説明

タイヤ管理装置及びタイヤ管理プログラム

【課題】運輸業者の車両など、多数のタイヤがほぼ同一の環境下において使用される場合において、タイヤの寿命を延ばすために当該タイヤに共通な対応策を提示できるタイヤ管理装置及びタイヤ管理プログラムを提供する。
【解決手段】本発明に係るタイヤ管理装置200は、使用済タイヤの診断結果と、使用中タイヤの診断結果とに基づいて、両診断結果とが一致するか否かを判定するタイヤ状態判定部209と、対応策データベースに基づいて、使用済タイヤの診断結果と関連付けられている対応策を決定する対応策決定部213とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に装着される空気入りタイヤを管理するタイヤ管理装置及びタイヤ管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に装着される空気入りタイヤ(以下、タイヤと適宜省略する)では、偏摩耗を抑制することが寿命を延ばすために重要である。そこで、スキャナで読み取ったタイヤの外形形状に基づいて、タイヤの摩耗状態を判定するタイヤ管理装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、この偏摩耗管理装置は、タイヤの偏摩耗の種類に応じた対応策、例えば、適正内圧の維持・管理やタイヤ装着位置の交換(タイヤローテーション)を提示することもできる。このため、タイヤの販売店の作業者や車両の使用者は、格別な知識や経験がなくともタイヤの寿命を延ばすために有効な対応策を講じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4290406号公報(第6−7頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、運輸業者などでは、近年の競争の激化や地球環境への配慮の高まりに伴って、運輸業者が業務で使用するトラックやバスに装着される多数のタイヤについて、寿命を延ばすための包括的な対応策、つまり、当該多数のタイヤに共通するような対応策の提示が求められている。
【0006】
しかしながら、上述した従来のタイヤ管理装置は、基本的に車両に装着されているタイヤの摩耗状態を判定し、そのタイヤの寿命を延ばすための対応策が提示されるのみであるため、上述のような包括的な対応策の提示には適さない問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、運輸業者の車両など、多数のタイヤがほぼ同一の環境下において使用される場合において、タイヤの寿命を延ばすために当該タイヤに共通な対応策を提示できるタイヤ管理装置及びタイヤ管理プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタイヤ管理装置(タイヤ管理装置200)は、車両(例えば、車両31)に装着されて使用された結果、前記車両から取り外された複数本数の使用済タイヤ(使用済タイヤ10)の外観状態に基づいて決定された前記使用済タイヤの診断結果を含む使用済タイヤデータベース(使用済タイヤDB207)と、前記車両または前記車両と同一環境で使用される車両(例えば、車両32)に装着されている複数本数の使用中タイヤ(使用中タイヤ20)の外観状態に基づいて、前記使用中タイヤの診断結果を取得する使用中タイヤ状態取得部(使用中タイヤ状態取得部203)と、前記使用済タイヤの診断結果と、前記使用済タイヤの診断結果に対応した対応策とが関連付けられた対応策データベース(対応策DB211)と、前記使用済タイヤデータベースに含まれる前記使用済タイヤの診断結果と、前記使用中タイヤ状態取得部によって取得された前記使用中タイヤの診断結果とが一致するか否かを判定するタイヤ状態判定部(タイヤ状態判定部209)と、前記使用済タイヤの診断結果と前記使用中タイヤの診断結果とが前記タイヤ状態判定部によって一致すると判定された場合、前記対応策データベースに基づいて、前記使用済タイヤの診断結果と関連付けられている前記対応策を決定する対応策決定部(対応策決定部213)と、前記対応策決定部によって決定された前記対応策を出力する対応策出力部(対応策出力部215)とを備える。
【0009】
なお、使用済タイヤ及び使用中タイヤの診断結果は、偏摩耗の状態(センター摩耗、肩落ち摩耗、ヒール&トゥ摩耗など)及びトレッド部の外傷の有無を含む。さらに、使用済タイヤの診断結果は、プライエンドのセパレーションの有無、及びビードの食い込み、倒れ込みを含む。また、対応策は、内圧の管理(設定内圧の低下または上昇)、タイヤローテーションの頻度増加、棄却溝の管理を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の特徴によれば、運輸業者の車両など、多数のタイヤがほぼ同一の環境下において使用される場合において、タイヤの寿命を延ばすために当該タイヤに共通な対応策を提示できるタイヤ管理装置及びタイヤ管理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るタイヤ管理装置200を含むタイヤ管理システム50の全体概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るタイヤ管理装置200の機能ブロック構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る使用中タイヤDB205及び使用済タイヤDB207の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る対応策DB211の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るタイヤ管理装置200の動作フローを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る対応策出力部215によって出力される対応策の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係るタイヤ管理装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0013】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0014】
(1)タイヤ管理装置を含むタイヤ管理システムの全体概略構成
図1は、本実施形態に係るタイヤ管理装置200を含むタイヤ管理システム50の全体概略構成図である。図1に示すように、タイヤ管理システム50は、測定ツール100とタイヤ管理装置200とによって構成される。
【0015】
測定ツール100は、車両31〜車両33に装着されている使用中タイヤ20の残溝深さや内圧を測定することができる。測定ツール100は、測定した残溝深さや内圧のデータを無線通信により、タイヤ管理装置200に送信することができる。なお、測定した残溝深さや内圧のデータを、無線通信ではなく、有線による通信でタイヤ管理装置200に送信してもよい。また、SDカード等の記録媒体によってタイヤ管理装置200にデータの受け渡しを行ってもよい。
【0016】
タイヤ管理装置200は、車両31〜車両33に装着されて一定期間(距離)使用された使用済タイヤ10の摩耗状態などに基づいて決定された使用済タイヤ10の診断結果と、車両31〜車両33に現在装着されている使用中タイヤ20の摩耗状態などに基づいて決定された使用中タイヤ20の診断結果とに基づいて、好ましい使用中タイヤ20の管理方法を提示する。
【0017】
車両31〜車両33は、特定の運輸業者が使用するトラックやバスの大型自動車である。車両31〜車両33は、原則として同一環境で使用される。なお、「同一環境」とは、設定内圧やタイヤローテーションの頻度が同等であること、積載重量や走行路線(高速道路主体、一般道路主体、未舗装路などの悪路主体)が同等であることを意味する。
【0018】
使用済タイヤ10は、車両31〜車両33に装着されて使用された結果、使用限界と判断されたタイヤである。つまり、使用済タイヤ10は、例えば、使用済タイヤ10には、トレッドの残溝深さが規定値(3.2mmまたは1.6mm)以下の使用限界となり、車両31〜車両33から取り外されたタイヤや、タイヤサイド部のカットなどの外傷によって使用不可と判断され、車両31〜車両33から取り外されたタイヤが含まれる。
【0019】
本実施形態では、使用済タイヤ10のそれぞれについて、残溝深さ、偏摩耗状態、外傷の有無(トレッド部及びタイヤサイド部)、ビードの状態及び廃棄理由が点検される。これらの点検は、作業者の目視によって行われる。なお、点検項目の一部(残溝深さ)は、測定ツール100を用いて取得することもできる。作業者は、取得した使用済タイヤ10の点検データをタイヤ管理装置200に入力する。
【0020】
使用中タイヤ20は、車両31〜車両33に現在装着されているタイヤである。本実施形態では、使用中タイヤ20のそれぞれについて、残溝深さ、偏摩耗状態、外傷の有無(トレッド部及びタイヤサイド部)、設定内圧(使用中タイヤ20に充填されている気体の圧力)、タイヤローテーションの頻度及び車両へのタイヤ装着時からの走行距離が点検される。作業者は、取得した使用中タイヤ20の点検データをタイヤ管理装置200に入力する。なお、タイヤ管理装置200は、点検項目の一部(残溝深さ及び内圧)のデータを測定ツール100から取得する。
【0021】
また、タイヤ管理装置200は、車両31〜車両33の識別番号、車輪配列、走行路線、燃費などを取得することもできる。さらに、タイヤ管理装置200は、使用済タイヤ10及び使用中タイヤ20のメーカー、サイズ、トレッドパターン及びシリアル番号などを取得することもできる。
【0022】
(2)タイヤ管理装置の機能ブロック構成
図2は、タイヤ管理装置200の機能ブロック構成図である。図2に示すように、タイヤ管理装置200は、使用済タイヤ状態取得部201、使用中タイヤ状態取得部203、使用中タイヤDB205、使用済タイヤDB207、タイヤ状態判定部209、対応策DB211、対応策決定部213及び対応策出力部215を備える。
【0023】
使用済タイヤ状態取得部201は、作業者が点検した使用済タイヤ10の点検データを取得する。使用済タイヤ状態取得部201は、キーボード、マウス、及び測定ツール100から送信される情報を受信する無線通信インタフェースなどのうち、作業環境に応じた適切なハードウェアが用いられる。使用済タイヤ状態取得部201は、40本以上の使用済タイヤ10について上述した点検データを取得することが好ましい。
【0024】
このように、使用済タイヤ状態取得部201は、複数本数の使用済タイヤ10の外観状態に基づいて決定された使用済タイヤ10の診断結果を取得する。具体的には、使用済タイヤ状態取得部201は、使用済タイヤ10の診断結果として、偏摩耗の状態(センター摩耗、肩落ち摩耗、ヒール&トゥ摩耗など)、トレッド部の外傷の有無、プライエンドのセパレーションの有無、及びビードの食い込み、倒れ込みを取得する。この診断結果は、作業者の目視によって診断されたものである。「ビードの食い込み」とは、ビードの側部がリムフランジに食い込むような状態をいう。また、「ビードの倒れ込み」とは、ビードがリムフランジよりもタイヤ幅方向外側(または内側)に倒れた状態をいう。なお、使用済タイヤ状態取得部201は、測定ツール100が測定する残溝のデータに基づいて、測定ツール100が偏摩耗の状態などを判定していもよい。
【0025】
使用中タイヤ状態取得部203は、作業者が点検した使用中タイヤ20の点検データを取得する。使用中タイヤ状態取得部203は、キーボード、マウス及び測定ツール100から送信される情報(残溝深さ及び設定内圧)を受信する無線通信インタフェースなどのうち、作業環境に応じた適切なハードウェアが用いられる。使用中タイヤ状態取得部203は、車両31〜車両33に現在装着されている使用中タイヤ20の70%以上について、使用中タイヤ20の設定内圧を含む上述した点検データを取得することが好ましい。
【0026】
このように、使用中タイヤ状態取得部203は、使用済タイヤ状態取得部201と同様に、複数本数の使用中タイヤ20の外観状態に基づいて決定された使用中タイヤ20の診断結果を取得する。具体的には、使用中タイヤ状態取得部203は、使用中タイヤ20の診断結果として、偏摩耗の状態(センター摩耗、肩落ち摩耗、ヒール&トゥ摩耗など)及びトレッド部の外傷の有無を取得する。この診断結果は、作業者の目視によって診断されたものである。なお、測定ツール100が測定する残溝及び設定内圧のデータに基づいて、測定ツール100が偏摩耗の状態を判定していもよい。
【0027】
また、使用中タイヤ状態取得部203は、使用中タイヤ20の使用条件を取得することもできる。なお、「使用条件」には、設定内圧、タイヤローテーションの頻度及び車両へのタイヤ装着時からの走行距離が含まれる。
【0028】
使用中タイヤDB205は、使用中タイヤ状態取得部203によって取得された点検データによって構成される。図3(a)は、使用中タイヤDB205の一例を示す。使用中タイヤDB205では、残溝深さ及び外観などのデータで構成される。残溝深さは、車両装着外側から内側に向かう複数箇所において測定された値が保持される。また、外観には、偏摩耗の種類(センター摩耗、ヒール&トゥ摩耗及び肩落ち摩耗など)、及び外傷の有無などが含まれる。
【0029】
なお、使用中タイヤ20では、「ビードの状態」(食い込み、倒れ込み)を点検することができないため、使用中タイヤDB205では、当該項目には何らデータが含まれない。また、「廃棄理由」についても該当しないため、使用中タイヤDB205では、当該項目にも何らデータが含まれない。なお、図中の「−」は、当該項目が対象外であること、「×」は、当該項目に該当することを示す。
【0030】
使用済タイヤDB207は、使用済タイヤ状態取得部201によって取得された点検データによって構成される。図3(b)は、使用済タイヤDB207の一例を示す。使用済タイヤDB207の構成は、使用中タイヤDB205の構成と概ね同様であるが、「ビードの状態」及び「廃棄理由」がさらに含まれる。
【0031】
一方、使用済タイヤ10では、「設定内圧」を点検することができないため、使用済タイヤDB207では、当該項目には何らデータが含まれない。
【0032】
このように、使用済タイヤDB207は、車両31〜車両33に装着されて使用された結果、使用限界と判断されて車両31〜車両33(及びリムホイール)から取り外された複数本数の使用済タイヤ10の外観状態に基づいて決定された使用済タイヤ10の診断結果が含まれる。
【0033】
タイヤ状態判定部209は、使用済タイヤDB207に含まれる使用済タイヤ10の診断結果と、使用中タイヤ状態取得部203によって取得され、使用中タイヤDB205に含まれる使用中タイヤ20の診断結果とが一致するか否かを判定する。
【0034】
具体的には、タイヤ状態判定部209は、使用済タイヤ10の偏摩耗状態と、使用中タイヤ20の偏摩耗状態とに基づいて、両方の偏摩耗状態が一致するか否かを判定する。ここで、タイヤ状態判定部209は、複数本数(40本以上が好ましい)の使用済タイヤ10に基づいて、本数の最も多い偏摩耗(例えば、センター摩耗)を、使用済タイヤ10の偏摩耗状態とする。同様に、タイヤ状態判定部209は、車両31〜車両33に装着されている複数本数の使用中タイヤ20に基づいて、本数の最も多い偏摩耗を、使用中タイヤ20の偏摩耗状態とする。
【0035】
また、タイヤ状態判定部209は、同一のタイヤサイズ毎に、上述した偏摩耗状態が一致するか否かを判定してもよい。或いは、タイヤ状態判定部209は、使用中タイヤ20の使用条件毎に、上述した偏摩耗状態が一致するか否かを判定してもよい。
【0036】
さらに、タイヤ状態判定部209は、使用済タイヤ10の診断結果と、使用中タイヤ20の診断結果とに基づいて、使用中タイヤ20の寿命を短くする原因を予測することもできる。具体的には、タイヤ状態判定部209は、使用済タイヤ10及び使用中タイヤ20の診断結果と、当該診断結果から推測される原因(仮説)との関連付けに基づいて、使用中タイヤ20の寿命を短くする原因を予測する。本実施形態では、タイヤ状態判定部209は、対応策DB211に基づいて使用中タイヤ20の寿命を短くする原因を予測する。
【0037】
図4は、対応策DB211の一例を示す。図4に示すように、対応策DB211では、使用済タイヤ10及び使用中タイヤ20の診断結果(例えば、センター摩耗)と、使用中タイヤ20の寿命を短くする原因(例えば、高内圧)と、当該原因に対応した対応策(内圧管理)とが対応が関連付けられている。
【0038】
タイヤ状態判定部209は、対応策DB211に基づいて、使用済タイヤ10の診断結果と使用中タイヤ20の診断結果とから当該原因を判定する。具体的には、診断結果が「センター摩耗」の場合、原因として「高内圧」及び「ローテーション不足」が関連付けられる。また、対応策として「内圧管理」(設定内圧を低下)が「高内圧」と関連付けられ、「ローテーション頻度増加」が「ローテーション不足」と関連付けられる。
【0039】
診断結果が「外傷(トレッド部)」の場合、原因として「高内圧」及び「使用過多」が関連付けられる。また、対応策として「ローテーション頻度増加」が「使用過多」と関連付けられる。これにより、使用中タイヤ20が使用過多の状態になることを回避し得る。なお、残溝深さが3.2mm(または1.6mm)以下であれば、「使用過多」と判定されるようにしてもよい。
【0040】
診断結果が「パンク多発」の場合、原因として「高内圧」が関連付けられる。また、「パンク多発」の原因として非舗装路などの悪路走行を関連付けてもよい。この場合、車両31〜車両33の走行路線などを取得しておく必要がある。さらに、悪路走行が多い場合には、車両31〜車両33の使用者(運輸業者)への注意喚起や、車両31〜車両33に装着されるトレッドパターンの変更を提案してもよい。
【0041】
一方、診断結果が「肩落ち摩耗、ヒール&トゥ摩耗、波状摩耗」などの低内圧起因摩耗の場合、原因として「低内圧」及び「ローテーション不足」が関連付けられる。また、対応策として「内圧管理」(設定内圧を上昇)が「低内圧」と関連付けられ、「ローテーション頻度増加」が「ローテーション不足」と関連付けられる。
【0042】
診断結果が「外傷(タイヤサイド部)、プライエンドのセパレーション、ビード倒れ込み」の場合、原因として「低内圧」及び「過荷重」が関連付けられる。また、対応策として「内圧管理」(設定内圧を上昇)が「低内圧」と関連付けられ、「ローテーション頻度増加」が「過荷重」と関連付けられる。これにより、使用中タイヤ20が過荷重による劣化を抑制し得る。
【0043】
また、タイヤ状態判定部209は、使用済タイヤ10の診断結果と、使用中タイヤ20の診断結果と、使用中タイヤ20の使用条件(設定内圧やタイヤローテーションの頻度など)とに基づいて、原因を判定することもできる。具体的には、タイヤ状態判定部209は、複数の原因が判定された場合、使用中タイヤ20の使用条件に基づいて原因を絞り込む。
【0044】
例えば、タイヤ状態判定部209は、使用済タイヤ10及び使用中タイヤ20の診断結果が「センター摩耗」であり、判定した原因が「高内圧」と「タイヤローテーション不足」である場合(図4参照)において、使用中タイヤ20のタイヤローテーションは適切に実施されており、設定内圧が高内圧である場合、「高内圧」を原因として選択する。また、使用済タイヤ10及び使用中タイヤ20の診断結果が「センター摩耗」であり、判定した原因が「高内圧」と「タイヤローテーション不足」である場合において、使用中タイヤ20の内圧管理は適切に実施されており、タイヤローテーションが不足している場合、「タイヤローテーション不足」を原因として選択する。
【0045】
このように、タイヤ状態判定部209は、使用済タイヤ10及び使用中タイヤ20の診断結果と、判定した複数の原因とに基づいて、当該原因の何れかに絞り込むことができる。
【0046】
また、タイヤ状態判定部209は、使用済タイヤ10の診断結果と、使用中タイヤ20の診断結果とが一致しない場合、車両特有或いはタイヤ特有の原因による結果と判定し、車両特有或いはタイヤ特有の原因による結果である可能性が高いことを示す情報を対応策出力部215から出力させる。
【0047】
対応策決定部213は、使用済タイヤ10の診断結果と使用中タイヤ20の診断結果とがタイヤ状態判定部209によって一致すると判定された場合、対応策DB211に基づいて、使用済タイヤ10の診断結果と関連付けられている対応策を決定する。例えば、対応策決定部213は、タイヤ状態判定部209による診断結果と、対応策DB211(図4参照)とに基づいて、設定内圧の管理またはタイヤローテーション頻度増加(棄却溝の管理を含む)の何れかの対応策を決定する。
【0048】
なお、高内圧(低内圧)が原因と判定された場合には、これまでよりも設定内圧を低下(上昇)させる内圧管理方法が対応策として提示される。また、タイヤローテーションの頻度増加が対応策として決定された場合、偏摩耗を確実に抑制するため、棄却溝の管理が合わせて提示される。なお、棄却溝とは、使用中タイヤ20が使用限界として棄却される時点の溝深さである。
【0049】
対応策出力部215は、対応策決定部213によって決定された対応策を出力する。具体的には、対応策出力部215は、当該対応策をタイヤ管理装置200のディスプレイ(不図示)に表示したり、プリンタ(不図示)に出力したりすることができる。
【0050】
図6は、対応策出力部215によって出力される対応策の一例を示す。なお、図6に示す例では、対応策に加えて、摩耗状況、内圧分布及び原因が含まれているが、これらの内容は、含まれていなくても構わない。
【0051】
(3)タイヤ管理装置の動作
図5は、上述したタイヤ管理装置200の動作フローを示す。具体的には、図5は、タイヤ管理装置200が使用済タイヤ10及び使用中タイヤ20の診断結果などに基づいて、使用中タイヤ20の寿命を延ばすことに寄与する対応策を表示する動作フローを示す。
【0052】
図5に示すように、ステップS10において、タイヤ管理装置200は、使用済タイヤ10の診断結果(点検データ)を取得する。上述したように、タイヤ管理装置200は、使用済タイヤ10の偏摩耗の状態やトレッドの外傷の有無などを取得する。
【0053】
ステップS20において、タイヤ管理装置200は、使用中タイヤ20の診断結果(点検データ)を取得する。タイヤ管理装置200は、使用済タイヤ10と同様に、使用中タイヤ20の偏摩耗の状態やトレッドの外傷の有無などを取得する。
【0054】
ステップS30において、タイヤ管理装置200は、使用中タイヤ20の使用条件を取得する。上述したように、タイヤ管理装置200は、使用中タイヤ20の設定内圧及びタイヤローテーションの頻度を取得する。
【0055】
ステップS40において、タイヤ管理装置200は、使用済タイヤ10及び使用中タイヤ20について、管理に必要な本数分の点検データを取得したかを判定する。具体的には、タイヤ管理装置200は、使用済タイヤ10について40本以上、使用中タイヤ20の70%以上について、点検データを取得することが好ましい。
【0056】
管理に必要な本数分の点検データを取得した場合(ステップS40のYES)、ステップS50において、タイヤ管理装置200は、使用済タイヤ10の診断結果と、使用中タイヤ20の診断結果とを比較する。例えば、タイヤ管理装置200は、使用済タイヤ10の診断結果としてセンター摩耗が最も多い場合、使用中タイヤ20の診断結果としてセンター摩耗が最も多いか否かを判定する。また、タイヤ管理装置200は、比較する診断結果として、外傷の有無など(図4参照)を用いることもできる。
【0057】
ステップS60において、タイヤ管理装置200は、使用済タイヤ10の診断結果と、使用中タイヤ20の診断結果とが一致するか否かを判定する。
【0058】
両方の診断結果が一致する場合(ステップS60のYES)、ステップS70において、タイヤ管理装置200は、使用済タイヤ10の診断結果と、使用中タイヤ20の診断結果とに基づいて、使用中タイヤ20の寿命を短くする原因を予測する。具体的には、タイヤ管理装置200は、対応策DB211(図4参照)に基づいて当該原因を予測する。
【0059】
ステップS80において、タイヤ管理装置200は、予測した原因に応じた対応策を決定する。具体的には、タイヤ管理装置200は、対応策DB211に基づいて対応策を決定する。例えば、ステップS70において高内圧が原因として予測されていた場合、タイヤ管理装置200は、対応策として内圧管理(設定内圧を低下)を選択する。
【0060】
ステップS90において、タイヤ管理装置200は、決定した対応策(図6)をディスプレイに表示したり、プリンタに出力したりする。図4に示すように、タイヤ管理装置200は、内圧管理またはローテーション頻度の増加を対応策として提示する。
【0061】
内圧管理には、診断結果及び原因に応じて、設定内圧を低下または上昇させる方法が含まれる。合わせて、タイヤ管理装置200は、内圧管理を実行すべき時期(頻度)及び設定内圧の数値も提示することができる。また、タイヤ管理装置200は、使用中タイヤ20の寿命を延ばすため、空気に代えて窒素を充填することを推奨することができる。
【0062】
タイヤローテーション管理の場合、タイヤ管理装置200は、タイヤローテーションを実行すべき時期(頻度)を提示することができる。
【0063】
両方の診断結果が一致しない場合(ステップS60のNO)、ステップS100において、タイヤ管理装置200は、車両特有或いはタイヤ特有の原因による結果と判定し、車両特有或いはタイヤ特有の原因による結果である可能性が高いことを表示する。
【0064】
(4)作用・効果
以上説明したタイヤ管理装置200によれば、使用済タイヤ10の診断結果と、使用中タイヤ20の診断結果とに基づいて、両方の診断結果が一致するか否かを判定される。さらに、両方の診断結果が一致すると判定された場合、偏摩耗などを抑制し、使用中タイヤ20の寿命を延ばす対応策が提示される。
【0065】
このため、運輸業者の車両など、多数のタイヤがほぼ同一の環境下において使用される場合において、タイヤの寿命を延ばすために当該タイヤに共通な対応策を提示できる。
【0066】
このような対応策に従えば、使用中タイヤ20の不具合を未然に防止でき、使用中タイヤ20の寿命を確実に延ばすことが可能となる。したがって、車両31〜車両33を使用する運輸業者では、タイヤに係るコストを抑制できる。さらに、設定内圧が低内圧であったことが判明した場合には、設定内圧が適正化されることによって、車両31〜車両33の燃費も改善し得る。
【0067】
また、このような対応策に従えば、使用中タイヤ20の偏摩耗や使用過多を回避できるため、リトレッドタイヤの台タイヤの確保が容易となる。さらに、タイヤ管理装置200に蓄積された使用済タイヤ10の診断結果と、使用中タイヤ20の診断結果とのデータベースは、新たなタイヤの研究・開発に活用できる。
【0068】
本実施形態では、タイヤ管理装置200において、使用済タイヤ10及び使用中タイヤ20の診断結果と、使用中タイヤ20の寿命を短くする原因と、当該原因に対応した対応策とが関連付けられている。このため、診断結果に基づく原因が提示されるため、タイヤ管理装置200のユーザは、当該原因に応じた独自の対応策などを検討することもできる。
【0069】
本実施形態では、タイヤ管理装置200において、使用済タイヤ10及び使用中タイヤ20の診断結果と使用中タイヤ20の使用条件(設定内圧など)とに基づいて、使用中タイヤ20の寿命を短くする原因が判定される。このため、当該原因を絞り込むことができる。
【0070】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0071】
例えば、上述した実施形態では、タイヤ管理装置200が使用中タイヤ20の使用条件に基づいて原因を絞り込んでいたが、このような使用条件は必須ではない。また、上述した実施形態では、タイヤ管理装置200では、使用済タイヤ10及び使用中タイヤ20の診断結果と、使用中タイヤ20の寿命を短くする原因と、当該原因に対応した対応策とが関連付けられていたが、診断結果と対応策が直接関連付けられていてもよい。つまり、使用済タイヤ10の診断結果と、使用済タイヤ10の診断結果に対応した対応策とが関連付けられた対応策データベースとしてもよい。
【0072】
また、上述した実施形態では、タイヤ管理装置200に使用中タイヤDB205が設けられていたが、使用中タイヤDB205を設けずに、使用中タイヤDB205と使用済タイヤDB207とを同一のデータベースとして構築しても構わない。
【0073】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0074】
10…使用済タイヤ、20…使用中タイヤ、31〜33…車両、50…タイヤ管理システム、100…測定ツール、200…タイヤ管理装置、201…使用済タイヤ状態取得部、203…使用中タイヤ状態取得部、205…使用中タイヤDB、207…使用済タイヤDB、209…タイヤ状態判定部、211…対応策DB、213…対応策決定部、215…対応策出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着されて使用された結果、前記車両から取り外された複数本数の使用済タイヤの外観状態に基づいて決定された前記使用済タイヤの診断結果を含む使用済タイヤデータベースと、
前記車両または前記車両と同一環境で使用される車両に装着されている複数本数の使用中タイヤの外観状態に基づいて決定された前記使用中タイヤの診断結果を取得する使用中タイヤ状態取得部と、
前記使用済タイヤの診断結果と、前記使用済タイヤの診断結果に対応した対応策とが関連付けられた対応策データベースと、
前記使用済タイヤデータベースに含まれる前記使用済タイヤの診断結果と、前記使用中タイヤ状態取得部によって取得された前記使用中タイヤの診断結果とが一致するか否かを判定するタイヤ状態判定部と、
前記使用済タイヤの診断結果と前記使用中タイヤの診断結果とが前記タイヤ状態判定部によって一致すると判定された場合、前記対応策データベースに基づいて、前記使用済タイヤの診断結果と関連付けられている前記対応策を決定する対応策決定部と、
前記対応策決定部によって決定された前記対応策を出力する対応策出力部と
を備えるタイヤ管理装置。
【請求項2】
前記対応策データベースでは、前記使用済タイヤの診断結果及び前記使用中タイヤの診断結果と、前記使用中タイヤの寿命を短くする原因と、前記原因に対応した対応策とが関連付けられ、
前記タイヤ状態判定部は、前記対応策データベースに基づいて、前記使用済タイヤの診断結果と前記使用中タイヤの診断結果とから前記原因を判定する請求項1に記載のタイヤ管理装置。
【請求項3】
前記使用中タイヤ状態取得部は、前記使用中タイヤの使用条件を取得し、
前記タイヤ状態判定部は、前記使用済タイヤの診断結果と、前記使用中タイヤの診断結果と、前記使用条件とに基づいて、前記原因を判定する請求項2に記載のタイヤ管理装置。
【請求項4】
車両に装着されて使用された結果、使用限界と判断された複数本数の使用済タイヤの外観状態に基づいて決定された前記使用済タイヤの診断結果を取得する処理と、
前記車両と同一環境で使用される車両に装着されている複数本数の使用中タイヤの外観状態に基づいて決定された前記使用中タイヤの診断結果を取得する処理と、
前記使用済タイヤの診断結果と、前記使用済タイヤの診断結果に対応した対応策とが関連付けられた使用済タイヤデータベースに含まれる前記使用済タイヤの診断結果と、取得された前記使用中タイヤの診断結果とに基づいて、前記使用済タイヤの診断結果と、前記使用中タイヤの診断結果とが一致するか否かを判定する処理と、
前記使用済タイヤの診断結果と前記使用中タイヤの診断結果とが前記タイヤ状態判定部によって一致すると判定された場合、前記対応策データベースに基づいて、前記使用済タイヤの診断結果と関連付けられている前記対応策を決定する処理と、
決定された前記対応策を出力する処理と
をコンピュータに実行させるタイヤ管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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