説明

タッチパネル装置

【目的】
ノイズが大きいときはAC電圧振動レベルを大きくし、ノイズが少ないときにはAC電圧振動レベルを小さくし、特定周波数ノイズの場合は別の電圧振動周波数に切り替えることにより安全性を確保し、S/N比が良くなり耐ノイズ性に優れ、且つ電気的に安全なタッチパネル装置を目的とする。
【構成】
センサーパネルに均一な面抵抗体を配設し、前記面抵抗体の各点または前記面抵抗に接続された媒体の各点を特定周波数で電圧振動するAC電圧駆動部と、前記AC電圧駆動部と同じ周波数を通過させるバンドパスフィルターと、AC電流からAC電圧に変換する電流−電圧変換部からなり、前記比例したAC電圧の振幅より指または導体物が前記面抵抗体にタッチした位置を検出する装置であって、前記AC電圧振動する電圧のレベルを少なくとも2段階以上切り替え制御できる手段と前記AC電圧振動する周波数を少なくとも2段階以上切り替え制御できる手段を備えたことを特徴とするタッチパネル装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指のパネルへのタッチ状態を検出するタッチパネル装置に関し、特に指または導体物が、直接、電気的にパネルのタッチ有効エリアにあるセンサーパネルの導電面に接触する直接触式及び指または導体物とセンサーパネルの間に微少電流を流して位置検出をするタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指とセンサーパネルの抵抗膜との間が表面絶縁層になっている静電容量結合方式、及び直接触方式のタッチパネルでは、面抵抗体全体をAC電圧振動させて、指または導体物が近接または接触した点が人体の接地効果によりAC電流経路を形成し位置を検出するものがある。
【特許文献1】特開2000−132319号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の技術は、例えばCRT表示装置や、パーソナルコンピュータの直前にいる操作者の人体に受ける電圧ノイズが誘起される。特に商用電源からの50KHz〜60Hzの成分は大きく、指とセンサーパネルの間に微少電流を流して位置検出信号のS/N比が悪化して操作者が指示したタッチ位置が検出されないという不具合が発生していた。S/N比改善のためにはAC電圧振動レベルを大きくすれば良いが、人体に流れる電流も同時に大きくなり操作者に対する安全性で問題になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
センサーパネルに均一な面抵抗体を配設し、前記面抵抗体の各点または前記面抵抗に接続された媒体の各点を特定周波数で電圧振動するAC電圧駆動部と、前記AC電圧駆動部と同じ周波数を通過させるバンドパスフィルターと、AC電流からAC電圧に変換する電流−電圧変換部からなり、前記比例したAC電圧の振幅より指または導体物が前記面抵抗体にタッチした位置を検出する装置であって、前記AC電圧振動する電圧のレベルを少なくとも2段階以上切り替え制御できる手段と前記AC電圧振動する周波数を少なくとも2段階以上切り替え制御できる手段を備えたことを特徴とするタッチパネル装置を提案するものである。
【発明の効果】
【0005】
ノイズが大きいときはAC電圧振動レベルを大きくし、ノイズが少ないときにはAC電圧振動レベルを小さくし、特定周波数ノイズの場合は別の電圧振動周波数に切り替えることにより安全性を確保し、S/N比が良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下本発明の詳細は添付図を参照して説明する。図1は、指1がセンサーパネル2の面上における接触位置(X,Y座標)を検出する直接触式タッチパネル装置の説明図である。センサーパネル2は、均一な面抵抗体4(指1が直接接触する表面)の周辺に低抵抗の周囲電極(図示せず)を密着配設してある。その4隅(A,B,C,D点)に各1本の引き出し線(シールド電線)10が接続されている。
【実施例1】
【0007】
AC信号源として振動電圧発生部5内のAC振動レベル切り替え器及びAC振動周波数切り替え器よりAC振動駆動部6内の各振動電圧印可回路に、特定された電圧レベル及び周波数で振動電圧を与える。振動電圧印可回路はタッチパネル入力部である面抵抗体4を低インピーダンスで振動させ、且つアナログマルチプレクサ(図示せず)に面抵抗体4からの電流を出力する。その簡単な例は、トランジスタのベースをAC信号で振動させ、エミッタをセンサーパネルと接続し、コレクタから電流出力するものがある。
尚、センサーパネルとは面抵抗体4を含むタッチ入力部全体を指す。
【0008】
また人体は、AC信号に対して接地効果8,9を持っており、指1が面抵抗体4に接触または近接したときに、その接触点により近い接続点(A,B,C,D点)に指先1を通して面抵抗体4にAC信号が、より多く流れる。従って、4つの各端子に流れるAC信号電流値の比率から、センサーパネル2の面抵抗体4上の指1の接触点(X,Y座標)を算出する。
【0009】
4つの各端子に流れるAC信号電流値の比率から、センサーパネル2上の指1の接触点(X,Y座標)を算出する計算式は
X = (iB+iC−iA−iD)/(iA+iB+iC+iD)
Y = (iC+iD−iA−iB)/(iA+iB+iC+iD)
で正規化される。ここでiA、iB、iC、iDは、前記4頂点すなわち前記センサーパネルの左上から時計廻り方向の各頂点に流れる電流値である。
【0010】
実際には、指1とセンサーパネル2間には接触抵抗が存在し、上記接触抵抗は指1の場合、その接触面積に略比例し4端子に流れるAC信号電流は上記接触面積に略比例することになるが上記座標計算式では、センサーパネル2に流れるAC信号電流の大きさに影響されずに接触点を算出できる。
【0011】
本装置のセンサーパネル部が本装置を使用するシステムの金属筐体(図示せず)に取り付けられる場合、人体が右手でセンサーパネル部にタッチ操作をし、左手で金属筐体に接触しているとき、人体と金属筐体は抵抗性のインピーダンス関係にあり、その抵抗値は1KΩ程度で小さな値となる。
また人体が金属筐体から離れている場合は他の接地効果要因が主役となり、人体と金属筐体間は容量性のインピーダンス関係になり、その抵抗値は1KΩ〜十数KΩと条件により大きくかわる。
座標検出用のAC信号の電流ループは次の通りである。AC振動発生部5,AC信号駆動部6,引き出し線10,均一な面抵抗体4,指1,人体の等価抵抗8,人体の接地効果インピーダンス9,接地3である。
【0012】
ここで、上述したように操作者が金属筐体に接触した状態でタッチ操作をした場合、人体と金属筐体間のインピーダンスは1KΩ程度となり、センサーパネル2より検出されるAC信号電流は金属筐体に接触しない場合と比較して、同じAC振動電圧レベルでは大きく流れる。このとき人体に誘起されるノイズ電流はインピーダンスが低くなるために逆に小さくなる。このことよりAC振動電圧レベルを小さくしても、座標検出に十分な信号が得られることになる。
【0013】
また、操作者が金属筐体から離れた状態でタッチ操作をした場合、人体と金属筐体間のインピーダンスは1KΩ〜十数KΩとなり、センサーパネルより検出されるAC信号電流は金属筐体に接触する場合と比較して小さい。この時はAC振動電圧レベルを大きくし、座標検出に十分な信号が得られるようにする。
【0014】
人体には広い周波数帯域のノイズが誘起している。このようなノイズの混入に対してはAC振動電圧レベルを段階毎に大きくしてS/N比を良くすることができる。
従って、操作者が金属筐体に接触する、しないに関わらず、また他の条件で接地インピーダンスが変化した場合でも、AC振動電圧レベルを切り替えることで、必要十分な検出電流が得られ、人体に流れるAC電流を最小限に抑えることができる。
さらに本装置ではAC振動周波数のみを通すバンドパスフィルター7を備えておりAC振動周波数のみ検出することができ、S/N比向上に効果がある。
【0015】
しかしながらCRT表示装置やパーソナルコンピュータの前に操作者がいる場合や、他の装置から人体に誘起するノイズにはAC振動周波数と同じ周波数が、とくに大きいノイズであるという場合も少なくない。この場合、前述したAC振動周波数のみを通すバンドパスフィルター7ではノイズを取り除くことはできない。またAC振動電圧レベルを大きくしても、ある程度の効果はあるが完全ではない。
【0016】
AC振動周波数と同じ周波数がとくに大きいノイズである場合には、AC振動発生部5内にあるAC電圧振動周波数切り替え器により周波数を変えることで、大きな効果を得ることができる。バンドパスフィルター7は切り替え周波数毎に用意するか、あるいは1つのバンドパスフィルターで通過する周波数内で切り替えるようにすれば良い。
【0017】
ここで、AC振動電圧レベル切り替え手段とAC電圧振動周波数切り替え手段の代表例を図3に示す。11はROM、RAM、入出力ポート、A/D変換器、タイマ出力等の周辺機能を集積したシングルチップマイクロコンピュータ(マイコン)である。タイマ出力機能には所望の方形波出力ができる。13a,bはON/OFF制御ができるアナログスイッチである、14a,bは値が異なる抵抗である。15、16、18はコンデンサ、17はインダクタンスで15,16のコンデンサと17のインダクタンスで並列共振回路になっている。19は後段へ接続される、AC振動駆動部やセンサーパネル等の一定した負荷抵抗(回路負荷)である。
【0018】
シングルチップマイクロコンピュータ11から出力された所望の方形波は、アナログスイッチ13a,bと抵抗13a,bを介して並列共振回路において共振周波数である正弦波に変換されコンデンサ18を介して19の回路負荷につながる。
AC振動電圧レベル切り替える場合はアナログスイッチ13a,bのいずれかをマイコン11に接続されている制御線12a,bで制御して、抵抗14a,bにおいて電圧レベルを切り替えることができる。
【0019】
AC電圧振動周波数切り替える場合は、マイコン11の拡張機能であるタイマ出力機能で方形波の周波数を切り替えることができる。共振回路は共振周波数の正弦波に変換するが、例えばAC電圧振動周波数が460KHz±15KHz程度の方形波周波数は問題なく正弦に変換できる。尚、図3では共振回路を1としたが周波数を大きく切り替える(例えば460KHz±100KHz)場合は共振回路を2つ用意してもかまわない。
【0020】
次に時系列的な処理手順を図2のフローチャートに従い説明する。S1においてタッチ操作前の無検出状態での信号でノイズのチェックを行う。この時ノイズの混入を判定し易くするためにAC振動電圧レベルは大きくしておく。S2は無検出状態でのノイズ判定でノイズが大きい場合にS3のようにAC振動電圧周波数を切り替えてS1に戻る。S4ではタッチ信号検出前に指1を介して人体に流れるセンサーパネルからの電流を少なくするため、AC振動電圧を最小にする。S5ではタッチ時の信号検出を行い、S6ではS5で得られた検出信号と設定値との比較を行い、設定値より大きい場合はAC振動電圧レベルを1段階小さくする(S7)、検出信号が設定値より小さい場合はAC振動電圧レベルを1段階大きくする(S8)。次にS10ではS5で得られた検出信号に含まれているノイズの判定を行い、ノイズが大きいと周波数を切り替えてS3に戻る(S10)。S11では検出された信号より座標算出を行い外部装置に出力してS5に戻る。
ノイズの判定方法としては、センサーパネルからの信号を複数回検出し、信号のばらつき幅が設定値より大きいとノイズが大きいと判定できる。
【0021】
以上の説明通り、ノイズが大きいときはAC電圧振動レベルを大きくし、ノイズが少ないときにはAC電圧振動レベルを小さくし、特定周波数ノイズの場合は別の電圧振動周波数に切り替えることにより安全性を確保し、S/N比が良くなり耐ノイズ性に優れ、且つ電気的に安全なタッチパネル装置を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】タッチパネル装置のブロック図
【図2】処理過程を示したフローチャート
【図3】共振回路の回路図
【符号の説明】
【0023】
1 指
2 センサーパネル
3 接地
4 センサーパネル内の均一な面抵抗体
5 AC電圧振動発生部
6 AC電圧駆動部
7 バンドパスフィルター
8 人体の等価抵抗
9 人体の接地効果インピーダンス
10 引き出し線
11 シングルチップマイクロコンピュータ
12a,b 制御線
13a,b アナログスイッチ
14a,b 抵抗
15 コンデンサ
16 コンデンサ
17 インダクタンス
18 コンデンサ
19 負荷抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサーパネルに均一な面抵抗体を配設し、前記面抵抗体の各点または前記面抵抗に接続された媒体の各点を特定周波数で電圧振動するAC電圧駆動部と、前記AC電圧駆動部と同じ周波数を通過させるバンドパスフィルターと、AC電流からAC電圧に変換する電流−電圧変換部からなり、前記比例したAC電圧の振幅より指または導体物が前記面抵抗体にタッチした位置を検出する装置であって、前記AC電圧振動する電圧のレベルを切り替え制御可能な手段と、前記AC電圧振動する周波数を切り替え制御可能な手段を備えたことを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記、AC電圧振動する電圧のレベルと、前記AC電圧振動する周波数は少なくとも2段階以上の切り替え制御する手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のタッチパネル装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−106853(P2006−106853A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288834(P2004−288834)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】