説明

タイル貼り構造及びタイル貼り工法

【課題】タイルの接着強度を高めることができ、且つ、コンクリート壁面に容易に溝を形成することができるタイル貼り構造及びタイル貼り工法を提供する。
【解決手段】コンクリート壁1の表面1aにモルタル層2、3を介してタイル4が貼り付けられるタイル貼り構造である。コンクリート壁1の表面1aに横溝5が上下に多数形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイル貼り構造及びタイル貼り工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコンクリート壁の表面にモルタル層を介してタイルが貼り付けられるタイル貼り構造が知られている。このタイル貼り構造にあっては、タイル貼り付け面となるコンクリート壁の表面を粗面化してモルタル層の接着力を高めることが特許文献1により知られている。
【0003】
この特許文献1にあっては、高圧水噴射装置を持ってコンクリート壁の表面に沿って横方向に移動しながら、該高圧水噴射装置の回転駆動するノズルから噴射された高圧水をコンクリート壁の表面に当てることで、コンクリート壁の表面に螺旋状の溝を多数形成し、これによりコンクリート壁の表面を粗面化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−922126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1のコンクリート壁の表面に形成される多数の溝は螺旋状であるため、溝と溝の間隔が均一ではなく、また、溝同士が一部重複して溝幅が広がったり溝が部分的に深くなる。このため、コンクリート壁に対するモルタルの接着強度が均一ではない。また、モルタルの縦方向の外力に対する抵抗力が低く、地震等の際にタイルが剥離する恐れがある。
【0006】
また、特許文献1は高圧水を噴射するノズルヘッドを回転移動することによって螺旋状の溝を形成するものであるため、高圧水がコンクリート壁の表面に沿って移動する速度が速く溝が浅くなりやすい。このためモルタルの接着強度はさらに低下する。さらに、このように回転駆動するノズルヘッドを備えた高圧水噴射装置は構造が複雑であり高価である。また、構造の複雑化に伴い高圧水噴射装置の重量が大きくなり、作業性も悪くなる。
【0007】
本発明は上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、タイルが剥離し難く、また、簡単な構造の高圧水噴射装置を用いて容易にコンクリート壁の表面を粗面化できるタイル貼り構造及びタイル貼り工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のタイルの貼付け構造は、モルタル層2、3を介してタイル4が貼り付けられるコンクリート壁1の表面1aに横溝5が上下に多数形成されることを特徴とする。
【0009】
また、前記多数の横溝5同士が略平行に形成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明のタイル貼り工法は、手持ち式の高圧水噴射装置を用いてコンクリート壁1の表面に横溝5を上下に多数形成し、これら横溝5が形成されたコンクリート壁1の表面1aにモルタル層2、3を介してタイル4を貼り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にあっては、コンクリート壁の表面に多数の横溝を形成して粗面化することができ、これによってモルタル層の接着強度を高められる。また、前記コンクリート壁の表面を粗面化させる溝は横溝であるため、モルタル層の上下方向の外力に対する抵抗力を高めることができ、これによってタイルが剥離し難くなる。
【0012】
また、前記多数の横溝を略平行に形成すると、横溝間の隙間が均一になり、モルタル層の接着強度を一層高めることができる。
【0013】
また、前記横溝を形成する手持ち式の高圧水噴射装置として、ノズルヘッドが駆動せず、簡単な構造で安価且つ軽い高圧水噴射装置を用いることができる。また、このようにノズルヘッドが駆動しない高圧水噴射装置を用いた場合、ノズルヘッドの移動速度が遅くなり、これによってコンクリート壁の表面に容易に深い横溝を形成することができ、このような深い横溝を形成することで、モルタル層の接着強度を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の一例のタイル貼り構造を示した側断面図である。
【図2】同上のコンクリート壁の表面に溝を形成する様子を側断面で示した説明図である。
【図3】同上のコンクリート壁の表面にモルタル層を介してタイルを貼付ける様子を示した説明図である。
【図4】同上のコンクリート壁を示し、(a)は正面図であり、(b)は側断面図である。
【図5】(a)〜(d)は同上のハンドガンが有するノズルヘッドの正面図である。
【図6】同上のコンクリート壁の表面に溝を形成する様子を模式的に示した説明図である。
【図7】同上の溝の検査に用いられるゲージの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態につき説明する。
【0016】
本実施形態のタイル貼り構造は、図1に示すように建物躯体壁を構成するコンクリート壁1の表面1a(厚み方向の一面)にモルタル層2、3を介してタイル4を貼り付けたものである。以下、前記コンクリート壁1の表面1aをコンクリート壁面1aと記載する。
【0017】
図4に示すように、コンクリート壁面1aには略水平で直線状の横溝5が上下に間隔を介して略平行に多数形成され、これによりコンクリート壁面1aは粗面化される。横溝5は、例えば深さ約0.3mm、幅0.5〜1mm、ピッチ約4mmのものが形成され、一枚のタイル5に対応する位置に多数の横溝5が形成されるようにしている。
【0018】
この粗面化されたコンクリート壁面1aには下地モルタルが塗られる。この下地モルタルによりタイル4を貼り付ける下地としてのモルタル層2が構成される。
【0019】
硬化したモルタル層2の表面(コンクリート壁1と反対側の面)には、モルタル層3を介してタイル4が貼り付けられる。
【0020】
タイル4の裏面には横方向に延びるアリ溝状のタイル溝9が上下に複数形成されている。このタイル4の裏面にはモルタル層3となる未硬化状態の貼付けモルタル3aが塗られ、このタイル4をモルタル層2の表面に接着することで、タイル4はモルタル層3を介してモルタル層2の表面に貼り付けられる。前記タイル溝9にはモルタル層3の一部が入り込むので、タイル4とモルタル層3の接着強度は高くなる。
【0021】
コンクリート壁面1aに形成される横溝5は、図2に示すハンドガン7で構成される高圧水噴射装置から超高圧の水をコンクリート壁面1aに噴射することで形成される。
【0022】
ハンドガン7は両手で持って高圧水発生器8から供給された100Mpa〜200Mpaの圧力となる高圧の水をコンクリート壁面1aに向けて吐出するものである。
【0023】
この手持ち式のハンドガン7の先端には前記高圧水を噴射する噴射孔10を1乃至複数有するノズルヘッド11が設けられる。ハンドガン7は横溝5を形成する範囲や、形成する横溝5の幅やピッチ等に応じて使い分ける複数種類のノズルヘッド11を備えており、この中から選択された一のノズルヘッド11が前記ハンドガン7の先端部に着脱自在に取り付けられる。
【0024】
ノズルヘッド11としては図5(a)〜図5(d)に示す4種類のノズルヘッド11a〜11dがあり、ノズルヘッド11a〜11dは夫々1個、3個、6個、10個の噴射孔10を備えている。
【0025】
ノズルヘッド11aの噴射孔10は円形のノズルヘッド11aの中心に設けられ、該噴射孔10の直径は他のノズルヘッド11b〜11dの噴射孔10よりも小さく、幅の小さい横溝5を形成できる。
【0026】
また、複数の噴射孔10を備えたノズルヘッド11b〜11dは、円形のノズルヘッド11b〜11dに各噴射孔10を略均等に配置し、ハンドガン7の使用時において、各噴射孔10が左右方向の位置は異なるが上下方向の間隔が同一となるよう周方向の角度を調節してハンドガン7に固定される。
【0027】
このハンドガン7を用いて横溝5を形成する場合、作業者がハンドガン7を持って、図2や図6に示すようにノズルヘッド11の各噴射孔10からコンクリート壁面1aに向けて高圧水を噴射させつつ、ハンドガン7を移動してノズルヘッド11をコンクリート壁面1aに沿って横方向に移動させる。これにより各噴射孔10から噴射された高圧水のコンクリート壁面1aに衝突する位置は順次横方向に移動していき、この高圧水によってコンクリート壁面1aが削り取られて前記横溝5が形成される。具体的には、例えば吐出圧力100〜200Mpa、吐出水量2〜2.5リットル/分、噴射距離1〜5cm、施工速度2〜2.5分/mの条件で横溝5が形成される。
【0028】
上記横溝5を形成した後にはコンクリート壁面1aの洗浄がなされ、また、横溝5がコンクリート壁面1aに目的の深さやピッチ等で正しく形成されているか検査がなされる。
【0029】
横溝5の深さの検査は例えば光沢度計を用いる。具体的には、横溝5が形成されたコンクリート壁面1aに沿ってアルミ箔を貼り付け、該アルミ箔の表面の光沢度を光沢計を用いて測定し、この測定結果を評価する。光沢度計としては、堀場製作所社製のハンディ式光沢度測定器IG−331が用いられ、測定値が95以内であれば合格とする。なお、この検査はコンクリート壁面1aを目視したり爪で触る等、他の検査方法により行ってもよい。
【0030】
また、横溝5のピッチの検査には、例えば図7に示す透明なシートに所定径の円13が接するよう縦横に多数並べて描かれたゲージ12が用いられる。ゲージ12で検査を行うには、横溝5が形成されたコンクリート壁面1aにゲージ12を当てて、ゲージ12の全ての又は所定の割合以上の円13内に該ゲージ12を通して見える横溝5が1以上存在すれば合格とし、これにより、例えばコンクリート壁面1aに7mm以下のピッチで横溝5が形成されていれば合格とする。
【0031】
そして、このようにコンクリート壁面1aを粗面化することで、前記モルタル層2が各横溝5に入り込んでモルタル層2の接着強度が向上し、タイル4が剥離し難くなる。
【0032】
殊に、前記コンクリート壁面1aを粗面化する溝は横溝5であるので、モルタル層2の縦方向の外力に対する抵抗力を高めることができ、タイル4が剥離し難くなる。
【0033】
また、横溝5は略一定のピッチで略平行に形成されるため、横溝5をコンクリート壁面1aに略均一に形成することができる。また、横溝5同士は重複し難いため、横溝5を略一定の深さで容易に形成することができる。したがってモルタル層2の接着強度を一層高めることができる。
【0034】
また、横溝5を形成する高圧水噴射装置として、本実施例のように高圧水を噴射するノズルヘッド11が駆動せず、簡単な構造で安価且つ軽い高圧水噴射装置を用いることができる。また、このように駆動しないノズルヘッド11を有する手持ち式の高圧水噴射装置を用いた場合、ノズルヘッド11の移動速度を遅くしてコンクリート壁面1aに容易に深い横溝5を形成することができ、また、このように深い横溝5を形成することでモルタル層2の接着強度を一層高めることができる。
【0035】
なお、本実施形態のハンドガン7は高圧水を放出するものであるため、タイル4が貼り付けられるコンクリート壁面1aの粗面化だけでなく、物に付着した汚れ、塗料、錆等を剥したり、劣化コンクリートやモルタルを除去したり、研磨したりすることもできる。
【0036】
また、前記複数の噴射孔10を備えたノズルヘッド11b〜11dにあっては、例えば上下方向の中央部における上下ピッチが小さく、且つ、上部及び下部の上下ピッチが大きくなるようハンドガン7に取り付けられるようにしてもよい。この場合、ハンドガン7を横方向に一度移動して形成される複数の横溝5からなる組を上下に複数組形成するにあたって、隣接する2組の横溝5において、上方の組の下部に形成される横溝5と下方の組の下部に形成される横溝5とを近づけて形成することにより、略均一の上下ピッチで横溝5を形成することが可能となる。
【0037】
また、前記ノズルヘッド11a〜11dを回転駆動可能とし、ハンドガン7に対して移動不能にした状態と、回転駆動する状態とを選択できるようにしてもよい。
【0038】
また、本実施形態では横溝5が形成されたコンクリート壁面1aに下地モルタルからなるモルタル層2を積層し、該モルタル層2に貼付けモルタル3aからなるモルタル層3を介してタイル4を貼り付けたが、モルタル層2を省略し、横溝5が形成されたコンクリート壁面1aに直接モルタル層3を介してタイル4を貼り付けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 コンクリート壁
1a コンクリート壁面
2 モルタル層
3 モルタル層
4 タイル
5 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルタル層を介してタイルが貼り付けられるコンクリート壁の表面に横溝が上下に多数形成されることを特徴とするタイル貼り構造。
【請求項2】
前記多数の横溝同士が略平行に形成されることを特徴とする請求項1に記載のタイル貼り構造。
【請求項3】
手持ち式の高圧水噴射装置を用いてコンクリート壁の表面に横溝を上下に多数形成し、これら横溝が形成されたコンクリート壁の表面にモルタル層を介してタイルを貼り付けることを特徴とするタイル貼り工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−261222(P2010−261222A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112860(P2009−112860)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(509128063)有限会社ムサシエンジニアリング (1)
【Fターム(参考)】