説明

タイヤ用トレッド、タイヤ及びタイヤの製造方法

【課題】熱可塑性材料で形成されたタイヤ骨格部材とトレッドとの接合部に均一で安定した接合面を確保する。
【解決手段】熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材14にPCT48を一体化するにあたり、PCT48を構成するトレッド本体50の内周面に熱可塑性材料からなる接合層52が接合されている。このため、PCT48に設けた熱可塑性材料からなる接合層52と、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材14との接合部が熱可塑性材料同士の接合となる。この結果、曲面となっているタイヤ骨格部材14の接合部においても均一で安定した接合面を確保することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部が熱可塑性材料で形成されたタイヤに適用されるタイヤ用トレッド、タイヤ、及びタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車等の車両には、ゴム、有機繊維材料、スチール部材等から構成された空気入りタイヤが用いられている。
しかしながら、使用後のゴムはリサイクルの用途に制限があり、焼却してサーマルリサイクルする、破砕して道路の舗装材料として用いる等して処分することが行われていた。
近年では、軽量化やリサイクルのし易さから、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー等をタイヤ材料として用いることが求められている。
例えば、特許文献1には、熱可塑性の高分子材料を用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開03−143701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤは、ゴム製の従来タイヤ対比で製造が容易で、低コストである。
しかしながら、特許文献1では、ポリエステル系のエラストマーを金型に注入することにより製造したタイヤ骨格部材(ケース)とゴム製のトレッドとを一体化するにあたり、タイヤの組立て工程において、曲面となっているタイヤ骨格部材の外周上にクッションゴムや接着剤を配置し、その上にトレッドを配置し、さらに、タイヤ骨格部材とトレッドとを加硫によって接合する。このため、接合作業が煩雑になり、タイヤ骨格部材とトレッドとの接合部に均一で安定した接合面を確保することが困難である。この結果、接合強度を確保する点において改良が求められている。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、タイヤ骨格部材とトレッドとの接合部に均一で安定した接合面を確保することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明のタイヤ用トレッドは、トレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層を有する。
【0007】
熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材とタイヤ用トレッドとを一体化するにあたり、トレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層を有しており、タイヤ用トレッドとタイヤ骨格部材との接合部が熱可塑性材料同士の接合となる。この結果、タイヤ用トレッドの接合層の接合部とタイヤ骨格部材の接合部との少なくも一方を加熱することで、両者を容易に接合できる。このため、曲面となっている接合部においても均一で安定した接合面を確保することが可能になる。
【0008】
請求項2に記載のタイヤは、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材と、前記タイヤ骨格部材の外周面側の位置に設けられたトレッド本体と、熱可塑性材料からなり前記トレッド本体の内周面に形成され、前記タイヤ骨格部材の外周部と接合された接合層と、を有する。
【0009】
熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材とタイヤ用トレッドとを一体化するにあたり、トレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が形成されており、タイヤ用トレッドとタイヤ骨格部材との接合部が熱可塑性材料同士の接合となる。この結果、タイヤ用トレッドの接合層の接合部とタイヤ骨格部材の接合部との少なくも一方を加熱することで、両者を容易に接合できる。このため、曲面となっている接合部においても均一で安定した接合面を確保することが可能になる。
【0010】
請求項3に記載の発明のタイヤの製造方法は、トレッド用金型内に熱可塑性材料と未加硫ゴムとを配置し、加硫することでトレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する工程と、前記タイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する工程と、を含む。
【0011】
トレッド用金型内に熱可塑性材料と未加硫ゴムとを配置し、加硫することでトレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する。また、このタイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する。従って、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材とタイヤ用トレッドとを一体化するにあたり、トレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が接合されており、タイヤ用トレッドとタイヤ骨格部材との接合部が熱可塑性材料同士の接合となる。この結果、タイヤ用トレッドの接合層の接合部とタイヤ骨格部材の接合部との少なくも一方を加熱することで、両者を容易に接合できる。このため、曲面となっている接合部においても均一で安定した接合面を確保することが可能になる。
【0012】
請求項4に記載の発明のタイヤの製造方法は、第1のトレッド用金型内に未加硫ゴムを配置し、加硫することでトレッド本体を製造する工程と、第2のトレッド用金型内に熱可塑性材料と前記トレッド本体とを配置し、加硫することで前記トレッド本体の内周面に前記熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する工程と、前記タイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する工程と、を含む。
【0013】
第1のトレッド用金型内に未加硫ゴムを配置し、加硫することでトレッド本体を形成し、形成したトレッド本体と熱可塑性材料とを第2のトレッド用金型内に配置し、加硫することでトレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する。また、このタイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する。従って、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材とタイヤ用トレッドとを一体化するにあたり、トレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が接合されており、タイヤ用トレッドとタイヤ骨格部材との接合部が熱可塑性材料同士の接合となる。この結果、タイヤ用トレッドの接合層の接合部とタイヤ骨格部材の接合部との少なくも一方を加熱することで、両者を容易に接合できる。このため、曲面となっている接合部においても均一で安定した接合面を確保することが可能になる。
【0014】
請求項5に記載の発明のタイヤの製造方法は、第1のトレッド用金型内に熱可塑性材料を配置し、熱可塑性材料からなる接合層を製造する工程と、第2のトレッド用金型内にトレッド本体となる未加硫ゴムと前記接合層とを配置し、加硫することで前記トレッド本体の内周面に前記接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する工程と、前記タイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する工程と、を含む。
【0015】
第1のトレッド用金型内に熱可塑性材料を配置し熱可塑性材料からなる接合層を形成し、形成した接合層とトレッド本体となる未加硫ゴムとを第2のトレッド用金型内に配置し、加硫することでトレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する。また、このタイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する。従って、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材とタイヤ用トレッドとを一体化するにあたり、トレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が接合されており、タイヤ用トレッドとタイヤ骨格部材との接合部が熱可塑性材料同士の接合となる。この結果、タイヤ用トレッドの接合層の接合部とタイヤ骨格部材の接合部との少なくも一方を加熱することで、両者を容易に接合できる。このため、曲面となっている接合部においても均一で安定した接合面を確保することが可能になる。
【0016】
請求項6は請求項3〜5の何れか1項に記載のタイヤの製造方法において、前記熱可塑性材料と前記トレッド本体の間に接着剤を塗布した。
【0017】
トレッド本体と熱可塑性材料との間に接着剤を塗布したため、接着剤によってタイヤ用トレッドとタイヤ骨格部材とが確実に接合される。
【0018】
請求項7は請求項3〜5の何れか1項に記載のタイヤの製造方法において、前記熱可塑性材料と前記トレッド本体の間に接着用未加硫ゴムを配置した。
【0019】
熱可塑性材料とトレッド本体の間に接着用未加硫ゴムを配置したため、接着用未加硫ゴムが加硫されることによってタイヤ用トレッドとタイヤ骨格部材とが確実に接合される。
【0020】
請求項8に記載の発明のタイヤの製造方法は、第1のトレッド用金型内に未加硫ゴムを配置し、加硫することで内周面側に凹凸を有するトレッド本体を形成する工程と、第2のトレッド用金型内に熱可塑性材料と前記トレッド本体とを配置し、加硫することで前記トレッド本体の凹部と前記熱可塑性材料とを接合させトレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する工程と、前記タイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する工程と、を含む。
【0021】
第1のトレッド用金型内に未加硫ゴムを配置し、加硫することで内周面側に凹凸を有するトレッド本体を形成する。また、形成したトレッド本体と熱可塑性材料とを第2のトレッド用金型内に配置し、加硫することでトレッド本体の凹部と熱可塑性材料とを接合させトレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する。この際、熱可塑性材料は流動するので凹凸部に合うように形状が形成され、ゴム側の凹凸部と熱可塑性材料との機械的結合により結合強度がアップする。また、このタイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する。従って、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材とタイヤ用トレッドとを一体化するにあたり、トレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が接合されており、タイヤ用トレッドとタイヤ骨格部材との接合部が熱可塑性材料同士の接合となる。この結果、タイヤ用トレッドの接合層の接合部とタイヤ骨格部材の接合部との少なくも一方を加熱することで、両者を容易に接合できる。このため、曲面となっている接合部においても均一で安定した接合面を確保することが可能になる。なお、ゴム側の凹凸部は第1のトレッド用金型で容易に形成できる。
【0022】
請求項9に記載の発明のタイヤの製造方法は、第1のトレッド用金型内に熱可塑性材料を配置し、外周面側に凹凸を有する接合層を形成する工程と、第2のトレッド用金型内にトレッド本体となる未加硫ゴムと前記接合層とを配置し、加硫することで前記接合層の凹凸と前記未加硫ゴムとを接合させトレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する工程と、前記タイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する工程と、を含む。
【0023】
第1のトレッド用金型内に熱可塑性材料を配置し、外周面側に凹凸を有する接合層を形成する。また、形成した接合層とトレッド本体となる未加硫ゴムとを第2のトレッド用金型内に配置し、加硫することで接合層の凹部と未加硫ゴムとを接合させトレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する。この際、未加硫ゴムは流動するので凹凸部に合うように形状が形成され、熱可塑性材料からなる接合層の凹凸部とゴムとの機械的結合により結合強度がアップする。また、このタイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する。従って、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材とタイヤ用トレッドとを一体化するにあたり、トレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が接合されており、タイヤ用トレッドとタイヤ骨格部材との接合部が熱可塑性材料同士の接合となる。この結果、タイヤ用トレッドの接合層の接合部とタイヤ骨格部材の接合部との少なくも一方を加熱することで、両者を容易に接合できる。このため、曲面となっている接合部においても均一で安定した接合面を確保することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明のタイヤ用トレッドは上記の構成としたので、タイヤ骨格部材とトレッドとの接合部に均一で安定した接合面を確保することができる、という優れた効果を有する。
【0025】
また、本発明のタイヤは上記の構成としたので、タイヤ骨格部材とトレッドとの接合部に均一で安定した接合面を確保することができる、という優れた効果を有する。
【0026】
また、本発明のタイヤの製造方法では、タイヤ骨格部材とトレッドとの接合部に均一で安定した接合面を確保することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のタイヤを示す概略断面図である。
【図2】本発明のタイヤのビード部の近傍をリムへの取付状態で示す一部を断面とした斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態のタイヤ製造方法を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態のタイヤ製造方法に適用されるタイヤ製造用金型を示す断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態のタイヤ製造方法に適用される他のタイヤ製造用金型を示す断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態のタイヤ製造方法に適用される他のタイヤ製造用金型を示す断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態のタイヤ製造方法に適用される他のタイヤ製造用金型の一部を示す断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態のタイヤ製造方法に適用される他のタイヤ製造用金型の一部を示す断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態のタイヤ製造方法に適用される他のタイヤ製造用金型の一部を示す断面図である。
【図10】本発明のタイヤを示す断面図である。
【図11】本発明のタイヤを示す断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態のタイヤ製造方法を示す斜視図である。
【図13】本発明の第2実施形態のタイヤ製造方法を示す斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態のタイヤ製造方法に適用されるタイヤ製造用金型を示す断面図である。
【図15】本発明の第2実施形態のタイヤ製造方法に適用されるタイヤ製造用金型を示す一部を断面とした斜視図である。
【図16】本発明の第2実施形態のタイヤ用トレッドを示す斜視図である。
【図17】本発明における図1とは異なる構造のタイヤを示す概略断面図である。
【図18】図17に示すタイヤを構成するチューブを示す概略断面図である。
【図19】本発明における図1及び図17とは異なる構造のタイヤを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1の実施形態]
以下に、図面にしたがって本発明の第1実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態のタイヤ12は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
タイヤ12は、図1及び図2に示すように、ビードコア20が埋設されてリム18に接触されるタイヤビード部22から、タイヤ径方向外側に延びるタイヤサイド部24を経て、タイヤサイド部24同士を連結するタイヤセンター(クラウン部26)を備え、これらが本体用熱可塑性材料で構成されたタイヤ骨格部材14を備えている。そして、このタイヤ骨格部材14のタイヤ外周面側の位置、すなわちクラウン部26の外側に、ゴム製のトレッド16が貼り付けられて、車両のリム18に装着されるタイヤ12となる。
【0029】
ここで、本実施形態のタイヤ骨格部材14は、単一の熱可塑性材料で形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤ骨格部材14の各部位毎(タイヤサイド部24、クラウン部26、タイヤビード部22など)に異なる特徴を有する熱可塑性材料を用いてもよい。
また、本実施形態のタイヤ骨格部材14では、後述するように、タイヤ骨格部材14が2つの分割体14A、14Bを接合することで構成されており、接合面36が接合用熱可塑性材料38で接合されている。
【0030】
本体用熱可塑性材料及び接合用熱可塑性材料のいずれにおいても、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができるが、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
接合用熱可塑性材料38は、分割体14A、14Bを構成している熱可塑性材料と同種の熱可塑性材料であっても良いが、異種の熱可塑性材料であっても良い。同種の材料とすれば、タイヤ骨格部材14を全体として1つの熱可塑性材料で構成できるので、低コストとなる。また、異種材料とすれば、本体用熱可塑性材料と接合用熱可塑性材料との、それぞれ好ましい特性を有する材料とすることが可能である。
【0031】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられ、特に、一部ゴム系の樹脂が混錬されているTPVが好ましい。
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0032】
これらの熱可塑性材料としては、たとえば、ISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78℃以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張降伏伸びが10%以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸び(JIS K7113)が50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130℃以上であるものが用いられる。
【0033】
本実施形態のタイヤビード部22には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア20が埋設されている。しかし、本発明はこの構成に限定されず、タイヤビード部22の剛性が確保され、リムとの嵌合に問題なければ、ビードコア20は省略してもよい。なお、ビードコア20は、スチールコード等の金属製のものに限定されず、有機繊維を単独で用いたものや、有機繊維が樹脂被覆されたもの(有機繊維コード)、あるいは、硬質樹脂で成形された樹脂コードであってもよいが、特に本実施形態では、金属(磁性体)を有する構成としている。
【0034】
また、図2に示すように、本実施形態では、タイヤビード部22のリム18との接触部分、少なくともリム18のリムフランジ18Fと接触する部分に、タイヤ骨格部材14を形成する熱可塑性材料よりもシール性に優れた材料、例えば、ゴムあるいは樹脂からなる円環状のシール層28が形成されている。
シール層28を形成するゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、熱可塑性材料のみでリム18との間のシール性が確保できれば、ゴムのシール層28を省略してもよく、また、タイヤ骨格部材14を形成する熱可塑性材料よりもシール性に優れる他の種類の熱可塑性材料を用いてもよい。
【0035】
図1に示すように、クラウン部26には、タイヤ骨格部材14を形成する熱可塑性材料よりも剛性が高い補強コード34が、タイヤ骨格部材14の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部が埋設された状態で螺旋状に巻回されて補強コード層32が形成されている。また、補強コード34は、埋設された部分が熱可塑性材料と密着した状態となっている。この補強コード34としては、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いるとよい。なお、本実施形態では、補強コード34として、スチール繊維を撚ったスチールコードを用いている。なお、補強コード層32は、補強コード34を螺旋状に巻回して形成することが製造上容易であるが、タイヤ幅方向で補強コード34を不連続としても良い。
【0036】
タイヤ骨格部材14は、図1から分かるように、タイヤ赤道面またはその近傍面において2つに分割された分割体14A、14Bで構成されている。すなわち、分割体14A、14Bの突合せ部分が接合面36とされ、この接合面36が接合用熱可塑性材料38によって接合されて、全体として所定形状のタイヤ骨格部材14となる。
クラウン部26のタイヤ径方向外周側にはトレッド16が配置されており、本実施形態では、トレッド16が、トレッド16の外周部を構成するトレッド本体50と、トレッド本体50の内周面に形成された熱可塑性材料からなる接合層52と、を備えている。
【0037】
なお、トレッド本体50はタイヤ骨格部材14を形成している熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れた材料、本実施形態ではゴムからなり、このゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、トレッド本体50の外周部には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。
【0038】
以下に、図面にしたがって本実施形態に係るタイヤの製造方法を説明する。
図3に示すように、本実施形態では、トレッド本体50と接合層52とを備えた、帯状のタイヤ用トレッドとしてのPCT(Pre−Cured Tread)48を製造し、タイヤ骨格部材14の外周部に接合し、図1に示すトレッド16とする工程を有する製造方法である。
【0039】
・帯状PCTの製造方法
図4に示すように、PCT製造用金型60は上金型60Uと下金型60Sとで構成されており、これら上金型60Uと下金型60Sとは図4の紙面垂直方向に沿った長尺形状となっている。
従って、PCT製造用金型60内の下金型60S側となる位置に接合層52となる熱可塑性材料62のシートを配置し(敷いておき)、上金型60U側となる位置にトレッド本体50となる未加硫ゴム64を配置し(敷いて)、PCT製造用金型60内で加硫することで最終形状のPCT48を製造する。なお、接合層52となる熱可塑性材料62のシートの配置と未加硫ゴム64の配置の順番は逆でもよい。
この際、PCT48のトレッド本体50に、上金型60Uによって所定のトレッドパターンが形成される。
【0040】
なお、熱可塑性材料62のシートに代えて、PCT製造用金型内に熱可塑性材料62を押出し機によって流し込むことで、熱可塑性材料62の薄い層を形成してもよい。
また、熱可塑性材料62と未加硫ゴム64との間に接着剤からなる接着層66を挟んで(接着剤を1層或いは2層塗布して)、PCT製造用金型60内で加硫することで最終形状のPCT48を製造してもよい。なお、接着剤としては、塩化ゴム系接着剤、フェノール系樹脂接着剤、イソシアネート系接着剤、ハロゲン化ゴム系接着剤、トリアジンチオール系接着剤など、を用いることができる。
また、熱可塑性材料62と未加硫ゴム64との間にクッションゴム(接着用未加硫ゴム)からなる接着層66、又は接着剤とクッションゴム(接着用未加硫ゴム)とからなる接着層66を挟んで配置し、PCT製造用金型60内で加硫することで最終形状のPCT48を製造してもよい。
なお、未加硫ゴム64については、予め必要な幅と厚さに成形されたシート状の未加硫ゴム64をPCT製造用金型60内の下金型60S側となる位置に配置することができる。
【0041】
・帯状PCT48の他の製造方法
帯状PCT48の他の製造方法としては、図5(A)及び図6に示すように、トレッド本体50を成形する第1のトレッド用金型としてのPCT製造用金型70と、最終形状のPCT48を成形する第2のトレッド用金型としてのPCT製造用金型72とを使用してもよい。
即ち、トレッド本体50を成形するPCT製造用金型70は上金型70Uと下金型70Sとで構成されており、これら上金型70Uと下金型70Sとは図5(A)の紙面垂直方向に沿った長尺形状となっている。
【0042】
また、最終形状のPCT48を成形するPCT製造用金型72は上金型72Uと下金型72Sとで構成されており、これら上金型72Uと下金型72Sとは図6の紙面垂直方向に沿った長尺形状となっている。
従って、PCT製造用金型70内の下金型70S側と上金型70Uとの間にトレッド本体50となる未加硫ゴム74を配置し、又は流し込み、PCT製造用金型70内で加硫することでトレッド本体50を製造する。この際、トレッド本体50の上部には、上金型70Uによって所定のトレッドパターンが形成される。
【0043】
また、下金型70Sにおける未加硫ゴム74との接合部となる上面には、図7に示すような下金型70Sの長手方向に沿った複数の凸部78と凹部80とが交互に形成されており、凸部78の長手方向から見た断面形状は、根元部78Aの幅W1が頂部78Bの幅W2に比べて狭くなった(W1<W2)逆台形となっていることが好ましい。
従って、トレッド本体50の下面側には、下金型70Sの凸部78と凹部80に対応した凹凸が形成される。
【0044】
次に、トレッド本体50をPCT製造用金型70内から取し、図6に示すように、PCT製造用金型72内の上金型72U側に配置し、PCT製造用金型72内の下金型72Sとトレッド本体50との間に熱可塑性材料76を流し込み、加硫して、トレッド本体50の内周面に接合層52が形成されたPCT48を製造する。なお、この場合には、第1のトレッド用金型70の上金型70Uをそのまま利用し、下金型70Sを下金型72Sに交換することで最終形状のPCT48を製造することが可能になる。
【0045】
この際、トレッド本体50の下面側には、下金型70Sの凸部78と凹部80に対応した凹凸が形成されているため、熱可塑性材料76が流動しトレッド本体50の下面側の凹部に結合し(噛み込まれ)、所謂、アンカー効果によってトレッド本体50と接合層52とが接合(結合)される。
なお、図8に示すように、下金型70Sに形成する凸部78の長手方向から見た断面形状は、根元部78Aの幅W1が頂部78Bの幅W2と同じ(W1=W2)矩形状としてもよい。
【0046】
また、図9に示すように、下金型70Sに形成する凹部80の長手方向から見た断面形状が半円形状で、凸部78の頂部78Bの幅W2が根元部78Aの幅W1に比べて狭くなった(W1<W2)形状としてもよい。
また、下金型70Sにおける未加硫ゴム74との接合部となる上面に凹凸を設けず平面としてもよい。
【0047】
なお、この場合には、図6において、PCT製造用金型72内の下金型72S側に接合層52となる熱可塑性材料76のシートを配置し、熱可塑性材料76の上にPCT製造用金型70内から取した接合部に凹凸がないトレッド本体50を配置して、PCT製造用金型72内の下金型72Sと上金型72Uとの間で加硫する。この際、熱可塑性材料76と未加硫ゴム74との間に接着層66を挟んで加硫してもよい。
さらに、接着層66がクッションゴム(接着用未加硫ゴム)を含む場合には、加硫しきれないクッションゴムをPCT48とタイヤ骨格部材14との接合後、タイヤ全体を金型や加硫缶に入れて加硫してもよい。
【0048】
なお、帯状PCTの他の製造方法としては、先に接合層52を製造し、その後、最終形状のPCT48を製造してもよい。
即ち、図5(B)に示す接合層52を成形する第1のトレッド用金型71(下金型71Sと上金型71U)と、図6に示す最終形状のPCT48を成形する第2のトレッド用金型72とを使用する。この場合には、第1のトレッド用金型71内に熱可塑性材料76を配置し接合層52を成形し、第1のトレッド用金型71から取り出した接合層52と、トレッド本体50となる未加硫ゴム74とを第2のトレッド用金型72内に配置し、加硫することで最終形状のPCT48を製造することが可能になる。なお、この場合には、第1のトレッド用金型71の下金型71Sをそのまま利用し、上金型71Uを上金型72Uに交換することで最終形状のPCT48を製造することが可能になる。
【0049】
・帯状PCTとタイヤ骨格部材との接合方法
図3に示すように、本実施形態における帯状PCT48とタイヤ骨格部材14との接合方法は、帯状PCT48の下面(タイヤ骨格部材14の外周部に対向する側)に向けてヒーターとファンからなる加熱装置84で生成した熱風(図3の矢印W)を当て、PCT48の接合層52の下表面を溶融し、タイヤ骨格部材14を矢印A方向に回転させながら、PCT48を巻き付けることでPCT48の接合層52がタイヤ骨格部材14の外周面に接合される。
【0050】
なお、シリンダ等の移動手段(図示省略)で外周側から内周側(図3の矢印B方法)へ付勢されたローラ84でPCT48をタイヤ骨格部材14の外周部に向けて押し付けることで、PCT48の接合層52をタイヤ骨格部材14に確実に溶着させることができる。
また、熱風で加熱する代わりに、赤外線を照射して加熱しても良い。また、熱可塑性材料が軟化して互いに接合できれば、熱可塑性材料は必ずしも溶融させなくても良い。
また、PCT48の接合層52の下面と、タイヤ骨格部材14の外周部におけるPCT48の接合層52の溶着予定部位とに熱風を当て、各々の表面のみを溶融してからPCT48の接合層52をタイヤ骨格部材14に溶着しても良い。
また、再生タイヤで用いられるPCTの台タイヤへの接合に用いられる加硫缶による加熱によってPCT48の接合層52とタイヤ骨格部材14を溶着しても良い。
また、PCT48の長手方向両端部48Aの接合方法は、図10に示すように、タイヤ骨格部材14の半径方向に沿って平行配置された垂直端面同士の間に未加硫ゴム86を充填した状態で加硫する方法で接合する。
【0051】
なお、図11に示すように、PCT48の長手方向両端部48Aをタイヤ骨格部材14の半径方向に対して傾斜させることで接合面を広げ、平行配置された傾斜面同士の間に未加硫ゴム86を充填した状態で加硫する方法で接合してもよい。
【0052】
(作用及び効果)
上記説明から分かるように、本実施形態のタイヤ12ではその製造過程において、熱可塑性材料からなる(で形成された)タイヤ骨格部材14にPCT48を一体化するにあたり、PCT48を構成するトレッド本体50の内周面に熱可塑性材料からなる接合層52が接合されている。このため、トレッド本体50の内周面に設けた接合層52と、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材14との接合部が熱可塑性材料同士の接合となる。この結果、曲面となっているPCT48とタイヤ骨格部材14の接合部においても均一で安定した接合面を確保することが可能になり、タイヤ骨格部材14とトレッド16との接合強度を十分確保できる。
即ち、材質の違いによって互いに接合し難いPCT48のトレッド本体50と接合層52とは、PCT製造用金型60又はPCT製造用金型70、72を使用し平面状態で接合することで、均一で安定した接合面を確保することができると共に、曲面となっているタイヤ骨格部材14とPCT48との接合部においては、熱可塑性材料同士の接合とすることで、均一で安定した接合面を確保することができる。
【0053】
また、本実施形態のタイヤ骨格部材14は、上記したように、熱可塑性材料で構成されているため、所定以上の熱供給によって熱収縮や溶融により変形するおそれがある。しかし、本実施形態では、トレッド本体50と接合層52との加熱温度を上げることで、トレッド本体50と接合層52との安定した接合を確保することができる。また、タイヤ骨格部材14とPCT48とを接合する際には、前記所定以上の熱供給を行わずタイヤ骨格部材14とトレッド16との接合強度を十分確保できる。この結果、タイヤ骨格部材14への熱供給に起因する変形を抑制できる。
また、本実施形態では、タイヤ骨格部材14とPCT48とを接合する際に、従来必要とされていたタイヤ12の全体を加硫するための大型で高価な加硫装置が必要ない。また、サイズに応じて金型を用意する必要がない。
【0054】
[第2の実施形態]
以下に、図面にしたがって本発明の第2の実施形態を説明する。
図12及び図13に示すように、本実施形態は、図1に示すタイヤ12を製造する際に、環状(円環状)のタイヤ用トレッドとしてのPCT90をタイヤ骨格部材14の外周部に接合する工程を有するものである。
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0055】
・環状PCTの製造方法
図14に示すように、本実施形態のPCT製造用金型92は、複数(本実施形態では合計で2つ)の外金型部材92Sと、複数(本実施形態では合計で8つ)の内金型部材92Uとで構成されている。
図14及び図15に示すように、PCT90はトレッド本体91と接合層93とを有している。また、PCT製造用金型92の外金型部材92Sはタイヤ外周側から、PCT90のトレッド本体部91を隙間無く覆うことができる。
【0056】
図14に示すように、それぞれの外金型部材92Sは、押圧機構(図示省略)によって互いに当接する方向(図14の矢印A方向)と離間する方向(図14の矢印B方向)へ移動される。このため、PCT90を成形する際にはそれぞれの外金型部材92Sが当接状態となり、それぞれの外金型部材92Sを離間状態とすることで、PCT90から外金型部材92Sを外すことができる。
【0057】
図15に示すように、外金型部材92Sのそれぞれは、未加硫状態のPCT90のトレッド本体91を、タイヤ幅方向で全体に渡って接触し覆うことが可能な幅を有する形状とされている。
なお、図示を省略したが、外金型部材92Sのそれぞれにおける、PCT90のトレッド本体91との接触面には、所定のトレッドパターンを形成するための凹凸が形成されている。
【0058】
これに対し、内金型部材92Uは、図14から分かるように、PCT90の接合層93よりもタイヤ内周側で、周方向に交互に配置された複数ずつ(本実施形態では4つずつ)の内金型部材94、96を有している。これらのうち、4つの内金型部材94は、タイヤ内周側からタイヤ外周側に向かって先細り形状となる略台形状に形成されており、側面94Aがテーパー状とされている。そして、これら内金型部材94の間にもう一方の内金型部材96が配置されており、内金型部材96の側面96Aが内金型部材94の側面94Aに面接触している。
【0059】
内金型部材94は、さらにタイヤ内周側から押圧機構(図示省略)によって、タイヤ外周方向(図14の矢印C方向)とタイヤ内周方向(図14の矢印D方向)へ移動される。また、内金型部材94のタイヤ外周方向移動時には、内金型部材94の側面94Aが内金型部材96の側面96Aを押すので、内金型部材94、96が環状に配置される。
従って、図14に示すように、PCT製造用金型92の外金型部材92Sの内周部に、PCT90のトレッド本体91を形成する予め円環状につないだ未加硫ゴムを配置すると共に、この未加硫ゴムの内周面に接合層93を形成する熱可塑性材料を配置(例えば、溶融した熱可塑性材料をコーティング)し、外金型部材92Sと内金型部材92Uとで挟んで加硫し、環状のPCT90を製造する。なお、熱可塑性材料と未加硫ゴムとの間に接着剤と接着用未加硫ゴムとの少なくとも一方からなる接着層を挟んでもよい。
また、第1のトレッド用金型で環状のトレッド本体91のみを形成し、その後、第2のトレッド用金型でトレッド本体91と接合層93とを有する環状のPCT90を形成してもよい。この場合、外金型部材92Sはそのままで内金型部材94、96のみを交換してもよい。この際、第1のトレッド用金型で環状のトレッド本体91の内周部に複数の凹凸を形成し、第2のトレッド用金型内ではこれらの凹部に熱可塑性材料が結合し(噛み込まれ)、所謂、アンカー効果によってトレッド本体91と接合層93とが流動後接合(結合)されるようにしてもよい。
また、第1のトレッド用金型で環状の接合層93のみを形成し、その後、第2のトレッド用金型でトレッド本体91と接合層93とを有する環状のPCT90を形成してもよい。この場合、外金型部材92Sのみを交換してもよい。この際、第1のトレッド用金型で熱可塑性材料76からなる環状の接合層93の外周部に複数の凹凸を形成し、第2のトレッド用金型内ではこれらの凹部にトレッド本体91となるゴムが流動後結合し(噛み込まれ)、所謂、アンカー効果によってトレッド本体91と接合層93とが接合(結合)されるようにしてもよい。
なお、PCT90の外周部には、外金型部材92Sによって所定のトレッドパターンが形成される。
【0060】
一方、内金型部材94のタイヤ内周方向移動時には、内金型部材96に対するタイヤ外周側への押圧が解除され、内金型部材94、96を環状PCT90から外すことができ、図16に示すような、トレッド本体91の内周面に熱可塑性材料からなる接合層93が形成された環状PCT90が得られる。
【0061】
・環状PCTとタイヤ骨格部材との接合方法
本実施形態における環状PCT90とタイヤ骨格部材14との接合方法では、図12及び図13に示すように、環状PCT90治具100によって拡径し、拡径したPCT90の内周側に、タイヤ骨格部材14を配置する。
具体的に説明すると、治具100は円盤状の台座101の上面に、複数(本実施形態では合計で8つ)の移動ブロック102を備えている。これらの移動ブロック102は、シリンダ等の移動手段(図示省略)で台座101の内周方向(図12の矢印E方向)と外周方向(図12の矢印F方向)へ移動される。また、各移動ブロック102には、それぞれ複数(本実施形態では合計で2本)のピン104が立設されている。
【0062】
なお、全てのピン104は円形に沿った位置に配置されており、各移動ブロック102の移動によって、全てのピン104が台座101の内周方向(図12の矢印E方向)と外周方向(図12の矢印F方向)へ移動される。
従って、環状PCT90を全てのピン104の外周側に配置し、各移動ブロックを外周方向(図12の矢印F方向)へ移動することでPCT90を拡径する。その後、環状PCT90の内周面(タイヤ骨格部材14の外周部に対向する側)に加熱装置(図示省略)で生成した熱風を当て、PCT90の接合層93の内周面を溶融すると共に、タイヤ骨格部材14を拡径されたPCT90の内周側に配置する。
なお、タイヤ骨格部材14は、各移動ブロック102に設けたピン104と、台座101の内周部における円形に沿った位置に立設された複数のピン106との間に配置する。
【0063】
その後、各移動ブロックを内周方向(図12の矢印E方向)へ移動することでPCT90を縮径すると共に、全てのピン104、106をPCT90とタイヤ骨格部材14との間から引き抜くことで、PCT90の接合層93がタイヤ骨格部材14の外周面に接合される。
なお、環状PCT90の内周面を熱風で加熱する代わりに、赤外線を照射して加熱しても良い。なお、熱可塑性材料が軟化して互いに接合できれば、熱可塑性材料は必ずしも溶融させなくても良い。
また、PCT90の接合層93の内周面と、タイヤ骨格部材14の外周部におけるPCT90の接合層93の溶着予定部位とに熱風を当て、各々の表面のみを溶融してからPCT90の接合層93をタイヤ骨格部材14に溶着しても良い。また、再生タイヤで用いられるPCTの台タイヤへの接合に用いられる加硫缶による加熱によってPCT90の接合層93とタイヤ骨格部材14を溶着しても良い。
【0064】
(作用及び効果)
上記説明から分かるように、本実施形態のタイヤ12ではその製造過程において、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材14にPCT90を一体化するにあたり、PCT90を構成するトレッド本体91の内周面に熱可塑性材料からなる接合層93が接合されている。このため、PCT90に設けた接合層93と、熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材14との接合部が熱可塑性材料同士の接合となる。この結果、曲面となっているタイヤ骨格部材14の接合部においても均一で安定した接合面を確保することが可能になり、タイヤ骨格部材14とトレッド16との接合強度を十分確保できる。
【0065】
即ち、本実施形態のタイヤ骨格部材14は、上記したように、熱可塑性材料で構成されているため、所定以上の熱供給によって熱収縮や溶融により変形するおそれがある。しかし、本実施形態では、トレッド本体91と接合層93との加硫温度を上げることで、トレッド本体91と接合層93との安定した接合を確保することができる。また、タイヤ骨格部材14とPCT90とを接合する際には、前記所定以上の熱供給を行わずタイヤ骨格部材14とトレッド16との接合強度を十分確保できる。この結果、タイヤ骨格部材14への熱供給に起因する変形を抑制できる。
また、本実施形態では、タイヤ骨格部材14とPCT90とを接合する際に、従来必要とされていたタイヤ12の全体を加硫するための大型で高価な加硫装置が必要ない。また、サイズに応じて金型を用意する必要がない。
【0066】
[その他の実施形態]
上記実施形態のタイヤ12は、チューブレスタイプのタイヤであったが、図17に示すように、本実施形態のタイヤ112は、熱可塑性材料からなる円環状とされた中空のチューブ120をタイヤ幅方向に複数本(本実施形態では3本)配置し、それらの外周部分に、トレッド16の外周部を構成するベルト122を埋設したトレッド本体50と、トレッド本体50の内周面に形成された熱可塑性材料からなる接合層52と、を備えたトレッド16が接合された構成であり、チューブ120に係合する凹部を備えたリム124に装着されるものである。なお、このタイヤ112にはビードコアは設けられていない。
【0067】
なお、チューブ120は、図18に示すように、断面半円形状のチューブ半体120Aを互いに向き合わせて溶接用熱可塑性材料126で溶接したり、図示はしないが溶着シートで接合することもできる。
また、タイヤ132は、図19に示すように、1本のチューブ130(2つのチューブ半体130Aからなる)を用い、そのチューブ130の外周部分に、トレッド16の外周部を構成するベルト122を埋設したトレッド本体50と、トレッド本体50の内周面に形成された熱可塑性材料からなる接合層52と、を備えたトレッド16が接合された構成とすることもできる。
【0068】
いずれの構造のタイヤ112、132においても、図3又は図12、図13に示す方法で、帯状PCT48又は環状PCT90を製造し、タイヤ骨格部材114の外周部に接合することができる。
また、上記各実施形態では、加硫済み(トレッドパターンも形成されている)のPCT48、90をタイヤ骨格部材に接合する場合のタイヤ製造方法を挙げているが、半加硫状態のトレッドをタイヤ骨格部材に接着する接着してもよい。
なお、ゴム製のトレッド16の代わりに、タイヤ骨格部材を形成する熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性材料で形成したトレッドを用いてもよい。
また、タイヤ骨格部材(例えば、タイヤビード部22、タイヤサイド部24、クラウン部26等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤ骨格部材を補強してもよい。
また、上記実施形態で説明した製造工程の順番は一例であり、各工程の順番を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0069】
12 タイヤ
14 タイヤ骨格部材
16 トレッド
18 リム
20 ビードコア
22 タイヤビード部
24 タイヤサイド部
26 クラウン部
32 補強コード層
34 補強コード
36 接合面
38 接合用熱可塑性材料
48 帯状PCT(タイヤ用トレッド)
50 トレッド本体
52 接合層
60 PCT製造用金型
62 熱可塑性材料
64 未加硫ゴム
66 接着層
70 PCT製造用金型(第1のトレッド用金型)
72 PCT製造用金型(第2のトレッド用金型)
74 トレッド本体
76 熱可塑性材料
78 凸部
80 凹部
84 加熱装置
86 未加硫ゴム
90 環状のPCT(タイヤ用トレッド)
91 トレッド本体
93 接合層
92 PCT製造用金型
94 内金型部材
96 内金型部材
100 治具
112 タイヤ
114 タイヤ骨格部材
120 チューブ
130 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層を有するタイヤ用トレッド。
【請求項2】
熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材と、
前記タイヤ骨格部材の外周面側の位置に設けられたトレッド本体と、
熱可塑性材料からなり前記トレッド本体の内周面に形成され、前記タイヤ骨格部材の外周部と接合された接合層と、
を有するタイヤ。
【請求項3】
トレッド用金型内に熱可塑性材料と未加硫ゴムとを配置し、加硫することでトレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する工程と、
前記タイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する工程と、
を含むタイヤの製造方法。
【請求項4】
第1のトレッド用金型内に未加硫ゴムを配置し、加硫することでトレッド本体を製造する工程と、
第2のトレッド用金型内に熱可塑性材料と前記トレッド本体とを配置し、加硫することで前記トレッド本体の内周面に前記熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する工程と、
前記タイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する工程と、
を含むタイヤの製造方法。
【請求項5】
第1のトレッド用金型内に熱可塑性材料を配置し、熱可塑性材料からなる接合層を製造する工程と、
第2のトレッド用金型内にトレッド本体となる未加硫ゴムと前記接合層とを配置し、加硫することで前記トレッド本体の内周面に前記接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する工程と、
前記タイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する工程と、
を含むタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性材料と前記トレッド本体の間に接着剤を塗布した請求項3〜5の何れか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性材料と前記トレッド本体の間に接着用未加硫ゴムを配置した請求項3〜5の何れか1項に記載のタイヤ用の製造方法。
【請求項8】
第1のトレッド用金型内に未加硫ゴムを配置し、加硫することで内周面側に凹凸を有するトレッド本体を形成する工程と、
第2のトレッド用金型内に熱可塑性材料と前記トレッド本体とを配置し、加硫することで前記トレッド本体の凹凸と前記熱可塑性材料とを接合させトレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する工程と、
前記タイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する工程と、
を含むタイヤの製造方法。
【請求項9】
第1のトレッド用金型内に熱可塑性材料を配置し、外周面側に凹凸を有する接合層を形成する工程と、
第2のトレッド用金型内にトレッド本体となる未加硫ゴムと前記接合層とを配置し、加硫することで前記接合層の凹凸と前記未加硫ゴムとを接合させトレッド本体の内周面に熱可塑性材料からなる接合層が形成されたタイヤ用トレッドを製造する工程と、
前記タイヤ用トレッドを熱可塑性材料からなるタイヤ骨格部材の外周部に接合する工程と、
を含むタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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