説明

タッチパネルの製造方法、タッチパネル、オリゴマーの析出防止方法

【課題】加熱によるオリゴマーの析出を防止できるタッチパネルの製造方法を提供する。
【解決手段】製造工程に加熱工程を含んでなる、透明基板1の少なくとも片面に透明導電層2を有してなる静電容量式タッチパネル7の製造方法において、前記透明基板1として、透明プラスチックフィルム11の表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜12を有する構成を一部に含む積層体、を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タッチパネルの製造方法、タッチパネル、オリゴマーの析出防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムは、LCD部材のプリズムシート、レンズシート、拡散板、反射板、タッチパネル等のベースフィルムとしてや、反射防止用やディスプレイ防爆用のベースフィルムなど、各種光学用途に広く使用されている。これら光学用途において明るく鮮明な画像を得るために、光学用フィルムとして用いられるベースフィルムは、その使用形態から透明性が良好で、かつ画像に影響を与える異物やキズ等の欠陥がないことが必要となる。
【0003】
ところが近年、その用途が多様化するにつれて、フィルムの加工条件や使用条件が多様化し、プラスチックフィルムを加熱処理した際に、フィルム表面に、該フィルムの非架橋成分であるオリゴマーと称される重合体(環状三量体)が析出するとの問題が生じている。フィルム表面へのオリゴマーの析出が激しい場合、フィルム加工時にオリゴマーが工程内に付着して汚染したり、高度な透明性が必要な用途に使用できなくなるなどの諸問題を生じる。
【0004】
従来、フィルム表面へのオリゴマーの析出を防止する方法として種々の提案がなされている。例えば特許文献1では、抵抗膜方式の透明タッチパネルにおいて、固定電極支持体と対向して配置され、上面にハードコート層が形成された可動電極フィルムの下面に、シロキサン系樹脂、アクリルエポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂などの樹脂で構成され、厚みが0.5μm以上の透明な収縮性樹脂層(被膜)を介して、可動電極を形成する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、プラスチックフィルムの表面に金属酸化物ゾルと有機金属化合物を含有する被膜を設けたシートを、透明基板として用いた抵抗膜方式のタッチパネルが記載されている。また、特許文献3では、プラスチックフィルムの表面にセルロース誘導体を含有する被膜を設けたシートを、透明基板として用いた抵抗膜方式のタッチパネルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−13695号公報
【特許文献2】特開2010−173296号公報
【特許文献3】特開2010−253934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、可動電極フィルムの下面に透明な被膜を形成することにより、可動電極フィルムの非架橋成分であるオリゴマーが可動電極側へ析出し、白化状態となって透明性が失われ、外観及び視認性が悪化することを防止するというものである。しかし、厚みが0.5μm以上と比較的厚く形成されているため加工適正が悪く、折り曲げると被膜にクラックを生じるおそれがあった。また、被膜とプラスチックフィルムとの密着性が不十分であるため、両者の間で界面剥離が起きるおそれがあった。
【0008】
特許文献2,3は、被膜の厚みが120nm以下であり十分に薄膜といえるものであるが、被膜とプラスチックフィルムとの密着性が不十分であり、両者の間で界面剥離が起きるおそれがあった。
【0009】
上記のように、被膜にクラックや界面剥離が生じると、当該部分からオリゴマーが析出しやすくなる問題がある。
【0010】
なお、特許文献1の場合、被膜の厚みをさらに上げていけば(たとえば3μm以上)、厚み方向の一部でクラックが生じてもオリゴマーの析出を防止し得るが、薄膜化の要請に反するとともに、製造過程でロール状に巻き取った際にブロッキングしやすくなってしまう。
【0011】
そこで本発明は、密着性不良による界面剥離やクラックを起因とした加熱によるオリゴマーの析出を防止できるタッチパネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決する本発明の静電容量式タッチパネルの製造方法は、製造工程に加熱工程を含んでなる、透明基板の少なくとも片面に透明導電層を有してなる静電容量式タッチパネルの製造方法において、前記透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有する構成を一部に含む積層体、を用いてなることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の抵抗膜式タッチパネルの製造方法は、製造工程に加熱工程を含んでなる、透明基板上に透明導電層を有してなる上部電極および下部電極の透明導電層どうしを対向するようにスペーサーを介して配置してなる抵抗膜方式タッチパネルの製造方法において、前記上部及び/又は下部の透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有する構成を一部に含む積層体、を用いてなることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の静電容量式タッチパネルは、透明基板の少なくとも片面に透明導電層を有してなる静電容量式タッチパネルにおいて、前記透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有する構成を一部に含む積層体、を用いてなることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の抵抗膜式タッチパネルは、透明基板上に透明導電層を有してなる上部電極および下部電極の透明導電層どうしを対向するようにスペーサーを介して配置してなる抵抗膜方式タッチパネルにおいて、前記上部及び/又は下部の透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有する構成を一部に含む積層体、を用いてなることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のオリゴマーの析出防止方法は、透明プラスチックフィルム表面へのオリゴマーの析出を防止する方法であって、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を形成する工程を含むことを特徴とするものである。
【0017】
本発明において「オリゴマー」とは、加熱処理後、結晶化して透明プラスチックフィルムの表面に析出する低分子量物のうち、透明プラスチックフィルムを構成するポリマーの三量体成分を主とするものと定義する。また、「オリゴマーの析出を防止する」とは、透明プラスチックフィルムを140〜150℃の温度で4時間、加熱処理した後、透明プラスチックフィルムの被膜形成面側を200倍の顕微鏡で観察した際に10視野当たり(面積0.5mm
)、円相当径で1μmφ以上の析出物が50個未満、好ましくは20個以下、さらに好ましくは10個以下であることをいう。なお、析出物の円相当径で1μmφ未満の場合、顕微鏡レベルではその存在を確認することは困難である。しかしながら、上述した加熱処理後に、耐湿試験を行うと、析出物が成長し、円相当径で1μmφ以上となって顕微鏡で確認できるレベルになることもある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、密着性不良による界面剥離やクラックを起因とした加熱によるオリゴマーの析出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の静電容量式タッチパネルの一実施形態を示す断面図
【図2】本発明の静電容量式タッチパネルの他の実施形態を示す断面図
【図3】本発明の抵抗膜式タッチパネルの一実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の静電容量式タッチパネルの製造方法の実施の形態について説明する。本発明の静電容量式タッチパネルの製造方法は、製造工程に加熱工程を含んでなる、透明基板の少なくとも片面に透明導電層を有してなる静電容量式タッチパネルの製造方法において、前記透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有する構成を一部に含む積層体、を用いてなることを特徴とするものである。
【0021】
静電容量式タッチパネルは、表面型(Surface Capacitive)と投影型(Projected
Capacitive)に分けることができる。
【0022】
表面型の静電容量式タッチパネル7の実施の形態を図1に示す。この図では、透明基板1の一方の面に透明導電層2、保護層3を有し、他方の面に電磁波シールド層4を有してなる透明導電性積層板に基本回路が接続されている。
【0023】
基本回路は駆動信号に正弦波を用い、透明導電層にごく微弱な電流を四隅同時に流した定電圧回路が一般的である。人がタッチしていない時は四隅同時電位のため、パネルにはほとんど電流は流れないが、ある点に指が触れると、人体容量によりパネル上を流れる電流が変化する。その時の電流変化量は、四隅からタッチ点までの距離に反比例する。そして、電流を電圧に変換して座標を決定している。
【0024】
投影型の静電容量式タッチパネル7の構成の実施の形態を図2に示す。この図では、透明基板1の一方の面に透明導電層2、保護層3を有し、他方の面に透明導電層2、引き出し電極線5、保護層3を有する構成からなっている。
【0025】
投影型の静電容量式タッチパネルでは、一方の透明導電層はX座標を認識するX電極から形成され、他方の透明導電層はY座標を認識するY電極から形成されている。タッチ点の座標は、指が接近して生じたX−Y電極間の電圧変化を検出し、そこから決定している。
【0026】
本発明においては、静電容量タッチパネルの透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜(以下、単に「被膜」という場合もある)を有する構成を一部に含む積層体を用いる。このような透明基板は、透明プラスチックフィルムの表面の被膜により、透明基板表面へのオリゴマー析出を防止できる。
【0027】
透明プラスチックフィルムとしては、例えば透明ポリエステルフィルムなどが用いられる。透明プラスチックフィルムの厚みは特に限定されない。また、透明プラスチックフィルムは表面に易接着処理が施されていてもよい。
【0028】
透明プラスチックフィルムの表面に設ける被膜は、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmのものである。ポリアミドイミド樹脂を含有する被膜は、易接着処理なしでも透明プラスチックフィルムとの密着性、特に透明ポリエステルフィルムとの密着性が良好であり、薄膜でありながらオリゴマーの析出を防止できるものである。
【0029】
ポリアミドイミド樹脂は、無水トリメリット酸とジイソシアネートとの反応、無水トリメリット酸クロライドとジアミンとの反応により得ることができる。ポリアミドイミド樹脂は従来公知のものを使用できるが、ガラス転移温度が250℃以上のものがオリゴマーをより防止できる点で好ましい。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、オリゴマー析出防止性の観点から、5千以上であることが好ましく、樹脂の溶解性の観点から、1万以下であることが好ましい。
【0030】
被膜の厚みは30〜120nm、好ましくは50〜80nmである。厚みを30nm以上とすることにより、オリゴマーの析出防止効果を十分に発揮することができ、120nm以下とすることにより、折り曲げ加工時にクラックが発生することなく、加工適正を良好にすることができる。また、50nm以下とすることにより、ブロッキングを防止しやすくすることができる。
【0031】
被膜中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の樹脂や、樹脂以外の他の成分を含有していてもよい。なお、本発明の効果を発揮しやすくするため、被膜中の全固形分に占めるポリアミドイミド樹脂の割合は、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。
【0032】
被膜中には、ブロッキングを防止するために、微粒子を含有することが好ましい。微粒子は、分散性や透明性などを考慮すると、一次粒子径は0.5〜100nm程度であることが好ましい。また、微粒子は無機系のものであれば特に制限されることなく使用できるが、ブロッキング防止性、透明性の観点から、コロイダルシリカが好ましい。なお、被膜中の全固形分に占める微粒子の割合は、上限が50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることが好ましく、下限が0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましい。
【0033】
被膜は、被膜を構成する材料を含む塗料組成物を、公知の塗布法により塗布し、50〜120℃程度で乾燥することにより形成することができる。
【0034】
被膜は透明プラスチックフィルムの両側の表面に設けられていることが好ましい。透明プラスチックフィルムの一方の表面のみに被膜を有する場合、透明プラスチックフィルムの他方の表面に、オリゴマー防止効果を有する機能性膜を有することが好ましい。
【0035】
機能性膜としては、ハードコート膜、反射防止膜、ガスバリア膜などがあげられる。これらの機能性膜は、当該性能を実現し得る樹脂や無機化合物から形成することができる。たとえば、ハードコート膜の場合、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂の硬化性樹脂を塗布・乾燥・硬化することなどにより形成することができ、ガスバリア膜の場合、シリカを真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングすることなどにより形成することができる。
【0036】
また、ハードコート膜の場合、オリゴマー防止性の観点から架橋密度が高いことが好ましい。架橋密度の指標はハードコート膜表面の鉛筆硬度(JIS−K5400:1990)で表すことができる。ハードコート膜の鉛筆硬度はH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがさらに好ましい。
【0037】
上述したような透明基板1としては、例えば、透明プラスチックフィルム11の両側の表面に被膜12を有する積層体(積層体a)や、透明プラスチックフィルム11の一方の表面に被膜12を有し、他方の表面に機能性膜14する積層体(積層体b、図3)、積層体aどうしを接着層13を介して貼り合わせたもの(図1,2)、積層体aとbとを接着層13を介して貼り合わせたもの、積層体bどうしを接着層13を介して貼り合わせたものなどがあげられる。
【0038】
以上のような静電容量式タッチパネルは従来公知の方法で製造できるが、その製造過程において、ITO(透明導電層)を結晶化させる際や、銀ペーストを用いて配線や電極を印刷・乾燥する際に加熱工程が必要となる。したがって、透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有する構成を一部に含む積層体を用いることにより、製造過程の加熱工程でオリゴマーが析出することを防止できる。
【0039】
次に、本発明の抵抗膜式タッチパネルの製造方法の実施の形態について説明する。本発明の抵抗膜式タッチパネルの製造方法は、製造工程に加熱工程を含んでなる、透明基板上に透明導電層を有してなる上部電極および下部電極の透明導電層どうしを対向するようにスペーサーを介して配置してなる抵抗膜方式タッチパネルの製造方法において、前記上部及び/又は下部の透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有する構成を一部に含む積層体、を用いてなることを特徴とするものである。
【0040】
抵抗膜式タッチパネルの実施の形態を図3に示す。この図では、透明基板1の一方の面に透明導電層2を有する上部電極と、透明基板1の一方の面に透明導電層2を有する下部電極とを、上部電極および下部電極の透明導電層2どうしを対向するようにスペーサー6を介して配置する構成からなっている。
【0041】
抵抗膜式タッチパネルでは、タッチ点の上部電極と下部電極が接触して通電した際の電圧の値に応じてタッチ点の座標を決定している。なお、マルチタッチタイプの抵抗膜式タッチパネルの場合、上部電極と下部電極の短冊方向を直交させるようにして配置する。
【0042】
本発明の抵抗膜式タッチパネルの製造方法においては、抵抗膜式タッチパネルの透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜(以下、単に「被膜」という場合もある)を有する構成を一部に含む積層体を用いる。このような透明基板は、被膜と透明プラスチックフィルムとの密着性、特に被膜と透明ポリエステルフィルムとの密着性が良好であり、薄膜でありながらオリゴマーの析出を防止できるものである。
【0043】
抵抗膜式タッチパネルの透明基板の実施の形態は、上述した静電容量式タッチパネルの透明基板と同様である。かかる透明基板は、抵抗膜式タッチパネルの上部電極のみに用いても良いし、下部電極のみに用いても良いし、双方に用いても良い。
【0044】
以上のような抵抗膜式タッチパネルは従来公知の方法で製造できるが、その製造過程において、ITO(透明導電層)を結晶化させる際や、銀ペーストを用いて配線や電極を印刷・乾燥する際に加熱工程が必要となる。したがって、透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有する構成を一部に含む積層体を用いることにより、製造過程の加熱工程でオリゴマーが析出することを防止できる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の実施形態をより具体化した実施例を挙げ、さらに詳細に説明する。なお、本実施例において「部」、「%」は、特に示さない限り重量基準である。
【0046】
1.透明基板の作製
[実験例1]
厚み125μmの両面が易接着処理された透明ポリエステルフィルム(コスモシャインA4350:東洋紡績社)の一方の面に、下記処方の塗布液aを塗布、乾燥し、厚み35nmの被膜を形成した。
【0047】
<塗布液a>
・ポリアミドイミド樹脂(固形分:25%) 1部
(バイロマックスHR-14ET:東洋紡績社)
(ガラス転移温度250℃、数平均分子量10×103
・希釈溶剤 24部
【0048】
次いで、上記透明ポリエステルフィルムの他方の面に、下記処方の塗布液bを塗布、乾燥、紫外線照射し、厚み7.2μmのハードコート層を形成し、透明基板を得た。
【0049】
<塗布液b>
・電離放射線硬化型樹脂組成物(固形分100%) 10部
(ビームセット575、荒川化学工業社)
・光重合開始剤 0.5部
(イルガキュア651:チバ・ジャパン社)
・希釈溶剤 23部
【0050】
[実験例2]
ポリアミドイミド樹脂を、東洋紡績社製の製品名バイロマックスHR-15ET(固形分25%)、ガラス転移温度260℃、数平均分子量6×103)に変更し、被膜の厚みを115nmに変更した以外は、実験例1と同様にして透明基板を得た。
【0051】
[実験例3]
塗布液aを下記処方の塗布液cに変更した以外は、実験例1と同様にして透明基板を得た。
<塗布液c>
・テトラエトキシシランの加水分解液(固形分2%) 10部
・希釈溶剤 5部
【0052】
[実験例4]
塗布液aを下記処方の塗布液dに変更した以外は、実験例1と同様にして透明基板を得た。
<塗布液d>
・セルロースアセテートプロピオネート 0.3部
(AC3533B:イーストマンコダック社)
・希釈溶剤 30部
【0053】
[実験例5]
塗布液aを下記処方の塗布液eに変更した以外は、実験例1と同様にして透明基板を得た。
<塗布液e>
・ポリアリレート樹脂 0.3部
(ユニファイナーM-1000:ユニチカ社)
・希釈溶剤 30部
(ガラス転移点280℃)。
【0054】
[実験例6]
塗布液aを塗布液bに変更し、被膜の厚みを1μmに変更した以外は、実験例1と同様にして透明基板を得た。
【0055】
[実験例7]
被膜の厚みを20nmに変更した以外は、実験例1と同様にして透明基板を得た。
【0056】
[実験例8]
被膜の厚みを130nmに変更した以外は、実験例1と同様にして透明基板を得た。
【0057】
[実験例9] 透明ポリエステルフィルム上に被膜を形成せず、ハードコート層のみ形成した以外は、実験例1と同様にして透明基板を得た。
【0058】
2.評価
実験例1〜9により得られた透明基板について、下記特性を評価した。結果を表1に示す。
【0059】
(1)耐熱性
(1−1)オリゴマー析出防止性(顕微鏡)
得られた透明基板を150℃のオーブンに投入し、4時間後に取り出した。次に、取り出した透明基板の被膜側を顕微鏡(200倍)で観察し、10視野当たり(面積0.5mm2)に、円相当径で1μmφ以上の析出物が10個以下であった(オリゴマーの析出が全く認められなかった)ものを「○」、上記析出物が20個を超え50個未満であった(オリゴマーの析出がやや認められたが問題なしと考えられる)ものを「△」、上記析出物が50個を超えた(オリゴマーの析出が認められた)ものを「×」として評価した。
【0060】
(1−2)オリゴマー析出防止性(ヘーズ変化率)
得られた透明基板に対し、ヘーズメータNDH2000(日本電色社)を用いてヘーズ値「%」(JIS−K7136:2000)を測定し、加熱前ヘーズ値を得た。その後、透明基板を150℃のオーブンに投入して4時間後に取り出した。次に、取り出した透明基板のヘーズ値を上記同様に測定し、加熱後ヘーズ値を得た。そして、下記式により加熱前後のヘーズ変化率「%」を算出した。その結果、ヘーズ値の変化率が0.5%以下の場合を「○」、0.5%超の場合を「×」として評価した。
ヘーズ値の変化率=(加熱前ヘーズ値−加熱後ヘーズ値)
【0061】
(1−3)オリゴマー析出防止性(折り曲げ試験後)
得られた透明基板を被膜が外側になるように2つに折り曲げた後、150℃のオーブンに投入し、4時間後に取り出した。次に、取り出した透明基板の被膜側を上記(1−1)と同様に観察し、同様の基準で評価した。
【0062】
(2)折り曲げ試験による耐クラック性
上記(1−3)と同様に、得られた透明基板を被膜が外側になるように2つに折り曲げ、その折り曲げた部分の被膜にクラックを生じるか否かを目視で観察した。その結果、クラックが確認できなかったものを「○」、クラックを確認できたものを「×」として評価した。
【0063】
(3)密着性
透明ポリエステルフィルムとして、厚み125μmの片面が易接着処理された透明ポリエステルフィルム(ルミラーU49K:東レ社)を用い、当該フィルムの非易接着処理面に被膜を形成し、ハードコート層を形成しなかった以外は、実験例1〜8と同様にして、実験例1’〜8’の透明基板を得た。得られた透明基板の透明プラスチックフィルムと被膜との密着性を碁盤目テープ法(JIS−K5600−5,6)により評価した。碁盤目テープ法による剥離試験の結果、碁盤目部分が全く剥離しなかったものを「○」、碁盤目部分が剥離したものを「×」として評価した。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から明らかなように、実験例1,2の透明基板は、被膜がポリアミドイミド樹脂から形成されていることから、オリゴマー析出防止性に優れるとともに、透明プラスチックフィルムとの密着性にも優れるものであった。
【0066】
なお、上記透明基板を用いて静電容量式タッチパネルおよび抵抗膜式タッチパネルを製造したところ、製造過程の加熱工程でオリゴマーが析出することはなかった。
【符号の説明】
【0067】
1・・・・透明基板
11・・・透明プラスチックフィルム
12・・・被膜
13・・・接着層
14・・・ハードコート層
2・・・・透明導電層
3・・・・保護層
4・・・・電磁波シールド層
5・・・・引き出し電極線
6・・・・スペーサー
7・・・・静電容量式タッチパネル
8・・・・抵抗膜式タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造工程に加熱工程を含んでなる、透明基板の少なくとも片面に透明導電層を有してなる静電容量式タッチパネルの製造方法において、前記透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有する構成を一部に含む積層体、を用いてなることを特徴とする静電容量式タッチパネルの製造方法。
【請求項2】
製造工程に加熱工程を含んでなる、透明基板上に透明導電層を有してなる上部電極および下部電極の透明導電層どうしを対向するようにスペーサーを介して配置してなる抵抗膜方式タッチパネルの製造方法において、前記上部及び/又は下部の透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有する構成を一部に含む積層体、を用いてなることを特徴とする抵抗膜式タッチパネルの製造方法。
【請求項3】
透明基板の少なくとも片面に透明導電層を有してなる静電容量式タッチパネルにおいて、前記透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有する構成を一部に含む積層体、を用いてなることを特徴とする静電容量式タッチパネル。
【請求項4】
透明基板上に透明導電層を有してなる上部電極および下部電極の透明導電層どうしを対向するようにスペーサーを介して配置してなる抵抗膜方式タッチパネルにおいて、前記上部及び/又は下部の透明基板として、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有する構成を一部に含む積層体、を用いてなることを特徴とする抵抗膜式タッチパネル。
【請求項5】
透明プラスチックフィルム表面へのオリゴマーの析出を防止する方法であって、透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を形成する工程を含むことを特徴とするオリゴマーの析出防止方法。
【請求項6】
透明プラスチックフィルムの表面に、ポリアミドイミド樹脂を含有する厚みが30〜120nmの被膜を有することを特徴とする透明基板。
【請求項7】
前記透明プラスチックフィルムの前記被膜とは反対側の表面に機能性膜を有することを特徴とする請求項6記載の透明基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−185587(P2012−185587A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47042(P2011−47042)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】