説明

タッチパネル用光学部材、その製造方法、及び表示装置

【課題】
外光が弱い環境下でも誤動作が少なく、特殊なペンを使用せずとも入力が可能であり、さらには液晶表示装置において画像を黒表示した場合でも入力が可能なタッチパネルを得ることを可能にするタッチパネル用光学部材、その製造方法及びこれを用いた表示装置を提供すること。
【解決手段】
対向する一対の主面S1,S2を有する光学部材1であって、層内に気泡を含み、かつ可逆的に変形可能な層13と、当該層を挟持する第1の基材11及び第2の基材12とを有し、一方の主面S2側から押圧されたときに、層内に気泡を含み、かつ可逆的に変形可能な層13が可逆的に変形することにより、他方の主面S1側から入射した光の反射光の状態が変化するタッチパネル用光学部材1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル用光学部材、その製造方法、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の多機能化にともない、タッチパネルに代表される入力装置が近年広く用いられている。タッチパネルは、指又はペンなどでタッチした位置を感知することのできる入力デバイスであり、タッチパネルを搭載した表示装置の用途としては、例えば携帯電話や携帯情報端末機(PDA)などのモバイル機器、銀行の現金自動預入支払機などが挙げられる。
【0003】
タッチパネルは多くの用途において表示装置上に配置されており、タッチした位置を検出できるように種々の方式が提案され、実用化されている。例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、光センサー内蔵方式などが具体的な方式として挙げられる。
【0004】
抵抗膜方式タッチパネルは、一般的に表示装置画面上に配置されたガラス表面に透明導電膜が形成され、その上に微小なスペーサーを配置して、さらにその上に透明導電膜が形成されたフィルムを貼り付けた構造になっている。タッチしていない状態では、ガラス表面とフィルムが向かい合う面の透明導電膜はスペーサーによって非接触となり電気は導通しないが、フィルム面をタッチすることによってフィルムが圧力でたわみ、ガラス表面とフィルムの透明導電膜が接触することによって電気が導通し、この導通部分における抵抗変化を検出することによって位置認識が可能になる。抵抗膜方式は、指でもペンでも入力が可能であり、生産コストを安くすることができるなどの特長を持つ。その反面、透明導電膜が脆いため、タッチしたときの屈曲を繰り返すことによって剥がれなどの劣化が生じ、検出の感度、分解能損失、透過率低下を引き起こすなど耐久性が低く、また一般的に透過率が低いなどの問題がある(特許文献1及び2)。
【0005】
静電容量方式タッチパネルは、通常電気容量を検出する1層の透明導電膜を含む構造になっており、タッチした部分の容量結合電気信号の変化を感知することによって、位置認識することができる。静電容量方式は、抵抗膜方式に比べて耐久性及び透過率に優れている。しかしながら、指又は導電性ある特殊なペンでのみ操作可能であり、手袋を装着した場合の指や導電性のない通常のペンでは操作が不可能になるなどの問題がある(特許文献1)。
【0006】
光センサー内蔵方式は、一般的に表示装置に光を感知する機能を有する光センサーが実装され、タッチの有無を光センサーが受光量の変化として検出できる構造になっている。ここで表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)が挙げられ、その場合光センサーは一般的に液晶セル内に配置される。タッチパネル上に指を置いた場合、表示装置画面に照射される外光、つまり光センサーに入射する外光は指によって遮光され、その受光量の変化を光センサーが検出してタッチした位置が認識されることとなる(特許文献3)。光センサー内臓方式では、表示装置の各画素に光センサーを配置することも可能であるため、イメージセンサーとしても利用することができ、イメージスキャナーの機能を付与できる利点がある。また、抵抗膜方式や静電容量方式と比較して、多点入力も可能となり、様々なアプリケーションが期待できる。さらに、光センサーは表示装置に内蔵できるため、抵抗膜方式のように透明導電膜フィルムやスペーサーを必要とせず、タッチパネル表示装置の薄型化が図れることも利点の一つに挙げられる。
【0007】
しかしながら、光センサー内蔵方式のタッチパネルは、外光の受光量が不十分な環境、すなわち薄暗い環境においては、タッチパネル上に指を置いても光センサーが受光量の変化を検出することが困難となり、位置認識の誤動作を起こしやすいという問題が残っていた。
【0008】
このような問題に対し、特許文献4によれば、光センサーが感知する光源として、外光ではなくライトペンを利用する方法が提案されているが、タッチ入力の際には特殊なライトペンが必要となり、利便性に欠ける。
【0009】
また、液晶ディスプレイなどの表示装置の場合、光センサーが検出する光源としてバックライトの反射光を利用する方法も提案されている。この方法では、画面上に置かれた指とタッチパネル面との界面でバックライト光が反射し、その反射光を光センサーが感知することによりタッチした部分の位置が認識される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2005-530996号公報
【特許文献2】特表2007-522586号公報
【特許文献3】特開昭61−3232号公報
【特許文献4】特開平2-211421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、光センサー方式のタッチパネルは、耐久性、多点入力など多くの有利な点を有している。
【0012】
しかしながら、光センサー方式のタッチパネルは、外光の受光量が不十分な環境、例えば薄暗い環境においては、タッチパネル上に指を置いても光センサーが受光量の変化を検出することが困難となり、位置認識の誤動作を起こしやすいという問題を有している。ライトペンを利用すればこの問題は解消され得るが、入力のために特殊なライトペンが必要となり、利便性に欠ける。バックライト光の反射光を利用する方法も外光不足の対策としてある程度有効と考えられるが、この方法では液晶表示装置を黒表示したときにタッチパネル上に指を置いてもバックライト光を反射させることができず、タッチした部分の位置の検出ができない。
【0013】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外光が弱い環境下でも誤動作が少なく、特殊なペンを使用せずとも入力が可能であり、さらには液晶表示装置において画像を黒表示した場合でも入力が可能なタッチパネルを得ることを可能にするタッチパネル用光学部材、その製造方法及びこれを用いた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、対向する一対の主面を有する光学部材であって、層内に気泡を含み、かつ可逆的に変形可能な層(以下、「気泡含有層」ともいう。)と、当該層を挟持する第1の基材及び第2の基材と、を有し、一方の主面側から押圧されたときに、層内に気泡を含み、かつ可逆的に変形可能な層が可逆的に変形することにより、他方の主面側から入射した光の反射光の状態が変化するタッチパネル用光学部材を提供する。
【0015】
かかる光学部材の所定の位置を一方の主面側から押圧する(力学的圧力が加えられる)と、他方の主面側から入射した光の反射光の状態が変化する。この反射光の変化を光センサーで検知することにより、押圧された位置を認識することができる。この方式によれば、表示装置から発せられた光を利用するため、外光が弱い環境下でも誤動作を生じにくい。また、ライトペンや導電性を有するペンなどの特殊な入力手段を必要とすることもない。さらには、光学部材自体で反射する反射光を利用することから、液晶表示装置において偏光板の内側に光学部材を設けることにより、黒表示の状態であってもバックライト光及びその反射光を有効に利用することができる。
【0016】
さらに上記光学部材は、気泡含有層を有し、力学的圧力が加えられることによる当該層の変形と力学的圧力が除荷されることにより復元が可能であるため、より効率的かつ高精度に圧力変化を光学的変化に変換することが可能となり、より高感度なタッチパネル機能を実現し得る。
【0017】
すなわち、力学的圧力が加えられていない状態では、他方の主面側から入射した光は、上記光学部材の気泡含有層内の気泡含有層を形成する材料と気泡との界面で反射して、タッチパネルに内蔵されている光センサーに検出される。これに対し、一度力学的圧力が加えられると気泡がつぶれるため気泡含有層内の反射面を失い、結果として光センサーに検出される光量差が生れる。この原理により高感度なタッチパネル機能を実現し得る。
【0018】
本発明は、第1の基材の片面に予め発泡させた材料を塗布して塗膜層を形成する工程と、当該塗膜層上に第2の基材を積層する工程とを備える上記タッチパネル用光学部材の製造方法を提供する。
【0019】
本発明は、第1の基材の片面に発泡剤を含む材料を塗布して塗膜層を形成する工程と、当該塗膜層上に第2の基材を積層する工程と、加熱により塗膜層を発泡させる工程とを備える上記タッチパネル用光学部材の製造方法を提供する。
【0020】
これらの製造方法によれば、簡便かつ低コストで上述のタッチパネル用光学部材を製造することができる。
【0021】
本発明は、光源、光センサー、及び上述の製造方法により製造されるタッチパネル用光学部材を備える表示装置を提供する。かかる表示装置によれば、上述のタッチパネル用光学部材を備えるので、優れた効果を発揮する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、外光が弱い環境下でも誤動作が少なく、特殊なペンを使用せずとも入力が可能であり、さらには液晶表示装置において画像を黒表示した場合でも入力が可能な表示装置を得ることが可能なタッチパネル用光学部材、及びこれを用いた表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】光学部材を実装した表示装置(タッチパネル)の一実施形態を示す端面図である。
【図2】光学部材の機能を説明するための端面図である。
【図3】光学部材の機能を説明するための端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
図1は、光学部材を備えるタッチパネル(表示装置)の一実施形態を示す端面図である。図1に示すタッチパネル100は、液晶セル4と、液晶セル4の一方面側に設けられた光源としてのバックライト60と、液晶セル4の他方面側に設けられた光学部材1と、液晶セル4内に設けられた光センサー52と、液晶セル4及び光学部材1を挟んで対向配置された一対の偏光板20,21とを主として備える。
【0026】
液晶セル4は、対向配置された2枚のガラス基板23,24と、バックライト60側のガラス基板24上に設けられた薄膜トランジスター51及び光センサー52と、薄膜トランジスター51及び光センサー52を覆う絶縁膜54と、絶縁膜54上に積層された透明電極41、配向膜43、液晶層45、配向膜42、透明電極40及びカラーフィルター25とを含む。ガラス基板24と薄膜トランジスター51及び光センサー52との間には遮光膜50が設けられている。配向膜42と配向膜43との間には液晶スペーサー47が設けられている。ガラス基板23上には、粘着層31、光学部材1、粘着層30、位相差板22及び偏光板20がこの順で積層されている。
【0027】
図1に示すタッチパネル100は、液晶表示装置としての機能とともに、画面S100の所定の位置が指等でタッチされたときにその位置を検出する機能も有する入力装置である。
【0028】
光学部材は、気泡2を含む層(気泡含有層)13と、気泡含有層13を挟持する第1の基材11及び第2の基材12とを有する。光学部材1は、第1の基材11側の主面S1及び第2の基材12側の主面S2を有する積層シートである。光学部材1は、第1の基材は、第1の基材11側がバックライト60及び光センサー52側に位置する向きで配置されている。
【0029】
なお、図1に示すタッチパネル100においては、光センサー52はガラス基板24上に形成されているが、光センサー52はガラス基板23上に形成されていてもよい。また、光学部材1は、液晶セル4と偏光板22との間に配置されていることが、力学的圧力によって変化した光センサーへの入射光変化を光センサーが効果的に感知できるという観点から好ましいが、光源から入射した光を有効に光センサー52へ感知させることができる位置に配置できれば、どこに配置されていてもよい。さらに、光学部材1は、2以上の気泡含有層13を備えるものであってもよい。
さらにまた、気泡含有層13の外周部には、第1の基材11と第2の基材12とを互いに離すためのスペーサーが設けられていてもよい。スペーサーとしては、例えばPETフィルムからなるスペーサーを用いることができる。
【0030】
図2,3は、光学部材1の機能を説明するための模式図である。図2に示すように、タッチパネル100の画面S100が押圧されていないとき、バックライト60から発せられて光学部材1内に進入した光の一部は、気泡2と気泡含有層13を構成する材料との界面において反射して反射光L1となる。気泡2内の気体と気泡含有層13を構成する材料との屈折率差により、光がこれらの界面において反射又は散乱し易く、第1の主面S1側に設けられた光センサー52が受光する、散乱光を含む反射光の光量は比較的大きい。
【0031】
図3に示すように、タッチパネル100の画面S100の所定の位置が指Fによってタッチされたとき、光学部材1は主面S2側から押圧される。このように力学的圧力が局所的に加えられた気泡含有層13は第1の基材11側に向けて歪み、気泡2が押しつぶされて、つぶれた気泡3となる。つぶれた気泡3には光の反射面がなくなるか、気泡と気泡含有層を構成する材料との界面での反射が弱くなるため、光学部材1内に進入した光は主として指Fと画面S100との界面で殆ど反射するようになる。指Fと画面S100との界面で反射した反射光L2の光量は、一般に反射光L1の光量よりも小さい。また、光学部材1を透過する光の光量又は輝度が大きくなる。この状態で光センサー52が受講する光量は、光学部材1が押圧されていないときと比較すると小さくなる場合が多い。
【0032】
このように、光学部材2が主面S2側から押圧されたときに、主面S1側から入射した光の反射光の光量等が変化する。この光学的な変化を主面S1側に設けられた光センサー52を用いて検知することにより、タッチパネル100がタッチされた所定の位置を認識することが可能である。また、光学部材1が画面S100側の偏光板20とバックライト60との間に設けられていることから、黒表示のときでも白表示等のときと同様にバックライトの光及びその反射光を効率的に利用することができる。
【0033】
光センサー52としては、光量等の反射光の光学的なパラメータを検知可能なものであれば、特に制限なく用いられる。具体的には、アモルファスシリコン、多結晶シリコンなど、光電効果を発現する半導体素子が挙げられる。
【0034】
気泡含有層13を構成する材料の原料(後述する塗膜層形成用材料)としては、硬化後に可逆的に変形するものであればその組成や合成方法に特に制限はないが、硬化後にゴム弾性を有するものが好ましく、光線透過率が高いものがより好ましい。そのような材料としては、例えば、天然ゴム、合成ポリイソプレン、スチレンとブタジェンのコポリマー、ブタジェンとアクリロニトリルのコポリマー、ブタジェンとアルキルアクリレートのコポリマー、ブチルゴム、ブロモブチルゴム、クロロブチルゴム、ネオブレン(クロロプレン、2−クロロ−1,3−ブタジェン)、オレフィン系ゴム、例えばエチレンプロピレンゴム(EPR)、及びエチレンプロピレンジェノモノマー(EPDM)ゴム、ニトリルエラストマー、ポリアクリル系エラストマー、ポリスルフィドポリマー、シリコーンエラストマー、熱可塑性エラストマー、熱可塑性コポリエステル、工チレンアクリル系エラストマー、酢酸ビニルエチレンコポリマー、エピクロルヒドリン、塩素化ポリエチレン、及び化学的に架橋したポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、フルオロカーボンゴム、フルオロシリコーンゴムなどが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。これらの材料の中で、シリコーンエラストマーは、上述した気泡含有層13の変形と復元の可逆性に優れるという観点から、特に好ましい材料として挙げられる。
【0035】
上記シリコーンエラストマーとしては、特に制限はないが、例えば、直鎖状の高重合ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン生ゴムに、有機過酸化物を配合して加熱することにより、架橋してゴム状弾性体を形成する過酸化物加硫型シリコーンゴム、ビニル基含有ポリオルガノシロキサンとポリオルガノハイドロジェンシロキサンの間の付加反応による架橋を白金触媒の存在下で行って、ゴム状弾性体を形成する付加反応型シリコーンゴム、エポキシ基含有ポリオルガノシロキサンを光酸発生剤の存在下で光照射することにより架橋してゴム弾性体を形成する光反応型シリコーンゴム、アクリロイル基含有ポリオルガノシロキサンを光重合開始剤存在下で光照射することにより架橋してゴム弾性体を形成する光ラジカル重合反応型シリコーンゴムが特に好ましいものとして挙げられる。
【0036】
上記のゴム状弾性体を形成する付加反応型シリコーンゴムを構成するポリオルガノシロキサンとしては、ケイ素原子に結合した1価の脂肪族不飽和炭化水素基を1分子中に2個以上有し、付加反応により網状構造を形成することができるものであれば特に制限はなく、1価の脂肪族不飽和炭化水素基としては、ビニル、アリル、1−ブテニル、1−ヘキセニルなどが例示されるが、合成が容易で、また硬化前の組成物の流動性や、硬化後の組成物の耐熱性を損ねないという観点から、ビニル基が最も好ましい。また、ケイ素原子に結合した他の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルなどのアルキル基、フェニルなどのアリール基、ベンジル、2−フェニルエチル、2−フェニルプロピルなどのアラルキル基、クロロメチル、クロロフェニル、2−シアノエチル、3,3,3−トリフルオロプロピルなどの置換炭化水素基が挙げられ、これらのうち、合成が容易であって、架橋前の流動性や架橋後にゴム弾性体とした場合の圧縮弾性率などの特性のバランスが優れているという観点から、メチル基が最も好ましい。さらに、1価の脂肪族不飽和炭化水素基は、ポリオルガノシロキサン分子鎖の末端又は途中のいずれに存在してもよく、その双方に存在してもよいが、架橋後の組成物に優れた機械的性質を与えるためには、直鎖状の場合、少なくともその両末端に存在していることが好ましい。また、シロキサン骨格は、直鎖状でも分岐状であってもよい。また、ポリオルガノシロキサンの重合度は特に限定されないが、架橋前の組成物が良好な流動性及び作業性を有し、架橋後の組成物が適度の圧縮弾性を有するには、25℃における粘度が500〜500,000MPa・sであることが好ましく、1,000〜100,000MPa・sであることが特に好ましい。
【0037】
上記ゴム状弾性体を形成する付加反応型シリコーンゴムを構成するポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、分子中に含まれるヒドロシリル基が上記ポリオルガノシロキサン中の1価の脂肪族不飽和炭化水素基への付加反応を行うことにより、ポリオルガノシロキサンの架橋剤として機能するものであり、架橋物を網状化するために、付加反応に関与するケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有していることが好ましい。シロキサン単位のケイ素原子に結合した有機基としては、上述のポリオルガノシロキサンにおける1価の不飽和脂肪族炭化水素基以外の有機基と同様のものが挙げられ、それらの中でも、合成が容易な点から、メチル基が最も好ましい。また、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンにおけるシロキサン骨格は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、またこれらの混合物を用いてもよい。また、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの重合度は特に限定されないが、同一のケイ素原子に2個以上の水素原子が結合したポリオルガノハイドロジェンシロキサンは合成が困難なので、3個以上のシロキサン単位からなることが好ましい。さらに、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの配合量は、上記ポリオルガノシロキサン中の1価の脂肪族不飽和炭化水素基1個に対して、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子が0.5〜5個、好ましくは1〜3個となるような量であることが好ましい。この水素原子の存在比が0.5未満となるような量では、架橋が不完全になる傾向があり、存在比が5を越えるような量の場合は、架橋の際に発泡が起こりやすく、表面状態が低下する傾向がある。
【0038】
上記ゴム状弾性体を形成する付加反応型シリコーンゴムには、上記ポリオルガノシロキサン中の1価の脂肪族不飽和炭化水素基と上記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンのヒドロシリル基との間の付加反応を促進させるための触媒として、白金系化合物を用いることが好ましい。白金系化合物としては、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールの反応生成物、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフィン錯体などが例示され、上記ポリオルガノシロキサン及び上記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンへの溶解性や、触媒活性が良好な点から、塩化白金酸とアルコールの反応生成物及び白金−ビニルシロキサン錯体などが好ましい。白金系化合物の配合量は、上記ポリオルガノシロキサンに対し、白金原子換算で1〜200重量ppmであることが好ましく、1〜100重量ppmであることがさらに好ましく、2〜50重量ppmであることが特に好ましい。1重量ppm未満の場合には、硬化速度が不十分で、タッチパネル用光学部材の製造効率が低下する傾向があり、200重量ppmを越えると、架橋速度が過度に早まるために各成分を配合した後の作業性が損なわれる傾向がある。
【0039】
気泡含有層13内に含まれる気泡2は連続気泡であっても独立気泡であってもよい。気泡2を構成する気体に特に制限はないが、光線透過率が高いものが好ましい。そのような気体としては、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、酸素、窒素、二酸化炭素、大気などが挙げられる。
【0040】
また、気泡2は平面状に隙間なく並べられていることが望ましい。気泡2の層が厚くなると、その層を通過する光が散乱され減光するおそれがある。気泡2が平面状に隙間なく並べられていれば、その形状は球形である必要はなく、上下方向につぶれた円柱あるいは多角柱状のものになっても良い。良好なタッチパネル特性を得る観点から、一つの気泡のサイズは上下方向に厚み1μm〜100μmが好ましく、5μm〜50μmがより好ましく、10μm〜30μmがさらに好ましい。また横方向には10μm〜1000μmが好ましく、100μm〜600μmがより好ましい。
【0041】
第1の基材11及び第2の基材12は、光線透過率が高く複屈折を持たないものであれば特に限定されるものではない。そのような基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、トリアセチルセルロース等からなる厚さ5〜200μm程度の基材が挙げられる。
【0042】
光学部材1は、例えば、第1の基材11の片面に予め発泡させた塗膜層形成用材料を塗布して塗膜層を形成する工程と、当該塗膜層上に第2の基材12を積層する工程とを備える方法や、第1の基材11の片面に発泡剤を含む塗膜層形成用材料を塗布して塗膜層を形成する工程と、当該塗膜層上に第2の基材12を積層する工程と、加熱により塗膜層を発泡させる工程とを備える方法により製造することができる。
【0043】
塗膜層形成用材料を予め発泡させる方法としては、塗膜層形成用材料を含む組成物を激しく攪拌して大気を取り込む方法がある。攪拌する方法に特に制限はなく、ホモジナイザーなど一般に知られている装置を用いることができる。またバブラーなどを用いて強制的に気体を送り込んでも良い。
【0044】
また、発泡剤としては、それ自体公知の無機発泡剤又は有機発泡剤を用いることができる。発泡剤の具体例として、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジン(OBSH)、ジニトロソテレフタルアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、トルエンスルホニルヒドラジドなどのスルホニルヒドラジド類などを挙げることができる。中でも、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジン(OBSH)がより好ましいものである。これらの発泡剤は、尿素、尿素誘導体などの公知の発泡助剤と併用してもよい。尿素誘導体としては、三協化成社製のセルトンNPや永和化成社製のセルペーストK5などが挙げられる。
【0045】
発泡剤の配合量は、使用する塗膜層形成用材料の種類によって異なるが、塗膜層形成用材料100重量部に対して、0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部である。
【0046】
発泡剤の使用量が少ないと、形成される気泡含有層13内に十分な量の気泡が発生せず、これを使用してタッチパネルとした際に光センサーに十分な光量差を与えることができなくなる。また発泡剤の使用量が多すぎると、発生した気泡同士が繋がって大きな気泡となり、光学部材1の上下基板の接着状態が維持できなくなる傾向がある。
【0047】
塗膜層を形成する方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、ドクターブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ロールコーティング法、スクリーンコーティング法、スピナーコーティング法、インクジェットコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、グラビアコーティング法、カーテンコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。
【0048】
塗膜層形成用材料に溶剤を添加して塗膜層を形成した場合には、塗膜層を形成した後に、乾燥して溶剤を除去してもよい。
【0049】
塗膜層を発泡させる際の加熱温度は、使用する発泡剤に合わせて適宜調整することができる。
【0050】
光学部材1においては、力学的圧力の変化を光学的変化に効率よく変換させる現象を発現させる目的から、気泡含有層13に力学的圧力が与えられる前後の可視光線透過率変化の絶対値は0.1〜50%であることが好ましく、0.5〜45%であることがより好ましく、1〜40%であることがさらに好ましく、2〜35%であることが特に好ましく、3〜30%であることが極めて好ましい。気泡含有層13に力学的圧力が与えられる前後の可視光線透過率変化の絶対値が0.1%未満では、力学的圧力を変化させた場合の光学的変化を光センサーで検出することが困難になる傾向があり、50%を超える場合には、表示装置とした場合に、表示品質が低下する傾向がある。
【0051】
なお可視光線透過率の変化については、光学部材1をガラス基板上に載置し、さらに該光学部材1の上に直径φ10mm、厚さ0.7mmの円盤状ガラス板を載置した試料に、可視領域の光線を試料に対して法線方向に照射し、色彩輝度計を使用して、測定視野角1°の範囲で試料を透過した光線の輝度を測定した値をaとし、この状態から該光学部材1を取り除いて測定した輝度をbとしたときの可視光線透過率T1をT1=(a/b)×100(%)、また、光学部材1をガラス基板上に載置し、さらに該光学部材1の上に直径φ10mmの円盤状ガラス板を載置して、ガラス基板と直径φ10mm、厚さ0.7mmの円盤状ガラス板間に5×10Paの荷重を加えた試料に、可視領域の光線を試料に対して法線方向に照射し、色彩輝度計を使用して、測定視野角1°の範囲で試料を透過した光線の輝度を測定した値をcとし、この状態から該光学部材1を取り除いて測定した輝度をdとしたときの可視光線透過率T2をT2=(c/d)×100(%)として、可視光線透過率T1とT2の差の絶対値(ΔT)を可視光線透過率の変化と表す。なお、可視光線とは一般的に視認可能な波長領域380〜780nm程度の光線を表す。
【0052】
また、光学部材1は、光源から入射した光を効果的に反射させて、この反射光を光センサーに有効に感知させられる、あるいは光学部材1に力学的圧力が加えられる場合には、その反射光路変化による光センサーでの受光量変化を感度よく検出できる観点から、力学的圧力による表面形状の変形前後における可視光線反射率変化の絶対値が0.1〜50%であることが好ましく、0.5〜48%であることがより好ましく、1〜45%であることがさらに好ましく、2〜43%であることが特に好ましく、3〜40%であることが極めて好ましい。表面形状変形前後の可視光線反射率変化の絶対値が0.1%未満では、力学的圧力を変化させた場合の光学的変化を光センサーで検出することが困難になる傾向があり、50%を超える場合には、表示装置とした場合に、表示品質が低下する傾向がある。
【0053】
なお可視光線反射率の変化については、酸化マグネシウムなどの白色板に厚さ0.7mmのガラス基板及び直径φ10mm、厚さ0.7mmの円盤状ガラス板を載置し、可視領域の光線を白色板に対して法線方向に照射して、分光測色計などを使用して、白色板の法線方向に対して角度25°に反射した光線の明度を測定した値をa’とし、この状態からガラス基板と円盤状ガラス板との間に光学部材1を載置して同様の方法で測定した反射光線の明度をb’としたときの可視光線反射率R1をR1=(b’/ a’)×100(%)、さらにこの状態からガラス基板と円盤状ガラス板との間に5×10Paの荷重を加えながら同様の方法で測定した反射光線の明度をc’としたときの可視光線反射率R2をR2=(c’/a’)×100(%)として、可視光線反射率R1とR2の差の絶対値(ΔR)を可視光線反射率の変化と表す。
【0054】
また光学部材1は、これを表示装置に使用した場合に、光を吸収することなく、力学的圧力変化から変換された光学的変化を効率的に検出でき、かつ表示品質を維持できるという観点から、上記気泡含有層13において、これを構成する成分自体の可視光線透過率、つまりこれを構成する成分で形成された両面平滑膜の可視光線透過率が、厚さ20μmで70〜100%であることが好ましく、75〜98%であることがより好ましく、80〜97%であることがさらに好ましく、83〜96%であることが特に好ましく、85〜95%であることが極めて好ましい。
【0055】
なお、このときの可視光線透過率は、上述した気泡含有層13に力学的圧力が与えられる表面形状の変形前後の可視光線透過率変化を測定する方法を用いて、同様に測定することができる。
【0056】
光学部材1は液晶ディスプレイなどの表示装置に貼り付けるための粘着材層を有していてもよく、さらにその上にカバーフィルムが積層されていてもよい。
【0057】
光学部材1は、ロール状に巻いて保管し、使用する際には上記カバーフィルムを剥離して粘着材層を液晶ディスプレイなどの表示装置に貼り付けて使用することができる。
【0058】
本実施形態における表示装置は、上述の光学部材等を積層することによって得られる。その製造方法は特に制限されないが、ここで、光学部材を使用した表示装置の製造方法の一例として、(I)光センサーを具備する液晶セルに光学部材1を積層する工程、(II)位相差板又は偏光板を積層する工程、(III)光源となるバックライト装置を液晶セルに実装する工程の各工程によって、光センサー内蔵方式タッチパネルの液晶ディスプレイを製造する方法を説明する。
【0059】
〔(I)光センサーを具備する液晶セルに光学部材を積層する工程〕
液晶セルは、光センサーを具備しているものであれば特に制限はなく、図1で説明した液晶セル4を使用することができる。
【0060】
光学部材を液晶セル上に積層する方法としては、光学部材にカバーフィルムが存在している場合、そのカバーフィルムを除去後、液晶セル上に光学部材が接するように、圧着ロールで圧着させて積層する方法等が挙げられる。
【0061】
圧着ロールは、加熱圧着できるように加熱手段を備えたものであってもよく、加熱圧着する場合の加熱温度は、10〜100℃とすることが好ましく、20〜80℃とすることがより好ましく、30〜60℃とすることが特に好ましい。この加熱温度が、10℃未満では、光学部材1と液晶セル4との密着性が低下する傾向があり、100℃を超えると、液晶が劣化する傾向がある。
【0062】
また、加熱圧着時の圧着圧力は、線圧で50〜1×10N/mとすることが好ましく、2.5×10〜5×10N/mとすることがより好ましく、5×10〜4×10N/mとすることが特に好ましい。この圧着圧力が、50N/m未満では、光学部材1と液晶セル4との密着性が低下する傾向があり、1×10N/mを超えると、液晶セルが破壊される傾向がある。
【0063】
このようにして、光学部材を液晶セル上に積層することができる。
【0064】
〔(II)位相差板又は偏光板を積層する工程〕
位相差板又は偏光板を積層する方法としては、上述した液晶セルに積層された光学部材の上に、(I)光センサーを具備する液晶セルに光学部材を積層する工程で例示した同様の方法が挙げられる。なお、液晶ディスプレイとして画像を得るために、液晶セルが積層された面と反対側の液晶セル上に、上記と同様の方法で位相差板又は偏光板を積層することができる。
【0065】
〔(III)光源となるバックライト装置を液晶セルに実装する工程〕
本発明において、発光ダイオード、導光板、反射板、拡散板などから成るバックライト装置を液晶セルに実装する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を利用でき、液晶セルをモジュールとするための筐体に組み込むか、あるいはシール材で熱圧着するなどの工程が挙げられる。
【0066】
なお、本発明の表示装置の好適な実施形態として、液晶ディスプレイについて説明したが、本発明の表示装置は、光源及び光センサーを備えていれば、特に制限はなく、例えば、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、電子ペーパーなどであってもよい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0068】
実施例1
〔付加反応型シリコーンゴム溶液1の作製〕
付加反応型シリコーンゴムとして、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名TSE-3455T(A)液100gと同社TSE-3455T(B)液10gを200mLのポリカップにとりテフロン(登録商標)性の棒で5分間良くかき混ぜた。さらにこの液をホモジナイザー(7000rpm)を用いて攪拌し、液内部に十分空気を含ませ、付加反応型シリコーンゴム溶液1とした。
【0069】
〔タッチパネル用光学部材1の作製〕
トリアセチルセルロースフィルム(TAC)を200mm×300mm切りとり、その上に付加反応型シリコーンゴム溶液1を垂らし、アプリケータを用いて10cm角の領域に膜厚約40μmの塗膜を作製した。塗膜の外周に厚さ30μmのPETフィルムをスペーサーとして配置した。スペーサーとなるPETフィルムと得られた塗膜にかかる大きさのTACを別途用意し、ゴムローラーを用いてこれを積層し、75℃に設定したホットプレート上で10分間加熱して付加反応型シリコーンを硬化し、TAC/付加反応型シリコーンゴム溶液1からなる塗膜/TACの積層体となるタッチパネル用光学部材1を得た。
【0070】
〔評価用タッチパネル模擬素子1の作製と評価〕
シリコーン粘着剤としての商品名X-40-3291(28g)、硬化触媒としての信越化学工業株式会社製、商品名CAT-PL-50T(0.14g)、ヘキサン(84g)を200mLのポリカップにとり、テフロン(登録商標)性の棒で5分間良くかき混ぜ粘着材とした。これを12cm角のガラス基板にアプリケータを用いて塗布し、75℃に設定したホットプレート上で5分間加熱して粘着材層を形成した。この上に上述のタッチパネル用光学部材1をゴムローラーを用いて貼り合わせた。さらにその上にクロスニコルに配置した2枚の偏光板を積層し、評価用タッチパネル模擬素子1とした。
評価用タッチパネル模擬素子1の偏光板側から指で押し、ガラス側から観察すると、指で押した箇所の反射率が大きく変化していることが確認できた。
【0071】
実施例2
〔付加反応型シリコーンゴム溶液2の作製〕
付加反応型シリコーンゴムとして、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名TSE-3455T(A)液100gと同社TSE-3455T(B)液10gを200mLのポリカップにとりテフロン(登録商標)性の棒で5分間良くかき混ぜた。ここにメノウ乳鉢を使って粒径15μmにまで粉砕した炭酸水素ナトリウム10g及びヘキサン50gを入れ、さらに10分間よくかき混ぜ、付加反応型シリコーンゴム溶液2とした。
【0072】
〔タッチパネル用光学部材2の作製〕
トリアセチルセルロースフィルム(TAC)を200mm×300mm切りとり、その上に付加反応型シリコーンゴム溶液2を垂らし、アプリケータを用いて10cm角の領域に膜厚約40μmの塗膜を作製した。50℃に設定したホットプレート上で5分間加熱して溶剤ヘキサンを蒸散させて取り除いた。塗膜の外周に厚さ30μmのPETフィルムをスペーサーとして配置した。スペーサーとなるPETフィルムと得られた塗膜にかかる大きさのTACを別途用意し、ゴムローラーを用いてこれを積層し、150℃に設定したホットプレート上で5分間加熱すると発泡とシリコーンの硬化が競争して起こり、TAC/付加反応型シリコーンゴム溶液2からなる塗膜/TACの積層体となるタッチパネル用光学部材2を得た。
【0073】
〔評価用タッチパネル模擬素子2の作製と評価〕
シリコーン粘着剤としての信越化学工業株式会社製X-40-3291(28g)、硬化触媒としての信越化学工業株式会社製、商品名CAT-PL-50T(0.14g)、ヘキサン(84g)を200mLのポリカップにとり、テフロン(登録商標)性の棒で5分間良くかき混ぜ粘着材とした。これを12cm角のガラス基板にアプリケータを用いて塗布し、75℃に設定したホットプレート上で5分間加熱して粘着材層を形成した。この上に上述のタッチパネル用光学部材2をゴムローラーを用いて貼り合わせた。さらにその上にクロスニコルに配置した2枚の偏光板を積層し、評価用タッチパネル模擬素子2とした。
評価用タッチパネル模擬素子2の偏光板側から指で押し、ガラス側から観察すると、指で押した箇所の反射率が大きく変化していることが確認できた。
【0074】
実施例3
〔付加反応型シリコーンゴム3の作製〕
付加反応型シリコーンゴムとして、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名TSE-3455T(A)液100gと同社TSE-3455T(B)液10gを200mLのポリカップにとりテフロン(登録商標)性の棒で5分間良くかき混ぜた。ここにメノウ乳鉢を使って粒径15μmにまで粉砕した炭酸水素ナトリウム10g及びヘキサン50gを入れ、さらに10分間よくかき混ぜ、付加反応型シリコーンゴム溶液3とした。
【0075】
〔タッチパネル用光学部材3の作製〕
トリアセチルセルロースフィルム(TAC)を200mm×300mm切りとり、その上に付加反応型シリコーンゴム溶液3を垂らし、アプリケータを用いて10cm角の領域に膜厚約40μmの塗膜を作製した。50℃に設定したホットプレート上で5分間加熱して溶剤ヘキサンを蒸散させて取り除いた。塗膜の外周に厚さ30μmのPETフィルムをスペーサーとして配置した。スペーサーとなるPETフィルムと得られた塗膜にかかる大きさのTACを別途用意し、ゴムローラーを用いてこれを積層し、150℃に設定したホットプレート上で5分間加熱すると発泡とシリコーンの硬化が競争して起こり、TAC/付加反応型シリコーンゴム溶液3からなる塗膜/TACの積層体となるタッチパネル用光学部材3を得た。
【0076】
〔評価用タッチパネル模擬素子3の作製と評価〕
シリコーン粘着剤としての信越化学工業株式会社製X-40-3291(28g)、硬化触媒としての信越化学工業株式会社製、商品名CAT-PL-50T(0.14g)、ヘキサン(84g)を200mLのポリカップにとり、テフロン(登録商標)性の棒で5分間良くかき混ぜ粘着材とした。これを12cm角のガラス基板にアプリケータを用いて塗布し、75℃に設定したホットプレート上で5分間加熱して粘着材層を形成した。この上に上述のタッチパネル用光学部材3をゴムローラーを用いて貼り合わせた。さらにその上にクロスニコルに配置した2枚の偏光板を積層し、評価用タッチパネル模擬素子3とした。
評価用タッチパネル模擬素子3の偏光板側から指で押し、ガラス側から観察すると、指で押した箇所の反射率が大きく変化していることが確認できた。
【0077】
〔タッチパネル機能の検討〕
実施例4
薄膜トランジスター(TFT)、光センサー、遮光膜、配線、絶縁膜、配向膜、電極などが実装された基板と、カラーフィルター、ブラックマトリクス、平坦化膜、透明電極、配向膜、シール材、スペーサー材が実装された基板とが対向させて配置され、両基板間に液晶が封入された評価用液晶セルを準備した。この評価用液晶セル上に光学部材1をラミネータ(日立化成工業(株)製、商品名HLM−3000型)を用いて積層した。
【0078】
評価用液晶セルに積層された光学部材1の上に、位相差板及び偏光板を上記と同様の積層方法により順次積層した。また、評価用液晶セルの光学部材1とは反対側の面に、上記と同様の積層方法により偏光板を積層した。さらに、発光ダイオードを備えたバックライト装置を光学部材1と反対側に取り付け、タッチパネル機能評価用の液晶モジュールを作製した。
【0079】
この液晶モジュールを駆動回路に接続し、タッチパネル機能を発現させるプログラムにより駆動した。そして、暗所にて、不導体のペンを使用して光学部材1側から液晶画面をタッチしたところ、ペンでタッチした位置が光センサーにより認識され、誤動作することなく、プログラム通りの画像が得られた。この結果から、光学部材1を実装することによって、タッチパネル機能が問題なく動作することを確認できた。また、外光の反射が抑制され、表示品質も良好であった。
【符号の説明】
【0080】
1…タッチパネル用光学部材、2…気泡、3…つぶれた気泡、4…液晶セル、11…第1の基材、12…第2の基材、13…気泡含有層、20,21…偏光板、22…位相差板、23,24…ガラス基板、25…カラーフィルター、30,31…粘着層、40,41…透明電極、42,43…配向膜、45…液晶層、47…液晶スペーサー、50…遮光膜、51…薄膜トランジスター、52…光センサー、54…絶縁膜、60…バックライト、100…タッチパネル、L1,L2…反射光、S1,S2…主面、S100…画面。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の主面を有する光学部材であって、
層内に気泡を含み、かつ可逆的に変形可能な層と、当該層を挟持する第1の基材及び第2の基材と、を有し、
一方の前記主面側から押圧されたときに、前記層内に気泡を含み、かつ可逆的に変形可能な層が可逆的に変形することにより、他方の前記主面側から入射した光の反射光の状態が変化するタッチパネル用光学部材。
【請求項2】
請求項1記載のタッチパネル用光学部材の製造方法であって、
前記第1の基材の片面に予め発泡させた材料を塗布して塗膜層を形成する工程と、当該塗膜層上に前記第2の基材を積層する工程と、を備える製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のタッチパネル用光学部材の製造方法であって、
前記第1の基材の片面に発泡剤を含む材料を塗布して塗膜層を形成する工程と、当該塗膜層上に前記第2の基材を積層する工程と、加熱により前記塗膜層を発泡させる工程と、を備える製造方法。
【請求項4】
光源、光センサー、及び請求項2又は3に記載の製造方法により製造されるタッチパネル用光学部材を備える表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−70543(P2011−70543A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222802(P2009−222802)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】