説明

タッチパネル装置

【課題】バースト波によってもたらされる接触幅の増加分を補正することにより、物体の接触位置の検出精度を向上できるタッチパネル装置を提供する。
【解決手段】受信部4にて受信された実測のタイムドメイン波形と、スライスデータメモリ56に記憶されている基準のスライスタイムドメイン波形とを、比較部59にて比較し、その比較結果から得られる検出結果を、一旦RAM53に格納する。RAM53に格納されている検出データを、補正部60にて、弾性表面波の発生回数、パネルの電極構成及び弾性表面波の速度で決定される最小の接触幅で補正する。対角部における物体の接触幅は、RAM53に記憶されている過去の接触幅の履歴の平均値として取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指,ペンなどの物体が接触したことを検出するタッチパネル装置に関し、特に、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)の減衰,遮断を検知してその接触位置を検出するタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
主としてパーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムの普及に伴って、コンピュータシステムにより情報が表示される表示装置の表示画面上を指またはペンにより指示することにより、新たな情報を入力したり、コンピュータシステムに対して種々の指示を与えたりする装置が利用されている。パーソナルコンピュータ等の表示装置の表示画面に表示された情報に対してタッチ方式にて入力操作を行う場合には、その表示画面上での接触位置(指示位置)を高精度に検出する必要がある。
【0003】
指、ペンなどの物体の接触位置を検出するタッチパネル装置としては、抵抗膜を用いた装置と超音波を用いた装置とが良く知られている。前者の抵抗膜を用いた装置では、抵抗膜に物体が接触することによって生じるその抵抗膜の抵抗値の変化を検知する。これは、消費電力が少なくて良いが、応答時間,検出性能,耐久性の点で問題がある。
【0004】
これに対して、超音波を用いた装置では、例えば非圧電基板に弾性表面波を伝播させ、その非圧電基板に指,ペンなどの物体が接触することによって生じる弾性表面波の減衰を検知して、物体による接触位置を検出する。弾性表面波を励振,受信するトランスデューサとして、フォトリソグラフィ技術を用いて一括形成が可能な櫛形電極(IDT:Inter Digital Transducer)を用いるタッチパネル装置が開発されている。このタッチパネル装置では、弾性表面波を励振する励振素子及び伝播された弾性表面波を受信する受信素子として、薄膜状の圧電体に櫛形電極を形成して構成される素子を使用している。このようなタッチパネル装置にあっては、バースト波を印加してトランスデューサに弾性表面波を発生させ、発生した弾性表面波を非圧電基板に伝播させ、伝播させた弾性表面波を受信し、その受信結果に基づいて物体の接触位置を求める構成が一般的である。このようなタッチパネル装置には、種々のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図18は、IDTを用いるこのようなタッチパネル装置の構成を示す図である。図18において、61は矩形状の非圧電基板であり、非圧電基板61のX方向,Y方向夫々の一端部には、入力IDT及び圧電薄膜で構成されており、弾性表面波を励振する複数の励振素子62が、夫々を複数のトラック夫々に対応させて、一列状に配列して形成されている。また、非圧電基板61のX方向,Y方向夫々の他端部には、励振素子62に対向させた態様で、出力IDT及び圧電薄膜で構成されており、弾性表面波を受信する複数の受信素子63が一列状に配列して形成されている。
【0006】
このタッチパネル装置では、各励振素子62にバースト波を印加して弾性表面波を励振させて、非圧電基板61を伝播させ、伝播した弾性表面波を受信素子63で受信させる。そして、非圧電基板61上の弾性表面波の伝播路に物体が接触した場合には、弾性表面波は減衰する。よって、受信素子63の受信信号のレベル減衰の有無を検知することによって、物体の接触の有無及びその接触位置を検出することが可能である。
【0007】
また、本発明者等は、基板の斜め方向(対角方向)に弾性表面波を伝播させるように励振素子,受信素子を配置するようにしたタッチパネル装置を提案している。図19は、このようなタッチパネル装置の電極構造例を示す図である。図19において、70は例えばガラス材からなる矩形状の非圧電基板であり、中央の破線で囲まれた部分が、接触位置を検出できる検出領域70aである。
【0008】
非圧電基板70の周縁部である検出領域70aの外側の額縁領域には、4個のIDT71が配置されている。各IDT71は、対向するバス電極72,72から櫛形電極指73を途中で屈曲させて交互に連ねた構成をなしている。この構成によって、バス電極72,72の対向方向から2方向に傾けた櫛形電極指73の配列を形成し、2方向への弾性表面波の励振及び2方向からの弾性表面波の受信を実現している。この例では、上辺側及び下辺側のIDT71が異なる2方向へ同時に弾性表面波を励振する励振素子として機能し、左辺側及び右辺側のIDT71が異なる2方向から弾性表面波を受信する受信素子として機能する。
【特許文献1】特開平7−319613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
弾性表面波を対角方向に伝播させるようにしたタッチパネル装置においては、弾性表面波が伝播する距離が一定でない。弾性表面波は、その伝播に伴って減衰するため、励振素子,受信素子間の伝播距離が短い領域では、受信素子にて高いレベルの受信信号を得られるが、励振素子,受信素子間の伝播距離が長い領域(基板の対角線近傍領域)では、弾性表面波が大きく減衰し、受信素子にて高いレベルの受信信号を得られない。また、図20に示すように、対角部にあってはバス電極82に連なる櫛形電極指83の長さが他の部分に比べて短いので、対角線近傍領域でのS/Nが低下し、物体の接触の有無及びその接触位置の高い検出精度が得られないという問題がある。
【0010】
このような問題を解決するために、図21に示すようにパネル(非圧電基板80)の外側に延在させて櫛形電極指83を設けることが考えられる。しかしながら、この手法では、パネル(非圧電基板80)の外縁部に櫛形電極指83を増やすため、電極幅が増大してパネル(非圧電基板80)の検出領域80aを減少させるという問題が生じる。例えば、図21において、電極幅Δd=0.7mmとし、ハッチングを付した範囲を一辺Δdの正方形と仮定した場合、延設する距離ΔwはΔw=0.5mmになる。即ち、対角部の電極幅0.7mmのS/Nを確保するために電極幅の増加が0.5mmも必要となる。
【0011】
図22は、バースト波(弾性表面波)と物体の接触位置検出との関係を示す図であり、励振素子で励振されたバースト波が伝播路上の物体Mに遮られて、一旦受信強度が減少し、物体Mを通過した後、再び受信強度が増加する様子を表している。この場合のタイムドメイン波形(受信強度の経時変化)を図23に示す。
【0012】
タイムドメイン波形は、(1)〜(3)の順に変化する。この時間(1)は、バースト波の先頭が最初に櫛形電極指83に到達する時点(図22でバースト波が位置A)から、バースト波の先頭が全て櫛形電極指83に到達する時点(図22でバースト波が位置B)までの時間である。時間(2)は、バースト波の先頭が櫛形電極指83を通過する時間(図22でバースト波が位置Bから位置Cまでの時間)である。時間(3)は、バースト波の長さ(継続時間)分通過する時間(図34でバースト波が位置Cから位置Dまでの時間)である。なお、図23におけるT1,T2,T3は、それぞれ、図22の位置A(立ち下がり),位置B,位置D(立ち上がり)に対応している。
【0013】
タイムドメイン波形として、物体の接触位置の検出に必要な時間(1)に時間(2),(3)が加えられたものが検出される。よって、図23におけるT1,T3の2点を接触位置として求める手法にて、描画された直線を検出した場合、対角部で階段状の段差が検出されるという問題がある。検出条件(電極構成,弾性表面波の励振条件など)が同じであれば、時間(2)及び(3)の長さは一定であるので、検出結果からその一定値を減算するようにすれば良い。しかしながら、受信感度に応じて弾性表面波の励振条件を変更することは一般的に行われており、このような場合には時間(2)及び(3)の長さも変化するため、適切な処理が必要となる。
【0014】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、対角部での電極構造を工夫することにより、検出領域(有効領域)を減少させることなく、対角部でのS/Nを向上でき、物体の接触位置の検出精度の向上を図れるタッチパネル装置を提供することを目的とする。
【0015】
本願記載のタッチパネルの他の目的は、最小の接触幅を決定して、実際の検出結果をその最小の接触幅と比較することにより、誤った接触を検出することを防止できるタッチパネル装置を提供することにある。
【0016】
本願記載のタッチパネルの更に他の目的は、バースト波によってもたらされる接触幅の増加を補正することにより、バースト波の影響を受けにくいタッチパネル装置を提供することにある。
【0017】
本願記載のタッチパネルの更に他の目的は、対角部における物体の接触幅の過去の履歴を保存しておき、その保存履歴を使用することにより、対角線を越えた物体の接触位置を検出できるタッチパネル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願記載のタッチパネル装置は、電極基部に櫛形電極指を連ならせた構成を有していて弾性表面波を励振する励振手段、及び、電極基部に櫛形電極指を連ならせた構成を有していて弾性表面波を受信する受信手段の少なくとも一対を、弾性表面波が伝播可能な矩形状の基板の対角方向の周縁部に備えており、前記基板上の対角方向に前記励振手段と前記受信手段との間で弾性表面波を伝播させ、前記受信手段での受信結果に基づいて、前記基板に接触された物体の位置を検出するタッチパネル装置において、前記受信手段における対角部の櫛形電極指が、前記基板の対角線を越えて、前記受信手段の電極基部と前記基板の対角線との交点から前記励振手段の電極基部の延設方向に平行に引いた線から出ないように設けられていることを特徴とする。
【0019】
本願記載のタッチパネル装置にあっては、基板の対角線を越えてはいるが、受信素子のバス電極と基板の対角線との交点から励振素子のバス電極に平行に引いた線からはみ出ないように、対角部における受信素子の櫛形電極指を設けている。よって、電極幅を増加させることなく、立ち下がりを検出するために必要な対角部でのS/Nを確保する。
【0020】
本願記載のタッチパネル装置は、弾性表面波が伝播可能な矩形状の基板の対角方向の周縁部に対をなして、弾性表面波を励振する励振手段と弾性表面波を受信する受信手段とを備えており、前記基板上の対角方向に前記励振手段と前記受信手段との間で弾性表面波を伝播させ、前記受信手段での時系列の受信結果に基づいて、前記基板に接触された物体の位置を検出するタッチパネル装置において、前記受信手段での時系列の受信結果と予め取得しておいた比較用の時系列の受信結果とを比較する比較手段と、該比較手段での比較結果に基づいて前記物体の位置を検出する検出手段と、該検出手段の検出結果を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶されている検出結果を補正する補正手段とを備えることを特徴とする。
【0021】
本願記載のタッチパネル装置にあっては、一旦得られた検出結果を補正する。具体的には、受信素子での時系列の受信結果と予め取得しておいた比較用の時系列の受信結果とを比較することによって検出された接触幅に対して、バースト波の影響に伴う増加分を補正する。よって、バースト波の影響を受けない検出結果が得られる。
【0022】
本願記載のタッチパネル装置は、前記補正手段は、前記励振手段における弾性表面波の励振回数、前記励振手段及び受信手段の電極構成、並びに、前記基板上での弾性表面波の伝播速度に基づいて、検出される最小の接触幅を決定する手段と、前記検出結果が前記最小の接触幅より小さい場合に前記検出結果をノイズと判断する手段とを有することを特徴とする。
【0023】
本願記載のタッチパネル装置にあっては、検出されるべき最小の接触幅を決定し、実際に得られた検出結果がこの最小の接触幅より小さい場合には、その検出結果をノイズと判断して除去する。よって、誤った接触を検出することがなくなり、検出精度は向上する。
【0024】
本願記載のタッチパネル装置は、弾性表面波が伝播可能な矩形状の基板の対角方向の周縁部に対をなして、弾性表面波を励振する励振手段と弾性表面波を受信する受信手段とを備えており、前記基板上の対角方向に前記励振手段と前記受信手段との間で弾性表面波を伝播させ、前記受信手段での時系列の受信結果に基づいて、前記基板に接触された物体の位置を検出するタッチパネル装置において、前記受信手段での時系列の受信結果と予め取得しておいた第1比較用の時系列の受信結果とを比較する第1比較手段と、前記励振手段における弾性表面波の励振回数、並びに、前記励振手段及び受信手段の電極構成に基づいて決定される受信強度を前記第1比較用の時系列の受信結果から減算した第2比較用の時系列の受信結果と前記受信手段での時系列の受信結果とを比較する第2比較手段とを備えることを特徴とする。
【0025】
本願記載のタッチパネル装置にあっては、受信素子での受信結果と比較されるべきスライスデータを、立ち下がりの前後で変化させる。つまり、立ち下がりを検知した後は、それまで使用していたスライスデータから励振回数及び電極構成に基づいて決定された強度を減らしたスライスデータを用いて、立ち上がりを検知する。よって、バースト波の影響を受けることなく、正確な接触幅を取得する。
【0026】
本願記載のタッチパネル装置は、弾性表面波が伝播可能な矩形状の基板の対角方向の周縁部に対をなして、弾性表面波を励振する励振手段、及び、弾性表面波を受信する受信手段とを備えており、前記基板上の対角方向に前記励振手段と前記受信手段との間で弾性表面波を伝播させ、前記受信手段での受信結果に基づいて、前記基板に接触された物体の位置を検出するタッチパネル装置において、検出した物体の幅の履歴を記憶しておく記憶手段と、検出した物体の位置が前記基板の対角線を越えている否かを判断する手段とを備えることを特徴とする。
【0027】
本願記載のタッチパネル装置にあっては、検出した物体の位置が基板の対角線を越えている場合に、検出して記憶しておいた物体の幅の履歴情報(同じチャンネルにおける履歴または異なるチャンネルにおける履歴)を用いて、物体の接触幅を補間する。よって、対角部での物体の位置の検出精度は高い。例えば、同じチャンネルにおける履歴がある場合には、その履歴と検出したデータとの平均値を接触幅とし、同じチャンネルにおける履歴がない場合には、他のチャンネルにおける履歴と検出したデータとの平均値を接触幅とする。
【0028】
また、本願記載のタッチパネル装置の他の形態では、検出されるべき最小の接触幅を決定し、その最小の接触幅で決められる周波数以下のローパスフィルタを受信側に設ける。このようにすれば、最小の接触幅より小さいような検出結果はノイズとして除去されるため、簡単な構成によって、誤検出を防止する。
【0029】
また、本願記載のタッチパネル装置の更に他の形態では、受信素子で得られる受信データとスライスデータとを比較装置で比較し、受信データ<スライスデータにより立ち下がりを検知し、受信データ>スライスデータにより立ち上がりを検知し、立ち下がり,立ち上がりの間隔から、弾性表面波の発生回数、パネルの電極構成及び弾性表面波の速度で決定される増加分を減算する補正を行って、物体の位置を検出する。よって、バースト波の影響を補正した正確な物体の位置が検出される。
【0030】
また、本願記載のタッチパネル装置の更に他の形態では、受信素子で得られる受信データとスライスデータとを比較装置で比較し、受信データ<スライスデータにより立ち下がりを検知し、スライスデータと受信データとの差が最大となる最大時点を検知し、立ち下がり,最大時点の間隔から、弾性表面波の発生回数、パネルの電極構成及び弾性表面波の速度で決定される増加分を減算する補正を行って、物体の位置を検出する。よって、バースト波の影響を補正した正確な物体の位置が検出される。
【発明の効果】
【0031】
本願記載のタッチパネル装置では、対角部における受信素子の櫛形電極指を、基板の対角線を越えて、受信素子のバス電極と基板の対角線との交点から励振素子のバス電極に平行に引いた線からはみ出ないように設けるようにしたので、電極幅を増加させることなく、つまり検出領域(有効領域)を減少させることなく、対角部でのS/Nを向上でき、物体の接触位置の検出精度の向上を図ることができる。
【0032】
また、本願記載のタッチパネル装置では、一旦検出された接触幅から、バースト波の影響に伴う増加分を減算するようにしたので、バースト波の影響を受けない正しい検出結果(物体の位置)を得ることができる。
【0033】
また、本願記載のタッチパネル装置では、検出されるべき最小の接触幅を決定し、実際に得られた検出結果が、予め決定されている最小の接触幅より小さい場合に、その検出結果をノイズと判断して除去するようにしたので、誤った接触を検出することがなくなり、検出精度を向上することができる。
【0034】
また、本願記載のタッチパネル装置では、受信素子での受信結果と比較されるべきスライスデータを、立ち下がりの前後で変化させるようにしたので、バースト波の影響を受けることなく、正確な接触幅を検出することができる。
【0035】
更に、本願記載のタッチパネル装置では、検出した物体の位置が基板の対角線を越えている場合に、記憶しておいた物体の幅の履歴情報を用いて、物体の接触幅を補間するようにしたので、対角部での物体の位置を精度良く検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0037】
図1は、本発明に係るタッチパネル装置の基本構成を示す図である。本発明のタッチパネル装置は、弾性表面波を励振する励振素子、弾性表面波を伝播する基板、弾性表面波を受信する受信素子などを有するタッチパネル本体1と、タッチパネル本体1における弾性表面波の励振/受信制御、タッチパネル本体1に接触する物体の接触位置,接触幅の算出などを行うタッチパネル駆動装置2とから構成される。
【0038】
タッチパネル駆動装置2は、機能的に、弾性表面波の励振を制御する発振部3と、弾性表面波の受信を制御する受信部4と、物体の接触位置,接触幅の算出、発振部3及び受信部4の動作制御などを行う制御部5とに分割される。発振部3と制御部5、及び、受信部4と制御部5とは、夫々バスを介して接続されている。
【0039】
発振部3は、周波数制御器(PLL)31と発振器(VCO)32と周波数カウンタ33とを有する。周波数カウンタ33には、制御部5からの指示による周波数が設定される。周波数制御器31は、この設定された内容に従って発振器32の駆動周波数を制御する。なお、駆動周波数の連続的な発生回数(バースト波の波数)は、制御部5から指示される。受信部4は、受信信号を増幅するピークホールド機能付きの増幅器41と、時系列の受信信号をサンプリングして制御部5へ出力するA/D変換器42とを有する。
【0040】
制御部5は、MPU51、ROM52、RAM53、演算部54、カウンタ55、スライスデータメモリ56、表示部57、操作部58、比較部59、補正部60等を有している。MPU51は、発振部3、受信部4及び制御部5内の他のハードウェア各部を制御すると共に、ROM52に格納されたコンピュータプログラムに従って、種々のソフトウェア的機能を実行する。
【0041】
ROM52は、タッチパネル装置(制御部5)の動作に必要な種々のソフトウェアのプログラムを予め格納している。RAM53は、ソフトウェアの実行時に発生する一時的なデータを記憶する。また、RAM53は、後述する各チャンネルにおける接触幅の履歴情報を格納する。演算部54は、物体の接触位置,接触幅の算出処理を含む各種の演算処理を行う。カウンタ55は、バースト波の波数を設定する。このカウンタ55における波数は、受信強度に応じて変更可能である。
【0042】
スライスデータメモリ56は、物体検出の基準となる複数種のスライスタイムドメイン波形を記憶している。表示部57は、タッチパネル装置の動作状態を表示したり、検出した物体の接触位置,接触幅を表示する。操作部58は、ユーザの操作入力を受け付ける。比較部59は、実際に受信部4で得られた実測のタイムドメイン波形と、スライスデータメモリ56に記憶されている基準のスライスタイムドメイン波形とを比較する。比較部59での比較によって得られる検出データは、一旦RAMに53に格納される。補正部60は、RAMに53に格納されている検出データを、必要に応じて補正する。
【0043】
図2は、タッチパネル本体1の構成を示す図である。図2において、11は例えばガラス材からなり、弾性表面波の伝播が可能な矩形状の非圧電基板であり、中央の一点鎖線で囲まれた部分が、接触位置を検出できる検出領域11aである。非圧電基板11の周縁部である、検出領域11aの外側の額縁領域11bには、同時に2方向へ弾性表面波を励振する励振素子12がその上辺側及び下辺側に設けられ、同時に2方向からの弾性表面波を受信する受信素子13がその左辺側及び右辺側に設けられている。
【0044】
これらの励振素子12及び受信素子13は同様の構成を有しており、何れも、例えばAlN,ZnOなどからなる薄膜状の圧電体14の一方の面に櫛形電極15を形成し、その他方の面に平板電極(ベタ電極)16を形成して構成されている。表面側の櫛形電極15は、図2に示すように、1本のバス電極17と、バス電極17に連なり、中途で屈曲させてV字状をなす複数の櫛形電極指18とを有する。各励振素子12の櫛形電極15及び平板電極16は、タッチパネル駆動装置2の発振部3に接続され、各受信素子13の櫛形電極15及び平板電極16は、タッチパネル駆動装置2の受信部4に接続されている。なお、図2では、この平板電極16を破線で示し、圧電体14の設置範囲を一点鎖線で示している。
【0045】
このような構成にあって、櫛形電極15と平板電極16との間に周期信号を印加することにより、励振素子12にて弾性表面波が同時に2つの方向に励振され、励振された弾性表面波が非圧電基板11の2つの対角方向に伝播されて受信素子13で受信される。具体的には、上辺側の励振素子12からの弾性表面波は左下斜め方向及び右下斜め方向に伝播されて左辺側及び右辺側の受信素子13で受信され(チャンネルA,B)、下辺側の励振素子12からの弾性表面波は左上斜め方向及び右上斜め方向に伝播されて左辺側及び右辺側の受信素子13で受信される(チャンネルC,D)。ここで、非圧電基板11の弾性表面波の伝播路に指,ペンなどの物体が接触した場合には、弾性表面波が減衰する。従って、両受信素子13での受信信号のレベル減衰の有無を検知することにより、物体の接触の有無及びその接触位置を検出することが可能である。
【0046】
(第1実施の形態)
図3は、第1実施の形態における電極構造を示す図、図4は、図3の受信側における電極構造の拡大図である。図3にあっては、弾性表面波のバースト波が対角部(パネル対角線の近傍領域)で、発振側(左側)から受信側(右側)へ伝播する。
【0047】
第1実施の形態では、受信側において、櫛形電極指18が、非圧電基板11(パネル)の対角線を越えて設けられているが、受信側のバス電極17(電極基部)と非圧電基板11(パネル)の対角線との交点から励振側のバス電極17(電極基部)の延設方向と平行に引いた線からはみ出ないように設けられている。よって、電極幅を増加させることなく、立ち下がりを検出するために必要な対角部でのS/Nを確保できる。この場合、櫛形電極指18は非圧電基板11(パネル)の辺縁に沿って増設されるだけであり、額縁領域11bが広がることはなく、検出領域11aも狭くならない。
【0048】
バースト波の先頭が非圧電基板11(パネル)の対角線となす角度をθとする。対角線の近傍に物体(遮蔽物)があるとした場合、バースト波の先頭が図3,図4のEの位置にきたときのS/Nを他の部分と同じように確保するためには、図3,図4のハッチングを付した平行四辺形における櫛形電極指18の長さが他の部分と同じにすれば良い。例えば、櫛形電極指18の長さが0.7mm、θ=45°とした場合、対角線上に到達した櫛形電極指18(♯1)の交点から0.35mmまでの櫛形電極指18(♯k)まで同じ長さの0.7mmであれば良い。また、櫛形電極指18(♯1)から0.7mmの距離にある櫛形電極指18(♯2k)までの櫛形電極指18は、電極幅を増やさない範囲でその長さを増やすことができるため、ハッチングを付した範囲の外部であっても、その長さを増やしても良い。
【0049】
(第2実施の形態)
次に、前述した時間(2),(3)の増加分の具体例について説明する。櫛形電極指18長さを0.7mm、θを45°、弾性表面波の速度を3000m/s、バースト波の継続時間を1.3μsとした場合、時間(2)の増加分は(0.7×10-3)/3000=0.23(μs)となり、時間(3)の増加分は1.3μsである。この結果、全体として((2)+(3))/2×3000=2.3(mm)だけ増加する。
【0050】
従って、この2.3mmが最小の接触幅になる。そこで、第2実施の形態においては、演算部54において2.3mmより小さい接触幅が検出された場合、その検出値はノイズであるとして座標の検出処理を中止する。よって、誤った接触を検出することを防止できて、検出精度を向上できる。
【0051】
(第3実施の形態)
図5は、第3実施の形態によるタッチパネル装置の基本構成を示す図であり、図5において図1と同一部分には同一番号を付している。第3実施の形態では、受信部4に653kHzのローパスフィルタ(LPF)43が設けられている。上述したように、時間(2),(3)の増加分の合計は0.23+1.3=1.53(μs)となるため、この増加分より計算される635(kHz)(=1/(1.53×10-6))のLPF43を受信部4に設けることにより、簡単な構成にて、ノイズの除去を行えて、誤った接触を検出することを防止でき、検出精度を向上できる。
【0052】
(第4実施の形態)
次に、タイムドメイン波形の立ち下がり時点から立ち上がり時点までの時間に基づいて物体の接触幅を検出する場合の時間(1)を求めるための時間(2),(3)の増加分の具体的な補正例について説明する。この場合、演算部54にて演算された検出値は一旦RAM53に格納され、格納された検出値が読み出されて補正部60にて補正がなされる。
【0053】
検出結果をそのまま演算した場合には、上述したように、実際の接触幅より2.3mmだけ増加する。つまり、実際の接触幅が2.0mmである場合に、検出値(演算値)は4.3mmとなり、実際の接触幅が4.0mmである場合に、検出値(演算値)は6.3mmとなる。よって、第4実施の形態では、このような検出値(演算値)から、定数である時間(2),(3)の増加分の合計に応じた2.3mmを減算して、物体の実際の接触幅2.0mm,4.0mmを取得する。よって、物体の正確な接触幅を容易に求めることができる。
【0054】
(第5実施の形態)
次に、タイムドメイン波形の立ち下がり時点から減衰最大時点までの時間に基づいて物体の接触幅を検出する場合の例について説明する。このような場合にも、第4実施の形態と同様に、検出される接触幅はバースト波によって増大する。
【0055】
図6において、ハッチングを付した平行四辺形の領域が物体Mによって遮られたバースト波とした場合、この平行四辺形の領域と受信側の櫛形電極指18とが重なる面積が最大となる位置が減衰最大時点となる。バースト波は強度分布を持つので、減衰最大時点を検知するためには、この強度分布を考慮する必要がある。図7は、バースト波の強度分布が生じる概念を示す図である。櫛形電極指18がバースト波に対して傾いているので(傾斜角θ)、強度分布が生じる。図7は、バースト波を3回励振させた例を示しているが、1回目で発生したバースト波♯1と、2回目,3回目で発生したバースト波♯2,♯3とが重ね合わされる。図7の直線Lで示した部分の強度分布を図8に示す。
【0056】
図8に示すように、階段状に強度が増していき、一定値(強度最大)となった後、再び階段状に強度が減少していく。減衰最大値となる時点と最大強度となる時点とはずれる。最大強度となるバースト波の波数を図9に示す。ある櫛形電極指18に着目した場合、バースト波の波数は、その櫛形電極指18を対角線とする平行四辺形に含まれる電極指18の個数となる。具体的に図9に示す例では、含まれる櫛形電極指18の個数が13個であり、バースト波の波数は13波となる。13波のバースト波を打つ時間だけ強度最大となる時点まで要するとした場合、例えば1MHzでバースト波を打ったときに、1(μs)×13=13(μs)だけ減衰最大値の時点がずれる。よって、立ち下がり時点から減衰最大時点までの時間に基づいて物体の接触幅を検出する場合には、例えば検出結果に基づく演算値が20μsであるときには、13μsの増加分を減算する補正を行う。
【0057】
(第6実施の形態)
タイムドメイン波形の立ち下がり時点から立ち上がり時点までの時間に基づいて物体の接触幅を検出する場合、立ち下がり時点の検出のS/Nは、第1実施の形態における対角部での電極構成によって確保される。しかし、立ち上がり時点での検出のS/Nは改善されていないため、精度良く物体の接触幅を検出できていない。そこで、第6実施の形態では、バースト波による増加分を考慮したスライスタイムドメイン波形を比較用に用いる。
【0058】
図10に破線で示すスライスタイムドメイン波形は、立ち下がり時点を検出した後のスライスタイムドメイン波形からバースト波による増加分の強度を予め減算したものである。このようにバースト波に伴う増加分による強度を予め減算しておいたスライスタイムドメイン波形を、実測したスライスタイムドメイン波形と比較することにより、前述の時間(1)(図10でのT4,T5間の時間)を検出することができる。
【0059】
(第7実施の形態)
以上の第2〜第6実施の形態における手法は、物体の接触幅を正確に検出するための手法であるが、僅かな領域であるとはいえ、その接触幅を正確に検出できない領域が対角部に残る。これは、対角部では時間(3)の部分のゆらぎが多くて正しい時間(3)が得られないことに起因している。そこで、第7実施の形態では、その領域にあって、過去の履歴情報から接触幅を想定する。具体的には、保存されている複数の履歴(接触幅)を補間して、接触幅を求める。
【0060】
図2に示す各チャンネルA〜D毎に過去に検出した接触幅の複数の履歴をRAM53に格納している。RAM53に格納されている履歴情報の一例を図11に示す。図11に示す例では、各チャンネル毎に4個ずつの履歴が保存されている。なお、各チャンネルでの履歴は1つ以上あれば良く、全チャンネルで同数の履歴を有する必要はない。
【0061】
図12は、第7実施の形態における接触幅検出の動作手順を示すフローチャートである。以下の説明では、チャンネルAにおける物体の位置検出を例とする。まず、実測のタイムドメイン波形をスライスタイムドメイン波形と比較して、受信強度が低くなった時点(立ち下がり)を検知したか否かを判断する(ステップS1)。実測レベル<スライスレベルとなった場合に(S1:YES)、物体の接触があったことを検知する(ステップS2)。そうでない場合には(S1:NO)、実測のタイムドメイン波形とスライスタイムドメイン波形との比較処理を繰り返す。
【0062】
次に、物体の接触位置が対角部であるか否かを判断する(ステップS3)。この判断基準を以下に説明する。非圧電基板11(パネル)の対角線上が、チャンネルAにおける櫛形電極指18,18間の最大距離を表す。弾性表面波の速度は一定であるので、この最大距離をこの速度で割ることにより、タイムドメイン波形上での位置を特定できる。例えば、最大距離が3インチ(76.2mm)、弾性表面波の速度が3000m/sである場合、その位置は76.2×10-3/3000=25.4(μs)となる。このときのタイムドメイン波形上での位置(T6)を図13に示す。
【0063】
このようにして算出した位置(図13のT6)を基準点とする。そして、立ち下がり時点と最小の接触幅との和がこの基準点を越えるか否かにより、物体の接触位置が対角部であるか否かを判断する。つまり、この和がこの基準点を越えた場合に、対角部における物体の接触と判断する。この場合のタイムドメイン波形を図14に示す。図14における破線よりも右側の領域では、立ち上がり時点の検知が不安定となる。一方、この和がこの基準点以下である場合に、対角部でない位置における物体の接触と判断する。
【0064】
立ち下がり時点と最小の接触幅との和が基準点以下である場合、つまり、対角部でない位置に物体が接触されている場合(S3:NO)、接触幅のS/Nは確保されているため、受信結果から演算した接触幅をそのまま採用する(ステップS5)。そして、古い履歴を廃棄して、この取得した新しい接触幅を履歴の最後に保存する(ステップS6)。図15は、この履歴の更新例を示す図である。図15に示す例では、チャンネルAに関する更新を表しており、最も古い履歴(幅データ1)を廃棄し、残りの履歴(幅データ2〜4)を繰り上げて、最後に最新の履歴(幅データ5)を追加する更新処理を行う。なお、最新の履歴(幅データ5)をそのまま追加するようにしたが、その最新の履歴と過去の履歴との平均を追加するようにしても良い。例えば、最も古い履歴(幅データ1)を廃棄し、残りの履歴(幅データ2〜4)を繰り上げ、最後に最新の履歴(幅データ5)及び過去の履歴(幅データ3,4)の平均値((幅データ3+幅データ4+幅データ5)/3)を追加するようにしても良い。
【0065】
一方、立ち下がり時点と最小の接触幅との和が基準点を越える場合、つまり、対角部の位置に物体が接触されている場合(S3:YES)、接触幅のS/Nが確保されていないので、受信結果から演算した接触幅は廃棄し、RAM53に格納されている複数の接触幅の履歴を補間して接触幅を取得する(ステップS4)。具体的には、チャンネルAに関して、保存されている過去の履歴(幅データ2,3,4)の平均値((幅データ2+幅データ3+幅データ4)/3)を接触幅として取得する。この場合には、履歴の更新を行わない。
【0066】
ところで、接触幅の履歴が保存されていない場合もある。チャンネルAに関する接触幅の履歴が保存されていない状態を図16に示す。このような場合には、チャンネルAと平行に弾性表面波が伝播するチャンネルDに関する接触幅の履歴を利用して、チャンネルAに関する接触幅を取得する。例えば、チャンネルDに関して保存されている過去の履歴(幅データ2,3,4)の平均値((幅データ2+幅データ3+幅データ4)/3)を、チャンネルAにおける接触幅として取得する。
【0067】
更に、チャンネルDに関する接触幅の履歴も保存されていない場合がある。チャンネルA,Dに関する接触幅の履歴が保存されていない状態を図17に示す。このような場合には、チャンネルCに関する接触幅の履歴を利用して、チャンネルAに関する接触幅を取得する。例えば、チャンネルCに関して保存されている過去の履歴(幅データ2,3,4)の平均値((幅データ2+幅データ3+幅データ4)/3)を、チャンネルAにおける接触幅として取得する。
【0068】
上述したような本発明の補正処理における効果について説明する。非圧電基板11(パネル)の検出領域11a内の3箇所に異なる3本の直線を描画し、それらの直線に対して、本発明の補正を用いない手法と本発明の補正を用いる手法とによりそれらの長さを求めた。そのときの実際の長さとの誤差を下記表1に示す。何れの直線においても、誤差を小さくすることができ、検出精度の向上を図れていることが分かる。
【0069】
【表1】

【0070】
(付記1)電極基部に櫛形電極指を連ならせた構成を有していて弾性表面波を励振する励振手段、及び、電極基部に櫛形電極指を連ならせた構成を有していて弾性表面波を受信する受信手段の少なくとも一対を、弾性表面波が伝播可能な矩形状の基板の対角方向の周縁部に備えており、前記基板上の対角方向に前記励振手段と前記受信手段との間で弾性表面波を伝播させ、前記受信手段での受信結果に基づいて、前記基板に接触された物体の位置を検出するタッチパネル装置において、前記受信手段における対角部の櫛形電極指が、前記基板の対角線を越えて、前記受信手段の電極基部と前記基板の対角線との交点から前記励振手段の電極基部の延設方向に平行に引いた線から出ないように設けられていることを特徴とするタッチパネル装置。
【0071】
(付記2)弾性表面波が伝播可能な矩形状の基板の対角方向の周縁部に対をなして、弾性表面波を励振する励振手段と弾性表面波を受信する受信手段とを備えており、前記基板上の対角方向に前記励振手段と前記受信手段との間で弾性表面波を伝播させ、前記受信手段での時系列の受信結果に基づいて、前記基板に接触された物体の位置を検出するタッチパネル装置において、前記受信手段での時系列の受信結果と予め取得しておいた比較用の時系列の受信結果とを比較する比較手段と、該比較手段での比較結果に基づいて前記物体の位置を検出する検出手段と、該検出手段の検出結果を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶されている検出結果を補正する補正手段とを備えることを特徴とするタッチパネル装置。
【0072】
(付記3)前記補正手段は、前記励振手段における弾性表面波の励振回数、前記励振手段及び受信手段の電極構成、並びに、前記基板上での弾性表面波の伝播速度に基づいて、検出される最小の接触幅を決定する手段と、前記検出結果が前記最小の接触幅より小さい場合に前記検出結果をノイズと判断する手段とを有することを特徴とする付記2記載のタッチパネル装置。
【0073】
(付記4)前記補正手段は、前記励振手段における弾性表面波の励振回数、前記励振手段及び受信手段の電極構成、並びに、前記基板上での弾性表面波の伝播速度に基づいて決定した最小の接触幅に応じて求められる周波数以下のローパスフィルタを有することを特徴とする付記2記載のタッチパネル装置。
【0074】
(付記5)前記比較手段での比較結果に基づいて、前記検出手段は立ち下がりの時点及び立ち上がりの時点を検出することとし、前記補正手段は、前記励振手段における弾性表面波の励振回数、前記励振手段及び受信手段の電極構成、並びに、前記基板上での弾性表面波の伝播速度に基づいて決定される増加分を、検出された立ち下がりの時点及び立ち上がりの時点の間隔から減算するようにしたことを特徴とする付記2記載のタッチパネル装置。
【0075】
(付記6)前記比較手段での比較結果に基づいて、前記検出手段は立ち下がりの時点及び弾性表面波の減衰が最大となる時点を検出することとし、前記補正手段は、前記励振手段における弾性表面波の励振回数、前記励振手段及び受信手段の電極構成、並びに、前記基板上での弾性表面波の伝播速度に基づいて決定される増加分を、検出された立ち下がりの時点及び弾性表面波の減衰が最大となる時点の間隔から減算するようにしたことを特徴とする付記2記載のタッチパネル装置。
【0076】
(付記7)弾性表面波が伝播可能な矩形状の基板の対角方向の周縁部に対をなして、弾性表面波を励振する励振手段と弾性表面波を受信する受信手段とを備えており、前記基板上の対角方向に前記励振手段と前記受信手段との間で弾性表面波を伝播させ、前記受信手段での時系列の受信結果に基づいて、前記基板に接触された物体の位置を検出するタッチパネル装置において、前記受信手段での時系列の受信結果と予め取得しておいた第1比較用の時系列の受信結果とを比較する第1比較手段と、前記励振手段における弾性表面波の励振回数、並びに、前記励振手段及び受信手段の電極構成に基づいて決定される受信強度を前記第1比較用の時系列の受信結果から減算した第2比較用の時系列の受信結果と前記受信手段での時系列の受信結果とを比較する第2比較手段とを備えることを特徴とするタッチパネル装置。
【0077】
(付記8)弾性表面波が伝播可能な矩形状の基板の対角方向の周縁部に対をなして、弾性表面波を励振する励振手段、及び、弾性表面波を受信する受信手段とを備えており、前記基板上の対角方向に前記励振手段と前記受信手段との間で弾性表面波を伝播させ、前記受信手段での受信結果に基づいて、前記基板に接触された物体の位置を検出するタッチパネル装置において、検出した物体の幅の履歴を記憶しておく記憶手段と、検出した物体の位置が前記基板の対角線を越えている否かを判断する手段とを備えることを特徴とするタッチパネル装置。
【0078】
(付記9)前記記憶手段は、弾性表面波の伝播方向が異なる複数のチャンネルそれぞれに接触幅の複数の履歴を記憶しており、前記判断手段にて接触位置が前記基板の対角線を越えていると判断された場合、自身のチャンネルに関する前記複数の履歴の平均値を接触幅として補間するようにしたことを特徴とする付記8記載のタッチパネル装置。
【0079】
(付記10)前記記憶手段は、弾性表面波の伝播方向が異なる複数のチャンネルそれぞれに接触幅の複数の履歴を記憶しており、前記判断手段にて接触位置が前記基板の対角線を越えていると判断された場合、他のチャンネルに関する前記複数の履歴の平均値を接触幅として補間するようにしたことを特徴とする付記8記載のタッチパネル装置。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係るタッチパネル装置の基本構成を示す図である。
【図2】タッチパネル本体の構成を示す図である。
【図3】第1実施の形態における電極構造を示す図である。
【図4】図3の受信側における電極構造の拡大図である。
【図5】第3実施の形態によるタッチパネル装置の基本構成を示す図である。
【図6】バースト波による接触検出(立ち下がり→減衰最大)を示す図である。
【図7】バースト波の強度分布の説明図である。
【図8】バースト波の強度分布のグラフである。
【図9】バースト波の強度分布を求めるための説明図である。
【図10】実測タイムドメイン波形と補正後のスライスタイムドメイン波形とを示す図である。
【図11】各チャンネル毎の接触幅の履歴を示す概略図である。
【図12】接触幅の補間処理における動作手順を示すフローチャートである。
【図13】最大距離を伝播した弾性表面波のタイムドメイン波形を示す図である。
【図14】基板(パネル)の対角線を越える物体の接触によって変化するタイムドメイン波形を示す図である。
【図15】チャンネルAの履歴を更新した後の履歴を示す概略図である。
【図16】チャンネルAに履歴がない場合の履歴を示す概略図である。
【図17】チャンネルA,Dに履歴がない場合の履歴を示す概略図である。
【図18】従来のタッチパネル装置の構成を示す図である。
【図19】従来のタッチパネル装置の電極構造例を示す図である。
【図20】従来のタッチパネル装置の対角部における電極構造を示す図である。
【図21】従来のタッチパネル装置の対角部における電極構造を示す図である。
【図22】バースト波による接触検出(立ち下がり→立ち上がり)を示す図である。
【図23】実測タイムドメイン波形とスライスタイムドメイン波形とを示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 タッチパネル本体
2 タッチパネル駆動装置
3 発振部
4 受信部
5 制御部
11 非圧電基板
11a 検出領域
12 励振素子
13 受信素子
17 バス電極
18 櫛形電極指
43 ローパスフィルタ(LPF)
51 MPU
53 RAM
54 演算部
56 スライスデータメモリ
59 比較部
60 補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極基部に櫛形電極指を連ならせた構成を有していて弾性表面波を励振する励振手段、及び、電極基部に櫛形電極指を連ならせた構成を有していて弾性表面波を受信する受信手段の少なくとも一対を、弾性表面波が伝播可能な矩形状の基板の対角方向の周縁部に備えており、前記基板上の対角方向に前記励振手段と前記受信手段との間で弾性表面波を伝播させ、前記受信手段での受信結果に基づいて、前記基板に接触された物体の位置を検出するタッチパネル装置において、
前記受信手段における対角部の櫛形電極指が、前記基板の対角線を越えて、前記受信手段の電極基部と前記基板の対角線との交点から前記励振手段の電極基部の延設方向に平行に引いた線から出ないように設けられていることを特徴とするタッチパネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−32283(P2009−32283A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258913(P2008−258913)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【分割の表示】特願2003−301603(P2003−301603)の分割
【原出願日】平成15年8月26日(2003.8.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】