説明

タッチパネル装置

【目的】
指または座標指示器によりセンサーパネルへのタッチ位置を検出する静電容量型のタッチパネル装置におけるタッチ位置のズレを補正する。
【構成】
指がパネルへタッチしたときの位相及びAC電圧を接触ベクトル信号として、前記両信号の位相差と振幅より、余弦定理を用いて算出したスカラー量を本来の指がタッチしたAC信号として、前記タッチ位置を検出するに当たり、指が前記面抵抗体の近くに無い時の寄生信号による前記AC電圧や、容量性接地人体や抵抗性接地人体の指による前記信号の位相差を排除することを特徴とする位相補正式タッチパネル装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指または座標指示器によりセンサーパネルへのタッチ位置を検出する静電容量型のタッチパネル装置におけるタッチ位置の検出信号の位相を測定し、位置座標のズレを補正する装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル装置は、コンピュータまたはその他のデータ処理装置用に、簡単かつ直観的なインターフェースを提供するものである。特に透明なタッチパネル装置では、ユーザーはデータの入力にキーボードを用いるのではなく、画面上でアイコンに触れたり、文字や絵を描くことによりタッチパネル装置を介して情報を送ることができる。本技術分野の代表的な例として静電容量結合型があり、人体が接地効果を持っていることによりAC電流経路を形成可能であることに由来している。
図4は従来技術である。静電容量結合方式のタッチパネル装置の例であり、センサーパネル41のガラス基材の表面は、均一な面抵抗体42を取り囲む抵抗性周囲電極43が配置されており、各4頂点の接続電極4A、4B、4C、4Dに引き出し線44が設けられ、信号処理部45に接続されている。
従来のセンサーパネル41は、ガラス基材の表面に面抵抗体42として、スパッタ法によるITO(インジウム酸化物)膜あるいは、CVD法による酸化スズ膜などが約700Ω/□で形成されている。ガラス基材は例えばソーダーガラスが使用される。面抵抗体42の上には、抵抗性周囲電極43が、各頂点間の抵抗値が約70Ωになるように形成されている。抵抗性周囲電極43は、例えば導電性インキを使用し、所望のパターンに印刷・焼成し、形成する。必要に応じて各頂点部分の接続電極には、引き出し線44を接続するための、ハンダ付け可能な導電性インキを印刷・焼成したり、各頂点部分を除き絶縁性インキで保護する場合もある。
【0003】
上記センサーパネル41の座標検出手段として、面抵抗体42の各部を信号駆動させ、面抵抗体42全体をAC電圧振動させて、指46と面抵抗体42の間に形成される静電容量結合を介してタッチした点の位置を検出する方法などがある。
信号処理部45には、指46からのAC振動電圧を計測するための計測回路、計測された信号をDC化して数値化するためのAD変換回路、面抵抗体2を電圧振動させるためのドライバー回路、計測された信号を座標データに変換するためのCPU、及びその演算ソフト・記憶装置が含まれる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−132319号(直接触式タッチパネル装置)
【特許文献2】特願平11−278734(寄生信号除去式タッチパネル装置)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
静電容量型のタッチパネル装置において、センサーパネルの設置環境による寄生信号や、人体の接地効果の程度、つまり接地インピーダンスの変化によって実際に指が面抵抗体をタッチした座標位置と、信号処理部で算出された座標位置の間で座標の検出位置がずれる現象があった。
人体の居る周囲条件または人体とシステム筐体とその接地台等への接触状態、更には履物の材質により、人体の接地インピーダンスの内抵抗成分が無視できなくなり、その結果寄生信号(寄生信号の発生の詳細説明は後述する。)と指による本来の信号(操作者が面抵抗体に指を当接し、発生した静電容量結合量)との間に位相差が生じ、スカラー量の合成(混合)ではなく、ベクトル合成信号となる。 前記ベクトル合成信号をスカラー量としてそのまま座標演算すると、本来のAC信号成分と異なるために座標ずれが発生する要因になる。
【0006】
前記、寄生信号と操作者の指が面抵抗体に当接したときに発生する静電容量からなる本来の信号との間の位相差をベクトル合成として捕らえ、操作者の指が面抵抗体に当接したときのタッチ位置座標のずれを解消する方法として、センサーパネルからの電磁放射による寄生信号及び寄生容量による寄生信号に対しAC信号状態で、逆位相同振幅の除去信号を強制印加する方法が開示されている。
【0007】
前記手段は、センサーパネルとシステム筐体間の浮遊容量やセンサーパネルからの電磁放射による寄生信号を想定して、ベクトル的に、逆位相でかつ同振幅の信号を強制印加し、寄生信号成分を除去するもので、タッチ位置ずれの解消方法として有効である。しかしながら前記方法での条件としてセンサーパネルがシステム筐体に取り付けられた環境において発生する寄生信号成分に対して逆位相でかつ同振幅の除去信号を強制印加しなければならない。
つまりセンサーパネルがシステム筐体に取り付けられる前にはセンサーパネルとシステム筐体間の浮遊容量分である寄生信号の振幅や位相がわからない。
またある程度寄生信号成分を想定して逆位相でかつ同振幅の除去信号を印加することはできるが、この方法では完全に寄生信号を除去することができなかった。
前記センサーパネルとシステム筐体間の浮遊容量分を減らすためにパネル部裏面や表面のセンサーパネル取り付け部に面抵抗体のシールド(電気的な回路グランドの意味ではなく寄生信号が進入しないための手段、以下本文では前記意味で使用する)を施し、裏面やセンサーパネル表面取り付け部からの電磁放射による電流を信号処理部に流入させないことで、軽減することができるが寄生信号を完全に除去できない。(実際はパネル部裏面に透明な面抵抗体を施し、前記面抵抗体をシールドする方法があるが、前記、透明面抵抗体の面抵抗をゼロにすることができる材料がなく、完全にシールドすることができない、また表面のセンサーパネル取り付け部もタッチ面はシールドすることができないため、寄生信号を完全に除去できない。)
【0008】
本発明の目的は、操作者の指が実際に面抵抗体に触れた時に発生する信号と寄生信号の間に位相差が生じ、スカラー量の合成(混合)ではなく、ベクトル合成となる信号を補正し本来のAC信号成分(スカラー量へ変換)にして座標ずれをなくすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、センサーパネル面上の指または導電性のスタイラスの当接位置を検出するために使用する装置であり、前記センサーパネル面上には、抵抗膜材料を均一に形成された面抵抗体を配設すると共に、前記面抵抗体をAC電圧駆動するために、接続電極点を配設した抵抗性周囲電極を前記センサーパネル面上の周辺に設け、前記接続電極に流れるAC電流に比例したAC電圧の振幅を計測する回路と、前記AC電圧の位相を計測する回路を有するタッチパネル装置であって、前記指または導電性のスタイラスが前記面抵抗体に当接していないときのAC電圧位相と振幅を無接触ベクトル信号とし、指または導電性スタイラスが前記面抵抗体に当接したときのAC電圧振幅と位相を接触ベクトル信号とし、指または導電性スタイラスが前記面抵抗体に当接したときのしたときのAC電圧振幅と位相を接触ベクトル信号とし、前記無接触ベクトル信号と、接触ベクトル信号を演算することにより得られた結果を、指または導電性のスタイラスが前記面抵抗体上をタッチした本来のAC電流のスカラー量とし、前記スカラー量を前記接続電極に流れる前記当接した位置に比例した本来のAC電流として座標を算出する演算処理部を有するタッチパネル装置を提案するものである。
【0010】
指が前記面抵抗体の近くに無い時の寄生信号による前記AC電圧や、容量性接地人体や抵抗性接地人体の指による前記振幅の位相差を合成ベクトルとしてとらえ寄生信号を排除することで、タッチパネル装置の設置環境や接地人体のインピーダンスが常時変化しても本来の検出信号を計測することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明で得られた手段の結果、操作者がセンサーパネルへタッチしたときに面抵抗体に流れるAC信号電流からタッチ位置を検出する。静電容量型タッチパネル装置の、操作者の接地状況に係わらず、またセンサーパネルの装置への設置環境にかかわらず、さらにはセンサーパネルがシステム筐体へ組み込む前でも、組み込まれた後でも、さらには組み込まれた寄生信号の信号処理部への流入量が変化してもタッチ検出位置ずれをなくすことができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
センサーパネルはベースとなる樹脂やガラス等の表面に、抵抗膜材料を均一に形成され、この抵抗膜の周辺を取り囲む抵抗性周囲電極が配設されて、この抵抗性周囲電極の4頂点と電気的に導体ケーブルが接続され、周囲電極の4頂点から導体ケーブルを介してタッチ位置に比例したAC電圧の振幅を計測する回路と位相を計測する回路を備え、4頂点に流れるAC電圧及び位相から余弦定理を用いて算出する演算処理部があり、算出したスカラー量を本来のタッチ位置検出信号として、前記センサーパネル面上の指の接触位置を座標計算する手段を備えたタッチパネル装置としたものである。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の詳細を添付した図1を参照して詳細に説明する。
センサーパネル部1は長方形のガラス基材に約700Ω/□となるようITO(インジウム錫酸化物)やNESA(錫酸化物)のような透明面抵抗体膜2を形成した。
次に面抵抗体膜2の上を取り囲む抵抗性周囲電極3(以下周囲電極とする)をカーボンや銀カーボンなどの導電性インキで接触配設した。前記周囲電極の4頂点間の抵抗値を約70Ωとし、接続電極である4頂点A,B,C,D点のにはそれぞれ導体ケーブルである引き出し線4が接続されている。
各引き出し線4は、電流−電圧変換回路9のそれぞれの入力に接続される。AC信号源としての振動電圧発生器8が、電流−電圧変換回路9の各入力に低インピーダンスで振動電圧を与える。従って透明面抵抗体2はAC電圧駆動される。
【0014】
電流−電圧変換回路9の簡単な実際例は、トランジスタのベースをAC電圧で振動させ、エミッタをセンサーパネル部1と接続し、コレクタからシングルエンド化した(AC電圧振動系からアイソレートされた)出力信号電圧をアナログマルチプレクサ10に印加する。この出力信号電圧は引き出し線4に流れる信号電流に比例する。さらに前記出力電圧を計測するために信号処理部12内にあるAM検波部でDC化する。
【0015】
電圧駆動される透明面抵抗体2に、指5がタッチまたは近接する。導電性スタイラス(図示せず)が指5の代わりにタッチまたは近接しても同様である。人体は導電性があり、等価抵抗6で図示する。また従来から知られているように、人体は接地効果を持っており、接地インピーダンス7(Z)で図示する。
【0016】
11は位相計測部であり簡単な実施例としてはAC信号電流に比例した出力電圧を増幅して矩形波に波形成型する。振動電圧発生器8の出力部からの波形を正弦波ならば矩形波に成型する。前記両矩形波をAND回路により位相に比例したデューティ比の矩形波が得られる。前記矩形波を信号処理部12内でDC化することで位相に比例対応したDC信号を計測できる。
以上のように人体の指5が透明面抵抗体2にタッチまたは近接した時(近接した時は静電容量結合を介して)透明面抵抗体2と指5を介したAC信号電流の経路ができ、検出信号の振幅電圧を計測すると同時に位相も計測することができた。
【0017】
図1に示す例では、透明面抵抗体2に流れるAC電流は結局、接続電極A,B,C,D点に配分され、図示する指5のタッチ位置の場合、接続電極A点には多く流れ、接続電極C点には少なく流れる。これら接続電極A,B,C,D点に流れるAC信号電流値、すなわちそれらに比例したアナログマルチプレクサ10の各入力AC信号電圧値から、透明面抵抗体2上の指5のタッチまたは近接した位置を検出する。
【0018】
ここで指5以外にも、流れる寄生信号について説明する。図3は寄生信号発生要因の説明図である。一般的に、導電体が電圧振動すると、多かれ少なかれ電磁放射を伴い、駆動点に放射電流が流れる。本実施例ではセンサーパネル部1を460kHz、0.5Vrmsの正弦波で駆動しており、その放射電磁波35(図3参照)の波長は650mである。センサーパネル部1のサイズはA5〜A3程度であり、波長に比し極めて小さい。故にその放射インピーダンスはほぼ容量性のみであり、抵抗成分は無視してよい。
【0019】
更に別の寄生信号の発生要因があり、本装置のセンサーパネル1が、本装置を使用するシステムの筐体31に取り付けられている。通常、システムの筐体31は金属製であり、導電体である。またシステムの筐体31は、本装置の信号周波数において、回路グランドと、電源部のノイズフィルタ、浮遊容量、その他を介して低インピーダンスの関係にある。図示するように、透明なタッチパネル装置は特に、センサーパネル部1がシステムの筐体31のすぐ近くに取り付けられるため、寄生容量34が実際には生じる。またセンサーパネル部1は液晶ディスプレイと重ねて使用されることが多く、背面にも大きな寄生容量が生じる。
【0020】
この寄生信号電流は容量性であり、その位相の進みは、駆動電圧よりも90度進んでいる。前記寄生信号電流はセンサーパネル1のシステムの筐体31への取り付け状態により大きく変わり、5μA〜300μA程度となる。また前記位相も同様にセンサーパネル1がシステム筐体31へ近づいたり、対向面積が大きくなるほど寄生信号が多くなる。
【0021】
上述した、センサーパネル1からの電磁放射インピーダンスやシステムの筐体31からの寄生容量34による寄生信号電流は、センサーパネル1の背面にシールドを置き、振動電圧発生器8に接続して、裏面からの電磁放射による電流を信号処理部12に流入させないことで、減少されるがゼロにはならない。またセンサーパネル1表面に関してはタッチ入力面があるため電磁放射を止めることはできない。
【0022】
上述のように、センサーパネル1面上からのほぼ容量性の放射電流とセンサーパネル1とシステム筐体31間の容量性34の寄生信号電流が合成されて、図1の各引き出し線4にはその駆動電圧位相より進んだ位相の寄生電流iA ,iB ,iC ,iD が図示するように電流/電圧変換回路9、アナログマルチプレクサ10を介して信号処理部12の入力回路に常時流れる。
【0023】
本発明は寄生信号電流の電流値と位相を計測する手段と寄生信号とタッチ検出信号の合成された電流値と位相を計測する手段とその演算処理で本来のタッチ検出信号を得られることができ、指のタッチ位置ずれをなくすことができた、その詳細は後述する。
【0024】
次に人体の接地効果について説明する。本装置のセンサーパネル1が、本装置を使用するシステムの筐体31に取り付けられている。人体30がその右手でセンサーパネル1にタッチし、操作している。人体30の左手を図示するように金属性のシステムの筐体31に接触している時は人体30とシステムの筐体31間は抵抗性のインピーダンスの関係にある。その抵抗値は1kΩ程度である。また人体30の左手をシステムの筐体31から離している場合は、他の接地効果要因が主役となり、システムの筐体31と人体30間の容量33、人体30の接地容量32、更に指がセンサーパネル1にタッチした時人体30も少し電圧振動するが、その電磁放射インピーダンスによる接地効果との合成したものとなる。
【0025】
この人体30からの電磁放射による接地効果(人体の電圧振動抑制効果)については前述の特許出願番号[特願平10−321508号]に詳述されている。
従って、人体30の履物が絶縁性とすれば、システムの筐体31に触れない時は、図1に示す人体の接地インピーダンス7は容量性であり、システムの筐体31に触れている時は、接地インピーダンス7は抵抗性であり、そのインピーダンスは容量性と比べて小さな値となる。
【0026】
図2は寄生信号とタッチ信号をベクトル表示した説明図である。
この図2では説明をわかりやすくするために、振動電圧発生器8の電圧位相を基準位相軸20とし、垂直方向は位相が進んだ方向とする。ベクトル22が実際の寄生信号と容量性接地人体の合成された信号成分である。ベクトル21は寄生信号成分である。ベクトル22とベクトル21の差分が接地人体の指5による本来のAC信号成分である。寄生信号21と同じ位相をもつ容量性接地人体の場合、ベクトル22は同じ方向なので、スカラー量としてDC化(AM検波)後に、ベクトル22の振幅からベクトル21の振幅を引き算して本来の指によるAC信号成分の振幅(大きさ)を検出してもタッチ位置がずれることはない。
【0027】
しかしながら抵抗性分が寄生信号より多くなった接地人体の指5による信号の場合、寄生信号成分21に本来のAC信号成分24が合成されたベクトル23になる。図からもわかるように前述した方法でベクトル23の振幅からベクトル21の振幅を引き算すると本来のAC信号24より小さくなり、正確な座標を求めることができない。
この現象の対策は、従来も行われていたスカラー量のみでは不可能である。原因は寄生信号成分21の位相と人体接地の抵抗・容量性の変化による位相のずれにある。従来の対策である完全なシールドを施すことは前述したように無理であり、またセンサーパネル1の構造も複雑になり、高コストとなる。
【0028】
他に有効な対策として寄生信号成分と同じ大きさ(同振幅)の信号を180度位相を変えて(逆位相)強制印加することで寄生信号を相殺する方法がある。しかしながら前記方法ではセンサーパネル1がシステムの筐体31に取り付けられた環境での寄生信号成分と同じ大きさの逆位相信号を印加する必要があり、正確にはシステムの筐体31の1台ごとに印加する信号を調整しなければならない。またセンサーパネル1を取り付ける前のタッチパネル装置単体では上記同振幅の信号を印加するのは寄生信号の位相や振幅を予想しなければならないため完全な調整は困難である。
本発明では寄生信号とタッチ検出信号の電流量と位相を計測して、各ベクトル信号として扱うことで本来のタッチ信号を抽出(スカラー量へ変換)することにある。
【0029】
次に寄生信号を排除する動作処理を説明する。センサーパネル面に指が近接あるいは接触していない状態での検出信号の振幅をDC化された値として計測し、図2での記号を(b)とする。前記位相を計測する。ここでの位相角は容量性信号のため駆動電圧信号より90度すすむことになるが、DC化するための回路処理などがあるために、正確な90度にならないので計測しておく。次にタッチ時の検出信号の振幅(c)と位相角のDC化された値を計測する。このタッチ時の検出信号は寄生信号を含んだ合成信号である。次に指がタッチしていない状態(無接触ベクトル)の位相角とタッチ時(接触ベクトル)の位相角の差分を(α)とすると、求める本来の検出信号の振幅(a)は余弦定理より

a = √(b2 + c2 - 2bc cos α)

で計算できる。
【0030】
ちなみに位相計測回路は上述のように位相の差分を検出するために絶対値精度は必要ないため簡単な回路で構成できる。
上述したベクトル処理の結果、非接触ベクトル(寄生信号)と接触ベクトル(合成信号)より寄生信号が排除された求める本来のタッチ検出信号(スカラー量)が得られる。
次に上述のベクトル処理をセンサーパネルの各点(A、B、C、D点)毎に行い、本来の信号による座標演算処理を実施する。
非接触ベクトルの計測は、電源投入時または振幅が最小になったときを非接触ベクトルとし、この非接触ベクトルの値を更新すれば、より正確な演算処理が可能になる。
【0031】
本実施例では、抵抗性周囲電極3の4頂点に接続電極A、B、C、D点を配設したが、前記各頂点間に接続電極を配設してもよい、また座標演算は複雑になるが抵抗性周囲電極3を無くし面抵抗体2の周囲に接続電極を直接配設してもよい。また、ここまでの説明では長方形のパネルで説明したが、任意の形状のパネルでよく、1次元(座標)でも本発明の有効性には変わりない。
本発明で得られた手段の結果、操作者がセンサーパネルへタッチしたときに面抵抗体に流れるAC信号電流からタッチ位置を検出する静電容量型タッチパネル装置で、非接触ベクトル(寄生信号)と接触ベクトル(合成信号)より余弦定理を使って本来の検出信号に補正することで、操作者の接地状況に係わらず、またセンサーパネルの装置への設置環境にかかわらず、さらにはセンサーパネルがシステム筐体へ組み込む前でも、組み込まれた後でも、さらには組み込まれた電気的環境が変化しても、調整の必要がなく、タッチ検出位置ずれをなくすことができた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のタッチパネル装置の説明図
【図2】寄生AC信号と合成AC信号のベクトル説明図
【図3】センサーパネルの寄生容量と人体接地の説明図
【図4】従来の静電容量結合方式の座標入力装置の説明図
【符号の説明】
【0033】
A、B、C、D 接続電極点
4A、4B、4C、4D 接続電極点
1 センサーパネル
2 面抵抗体
3 抵抗性周囲電極
4 引き出し線
5 指
6 人体の等価抵抗
7 人体の接地インピーダンス
8 振動電圧発生器
9 電流/電圧変換回路
10 アナログマルチプレクサ
11 位相検出回路
12 信号処理部
20 基準位相軸
21 寄生信号成分
22 実際の寄生信号と容量性接地人体の合成された信号成分
23 寄生信号成分21に本来のAC信号成分24が合成された信号
24 本来のAC信号成分
30 人体
31 システムの筐体
32 人体の接地容量
33 筐体31と人体30間の容量33
34 寄生容量
35 放射電磁波


【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサーパネル面上の指または導電性のスタイラスの当接位置を検出するために使用する装置であり、前記センサーパネル面上には、抵抗膜材料を均一に形成された面抵抗体を配設すると共に、前記面抵抗体をAC電圧駆動するために、接続電極点を配設した抵抗性周囲電極を前記センサーパネル面上の周辺に設け、前記接続電極に流れるAC電流に比例したAC電圧の振幅を計測する回路と、前記AC電圧の位相を計測する回路を有するタッチパネル装置であって、前記指または導電性のスタイラスが前記面抵抗体に当接していないときのAC電圧位相と振幅を無接触ベクトル信号とし、指または導電性のスタイラスが前記面抵抗体に当接したときのAC電圧振幅と位相を接触ベクトル信号とし、前記無接触ベクトル信号と、接触ベクトル信号を演算することにより得られた結果を、指または導電性のスタイラスが前記面抵抗体上をタッチした本来のAC電流のスカラー量とし、前記スカラー量を前記接続電極に流れる前記当接した位置に比例した本来のAC電流として座標を算出する演算処理部を有することを特徴とするタッチパネル装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−86285(P2010−86285A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254715(P2008−254715)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】