説明

タッチパネルの製造方法、タッチパネル及び液晶表示素子

【課題】表示装置と組み合わせて使用された場合においても、表示装置によって表示される表示画像の表示品質を維持でき、ニュートンリングの発生を抑制するタッチパネルの製造方法の提供にある。
【解決手段】シランカップリング剤を含む溶液を用意する工程と、表面に水酸基を有する第一の基板の表面に、前記溶液を塗布する工程と、前記第一の基板の表面と前記シランカップリング剤とを化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部を形成する工程と、前記第一の基板において前記凸部が形成された面と対向する、第二の基板を前記第一の基板と間隔をあけて設置する工程と、を含むことを特徴とするタッチパネルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルの製造方法、タッチパネル及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルには、抵抗膜方式、静電容量方式、およびペン入力に対応する静電容量結合方式のタッチパネルが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2には、光重合性組成物を硬化して得られる厚さ0.1〜1mmの樹脂形成体の一方の面に、透明導電膜が形成された積層体であり、かつ、樹脂成形体の面がアンチニュートンリング機能を有する凹凸が形成された面であり、その表面粗さ(Ra)が、JIS B0601:2001において50〜150nmである積層体について提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−113516号公報
【特許文献2】特開2008−155387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、抵抗膜方式タッチパネルにおいて、空気層を介して設置される二つの基板同士が吸着することによって引き起こされるニュートンリングの発生は、特許文献2に記載された発明によって改善がみられるものの、特許文献2において形成されるアンチニュートンリング機能を有する凹凸は表示画面において凹凸の存在が認識できる程度に大きなものである。例えば液晶ディスプレイ等の表示装置と組み合わせて使用された場合、液晶ディスプレイによって表示される表示画面の表示品質が低下するという問題がある。
【0006】
タッチパネルが表示装置と組み合わせて使用された場合、表示装置によって表示される表示画面の表示品質を維持しつつ、ニュートンリングの発生を抑制するためには、アンチニュートンリング機能を有する凹凸が認識し得ない程度に微小に形成される必要があり、また当該凹凸の形成方法の確立が必要である。
【0007】
本発明の目的は、表示装置と組み合わせて使用された場合においても、表示装置によって表示される表示画像の表示品質を維持でき、ニュートンリングの発生を抑制するタッチパネルの提供と、当該タッチパネルの製造方法の提供にある。
【0008】
また、本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明にかかるタッチパネルの製造方法は、シランカップリング剤を含む溶液を用意する工程と、表面に水酸基を有する第一の基板の表面に、前記溶液を塗布する工程と、前記第一の基板の表面と前記シランカップリング剤とを化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部を形成する工程と、前記第一の基板において前記凸部が形成された面と対向する、第二の基板を前記第一の基板と間隔をあけて設置する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、前記第一の基板はガラス基板であることとしてもよい。また、前記シランカップリング剤は前記溶液中に0.1〜0.01wt%含まれることとしてもよい。また、前記第一の基板は、複数の配線ラインからなる第一の電極および第二の電極を備え、前記第二の基板は、前記第一の基板と対向する面に誘電膜を備えることとしてもよい。また、前記誘電膜の表面に、前記溶液を塗布する工程と、前記誘電膜の表面と前記シランカップリング剤とを化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部を形成する工程と、を更に含むこととしてもよい。また、前記誘電膜の抵抗値は、10〜1012Ω・cmであることとしてもよい。
【0011】
また、前記第一の基板は、前記第二の基板と対向する面に形成された複数の配線ラインからなる第一の導電膜を備え、前記第二の基板は、前記第一の基板と対向する面に形成された第二の導電膜とを備え、前記第二の基板の表面に、前記溶液を塗布する工程と、前記第二の基板の表面と前記シランカップリング剤とを化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部を形成する工程と、を更に含むこととしてもよい。
【0012】
また、本発明にかかるタッチパネルは、表面に水酸基を有する第一の基板と、前記第一の基板と間隔をあけて対向する第二の基板と、を含み、前記第一の基板の、前記第二の基板と対向する面の表面に、シランカップリング剤を化学的に結合して形成される、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部を有することを特徴とする。
【0013】
また、前記第一の基板はガラス基板であることとしてもよい。また、前記第一の基板は、複数の配線ラインからなる第一の電極および第二の電極を備え、前記第二の基板は、前記第一の基板と対向する面に誘電膜を備えることとしてもよい。また、前記第一の基板は、前記第二の基板と対向する面に形成された複数の配線ラインからなる第一の導電膜を備え、前記第二の基板は、前記第一の基板と対向する面に形成された第二の導電膜とを備えることとしてもよい。また、前記誘電膜の抵抗値は、10〜1012Ω・cmであることとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、表示装置と組み合わせて使用された場合においても、表示装置によって表示される表示画像の表示品質を維持でき、ニュートンリングの発生を抑制するタッチパネルの提供と、当該タッチパネルの製造方法の提供がされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】シランカップリング剤が、無機質材料と化学的に結合する様子を説明する図である。
【図2】第一の実施形態にかかるタッチパネルの断面の一部を示す図である。
【図3】第一の実施形態にかかるタッチパネルが、樹脂ペンによって表面を押下げされている様子を示す一部断面図である。
【図4】図3におけるIV部を拡大して示す部分拡大図である。
【図5】第二の実施形態にかかるタッチパネルの断面の一部を示す図である。
【図6】図5におけるVI部を拡大して示す部分拡大図である。
【図7】第二の実施形態にかかるタッチパネルが、樹脂ペンによって表面を押下げされている様子を示す一部断面図である。
【図8】図7におけるVIII部を拡大して示す部分拡大図である。
【図9】第三の実施形態にかかるタッチパネルの断面の一部を示す図である。
【図10】第三の実施形態にかかるタッチパネルが、樹脂ペンによって表面を押下げされている様子を示す一部断面図である。
【図11】図10におけるXI部を拡大して示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態にかかるタッチパネルの製造方法は、シランカップリング剤を含む溶液を用意する工程と、表面に水酸基を有する第一の基板の表面に、シランカップリング剤を含む溶液を塗布する工程と、第一の基板の表面とシランカップリング剤とを化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部を形成する工程と、第一の基板において凸部が形成された面と対向する、第二の基板を第一の基板と間隔をあけて設置する工程と、を含むものである。
【0017】
はじめにシランカップリング剤を含む溶液を用意する工程について説明を行う。シランカップリング剤は、1分子中に反応性の異なる2種類の官能基を有するものである。シランカップリング剤の一般式は、下記式(1)にて示される。
【0018】
【化1】

【0019】
ここで、上記式(1)におけるXは、有機質材料と化学結合する反応基であり、例えば、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、メルカプト基等があげられるが、これらに限定されるものではない。また、上記式(1)におけるORは、ガラスや金属などの無機質材料と化学結合する反応基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、塩素等のハロゲン基等があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
更に具体的に本実施形態に適用し得るシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等があげられるが、これらに限定されるものではない。また、本実施形態にかかるタッチパネルの製造方法において用いられるシランカップリング剤を含む溶液には、シランカップリング剤の一種類を単独で含むこととしてもよく、組成の異なる複数種のシランカップリング剤が含まれることとしてもよい。シランカップリング剤を含む溶液中に含まれる溶媒は、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤又はトルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤を用いる。
【0021】
ここで、従来においてシランカップリング剤は希釈水溶液中に分散されて使用されることが一般的であった。シランカップリング剤は、水が存在する溶媒中に添加されることによって分子内にシラノール基を容易に形成する。そして、シランカップリング剤の分子間においてそれぞれのシラノール基同士が縮合反応を行うことによって、シロキサン結合の生成が促進される。結果、大きな分子構造のシランカップリング剤に由来する被膜を形成することができ、均一な表面処理が形成される。しかしながら、本実施形態にかかるタッチパネルの製造方法においては、シランカップリング剤によって均一な表面処理が形成されるよりも、表面に微小な凸部がランダムに形成されることが好ましい。ゆえに、溶剤中に水分が混入することによってシランカップリング剤のアルキルシリル基がシラノール基に変性し、シランカップリング剤の分子間でおきる縮合反応によって形成される凸部の大きさが大きくなり、また縮合反応の進行度によって凸部の大きさも様々なものとなってしまうことは本実施形態にかかるタッチパネルの製造方法においては好ましくない。
【0022】
したがって溶媒中には水分がより少ない方が好ましい。溶媒中に含まれる水は0wt%〜2.0wt%であることは好ましい。さらに好ましくは0wt%〜1.0wt%である。特に好ましくは0wt%〜0.5wt%である。
【0023】
用意された溶媒99.0〜99.99重量部と、シランカップリング剤1.0〜0.01重量部とを、全体で100重量部となるように混合しシランカップリング剤を含む溶液を調製する。シランカップリング剤を含む溶液の調整は、予め溶媒をビーカー等の容器に加え、溶媒を撹拌しながらシランカップリング剤を除々に添加し、シランカップリング剤の添加後30分程さらに撹拌をすることによって行われることが好ましい。撹拌後、溶液内に不溶物、浮遊物が目立つ場合には、予め不溶物、浮遊物を取り除くことが好ましい。例えば、孔径0.5μm以下のカートリッジを使用した循環ろ過処理を行うことによって、不溶物、浮遊物を予め取り除くことが好ましい。
【0024】
ここで溶液に添加されるシランカップリング剤は、0.1〜0.01wt%で溶液中に含まれることは好ましい。シランカップリング剤は、0.1〜0.01wt%で溶液中に含まれることによって、ニュートンリングを抑制する効果は更に高まる。0.01wt%未満であるとニュートンリグを抑制する効果が低減し、0.1wt%を超えて添加されるとコスト的に好ましくない。
【0025】
次に、表面に水酸基を有する第一の基板の表面に、シランカップリング剤を含む溶液を塗布する工程について説明を行う。表面に水酸基を有するものとしては、ガラス、金属、シリコン単結晶などの無機質材料がある。第一の基板の表面は、予めUV洗浄を行うことが好ましい。UV洗浄を行うことによって、第一の基板の表面に付着した有機物等を除去することができ、本工程における凸部の形成が均質なものとなる。
【0026】
シランカップリング剤を含む溶液の塗布は、スピンコータを用いて行うこととしてもよいし、ロールコータを用いて行うこととしてもよいし、また、スプレー塗布によって行うこととしてもよい。また、シランカップリング剤を含む溶液の塗布は、上記方法に限られるものではない。
【0027】
次に、表面に水酸基を有する第一の基板の表面に、シランカップリング剤を含む溶液を塗布する工程と、第一の基板の表面とシランカップリング剤とを化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部を形成する工程について説明を行う。
【0028】
図1は、シランカップリング剤が、第一の基板100と化学的に結合する様子を説明する図である。図1で示されるように、無機質材料によって形成される第一の基板100と化学的に結合し形成される凸部10は構造中に、シランカップリング剤の構造に由来する酸化ケイ素骨格(−Si−O−)と、有機官能基(X)とを有するものである。シランカップリング剤の分子中に含まれる反応基(式(1)における−OR基)は、空気中の水と反応して水酸基(シラノール基)を形成する。シランカップリング剤の分子中に形成された水酸基の一部は、他のシランカップリング剤の分子中に形成された水酸基と部分的に縮合反応をする。また、シランカップリング剤の分子中に形成された水酸基の他の一部は、無機質材料の表面に存在する水酸基11の位置に吸着および水素結合をし、脱水縮合を行い化学的に結合する。
【0029】
凸部10を形成する工程は、第一の基板100の表面にシランカップリング剤を含む溶液を塗布する工程によって塗布された溶液を風乾することによって、溶液の溶媒が揮発するとともに、第一の基板100の表面とシランカップリング剤とが化学的に結合する反応が進行することによって行われる。
【0030】
また、凸部10を形成する工程は、単に風乾するのみでなく加熱処理を行うことによって、第一の基板100の表面とシランカップリング剤とが化学的に結合する反応を促進されることとなり好ましい。例えば加熱処理は、140℃〜50℃/1分〜5分の条件で行われることが好ましい。また、110℃〜60℃/1分〜5分の条件で行われることは更に好ましい。
【0031】
最後に、第一の基板100において凸部10が形成された面と対向する、第二の基板200を第一の基板100と間隔をあけて設置する工程について説明を行う。第一の基板100において凸部10が形成された面と対向する、第二の基板200を第一の基板100と間隔をあけて設置する工程は、第一の基板100において凸部10が形成された面上に、ドットスペーサーを形成し、更にドットスペーサーに重ねて第二の基板200を設置することによって実現される。
【0032】
また、第一の基板100上に形成された、シランカップリング剤と化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部10を、上記ドットスペーサーの代わりとして、第二の基板200を直接重ねることによっても、第一の基板100において凸部10が形成された面と対向する、第二の基板200を第一の基板100と間隔をあけて設置する工程は実現される。
【0033】
以下、本実施形態にかかるタッチパネルの製造方法と、製造されたタッチパネルが適応される例を具体的に説明する。
【0034】
[第一の実施形態]
本実施形態にかかるタッチパネル1の製造方法は、ペン入力・多点検出が可能な静電容量タッチパネルと、所謂抵抗膜方式タッチパネルに適応される。第一の実施形態にかかるタッチパネル1は、ペン入力・多点検出が可能な静電容量タッチパネルである。
【0035】
図2は、第一の実施形態にかかるタッチパネル1の断面の一部を示す図である。本実施形態にかかるタッチパネル1の製造方法によって製造された、第一の実施形態にかかるタッチパネル1は、表面に水酸基を有する第一の基板100と、第一の基板100と間隔をあけて対向する第二の基板200と、を含み、第一の基板100の、第二の基板200と対向する面の表面に、シランカップリング剤を化学的に結合して形成される、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部10を有するものである。
【0036】
第一の実施形態にかかるタッチパネル1における第一の基板100は、透明基板(ガラス基板)101が用いられている。透明基板101上に、複数の配線ラインからなる第一の電極102および第二の電極103が備えられている。第一の絶縁膜104、第二の絶縁膜105はともに、第一の電極102、第二の電極103のそれぞれを保護する、配線保護用のパッシベーション膜として形成されている。そして、第一の絶縁膜104、第二の絶縁膜105はともに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法や、沈殿法によってSiO、リンシリケートガラス等によって形成されたものである。
【0037】
第一の基板100の最表面、すなわち第二の絶縁膜105の表面には、シランカップリング剤と化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部10が形成される。
【0038】
第一の実施形態にかかるタッチパネル1の製造方法について説明をする。まず、最初に酢酸エチル99.9wt%をビーカーに秤量し、撹拌を行いながら徐々にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE903、信越化学工業社製)0.1wt%を添加した。そしてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを酢酸エチル中に全量添加した後、30分さらに撹拌を行った。撹拌後、溶液内に不溶物、浮遊物等は見当たらなかったが、孔径0.5μm以下のカートリッジを使用した循環ろ過処理を行った。このようにしてシランカップリング剤を含む溶液を調製した。
【0039】
凸部10が形成される第一の基板100の表面は、予めDeep/UV(遠紫外線)、200sの条件でUV洗浄を行った。UV洗浄を行うことによって、第一の基板100の表面に付着した有機物等を除去することができ、凸部10を形成する工程における凸部10の形成が均質なものとなる。
【0040】
上記のように予めUV洗浄された第一の基板100の表面に、調整されたシランカップリング剤を含む溶液を、500rpm/15秒の条件にてスピンコータを用いて塗布した。塗布後、60℃/1分の条件にてホットプレートを用いて加熱処理を行い、シランカップリング剤を含む溶液に含まれる溶媒(酢酸エチル)を揮発させるとともに、第一の基板100の表面とシランカップリング剤とが化学的に結合する反応を進行させることによって凸部10が第一の基板100上に形成された。形成された凸部10は、半球状のものであり、高さが20μm、直径が60μmφのものである。そして、凸部10は第一の基板100の表面にランダムに配置され目視では認識し得ないものであった。第一の実施形態にかかるタッチパネル1が表示パネルと組み合わされて使用される場合を鑑みると、凸部10の高さは0.1mm以下であることが好ましい。
【0041】
次に凸部10が形成された第一の基板100上に、さらにドットスペーサー301を配置した。ドットスペーサー301は第一の基板100と第二の基板200との間に空気層300を形成するためのスペーサーとしての役割を果たすものである。ドットスペーサー301は第一の基板100の表面に予め定められた一定間隔をおいて規則的に配置されている。ここで、第一の実施形態にかかるタッチパネル1に用いられたドットスペーサー301は、直径0.2mmの透明ビーズである。すなわち、第一の基板100において凸部10が形成された面と対向する第二の基板200は、第一の基板100と0.2mmの間隔をあけて設置されることとなる。
【0042】
第二の基板200は、図2で示されるように、ドットスペーサー301と接する誘電膜204と、透明弾性体によって形成される透明弾性膜202と、誘電膜204と透明弾性膜202とを貼り合わせるフィルム203と、機械的損傷からタッチパネル1を保護する目的でフロントウィンドウと、を含んで構成されている。
【0043】
図3は、第一の実施形態にかかるタッチパネル1が、樹脂ペン2によって表面を押下げされている様子を示す一部断面図である。図4は、図3におけるIV部を拡大して示す部分拡大図である。
【0044】
第一の実施形態にかかる静電容量結合方式のタッチパネル1に含まれる誘電膜204は、樹脂ペン2によって第二の基板200の表面が押下げされることによって、第一の基板100側に追随して押下げられる。押下げられた誘電膜204が凸部10に接触することによって静電容量(コンデンサ)を形成する。そしてその静電容量を介して微弱電流が流れ、その流れる微弱電流の変化分を、第一の基板100に備えられた第一の電極102、第二の電極103が検出し、誘電膜204と、凸部10とが接触した位置を検出する。
【0045】
第一の実施形態にかかる静電容量結合方式のタッチパネル1に含まれる誘電膜204は、樹脂ペン2によって第二の基板200の表面が押下げされることによって、第一の基板100側に追随して押下げられ、第一の基板100と接触する。図4に示されるように、誘電膜204と第一の基板100との接触する領域は、凸部10が存在することによって全面で接触せず、接触する領域の一部に空気層300が形成される。この空気層300が形成されることによって、第一の基板100と第二の基板200とは吸着が起きないため、ニュートンリングの発生を抑制することとなる。
【0046】
また、誘電膜204は、静電容量を形成するものであればよく、抵抗値は、10〜1012Ω・cmのものが好ましい。すなわち、金属の様に低抵抗値を有するものでなくてもよく、抵抗値が10〜1012Ω・cmの条件を満たすものであれば有機質材料であってもよい。
【0047】
また、本実施形態にかかるタッチパネル1の製造方法は、誘電膜204の表面に、シランカップリング剤を含む溶液を塗布する工程と、誘電膜204の表面とシランカップリング剤とを化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部10を形成する工程と、を更に含むこととしてもよい。これら工程を含むことによって、第一の実施形態にかかるタッチパネル1は、誘電膜204の第一の基板100と対向する面に凸部10を備えることとなる。
【0048】
なお、誘電膜204が有機質材料によって形成された場合においても、誘電膜204の第一の基板100と対向する面に凸部10を備え得る。これは、ポリイミド、アクリルなどのいわゆる有機質材料の表面は理論上表面に水酸基を有するものではないが、空気中の酸素による酸化分解反応や、残留二重結合の酸化等によって形成された反応部位がシランカップリング剤と反応することとなるからである。
【0049】
樹脂ペン2によって第二の基板200の表面が押下げされる場合、誘電膜204と第一の基板100との接触する領域は、第一の基板100および第二の基板200それぞれに凸部10が形成されることによって、第一の基板100のみに凸部10が形成される場合と比較してさらに空気層300が多く形成されることとなる。よって、さらに第一の基板100と第二の基板200とは吸着が起きないため、ニュートンリングの発生を抑制することとなる。
【0050】
第一の実施形態にかかるタッチパネル1を液晶表示装置と組み合わせて使用し、表示装置によって表示される表示画面の品質が低下するか確認をしたところ、品質の低下は見られなかった。
【0051】
[第二の実施形態]
第二の実施形態にかかるタッチパネル1は、第一の実施形態にかかるタッチパネル1においてドットスペーサー301を備えない点を除いて第一の実施形態にかかるタッチパネル1と同様の製造方法にて製造されたものである。
【0052】
図5は、第二の実施形態にかかるタッチパネル1の断面の一部を示す図である。図6は、図5におけるVI部を拡大して示す部分拡大図である。図5及び図6にて示されるように、第二の実施形態にかかるタッチパネル1は、凸部10がスペーサーの役割を果たしており、第一の基板100と、第二の基板200との間には、凸部10の高さに起因する空気層300が形成されていることとなる。
【0053】
図7は、第二の実施形態にかかるタッチパネル1が、樹脂ペン2によって表面を押下げされている様子を示す一部断面図である。図8は、図7におけるVIII部を拡大して示す部分拡大図である。
【0054】
第二の実施形態にかかる静電容量結合方式のタッチパネル1に含まれる誘電膜204は、樹脂ペン2によって第二の基板200の表面が押下げされることによって、第一の基板100側に追随して押下げられる。押下げられた誘電膜204が第二の絶縁膜105に接触することによって誘電膜204に蓄積される静電容量(コンデンサ)が変化する。そしてその静電容量を介して流れる微弱電流も変化し、その変化分を、第一の基板100に備えられた第一の電極102、第二の電極103が検出し誘電膜204と、凸部10とが接触した位置を検出する。
【0055】
図8に示されるように、誘電膜204と第一の基板100との接触する領域は、凸部10が存在することによって全面で接触せず、接触する領域の一部に空気層300が形成される。この空気層300が形成されることによって、第一の基板100と第二の基板200とは吸着が起きないため、ニュートンリングの発生を抑制することとなる。
【0056】
また、第二の実施形態にかかるタッチパネル1においても、誘電膜204は、静電容量を形成するものであればよく、抵抗値は、10〜1012Ω・cmのものが好ましい。すなわち、金属の様に低抵抗値を有するものでなくてもよく、抵抗値が10〜1012Ω・cmの条件を満たすものであれば有機質材料であってもよい。
【0057】
また、第二の実施形態にかかるタッチパネル1の製造方法においても、誘電膜204の表面に、シランカップリング剤を含む溶液を塗布する工程と、誘電膜204の表面とシランカップリング剤とを化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部10を形成する工程と、を更に含むこととしてもよい。これら工程を含むことによって、第二の実施形態にかかるタッチパネル1は、誘電膜204の第一の基板100と対向する面に凸部10を備えることとなる。樹脂ペン2によって第二の基板200の表面が押下げされる場合、誘電膜204と第一の基板100との接触する領域は、第一の基板100および第二の基板200それぞれに凸部10が形成されることによって、第一の基板100のみに凸部10が形成される場合と比較してさらに空気層300が多く形成されることとなる。よって、さらに第一の基板100と第二の基板200とは吸着が起きないため、ニュートンリングの発生を抑制することとなる。
【0058】
第二の実施形態にかかるタッチパネル1を液晶表示装置に取り付けて、表示装置によって表示される表示画面の品質が低下するか確認をしたところ、品質の低下は見られなかった。
【0059】
[第三の実施形態]
第三の実施形態にかかるタッチパネル1は、抵抗膜方式タッチパネルである。図9は、第三の実施形態にかかるタッチパネル1の断面の一部を示す図である。本実施形態にかかるタッチパネル1の製造方法によって製造された、第三の実施形態にかかるタッチパネル1は、第一の基板100に第二の基板200と対向する面に形成された複数の配線ラインからなる第一の導電膜106を備え、第二の基板200に第一の基板100と対向する面に形成された第二の導電膜205とを備えるものである。
【0060】
第三の実施形態にかかるタッチパネル1における第一の基板100は、透明基板(ガラス基板)101が用いられている。透明基板101上に、複数の配線ラインからなる第一の導電膜106が備えられている。第一の基板100の最表面、すなわち第一の導電膜106の表面には、シランカップリング剤と化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部10が形成される。
【0061】
第三の実施形態にかかるタッチパネル1の製造方法について説明をする。まず、最初に酢酸エチル99.99wt%をビーカーに秤量し、撹拌を行いながら徐々にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE903、信越化学工業社製)0.01wt%を添加した。そしてγ−アミノプロピルトリエトキシシランを酢酸エチル中に全量添加した後、30分さらに撹拌を行った。撹拌後、溶液内に不溶物、浮遊物等は見当たらなかったが、孔径0.5μm以下のカートリッジを使用した循環ろ過処理を行った。このようにしてシランカップリング剤を含む溶液を調製した。
【0062】
凸部10が形成される第一の導電膜106はITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料により形成されており、その表面にはシランカップリング剤と化学的に結合するための水酸基が存在する。第一の導電膜106の表面は、予めDeep/UV(遠紫外線)、200sの条件でUV洗浄を行った。凸部10が形成される第一の導電膜106の表面は、予めUV洗浄を行うことが好ましい。UV洗浄を行うことによって、第一の導電膜106の表面に付着した有機物等を除去することができ、本工程における凸部10の形成が均質なものとなる。
【0063】
上記のように予め用意された第一の導電膜106の表面に、調整されたシランカップリング剤を含む溶液を、1500rpm/30秒の条件にてスピンコータを用いて塗布した。塗布後、60℃/1分の条件にてホットプレートを用いて加熱処理を行い、シランカップリング剤を含む溶液に含まれる溶媒(酢酸エチル)を揮発させるとともに、第一の導電膜106の表面とシランカップリング剤とが化学的に結合する反応を進行させることによって凸部10が第一の基板100上に形成された。形成された凸部10は、半球状のものであり、高さが20μm、面方向の幅が60μmのものである。そして、凸部10は第一の基板100の表面にランダムに配置され目視では認識し得ないものであった。第三の実施形態にかかるタッチパネル1が表示パネルと組み合わされて使用される場合を鑑みると、凸部10の高さは0.1mm以下であることが好ましい。
【0064】
次に凸部10が形成された第一の基板100上に、さらにドットスペーサー301を配置した。ドットスペーサー301は第一の基板100と第二の基板200との間に空気層300を形成するためのスペーサーとしての役割を果たすものである。ドットスペーサー301は第一の基板100の表面に予め定められた一定間隔をおいて規則的に配置されている。ここで、第三の実施形態にかかるタッチパネル1に用いられたドットスペーサー301は、直径0.3mmの透明ビーズである。よって、第一の基板100において凸部10が形成された面と対向する、第二の基板200は第一の基板100と0.3mmの間隔をあけて設置されることとなる。
【0065】
第二の基板200は、図2で示されるように、ドットスペーサー301と接する第二の導電膜205と、可撓性を有する透明基板201と、を含んで構成されている。第二の導電膜205も、第一の導電膜106と同様に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料により形成されている。
【0066】
図10は、第三の実施形態にかかるタッチパネル1が、樹脂ペン2によって表面を押下げされている様子を示す一部断面図である。図11は、図10におけるXI部を拡大して示す部分拡大図である。
【0067】
第三の実施形態にかかる抵抗膜方式のタッチパネル1に含まれる第二の導電膜205は、樹脂ペン2によって第二の基板200の表面が押下げされることによって、第一の基板100側に追随して押下げられ、第一の導電膜106と接触する。図11に示されるように、第一の導電膜106と第二の導電膜205との接触する領域は、凸部10が存在することによって全面で接触せず、接触する領域の一部に空気層300が形成される。この空気層300が形成されることによって、第一の基板100と第二の基板200とは吸着が起きないため、ニュートンリングの発生を抑制することとなる。
【0068】
また、第一の基板100は、第二の基板200と対向する面に形成された複数の配線ラインからなる第一の導電膜106を備え、第二の基板200は、第一の基板100と対向する面に形成された第二の導電膜205とを備える第三の実施形態にかかるタッチパネル1において、第二の基板200の表面に、シランカップリング剤を含む溶液を塗布する工程と、第二の基板200の表面とシランカップリング剤とを化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部10を形成する工程と、を更に含むこととしてもよい。
【0069】
樹脂ペン2によって第二の基板200の表面が押下げされる場合、第一の導電膜106と第二の導電膜205との接触する領域は、第一の基板100および第二の基板200それぞれに凸部10が形成されることによって、第一の基板100のみに凸部10が形成される場合と比較してさらに空気層300が多く形成されることとなる。よって、さらに第一の基板100と第二の基板200とは吸着が起きないため、ニュートンリングの発生を抑制することとなる。
【0070】
第三の実施形態にかかるタッチパネル1を液晶表示装置に取り付けて、表示装置によって表示される表示画面の品質が低下するか確認をしたところ、品質の低下は見られなかった。
【符号の説明】
【0071】
1 タッチパネル、2 樹脂ペン、10 凸部、11 水酸基、100 第一の基板、101 透明基板、102 第一の電極(X電極)、103 第二の電極(Y電極)、104 第一の絶縁膜、105 第二の絶縁膜、106 第一の導電膜、200 第二の基板、201 可撓性を有する透明基板、202 透明弾性膜、203 フィルム、204 誘電膜、205 第二の導電膜、300 空気層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シランカップリング剤を含む溶液を用意する工程と、
表面に水酸基を有する第一の基板の表面に、前記溶液を塗布する工程と、
前記第一の基板の表面と前記シランカップリング剤とを化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部を形成する工程と、
前記第一の基板において前記凸部が形成された面と対向する、第二の基板を前記第一の基板と間隔をあけて設置する工程と、
を含むことを特徴とするタッチパネルの製造方法。
【請求項2】
前記第一の基板はガラス基板である、
ことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項3】
前記シランカップリング剤は前記溶液中に0.1〜0.01wt%含まれる、
ことを特徴とする請求項1または2いずれかに記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項4】
前記第一の基板は、複数の配線ラインからなる第一の電極および第二の電極を備え、
前記第二の基板は、前記第一の基板と対向する面に誘電膜を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項5】
前記誘電膜の表面に、前記溶液を塗布する工程と、
前記誘電膜の表面と前記シランカップリング剤とを化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部を形成する工程と、を更に含む、
ことを特徴とする請求項4に記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項6】
前記誘電膜の抵抗値は、10〜1012Ω・cmである、
ことを特徴とする請求項4または5いずれかに記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項7】
前記第一の基板は、前記第二の基板と対向する面に形成された複数の配線ラインからなる第一の導電膜を備え、
前記第二の基板は、前記第一の基板と対向する面に形成された第二の導電膜とを備え、
前記第二の基板の表面に、前記溶液を塗布する工程と、
前記第二の基板の表面と前記シランカップリング剤とを化学的に結合し、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部を形成する工程と、を更に含む、
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載のタッチパネルの製造方法。
【請求項8】
表面に水酸基を有する第一の基板と、
前記第一の基板と間隔をあけて対向する第二の基板と、を含み、
前記第一の基板の、前記第二の基板と対向する面の表面に、シランカップリング剤を化学的に結合して形成される、構造中に酸化ケイ素骨格と有機官能基とを有する凸部を有する、
ことを特徴とするタッチパネル。
【請求項9】
前記第一の基板はガラス基板である、
ことを特徴とする請求項8に記載のタッチパネル
【請求項10】
前記第一の基板は、複数の配線ラインからなる第一の電極および第二の電極を備え、
前記第二の基板は、前記第一の基板と対向する面に誘電膜を備える、
ことを特徴とする請求項8または9いずれかに記載のタッチパネル。
【請求項11】
前記第一の基板は、前記第二の基板と対向する面に形成された複数の配線ラインからなる第一の導電膜を備え、
前記第二の基板は、前記第一の基板と対向する面に形成された第二の導電膜とを備える、
ことを特徴とする請求項8または9いずれかに記載のタッチパネル。
【請求項12】
前記誘電膜の抵抗値は、10〜1012Ω・cmである、
ことを特徴とする請求項10に記載のタッチパネル。
【請求項13】
請求項8乃至12いずれか一項に記載したタッチパネルを用いた液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−88761(P2012−88761A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232388(P2010−232388)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】