説明

タッチパネル、及びこのタッチパネルを備えた表示装置

【課題】アクティブエリアを拡大可能で、リワーク時の歩留まりを向上させることが可能なタッチパネル、及びこのタッチパネルを備えた表示装置を提供する。
【解決手段】タッチパネルセンサ2にフレキシブル基板3が接合されたタッチパネル1であって、タッチパネルセンサ2は、所定の間隔で平行に配置された第1の透明電極19、及び金属材料からなる第1の取出配線4が一方側の面に配置された第1の透明基板16と、第1のセンサ電極と直交する方向に、所定の間隔で平行に配置された第2の透明電極20、及び金属材料と樹脂材料からなる複数の第2の取出配線6が配置された第2の透明基板17と、これらを接着する接着層18とを備え、第2の透明基板17の他方側の面と、第1の透明基板16の第1の透明電極19及び第1の取出配線4が配置された面とを対向させて、第2の透明基板17を第1の透明基板16上に接着層18を介して積層した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル、及びこのタッチパネルを備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルは、表示装置と座標検出装置を組み合わせた入力装置として注目されている。タッチパネルは、携帯電話、携帯音楽再生装置、携帯ゲーム機、自動販売機、ATM等のように、限られたスペースでより多くの情報入力をすることが必要な電子機器に用いられることが多く、これら電子機器の画面を指やペンなどで押圧することにより、電子機器に対して対話形式で電子機器の操作や情報入力を行えるように構成されている。
【0003】
タッチパネルは、作動原理によって、抵抗膜方式、静電容量方式、赤外線方式、超音波方式、及び電磁誘導結合方式等に分類されており、それぞれの方式のタッチパネルが有するメリット及びデメリット、並びにタッチパネルの使用用途に応じて使い分けられている。近年は、これら各方式の中でも、他の方式に比べて透過率が高く耐久性がある点、及び多点検出が可能で複雑な操作が可能となる点から、静電容量方式のタッチパネルが特に注目されている。
【0004】
静電容量方式のタッチパネルは、操作者が指先やペン等の外部導体で触れた際に生じる電気容量の変化から外部導体が触れた位置を検出して検出信号を生成するタッチパネルセンサと、このタッチパネルセンサで生成された検出信号を外部の回路に出力するためのフレキシブル基板とを備えている。
【0005】
タッチパネルセンサは、透明の基材フィルムと、この基材フィルムの表面に設けられる各種電極とで構成されているのが一般的である。例えば、特許文献1には、基材フィルム上に透明導電膜、導電膜パターン層、及び誘電体層を積層したタッチパネルセンサを備えた静電容量式タッチパネルが開示されている。
【0006】
タッチパネルセンサは、操作者が視認することができ、外部導体で触れることができるアクティブエリアと、このアクティブエリアの周囲に形成された額縁領域とを有している。アクティブエリアには、所定の間隔で平行に配置された複数の第1のセンサ電極からなる第1の透明電極、及び第1の透明電極と直交する方向に所定の間隔で平行に配置された複数の第2のセンサ電極からなる第2の透明電極が設けられている。額縁領域には、第1の透明電極に電気的に接続された第1の取出配線、及び第2の透明電極に電気的に接続された第2の取出配線が設けられている。
【0007】
タッチパネルとしては、第1の透明電極及び第1の取出配線が形成された第1の透明基板と、第2の透明電極及び第2の取出配線が形成された第2の透明基板とを積層させてなるものが従来から知られている。このタッチパネルは、第1の透明基板と第2の透明基板との間に接着層を介在させており、これら第1の透明基板と第2の透明基板とを確実に密着させることができるように構成されている。また、第1の透明電極及び第2の透明電極は、タッチパネルが表示装置に用いられる場合は、表示装置で表示される画像等の視認性が良好でなくてはならないため、導電率の低い透明導電材料で形成されている場合が多い。一方、第1の取出配線及び第2の取出配線は、高い導電性を有するインクで透明基板上に印刷して形成する方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−23904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年は、タッチパネルの意匠性や操作性を向上させる観点から、タッチパネル自体は大型化させずにアクティブエリアをより大きくすることが求められている。このような要求に応えるために、近年のタッチパネルは、額縁領域の面積をより少なくしてアクティブエリアを拡大することが種々検討されている。
【0010】
しかし、額縁領域の面積を少なくすると、この額縁領域に配置された第1の取出配線又は第2の取出配線をより細線化しなければならず、また各取出配線の設置場所の位置精度をより向上させなければならない。一方、スクリーン印刷のような印刷法により取出配線を形成する場合には、導電性インクを基材フィルム上に塗布して取出配線を形成するので、取出配線の細線化や設置場所の位置精度の向上が難しいという問題がある。また、印刷法で形成した取出配線は、厚さが10μm以上になってしまい、取出配線が厚くなってしまうという問題もある。
【0011】
このような問題を解決する方法としては、サブトラクティブ法で第1の取出配線及び第2の取出配線を形成する方法がある。サブトラクティブ法は、スパッタリングやメッキ等の方法で形成した導電性薄膜に対して、レジスト層を塗布し、パターン露光及び現像により残すべき導体のレジストパターンを形成し、エッチングにより不要な導電性薄膜を除去し、レジスト層を剥離して金属パターンを形成する方法である。最終的に形成された金属パターンが第1の取出配線又は第2の取出配線となる。
【0012】
サブトラクティブ法で第1の取出配線及び第2の取出配線を形成する場合は、これら取出配線を細線化することができ、各取出配線の設置場所の位置精度を上げることはできる。しかし、サブトラクティブ法は、金属パターンが形成される領域以外の他の領域にも金属の導電性薄膜を予め形成した上で、不要な金属薄膜をエッチングで除去して所望の金属パターンを形成するので、金属の使用量が増加するという問題がある。また、サブトラクティブ法では、フォトマスク等のように高価な部材が必要となるほか、取出配線を形成するために、露光や現像などの複数のプロセスを経なければならないので、製造時のコストが増加してしまうという問題もある。
【0013】
また、タッチパネルは、第1の透明電極の位置精度と第2の透明電極の位置精度が座標検出位置の精度に直接反映する。また、第1の透明基板と第2の透明基板とを積層させてタッチパネルセンサを形成するタッチパネルの場合には、第1の透明基板と第2の透明基板とを貼り合わせる際の精度も座標検出位置の精度に大きく反映する。そのため、第1の透明基板と第2の透明基板とを貼り合わせて形成されるタッチパネルは、第1の透明基板と第2の透明基板とを貼り合わせる際に位置ズレが生じたり、第1の透明基板又は第2の透明基板のいずれかの品質が所定の基準を満たしていなかった場合等には、第1の透明基板を第2の透明基板から剥がして、再度これらの透明基板を貼り合わせて所定の位置精度を維持することが必要とされていた(以下、第1の透明基板と第2の透明基板を再度貼り合わせることを「リワーク」と言う。)。
【0014】
しかし、スクリーン印刷等の各種印刷法により形成された取出配線は、サブトラクティブ法で形成した取出配線と比較して、透明基板との密着性が低く、第1の透明基板と第2の透明基板を剥がした時に、取出配線が透明基板から剥離しやすかった。取出配線が剥離した透明基板は、タッチパネルの電極として使用することができないので、リワークする際の歩留まりが悪いという問題があった。
【0015】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、アクティブエリアを拡大することができるとともに、リワーク時の歩留まりを向上させることが可能なタッチパネル、及びこのタッチパネルを備えた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
(1)表面に接触した物体の位置を検出するタッチパネルセンサにフレキシブル基板が接合されたタッチパネルであって、前記タッチパネルセンサは、複数の第1のセンサ電極が所定の間隔で平行に配置された第1の透明電極と、金属材料を含み前記第1のセンサ電極と電気的に接続する複数の第1の取出配線とが配置された第1の透明基板と、前記第1のセンサ電極と直交する方向に、複数の第2のセンサ電極が所定の間隔で平行に配置された第2の透明電極と、金属材料と樹脂材料を含み前記第2のセンサ電極と電気的に接続する複数の第2の取出配線とが一方側の面に配置された第2の透明基板と、前記第1の透明基板と第2の透明基板とを接着する接着層と、を備え、前記第2の透明基板の他方側の面と、前記第1の透明基板の第1の透明電極及び第1の取出配線が配置された面とが対向するように、前記接着層を介して前記第1の透明基板の上に前記第2の透明基板を積層してなることを特徴とするタッチパネル、
(2)前記タッチパネルセンサは、物体の接触を検知可能なアクティブエリアと、前記アクティブエリアの周囲に形成された額縁領域とを有し、前記額縁領域は、前記フレキシブル基板が接合されるとともに前記第1の取出配線の一部と第2の取出配線が配置される第1の額縁領域と、前記第1の取出配線の一部が配置される第2の額縁領域とを有し、前記第2の額縁領域の幅が前記第1の額縁領域の幅よりも狭くなるように形成されていることを特徴とする上記(1)記載のタッチパネル、
(3)前記第1の透明電極は、前記第1の透明基板において前記第1の取出配線が配置される箇所にも形成されており、前記第1の取出配線は、前記第1の透明電極と積層して配置されていることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のタッチパネル、
(4)前記第1の取出配線と第1の透明電極の間に、前記第1の取出配線と第1の透明電極との密着性を向上させる密着層が形成されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のタッチパネル、
を要旨とする。
【0017】
また、本発明に係るタッチパネルを備えた表示装置は、上記(1)から(4)のいずれかに記載のタッチパネルを表示部に備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るタッチパネルは、第1の取出配線との密着性が強い第1の透明基板の上に第2の透明基板を積層するので、リワーク時における第1の取出配線と第1の透明基板との剥離の発生を著しく低減することができ、リワーク時の歩留まりを向上させることが可能になる。また、本発明に係るタッチパネルは、第1の取出配線が金属材料を含む材料で形成し、第2の取出配線が金属材料と樹脂材料を含む材料で形成するので、製造時のコストを低く抑えながら、タッチパネルセンサのアクティブエリアをより拡大することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るタッチパネルの外観構成を表した外観斜視図である。
【図2】タッチパネルのアクティブエリアと額縁領域を表した説明図である。
【図3】タッチパネルセンサの構成を表した分解斜視図である。
【図4】図3において符号Aで示す部分を拡大した部分拡大図である。
【図5】図3において符号Bで示す部分を拡大した部分拡大図である。
【図6】図1のA−A´線の断面図である。
【図7】図4のB−B´線の断面図である。
【図8】第1の透明基板に第1の取出配線を形成する方法を説明するための説明図である。
【図9】第2の透明基板に第2の取出配線を形成する方法を説明するための説明図である。
【図10】第1の透明基板と第2の透明基板とを積層させた時の構成を表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るタッチパネルの構成を、図面を用いて説明する。なお、本明細書における「先端側」、「後端側」、「左側」、「右側」、「上側」、「下側」とは、図1に示す方向を示すものとする。また、本実施の形態においては、「第2の透明基板の一方側の面」とは第2の透明基板の上面を意味し、「第2の透明基板の他方側の面」とは第2の透明基板の下面を意味するものとする。また、本明細書における「物体の接触する」状態は、物体が直接接触した状態のみならず、物体が接触したことをタッチパネルセンサが検知することができる程度にまで、該物体が近接した状態をも含むものとする。
【0021】
(タッチパネル1の構成)
図1に示すように、本実施の形態のタッチパネル1は、タッチパネルセンサ2とフレキシブル基板3とから構成されている。タッチパネルセンサ2は、表面に接触した物体の位置を検出するためのもので、第1の取出配線4に接続された接続端子(以下、第1の接続端子5と言う。)及び第2の取出配線6に接続された接続端子(以下、第2の接続端子7と言う。)がタッチパネルセンサ2の側部に形成されている。フレキシブル基板3は、一方の面に図示しない電極配線及び電極端子がパターン形成された可撓性を有する基板である。フレキシブル基板3の電極端子は、第1の接続端子5及び第2の接続端子7と異方性導電接着剤を介して電気的に接続されるようになっている。なお、説明の便宜上、図1ではタッチパネルセンサ2とフレキシブル基板3とを分離して記載した。また、図1における符号8は、タッチパネルセンサ2の上に設けられる接着層である。この接着層8は、図示しないカバーガラスをタッチパネルセンサ2の上に設置する際に、これらタッチパネルセンサ2とカバーガラスとを接着するためのものである。
【0022】
タッチパネルセンサ2は、図示しないカバーガラスの表面に接触した物体の位置を検出するためのセンサ部材である。図2に示すように、タッチパネルセンサ2は、操作者が視認することができるとともに、表面に指等の物体の接触を検知可能なアクティブエリア11と、このアクティブエリア11の周囲に形成され、通常は操作者が視認することができない額縁領域12とに区画されている。この額縁領域12は、フレキシブル基板3が接合されるとともに第1の取出配線4の一部、第1の接続端子5、第2の取出配線6、及び第2の接続端子7が配置されている第1の額縁領域13と、少なくとも第1の取出配線4の一部が配置されている第2の額縁領域14とを有している。
【0023】
第1の額縁領域13は幅W1を有するように形成され、第2の額縁領域14は幅W2を有するように形成されている。これら幅W1及び幅W2は、幅W1が幅W2に比べて広くなるように形成されている。これは、第1の額縁領域13がフレキシブル基板3をタッチパネルセンサ2に接合するための領域でもあり、該フレキシブル基板3を接合するために必要な幅を確保する必要があるからである。
【0024】
なお、本実施の形態においては、第1の額縁領域13がアクティブエリア11の先端側に形成され、第2の額縁領域14がアクティブエリア11の左右端側に形成されているが、これら第1の額縁領域13及び第2の額縁領域14は、この位置に限定されるものではない。例えば、図1において、フレキシブル基板3がアクティブエリア11の右端側に接合される場合には、第1の額縁領域はアクティブエリア11の右端側になり、第2の額縁領域は、アクティブエリア11の先端側及び後端側になる。なお、説明の便宜上、図2では、第1の透明基板16及び第2の透明基板17上に形成されている各取出配線や接続端子等の記載は省略した。
【0025】
図3に示すように、タッチパネルセンサ2は、第1の透明基板16の上面16aと第2の透明基板17の他方側の面としての下面17aとを対向させて、第1の透明基板16の上に第2の透明基板17が接着層18を介して積層して構成されている。第1の透明基板16は、光透過性樹脂フィルムで形成された部材であり、図3及び図5に示すように、上面16aに第1の透明電極19、第1の取出配線4及び第1の接続端子5が配置形成されている。また、第2の透明基板17は、光透過性樹脂フィルムで形成された部材であり、図3及び図4に示すように、第2の透明電極20、第2の取出配線6及び第2の接続端子7が一方側の面としての上面17bに配置形成されている。なお、以下においては、第1の透明基板16を構成する光透過性樹脂フィルムを第1の光透過性樹脂フィルム30といい、第2の透明基板17を構成する光透過性樹脂フィルムを第2の光透過性樹脂フィルム35という。
【0026】
第1の透明基板16及び第2の透明基板17に用いられる第1の光透過性樹脂フィルム30及び第2の光透過性樹脂フィルム35としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、もしくはシンジオタクティック・ポリスチレン等、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、もしくはポリエーテルニトリル等、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロヘキセン、もしくはポリノルボルネン系樹脂等、又はポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、もしくは熱可塑性ポリイミド等からなるフィルムが挙げられる。
【0027】
図3及び図5に示すように、第1の透明電極19は、左右方向に線状に形成された第1のセンサ電極21を複数本有しており、これら第1のセンサ電極21が所定の間隔を開けてアクティブエリア11内に平行に配置されて構成されている。また、図3及び図4に示すように、第2の透明電極20は、第1のセンサ電極21と直交する方向に線状に形成された第2のセンサ電極22を複数本有しており、これら第2のセンサ電極22が、所定の間隔を開けてアクティブエリア11内に平行に配置されて構成されている。そのため、これら第1の透明電極19及び第2の透明電極20は、互いに直交し、アクティブエリア11内を格子状に位置するように配置されている。第1の透明電極19の両端は額縁領域12まで延出しており、それぞれの端部が第1の透明電極用端子23と接続するように構成されている。また、第2の透明電極20の両端も額縁領域12まで延出しており、それぞれの端部が第2の透明電極用端子24と接続するように構成されている。これら第1の透明電極19及び第2の透明電極20は、操作者が指などでタッチパネル1の表面を触れた時に、表面に接触した物体と第1の透明電極19との間の静電容量の変化、及び該物体と第2の透明電極20との間の静電容量の変化から、アクティブエリア11内のどの位置に物体が接触したかを検知することができるようになっている。なお、本実施の形態では、第1の透明電極19を構成する第1のセンサ電極21、及び第2の透明電極20を構成する第2のセンサ電極は線状に形成されているが、第1センサ電極21及び第2センサ電極の形状はこれに限定されるものではなく、線状以外の形状であってもよい。
【0028】
第1の取出配線4は、第1の透明電極19で生成された検知信号を、フレキシブル基板3に形成されたフレキシブル回路を介して外部の装置へ送出するための配線である。図3及び図5に示すように、第1の取出配線4は、先端側の端部はフレキシブル回路と接続するための第1の接続端子5と接続し、後端側の端部は第1の透明電極用端子23と接続している。なお、図5においてハッチングを施している箇所は、第1の取出配線4、第1の接続端子5及び第1の透明電極用端子23である。
【0029】
第1の取出配線4は、額縁領域12の左右両側に、第1の額縁領域13と第2の額縁領域14とを跨いで形成されている。また、第1の取出配線4は、左右に設けられている第1の透明電極用端子23のいずれか一方側の端子とのみ接続しており、他端側の端子とは接続しないように形成されている。例えば、最後端側の第1のセンサ電極21は、左側に形成された第1の透明電極用端子23を介して第1の取出配線4と接続されており、この第1のセンサ電極21の先端側に隣接する第1のセンサ電極21は、右側に形成された第1の透明電極用端子23を介して第1の取出配線4と接続されるようになっている。
【0030】
第2の取出配線6は、フレキシブル回路を介して、第2の透明電極20で生成された検知信号を外部の装置へ送出するためのものである。第2の取出配線6は、図1、図3及び図4に示すように、先端側の端部はフレキシブル回路と接続するための第2の接続端子7と接続し、後端側の端部は第2の透明電極用端子24と接続するように形成されている。なお、図4においてハッチングを施しているのは、第2の取出配線6、第2の接続端子7及び第2の透明電極用端子24である。
【0031】
第2の取出配線6は、額縁領域12の先端側に形成されている第1の額縁領域13に形成されている。また、第2の取出配線6は、先端側に設けられている第2の透明電極用端子24とのみ接続しており、後端側に設けられている第2の透明電極用端子24とは接続しないように形成されている。
【0032】
接着層18は、第1の透明基板16と第2の透明基板17とを積層させる際に、これら第1の透明基板16及び第2の透明基板17を接着するための層である。この接着層18は透光性を有するものであれば従来公知のものを適宜選択することができる。具体的には、接着層18を形成する樹脂組成物としては、アクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル、天然ゴムなどを挙げることができる。樹脂組成物は、波長400nm以上700nm以下の可視光の透過率に優れた接着層18を形成可能な光透過性接着剤である点で、アクリル酸アルキルを主成分とするものであることが好ましい。また、接触している電極間の絶縁信頼性を保つため、吸水率が低く、酸フリーであることが好ましい。
【0033】
図6は、図1のA−A´線における断面図、図7は、図4のB−B´線における断面図である。なお、図6は、説明の便宜上、左右両端と中央の一部を省略して記載する。図6に示すように、第1の透明基板16は、第1の光透過性樹脂フィルム30の上面に、第1のアンダーコート層31、第1の誘電体層32、第1の透明導電膜層33及び第1の遮光導電膜層34が積層されている。第1のアンダーコート層31は、少なくとも、光硬化型樹脂剤又はエポキシ系硬化剤を溶解したアンダーコート層形成液を塗布した後に紫外線を照射することで、塗布された該樹脂剤又は硬化剤を硬化させることにより形成される薄膜層であり、第1の光透過性樹脂フィルム30の全面に形成されている。この第1のアンダーコート層31を形成するために使用される光硬化型樹脂剤としては、例えば、オキセタン樹脂などのアクリル系樹脂が挙げられ、エポキシ系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0034】
第1の誘電体層32は、第1の透明電極19の密着性を向上させるとともに、第1の透明電極19を目立たなくするためのものである。第1の誘電体層32は、第1の透明基板16上にSiOの薄膜を形成することにより構成されている。この第1の誘電体層32を形成することで、第1の光透過性樹脂フィルム30と第1の透明導電膜層33との密着性を向上させることができるとともに、第1の透明導電膜層33により形成される第1の透明電極19を目立たなくすることができ、操作者が第1の透明電極19の存在を意識することなく、タッチパネル1を操作することができるようになる。なお、本実施の形態では、第1の誘電体層32としてSiOの薄膜を用いているが、SiON等を用いてもよい。
【0035】
第1の透明導電膜層33は、複数本の第1のセンサ電極21からなる第1の透明電極19を構成するとともに、第2の額縁領域14に形成されている第1の透明電極用端子23、第1の取出配線4及び第1の接続端子5のそれぞれを構成するものであり、これら第1の透明電極19、第1の透明電極用端子23、第1の取出配線4及び第1の接続端子5の形状に対応するパターンとなるように、第1の誘電体層32の上に形成されている。
【0036】
第1の透明導電膜層33を形成するものとしては、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)のような導電性酸化物が挙げられる。第1の透明導電膜層33は、これら導電性酸化物の薄膜をスパッタ法で第1の誘電体層32上に形成することにより得られる。このようにして得られた第1の透明導電膜層33の膜厚は、薄膜の透明性を確保する観点及び成膜性の観点から15nm〜50nmであることが好ましい。また、第1の透明導電膜層33と第1の遮光導電膜層34との密着性を向上させる観点から、第1の透明導電膜層33は、インジウム錫オキサイドから形成されていることがより好ましい。なお、第1の透明導電膜層33は、カーボンナノチューブ又は金属ナノワイヤからなる導電性繊維を含む膜、金属ナノワイヤ及び導電性高分子を含む膜により形成されていてもよい。
【0037】
第1の遮光導電膜層34は、第1の透明電極用端子23、第1の取出配線4及び第1の接続端子5のそれぞれを構成するものである。第1の遮光導電膜層34は、第1の透明導電膜層33のうち、第1の透明電極用端子23、第1の取出配線4及び第1の接続端子5を構成するものの上に形成されている。第1の遮光導電膜層34は、スパッタ法又は蒸着法等の真空プロセスを用いて第1の透明導電膜層33の上に形成された遮光導電薄膜に対してエッチング処理を施すことにより形成されている。
【0038】
第1の遮光導電膜層34は、例えば、金(Au)銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)、又はこれらの金属のうちのいずれか1種類以上の金属を含む合金、例えばAPC(銀、パラジウム、銅の合金)、MAM(モリブデン、アルミニウム、モリブデンの合金)によって形成されている。なお、第1の遮光導電膜層34は、これらの金属のうちの異なる金属を積層させてもよく、第1の遮光導電膜層34と第1の透明導電膜層33との密着性を向上させる観点から、銀、パラジウム・銅の合金から形成されることがより好ましい。
【0039】
第2の透明基板17は、図4のB−B´線の断面に示すように、第2の透明導電膜層38が形成されている部分と、図1のA−A´線の断面に示すように、該第2の透明導電膜層38が形成されていない部分がある。例えば、図4に示す部分では、第2の透明基板17は、第2の光透過性樹脂フィルム35の上面に、第2のアンダーコート層36、第2の誘電体層37、第2の透明導電膜層38及び第2の遮光導電膜層39が積層されている。また、図1に位置する箇所では、第2の透明基板17は、第2の光透過性樹脂フィルム35の上面に、第2のアンダーコート層36、第2の誘電体層37及び第2の遮光導電膜層39が積層されており、第2の透明導電膜層38が形成されていない。これは、額縁領域12は操作者が視認することができる場所ではなく、金属又は合金からなる第2の遮光導電膜層39を形成することが許容されており、また第2の遮光導電膜層39を形成しやすくすることができるからである。ただし、これは、第2の透明導電膜層38を額縁領域12内に形成することを禁止する趣旨ではなく、必要に応じて、額縁領域12にも第2の透明導電膜層38を形成し、その上に第2の遮光導電膜層39を形成してもよい。
【0040】
第2のアンダーコート層36は、少なくとも、光硬化型樹脂剤又はエポキシ系硬化剤を溶解したアンダーコート層形成液を塗布した後に紫外線を照射することで、塗布された該樹脂剤又は硬化剤を硬化させることにより形成される薄膜層であり、第2の光透過性樹脂フィルム35の全面に形成されている。この第2のアンダーコート層36を形成するために使用される光硬化型樹脂剤としては、例えば、オキセタン樹脂などのアクリル系樹脂が挙げられ、エポキシ系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、第2のアンダーコート層36を形成する際に使用される樹脂材又は硬化剤は、第1の透明基板16に対して第1のアンダーコート層31を形成する際に使用するものと同じでもよいし、異なるものを使用してもよい。
【0041】
第2の誘電体層37は、第2のアンダーコート層36上にSiOの薄膜を形成することにより構成されている。第2の誘電体層37は、第2の透明導電膜層38又は第2の遮光導電膜層39と第2の光透過性樹脂フィルム35との密着性を向上させるとともに、第2の光透過性樹脂フィルム35の上に形成された第2の透明電極20を目立たなくするためのもので、操作者が第2の透明電極20の存在を意識することなく、タッチパネル1を操作することができるようになっている。なお、本実施の形態では、第2の誘電体層37としてSiOの薄膜を用いているが、SiON等を用いてもよい。また、本実施の形態では、第2の誘電体層37として、第1の誘電体層32と同じ材質の薄膜を形成しているが、第2の誘電体層37と第1の誘電体層32とが異なる材料から形成されていてもよい。
【0042】
第2の透明導電膜層38は、複数本の第2のセンサ電極22からなる第2の透明電極20を構成するとともに、第1の額縁領域13並びに第2の額縁領域14に形成されている第2の透明電極用端子24を構成するものであり、これら第2の透明電極20及び第2の透明電極用端子24の形状に対応するパターンを形成するように第2の誘電体層37の上に形成されている。
【0043】
第2の透明導電膜層38を形成するものとしては、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)のような導電性酸化物が挙げられる。第2の透明導電膜層38は、これら導電性酸化物の薄膜をスパッタ法で第2の誘電体層37上に形成することにより得られる。このようにして得られた第2の透明導電膜層38の膜厚は、薄膜の透明性を確保する観点及び成膜性の観点から15nm〜50nmであることが好ましい。なお、第2の透明導電膜層38は、カーボンナノチューブ又は金属ナノワイヤからなる導電性繊維を含む膜、金属ナノワイヤ及び導電性高分子を含む膜により形成されていてもよい。
【0044】
第2の遮光導電膜層39は、第2の取出配線6、第2の透明電極用端子24及び第2の接続端子7を構成するものであり、これら第2の取出配線6、第2の透明電極用端子24及び第2の接続端子7の形状に対応するパターンを形成するように、第2の透明基板17及び第2の透明導電膜層38の上に形成されている。
【0045】
第2の遮光導電膜層39は、ペースト状の電極材料が第2の誘電体層37上又は第2の透明導電膜層38上にスクリーン印刷法で塗布されて形成されている。第2の遮光導電膜層39は、金属材料と樹脂材料からなるペースト状の導電性材料によって形成されている。金属材料に用いられるものとしては、例えば、金(Au)銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)、又はこれらの金属のうちのいずれか1種類以上の金属を含む合金、例えばAPC(銀、パラジウム、銅の合金)、MAM(モリブデン、アルミニウム、モリブデンの合金)などが挙げられる。
【0046】
また、樹脂材料に用いられるものとしては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、キシレン樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、オキサジン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン、ポリエステルなどが挙げられる。特に、第2の透明基板17がフィルム材であり高温で焼成することができないため、第2の遮光導電膜層39には、銀とエポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、もしくはそれらの混同樹脂からなるペースト状の導電性材料を用いることが好ましい。また、上記のペーストを用いてスクリーン印刷法で外周パターンを形成した後に、レーザー加工を行い、微細部のパターニングを行ってもよいし、金属材料を含む感光性ペーストを用いてスクリーン印刷法で外周パターンを形成した後に、リソグラフィ工程を経て、微細部のパターニングを行ってもよい。
【0047】
また、図1及び図3に示すように、本実施の形態のタッチパネル1は、接着層18を介して第1の透明基板16と第2の透明基板17とが積層されている。また、第2の透明基板17には、第2の接続端子7が形成された側部の左右両側に切り欠き17cが形成されており、この切り欠き17cが形成されている箇所に、第1の透明基板16に形成された第1の接続端子5が露出するように配置されている。したがって、これら第1の接続端子5と第2の接続端子7は、共に同一の側部に位置するよう配置されている。
【0048】
次に、第1の透明基板16に第1の透明電極19及び第1の取出配線4を形成するステップを図8に基づいて説明する。まず、第1の透明基板16となる光透過性樹脂フィルム30を用意し、この光透過性樹脂フィルム上に第1のアンダーコート層31及び第1の誘電体層32を順次積層させた後に、第1の透明導電膜層33及び第1の遮光導電膜層34をスパッタ法により順次積層する(図8(a))。なお、第1の透明導電膜層33は第1の透明電極19となる層であり、第1の遮光導電膜層34は第1の取出配線4、第1の接続端子5及び第1の透明電極用端子23となる層である。
【0049】
次に、第1の遮光導電膜層34の上に感光膜層41を形成する。感光膜層41は、第1の遮光導電膜層34の上にバーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スクリーン印刷等の各種方法によりコーティングすることで形成される(図8(b))。次に、感光膜層41の上にフォトマスク42を配置する。フォトマスク42は、第1の透明電極19及び第1の取出配線4の形状に応じたパターンが金属膜で形成されているガラス部材である(図8(c))。
【0050】
次に、フォトマスク42に形成されたパターンを感光膜層41に露光する。露光時に用いられる露光装置は、感光膜層41の感光特性に対応したものを用いることができ、例えば紫外線露光装置や電子線露光装置等を用いることができる。露光完了後はフォトマスク42を取り除く(図8(d))。なお、図8(d)において、符号43で示した箇所は、露光によって感光膜層が感光した部分である。次に、現像液を用いて感光膜層41を現像する。現像する際の現像液としては水酸化カリウム溶液、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)等を用いることができ、これも感光膜層41の特性に応じたものを使用することができる。このようにして現像した感光膜層41は感光した部分が取り除かれ、フォトマスク42に形成されたパターンと同じものが感光膜層41にパターニングされる(図8(e))。
【0051】
次に、第1の遮光導電膜層34及び第1の透明導電膜層33のエッチング処理を行う。エッチング剤としては、塩化鉄水溶液および塩化鉄水溶液を主成分とした混合液等を用いることができ、感光膜層41、第1の遮光導電膜層34及び第1の透明導電膜層33の特性に応じたものを適宜使用することができる。第1の遮光導電膜層34及び第1の透明導電膜層33のエッチング処理が完了すると、感光膜層41に形成されたパターンと同じものが第1の遮光導電膜層34及び第1の透明導電膜層33にパターニングされる(図8(f))。エッチング処理を行った後は感光膜層41を剥離する(図8(g))。このようにパターニングされた第1の透明導電膜層33が第1の透明電極19となる。
【0052】
次に、感光性材料を第1の遮光導電膜層34の上に再度コーティングして、感光膜層44を形成する(図8(h))。そして、感光膜層44の上にフォトマスク45を配置する。このフォトマスク45は、第1の取出配線4の形状に応じたパターンが金属膜で形成されているガラス部材である。(図8(i))。
【0053】
次に、フォトマスク45に形成されたパターンを感光膜層44に露光する。先の露光と同様、露光時に用いられる露光装置は、感光膜層44の感光特性に対応したものを用いることができ、例えば紫外線露光装置や電子線露光装置等を用いることができる。露光完了後はフォトマスク45を取り除く(図8(j))。なお、図8(j)において、符号46で示した箇所は、露光によって感光膜層44が感光した部分である。次に、現像液を用いて感光膜層44を現像する。現像する際の現像液としては、水酸化カリウム溶液、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)等を用いることができ、これも感光膜層44の特性に応じたものを使用することができる。このようにして現像した感光膜層44は感光した部分が取り除かれ、フォトマスク45に形成されたパターンと同じものが感光膜層44にパターニングされる(図8(k))。
【0054】
次に、第1の遮光導電膜層34のエッチング処理を行う。エッチング剤としては、燐硝酢酸等を用いることができ、感光膜層44、第1の遮光導電膜層34及び第1の透明導電膜層33の特性に応じたものを適宜使用することができる。第1の遮光導電膜層34のエッチング処理が完了すると、感光膜層44に形成されたパターンと同じものが第1の遮光導電膜層34にパターニングされる(図8(l))。そして、エッチング処理を行った後は感光膜層44を剥離する(図8(m))。このようにしてパターニングされた第1の遮光導電膜層34が第1の取出配線4等になる。
【0055】
次に、第2の透明基板17に第2の取出配線6を形成するステップを図9に基づいて説明する。まず、第2の光透過性樹脂フィルム35を用意し、この光透過性樹脂フィルム上に第2のアンダーコート層36及び第2の誘電体層37を順次積層し、さらに第2の透明導電膜層38となる薄膜をスパッタ法により順次積層する。なお、第2の透明導電膜層38は第2の透明電極20となる層である。
【0056】
次に、第2の透明導電膜層38の上に感光膜層51を形成する。感光膜層51は、第2の透明導電膜層38の上にバーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スクリーン印刷等の各種方法によりコーティングすることで形成される(図9(a))。次に、感光膜層51の上にフォトマスク52を配置する。フォトマスク52は、第2の透明電極20の形状に応じたパターンが金属膜で形成されているガラス部材である(図9(b))。
【0057】
次に、フォトマスク52に形成されたパターンを感光膜層51に露光する。露光時に用いられる露光装置は、感光膜層の感光特性に対応したものを用いることができ、例えば紫外線露光装置や電子線露光装置等を用いることができる。露光完了後はフォトマスク52を取り除く(図9(c))。なお、図9(c)において、符号53で示した箇所は、露光によって感光膜層が感光した部分である。次に、現像液を用いて感光膜層51を現像する。現像する際の現像液としては、水酸化カリウム溶液、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)等を用いることができ、これも感光膜層51の特性に応じたものを使用することができる。このようにして現像した感光膜層51は感光した部分が取り除かれ、フォトマスク52に形成されたパターンと同じものが感光膜層51にパターニングされる(図9(d))。
【0058】
次に、第2の透明導電膜層38のエッチング処理を行う。エッチング剤としては、塩化鉄水溶液および塩化鉄水溶液を主成分とした混合液等を用いることができ、第2の透明導電膜層38の特性に応じたものを適宜使用することができる。第2の透明導電膜層38のエッチング処理が完了すると、感光膜層51に形成されたパターンと同じものが第2の透明導電膜層38にパターニングされる(図9(e))。エッチング処理を行った後は感光膜層51を剥離する(図9(f))。このようにしてパターニングされた第2の透明導電膜層38が第2の透明電極20となる。
【0059】
次に、スクリーン印刷法を用いて、ペースト状の導電性材料を第2の透明電極20上に印刷して第2の遮光導電膜層39を形成する(図9(g))。このようにして印刷された第2の遮光導電膜層39が第2の取出配線6等になる。
【0060】
次に、第1の透明基板16の上に接着層18を介在させて、第2の透明基板17の下面を第1の透明基板16の上に積層固定する。このようにして、本実施の形態のタッチパネルセンサ2が形成される(図10(a))。なお、図10(a)では、第2の遮光導電膜層39が第2の透明導電膜層38の上に形成される例について説明したが、第2の取出配線6を形成する場所によっては、第2のアンダーコート層36及び第2の誘電体層37が形成された第2の透過性樹脂フィルム35上に第2の遮光導電膜層39を直接形成することもある。
【0061】
このように、本実施の形態のタッチパネル1は、第1の取出配線4との密着性が高い第1の透明基板16の上に接着層18を介して第2の透明基板17を積層させている。そのため、本実施の形態のタッチパネル1は、リワーク時に第1の透明基板16と第2の透明基板17とを剥がしても、第1の透明基板16において第1の取出配線4が剥離することがなく、再度第2の透明基板17と貼り合わせることができる。したがって、本実施の形態のタッチパネル1は、リワーク時における歩留まりをより向上させることが可能になる。
【0062】
また、本実施の形態のタッチパネル1は、第1の取出配線4の第1の接続端子5と第2の取出配線6の第2の接続端子7とが、共にタッチパネルセンサ2の側部に設けられている。そのため、本実施の形態のタッチパネル1は、フレキシブル基板3を一箇所に設ければよく、他の箇所における額縁領域12を狭領域化し、アクティブエリア11を拡大することが可能も可能になる。
【0063】
さらに、本実施の形態のタッチパネルセンサ2は、狭領域化した第2の額縁領域に取出配線を設置する場合には、スパッタ法で形成した第1の取出配線を設置し、第2の額縁領域に比べて比較的広範囲が確保される第1の額縁領域には、安価な印刷法で形成した第2の取出配線を設置することができる。そのため、本実施の形態のタッチパネル1は、製造時のコストを低く抑えながら、アクティブエリア11をより拡大することが可能になる。
【0064】
また、本実施の形態のタッチパネルセンサ2は、第1の透明基板において、第1の取出配線が形成される箇所にも第1の透明電極を形成し、第1の取出配線を第1の透明電極と積層配置することにより、これら第1の取出配線及び第1の透明電極との密着性をより向上させることができ、リワーク時における歩留りをさらにより向上させることが可能になる。
【0065】
なお、本実施の形態では、第1の透明基板16がアンダーコート層31及び誘電体層32を有し、第2の透明基板17がアンダーコート層36及び誘電体層37を有するように構成したが、透明基板はアンダーコート層及び誘電体層を有しなくてもよい。例えば、図10(b)に示すように、第1の透明基板16´が第1の光透過性樹脂フィルム30、第1の透明導電膜層33及び第1の遮光導電膜層34からなり、第2の透明基板17´が第2の光透過性樹脂フィルム35、第2の透明導電膜層38及び第2の遮光導電膜層39からなっていてもよい。また、本実施の形態の別の態様として、第1の遮光導電膜層34と第1の透明導電膜層33との間、すなわち、第1の取出配線4と第1の透明電極19との間に密着層61を積層させてもよい。例えば、本実施の形態の別の形態は、図10(c)に示すように、第1の透明基板16´´が第1の光透過性樹脂フィルム30、アンダーコート層31、誘電体層32、第1の透明導電膜層33、密着層61及び第1の遮光導電膜層34からなっていてもよい。第1の透明導電層33と第1の遮光導電膜層34との間に密着層61を介在させることで、これら第1の取出配線4と第1の透明電極19との密着性をさらに向上させることができ、リワーク時に第1の取出配線4が剥離せず、より確実に再利用することが可能になる。なお、第1の取出配線4と第1の透明電極19との密着性を向上させる観点から、密着層61はモリブデンとニオブとの合金から形成されることが好ましい。
【0066】
以上に説明した本発明のタッチパネルを用いて、本発明の表示装置を提供することができる。本発明の表示装置は、上記したタッチパネルを表示部に設けることで構成されている。
【0067】
表示部は、液晶表示パネルや有機EL表示パネル等のような従来から公知のものを適宜使用してもよく、上記したものに限定されるものではない。また、表示部を備えた表示装置としては、例えば、携帯電話、携帯音楽再生装置、パーソナルコンピュータ等が挙げられるが、これら以外の表示装置にも使用することができる。
【実施例】
【0068】
実施例1:
(第1の透明基板16の作成)
まず、厚さ150μmのPETフィルム(東レ製 ルミラーT60)を準備した。次に、光硬化型樹脂剤(東亞合成株式会社製 アロニックスM405)及びエポキシ系硬化剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 イルガキュア184)をイソブチルアルコールに溶解した溶液を、バーコート法(松尾産業株式会社製、K303マルチコーター)によりPETフィルムの全面に塗布した。そして、Model LC−6B Benchtop Conveyor(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を用いて、溶液の塗布面上から波長365nm、積算エネルギー300mJの紫外線を照射して、照射して、PETフィルム上に厚さ1μmのアンダーコート層を製膜した。
【0069】
次に、アンダーコート層を形成したPETフィルムの片面に、厚さ30nmのSiOの薄膜からなる第1の誘電体層をスパッタ法(株式会社 アルバック製、コンタクトスパッタ ACS−4000)により製膜した。次に、第1の誘電体層上に、厚さ30nmのITO膜と、厚さ100nmのAPC膜をスパッタ法により順次製膜した。その後、ポジ感光性材料(ローム&ハース社製 S1805)を用いて、カーテンコート法により厚さ1.0μmのポジレジストを製膜した。
【0070】
次に、ポジレジストの上に第1の透明電極19及び第1の取出配線4のパターンが形成されたフォトマスクを所定位置に配置し、フォトマスクの上から、プロキシアライナー(大日本科研製 MA5000)により、波長365nm、積算エネルギー300mJの紫外線を照射して、ポジレジストの露光を行った。その後、KOH現像液により、ポジレジストの現像処理を行った。
【0071】
次に、エッチング剤として塩化鉄溶液を用いてAPC膜とITO膜のエッチング処理をして、これらAPC膜及びITO膜にパターニングを行った。その後、NaOH溶液により、ポジレジストを剥離した。
【0072】
次に、カーテンコーター(株式会社セリテック製)を用いて、ポジ感光性材料(AZマテリアル製)をカーテンコート法により塗布し、APC膜上からの厚さが1.0μmのポジレジストを製膜した。そして、ポジレジストの上に、第1の取出配線4のパターンが形成されたフォトマスクを所定位置に配置し、フォトマスクの上から、プロキシアライナー(大日本科研製 MA5000)により、波長365nm、積算エネルギー300mJの紫外線を照射して、ポジレジストの露光を行った。その後、KOH現像液により、ポジレジストの現像処理を行った。
【0073】
次に、燐酸、硝酸、酢酸、水を4:1:4:4の割合で混合した燐硝酢酸をエッチング剤として用いて、APC膜のエッチング処理をして、APC膜のパターニングを行った。その後、NaOH溶液により、ポジレジストを剥離した。これによって、第1の透明基板16を得た。
【0074】
(第2の透明基板17の作成)
まず、厚さ150μmのPETフィルム(東レ製 ルミラーT60)を準備した。次に、光硬化型樹脂剤(東亞合成株式会社製 アロニックスM405)及びエポキシ系硬化剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 イルガキュア184)をイソブチルアルコールに溶解した溶液を、自動塗工機(松尾産業株式会社製、K303マルチコーター)を用いてバーコート法によりPETフィルムの全面に塗布した。そして、Model LC−6B Benchtop Conveyor(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を用いて、溶液の塗布面上から波長365nm、積算エネルギー300mJの紫外線を照射して、PETフィルム上に厚さ1μmのアンダーコート層を製膜した。
【0075】
次に、アンダーコート層を形成したPETフィルムの片面に、厚さ30nmのSiOの薄膜からなる第2の誘電体層をスパッタ法により製膜した。次に、第2の誘電体層上に、厚さ30nmのITO膜をスパッタ法により製膜し、その後、ポジ感光性材料(ローム&ハース社製 S1805)を用いて、カーテンコート法により厚さ1.0μmのポジレジストを製膜した。
【0076】
次に、ポジレジストの上に第2の透明電極20のパターンが形成されたフォトマスクを所定位置に配置し、フォトマスクの上から、プロキシアライナー(大日本科研製 MA5000)により、波長365nm、積算エネルギー300mJの紫外線を照射して、ポジレジストの露光を行った。その後、KOH現像液により、ポジレジストの現像処理を行った。次に、エッチング剤として塩化鉄溶液を用いてITO膜のエッチング処理をして、ITO膜にパターニングを行った。その後、NaOH溶液により、ポジレジストを剥離した。
【0077】
次に、スクリーン印刷法により、SiO膜及び一部のITO膜上に銀ペーストをパターニングし、第2の取出電極のパターンを作成した。その後、PETフィルム乾燥炉内に入れて、温度150℃の雰囲気下において30分加熱して銀ペーストを焼成した。
得られた銀ペーストの膜厚を表面粗さ・輪郭形状測定器((有)小阪研究所製 SEF3500)で測定を行ったところ、15μmであった。これによって、第2の透明基板17を得た。
【0078】
(剥離試験)
PETフィルム(東レ製 ルミラーT60)に両面粘着テープ(日栄加工製 MHM−50)の片面を貼り合わせ、2kgの荷重を加えるローラーを2往復させて、該PETフィルムと両面粘着テープとの密着性を向上させた。その後、PETフィルムに貼り合わせた両面粘着テープの他方の面を第1の透明基板16上に貼り合わせた。そして、第1の透明基板16の上で2kgの荷重を加えるローラーを2往復させて、第1の透明基板16とPETフィルムとの密着性を向上させた。このようにして、実施例1のサンプルを得た。
【0079】
実施例1のサンプルを10個準備し、両面粘着テープで形成されている接着層がPETフィルムへ転写するように、サンプルから両面粘着テープを剥がした。このとき、両面粘着テープに遮光導電膜層が転写された場合には、リワーク時の剥離が生じたものとして判断し、両面粘着テープに遮光導電膜層が転写されなかった場合には、リワーク時の剥離が生じなかったものとして判断した。剥離試験は、各サンプルあたり1回行い、全てのサンプルを用いて、合計10回行った。その結果、実施例1では、10枚共に遮光電極の剥離は観察されなかった。
【0080】
比較例1:
両面粘着テープの他方の面に第2の透明基板17を貼り合わせた以外は、実施例1と同様の方法で比較例1のサンプルを作成した。
【0081】
比較例1のサンプルを10個準備し、実施例1と同様の方法でサンプルから両面粘着テープを剥がした。剥離試験は、各サンプルあたり1回行い全てのサンプルを用いて、合計10回行った。その結果、比較例1では、2個のサンプルで、遮光導電膜層の一部が両面粘着テープに転写された。
【0082】
以上のことから、実施例1のサンプルは、比較例1のサンプルよりも、取出配線と透明基板との密着性に優れており、またアクティブエリアも拡大できることが確認された。
【符号の説明】
【0083】
1 タッチパネル
2 タッチパネルセンサ
3 フレキシブル基板
4 第1の取出配線
5 第1の接続端子
6 第2の取出配線
7 第2の接続端子
11 アクティブエリア
12 額縁領域
13 第1の額縁領域
14 第2の額縁領域
16 第1の透明基板
17 第2の透明基板
18 接着層
19 第1の透明電極
20 第2の透明電極
21 第1のセンサ電極
22 第2のセンサ電極
23 第1の透明電極用端子
24 第2の透明電極用端子
61 密着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に接触した物体の位置を検出するタッチパネルセンサにフレキシブル基板が接合されたタッチパネルであって、
前記タッチパネルセンサは、
複数の第1のセンサ電極が所定の間隔で平行に配置された第1の透明電極と、金属材料を含み前記第1のセンサ電極と電気的に接続する複数の第1の取出配線とが配置された第1の透明基板と、
前記第1のセンサ電極と直交する方向に、複数の第2のセンサ電極が所定の間隔で平行に配置された第2の透明電極と、金属材料と樹脂材料を含み前記第2のセンサ電極と電気的に接続する複数の第2の取出配線とが一方側の面に配置された第2の透明基板と、
前記第1の透明基板と第2の透明基板とを接着する接着層と、を備え、
前記第2の透明基板の他方側の面と、前記第1の透明基板の第1の透明電極及び第1の取出配線が配置された面とが対向するように、前記接着層を介して前記第1の透明基板の上に前記第2の透明基板を積層してなることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記タッチパネルセンサは、物体の接触を検知可能なアクティブエリアと、前記アクティブエリアの周囲に形成された額縁領域とを有し、
前記額縁領域は、前記フレキシブル基板が接合されるとともに前記第1の取出配線の一部と第2の取出配線が配置される第1の額縁領域と、前記第1の取出配線の一部が配置される第2の額縁領域とを有し、
前記第2の額縁領域の幅が前記第1の額縁領域の幅よりも狭くなるように形成されていることを特徴とする請求項1記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記第1の透明電極は、前記第1の透明基板において前記第1の取出配線が配置される箇所にも形成されており、
前記第1の取出配線は、前記第1の透明電極と積層して配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記第1の取出配線と第1の透明電極の間に、前記第1の取出配線と第1の透明電極との密着性を向上させる密着層が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のタッチパネルを表示部に備えたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−138018(P2012−138018A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291164(P2010−291164)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】