説明

タッチパネルの容量検出回路およびそれを用いたタッチパネル入力装置、電子機器

【課題】相互キャパシタ方式の容量センサの容量検出回路を提供する。
【解決手段】演算増幅器32の第1入力端子には、所定の基準電圧VREFが印加される。積分キャパシタCINTは、演算増幅器32の出力端子とその第2入力端子の間に設けられる。駆動バッファ34は、演算増幅器32の第2入力端子の電位を受ける。第1スイッチSW1は、駆動バッファ34の出力端子と受信電極12の間に設けられる。第2スイッチSW2は、受信電極12と演算増幅器32の第2入力端子の間に設けられる。オフセット用キャパシタCOFSの第1端子の電位は固定され、第3スイッチSW3は、オフセット用キャパシタCOFSの第2端子と演算増幅器32の第2入力端子の間に設けられる。第4スイッチSW4は、オフセット用キャパシタCOFSと並列に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互キャパシタンス方式のタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のコンピュータや携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器は、指で接触することによって電子機器を操作するための入力装置を備えるものが主流となっている。こうした入力装置として、相互キャパシタンス(Mutual Capacitance)方式が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第09/078944号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、相互キャパシタ方式の容量センサの容量検出回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、互いに容量的に結合された送信電極および受信電極を含む容量センサの容量変化を検出する容量検出回路に関する。容量検出回路は、送信電極に周期的な送信信号を印加する送信回路と、その第1入力端子に所定の基準電圧が印加された演算増幅器と、演算増幅器の出力端子とその第2入力端子の間に設けられた積分キャパシタと、演算増幅器の第2入力端子の電位を受ける駆動バッファと、駆動バッファの出力端子と受信電極の間に設けられた第1スイッチと、受信電極と演算増幅器の第2入力端子の間に設けられた第2スイッチと、その第1端子の電位が固定されたオフセット用キャパシタと、オフセット用キャパシタの第2端子と演算増幅器の第2入力端子の間に設けられた第3スイッチと、オフセット用キャパシタと並列に設けられた第4スイッチと、を備える。
【0006】
この態様によると、第3スイッチをオンしてオフセット用キャパシタを積分キャパシタと接続することにより、演算増幅器の出力電圧を所定の電圧分、オフセットさせることができる。これにより、1回のセンシングあたりの演算増幅器の出力電圧の変化量が小さくなるため、センシング(積分)の回数を増やすことによりノイズ耐性を向上させたり、あるいは積分する電圧値を大きくすることにより、ノイズ耐性を向上させ、あるいは検出精度を高めることができる。
【0007】
本発明のさらに別の態様も、容量検出回路である。この容量検出回路は、互いに容量的に結合された送信電極および受信電極を含む容量センサを複数有する容量センサ群の容量変化を検出する。この容量検出回路は、送信電極に周期的な送信信号を印加する送信回路と、それに割り当てられたひとつの受信電極に応じた容量変化を検出する第1積分回路と、それに割り当てられたひとつの受信電極に応じた容量変化を検出する第2積分回路と、第1積分回路の出力電圧と、第2積分回路の出力電圧の差分を増幅する差分増幅器と、を備える。第1積分回路および第2積分回路はそれぞれ、その第1入力端子に所定の基準電圧が印加された演算増幅器と、演算増幅器の出力端子とその第2入力端子の間に設けられた積分キャパシタと、演算増幅器の第2入力端子の電位を受ける駆動バッファと、駆動バッファの出力端子と対応する受信電極の間に設けられた第1スイッチと、対応する受信電極と演算増幅器の第2入力端子の間に設けられた第2スイッチと、を含む。
【0008】
この態様では、各容量センサの容量変化を個別に検出するのではなく、ある容量センサと別の容量センサの相対的な変化を検出する。それにより同相ノイズ(コモンモードノイズ)の影響を低減するとともに、ユーザの接触による容量変化を高精度で検出できる。
【0009】
第1積分回路および第2積分回路には、隣接する受信電極が割り当てられてもよい。
隣接する受信電極には、コモンモードノイズが混入する確率が高い。したがってこの態様によれば、ノイズの影響を好適に除去できる。
【0010】
本発明の別の態様は、入力装置である。この入力装置は、互いに容量的に結合された送信電極および受信電極を含む容量センサと、容量センサの容量変化を検出する上述のいずれかの態様の容量検出回路と、を備える。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、電子機器である。この電子機器は、上述の入力装置を備える。
【0012】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のある態様によれば、相互キャパシタ方式の容量センサを高精度で検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】タッチパネル入力装置を備える電子機器の構成を示す回路図である。
【図2】第1の実施の形態に係る容量検出回路を有する入力装置の構成を示す回路図である。
【図3】図2の容量検出回路の第1モードの動作を示すタイムチャートである。
【図4】図2の容量検出回路の第2モードの動作を示すタイムチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係る容量検出回路を備える入力装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0017】
図1は、実施の形態に係るタッチパネル入力装置(単に入力装置という)2を備える電子機器1の構成を示す回路図である。入力装置2は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)8の表層に配置され、タッチパネルとして機能する。入力装置2は、ユーザが指やペンなど(以下、指6)でタッチしたポイント(点)のX座標およびY座標を判定する。
【0018】
入力装置2は、タッチパネル4および制御回路(容量検出回路)100を備える。タッチパネル4は相互キャパシタンス方式のマトリクス型タッチパネルであり、マトリクスの列ごとに設けられた複数の送信電極10と、マトリクスの列ごとに設けられた複数の受信電極12を備える。行と列の割り当ては逆でもよい。送信電極10と受信電極12の各交点において、2つの電極は互いに容量的に結合される(Capacitively coupled)。各交点の送信電極10と受信電極12のペアは、ひとつの容量センサ(Capacitive sensor)5を形成する。つまりタッチパネル4は、マトリクス状に配置された複数の容量センサ5を含む。ユーザの指やペンなどの物体が、ある容量センサ5に接触あるいは近接すると、その容量センサ5が形成する相互キャパシタンスが変化する。
【0019】
容量検出回路100は、複数の送信電極10に対して、順にサイクリックに送信信号を印加し、容量検出の対象となる列を選択する。容量検出回路100は、選択された送信電極10が、複数の受信電極12それぞれとの間で形成する容量の変化を検出する。選択された送信電極10が列座標、容量変化が発生した受信電極12が行座標に対応する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態に係る容量検出回路100を有する入力装置2の構成を示す回路図である。図2には、ひとつの送信電極10と、それと直交する複数の受信電極12を有するタッチパネル4が示されるが、送信電極10は複数設けられてもよい。
【0021】
送信電極10と、複数の受信電極12〜12はそれぞれ容量的に結合され、それらの間には、相互キャパシタンスCを含む容量センサ5〜5が形成される。容量検出回路100は、送信回路20、積分回路30、サンプルホールド回路40、増幅器42、A/Dコンバータ44、コンパレータ46を含む。容量検出回路100は、複数の容量センサ5それぞれの相互キャパシタンスCの変化を、順に検出する。
【0022】
容量検出回路100は、送信端子(TX端子)と、受信電極12ごとに設けられた受信端子(RX端子)を有する。容量検出回路100のTX端子は送信電極10と接続され、容量検出回路100の各RX端子は、対応する受信電極12と接続される。
【0023】
送信回路20は、周期的な送信信号S1を発生し、送信電極10に印加する。信号発生器22は、周期的なクロック信号を発生する。ドライバ24は、クロック信号を受け、それと同期した送信信号S1を送信電極10に出力する。送信信号S1は、第1電圧レベル(たとえば電源電圧Vdd)と、第2電圧レベル(たとえば接地電圧Vss)を交互に繰り返す周期信号である。複数の送信電極10が設けられるタッチパネル4においては、選択される送信電極10に送信信号S1が印加され、その他の送信電極10には、固定的な電圧レベル、たとえば接地電圧Vssが印加される。
【0024】
積分回路30は、複数の受信電極12それぞれが形成する容量センサ51〜mの相互キャパシタンスCの変化量を検出する。積分回路30は、演算増幅器32、積分キャパシタCINT、駆動バッファ34、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、オフセット用キャパシタCOFS、第3スイッチSW3、第4スイッチSW4、第5スイッチSW5を備える。
【0025】
演算増幅器32の第1入力端子(非反転入力端子)には、所定の基準電圧VREFが印加される。積分キャパシタCINTは、演算増幅器32の出力端子とその第2入力端子(反転入力端子)の間に設けられる。駆動バッファ34は、演算増幅器32の反転入力端子の電位を受ける。たとえば駆動バッファ34はボルテージフォロア回路である。
【0026】
複数の第1スイッチSW11〜mはそれぞれ、受信電極121〜mごとに設けられる。第1スイッチSW1は、駆動バッファ34の出力端子と、対応する受信電極12の間に設けられる。複数の第2スイッチSW21〜mもそれぞれ、受信電極121〜mごとに設けられる。第2スイッチSW2は、対応する受信電極12と演算増幅器32の反転入力端子の間に設けられる。
【0027】
複数の第5スイッチSW51〜mもそれぞれ、受信電極121〜mごとに設けられる。第5スイッチSW51〜mは、容量検出回路100の非動作状態においてオンとなり、それぞれが接続されるラインの電位を固定するために設けられる。
【0028】
複数の第1スイッチSW11〜mおよび複数の第2スイッチSW21〜mは、検出対象の受信電極12を選択するためのセレクタ(マルチプレクサ)MUXとして把握することもできる。
【0029】
オフセット用キャパシタCOFSの第1端子は接地され、その電位が固定される。第3スイッチSW3は、オフセット用キャパシタCOFSの第2端子と演算増幅器32の反転入力端子の間に設けられる。第4スイッチSW4は、オフセット用キャパシタCOFSと並列に設けられる。第4スイッチSW4がオンすると、オフセット用キャパシタCOFSに蓄えられた電荷が放電する。オフセット用キャパシタCOFSの電荷が放電された状態で、第3スイッチSW3がオンすると、積分キャパシタCINTと積分キャパシタCINTとの間で電荷移動が起こり、演算増幅器32の出力電圧Vsが所定幅VOFSだけシフトする。
【0030】
第3スイッチSW3のオンによる電荷移動の前後で、オフセット用キャパシタCOFSの電圧変化はVREFであり、積分キャパシタCINTの電圧変化量はVOFSである。したがって電荷保存則から以下の関係式が成り立つ。
OFS×VREF=CINT×VOFS
【0031】
たとえばVREF=2V、2つの容量の比COFS/CINT=1/10とするとき、第3スイッチSW3を1回オンするごとに、演算増幅器32の出力電圧Vsは、シフト量VOFS=0.2Vだけシフトする。言い換えれば、オフセット用キャパシタCOFSの容量値に応じて、シフト量を調節できる。
【0032】
送信信号S1が印加されると、相互キャパシタンスCが充電され、その容量値に応じた電荷が蓄えられる。そして送信信号S1の電圧レベルが変化すると、相互キャパシタンスCに蓄えられた電荷が充放電され、電流IRXが発生する。積分回路30は、この電流IRXを積分し、容量変化に応じた検出電圧Vsを生成する。
【0033】
サンプルホールド回路40は、検出電圧Vsをサンプルホールドする。増幅器42は、必要に応じてサンプルホールドされた検出電圧Vsを増幅する。A/Dコンバータ44は、増幅された検出電圧Vsをデジタル値に変換する。このデジタル値は、各容量センサ5の容量変化を示す。
【0034】
制御部50は、送信回路20、スイッチSW1〜SW5のオン、オフ状態、サンプルホールド回路40のサンプルホールド動作をシーケンス制御する。制御部50は、第1モードと第2モードで切りかえ可能に構成される。
【0035】
1. 第1モード
このモードにおいて制御部50は、積分回路(演算増幅器32)30による1回の積分動作(センシング)ごとに、第3スイッチSW3をオンすることにより、前もって電荷が放電されたオフセット用キャパシタCOFSを演算増幅器32の反転入力端子に接続する。
【0036】
2. 第2モード
このモードにおいて制御部50は、演算増幅器32の出力電圧Vsが所定のしきい値電圧VTHに達するたびに、第3スイッチSW3をオンする。コンパレータ46は、検出電圧Vsとしきい値電圧VTHを比較し、第2モードにおいて第3スイッチSW3をオンするタイミングを検出する。制御部50は、コンパレータ46の検出結果にもとづき第3スイッチSW3をオンする。
【0037】
以上が容量検出回路100の構成である。続いてその動作を説明する。図3は、図2の容量検出回路100の第1モードの動作を示すタイムチャートである。スイッチの状態は、ハイレベルがオンを、ローレベルがオフを示す。
【0038】
ここでは説明の簡潔化、理解の容易化のために、ひとつの受信電極12に着目し、それが形成する相互キャパシタンスCを検出する動作を説明する。
【0039】
送信信号S1が第1電圧レベルVddから第2電圧レベルVssに変化し、あるいは第2電圧レベルVssから第1電圧レベルVddに変化すると、受信電極12からRX端子を介して、相互キャパシタンスCに応じた電流IRXが流れる。容量検出回路100は、第2電圧レベルVssから第1電圧レベルVddに変化することにより生ずる電流IRXのみを検出する(整流動作)。
【0040】
演算増幅器32の反転入力端子と非反転入力端子の電圧は等しくなるため、駆動バッファ34の入力電圧は、基準電圧VREFと等しくなる。送信信号S1が第2電圧レベルVssの期間に、第1スイッチSW1がオンする。これにより駆動バッファ34の出力が受信電極12と接続され、受信電極12の電位が基準電圧VREFに初期化される。
【0041】
続いて第1スイッチSW1がオフし、第3スイッチSW3がオンする。第3スイッチSW3のオンに先立ち、第4スイッチSW4をオンすることにより(不図示)、オフセット用キャパシタCOFSの電荷はゼロに放電されている。第3スイッチSW3をオンすると、オフセット用キャパシタCOFSが積分キャパシタCINTと接続される。これにより、演算増幅器32の出力電圧Vsは、所定のオフセット電圧VOFSだけ高電位側にシフトする。
【0042】
第3スイッチSW3をオフし、オフセット用キャパシタCOFSが積分キャパシタCINTと切り離された状態で、第2スイッチSW2がオンとなる。第2スイッチSW2がオンの期間に、送信信号S1が第2電圧レベルVssから第1電圧レベルVddに変化すると、第2スイッチSW2を経由して、相互キャパシタンスCの容量値に応じた電流IRXが、積分キャパシタCINTに流れ、積分処理が行われる。サンプルホールド回路40は、積分キャパシタCINTの充放電が終了したタイミングにおける検出電圧Vsをサンプルホールドする(S/H)。
【0043】
以上が第1モードの動作である。
【0044】
このように、オフセット用キャパシタCOFSを設け、それを積分処理ごとに積分キャパシタCINTと接続することにより、検出電圧Vsを毎サイクル、オフセットさせることができる。容量検出回路100が検出すべきは、接触により生ずる相互キャパシタンスCの変化であるため、接触の有無にかかわらず存在する定常的な容量の影響はキャンセルして構わない。容量検出回路100によれば、オフセットによってこのような定常的な容量の影響をキャンセルすることができる。
【0045】
検出電圧Vsが取り得る電圧範囲は限定されている。検出電圧Vsのオフセットにより、1回のセンシングで発生する検出電圧Vsの変化を小さくできるため、同じ電圧範囲内での回数を、オフセットを行わない場合に比べて増やすことができる。あるいは、1回のセンシングにおける積分する電圧値を大きくすることができるため、検出精度を高めることができ、あるいはノイズに対する耐性を高めることができる。
【0046】
ここで比較のために、オフセット用キャパシタCOFSではなく、演算増幅器32の反転入力端子に接続される電流源を設け、電流を流し込むことによりオフセットを行う場合について考察する。この比較技術では、オフセット量VOFSは、電流を供給する時間と、電流量の積で定まる。ここで容量検出回路100は、低消費電力モードにおいて、センシング周波数を落とす場合がある。この場合、積分回路30のセンシング周波数が変化するとそれによって電流源がオンする時間が変化し、オフセット量が変化するという問題が生ずる。
【0047】
これに対して実施の形態に係る容量検出回路100では、オフセット用キャパシタCOFSと積分キャパシタCINTの間の電荷の移動が瞬時に起こるため、オフセット量VOFSが第3スイッチSW3のオン時間の影響を受けにくいという利点を有する。
【0048】
また比較技術では、サンプルホールドのタイミングによって、検出電圧Vsのレベルが変化するため、検出電圧Vsがジッタの影響を受けやすい。これに対して容量検出回路100によれば、サンプルホールドのタイミングがジッタの影響を受けても、それより前に検出電圧Vsのレベルが安定化しているため、ジッタの影響を受けにくいという利点を有する。
【0049】
また比較技術ではプロセスばらつきや温度変動によって、電流源が生成する電流値が変動すると、オフセット量VOFSが変動してしまう。これに対して容量検出回路100では、オフセット電圧VOFSは、積分キャパシタCINTとオフセット用キャパシタCOFSの容量の比COFS/CINTで定まるところ、それらが同じICチップに集積化される場合、容量比COFS/CINTの変動は小さいため、オフセット電圧VOFSの変動を小さくできる。
【0050】
続いて第2モード(折り返しモード)の動作を説明する。
図4は、図2の容量検出回路100の第2モードの動作を示すタイムチャートである。第2モードでは、センシングごとに検出電圧Vsをオフセットするのではなく、検出電圧Vsがしきい値電圧VTHに達するたびに第3スイッチSW3をオンし、検出電圧Vsをオフセットさせる。第2モードでは、検出電圧Vsが折り返されることから、折り返しモードともいう。
【0051】
なお第3スイッチSW3を1回オンさせることにより得られるオフセット量が小さい場合、第3スイッチSW3を複数回オンさせることにより、必要なオフセット量VOFSを実現してもよい。
【0052】
第2モードによれば、A/Dコンバータ44による変換回数を増やすことなく、積分回数もしくは積分量を大きくすることができる。
【0053】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態に係る容量検出回路100aを備える入力装置2aの構成を示す回路図である。
【0054】
タッチパネル4の構成は図1と同様である。容量検出回路100aは、2つの積分回路30a、30bを備える。
積分回路30aおよび30bは、図1の積分回路30と同様に構成される。RX1〜m端子ごとに、マルチプレクサMUX1〜mが設けられる。マルチプレクサMUXの第1スイッチSW1aは、受信電極12と第1積分回路30aの駆動バッファ34の出力との間に設けられ、第1スイッチSW1bは、受信電極12と第2積分回路30bの駆動バッファ34の出力との間に設けられる。第2スイッチSW2aは、受信電極12と第1積分回路30aの演算増幅器32との間に設けられ、第2スイッチSW2bは、受信電極12と第2積分回路30bの演算増幅器32との間に設けられる。各マルチプレクサMUXによって、対応する受信電極12を、積分回路30a、30bのいずれか一方に選択的に割り当て可能となっている。
【0055】
第1積分回路30aは、それに割り当てられたひとつの受信電極12に応じた容量変化を検出する。第2積分回路30bは、それに割り当てられたひとつの受信電極12に応じた容量変化を検出する。サンプルホールド回路40a、40bはそれぞれ、積分回路30a、30bの出力電圧Vsa、Vsbを、サンプルホールドする。
【0056】
コンパレータ46a、46bはそれぞれ、積分回路30a、30bそれぞれの出力電圧Vsa、Vsbを、所定のしきい値電圧VTHと比較する。比較結果は、上述した折り返しモードに利用される。
【0057】
容量検出回路100aは、差動モードとシングルエンドモードとが切りかえ可能に構成される。
【0058】
1. 差動モード
このモードでは、第7スイッチSW7がオン、第6スイッチSW6a、SW6b、第8スイッチSW8がオフである。差動増幅器43は、サンプルホールドされた第1積分回路30aの出力電圧Vsaと、サンプルホールドされた第2積分回路30bの出力電圧Vsbの差分を増幅する。差動増幅器43の出力は、第7スイッチSW7を介してA/Dコンバータ44に入力される。
【0059】
2. シングルエンドモード
このモードでは、第7スイッチSW7がオフ、第8スイッチSW8がオンである。第6スイッチSW6a、SW6bは、サンプルホールド回路40a、40bの出力の一方を選択する。増幅器42は、選択された一方の検出電圧Vsを増幅し、第8スイッチSW8を介してA/Dコンバータ44に入力する。
【0060】
以上が容量検出回路100aの構成である。続いてその動作を説明する。
【0061】
1. シングルエンドモード
シングルエンドモードの動作は、基本的に第1の実施の形態と同様である。このモードにおいては、積分回路30a、30bの一方のみをアクティブとし、アクティブな積分回路30を利用して、複数の受信電極121〜mそれぞれの容量変化を検出できる。
あるいは、積分回路30a、30bの両方を並列的に動作させ、2つの受信電極12の容量変化を同時に検出してもよい。2つの受信電極12の容量変化に応じた検出電圧Vsa、Vsbをサンプルホールドした後、A/Dコンバータ44によって2つの検出電圧Vsa、Vsbを時分割でデジタル値に変換すればよい。
【0062】
2. 差動モード
差動モードでは、2つの積分回路30a、30bの両方が並列的に動作し、それぞれに割り当てられた2つの受信電極12、12の容量を同時に検出する。そして2つの受信電極12、12の容量変化に応じた検出電圧Vsa、Vsbをサンプルホールドした後、差動増幅器43によって差分を増幅し、A/Dコンバータ44増幅結果をデジタル値に変換する。
【0063】
たとえば差動モードのひとつの動作例では、k=j+1とし、隣接する2つの受信電極12が、第1積分回路30a、第2積分回路30bに割り当てられる。そして、変数jをひとつずつインクリメントすることにより、すべての受信電極121〜mの容量変化を検出する。
なお受信電極12の容量変化を検出する場合、受信電極12を積分回路30aに、受信電極12、あるいは別に設けられた基準となる電極(不図示)を積分回路30bに割り当ててもよい。基準となる電極は、いずれかのRX端子と接続される。
【0064】
第1の実施の形態、あるいは第2の実施の形態のシングルエンドモード動作では、タッチパネル4にノイズが混入すると、そのノイズが容量変化として検出され、ユーザによる接触が誤検出される場合がある。
ここである受信電極12にノイズが混入するとき、それと隣接する受信電極12j+1にも、受信電極12と同相のノイズが混入する確率は高くなる。このような場合に、差動モードで動作させると、積分回路30a、30bに割り当てられる2つの受信電極12に同相で混入するコモンモードのノイズの影響を除去できるため、誤検出を防止できる。
【0065】
差動モードの別の動作例では、第1積分回路30aに対して、受信電極121〜mを時分割で順に割り当て、第2積分回路30bに対しては、受信電極121〜mとは別に設けられた基準電極(不図示)を割り当ててもよい。基準電極としてアンテナラインを用いてもよい。この場合でも、検出対象の受信電極12と基準電極とにコモンモードノイズが混入している場合、その影響を低減することができる。
【0066】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0067】
1…電子機器、2…入力装置、4…タッチパネル、5…容量センサ、6…指、10…送信電極、12…受信電極、20…送信回路、22…ドライバ、30…積分回路、30a…第1積分回路、30b…第2積分回路、32…演算増幅器、34…駆動バッファ、CINT…積分キャパシタ、COFS…オフセット用キャパシタ、SW1…第1スイッチ、SW2…第2スイッチ、SW3…第3スイッチ、SW4…第4スイッチ、40…サンプルホールド回路、42…増幅器、43…差動増幅器、44…A/Dコンバータ、46…コンパレータ、50…制御部、100…容量検出回路、C…相互キャパシタンス、S1…送信信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに容量的に結合された送信電極および受信電極を含む容量センサの容量変化を検出する容量検出回路であって、
前記送信電極に周期的な送信信号を印加する送信回路と、
その第1入力端子に所定の基準電圧が印加された演算増幅器と、
前記演算増幅器の出力端子とその第2入力端子の間に設けられた積分キャパシタと、
前記演算増幅器の前記第2入力端子の電位を受ける駆動バッファと、
前記駆動バッファの出力端子と前記受信電極の間に設けられた第1スイッチと、
前記受信電極と前記演算増幅器の前記第2入力端子の間に設けられた第2スイッチと、
その第1端子の電位が固定されたオフセット用キャパシタと、
前記オフセット用キャパシタの第2端子と前記演算増幅器の前記第2入力端子の間に設けられた第3スイッチと、
前記オフセット用キャパシタと並列に設けられた第4スイッチと、
を備えることを特徴とする容量検出回路。
【請求項2】
前記演算増幅器による1回の積分動作ごとに前記第3スイッチをオンすることにより、前もって前記第4スイッチを介して電荷が放電された前記オフセット用キャパシタを前記演算増幅器の前記第2入力端子に接続することを特徴とする請求項1に記載の容量検出回路。
【請求項3】
前記演算増幅器の出力電圧が所定のしきい値電圧に達するたびに、前記第3スイッチをオンすることにより、前もって前記第4スイッチを介して電荷が放電された前記オフセット用キャパシタを前記演算増幅器の前記第2入力端子に接続することを特徴とする請求項1に記載の容量検出回路。
【請求項4】
互いに容量的に結合された送信電極および受信電極を含む容量センサと、
前記容量センサの容量変化を検出する請求項1から3のいずれかに記載の容量検出回路と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項5】
請求項4に記載の入力装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
互いに容量的に結合された送信電極および受信電極を含む容量センサを複数有する容量センサ群の容量変化を検出する容量検出回路であって、
前記送信電極に周期的な送信信号を印加する送信回路と、
それに割り当てられたひとつの受信電極に応じた容量変化を検出する第1積分回路と、
それに割り当てられたひとつの受信電極に応じた容量変化を検出する第2積分回路と、
前記第1積分回路の出力電圧と、前記第2積分回路の出力電圧の差分を増幅する差分増幅器と、
を備え、
前記第1積分回路および前記第2積分回路はそれぞれ、
その第1入力端子に所定の基準電圧が印加された演算増幅器と、
前記演算増幅器の出力端子とその第2入力端子の間に設けられた積分キャパシタと、
前記演算増幅器の前記第2入力端子の電位を受ける駆動バッファと、
前記駆動バッファの出力端子と対応する受信電極の間に設けられた第1スイッチと、
対応する受信電極と前記演算増幅器の前記第2入力端子の間に設けられた第2スイッチと、
を含むことを特徴とする容量検出回路。
【請求項7】
前記第1積分回路には検出対象の受信電極が割り当てられ、前記第2積分回路には、検出対象の受信電極と隣接する受信電極が割り当てられることを特徴とする請求項6に記載の容量検出回路。
【請求項8】
前記第1積分回路には検出対象の受信電極が割り当てられ、前記第2積分回路には、基準となる電極が割り当てられることを特徴とする請求項6に記載の容量検出回路。
【請求項9】
前記第1積分回路および前記第2積分回路はそれぞれ、
その第1端子の電位が固定されたオフセット用キャパシタと、
前記オフセット用キャパシタの第2端子と前記演算増幅器の前記第2入力端子の間に設けられた第3スイッチと、
前記オフセット用キャパシタと並列に設けられた第4スイッチと、
をさらに含むことを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の容量検出回路。
【請求項10】
互いに容量的に結合された送信電極および受信電極を含む容量センサを複数有する容量センサ群と、
前記容量センサ群の容量変化を検出する請求項6から9のいずれかに記載の容量検出回路と、
を備えることを特徴とする入力装置。
【請求項11】
請求項10に記載の入力装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−164133(P2012−164133A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24001(P2011−24001)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】