説明

タッチパネルおよびそれを備える表示装置

【課題】複数の検出用配線を備えるタッチパネルにおいて、検出用配線ごとの寄生容量のばらつきを抑える。
【解決手段】タッチパネルのタッチスクリーン1は、複数の検出用列配線2と、検出用列配線2に交差する複数の検出用行配線3とを備える。複数の検出用列配線2のうち最も外側のもののさらに外側には、検出用列配線2と同様の構成のダミー列配線4が配設される。複数の検出用行配線3のうち最も外側のもののさらに外側には、検出用行配線3と同様の構成のダミー行配線5が配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルおよびタッチパネルを備えた表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
指などの指示体による接触(タッチ)を検出してその位置座標を特定するタッチパネルは、優れたユーザインタフェース手段の一つとして注目されており、抵抗膜方式や静電容量方式など、種々の方式によるタッチパネルが製品化されている。
【0003】
静電容量方式の一つとして、タッチセンサが内蔵されるタッチスクリーンの前面側を、厚みが数ミリ程度のガラス板などの保護板で覆った場合でもタッチ検出が可能なPCT(Projected Capacitive Touchscreen)方式がある(例えば、特許文献1参照)。この方式は、保護板を前面に配置できるので、堅牢性に優れる点、手袋装着時でもタッチ検出が可能である点、および可動部が無いため長寿命である点などの利点を有している。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のPCT方式を用いたタッチパネルのタッチスクリーンは、静電容量を検出するための検出用配線として、薄い誘電膜に形成された第1シリーズの導電材料パターン(導体エレメント)と、絶縁膜を隔て形成された第2シリーズの誘電材料パターン(導体エレメント)とを備えており、各導体エレメント間には電気的接触はなく、複数の交点を形成している。誘電性材料として最適な材料は、例えば銀などの金属材料である。また、表示上その可視性が問題となり、可視性を低くする場合には、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide;ITO)が用いられる。また、導電材料パターンに代えて、10μm〜20μmの細い電線も使用可能である。
【0005】
また、静電容量を検出する導体エレメントは、出力線、マルチプレクサを介して、容量制御オシレータに接続される。その出力は、除算器でカウントされて、容量検出データとされる。
【0006】
また、下記の特許文献2では、タッチパネルのタッチスクリーンにおいて、検出用配線と端子とを接続する複数の引き出し線のうち、最も外側の引き出し線のさらに外側端に、ダミー引き出し配線を設ける技術が提案されている。当該タッチパネルでは、ダミー引き出し配線に所定電位を与えることにより、最も外側の引き出し線の寄生容量とその他の引き出し線の寄生容量との偏差が抑制される。それにより、検出用配線ごとの静電容量検出感度の偏差を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平9−511086号公報(7頁19〜8頁4行、同頁23行〜9頁6行、13頁4行〜12行、図1、図2、図8)
【特許文献2】特開2010−257178号公報(5項10〜17行、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2のような静電容量方式のタッチパネルでは、容量検出回路として、弛張発振器やヒステリシス発振器を用いることができる。容量検出回路の発振周期は、抵抗素子および容量素子の充放電時定数により概ね決まる。よって、その容量素子の一部を検出用配線と指示体との間に形成される静電容量(以下「タッチ容量」と称す)にすれば、容量検出回路の発振周期はタッチ容量に応じて変化するようになる。静電容量方式のタッチパネルは、その発振周期の変化を検出することによって、タッチの有無やタッチ位置の判定を行っている。タッチの良好な検出精度を得るためには、検出用配線の寄生容量や配線抵抗を可能な限り下げる必要がある。
【0009】
使用者の指タッチによりタッチパネル上に形成される電極の面積は、使用者の年齢や体格により多少の違いはあるが、一般的に1平方センチメートル程度で大きな差は無く、形成されるタッチ容量は数pF程度である。タッチ容量には、電界の広がりがあるので、隣接する検出用配線間の補間によって、検出用配線間における指タッチの位置も検出することができる。
【0010】
しかし、検出用配線の間隔が指の幅よりも一定以上大きくなると(詳細には、指タッチにより形成される電極と検出用配線との距離(保護ガラスの厚み)にも依存する)、隣接する検出用配線に指タッチによる静電容量の変化が現れなくなるため、検出用配線間の補間による位置検出が不可能になる。よって、タッチパネルにおけるタッチ位置の検出分解能を均一にする場合、隣接する検出用配線の間隔は一定となる。
【0011】
タッチパネルを液晶表示装置などの表示パネルと組み合わせて使用する場合、一般的な表示パネルは正方形ではなく縦長または横長の形状であることが多いため、通常はタッチパネルの検出領域の形状も表示パネルに合わせた形状となる。また、タッチの良好な検出精度を得るためには、タッチスクリーンの各検出用配線と表示パネルとの間に形成される寄生容量を可能な限り均一にすることが望ましい。
【0012】
また、タッチパネルを表示パネルと組み合わせた場合、表示パネルで生じたノイズが原因となり、特にタッチスクリーンの周辺部に配設された検出用配線において、タッチの検出精度の低下が懸念される。表示パネルと検出用配線との間の距離にも依存するが、タッチパネルの周辺部に配設された検出用配線では、周辺のまわり込みなどによって寄生容量が増加し、その他の検出用配線との寄生容量に差が生じる。検出用配線ごとに寄生容量がばらつくと、タッチスクリーン上で検出感度が不均一化し、タッチパネルの端部近傍で正常なタッチ検出が行えなくなる問題が生じる。
【0013】
上記の特許文献2の技術は、引き出し配線の寄生容量の均一化するものであるが、検出用配線ごとの寄生容量のばらつきまでは抑えることはできず、上記の問題を解決するには至らない。
【0014】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、複数の検出用配線を備えるタッチパネルにおいて、検出用配線ごとの寄生容量のばらつきを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るタッチパネルは、平行に配設された複数の検出用配線を備えるタッチスクリーンと、前記複数の検出用配線のうち最も外側の検出用配線の寄生容量を、他の検出用配線の寄生容量と同等に設定する寄生容量設定手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の検出用配線の寄生容量が均一化されるため、タッチスクリーン上でタッチの検出感度のばらつきが抑えられる。それにより、タッチの検出精度が向上する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1に係るタッチパネルにおけるタッチスクリーンの構成を示す平面図である。
【図2】実施の形態1に係るタッチパネルにおける検出用列配線および検出用行配線の構成を示す部分平面図である。
【図3】実施の形態1に係るタッチパネルにおけるタッチスクリーンの断面構成を示す断面図である。
【図4】実施の形態1に係るタッチパネルの全体構成を示す図である。
【図5】実施の形態1に係るタッチパネルが備える検出回路の構成を示す図である。
【図6】実施の形態1に係るタッチパネルの検出用発振回路が備える発振回路の構成を示す図である。
【図7】従来のタッチパネルの検出用発振回路の構成を示す図である。
【図8】従来のタッチパネルの検出用行配線に付加される寄生容量を説明するための図である。
【図9】従来のタッチパネルにおける検出用行配線ごとの検出感度の分布を示す図である。
【図10】実施の形態1に係るタッチパネルの検出用発振回路の構成を示す図である。
【図11】実施の形態1に係るタッチパネルの検出用行配線に付加される寄生容量を説明するための図である。
【図12】実施の形態1に係るタッチパネルにおける検出用行配線ごとの検出感度の分布を示す図である。
【図13】実施の形態2に係るタッチパネルの検出用発振回路の構成を示す図である。
【図14】実施の形態2に係るタッチパネルの検出用行配線に付加される寄生容量を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施の形態1>
図1は、本発明に係るタッチパネルにおけるタッチスクリーン1の構成を概略的に示した平面図である。図1に示すように、タッチスクリーン1には、列方向(図1に示すy方向)に延在し所定ピッチで平行に配列された複数の検出用列配線2と、行方向(図1に示すx方向)に延在し所定ピッチで平行に配列された検出用行配線3とを備えている。またタッチスクリーン1上の一端部近傍には、検出用列配線2に引き出し線を介して接続する複数の端子2aと、検出用行配線3に引き出し線を介して接続する複数の細線2bとを含む端子群8が配設される。
【0019】
このタッチパネルは、使用者の指などの指示体がタッチスクリーン1にタッチしたときに指示体と検出用列配線2および検出用行配線3との間に形成される静電容量(タッチ容量)を、端子群8に接続される検出回路(図1では不図示)を用いて検出することによって、タッチスクリーン1上の指示体の位置を検出する。
【0020】
図2は、検出用列配線2および検出用行配線3の一部を拡大した平面図である。検出用列配線2および検出用行配線3は、それぞれ複数の細線2b,3bの束から成る配線群である。言い換えれば、検出用列配線2および検出用行配線3のそれぞれは、長手方向に延びたスリット状の開口部を複数有している。
【0021】
仮に、検出用列配線2および検出用行配線3のそれぞれが開口部を有さない、いわゆる「ベタ配線」である場合、指示体によって形成されるタッチ容量を大きくできるが、タッチスクリーン1を表示パネルの前面に配設したときに、検出用列配線2および検出用行配線3が表示光の透過を妨げるため、表示パネルの画面の輝度が低下することになる。図2のように、検出用列配線2および検出用行配線3にスリット状の開口部が形成されていれば、タッチスクリーン1の開口面積が大きくなるため、画面の輝度低下を抑制できる。
【0022】
本実施の形態では、タッチパネルが液晶表示パネルなどの表示パネルの前面に配設されるものと仮定し、検出用列配線2および検出用行配線3は、それぞれ複数の細線2b,3bの束から成る配線群であるものとする。なお、本発明に係るタッチパネルは、液晶表示パネルに限らず、例えば有機EL(electro-luminescence)表示パネルやPDP(Plasma Display Panel)など、あらゆる表示装置の表示パネルとの組み合わせが可能である。
【0023】
より具体的には、検出用列配線2および検出用行配線3は、例えばCuやAlなどの金属で形成し、かつ、表示画面の可視性を良くするために細線2b,3bの幅は20μm以下とすることが望ましい。検出用列配線2の細線2bおよび検出用行配線3の細線3bそれぞれの本数、幅およびピッチ、並びに、検出用列配線2および検出用行配線3の本数、幅およびピッチは、タッチスクリーン1のサイズや、タッチ位置(タッチ座標)の検出に要求される分解能に応じて適宜選択される。
【0024】
検出用列配線2および検出用行配線3をITOなどの透明な配線材料(導電材料)で形成しても、タッチスクリーン1の光透過率を高くすることができる。しかし、ITOのシート抵抗値は比較的高いため、ITOの検出用列配線2および検出用行配線3がベタ配線であっても、タッチパネルサイズが大きくなるとその抵抗を無視できなくなり、タッチ容量の検出感度が低下する。従って、検出用列配線2や検出用行配線3は、金属の細線2b,3bから成る構造とすることが好ましい。
【0025】
また本実施の形態のタッチスクリーン1には、図1の如く、最も外側(両端)の検出用列配線2のさらに外側に平行に隣接するように、検出用列配線2と同じ構造(形状および幅が同じ)のダミー列配線4が配設される。同様に、最も外側の検出用行配線3のさらに外側に平行に隣接するように、ダミー行配線5が配設される。ダミー列配線4およびダミー行配線5の作用・効果については後述する。
【0026】
図3は、タッチスクリーン1の断面構造を示す図であり、図1のA1−A2線に沿った断面の一部を示している。図3のように、タッチスクリーン1は、透明なガラスや樹脂から成る透明基板9(以下「ベース基板」)が基材となっており、ベース基板9上に検出用列配線2が配設される。検出用列配線2上は、酸化珪素(SiO2)膜や窒化珪素(SiN)膜などの透明な層間絶縁膜10で覆われ、層間絶縁膜10の上に検出用行配線3が形成される。
【0027】
また検出用行配線3上は、層間絶縁膜10同様の透明な絶縁膜である保護膜11によって覆われる。検出用列配線2に接続する引き出し線および端子2aは、検出用列配線2と同じ配線層を用いて形成されている。また検出用行配線3に接続する引き出し線および端子3aは、検出用行配線3と同じ配線層を用いて形成されている。図3に示すように、層間絶縁膜10および保護膜11には、端子2a,3aの上面を露出するコンタクトホールが形成される。
【0028】
本実施の形態のように、タッチスクリーン1を表示パネルの前面に配設する場合、タッチスクリーン1が表示パネルからのノイズの影響を受けることを防止するために、ベース基板9の下面にITOなどの透明な誘電膜12が形成される。表示パネルからのノイズの影響を無視できるような場合には、誘電膜12は省略してもよい。
【0029】
図4は、実施の形態1に係るタッチパネルの全体構成を示す図であり、タッチスクリーン1にタッチ容量の検出回路15を搭載したコントローラ基板14が接続された状態を示している。タッチスクリーン1の端子群8には、FPC13(Flexible Printed Circuit)の各端子が、ACF(Anisotropic Conductive Film)などを用いて実装されており、端子群8はFPC13を介してコントローラ基板14上の検出回路15に接続される。
【0030】
検出回路15は、指などの指示体と検出用列配線2および検出用行配線3との間に形成されるタッチ容量を検出し、指示体によるタッチの検出およびタッチ座標の算出を行うものである。検出回路15が算出したタッチ座標データは、外部のコンピュータ(不図示)などに入力される。
【0031】
図5は、本実施の形態に係るタッチパネルが備える検出回路15の構成を示す図である。ここでは、タッチパネルが、検出用列配線2および検出用行配線3がそれぞれ8系統(8本)ずつ備えた例を示す。つまりタッチパネルは、検出用列配線2として、検出用行配線Wr1〜Wr8を備え、検出用行配線3として検出用列配線Wc1〜Wc8を備えるものとする。また当該タッチパネルは、ダミー列配線4として、検出用列配線Wc1の外側に配設されたダミー列配線Wcd1と、検出用列配線Wc8の外側に配設されたダミー列配線Wcd2とを備え、ダミー行配線5として、検出用行配線Wr1の外側に配設されたダミー行配線Wrd1と、検出用行配線Wr8の外側に配設されたダミー行配線Wrd2とを備えている。
【0032】
検出回路15は、列配線選択スイッチ回路20a、行配線選択スイッチ回路20b、発振回路21、第1計数回路23a、第2計数回路23b、タッチ座標算出回路24、および制御回路25により構成される。
【0033】
列配線選択スイッチ回路20aは、一端が検出用列配線Wc1〜Wc8にそれぞれ接続するスイッチRLc1〜RLc8を備え、行配線選択スイッチ回路20bは、一端が検出用行配線Wr1〜Wr8にそれぞれ接続するスイッチRLw1〜RLw8を備える。スイッチRLc1〜RLc8およびスイッチRLw1〜RLw8の他端は、全て発振回路21の入力端子であるノードN3に接続される。列配線選択スイッチ回路20a(スイッチRLc1〜RLc8)および行配線選択スイッチ回路20b(スイッチRLw1〜RLw8)は、制御回路25からの指示(REPRAY制御)に従い、発振回路21に接続させる検出用列配線2および検出用行配線3を、所定の本数ごとに所定の順次切り替えて走査(スキャン)する。
【0034】
発振回路21が出力する発振信号は、第1計数回路23aおよび第2計数回路23bから成る計数部に入力される。第1計数回路23a、制御回路25からのリセット信号を受けると計数値をリセットし、その後のイネーブル信号を受けると、発振回路21からの発振信号を所定値となるまでカウントする。第2計数回路23bは、リセット信号を受けると計数値をリセットし、イネーブル信号を受けるとクロック信号を、第1計数回路23aの計数値が上記の所定値となるまでカウントする。
【0035】
つまり、第2計数回路23bは、第1計数回路23aが発振回路21の発振信号のカウントを開始してから、その計数値が所定値に達するまでの時間をカウントしている。よって、第2計数回路23bの計数値は、発振回路21の発振信号の周期に比例することとなり、第2計数回路23bの係数値から発振回路21の発振周期が分かる。
【0036】
第2計数回路23bの計数値(発振回路21の発振周期に相当)は、タッチ座標算出回路24に入力される。後述するように、発振回路21の発振周期は、ノードN3に接続した抵抗および容量から定まる充放電時定数によって概ね決まる。ノードN3には、検出用列配線Wc1〜Wc8および検出用行配線Wr1〜Wr8が、列配線選択スイッチ回路20aおよび行配線選択スイッチ回路20bを介して順次接続されるため、指などの指示体がタッチスクリーン1にタッチし、検出用列配線Wc1〜Wc8および検出用行配線Wr1〜Wr8のいずれかとの間にタッチ容量が形成されると、その位置に応じたタイミングで発振回路21の発振周期が変化することになる。
【0037】
タッチ座標算出回路24は、第2計数回路23bの係数値から得られる発振回路21の発振周期を内部の記憶部に保持しており、検出用列配線Wc1〜Wc8および検出用行配線Wr1〜Wr8の前回の走査時に対する発振周期の変化や、同じ回の走査内での発振周期の変化を検出し、それに基づいて指示体の位置座標(タッチ座標)を算出する。
【0038】
このように本実施の形態に係るタッチパネルでは、検出用列配線2(Wc1〜Wc8)および検出用行配線3(Wr1〜Wr8)、列配線選択スイッチ回路20a、行配線選択スイッチ回路20b、発振回路21は、タッチ座標に応じた発振信号を生成する検出用発振回路22を構成する。そして、タッチ座標算出回路24が、検出用発振回路22の発振周期に基づいてタッチ座標の算出を行っている。
【0039】
検出用発振回路22の発振周期について説明する。図6は、検出用発振回路22が備える発振回路21の構成を示す図である。以下、同図を用いて、検出用発振回路22の動作原理を説明する。
【0040】
ここでは説明の簡単のため、検出用発振回路22が、検出用行配線3(Wr1〜Wr8)、列配線選択スイッチ回路20aおよび発振回路21で構成されているものとみなし、検出用列配線2および列配線選択スイッチ回路20aは省略して説明する。またダミー列配線4(Wcd1,Wcd2)およびダミー行配線5(Wrd1,Wrd2)の図示も省略している。
【0041】
発振回路21は、オペアンプ30を用いて構成される。オペアンプ30の非反転入力端とグラウンドとの間には抵抗素子Raが接続され、オペアンプ30の非反転入力端と出力端との間には抵抗素子Rbが接続される。また、オペアンプ30の反転入力端とグラウンドとの間には容量素子C1が接続され、オペアンプ30の反転入力端と出力端との間には抵抗素子R1が接続される。
【0042】
図6に示す発振回路21は、いわゆる弛張発振回路である。この発振回路21は、正負の出力飽和電圧から、抵抗素子R1および容量素子C1に加えて検出用行配線Wr1〜Wr8およびタッチ容量Ctなどの静電容量により構成される帰還路32(以下「検出帰還路」)により充放電が行われることによって発振する。発振信号は、オペアンプ30の出力端子から出力される。
【0043】
検出用行配線3および行配線選択スイッチ回路20bを含まない、発振回路21単体での発振周期Tcは、概ね下記の式(1)のようになり、抵抗素子R1および容量素子C1から成る帰還路の時定数τに比例する。
Tc=2τ・ln((1+k)/(1−k)) …(1)
式(1)において、τ=R1・C1であり、k=Ra/(Ra+Rb)である。また式(1)で用いたR1、C1、Ra、Rbは、それぞれの抵抗素子の抵抗値および容量素子の静電容量値を示している。
【0044】
従って、検出用行配線3や行配線選択スイッチ回路20bをも含めた検出用発振回路22では、指などの指示体33のタッチにより、指示体と検出用行配線Wr1〜Wr8のいずれかの近傍にタッチ容量Ctが形成されると、検出帰還路32による時定数τが増加し、検出用発振回路22の発振周期が大きくなる。先に述べたように、本実施の形態のタッチパネルでは、検出用発振回路22の発振周期の変化を、図5に示した第1計数回路23aおよび第2計数回路23bを用いて検出することにより、タッチ座標の検出が行われる。
【0045】
但し、後述するように、検出用行配線Wr1〜Wr8の抵抗成分がタッチ容量Ctと直列に入るため、検出用行配線Wr1〜Wr8の抵抗値が大きい場合には、タッチ容量Ctの発生による発振周期の増加の度合いが小さくなり、タッチ容量Ctの検出感度が低下する。また、検出用行配線Wr1〜Wr8のそれぞれには、検出用列配線2(図6では不図示)や表示パネルなどとの間に寄生容量が付加され、この寄生容量が大きい場合にもタッチ容量Ctの検出感度が低下する。
【0046】
なお、上記の発振周期の算出においては、説明の簡単のため、検出用列配線2、検出用行配線3、それらと端子群8とを接続する引き出し線およびその他の配線に付随する寄生容量や、列配線選択スイッチ回路20aおよび行配線選択スイッチ回路20bの入出力端から見た静電容量(つまり列配線選択スイッチ回路20aおよび行配線選択スイッチ回路20bの内部の静電容量)は考慮していない。実際には、それらの静電容量を考慮した上で、抵抗値などの各回路パラメータを選定する必要があるが、本実施の形態の本質に影響を及ぼすものではないため、それらは省略して説明した。
【0047】
ここで、タッチスクリーン1の検出用行配線3または検出用列配線2(不図示)に付加される寄生容量について説明する。図7は従来のタッチパネルが備える検出用発振回路22の構成を示している。従来の検出用発振回路22も、実際には検出用列配線2や行配線選択スイッチ回路20bも有しているが、説明の簡単のためそれらの図示は省略している。なお、従来のタッチパネルは、ダミー列配線4(Wcd1,Wcd2)およびダミー行配線5(Wrd1,Wrd2)を有しておらず、図7でそれらの図示を省略しているわけではない。各検出用行配線3の配線抵抗値(Rr)は全て等しいことが望ましく、検出用列配線2(不図示)についても同様である。
【0048】
図8は、図7のB1−B2線に沿った断面の一部を示す図であり、8本の検出用行配線Wr1〜Wr8のうち、端の3本(Wr6〜Wr8)の近傍部分に対応している。ベース基板9の下面には、タッチパネルが表示パネルからのノイズの影響を受けることを防止するために、ITOなどの透明な誘電膜12が形成されているものとする。
【0049】
図8に示すように、検出用行配線Wr1〜Wr8のそれぞれには、その下の誘電膜12との間に形成される寄生容量Cstr2が付加されるが、両端に配設された検出用行配線Wr1,Wr8には、それに加えて、周辺のまわり込みの影響で、寄生容量Cstr3が付加される。そのため、両端の検出用行配線Wr1,Wr8に付加される寄生容量Cstr1(図7)はCstr2+Cstr3、それ以外の検出用行配線Wr2〜Wr7の寄生容量はCstr2となり、両者に差が生じる。
【0050】
その場合、タッチの位置が両端の検出用行配線Wr1,Wr8の近傍である場合と、検出用行配線Wr2〜Wr7の近傍である場合とで、タッチの検出感度に差が生じ、タッチスクリーン1でのタッチ容量の検出精度が悪化することになる。なお、ベース基板9の下面に誘電膜12が形成されていない場合でも、表示パネルなどの影響を受け、両端の検出用行配線Wr1,Wr8の寄生容量と、それ以外の検出用行配線Wr2〜Wr7の寄生容量との間で差が生じる。
【0051】
図9は、検出用行配線3を21本有する従来の(ダミー行配線5を有さない)タッチパネルにおける、検出用行配線3ごとのタッチ検出感度の実測値の一例を示す図である。同図において、X軸は検出用行配線3の行番号、Y軸は検出感度(最高値を1として正規化したもの)を示している。同図から、両端(第1行および第21行)の検出用行配線3の検出感度が、その他のものより低いことが分かる。
【0052】
これは、前述したように、両端の検出用行配線3の寄生容量が、それ以外の検出用行配線3の寄生容量よりも高いことが主な原因と考えられる。従って、全ての検出用行配線3について、検出感度を均一にするためには、全ての検出用行配線3の寄生容量を等しくすることが有効である。
【0053】
図10は、実施の形態1に係るタッチパネルが備える検出用発振回路22の構成を示す図である。当該検出用発振回路22は、検出用行配線3(Wr1〜Wr8)のうち、両端に配設された検出用行配線Wr1,Wr8のさらに外側に、検出用行配線Wr1〜Wr8と同様な構成(形状および幅が同じ)のダミー行配線Wrd1,Wrd2が、検出用行配線Wr1〜Wr8の間隔と同様の間隔をあけて配設されている。
【0054】
本実施の形態に係る検出用発振回路22は、実際には図5のように、検出用列配線2(Wc1〜Wc8)や行配線選択スイッチ回路20bも有しており、さらに、両端の検出用列配線2(Wc1,Wc8)のさらに外側に、検出用列配線2と同様な構成のダミー列配線4(Wcd1,Wcd2)が、検出用行配線Wr1〜Wr8の間隔と同様の間隔をあけて配設されるが、説明の簡単のためそれらの図示は省略している。各検出用行配線3の配線抵抗値(Rr)は全て等しいことが望ましく、検出用列配線2(不図示)についても同様である。
【0055】
また図11は図10のB1−B2線に沿った断面の一部を示す図であり、8本の検出用行配線Wr1〜Wr8のうち端の3本(Wr6〜Wr8)と、その外側に配設されたダミー行配線Wrd2の近傍部分に対応している。ここでも、ベース基板9の下面には、タッチパネルが表示パネルからのノイズの影響を受けることを防止するために、ITOなどの透明な誘電膜12が形成されているものとする。
【0056】
図11に示すように、検出用行配線Wr1〜Wr8のそれぞれには、その下の誘電膜12との間に形成される寄生容量Cstr2が付加される。従来構造(図8)とは異なり、検出用行配線Wr1,Wr8には、周辺のまわり込みの影響による寄生容量Cstr3が付加されない。一方、検出用行配線Wr1,Wr8の外側に配設されたダミー行配線Wrd1,Wrd2には、従来構造(図8)の検出用行配線Wr1,Wr8のように、寄生容量Cstr2に加えて、周辺のまわり込みの影響による寄生容量Cstr3とが付加される。
【0057】
このように、両端の検出用行配線Wr1,Wr8のさらに外側にダミー行配線Wrd1,Wrd2が配置されることによって、検出用行配線Wr1,Wr8が実質的にその他の検出用行配線Wr2〜Wr7と同様の環境に置かれることになるため、検出用行配線Wr1,Wr8に対して周辺のまわり込みの影響による寄生容量Cstr3が付加されなくなる。その結果、検出用行配線Wr1〜Wr8の全てについて寄生容量が均一化されるので、タッチ容量の検出感度の列方向についてのばらつきが抑えられ、タッチの検出精度が向上する効果が得られる。
【0058】
ここでは説明を省略したが、検出用列配線2(Wc1〜Wc8)の外側に配設されるダミー列配線4(Wcd1,Wcd2)もこれと同様の効果を奏する。すなわち、両端の検出用列配線2(Wc1,Wc8)のさらに外側に、ダミー列配線4(Wcd1,Wcd2)が配設されることによって、周辺のまわり込みの影響による寄生容量が両端の検出用列配線2(Wc1,Wc8)付加されなくなる。その結果、全ての検出用列配線2について寄生容量が均一化されるので、タッチ容量の検出感度の行方向についてのばらつきが抑えられ、タッチ容量の検出精度が向上する。
【0059】
図12は、検出用行配線3を21本有する本発明に係るタッチパネルにおける検出用行配線3ごとのタッチ検出感度の実測値の一例を示す図である。図12においては、図9に示した従来技術での実測値も比較のためにプロットしている。図12に示すように、本発明においては、従来技術の場合よりも両端(第1行および第21行)の検出用行配線3の検出感度が高くなり、その他のものと近い値になっている。これは、両端の検出用行配線3の寄生容量が、周辺のまわり込みの影響を受けにくくなり、それ以外の検出用行配線3の寄生容量に近い値となったためである。
【0060】
本実施の形態では、ダミー行配線5を検出用行配線3の両方の外側に配設したが、その片方だけに配設させてもよい。その場合、ダミー行配線5が配設された側の検出用行配線3について上記の効果が得られる。検出用列配線2の外側に配設するダミー列配線4についても同様である。
【0061】
また本実施の形態では、ダミー行配線5を検出用行配線3の外側に1本ずつ配設したが、複数本ずつ配設させてもよい。それにより、検出用行配線3が周辺のまわり込み影響を受けることを防止する効果はさらに向上する。検出用列配線2の外側に配設するダミー列配線4についても同様である。
【0062】
なお、ダミー行配線5の構造(形状および幅)は検出用行配線3それぞれの構造と同じであることが好ましく、ダミー行配線5と最も外側の検出用行配線3との間隔は、検出用行配線3間の間隔と同じであることが好ましい。そうすることにより、最も外側の検出用行配線3とそれ以外の検出用行配線3とがより同等の環境に置かれることになり、検出用行配線3の寄生容量がより均一化される。例えば、検出用行配線3が図2のように複数の細線3bから成る場合は、ダミー行配線5も同様の構成であることが好ましい。但し、ダミー行配線5の構造・間隔はこれに限られず、本発明の効果が得られる範囲で、検出用行配線3とは異なる構造・間隔であってもよい。
【0063】
ダミー列配線4についても、検出用列配線2と同じ構造が好ましく、ダミー列配線4と最も外側の検出用列配線2との間隔は、検出用列配線2間の間隔と同じであることが好ましい。但し、ダミー列配線4の構造・間隔はこれに限られず、本発明の効果が得られる範囲で、検出用列配線2とは異なる構造・間隔であってもよい。
【0064】
ここで、図3を参照して、本実施の形態に係るタッチパネルの製造方法を説明する。まず、ガラスから成るベース基板9上に、検出用列配線2、ダミー列配線4、端子2aおよびその引き出し線となる第1の導電性薄膜として、アルミを主成分とする金属、たとえばNiを含むAl合金、例えばAlNiNdをスパッタリング法により形成する。成膜条件は、圧力0.2〜0.5Pa、DCパワー1.0〜2.5kW、パワー密度で言えば0.17〜0.43W/cm2、成膜温度は室温から180℃程度までの範囲を適用する。第1の導電性薄膜の膜厚は、150〜500nm形成する。
【0065】
現像液との反応を抑えるために、第1の導電性薄膜のAlNiNd層上に窒化したAlNiNdN層を形成してもよい。また上記AlNiNdの代わりに、AlNiSiやAlNiMgなどを使用してもよい。あるいは第1の導電性薄膜を、この後形成する検出用行配線3、ダミー行配線5、端子3aおよびその引き出し線となる第2の導電性薄膜と同じ材料としてもよい。そうすることにより、生産効率が向上する。またAl以外にも、低抵抗金属材料としてCuもしくはCu合金を用いることができ、この場合もAlと同様にスパッタリング法で成膜することができる。
【0066】
次に、フォトリソグラフィ技術により、第1の導電性薄膜の上に、検出用列配線2、ダミー列配線4、端子2aおよびその引き出し線の形状を有するレジストを形成する。そして当該レジストをマスクとして、例えば燐酸・硝酸・酢酸の混酸を用いたエッチングにより、第1の導電性薄膜をパターニングして、検出用列配線2、ダミー列配線4、端子2aおよびその引き出し線を形成する。なお、検出用列配線2、ダミー列配線4、端子2aおよびその引き出し線の断面形状をテーパー形状にすると、それらの上に形成する層間絶縁膜10のカバレッジ性が向上し、それにより上層の配線層の断線などの不良を防止できる。ここでは燐酸、硝酸および酢酸の混酸を用いたエッチングを用いたが、エッチング液の種類はこれに限定されない。また、ドライエッチを用いてもよい。
【0067】
次に、プラズマCVDなどの方法によって、検出用列配線2、ダミー列配線4、端子2aおよびその引き出し線を覆うように、層間絶縁膜10を形成する。層間絶縁膜10としては、誘電率の低い酸化珪素(SiO2)膜を使用する。酸化珪素膜の成膜条件は、SiH4流量が10〜50sccm、N2O流量が200〜500sccm、成膜圧力は50Pa、RFパワーが50〜200W、パワー密度で言えば0.015〜0.67W/cm2、成膜温度は200〜300℃とした。
【0068】
なお、層間絶縁膜10の膜圧は検出用列配線2と検出用行配線3との間に形成される寄生容量を低減するため可能な限り厚い方が望ましく、その膜厚は生産効率を考慮して決定すればよい。層間絶縁膜10はSiO2膜に限定されず、SiN膜やSiON膜でもよく、その場合は、SiO2膜の材料ガスに、水素、窒素およびNH3を加えて形成する。
【0069】
層間絶縁膜10の形成後、検出用行配線3、ダミー行配線5、端子3aおよびその引き出し線となる第2の導電性薄膜として、アルミを主成分とする金属、たとえばNiを含むAl合金、例えばAlNiNdをスパッタリング法により形成する。成膜条件は、圧力0.2〜0.5Pa、DCパワー1.0〜2.5kW、パワー密度で言えば0.17〜0.43W/cm2、成膜温度は室温〜180℃程度の範囲を適用する。膜厚は200〜1000nm形成する。
【0070】
現像液との反応を抑えるために、第2の導電性薄膜のAlNiNdの上に、窒化したAlNiNdN層を形成してもよい。AlNiNdの代わりにAlNiSiやAlNiMgなどを使用してもよい。また、Al以外にも低抵抗金属材料としてCuもしくはCu合金を用いることができ、この場合もAlと同様にスパッタリング法で成膜することができる。
【0071】
なお、第2の導電性薄膜の膜厚は可能な限り大きい方が望ましいが、この後のエッチング工程で発生するCD(Critical Dimension)ロス量および寸法ばらつきは、第2の導電性薄膜の膜厚が大きくなるほど大きくなる傾向にあり、またその膜圧を大きくすると生産性も悪化する。そのため、第2の導電性薄膜の厚さは、タッチの検出感度のばらつきを極力抑制できる範囲内で適切な膜厚に設定する。
【0072】
次に、フォトリソグラフィ技術により検出用行配線3、ダミー行配線5、端子3aおよびその引き出し線の形状を有するレジストを形成する。そして、それをマスクとして、例えば燐酸・硝酸・酢酸の混酸を用いるエッチングにより、第2の導電性薄膜をパターニングして、検出用行配線3、ダミー行配線5、端子3aおよびその引き出し線を形成する。このエッチング工程で用いるエッチング液の種類は、燐酸、硝酸および酢酸の混酸に限られるものではない。また、ドライエッチを用いてもよい。
【0073】
続いて、タッチパネルを保護する目的で保護膜11を形成する。保護膜11としては、表示パネルの画面の視認性を良くするために、層間絶縁膜10と同じ種類の膜がよい。例えば、層間絶縁膜10が酸化珪素(SiO2)膜の場合は、保護膜11はSiO2膜で形成する。保護膜11の膜厚は、カバレッジ性および生産性を考慮して決定すればよい。
【0074】
次に、フォトリソグラフィ技術により、端子2a,2a上が開口されたレジストを形成し、例えばCF4とO2の混合ガスのプラズマを用いるエッチングにより、保護膜11と層間絶縁膜10を一括でエッチングしてパターニングする。それにより、端子2a,2bの上面を露出するコンタクトホールが形成される。
【0075】
タッチパネルを表示パネルと組み合わせて使用する場合は、必要に応じて、表示パネルからのノイズによるタッチの検出精度低下を抑制するための透明な誘電膜12を、ベース基板9の下面に形成する。誘電膜12としては、表示パネルの視認性低下を防止するために、酸化インジウム(ITO)で形成することが好ましが、それに限定されるものではない。また誘電膜12の膜厚は、生産性を考慮して決定すればよい。
【0076】
以上の工程により、図3に示した構成のタッチスクリーン1が形成される。その後、タッチスクリーン1に、FPC13を介して検出回路15を備えたコントローラ基板14を接続させることで、タッチパネルを得ることができる。さらにタッチパネルのタッチスクリーン1を表示パネルの前面に配設して表示装置が組み立てられる。
【0077】
タッチパネルを表示装置の前面に配設する際、タッチスクリーン1を表示パネルに直接貼り付けることにより、従来必要であったタッチスクリーン1の保持機構を無くすことができ、装置全体を薄くすることが可能となる。さらに、タッチスクリーン1と表示パネルとが一体化され、その後の工程でタッチスクリーン1と表示パネルとの間隙にゴミ等が混入するが防止でき、表示パネルの視認性低下を防止することができる。
【0078】
<実施の形態2>
実施の形態1では、ダミー列配線4およびダミー行配線5を用いて、検出用列配線2および検出用行配線3のうち最も外側に配設されるものに、周辺のまわり込みの影響による寄生容量Cstr3が付加されることを防止し、それによって検出用列配線2の寄生容量および検出用行配線3の寄生容量を均一化した。実施の形態2では、ダミー列配線4およびダミー行配線5を用いずに、検出用列配線2の寄生容量および検出用行配線3の寄生容量の均一化を図る。
【0079】
図13は、実施の形態2に係るタッチパネルが備える検出用発振回路22の構成を示す図である。当該検出用発振回路22は、検出用行配線3(Wr1〜Wr8)のうち、最も外側(両端)に配設された検出用行配線Wr1,Wr8の幅を、他の検出用行配線Wr2〜Wr7の幅よりも狭くする。
【0080】
本実施の形態に係る検出用発振回路22も、実際には図5のように、検出用列配線2(Wc1〜Wc8)や行配線選択スイッチ回路20bも有しているが、説明の簡単のためそれらの図示は省略している。
【0081】
また図14は、図13のB1−B2線に沿った断面の一部を示す図であり、8本の検出用行配線Wr1〜Wr8のうち端の3本(Wr6〜Wr8)の近傍部分に対応している。ここでも、ベース基板9の下面には、タッチパネルが表示パネルからのノイズの影響を受けることを防止するために、ITOなどの透明な誘電膜12が形成されているものとする。
【0082】
図14に示すように、検出用行配線Wr1〜Wr8のそれぞれには、その下の誘電膜12との間に形成される寄生容量Cstr2が付加される。また従来構造(図8)と同様に、両端の検出用行配線Wr1,Wr8には、寄生容量Cstr2に加えて、周辺のまわり込みの影響による寄生容量Cstr3が付加される。
【0083】
但し、本実施の形態では、検出用行配線Wr1,Wr8の幅がそれ以外の検出用行配線Wr2〜Wr7の幅よりも狭いので、検出用行配線Wr1,Wr8と誘電膜12との間の寄生容量Cstr2は、それ以外の検出用行配線Wr2〜Wr7と誘電膜12との間の寄生容量Cstr2よりも小さくなる。検出用行配線Wr1,Wr8と誘電膜12との間の寄生容量Cstr2を「Cstr21」と表すと、検出用行配線Wr1,Wr8に付加される寄生容量Cstr1(図13)はCstr21+Cstr3となり、それ以外の検出用行配線Wr2〜Wr7に付加される寄生容量はCstr2となる。
【0084】
本実施の形態では、検出用行配線Wr1,Wr8の寄生容量Cstr1(Cstr21+Cstr3)と、それ以外の検出用行配線Wr2〜Wr7の寄生容量Cstr2とが等しくなるように、検出用行配線Wr1,Wr8の幅を設定する。その結果、検出用行配線Wr1〜Wr8の全てについて寄生容量が均一化されるので、タッチ容量の検出感度の列方向についてのばらつきが抑えられ、タッチの検出精度が向上する効果が得られる。
【0085】
ここでは説明を省略したが、検出用列配線2(Wc1〜Wc8)についても、その両端の検出用列配線2(Wc1,Wc8)の幅を、それ以外の検出用列配線2(Wc2〜Wc7)よりも狭くすれば、全ての検出用列配線2について寄生容量を均一化することができる。それにより、タッチ容量の検出感度の行方向についてのばらつきが抑えられ、タッチ容量の検出精度が向上する。
【0086】
本実施の形態では、両端の検出用行配線3の幅を狭くしたが、その片方だけの幅を狭くしてもよい。その場合、幅を狭くした側の検出用行配線3について上記の効果が得られる。検出用列配線2についても同様である。
【0087】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 タッチスクリーン、2 検出用列配線、3 検出用行配線、4 ダミー列配線、5 ダミー行配線、2a,3a 端子、2b,3b 細線、8 端子群、9 ベース基板、10 層間絶縁膜、11 保護膜、12 誘電膜、13 FPC、14 コントローラ基板、15 検出回路、20a 列配線選択スイッチ回路、20b 行配線選択スイッチ回路、21 発振回路、22 検出用発振回路、23a 第1計数回路、23b 第2計数回路、24 タッチ座標算出回路、25 制御回路、30 オペアンプ、31 出力端子、32 検出帰還路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配設された複数の検出用配線を備えるタッチスクリーンと、
前記複数の検出用配線のうち最も外側の検出用配線の寄生容量を、他の検出用配線の寄生容量と同等に設定する寄生容量設定手段とを備える
ことを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記寄生容量設定手段は、
前記最も外側の検出用配線のさらに外側に、当該最も外側の検出用配線に平行に配設されたダミー配線である
を有するタッチスクリーンを備える
請求項1記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記ダミー配線の形状および幅は、前記複数の検出用配線のそれぞれと同じであり、
前記ダミー配線と前記最も外側の検出用配線との間隔は、前記複数の検出用配線間の間隔と同じである
請求項2記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記ダミー配線が、前記最も外側の検出用配線のさらに外側に複数本設けられている
請求項2記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記複数の検出用配線および前記ダミー配線のそれぞれは、複数の金属細線の束から成っている
請求項2から請求項4のいずれか記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記複数の検出用配線および前記ダミー配線のそれぞれは、透明な導電材料により形成されている
請求項2から請求項4のいずれか記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記寄生容量設定手段は、前記最も外側の検出用配線であり、
前記最も外側の検出用配線は、他の検出用配線よりも幅が狭く形成されている
請求項1記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記複数の検出用配線として、列方向に延在する複数の検出用列配線と、行方向に延在する複数の検出用行配線とを備える
請求項1から請求項7のいずれか一項記載のタッチパネル。
【請求項9】
前記複数の検出用列配線および前記複数の検出用行配線を順次選択するスイッチ回路と、
前記スイッチ回路により選択された前記検出用配線の容量成分に応じた周期で発振する発振回路と、
前記発振回路の発振周期の変化に基づき、前記タッチスクリーンに接触した指示体の座標を算出する座標算出回路とをさらに備える
請求項8記載のタッチパネル。
【請求項10】
請求項9記載のタッチパネルの前記タッチスクリーンが前面に配設された表示パネルを備える表示装置。
【請求項11】
前記タッチパネルのタッチスクリーンは、前記表示パネルの前面に貼り付けられている
請求項10記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−84166(P2013−84166A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224533(P2011−224533)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】