説明

タッチセンサを備えたスイッチ

【課題】押しボタンにタッチセンサを設けても屈曲に耐えられるようにし、信頼性を向上させることができるタッチセンサを備えたスイッチを提供する。
【解決手段】プッシュスイッチのスイッチノブ4A〜4C上には、タッチセンサを構成する導電フィルム6が敷設されている。導電フィルム6は、導電部61A〜61Cと、これに接続された配線パターン62A〜62Cとが樹脂フィルム上に設けられており、配線パターン62A〜62Cはコネクタ7に接続される。導電フィルム6は、スイッチノブ4A〜4Cを保持する本体5とベゼル8に介挿され、スイッチエレメント2A〜2Cへの防水が図られている。導電フィルム6が耐屈曲性を有することにより、特定の部位に応力集中が発生するのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサを備えたスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車においては、搭載する電子機器やエンジン等の動作開始・停止に押しボタンやタッチセンサを用いたスイッチが用いられている。
【0003】
タッチセンサを用いたスイッチとして、例えば、特許文献1に示されるように、タイルの表面に導電性のタッチ部を設け、タイルの裏側にタッチセンサ回路を設置し、タッチセンサ回路とタッチ部とを導電ゴム及びリード線により接続し、タッチ部に指が接触した際の電気的変化をタッチセンサ回路により検出してオン/オフ動作を行わせるスイッチが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、押しボタン式のスイッチとタッチセンサを同一基板上に搭載したスイッチも用いられている。この場合、スパッタリング等により押しボタンの表面に導電膜を設けてタッチセンサを構成している。なお、導電膜と基板上の配線パターンとの接続は、ハーネスにより行われる。
【特許文献1】特開平7−272604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のタッチセンサを備えたスイッチによると、導電膜と基板上の配線パターンとの接続にハーネスを用いているため、押しボタンの使用回数が多くなるほど、また、ストロークが大きいほどハーネスの金属疲労が進み、ハーネスが断線し易くなり、信頼性を上げることができない。また、組み付けが困難になる。
【0006】
従って、本発明の目的は、タッチセンサを設けても屈曲に耐えられるようにし、信頼性を向上させることができるタッチセンサを備えたスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の一態様によれば、印刷配線基板と、前記印刷配線基板上に実装された少なくとも1つのプッシュ式のスイッチエレメントと、前記スイッチエレメントをオン/オフ可能にして前記スイッチエレメントの上部に配設された少なくとも1つのスイッチノブと、前記スイッチノブを往復動可能に保持する本体と、前記スイッチノブの表面を覆うように配設されると共に、前記スイッチノブに対面する部分にタッチセンサを構成する導電性のパターンが設けられた導電フィルムと、を備えたことを特徴とするタッチセンサを備えたスイッチを提供する。
【0008】
[2]前記導電フィルムは、前記導電性のパターンに接続された配線パターンを有し、その端部が前記印刷配線基板に接続されていることを特徴とする上記[1]に記載のタッチセンサを備えたスイッチであってもよい。
【0009】
前記導電フィルムは、保持部材によって前記本体に圧着されていることを特徴とする上記[1]に記載のタッチセンサを備えたスイッチであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施の態様によれば、押しボタンにタッチセンサを設けても屈曲に耐えられるようにできると共に信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係るスイッチを示す分解斜視図である。
【0012】
図2は、図1のスイッチの完成状態を示す斜視図である。
【0013】
図3は、図2のスイッチのA−A線の断面図である。
【0014】
(スイッチの構成)
図1に示すように、スイッチ100は、長板状の印刷配線基板1と、印刷配線基板1上に実装されたスイッチエレメント2A,2B,2Cと、スイッチエレメント2A〜2Cを収容する膨出部30A,30B,30Cを備えると共に印刷配線基板1上に配設されるラバーシート3と、膨出部30A〜30C上に配置されるスイッチノブ4A,4B,4Cと、スイッチノブ4A〜4Cを収容すると共にスイッチノブ4A〜4Cの頭部を露出させる貫通孔50A,50B,50Cを備えてラバーシート3上に配設される本体5と、スイッチノブ4A〜4Cに対向する部位に導電部61A,61B,61Cを備えると共に一端にコネクタ7を備え、スイッチノブ4A〜4C及び本体5上に敷設される導電フィルム6と、導電部61A〜61Cに対向する部位に開口80A,80B,80Cが設けられていると共に上記各部材を収容するようにして印刷配線基板1上に搭載されるベゼル8とを備えて構成されている。
【0015】
印刷配線基板1は、例えば、ガラスエポキシ基板を主体に構成され、この基板の表面には、スイッチエレメント2A〜2C、スイッチエレメント2A〜2Cとコネクタ7を接続する配線パターン9A,9B,9C、配線パターン9A〜9Cの端部に設けられたスルーホール91A,91B,91C等が設けられている。
【0016】
スイッチエレメント2A〜2Cは、押しボタンスイッチであり、可動部が所定の位置まで押し下げられることによりスイッチオンになる構成を有している。また、スイッチエレメント2A〜2Cは、上記可動部が内蔵のスプリングによってスイッチノブ4A〜4Cを附勢する附勢手段を兼ねている。
【0017】
ラバーシート3は、復元性、可撓性、耐湿性及び耐水性を備えていることが望ましく、このような材料としてシリコーンゴムがある。なお、ラバーシート3は、本体5の下面の全域が接触可能な面積を有している。
【0018】
スイッチノブ4A〜4Cは、同一仕様であり、例えば、樹脂成形により作られている。スイッチノブ4A〜4Cは、内部が中空で、下端縁には本体5から抜け出るのを防止するための鍔40が設けられている。そして、スイッチノブ4A〜4Cは、スイッチエレメント2A〜2Cにより附勢されているとき、鍔40の上面が本体5の貫通孔50A〜50Cの周縁の下面に接するように配設されている。
【0019】
本体5は、例えば、樹脂成形により箱型に作られており、貫通孔50A〜50Cの周縁には、図3に示すように、鍔40の移動を規制するための段差が設けられている。
【0020】
導電フィルム6は、ほぼ印刷配線基板1に等しい外形の樹脂フィルム60の片面に、スイッチノブ4A〜4Cにほぼ等しいサイズの導電性のパターンからなる導電部61A〜61Cが樹脂フィルム60の片面に設けられていると共に、導電部61A〜61Cとコネクタ7を接続する配線パターン62A,62B,62Cが設けられている。
【0021】
樹脂フィルム60は、PET(POLYETHYLENE TEREPHTHALATE)等の樹脂材を用いることができるが、スイッチノブ4A〜4Cの往復動を妨げない可撓性及び復元性を示す材料及び厚みを選択する。
【0022】
導電部61A〜61C及び配線パターン62A〜62Cは、導電性及び耐腐食性を有する金属、ITO(Indium Tin Oxide)等の導電体の蒸着等により設けられている。また、導電部61A〜61C及び配線パターン62A〜62Cは、エッチングにより設けることもできる。また、導電フィルム6として、銅等の導電パターンが施されたフレキシブル基板を使用することもできる。
【0023】
コネクタ7は、配線パターン62A〜62C及び配線パターン9A〜9Cに接続される複数の端子(図示せず)を備えると共に、印刷配線基板1のスルーホール91A〜91Cに挿入される複数のピン(図示せず)を備えている。
【0024】
なお、コネクタ7は、予め導電フィルム6に実装しているが、予め印刷配線基板1に実装しておく構成にすることもできる。
【0025】
ベゼル8は、例えば、全体が箱型を成すように樹脂成形により作られており、例えば、接着剤により印刷配線基板1に接着される。
【0026】
(スイッチの組み立て)
まず、図3に示すように、予め、スイッチエレメント2A〜2Cを印刷配線基板1に実装しておく。
【0027】
次に、スイッチエレメント2A〜2Cを覆うようにして、ラバーシート3を印刷配線基板1に取り付ける。
【0028】
次に、ラバーシート3の膨出30A〜30C上にスイッチノブ4A〜4Cを配置し、このスイッチノブ4A〜4Cを貫通孔50A〜50Cに位置決めし、スイッチノブ4A〜4Cを本体5内に保持する。
【0029】
次に、スイッチノブ4A〜4C及び本体5の上面を覆うようにして、導電フィルム6を敷設する。このとき、コネクタ7は、ピンを印刷配線基板1上のスルーホール91A〜91Cに挿入する。
【0030】
次に、コネクタ7のピンを印刷配線基板1上の配線パターン9A〜9Cにハンダ付けする。なお、コネクタ7は、単独で予め印刷配線基板1に実装しておき、導電フィルム6を敷設した段階で導電フィルム6の端部をコネクタ7に接続するようにしてもよい。
【0031】
次いで、導電フィルム6を覆うようにして、印刷配線基板1にベゼル8の下端を接着剤により固定する。以上により、スイッチ100が完成する。
【0032】
(スイッチの動作)
次に、スイッチ100の動作について説明する。ここで、コネクタ7には図示しないタッチセンサ回路が接続され、スイッチエレメント2A〜2Cには図示しない電源回路等が接続されているものとする。
【0033】
操作者が、例えば、図2に示すスイッチノブ4Aの上面の導電部61Aに指等を接触させると、導電部61A+配線パターン62A+コネクタ7の経路における絶縁抵抗や静電容量等の電気特性が変化する。この変化がタッチセンサ回路によって検知され、タッチセンサ回路は電気信号(タッチセンサ検知信号)を出力する。この出力信号によりリレー、電子スイッチ等が駆動される。
【0034】
次に、操作者が、スイッチエレメント2Aの可動部の附勢力に抗してスイッチノブ4Aを押すと、スイッチノブ4Aがラバーシート3を介してスイッチエレメント2Aを押下し、スイッチエレメント2Aがスイッチオンになる。
【0035】
以上の説明は、スイッチノブ4Aについてであるが、スイッチノブ4B,4Cも同様にして指の接触及び押下操作によりタッチセンサ及びスイッチが動作する。
【0036】
(実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)スイッチノブ4A〜4Cを導電フィルム6で覆い、導電部61A〜61Cを配線パターン62A〜62C及びコネクタ7を介して導電部61A〜61Cを印刷配線基板1側に接続する構成にしたことでハーネス等による接続が不要となり、スイッチノブ4A〜4Cの可動による断線を防ぐことができる。
(2)導電フィルム6の導電部61A〜61Cは、配線パターン62A〜62Cを介してスイッチノブ4A〜4Cから離れた場所にあるコネクタ7に接続しているため、スイッチが可動してもコネクタ部分には応力集中することがないため、スイッチノブ4A〜4Cの往復動によらず、導電部61A〜61Cとコネクタ7の接続を維持することができる。
(3)導電フィルム6が、本体5とベゼル8に密着状態に保持されているため、防水構造が得られ、信頼性を向上させることができる。
【0037】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々な変形が可能である。
【0038】
例えば、ベゼル8は、自動車のコンソールパネル等であってもよい。
【0039】
また、スイッチノブ4A〜4C及びスイッチエレメント2A〜2Cは、各3つとしたが、任意の個数にすることができるし、スイッチノブ4A〜4Cの形状も四角形以外の形状、例えば、円形であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係るスイッチを示す分解斜視図である。
【図2】図1のスイッチの完成状態を示す斜視図である。
【図3】図2のスイッチのA−A線の断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 印刷配線基板
2A〜2C スイッチエレメント
3 ラバーシート
4A〜4C スイッチノブ
5 本体
6 導電フィルム
7 コネクタ
8 ベゼル
9A〜9C 配線パターン
30A〜30C 膨出部
40 鍔
50A〜50C 貫通孔
60 樹脂フィルム
61A〜61C 導電部
62A〜62C 配線パターン
80A〜80C 開口
91A〜91C スルーホール
100 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷配線基板と、
前記印刷配線基板上に実装された少なくとも1つのプッシュ式のスイッチエレメントと、
前記スイッチエレメントをオン/オフ可能にして前記スイッチエレメントの上部に配設された少なくとも1つのスイッチノブと、
前記スイッチノブを往復動可能に保持する本体と、
前記スイッチノブの表面を覆うように配設されると共に、前記スイッチノブに対面する部分にタッチセンサを構成する導電性のパターンが設けられた導電フィルムと、
を備えたことを特徴とするタッチセンサを備えたスイッチ。
【請求項2】
前記導電フィルムは、前記導電性のパターンに接続された配線パターンを有し、その端部が前記印刷配線基板に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のタッチセンサを備えたスイッチ。
【請求項3】
前記導電フィルムは、保持部材によって前記本体に圧着されていることを特徴とする請求項1に記載のタッチセンサを備えたスイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−270022(P2008−270022A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113117(P2007−113117)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】