説明

タイヤ情報検出装置およびタイヤ情報監視システム

【課題】簡易かつ低コストな回路構成でタイヤ情報を検出することができるタイヤ情報検出装置およびタイヤ情報監視システムを提供すること。
【解決手段】タイヤ内に設けられたトランスポンダ3と、車両本体に設けられ、トランスポンダ3と通信可能なコントローラ4とを備えたタイヤ情報監視システムにおいて、トランスポンダ3は、タイヤ内において自由振動可能に支持され、タイヤ内の空気圧に応じた自由振動を電気信号に変換する圧電素子13と、圧電素子13で変換された電気信号をコントローラ4に無線送信するアンテナ11とを備え、コントローラ4は、トランスポンダ3から受信した電気信号の周波数に基づいてタイヤの空気圧情報を取得するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いられるタイヤの空気圧等のタイヤ情報を検出するタイヤ情報検出装置およびタイヤ情報監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のタイヤの空気圧を検出するタイヤ情報検出装置を備えたタイヤ情報監視システムとして、タイヤに設けられたタイヤ情報検出装置により検出された信号を車両本体側に設けられたコントローラに無線伝送し、コントローラにおいて空気圧が算出されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このタイヤ情報監視システムにおいては、コントローラから励振信号で変調された搬送波がタイヤ情報検出装置に向けて送信される。
【0003】
タイヤ情報検出装置において、受信した搬送波から変調成分である励振信号が抽出され、この励振信号によりタイヤ情報検出装置の共振器が励振されて共振信号を発生する。このとき、共振器の共振周波数はタイヤ内の空気圧の影響を受けて変化する。そして、コントローラから無変調の搬送波がタイヤ情報検出装置に向けて送信されると、タイヤ情報検出装置において受信搬送波が共振信号により変調されてコントローラに送信される。そして、コントローラは、受信した搬送波から変調周波数を測定することにより空気圧情報を取得している。
【特許文献1】特開2008−24177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のタイヤ情報検出装置においては、コントローラから励振信号で変調された搬送波を受信して共振器を励振させた後、コントローラから無変調の搬送波を受信して共振器の共振信号で変調させ、この搬送波の変調周波数をコントローラにおいて測定させることによりタイヤ内の空気圧を算出しているため、励振信号に励振する共振器を設けなければならず、回路構成が複雑でコストアップになるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、簡易かつ低コストな回路構成でタイヤ情報を検出することができるタイヤ情報検出装置およびタイヤ情報監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のタイヤ情報検出装置は、タイヤ内において自由振動可能に支持され、前記タイヤ内の空気圧に応じた自由振動を電気信号に変換する圧電素子と、車両本体に設けられた車両側装置に対して、前記圧電素子で変換された電気信号を無線送信する通信部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤ情報監視システムは、タイヤ内に設けられたタイヤ情報検出装置と、車両本体に設けられ、前記タイヤ情報検出装置と通信可能な車両側装置とを備えたタイヤ情報監視システムにおいて、前記タイヤ情報検出装置は、タイヤ内において自由振動可能に支持され、前記タイヤ内の空気圧に応じた自由振動を電気信号に変換する圧電素子と、前記圧電素子で変換された電気信号を前記車両側装置に無線送信する通信部とを備え、前記車両側装置は、前記タイヤ情報検出装置から受信した電気信号の周波数に基づいて前記タイヤの空気圧情報を取得することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、圧電素子がタイヤ内の空気圧に応じた周期で自由振動して、空気圧情報を含んだ周期の電気信号が発生し、通信部により電気信号が車両側装置に無線送信されるため、車両本体側の車両側装置において、この電気信号に基づいてタイヤの空気圧情報を取得し、タイヤの空気圧を監視することができる。
また、圧電素子の自由振動に対するタイヤ内の空気圧の影響を直に電気信号に変換しているため、車両側装置から励振信号で変調した搬送波を受信する構成と異なり、励振信号に共振するための共振器が不要となる。したがって、簡易かつ低コストな回路構成でタイヤの空気圧情報を取得することができる。
【0009】
また本発明は、上記タイヤ情報検出装置において、前記圧電素子は、前記タイヤ内において片持支持されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、簡易な構成で、圧電素子をタイヤ内に自由振動可能に支持することができる。
【0011】
また本発明は、上記タイヤ情報検出装置において、前記通信部は、前記圧電素子で変換された電気信号の電力を利用して前記車両側装置に送信することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、電気信号の電力を利用して自立的に送信するので、搬送波を電気信号により変調するための変調用の回路が不要となり、より簡易な回路構成にすることができる。
【0013】
また本発明は、上記タイヤ情報検出装置において、前記通信部は、前記車両側装置から受信した搬送波を前記圧電素子で変換された電気信号で変調して送信することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、電気信号で変調した搬送波が車両側装置に送信されるため、電気信号を車両側装置に安定的に送信することができる。
【0015】
また本発明のタイヤ情報検出装置は、タイヤ内において自由振動可能に支持され、前記タイヤ内の空気圧に応じた自由振動を電気信号に変換する圧電素子と、前記圧電素子で変換された電気信号の周波数を前記タイヤの空気圧情報に変換する制御回路と、前記圧電素子で変換された電気信号を整流し蓄電する蓄電部とを備え、前記制御回路は前記蓄電部の電圧により動作することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、圧電素子から発生した電気信号が整流されて蓄電部に蓄電され、制御回路の電源電圧として利用されるので、バッテリを設けることなくタイヤ情報検出装置において空気圧を算出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易かつ低コストな回路構成でタイヤ情報を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムの全体構成図である。図2は、圧電素子の支持状態を示す図である。なお、本実施の形態に係るタイヤ情報監視システムにおいては、本発明を自動車に適用して説明するが、自動車に限定されるものではなく、飛行機、自動二輪車、電動式自転車等のタイヤにより路面上を走行するものであれば、どのようなものに適用してもよい。
【0019】
図1に示すように、タイヤ情報監視システム1は、自動車のタイヤの空気圧を検出して車両本体側でタイヤの空気圧を監視するために用いられるものであり、タイヤ内に設けられたタイヤ情報検出装置としてのトランスポンダ3と、車両本体に設けられ、トランスポンダ3に無線接続された車両側装置としてのコントローラ4とから構成されている。タイヤ情報監視システム1は、トランスポンダ3にタイヤ内の空気圧に応じた周期で自由振動する圧電素子13を設け、この圧電素子13の自由振動により発生した電圧変化である電気信号に基づいてタイヤ内の空気圧を監視している。
【0020】
コントローラ4は、自動車のタイヤの空気圧情報を算出し、運転者に対する警告メッセージのために評価するものであり、アンテナ7から約2.4GHzの無変調の搬送波をトランスポンダ3に送信すると共に、無変調の搬送波を圧電素子13の電気信号で変調したものをトランスポンダ3から受信する。また、コントローラ4は、トランスポンダ3において変調された搬送波の変調成分を抽出し、抽出した変調成分に基づいてタイヤの空気圧情報を算出する。
【0021】
トランスポンダ3は、タイヤ内の空気圧を電気信号に変換して、この電気信号によりコントローラ4から送信された無変調の搬送波を変調してコントローラ4に返信するものであり、通信部としてのアンテナ11およびアンテナ11に接続されたFET12(Field Effect Transistor)を有している。FET12は、MOS形であり、ドレインにはアンテナ11の給電点が接続され、ゲートには圧電素子13の一方の電極が接続され、ソースには圧電素子13の他方の電極が接続されている。また、FET12のゲート・ソース間には、圧電素子13と並列にバイアス抵抗14が接続されている。
【0022】
FET12は、圧電素子13から出力される振動周期に応じて変化する電気信号がゲートに印加されてゲート・ソース間の抵抗が変化し、このFET12のゲート・ソース間の抵抗の変化によりコントローラ4から送信された無変調の搬送波が変調される。このように、圧電素子13から発生した電気信号で搬送波が変調される。
【0023】
図2に示すように、圧電素子13は、バイモルフ型であり、弾性プレート16の両面を一対のピエゾプレート17a、17bにより両側から接合して構成されている。また、圧電素子13は、タイヤ内において片持支持されており、タイヤ内の空気圧に応じた周期で自由振動可能となっている。なお、本実施の形態におけるタイヤ内とは、タイヤ、ホイール、エアバルブにより区画された空間内をいうものであり、タイヤ内に片持支持とは、例えば、タイヤのトレッドの内面に片持支持、またはホイールの外面およびエアバルブの内部に片持支持されている場合を含むものである。
【0024】
また、圧電素子13は、自由振動によりピエゾプレート17aと弾性プレート16との間、およびピエゾプレート17bと弾性プレート16との間にそれぞれに電圧を発生する。この圧電素子13は、寸法から決まる固有振動で自由振動し、この固有振動は圧力によって変化することが知られている(非特許文献:日本機械学会論文集(C編)、57巻542号(1991-10)、論文No.90-1032「圧電セラミックスを用いた圧力センサの基本特性」)。このとき、圧電素子13の自由振動の振動周期と電気信号の振動周期は一致している。
【0025】
したがって、この固有振動の周波数(電気信号の周波数)を測定することで、タイヤ内の空気圧を測定することが可能となる。図1において、FET12のソース・ドレイン間のインピーダンスRDSは、圧電素子13で発生する電圧をV(t)、ピンチオフ電圧をV、飽和ドレイン電流をIDSSとしてV(t)>Vのとき、
【数1】

で与えられる。
【0026】
図1でみると、FET12はアンテナ11の負荷になっており、後方散乱断面積σは、アンテナ11のインピーダンスをR、搬送波の波長をλ、アンテナ11のゲインをGとすると、
【数2】

となる。
【0027】
この後方錯乱断面積σを用いて、コントローラ4の受信電力Pは、トランスポンダ3の送信電力をP、コントローラ4のアンテナ7のゲインをG、トランスポンダ3のアンテナ11からの距離をdとすると、
【数3】

となり、圧電素子13で発生する電圧変化から、コントローラ4の受信電力が変化することがわかる。このことから、コントローラ4の受信電力の変調成分を抽出し、変調成分の周波数を測定することで、タイヤ内の空気圧がわかることとなる。
【0028】
このような測定原理を用いたタイヤ情報監視システム1において、コントローラ4からトランスポンダ3に送信された無変調の搬送波は、トランスポンダ3の圧電素子13で発生した電気信号により変調されてコントローラ4に送信される。コントローラ4で受信された変調後の搬送波は、図示しないフィルタにより変調成分が抽出される。
【0029】
抽出された変調成分は、圧電素子13の振動周波数を表している。制御部は、この抽出した圧電素子13の振動周波数とタイヤ内の空気圧情報とを対応付けしたテーブルを参照してタイヤの空気圧情報を算出している。なお、本実施の形態においては、圧電素子13の振動周波数とタイヤ内の空気圧情報とを対応付けしたテーブルを参照する構成としたが、圧電素子13の振動周波数とタイヤ内の空気圧情報とを対応付けしたマップや、プログラムに組み込まれた算出式によりタイヤの空気圧情報を算出してもよい。
【0030】
以上のように、本実施の形態に係るタイヤ情報監視システム1によれば、圧電素子13が振動してタイヤ内の空気圧に応じた周期で電圧変化する電気信号が発生し、コントローラ4から受信した無変調の搬送波がトランスポンダ3において電気信号で変調されてコントローラ4に返信されるため、車両本体側のコントローラ4において、搬送波から変調成分を抽出してタイヤの空気圧情報を取得し、タイヤの空気圧を監視することが可能となる。
また、圧電素子13の自由振動に対するタイヤ内の空気圧の影響を直に電気信号に変換しているため、コントローラ4から励振信号で変調した搬送波を受信する構成と異なり、励振信号に共振するための共振器が不要となる。したがって、簡易な回路構成でタイヤの空気圧を検出することが可能となる。
【0031】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムは、上述した第1の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムとタイヤ内の温度を考慮して空気圧を算出する点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用い、繰り返しの説明を省略する。図3は、本発明の第2の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムの全体構成図である。
【0032】
図3に示すように、タイヤ情報監視システム21は、トランスポンダ23に圧電素子13および水晶振動子26を設け、タイヤ内の空気圧に応じて周波数が変化する圧電素子13の電気信号、タイヤ内の温度に応じて共振周波数が変化する水晶振動子26の共振信号に基づいてタイヤ内の空気圧を監視している。
【0033】
コントローラ24は、内蔵されたタイマにより搬送波の変調の有無を切り替えられるようになっており、一定期間、水晶振動子26の共振周波数(励振信号)により変調された約2.4GHzの搬送波をトランスポンダ23に送信した後、変調を停止して無変調の搬送波をトランスポンダ23に送信する。すなわち、コントローラ24は、励振信号により水晶振動子26を励振させた状態で、続けて無変調の搬送波をトランスポンダ23に送信する。
【0034】
そして、コントローラ24は、トランスポンダ23から水晶振動子26の共振周波数で変調された搬送波を受信すると共に、圧電素子13の電気信号で変調された搬送波を受信してそれぞれの変調成分を抽出し、水晶振動子26の共振周波数からタイヤ内の温度を算出し、圧電素子13の振動周波数からタイヤ内の空気圧情報を算出する。なお、励振信号の周波数は、水晶振動子26がタイヤ内の温度の影響を受けていない状態の共振周波数である10MHzとなっている。
【0035】
トランスポンダ23は、通信部としてアンテナ11およびアンテナ11に接続された検波用のダイオード27を有している。ダイオード27は、アノードがアンテナ11の給電点に接続され、カソードがグランドに接地されている。また、ダイオード27のアノードには、直流カットのコンデンサ28を介して温度検出用の水晶振動子26および直流カットのコンデンサ29を介して圧力検出用の圧電素子13が接続されている。水晶振動子26は、一方の電極がコンデンサ28に接続され、他方の電極がグランドに接地されている。また、圧電素子13は、一方の電極がコンデンサ29に接続され、他方の電極がグランドに接地されている。
【0036】
水晶振動子26は、共振器として機能しており、タイヤ内の温度により共振周波数が変化するようになっている。この水晶振動子26は、コントローラ24から送信された励振信号により励振され、圧電素子13と共に無変調の搬送波を変調している。この場合、図4に示すように、水晶振動子26の共振信号は搬送波から±約10MHzに位置し、圧電素子13の電気信号は搬送波から±約100Hzに位置するため、搬送波を同時に変調しても変調後の搬送波から変調成分を抽出可能となる。
【0037】
ダイオード27は、アンテナ11の負荷になっており、ダイオード27のインピーダンスRは、圧電素子13で発生する電圧をV(t)、熱電圧をV(V=q/kT:qは電子電荷、kはボルツマン定数、Tは絶対温度)、飽和電流Iとすると、
【数4】

となり、あとは第1の実施の形態におけるFET12と同様な測定原理で、水晶振動子26の共振周波数の変化および圧電素子13における電圧変化から、コントローラ4の受信電力が変化することがわかる。
【0038】
このような測定原理を用いたタイヤ情報監視システム21において、コントローラ24から励振信号で変調された搬送波がトランスポンダ23に送信されると、励振信号がダイオード27で検波され、励振信号により水晶振動子26を励振させる。このとき、水晶振動子26は変調停止後も約1m秒以上振動し続ける。この状態で、コントローラ24から無変調の搬送波がトランスポンダ23に送信されると、無変調の搬送波が水晶振動子26の共振信号および圧電素子13の電気信号に応じてダイオード27によりそれぞれの周波数で変調されてコントローラ24に送信される。
【0039】
コントローラ24で受信された変調後の搬送波は、帯域毎に設けられた各フィルタにより水晶振動子26の変調成分および圧電素子13の変調成分が個々に抽出される。このとき、抽出された水晶振動子26の変調成分はタイヤ内の温度の影響を受け、圧電素子26の変調成分はタイヤ内の空気圧の影響を受けている。
【0040】
抽出された水晶振動子26の変調成分および圧電素子13の変調成分は、図示しない制御部内で周波数がそれぞれ測定される。制御部は、圧電素子13の振動周波数とタイヤ内の空気圧情報とを対応付けしたテーブルを参照してタイヤの空気圧情報を算出し、水晶振動子26の共振周波数とタイヤ内の温度とを対応付けしたテーブルを参照してタイヤ内の温度情報を算出する。そして制御部は、タイヤ内の温度情報と補正値とを対応付けした補正テーブルを参照してタイヤの空気圧情報を補正する。
【0041】
以上のように、本実施の形態に係るタイヤ情報監視システム21によれば、車両本体側のコントローラ24において、搬送波からタイヤ内の空気圧に応じて変化する圧電素子13の振動周波数を抽出してタイヤの空気圧情報を算出し、タイヤ内の温度に応じて変化する水晶振動子26の共振周波数を抽出して空気圧情報を補正することができるため、タイヤ内の温度を考慮して高精度なタイヤの空気圧情報を取得することが可能となる。なお、このとき、テーブルを参照する方法に代えてプログラムに計算式を組み込んで算出する方法も採用可能である。
【0042】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本発明の第3の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムは、上述した第1の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムと搬送波を用いない点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用い、繰り返しの説明を省略する。図5は、本発明の第3の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムの全体構成図である。
【0043】
図5に示すように、トランスポンダ33は、通信部としてアンテナ11およびアンテナ11に接続された圧電素子13を有している。圧電素子13は、一方の電極がアンテナ11の給電点に接続し、他方の電極がグランドに接地されている。このタイヤ情報監視システム31においては、タイヤ内の空気圧に応じた周期で圧電素子13が自由振動すると、アンテナ11から電気信号自体の電力を利用して当該電気信号の有する周波数の電波が放射される。コントローラ34で受信された電波は、図示しない制御部内で周波数が測定される。制御部は、圧電素子13の振動周波数とタイヤ内の空気圧情報とを対応付けしたテーブルを参照してタイヤの空気圧情報を算出する。
【0044】
以上のように、本実施の形態に係るタイヤ情報監視システム31によれば、圧電素子13の出力する電気信号の電力を利用して自立的に電波を送信するのでトランスポンダ33に搬送波を圧電素子13の出力信号で変調するための変調用の回路が不要となり、より簡易な回路構成にすることが可能となる。
【0045】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本発明の第4の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムは、上述した第1の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムとトランスポンダにおいてタイヤ内の空気圧情報を算出する点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用い、繰り返しの説明を省略する。
【0046】
図6は、本発明の第4の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムの全体構成図である。図7は、電気信号および電源電圧の出力波形を示す図である。図8は、図7における電源電圧の増加サイクルの説明図である。なお、図7における波形W1は圧電素子の電気信号の振動波形、波形W2は電解コンデンサの電源電圧の振動波形、ラインL1は規定電圧をそれぞれ示している。図8における波形W3は圧電素子の電気信号の振動波形、波形W4は電解コンデンサの電源電圧の波形をそれぞれ示している。
【0047】
図6に示すように、タイヤ情報監視システム41は、トランスポンダ43においてタイヤ内の空気圧情報を算出し、これをパルス信号に変換して出力する制御回路46を設け、この制御回路46を圧電素子13から発生した電気を充電した直流電源で動作させることにより、タイヤ内の空気圧を監視している。
【0048】
コントローラ44は、アンテナ7から約2.4GHzの無変調の搬送波をトランスポンダ43に送信すると共に、無変調の搬送波を制御回路46から出力されたパルス信号で変調したものをトランスポンダ43から受信する。また、コントローラ44は、トランスポンダ43で変調された搬送波から変調成分を抽出し、抽出した変調成分からタイヤ内の空気圧情報を取得する。
【0049】
トランスポンダ43は、通信部としてアンテナ11およびアンテナ11に接続されたFET12を有している。FET12のドレインにはアンテナ11の給電点が接続され、ゲートには制御回路46が接続され、ソースにはバイアス抵抗14を介して制御回路46が接続されている。FET12は、制御回路46から出力されるパルス信号の周期に応じた電圧がゲートに印加されゲート・ソース間の抵抗が変化し、このFET12のゲート・ソース間の抵抗の変化によりコントローラ44から送信された無変調の搬送波が変調される。
【0050】
制御回路46には、圧電素子13から出力された電気信号の周波数を測定する周波数測定部47が接続されており、周波数測定部47には、オペアンプ51の出力端子が接続されている。オペアンプ51は、反転入力側の入力端子が電解コンデンサ52の一方の電極に接続され、非反転入力側の入力端子が電解コンデンサ52の他方の電極に接続されている。
【0051】
また、オペアンプ51の2つの入力端子間には、電解コンデンサ52と並列に圧電素子13の一対の電極がそれぞれ接続され、オペアンプ51の反転入力端子と圧電素子13の一方の電極との間には、直流カットのコンデンサ56が設けられ、オペアンプ51の非反転入力端子と圧電素子13の他方の電極との間には、直流カットのコンデンサ57が設けられている。圧電素子13と電解コンデンサ52との間には、4つの整流ダイオード54から構成された整流回路53が設けられている。
【0052】
そして、図7に示すように、タイヤ内の空気圧に応じた周期で圧電素子13が自由振動すると、電気信号W1が整流回路53を通じて電解コンデンサ52で蓄電される。蓄電により電解コンデンサ52の電源電圧W2が規定電圧L1に達すると、制御回路46、周波数測定部47、オペアンプ51の動作が開始される。より具体的には、図8に示すように、タイヤの回転に応じて圧電素子13が振動し、電源電圧W4は周期的に上昇する。
【0053】
また、図6に戻り、制御回路46には、記憶部48および温度センサ49が接続されている。記憶部48は、制御回路46の制御プログラム、圧電素子13の振動周波数とタイヤ内の空気圧情報とを対応付けしたテーブル、タイヤ内の温度と補正値とを対応付けした補正テーブル等が記憶されており、制御回路46に適宜読み出される。温度センサ49は、サーミスタ等で構成されており、タイヤ内の温度に応じた温度信号を制御回路46に出力する。
【0054】
制御回路46は、電解コンデンサ52から供給される電源電圧が規定電圧に達すると動作し、記憶部48から各種テーブル等を読み出し、周波数測定部47により測定された圧電素子13の振動周波数および温度センサ49から出力された温度信号に基づいて、タイヤ内の空気圧情報を算出し、これをパルス信号に変換してFET12に出力する。FET12に出力されたパルス信号は、上記したように、搬送波の変調に利用される。なお、請求項に記載の蓄電部は本実施の形態に係る電解コンデンサ52と整流回路53とから構成されている。
【0055】
このようなタイヤ情報監視システム41において、コントローラ44からトランスポンダ43に送信された無変調の搬送波は、制御回路46から出力されたパルス信号により変調されてコントローラ44に送信される。コントローラ44は受信した変調後の搬送波からフィルタにより変調成分を抽出し、この抽出した変調成分からタイヤ内の空気圧情報を生成する。
【0056】
以上のように、本実施の形態に係るタイヤ情報監視システム41によれば、圧電素子13から発生した電気信号が整流回路53で整流されて電解コンデンサ52に蓄電され、制御回路46の電源電圧として利用されるので、バッテリを設けることなくトランスポンダ43において制御回路46等を駆動して空気圧を算出することができる。
【0057】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本発明の第5の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムは、上述した第4の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムとトランスポンダに発振回路を設けた点において相違している。したがって、特に相違点についてのみ説明し、同一の構成については同一の符号を用い、繰り返しの説明を省略する。図9は、本発明の第5の実施の形態に係るタイヤ情報監視システムの全体構成図である。
【0058】
図9に示すように、本実施の形態に係るタイヤ情報監視システム61は、第4の実施の形態に係るトランスポンダ43のFET12およびバイアス抵抗14の代わりに発振回路66を設けた点で異なっている。発振回路66は、制御回路46から出力されたパルス信号の周期に応じて発振している。そして、コントローラ64は、図示しない制御部において受信した発振回路66の発振周波数からタイヤ内の空気圧情報を生成する。
【0059】
以上のように、本実施の形態に係るタイヤ情報監視システム61によれば、圧電素子13から発生した電気信号が整流回路53で整流されて電解コンデンサ52に蓄電され、制御回路46の電源電圧として利用されるので、バッテリを設けることなくトランスポンダ63において制御回路46等を駆動して空気圧を算出することができる。また、コントローラ64からトランスポンダ63に搬送波を送信するためのステップが不要となり、コントローラ64において空気圧情報を算出する手間を省けるので、測定時間の短縮化を図ることができると共に、コントローラ64を簡易な回路構成とすることが可能となる。
【0060】
なお、上記した各実施の形態においては、バイモルフ型の圧電素子13を用いた構成としたが、タイヤ内の空気圧に応じた自由振動を電圧に変換する構成であれば、この構成に限定されず、例えば、モノモルフ型や積層型の圧電素子を用いた構成としてもよい。
【0061】
また、上記した各実施の形態においては、圧電素子13をタイヤ内に片持支持する構成としたが、タイヤ内の空気圧に応じた自由振動する構成であれば、この構成に限定されず、例えば、タイヤ内に両持支持される構成や3点支持される構成としてもよい。
【0062】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明は、簡易かつ低コストな回路構成でタイヤ情報を検出することができるという効果を有し、特に自動車等に用いられるタイヤの空気圧等のタイヤ情報を検出するタイヤ情報検出装置およびタイヤ情報監視システムに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係るタイヤ情報監視システムの第1の実施の形態を示す図であり、タイヤ情報監視システムの全体構成図である。
【図2】本発明に係るタイヤ情報監視システムの第1の実施の形態を示す図であり、圧電素子の支持状態を示す図である。
【図3】本発明に係るタイヤ情報監視システムの第2の実施の形態を示す図であり、タイヤ情報監視システムの全体構成図である。
【図4】本発明に係るタイヤ情報監視システムの第2の実施の形態を示す図であり、水晶振動子の共振信号および圧電素子の電気信号と搬送波との関係を示す図である。
【図5】本発明に係るタイヤ情報監視システムの第3の実施の形態を示す図であり、タイヤ情報監視システムの全体構成図である。
【図6】本発明に係るタイヤ情報監視システムの第4の実施の形態を示す図であり、タイヤ情報監視システムの全体構成図である。
【図7】本発明に係るタイヤ情報監視システムの第4の実施の形態を示す図であり、電気信号および電源電圧の出力波形を示す図である。
【図8】本発明に係るタイヤ情報監視システムの第4の実施の形態を示す図であり、図7における電源電圧の増加サイクルの説明図である。
【図9】本発明に係るタイヤ情報監視システムの第5の実施の形態を示す図であり、タイヤ情報監視システムの全体構成図である。
【符号の説明】
【0065】
1、21、31、41、61 タイヤ情報監視システム
3、23、33、43、63 トランスポンダ(タイヤ情報検出装置)
4、24、34、44、64 コントローラ(車両側装置)
11 アンテナ(通信部)
12 FET(通信部)
13 圧電素子
16 弾性プレート
17a、17b ピエゾプレート
27 ダイオード(通信部)
46 制御回路
47 周波数測定部
48 記憶部
49 温度センサ
51 オペアンプ
52 電解コンデンサ(蓄電部)
53 整流回路(蓄電部)
66 発振回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内において自由振動可能に支持され、前記タイヤ内の空気圧に応じた自由振動を電気信号に変換する圧電素子と、
車両本体に設けられた車両側装置に対して、前記圧電素子で変換された電気信号を無線送信する通信部とを備えたことを特徴とするタイヤ情報検出装置。
【請求項2】
前記圧電素子は、前記タイヤ内において片持支持されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報検出装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記圧電素子で変換された電気信号の電力を利用して前記車両側装置に送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ情報検出装置。
【請求項4】
前記通信部は、前記車両側装置から受信した搬送波を前記圧電素子で変換された電気信号で変調して送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ情報検出装置。
【請求項5】
タイヤ内において自由振動可能に支持され、前記タイヤ内の空気圧に応じた自由振動を電気信号に変換する圧電素子と、
前記圧電素子で変換された電気信号の周波数を前記タイヤの空気圧情報に変換する制御回路と、
前記圧電素子で変換された電気信号を整流し蓄電する蓄電部とを備え、
前記制御回路は前記蓄電部の電圧により動作することを特徴とするタイヤ情報検出装置。
【請求項6】
タイヤ内に設けられたタイヤ情報検出装置と、車両本体に設けられ、前記タイヤ情報検出装置と通信可能な車両側装置とを備えたタイヤ情報監視システムにおいて、
前記タイヤ情報検出装置は、
タイヤ内において自由振動可能に支持され、前記タイヤ内の空気圧に応じた自由振動を電気信号に変換する圧電素子と、
前記圧電素子で変換された電気信号を前記車両側装置に無線送信する通信部とを備え、
前記車両側装置は、前記タイヤ情報検出装置から受信した電気信号の周波数に基づいて前記タイヤの空気圧情報を取得することを特徴とするタイヤ情報監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−127760(P2010−127760A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302600(P2008−302600)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】