説明

タッチパネル用光導波路

【課題】複数の光導波路を結合しても、その結合部分では、コアの光結合損失が小さく、かつ、隣接するコアに光信号が入射しないタッチパネル用光導波路を提供する。
【解決手段】タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置され、上記画面の一端縁に沿って、出射用光導波路A1,A2と入射用光導波路B1,B2とが交互に配設され、上記出射用光導波路A1,A2の端部の端面と入射用光導波路B1,B2の端部の端面とが突き合わされて両光導波路A1,A2,B1,B2が結合され、上記出射用光導波路A1,A2のコア2の端部が、光出射用レンズ部2Aに形成されていて、その端面が光出射用レンズ面に形成され、入射用光導波路B1,B2のコア2の端部が、上記光出射用レンズ部2Aに対応する光入射用レンズ部2Bに形成されていて、その端面が上記光出射用レンズ面からの出射光を入射する光入射用レンズ面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルにおいて、指等の触れ位置を検知する検知手段として用いられるタッチパネル用光導波路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、指や専用のペン等で液晶ディスプレイ等の画面に直接触れることにより、機器を操作等する入力装置である。そのタッチパネルの構成は、操作内容等を表示するディスプレイと、このディスプレイの画面上での上記指等の触れ位置(座標)を検知する検知手段とを備えている。そして、その検知手段で検知した触れ位置を示す情報が信号として送られ、その触れ位置に表示された操作等が行われるようになっている。このようなタッチパネルを用いた機器としては、金融機関のATM,駅の券売機,携帯ゲーム機等があげられる。
【0003】
上記タッチパネルにおける指等の触れ位置の検知手段として、光導波路を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、そのタッチパネルは、その平面図を図6に示すように、平面視四角形のディスプレイの画面の周縁部に沿って、2個のL字状の光導波路M,Nが設置されており、光導波路M,Nは、四角枠状になっている。そのうち、上記画面を挟んで対向する一方が、発光用の光導波路Mであり、他方が、受光用の光導波路Nである。発光用の上記光導波路Mの端部には、発光素子5が接続され、受光用の上記光導波路Nの端部には、受光素子6が接続されている。なお、図6において、鎖線で示す符号20は、光路であるコアであり、長手方向に延びる鎖線が複数のコア20の束の太さを示し、そこから内側に分岐した鎖線の太さが1本のコア20の太さを示している。また、この図6では、コア20の数を略して図示している。
【0004】
そして、上記発光素子5から発光された光は、発光用の上記光導波路Mのコア20により、多数の光に分岐され、その光導波路Mのコア20の先端部から、上記多数の光Sが、ディスプレイの画面と平行に、かつ他側部に向かって出射され、それらの出射光Sが、受光用の上記光導波路Nのコア20の先端部に入射するようになっている。これら光導波路M,Nにより、ディスプレイの画面上において、出射光Sが格子状に走っている状態になる。この状態で、指でディスプレイの画面に触れると、その指が出射光Sの一部を遮断するため、その遮断された部分を、受光用の上記光導波路Nに接続された上記受光素子6で感知することにより、上記指が触れた部分の位置(座標)を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−522987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記タッチパネルに対し、ディスプレイの大画面化の要求がある。それに対応して、上記タッチパネル用光導波路も、大形化する(光導波路M,Nを長くする)必要がある。
【0007】
しかしながら、上記光導波路M,Nの作製には、通常、フォトリソグラフィ工程を要し、そのフォトリソグラフィ工程で使用する露光装置によって露光範囲(均一な露光が可能な範囲)が限られるため、一度に作製される光導波路M,Nの長さも限られる(通常、最大30cm程度)。
【0008】
そこで、上記露光範囲を超える長さの光導波路を作製するためには、露光範囲が広い(長い)露光装置を用いるか、または、図7に示すように、ディスプレイの画面の各辺に、上記通常の長さの光導波路U,Vを複数並べることが考えられる。
【0009】
しかしながら、露光範囲が広い(長い)露光装置を用いる場合、そのような装置を新たに作製する必要があるため、多額の初期投資が必要となる。しかも、光導波路は、通常、樹脂を材料として作製されるため、その作製において、光導波路が長くなるほど、熱等による寸法収縮量が大きくなり、寸法精度が不安定になる。一方、図7に示すように、通常の長さの光導波路U,Vを複数並べる場合、各光導波路U,Vに発光素子5または受光素子6が必要となるため、ディスプレイの画面が大形になるほど、使用する発光素子5および受光素子6の数が多くなり、製造コストが上昇する。
【0010】
そこで、寸法収縮量を少なくし、かつ、使用する光学素子(発光素子5および受光素子6)の数を少なくするために、上記通常の長さの光導波路U,Vを長手方向に複数、光伝搬可能に結合することが考えられる。すなわち、結合し合う光導波路U,Vの端部同士を突き合わせ、その突き合わせ部分で、両光導波路U,Vのコア20の端部の端面同士を密着させ、コア20同士を光伝搬可能に結合することが考えられる。
【0011】
しかしながら、実際に、上記突き合わせの作業を行うと、その突き合わせ部分での上記コア20の端面同士の隙間は、コア20の周りのアンダークラッド層やオーバークラッド層の影響等により、通常、約100μm以上となり、上記コア20の端面同士を密着させることは、非常に困難である。上記隙間が形成されると、上記突き合わせ部分において、一方のコア20の端面からの出射光は放射状に広く広がり、他方のコア20の端面で受光され難くなる。しかも、上記突き合わせの作業では、その突き合わせ面に沿って、光導波路U,Vがずれるおそれがあり、コア20は細いことから、少しでもずれると、上記他方のコア20の端面での受光がさらに困難となる。このように、両光導波路U,Vの単なる突き合わせでは、その突き合わせ部分におけるコア20同士の光結合損失が大きくなる。特に、受光用の光導波路Vでは、複数のコア20がそれぞれ独立した光信号を伝達するため、上記光導波路Vの突き合わせ部分では、隣接するコア20に光信号が入射しないようにする必要がある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、複数の光導波路を結合しても、その結合部分では、コアの光結合損失が小さく、かつ、隣接するコアに光信号が入射しないタッチパネル用光導波路の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明のタッチパネル用光導波路は、タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置され、上記画面の一端縁に沿って、出射用光導波路と入射用光導波路とが交互に配設され、上記出射用光導波路の端部の端面と入射用光導波路の端部の端面とが突き合わされて両光導波路が結合され、上記出射用光導波路のコアの端部が、光出射用レンズ部に形成されていて、その端面が光出射用レンズ面に形成され、入射用光導波路のコアの端部が、上記光出射用レンズ部に対応する光入射用レンズ部に形成されていて、その端面が上記光出射用レンズ面からの出射光を入射する光入射用レンズ面に形成されているという構成をとる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のタッチパネル用光導波路は、タッチパネルのディスプレイの画面の一端縁に沿って、出射用光導波路の端部の端面と入射用光導波路の端部の端面とが突き合わされて両光導波路が結合されている。そして、その結合部分で結合し合う両光導波路において、一方の出射用光導波路のコアの端部が、光出射用レンズ部に形成されていて、その端面が光出射用レンズ面に形成され、他方の入射用光導波路のコアの端部が、光入射用レンズ部に形成されていて、その端面が光入射用レンズ面に形成されている。そのため、上記光出射用レンズ面からの出射光は、そのレンズ面の屈折作用により、光の拡散を適正に抑制した状態で出射され、上記光入射用レンズ面では、その光が受光され、そのレンズ面の屈折作用により、光を適正に収束させた状態で、コア内に導かれる。その結果、上記一方の光導波路のコアと上記他方の光導波路のコアとの光結合損失を小さくすることができるとともに、上記光出射用レンズ面からの出射光を、目標とする光入射用レンズ部に適正に入射させることができ、それに隣接する(目標としない)光入射用レンズ部に入射させないようにすることができる。また、上記のように複数の光導波路が結合され、いわば1個の光導波路となった状態で光学素子と接続されるため、各光導波路ごとに光学素子を接続する必要がない。そのため、光学素子の数を少なくすることができ、製造コストを抑えることができる。しかも、上記のように結合される光導波路として、一般的な露光装置が有する露光範囲内で無理なく作製された通常の長さのものを用いることができる。そのため、個々の光導波路では、寸法収縮量が少なく、上記のように複数の光導波路を結合しても全体の寸法精度が安定する。
【0015】
特に、上記光入射用レンズ面および上記光出射用レンズ面が、凸レンズ面である場合には、集光性に優れるため、上記光結合損失をより小さくすることができる。
【0016】
また、上記光入射用レンズ面が、上記光出射用レンズ面よりも大きく設定されている場合には、上記光入射用レンズ部における受光領域を広くすることができるため、上記光結合損失をより小さくすることができる。また、上記光導波路の結合において、幅方向や高さ方向に大きなずれが生じても、上記光入射用レンズ面を受光領域内に位置させることができ、上記光出射用レンズ面からの出射光を、上記光入射用レンズ部に適正に入射させることができる。
【0017】
さらに、上記光出射用レンズ部が、上記光入射用レンズ部側に向かうにつれて徐々に拡幅して略扇形状をなし、その略扇形状における先端面が、光出射用レンズ面に形成されている場合には、上記光出射用レンズ部の特徴的な形状に由来する作用により、上記光出射用レンズ面から出射される光を、平行光ないし平行に近い光とすることができ、上記光結合損失をより一層小さくすることができる。
【0018】
また、上記光入射用レンズ部が、上記光出射用レンズ部側に向かうにつれて徐々に拡幅して略扇形状をなし、その略扇形状における先端面が、光入射用レンズ面に形成されている場合には、上記光入射用レンズ部の特徴的な形状に由来する作用により、上記光入射用レンズ面から入射した光を、効率よくコアの光伝搬方向に導くことができ、光伝搬効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のタッチパネル用光導波路の一実施の形態を模式的に示す平面図である。
【図2】図1のX−X断面の要部を模式的に示す断面図である。
【図3】コア先端部のレンズ部を模式的に示す平面図である。
【図4】(a),(b)は、出射用光導波路と入射用光導波路との結合部分を模式的に示す平面図である。
【図5】上記タッチパネル用光導波路に光学素子を接続した状態を模式的に示す平面図である。
【図6】従来のタッチパネル用光導波路を模式的に示す平面図である。
【図7】従来の他のタッチパネル用光導波路を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0021】
図1は、本発明のタッチパネル用光導波路の一実施の形態を示している。この実施の形態のタッチパネル用光導波路は、その平面図を図1に示すように、平面視四角形の枠状に形成されている。そして、その四角形の枠状を構成する一方のL字状部分の各辺では、短冊状に形成された光導波路A1,B1が長手方向に複数(図1では2個)連結され、発光用の光導波路が形成されており、他方のL字状部分の各辺では、短冊状に形成された光導波路A2,B2が長手方向に複数(図1では2個)連結され、受光用の光導波路が形成されている。連結し合う光導波路A1,A2,B1,B2の端部は、この実施の形態では、それぞれ凹凸形状に形成され、その凹と凸とを噛合させて突き合わされ、それによって両光導波路A1,A2,B1,B2が、光伝搬可能に直線状に結合されている(結合部分C1〜C4)。図1の矢印Dは、結合された光導波路A1,A2,B1,B2内における光の伝搬方向を示している。すなわち、結合し合う光導波路A1,A2,B1,B2の一方が出射用光導波路A1,A2、他方が入射用光導波路B1,B2となっている。そして、結合部分C1〜C4に位置する、上記出射用光導波路A1,A2のコア2の端部と上記入射用光導波路B1,B2のコア2の端部とは、例えば図1のX−X断面図(図2)に示すように、突き合わされており、その突き合わせ部の拡大平面図(図3)に示すように、上記出射用光導波路A1,A2のコア2の端部は、光出射用レンズ部2Aに形成されていて、その端面が光出射用レンズ面2aに形成されている。また、上記入射用光導波路B1,B2のコア2の端部も、上記光出射用レンズ部2Aに対応する光入射用レンズ部2Bに形成されていて、その端面が上記光出射用レンズ面2aからの出射光を入射する光入射用レンズ面2b(図2,図3参照)に形成されている。
【0022】
また、この実施の形態では、上記四角枠状の一対の角部E1,E2においては、一方の光導波路A1,B2の端部と他方の光導波路A1,B2の端部側面とが光伝搬可能に直角状に結合されている(結合部分C5,C6)。これら角部E1,E2の結合部分C5,C6でも、上記直線部の結合部分C1〜C4と同様に、コア2の端部は突き合わされている。すなわち、その突き合わせ部の一方は、光出射用レンズ部2A(図2,図3参照)に形成されていて、その端面が光出射用レンズ面2aに形成されており、他方は、上記光出射用レンズ部2Aに対応する光入射用レンズ部2B(図2,図3参照)に形成されていて、その端面が上記光出射用レンズ面2aからの出射光を入射する光入射用レンズ面2bに形成されている。
【0023】
上記のように結合され枠状に形成された状態では、光路であるコア2は、上記枠状の対向する一対の角部E1,E2の外縁F1,F2から、その枠状の内周縁部に、等間隔に並列状態で延びたパターンに形成されている。なお、図1では、コア2を鎖線で示しており、長手方向に延びる鎖線が複数のコア2の束の太さを示し、そこから内側に分岐した鎖線の太さが1本のコア2の太さを示している。また、この図1では、コア2の数を略して図示している。
【0024】
このように、付き合わさるコア2の端部がレンズ部2A,2Bに形成されているため、付き合わさるコア2の間での光結合損失を小さくし、適正な光の伝搬が可能となる。このため、光導波路A1,A2,B1,B2の端部同士を突き合わせて結合することにより、適正にタッチパネル用光導波路の大形化を実現することができる。
【0025】
より詳しく説明すると、上記各光導波路A1,A2,B1,B2は、その縦断面図(図1のX−X断面図)を図2に示すように、短冊状に形成されたアンダークラッド層1と、このアンダークラッド層1の表面に所定パターンに形成された複数のコア2と、これらコア2を被覆した状態で上記アンダークラッド層1の表面に形成されたオーバークラッド層3とを備えている。上記アンダークラッド層1の端面1aおよびオーバークラッド層3の端面3aは、上記光出射用レンズ面2aの先端面,光入射用レンズ面2bの先端面と面一の状態ないし上記レンズ面2a,2bの先端面を被覆した状態(図2では、レンズ面2a,2bの先端面を被覆した状態)に形成されており、出射用光導波路A1,A2のクラッド層1,3の端面1a,3aと入射用光導波路B1,B2のクラッド層1,3の端面1a,3aとが付き合わさることにより、上記のように出射用光導波路A1,A2と入射用光導波路B1,B2とが光伝搬可能に結合されている。なお、図2において、符号4は、上記出射用光導波路A1,A2および入射用光導波路B1,B2を支持する基板である。また、図2では、上記出射用光導波路A1,A2と入射用光導波路B1,B2との付き合わせ部分に、僅かな隙間がある状態を図示している。
【0026】
上記突き合わせ状態では、上記クラッド層1,3の形成や突き合わせ作業等の影響等により、上記光出射用レンズ面2aの先端と光入射用レンズ面2bの先端との間の距離が、通常、約100μm以上となる。このような場合でも、上記レンズ部2A,2Bの集光作用により、付き合わさるコア2の間での光結合損失を小さくすることができる。
【0027】
上記光出射用レンズ部2Aとしては、平面視円弧状,楕円弧状等の凸レンズ面を有する凸レンズがあげられる。なかでも、平行光ないし平行に近い光を出射することができ、上記光入射用レンズ部2Bとの光結合損失を小さくすることができる観点から、その平面図を図3に示すように、上記光入射用レンズ部2B側に向かうにつれて、コア2の幅から徐々に拡幅して略扇形状をなし、その略扇形状における先端面が、光出射用レンズ面2aに形成されているものが好ましい。上記略扇形状の光出射用レンズ部2Aの寸法は、通常、長さLが0.2〜5.0mmの範囲内に設定され、略扇形状の中心角度θが2〜20°の範囲内に設定され、光出射用レンズ面2aの曲率半径Rが10〜200μmの範囲内に設定される。
【0028】
上記光入射用レンズ部2Bとしても、上記光出射用レンズ部2Aと同様の凸レンズがあげられる。なかでも、光入射用レンズ面2bから入射した光を、効率よくコア2の光伝搬方向に導くことができ、光伝搬効率を向上させることができる観点から、上記光出射用レンズ部2Aと同様、図3に示す形状のもの、すなわち、上記光出射用レンズ部2A側に向かうにつれて、コア2の幅から徐々に拡幅して略扇形状をなし、その略扇形状における先端面が、光入射用レンズ面2bに形成されているものが好ましい。上記略扇形状の光入射用レンズ部2Bの寸法は、通常、長さLが0.2〜5.0mmの範囲内に設定され、略扇形状の中心角度θが2〜20°の範囲内に設定され、光入射用レンズ面2bの曲率半径Rが10〜200μmの範囲内に設定される。
【0029】
そして、上記光入射用レンズ面2bは、上記光出射用レンズ面2aよりも大きく設定することが好ましい。例えば、上記光入射用レンズ面2bの幅を、上記光出射用レンズ面2aの幅以上に設定した場合、上記光導波路A1,A2,B1,B2の結合において、幅方向に大きなずれが生じても、上記光入射用レンズ面2bを受光領域内に位置させることができる。また、上記光入射用レンズ面2bの高さを、上記光出射用レンズ面2aの高さ以上に設定した場合、上記光導波路A1,A2,B1,B2の結合において、高さ方向に大きなずれが生じても、上記光入射用レンズ面2bを受光領域内に位置させることができる。いずれの場合も、上記光出射用レンズ面2aからの出射光を、上記光入射用レンズ部2Bに適正に入射させることができる。
【0030】
さらに、この実施の形態では、上記出射用光導波路A1,A2と入射用光導波路B1,B2とが直線状に結合する結合部分(例えば図1に示す結合部分C3)の平面図を図4(a)に示すように、突き合わせ面(クラッド層1,3の端面1a,3a)7に段部(凹凸形状部)7aを形成している。この段部7aを利用して、入射用光導波路〔図4(a)の右側の光導波路〕B2では、上記突き合わせ面7の段部7aの奥方までコア2を形成することができ、その入射用光導波路B2の端部において、コア2が形成されない領域をなくすことができる。これにより、ディスプレイの画面上において、光が走らない領域をなくすことができ、細いものの検知や広い範囲の検知等が可能になっている。すなわち、出射用光導波路〔図4(a)の左側の光導波路〕A2では、上記突き合わせ面7の近傍において、長手方向に延びるコア2を幅方向に曲げて形成することができず、そのようにコア2を曲げて形成するには、上記突き合わせ面7からある程度の距離Gを要する。このような状況で、図4(b)に示すように、突き合わせ面8を平面視直線状(段部なし)に形成すると、コア2が形成されない領域Hが形成される。このため、ディスプレイの画面上において、光が走らない領域が形成され、細いものの検知や広い範囲の検知等には対応できないおそれがあるが、太いものの検知や限られた範囲の検知には対応可能である。このことは、上記結合部分C3以外の、出射用光導波路A1,A2と入射用光導波路B1,B2とが直線状に結合する結合部分C1,C2,C4においても同様である。
【0031】
上記タッチパネル用光導波路の製造は、一般的な露光装置が有する露光範囲内で無理なく作製された通常の長さの上記出射用光導波路A1,A2および入射用光導波路B1,B2を、それぞれの端部同士を突き合わせて光伝搬可能に結合した状態で、枠状の基板4上に接着することより行われる。
【0032】
そして、上記四角形の枠状のタッチパネル用光導波路をタッチパネルに用いる際には、図5に示すように、上記枠状の一対の角部E1,E2のうち、一方の角部E1の外縁〔上記複数のコア2(図1参照)が延びている根元部分〕F1に、発光素子5を1個接続し、他方の角部E2の外縁〔上記複数のコア2(図1参照)が延びている根元部分〕F2に、受光素子6を1個接続する。これにより、上記枠状の内側空間に、光Sを格子状に走らせることができる。そして、それをタッチパネルの四角形のディスプレイの画面を囲むようにして、その画面周縁部の四角形に沿って設置する。
【0033】
このように、上記枠状を構成する各辺に複数の光導波路A1,A2,B1,B2を用いても、それらが光伝搬可能に結合されているため、要する光学素子は、発光素子5が1個と受光素子6が1個で済み、各光導波路A1,A2,B1,B2に光学素子を要しない。そのため、製造コストを抑えることができる。
【0034】
なお、上記実施の形態では、四角形の枠状を構成する各辺において、光導波路A1,A2,B1,B2を2個ずつ結合させたが、3個以上でもよい。例えば、3個結合する場合、結合部分は2箇所形成されるが、そのうちの1箇所の結合部分で結合する2個の光導波路は、上記のように一方が出射用光導波路A1,A2、他方が入射用光導波路B1,B2となる。そして、上記結合部分の隣の結合部分(残りの結合部分)で結合する2個の光導波路については、上記入射用光導波路B1,B2だったものが、今度は出射用光導波路A1,A2となり、もう一つが入射用光導波路B1,B2となる。すなわち、2箇所の結合部分で挟まれる光導波路では、一方の結合部分側に光入射用レンズ部2Bが形成され、他方の結合部分側に光出射用レンズ部2Aが形成される。4個以上結合する場合も、上記と同様である。
【0035】
また、上記のように通常の長さの光導波路A1,A2,B1,B2を結合してなる上記実施の形態のタッチパネル用光導波路では、例えば、その一部の光導波路A1,A2,B1,B2に欠陥が発生した場合、その欠陥を有する光導波路A1,A2,B1,B2だけを交換すればよく、全体を廃棄する必要がないため、光導波路A1,A2,B1,B2の形成材料のむだを減らすことができる。これに対し、一度に長い光導波路を作製すると、それに欠陥が発生した場合、その長い光導波路全体を廃棄することになるため、光導波路の形成材料のむだが多くなる。
【0036】
しかも、一度に長い光導波路を作製した場合、その作製において、熱等による寸法収縮量が大きくなり、寸法精度が不安定になるが、上記実施の形態のタッチパネル用光導波路の場合、上記のように通常の長さの光導波路A1,A2,B1,B2を結合して長くしているため、個々の光導波路A1,A2,B1,B2での寸法収縮量を少なくすることができ、上記のように複数の光導波路A1,A2,B1,B2を結合しても全体の寸法精度は安定する。
【0037】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例】
【0038】
Optical Research Associates 社製の光学シミュレーションソフト「Light Tools 」を用い、光線追跡シミュレーションを行った。
【0039】
〔光出射用レンズ部のシミュレーションモデル〕
光出射用レンズ部として、コアの幅(15μm)から徐々に拡幅して略扇形状(中心角度4°)をなし、その略扇形状における先端が光出射用凸レンズ面(曲率半径24μm)に形成されたものを設定した。光出射用レンズ部の長さは、0.40mmとし、高さは、コアの高さと同じ50μmとした。
【0040】
〔光入射用レンズ部のシミュレーションモデル〕
光入射用レンズ部として、コアの幅(15μm)から徐々に拡幅して略扇形状(中心角度2°)をなし、その略扇形状における先端が光入射用凸レンズ面(曲率半径100μm)に形成されたものを設定した。光入射用凸レンズ面の長さは、1.75mmとし、高さは、コアの高さと同じ50μmとした。
【0041】
〔比較例のシミュレーションモデル〕
コアの先端がレンズ部に形成されていないものとした。すなわち、コアは、先端まで、一定幅(15μm)、一定高さ(50μm)とし、先端面を垂直平面とした。
【0042】
〔光結合損失〕
上記実施例および比較例において、シミュレーションモデルの光出射側の先端と光入射側の先端とを突き合わせ、その先端間の距離および光出射側の中心軸と光入射側の中心軸の水平方向のずれの大きさを変えて、光結合損失をシミュレーションした。なお、このシミュレーションにおいて、コアの屈折率を1.57、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の屈折率を1.51、追跡光線本数を10万本、光の波長を850nmに設定した。そして、その結果を下記の表1に示すとともに、光結合損失が6dB未満を○、6dB以上を×と評価した。
【0043】
【表1】

【0044】
上記結果から、実施例では、両レンズの先端間の距離が長くなっても、また、両レンズが水平方向にずれても、比較例と比較して、光結合損失が大きくならず、適正に光を伝搬できることがわかる。
【0045】
さらに、上記実施例において、レンズ部の形状,寸法等を変え、例えば、上記略扇形状ではなく一定幅に設定したもの等でも、上記と同様の結果が得られた。なかでも、光入射用凸レンズ面が光出射用凸レンズ面以上の大きさのものが好適な結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のタッチパネル用光導波路は、タッチパネルにおける指等の触れ位置の検知手段(位置センサ)等に用いられる光導波路に利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
A1,A2 出射用光導波路
B1,B2 入射用光導波路
2 コア
2A 光出射用レンズ部
2B 光入射用レンズ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルのディスプレイの画面周縁部に沿って設置され、上記画面の一端縁に沿って、出射用光導波路と入射用光導波路とが交互に配設され、上記出射用光導波路の端部の端面と入射用光導波路の端部の端面とが突き合わされて両光導波路が結合され、上記出射用光導波路のコアの端部が、光出射用レンズ部に形成されていて、その端面が光出射用レンズ面に形成され、入射用光導波路のコアの端部が、上記光出射用レンズ部に対応する光入射用レンズ部に形成されていて、その端面が上記光出射用レンズ面からの出射光を入射する光入射用レンズ面に形成されていることを特徴とするタッチパネル用光導波路。
【請求項2】
上記光入射用レンズ面および上記光出射用レンズ面が、凸レンズ面である請求項1記載のタッチパネル用光導波路。
【請求項3】
上記光入射用レンズ面が、上記光出射用レンズ面よりも大きく設定されている請求項1または2記載のタッチパネル用光導波路。
【請求項4】
上記光出射用レンズ部が、上記光入射用レンズ部側に向かうにつれて徐々に拡幅して略扇形状をなし、その略扇形状における先端面が、光出射用レンズ面に形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のタッチパネル用光導波路。
【請求項5】
上記光入射用レンズ部が、上記光出射用レンズ部側に向かうにつれて徐々に拡幅して略扇形状をなし、その略扇形状における先端面が、光入射用レンズ面に形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のタッチパネル用光導波路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−93419(P2012−93419A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238478(P2010−238478)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】