説明

タイヤ成形機の精度測定方法

【課題】成形オペレーターによる測定作業が可能になるタイヤ成形機の精度測定方法を提供する。
【解決手段】1st成形部では、ドラム本体11A、21Aとリング12A、22Aとの隙間を、ドラム周方向に等間隔で3個所以上、湾曲し、かつ階段状の隙間挿入部21bを備えた隙間ゲージ21を用いて測定し、左右一対のリング12A、22Aの間隔を、ドラム周方向に等間隔で3個所以上、インサイドゲージで測定し、2nd成形部では、インサイドゲージを2nd成形用ドラムのドラム軸に対して垂直に固定し、かつ、測定子をトランスファーの内周面に接触させた状態で、2nd成形用ドラムを回転させることにより、2nd成形用ドラムの外周面とトランスファーの内周面との間隔を、ドラム周方向に等間隔で3個所以上、測定し、レーザーセンサーにより2nd成形部のトランスファーの傾きを測定することを特徴とするタイヤ成形機の精度測定方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成形機の精度測定を行うためのタイヤ成形機の精度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ成形機は、1st成形部および2nd成形部において生タイヤを段階的に組み立てるように構成されている。
【0003】
図7はタイヤ成形機を模式的に示す図である。1st成形部Xでは、所定の材料にカーカス材料から成るタイヤケースを貼り付けて環状体に成形して第1次タイヤカバーを作成する。このため、図7に示すように、ツインバンドドラム1、ツインシェーピングドラム2、バンドトランスファー3が配置されている。
【0004】
2nd成形部Yでは、第1次タイヤカバーにトレッドを合体させ、生タイヤを形成する。このため、図7に示すように、ツインシェーピングドラム2、ツインベルトドラム4、ブレーカードラム5、トレッドトランスファー6、ブレーカートランスファー7が配置されている。
【0005】
生タイヤ成形後は、生タイヤを加硫した後、タイヤの仕上げ加工を行い、タイヤバランス並びにユニフォミティを測定し、製品検査を行って製品タイヤを得ている。
【0006】
そして、生タイヤの品質を向上させ精度を一定に保つために、タイヤ成形機の所定個所について、距離センサー等を用いて精度測定する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0007】
図8〜図10は、従来の成形部におけるタイヤ成形機の精度測定方法を説明する図であり、図8は1st成形部、図9、10は2nd成形部における測定方法を示している。
【0008】
図8においては、具体的には、従来の1st成形部における上記の各種ドラムの芯出しと、各種トランスファーの傾斜修正を行うための精度測定方法を示している。
【0009】
図8の左側に示すように、バンドドラム1Aの外周面に、ダイヤルゲージA、B、C、Dを固定し、バンドドラム1Aを回転させてドラム周方向に等間隔に位置する8点で測定を行っている。
【0010】
ダイヤルゲージB、Dは、バンドドラム1Aと、バンドドラム1Aの外周に位置するバンドトランスファー3との間隔を測定して、バンドドラム1Aの芯出しを行うためのデータを取得するものである。また、ダイヤルゲージA、Cは、バンドトランスファー3の位置を測定して、バンドトランスファー3の傾斜の修正を行うためのデータを取得するものである。
【0011】
図8の右側に示すように、シェーピングドラム2Aについても、同様に、シェーピングドラム2Aの外周面に、ダイヤルゲージE、F、G、Hを固定し、シェーピングドラム2Aを回転させてドラム周方向に等間隔に位置する8点で測定を行っている。これにより、シェーピングドラム2Aの芯出しを行うためのデータを取得し、また、シェーピングドラム2Aの外周に位置するバンドトランスファー3の傾斜の修正を行うためのデータを取得している。
【0012】
また、図9、図10に示すように、ベルトドラム4A、ブレーカードラム5、トレッドトランスファー6、ブレーカートランスファー7についても、同様にして、ダイヤルゲージA〜Dを用いてデータを取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−130544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このように、従来のタイヤ成形機の精度測定方法は、測定するポイントが多く、ダイヤルゲージを固定する個所も多いため、測定時間が長くなり、また、作業者がドラムを頻度高く手で回すために作業負担が大きくなり、さらに、ドラムの芯出しのためのダイヤルゲージとトランスファーの傾斜測定のためのダイヤルゲージとを同時にセットする必要があるため、スキルが必要となり、成形オペレーターでは対処できず、作業能率が低下するという問題があった。
【0015】
そこで本発明は、測定時間の短縮化、作業負担の軽減化、成形オペレーターによる測定作業が可能になるタイヤ成形機の精度測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下、請求項の発明を説明する。
【0017】
請求項1に記載の発明は、
1st成形部および2nd成形部に配置される各種ドラムおよび各種トランスファーを備えた成形機の精度測定を行うタイヤ成形機の精度測定方法であって、
1st成形用ドラムは、ドラム本体と、前記ドラム本体に巻かれた円筒状材料にリング状材料を固定するための左右一対のリングとを備えており、
1st成形部では、
前記ドラム本体と前記リングとの隙間の内、ドラム周方向に等間隔で位置する3個所以上の隙間を、ドラム外周面に合致できるように湾曲し、かつ階段状の隙間挿入部を備えた隙間ゲージを用いて測定し、
左右一対の前記リングの間隔の内、ドラム周方向に等間隔で位置する3個所以上の隙間を、前記リング間にインサイドゲージを介在させることにより測定し、
2nd成形部では、
ドラムに固定するための固定手段を備えたインサイドゲージを2nd成形用ドラムのドラム軸に対して垂直に固定し、かつ、前記インサイドゲージの測定子をトランスファーの内周面に接触させた状態で、前記2nd成形用ドラムを回転させることにより、前記2nd成形用ドラムの外周面と前記トランスファーの内周面との間隔の内、ドラム周方向に等間隔で位置する3個所以上の間隙を測定し、
レーザーセンサーにより前記2nd成形部のトランスファーの傾きを測定する
ことを特徴とするタイヤ成形機の精度測定方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、測定時間の短縮化、作業負担の軽減化、成形オペレーターによる測定作業が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の1st成形部におけるタイヤ成形機の精度測定方法の実施の形態を説明する図である。
【図2】本発明の1st成形部におけるタイヤ成形機の精度測定方法の実施の形態を説明する図である。
【図3】本発明の2nd成形部におけるタイヤ成形機の精度測定方法の実施の形態を説明する図である。
【図4】本発明の2nd成形部におけるタイヤ成形機の精度測定方法の実施の形態を説明する図である。
【図5】本発明のタイヤ成形機の精度測定方法の実施の形態に用いられる隙間ゲージを模式的に示す図である。
【図6】本発明のタイヤ成形機の精度測定方法の実施の形態に用いられるインサイドゲージを模式的に示す図である。
【図7】タイヤ成形機を模式的に示す図である。
【図8】従来の1st成形部におけるタイヤ成形機の精度測定方法を説明する図である。
【図9】従来の2nd成形部におけるタイヤ成形機の精度測定方法を説明する図である。
【図10】従来の2nd成形部におけるタイヤ成形機の精度測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1、図2は、本発明の1st成形部におけるタイヤ成形機の精度測定方法の実施の形態を説明する図である。図3、図4は、本発明の2nd成形部におけるタイヤ成形機の精度測定方法の実施の形態を説明する図である。
【0022】
1.タイヤ成形機の構成
タイヤ成形機は、上記のように1st成形部Xおよび2nd成形部Yにおいて、各種ドラムおよび各種トランスファーを配置して構成されている(図8参照)。
【0023】
バンドドラム1Aは、ドラム本体11Aと、ドラム本体11Aに巻かれた円筒状材料にリング状材料を固定するための左右一対のマグネット付きのリング12Aとを備えている。
【0024】
また、シェーピングドラム2Aについても、同様に、ドラム本体21Aとドラム本体21Aに巻かれた円筒状材料にリング状材料を固定するための左右一対のマグネット付きのリング22Aとを備えている。
【0025】
2.タイヤ成形機の精度測定方法に用いられる測定用治具
図5は、本発明のタイヤ成形機の精度測定方法の実施の形態に用いられる隙間ゲージを模式的に示す図である。図6は、本発明のタイヤ成形機の精度測定方法の実施の形態に用いられるインサイドゲージを模式的に示す図である。
【0026】
(1)隙間ゲージ(スキミゲージ)
隙間ゲージ21は、複数の段階状の寸法測定ゲージ部21aを有する隙間挿入部21bを備えている。また、隙間ゲージ21全体は、ドラムの外周面に合わせて湾曲させている。
【0027】
(2)インサイドゲージ
インサイドゲージ31は、先端に測定子30を有するゲージ本体32と、ゲージ本体32の後端に設けられて、成形用ドラムにゲージ本体32を固定するための設置台(固定手段)33と、測定値表示部34とを備えている。設置台33はゲージ本体32に着脱自在に取り付けられている。また、設置台33は、作業者の手動により、より好ましくはマグネットを用いて磁力により、ドラムに自在に取り付けられている。
【0028】
3.タイヤ成形機の精度測定方法
(1)1st成形部Xにおける精度測定方法
(a)隙間ゲージによる測定
(イ)バンドドラムの測定
図1の左側に示すように、バンドドラム1Aのドラム本体11Aとリング12Aとの隙間の内、ドラム周方向に等間隔で位置する4個所の隙間を、前記の隙間ゲージ21を用いて測定する。これにより、バンドドラム1Aの芯出しを行うための4点データを取得する。
【0029】
(ロ)シェーピングドラムの測定
上記と同様、図1の右側に示すように、シェーピングドラム2Aのドラム本体21Aとリング22Aとの隙間の内、ドラム周方向に等間隔で位置する4個所の隙間を、隙間ゲージ21を用いて測定する。これにより、シェーピングドラム2Aの芯出しを行うための4点データを取得する。
【0030】
(b)インサイドゲージによる測定
(イ)バンドドラムのリングの間隔の測定
図2の左側に示すように、左右一対のリング12Aの間隔の内、ドラム周方向に等間隔で位置する4個所の隙間を、設置台33を取り外した状態のインサイドゲージ31を介在させることにより測定する。これにより、バンドドラム1Aに位置するときのバンドトランスファー3の傾きを修正するための4点データを取得する。
【0031】
(ロ)シェーピングドラムのリングの間隔の測定
図2の右側に示すように、左右一対のリング22Aの間隔の内、ドラム周方向に等間隔で位置する4個所の隙間を、設置台33を取り外した状態のインサイドゲージ31を介在させることにより測定する。これにより、シェーピングドラム2Aに位置するときのバンドトランスファー3の傾きを修正するための4点データを取得する。
【0032】
このように1st成形用ドラムにおいて、リング12Aとリング22Aとの間隔を測定することにより、バンドトランスファー3の傾きを間接的に測定する。
【0033】
以上のように、階段状の隙間挿入部21bを用いると共に、ドラムのリングに着目してリングの間隔の4点データを取得することにより、ゲージをドラムに度々固定することなく、ドラムの芯出しおよびトランスファーの傾き修正のためのデータを簡易に取得できる。
【0034】
(2)2nd成形部Yにおける精度測定方法
(a)インサイドゲージによる測定
図3に示すように、シェーピングドラム2Aの回転軸23Aに対して垂直にインサイドゲージ31を固定する。また、インサイドゲージ31の測定子30を、シェーピングドラム2Aの外周に位置するトレッドトランスファー6の内周面に接触させる。
【0035】
そして、この状態で、シェーピングドラム2Aを回転させることにより、シェーピングドラム2Aの外周面とトレッドトランスファー6の内周面との間隔の内、ドラム周方向に等間隔で位置する4個所の間隙を測定して、トレッドトランスファー6の傾きを測定する。これにより、トレッドトランスファー6の傾きを修正するための4点データを取得する。
【0036】
図3、図4のベルトドラム4A、ブレーカードラム5についても上記と同様に行われる。
【0037】
(b)レーザーセンサーによる測定
図3、図4に示すように、トレッドトランスファー6およびブレーカートランスファー7の傾きは、レーザーセンサーを軸中心に向けて照射することにより、目視で判定する。
【0038】
以上のように、設置台33を備えたインサイドゲージ31を用いることにより、インサイドゲージ31のドラムへの固定作業が容易になり、ドラムの芯出しおよびトランスファーの傾き修正のためのデータを簡易に取得できる。
【0039】
(3)以上の測定により得られた4点データの数値を分析し、基準値に達しない場合には、前記数値に基づいてドラムの芯出しおよびトランフファーの傾斜修正を行う。
【0040】
なお、以上の実施の形態では、測定個所の好ましい数を4個所としたが、3個所以上であればよい。
【0041】
3.本実施の形態の効果
(1)以上のように、1st成形部Xでは、階段状の隙間挿入部21bを用いると共に、ドラムのリングに着目してリングの間隔の4点データを取得し、また、2nd成形部Yでは、設置台33を備えたインサイドゲージ31を用いることにより、成形機の精度チェックの時間を大幅に短縮することができる。実験では、従来の作業時間4〜6時間から30〜60分に短縮された。
【0042】
(2)このため、搬送ベルトの交換時などのように、M/C停止時に測定することが可能となり、成形機の精度チェックの頻度を大幅に上げることができる。この結果、精度の悪化をいち早く確認でき、また、悪化した箇所だけの修正を短時間で行うことができ、成形機の精度保証、精度維持が良くなる。実験では、従来の頻度1回/年から1回/3〜4ヶ月に増やすことができた。
【0043】
(3)測定スキルが不要となるため、成形オペレーターによる精度チェックが可能になり、作業能率を大幅に向上させることができる。
【0044】
(4)ドラムを回転させる回数も減少するため、作業者の負担が軽減する。
【0045】
(5)なお、レーザー変位計により、機械精度の重要個所を、日常的に点検することにより、精度管理がさらに向上する。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 ツインバンドドラム
1A バンドドラム
2 ツインシェーピングドラム
2A シェーピングドラム
3 バンドトランスファー
4 ツインベルトドラム
4A ベルトドラム
5 ブレーカードラム
6 トレッドトランスファー
7 ブレーカートランスファー
11A、21A ドラム本体
12A、22A リング
21 隙間ゲージ
21a 寸法測定ゲージ部
21b 隙間挿入部
23A 回転軸
30 測定子
31 インサイドゲージ
32 ゲージ本体
33 設置台(固定手段)
34 測定値表示部
A〜H ダイヤルゲージ
X 1st成形部
Y 2nd成形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1st成形部および2nd成形部に配置される各種ドラムおよび各種トランスファーを備えた成形機の精度測定を行うタイヤ成形機の精度測定方法であって、
1st成形用ドラムは、ドラム本体と、前記ドラム本体に巻かれた円筒状材料にリング状材料を固定するための左右一対のリングとを備えており、
1st成形部では、
前記ドラム本体と前記リングとの隙間の内、ドラム周方向に等間隔で位置する3個所以上の隙間を、ドラム外周面に合致できるように湾曲し、かつ階段状の隙間挿入部を備えた隙間ゲージを用いて測定し、
左右一対の前記リングの間隔の内、ドラム周方向に等間隔で位置する3個所以上の隙間を、前記リング間にインサイドゲージを介在させることにより測定し、
2nd成形部では、
ドラムに固定するための固定手段を備えたインサイドゲージを2nd成形用ドラムのドラム軸に対して垂直に固定し、かつ、前記インサイドゲージの測定子をトランスファーの内周面に接触させた状態で、前記2nd成形用ドラムを回転させることにより、前記2nd成形用ドラムの外周面と前記トランスファーの内周面との間隔の内、ドラム周方向に等間隔で位置する3個所以上の間隙を測定し、
レーザーセンサーにより前記2nd成形部のトランスファーの傾きを測定する
ことを特徴とするタイヤ成形機の精度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−179848(P2012−179848A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45385(P2011−45385)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】