態では、弾性板18がトレッド面2Aよりも小さな曲率で湾曲形成されており、この点が第1の実施の形態と異なっている。
本実施の形態では、距離測定手段14は、ケース22のベース面2202が弾性部材12の凸状の湾曲面側に当て付けられて取着され、したがって、距離測定手段14は、弾性板18の凸状の湾曲面側に設けられている。
距離測定手段14の構成は、第1の実施の形態と同様である。
第2の実施の形態では、弾性板18の当て付け面16をトレッド面2Aに向け、弾性板18をトレッド面2Aに向けて押し付けると、湾曲している弾性板18の両端がトレッド面2Aに沿って広がり、弾性板18の当て付け面16が摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に当接しつつ、その長さ方向に沿って延在した状態となる。
したがって、第1の実施の形態のように、弾性板18の上面の長手方向の両端寄りの箇所を指Fでそれぞれトレッド面2Aに向けて押さえ付けることなく、当て付け面16を摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に当接しつつ延在させた状態にすることができる。
距離測定手段14による偏摩耗量の測定は第1の実施の形態と同様の手順でなされる。
【0018】
このような第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様に偏摩耗量の測定精度を確保する上で有利となることは無論のこと、当て付け面16をトレッド面2Aに簡単に当て付けた状態にすることができるため、測定作業の効率化を図る上でより一層有利となる。
【0019】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、図4(A)、(B)に示すように、弾性部材12と、距離測定手段14と、支持部材28と、リンク30と、ハンドル32とを備えている。
弾性部材12は、第1の実施の形態のような平坦な弾性板18であってもよく、第2の実施の形態のような湾曲した弾性板18であってもよい。
弾性板18の上面で長手方向の両端にはフランジ1810が突出形成されている。
【0020】
距離測定手段14は、第1の実施の形態と同様に弾性板18に取着されている。
支持部材28は、細長形状を呈し弾性部材に対向させて配置されている。
支持部材28は、矩形板状を呈し、長手方向の両端下面に溝2802が形成されている。
リンク30は同一形状のものが2つ設けられ、それらの上端がそれぞれ支持部材28の下面の溝2802内でピン3002により回転可能に結合されると共に、それらの下端が弾性板18の両端のフランジ1810にピン3004により回転可能に結合されている。したがって、弾性板18と、支持部材28と、2つのリンク30とにより平行運動機構が構成される。
リンク30の長さは、図4(A)に示すように、弾性板18と支持部材28とが互いに平行し対向した状態で、距離測定手段14の上端と支持部材28との間に隙間ができる大きさで形成されている。
【0021】
ハンドル32は、支持部材28の長さ方向の中間部である中央部でかつ支持部材28の幅方向の中央部に、弾性板18から離れる方向に突出するように設けられている。
また、支持部材28の長さ方向の両端に、支持部材28に対してリンク30が交差する角度を表示する目盛34が設けられている。
【0022】
次に、タイヤ偏摩耗量測定装置10の使用方法について説明する。
第1の実施の形態と同様に、まず、デプスゲージ20のスピンドル24の先端を弾性板18の下面の位置に合致させた状態で前記ゼロセットスイッチを操作し、前記測定部の移動量を原点(ゼロ)に設定しておく。
【0023】
次に、図4(B)に示すように、ハンドル32を把持して弾性板18の長手方向をタイヤ2の周方向と平行させつつ、スピンドル24の先端が測定すべきトレッド面2Aの箇所に対向するように弾性板18の位置決めを行う。
位置決めができたならば、ハンドル32を把持して弾性板18の当て付け面16をトレッド面2Aに当て付ける。
そして、2つの目盛34で表示される角度が同一となるように、ハンドル32の位置を操作する。これにより、2つのリンク30を介して弾性板18の長手方向の両端箇所に均等に力が作用するため、弾性板18の当て付け面16が摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に確実に当て付けられた状態となり、弾性板18は、当て付け面16が摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に当接しつつその長さ方向に沿って延在する。
この状態で操作部26を下方に動かしスピンドル24の先端を孔1802を通して測定すべきトレッド面2Aの箇所に当接させる。
これにより、デプスゲージ20の測定部によって、弾性板18の当て付け面16とトレッド面2Aの箇所との間に形成される距離がトレッド面2Aに生じる偏摩耗量として測定され表示部に表示される。
【0024】
このような第3の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様に偏摩耗量の測定精度を確保する上で有利となることは無論のこと、ハンドル32を把持して操作することによって当て付け面16を摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に簡単にかつ確実に当て付けた状態にすることができるため、測定作業の効率化を図る上でより一層有利となる。
【0025】
(第4の実施の形態)
次に第4の実施の形態について説明する。
図5(A)、(B)に示すように、第4の実施の形態は、第3の実施の形態の変形例である。
第4の実施の形態では、距離測定手段14をなすデプスゲージ20のケース22を支持部材28に取着した点、および、ケース22がハンドル32を構成している点が第3の実施の形態と異なっている。
第4の実施の形態では、ケース22が支持部材28で支持されることにより、弾性部材12である弾性板18による距離測定手段14の支持がリンク30および支持部材28を介してなされている。
【0026】
タイヤ偏摩耗量測定装置10の使用方法について説明する。
まず、弾性板18の下面の孔1802の周囲をシート1812で塞ぎ、孔1802の底部を、シート1812の上面により弾性板18の下面と面一にしておく。
次に、図5(B)に示すように、ハンドル32としてのケース22を把持して弾性板18の長手方向をタイヤ2の周方向と平行させつつ、スピンドル24の先端が測定すべきトレッド面2Aの箇所に対向するように弾性板18の位置決めを行う。
【0027】
位置決めができたならば、ハンドル32を把持して弾性板18の当て付け面16をトレッド面2Aに当て付ける。
そして、2つの目盛34で表示される角度が同一となるように、ハンドル32の位置を操作する。これにより、2つのリンク30を介して弾性板18の長手方向の両端箇所に均等に力が作用するため、弾性板18の当て付け面16が摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に確実に当て付けられた状態となり、弾性板18は、当て付け面16が摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に当接しつつその長さ方向に沿って延在する。
この状態で操作部26を下方に動かしスピンドル24の先端をシート1812の上面に当て付け、この状態で前記ゼロセットスイッチを操作し、前記測定部の移動量を原点(ゼロ)に設定する。
【0028】
次に、シート1812を取り外し、操作部26を下方に動かしスピンドル24の先端を孔1802を通して測定すべきトレッド面2Aの箇所に当接させる。
これにより、デプスゲージ20の測定部によって、弾性板18の当て付け面16とトレッド面2Aの箇所との間に形成される距離が偏摩耗量として測定され表示部に表示される。
【0029】
このような第4の実施の形態によっても、第3の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、第1、第2の実施の形態のように、デプスゲージ20のベース面2202を弾性板18の上面に取り付けないため、図2で説明した測定誤差Eが発生せず、したがって、偏摩耗量の測定精度を確保する上でより一層有利となる。
【0030】
(第5の実施の形態)
次に第5の実施の形態について説明する。
図6(A)、(B)に示すように、第5の実施の形態は、第4の実施の形態の変形例である。
第5の実施の形態では、支持部材28に、デプスゲージ20からなる距離測定手段14と、デプスゲージ20からなる測定手段40とが取着され、距離測定手段14のスピンドル24が孔1802内を出没するように配置され、測定手段40のスピンドル24は弾性板18の上面に当接可能に配設される点が第4の実施の形態と異なっている。
なお、測定手段40の構成は距離測定手段14と同様であり、ケース22と、測定子であるスピンドル24と、操作部26と、不図示の測定部と、不図示の表示部と、不図示のゼロセットスイッチとを含んで構成されている。
【0031】
第5の実施の形態では、支持部材28の長手方向の中間部である中央部に支持部材28の幅方向に間隔をおいて距離測定手段14と、測定手段40とが並べて取着されている。
【0032】
タイヤ偏摩耗量測定装置10の使用方法について説明する。
まず、距離測定手段14および測定手段40のそれぞれのスピンドル24が同一高さの測定面に当接した状態で前記ゼロセットスイッチを操作し、前記測定部の移動量をそれぞれ原点(ゼロ)に設定する。
【0033】
次に、図6(B)に示すように、ハンドル32としてのケース22を把持して弾性板18の長手方向をタイヤ2の周方向と平行させつつ、スピンドル24の先端が測定すべきトレッド面2Aの箇所に対向するように弾性板18の位置決めを行う。
位置決めができたならば、ハンドル32を把持して弾性板18の当て付け面16をトレッド面2Aに当て付ける。
そして、2つの目盛34で表示される角度が同一となるように、ハンドル32の位置を操作する。これにより、2つのリンク30を介して弾性板18の長手方向の両端箇所に均等に力が作用するため、弾性板18の当て付け面16が摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に確実に当て付けられた状態となり、弾性板18は当て付け面16が摩耗量の少ないトレッド面2Aの箇所に当接しつつその長さ方向に沿って延在する。
この状態で測定手段40の操作部26を下方に動かしスピンドル24の先端を弾性板18の厚さ方向の他方の面である上面に当て付けると共に、距離測定手段14の操作部26を下方に動かしスピンドル24の先端を孔1802を通して測定すべきトレッド面2Aの箇所に当接させる。
【0034】
これにより、測定手段40では、前記原点と弾性板18の上面との距離、言い換えると、弾性板18の上面の高さとして第1の距離d1が測定され表示される。
一方、距離測定手段14では、前記原点とトレッド面2Aとの距離、言い換えると、トレッド面2Aの高さとして第2の距離d2が測定され表示される。
ここで、偏摩耗量Dは、第1の距離d1と第2の距離d2の差分から弾性板18の厚さd0を差し引いた値として求められる。言い換えると、トレッド面2Aの高さd2から、弾性板18の上面の高さd1と弾性板18の厚さd0を減算することで偏摩耗量Dを算出する。
この計算は、距離測定手段14と測定手段40を構成する2つのデプスゲージ20の表示から作業者が自ら計算してもよく、あるいは、パーソナルコンピュータにこの計算ソフトを入力しておき、2つのデプスゲージ20の測定値をパーソナルコンピュータに与えることで自動的に行うようにしてもよい。
【0035】
このような第5の実施の形態によっても、第4の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、第4の実施の形態に比較して孔1802に対するシート1812の着脱作業が不要となることから、測定作業の効率化を図る上でより一層有利となる。
【0036】
なお、実施の形態では、距離測定手段14、測定手段40としてデプスゲージ20を用いた場合について説明したが、距離測定手段14、測定手段40として、1軸方向の変位量を測定するリニアゲージ、ダイヤルゲージなどの接触式の変位計(測長装置)、あるいは、レーザー光を利用した非接触式の変位計(測長装置)など従来公知のさまざまな変位計(測長装置)が使用可能である。
【符号の説明】
【0037】
2……タイヤ、2A……トレッド面、10……タイヤ偏摩耗量測定装置、12……弾性部材、14……距離測定手段、16……当て付け面、18……弾性板、1802……孔、22……ケース、24……スピンドル(測定子)、28……支持部材、30……リンク、32……ハンドル、34……目盛、40……測定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッド面に生じる偏摩耗量を測定するタイヤ偏摩耗量測定装置であって、
細長形状で弾性を有し、前記トレッド面に当て付けることで摩耗量の少ないトレッド面の箇所に当接しつつ延在する当て付け面が形成された弾性部材と、
前記弾性部材の長さ方向の中間部で支持され、前記当て付け面が前記摩耗量の少ないトレッド面の箇所に当て付けられた状態で前記中間部において前記当て付け面と前記トレッド面との間に形成される距離を前記偏摩耗量として測定する距離測定手段と、
を備えることを特徴とするタイヤ偏摩耗量測定装置。
【請求項2】
細長形状を呈し前記弾性部材に対向させて配置された支持部材がさらに設けられ、
前記弾性部材の長さ方向の両端と前記支持部材の長さ方向の両端とをそれぞれ回転可能に連結するリンクが設けられ、
前記支持部材の中間部に、前記弾性部材から離れる方向に突出するハンドルが設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のタイヤ偏摩耗量測定装置。
【請求項3】
前記支持部材の長さ方向の両端に、前記支持部材に対して前記リンクが交差する角度を表示する目盛が設けられている、
ことを特徴とする請求項2記載のタイヤ偏摩耗量測定装置。
【請求項4】
前記弾性部材は幅よりも長さが大きい細長形状の薄肉の弾性板で形成され、
前記弾性板の厚さ方向の一方の面は前記当て付け面を構成しており、
前記弾性板の長さ方向の中間部に孔が形成され、
前記距離測定手段は、ケースと、前記ケースから出没する測定子とを有し、
前記ケースは前記弾性板の厚さ方向の他方の面に取着され、前記測定子は前記孔を通り前記当て付け面側に出没可能に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載のタイヤ偏摩耗量測定装置。
【請求項5】
前記弾性板はトレッド面よりも小さな曲率で湾曲形成され、
前記当て付け面を構成する前記弾性板の厚さ方向の一方の面は凹状の湾曲面であり、
前記ケースが取着される前記弾性板の厚さ方向の他方の面は凸状の湾曲面である、
ことを特徴とする請求項4記載のタイヤ偏摩耗量測定装置。
【請求項6】
前記弾性部材は幅よりも長さが大きい細長形状の薄肉の弾性板で形成され、
前記弾性板の厚さ方向の一方の面は前記当て付け面を構成しており、
前記弾性板の長さ方向の中間部に孔が形成され、
前記距離測定手段は、ケースと、前記ケースから出没する測定子とを有し、
前記ケースは前記支持部材で支持されることにより、前記弾性部材による前記距離測定手段の支持が前記リンクおよび前記支持部材を介してなされ、
前記測定子は前記孔を通り前記当て付け面側に出没可能に配置されている、
ことを特徴とする請求項2または3記載のタイヤ偏摩耗量測定装置。
【請求項7】
前記ケースは前記ハンドルを構成している、
ことを特徴とする請求項6記載のタイヤ偏摩耗量測定装置。
【請求項8】
ケースと、前記ケースから出没する測定子とを有し前記ケースが支持部材で支持された測定手段がさらに設けられ、
前記測定子は、前記弾性板の厚さ方向の他方の面に当接することで前記他方の面の高さを測定し、
前記距離測定手段の測定子が当接することで測定されるトレッド面の高さから、前記他方の面の高さと前記弾性板の厚さを減算することで前記偏摩耗量を算出する、
ことを特徴とする請求項6記載のタイヤ偏摩耗量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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