説明

タッチパネル

【課題】 押圧荷重の均一化を図ると共に、ニュートンリング環の発生を防止できるタッチパネルを提供する。
【解決手段】 透明電極と引き回し電極とを設けた上下一対の基板を所定の隙間を持たせて対向配置し、絶縁性のシール材で上下基板の外周域を周回して接合してなるタッチパネルにおいて、引き回し電極は透明電極の一辺に接触している電極部と、透明電極と離間しシール材の内周に沿って配置される配線部と、該配線部と電極部、または配線部同士を電気的に接続する繋ぎ電極部とを有し、少なくとも電極部と、該電極部の外側に配置される配線部またはシール材との縦方向または横方向に対向する間隔とがほぼ同一で、電極部が第1のスペーサ部材を有し、配線部は第1のスペーサ部材より粒径の小さい第2のスペーサ部材を有し、シール材が第2のスペーサ部材とほぼ等しい粒径のシール材内スペーサ部材を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置の画面上に配置し使用者が情報の表示画面を指やペン等で直接押してデータを入力するタッチパネルに関し、特にニュートンリング環が発生せず入力エリアも確保されるタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の入力スイッチとしてのタッチパネルは、液晶表示装置の表示面上に配置されて使用される。このタッチパネルは可撓性を有する透明基板とその下面に形成された透明電極とからなる上基板と、透明基板とその上面に形成された透明電極とからなる下基板とが、所定の空間を隔てて透明電極同士が対面するように配置されシール剤で貼着されている。更に、下基板の透明電極上には、マトリックス状にドットスペーサが配置されている。
【0003】
このタッチパネルは、手、或いは入力ペン等の入力手段により上基板を押圧し、上基板の透明電極の何れか1点が下基板の透明電極に接触することにより、両透明電極が相互通電される。これにより、制御装置が、その位置の抵抗値によって変化された電圧値を読みとり、電位差の変化に応じて位置座標を読み込む構成となっている。このためタッチパネルの入力側の上基板は、常に下基板側に押し付けられる力が働くので長期間の使用では上基板が下基板に接触する方向に変形し、絶縁性が徐々に低下し誤動作の原因となって耐久性を低下させることが問題となっていた。
【0004】
また、これに伴って、上基板の撓んだ部分を中心にして同心円状の干渉縞、いわゆるニュートンリング環が発生する。このニュートンリング環は、見栄えが悪く、感覚的にも不快で入力動作を遅らせたり誤入力したりすることが問題となっていた。従って上基板 入力側 は外側に対してわずかに凸状に膨らんでいるか、または入力基板中央エリアが凹状にへたらないような引っ張り力、或いは外側に湾曲させようとするわずかな力が常時加わっていることが好ましい。入力側基板が樹脂フィルムの場合、撓みやすく、垂れやすいので特にこの様な状態が好ましい。また入力側が撓みにくいガラスの場合にも、撓みやすい中央付近と撓みにくい周辺部との押圧荷重を均一にする意味でも、やはり中央近辺がわずかに凸状に膨らんでいるいることが望ましい。
【0005】
このような入力側基板を凸状に湾曲させるか、或いは凹状に変形しないようにした第1の従来技術としてシール材 粘着材塗布堤 を二重に周回させ、内側のシール材をやや厚く形成することで凸状湾曲を実現している例が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。図10は、この第1の従来技術におけるタッチパネルを説明するための模式図であり、図10(a)は上基板側から透視した平面図、図10(b)は図10(a)のA−A断面図、図10(c)は図10(a)のB−B断面図を示す。
【0006】
図10に示すように第1の従来技術におけるタッチパネルは上基板1と下基板6の内面には、それぞれ透明電極1A、6Aが被着形成されている。これらの透明電極1A、6Aの周囲はシール領域であり、このシール領域の内側に入力領域ARが形成されている。各透明電極1A、6Aのそれぞれは、タッチパネルの最外周に位置するシール領域において引き回し電極2と引き回し電極5Aに電気的に接続されている。引き回し電極2は上下接続給電電極5Bに接続される。この上下接続電極5Bは上下接続電極用配線5Cで基板の所定の辺に引き回される。
【0007】
上基板1の透明電極1A、下基板の引き回し電極5Aおよび上下接続電極用配線5Cのそれぞれは、図10(b)に示したように、シール領域において上絶縁層9Aと下絶縁層9Bで被覆される。これらの上絶縁層9Aと下絶縁層9Bの間を粘着層を構成する2列のシール材(粘着材塗布堤)11A、11Bで粘着固定される。また、図10(c)に示したように、上基板の引き回し電極2と上下接続電極5Bはシール領域において2列のシール材(粘着材塗布堤)11A、11Bで粘着固定される。シール材(粘着材塗布堤)11A、11Bは入力領域を周回して下基板6側に印刷塗布され、それぞれが頂上を持ち、各頂上が上基板1に当接して貼り付けられる。
【0008】
長辺側と短辺側に上記2列のシール材(粘着材塗布堤)11A、11Bを印刷塗布する際、外側を周回するシール材(粘着材塗布堤)11Aの頂上高さが内側を周回するシール材(粘着材塗布堤)11Bの頂上高さより低くなるようにする。このようなシール材(粘着材塗布堤)11A、11Bを用いて上基板1の周縁を下基板6の周縁に粘着固定することにより、上基板1は下基板6に対して入力領域AR方向に開いた傾きで粘着固定される。その結果、上基板1は全体として上に凸となる形状で下基板6に粘着されて一体化される。これによって上基板1の撓みを防止して、ニュートンリングの発生を回避しようとするものである。
【0009】
また、第2の従来例として引き回し電極の高さを、最外周のシール材よりわずかに高く形成し、同じく上基板全体の断面が略台形状に変形するような構成とした例がある(例えば、非特許文献1参照。)。図11は、この第2の従来技術におけるタッチパネルを説明するための模式図であり、図11(a)は上基板側から透視した平面図、図11(b)は図11(a)のX−X断面図である。図11に示すようにこのタッチパネル50は、方形形状をなす下基板41と可撓性を有する上基板51と対向配置し、シール材17で外縁を周回して貼合わせ一体化されている。下基板41の上面には透明電極3と、この透明電極3の対向する両辺に沿って接続形成されFPC19の取付部まで延設した一対の引き回し電極44及び45とが形成されている。また、透明電極3上にマトリツクス状に配置したドットスペーサ48が設けられている。さらに、下基板41のFPC19の取付部付近には後述する上基板51の引き回し電極54、55に導通接続を行うため接続電極46、47が形成されている。
【0010】
上基板51には下面に透明電極13と、この透明電極13の対向する両辺に沿って接続形成されFPC19の取付部方向に向かって延設した一対の引き回し電極54、55とが形成されている。この上下基板51、41の引き回し電極54、55及び44、45が方形配置となるように対向配置し、上下基板51、41とに10μm前後の隙間を持たせてスペーサボール17cを分散したシール材17で上下基板51、41とを接着固定している。この上基板51に設けた引き回し電極54、55、及び下基板41に設けた引き回し電極44、45はシール材17の厚みより僅かに厚く形成している。このため、上下基板51、41を貼合わせたときに、図11(b)に示すように、上基板51は外側に膨らんで湾曲した形状になる。これによって上基板51の内側への撓みを防止して、ニュートンリング環の発生を回避しようとするものである。
【0011】
【特許文献1】特開2002−196886号公報(第2−3頁、図1)
【非特許文献1】特願2003−075098号公報(第3−4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、タッチパネルにおけるニュートンリング環の発生防止対策として開示されている第1の従来例において下基板に対して上基板が凸状に湾曲するように構成する技術は、シール材を二重に周回させているため入力可能エリアが減少する。また、上下基板にガラス材料を使用するタッチパネルにおいては上下基板の間隙が10μm前後と、小さく設定する必要があり、第1の従来例のように引き回し電極とシール材を重ね合わせることは困難であり、二重構造のシール材の内側に電極を這わせる必要があり、入力エリアは減少せざるを得ないという問題があった。
【0013】
このような第1の従来例の問題点を解決するために、第2の従来例では引き回し電極54、55、44、45の高さを、最外周のシール材17よりわずかに高く形成し、同じく上基板51全体の断面が略台形状に湾曲するような構成としている。しかしながら、シール材17の高さはスペーサ17cの添加で加圧・焼成されるので良好に管理されるが、引き回し電極54、55、44、45は銀ペーストの焼成のみなのでシール材17ほどには高さが管理できず、場所によっては凹凸或いは、うねりが発生する。
【0014】
一方、図15に示すよう上基板51の湾曲面の傾斜角Qの値はシール材17の内周とシール材17の内周に沿って隣接配置されている引き回し電極45の外周との間隔bと、シール材17の高さと引き回し電極45の高さの差tとの関係によって決まる。このためシール材17と引き回し電極45との間隔bやシール材17と引き回し電極45との高さの差tがばらつくと上基板51の湾曲形状に歪みが生じ未接触不良または押圧荷重が上昇するおそれがある。
【0015】
したがって、第2の従来例のようにに引き回し電極の高さをシール材17の高さより大きくすることによって上基板51を湾曲形状としても、前述のように引き回し電極に凹凸或いは、うねりが発生すると湾曲形状に歪みが発生し、図16に示すように入力点Bと接触点Pとが一致せず直線性(リニアリティ)不良や作動荷重のバラツキが大きくなるという問題があった。
【0016】
さらに、第2の従来例におけるシール材17はスクリーン印刷等でエポキシインクを印刷形成した後、加圧焼成で硬化させるので、スクリーン版の4隅が略直角の状態であっても加圧で潰れてRが付いて略円弧状の形状なる。一方シール材17の内周に沿って隣接配置されている引き回し電極45、54は印刷形成した後、加圧されないため隅部が略直角の状態を保っている。図12は図11におけるA部の部分拡大平面図である。また、図13(a)は図12のC−C断面図、図13(b)は図12のD−D断面図である。図12に示すように、シール材17と引き回し電極45との互いの隅部を結ぶ方向に対向する間隔、即ち、隅部におけるシール材17の内周とシール材17の内周に沿って隣接配置されている引き回し電極45の外周との間隔aの値が、シール材17と引き回し電極45との横方向に対向する間隔bの値より小さくなる。
【0017】
この結果、図13(a)に示す基板51の隅部における傾斜角Pの値が図13(b)に示す基板51の横方向における斜面の傾斜角Qの値より大きくなる。他の隅部においても同様であり、この結果、図14に示すように略角錐台形状の上基板51の4辺に対応する斜面51a、51b、51c、51dが交差する4箇所の隅部に直線上の角部16a、16b、16c、16dが出現する。図14(b)は図14(a)におけるE−E断面を示す。このような角部16a、16b、16c、16dでは内側への変形強度が上昇し、上基板51の可撓性が低下するため、この4隅の角部16a、16b、16c、16d付近がタッチパネルとして機能しなくなり、有効エリアが減少するという問題があった。
【0018】
(発明の目的)
本発明の目的は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、引き回し電極の高さ方向の凹凸や、うねりを無くし引き回し電極の高さを一定とすることによって上基板の凸状湾曲を均一な形状とし、凸状に湾曲した上基板の頂点をほぼ直線状に保ち、直線性(リニアリティ)や押圧荷重の均一化を図ることにある。
また、上基板の4辺に対応する斜面が交差する4箇所の隅部に発生する直線上の角部をなくし、なだらかな曲面に形成することによって、上基板の4箇所の隅部の押圧荷重の上昇を緩和し、隅部における有効エリアの拡大を図ることにある。
また、ニュートンリング環の発生を防止し耐久性に優れるタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するための本発明のタッチパネルは、透明電極と引き回し電極とを設けた上下一対の基板を所定の隙間を持たせて対向配置し、絶縁性のシール材で上下基板の外周域を周回して接合してなるタッチパネルにおいて、引き回し電極は透明電極の一辺に接触している電極部と、透明電極と離間しシール材の内周に沿って配置される配線部と、該配線部と電極部、または配線部同士を電気的に接続する繋ぎ電極部とを有し、少なくとも電極部と、該電極部の外側に配置される配線部またはシール材との縦方向または横方向に対向する間隔とがほぼ同一で、電極部が第1のスペーサ部材を有し、配線部は第1のスペーサ部材より粒径の小さい第2のスペーサ部材を有し、シール材が第2のスペーサ部材とほぼ等しい粒径のシール材内スペーサ部材を有することを特徴とする。
【0020】
また、第1のスペーサ部材の粒径と第2のスペーサ部材の粒径との差が1〜5μmの範囲に設定されていることを特徴とする。
【0021】
また、引き回し電極の電極部に含有されている第1のスペーサ部材および引き回し電極の配線部に含有されている第2のスペーサ部材の含有率が10〜20容量%の範囲に設定されていることを特徴とする。
【0022】
また、引き回し電極の電極部に含有されている第1のスペーサ部材および引き回し電極の配線部に含有されている第2のスペーサ部材が金、銀、銅などの導電被膜が形成された導電粒からなることを特徴とする。
【0023】
また、シール材は内周の4隅が略直角に形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、引き回し電極の繋ぎ電極の高さの値は前記シール材の高さより小さい値に設定されていることを特徴とする。
【0025】
また、上基板の傾斜は1mm当たり0.0015〜0.006mmの傾斜であることを特徴とする。
【0026】
また、上基板はガラス板からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明のタッチパネルは透明電極の一辺に接触している引き回し電極の電極部に第1のスペーサ部材を混入し、引き回し電極の配線部に第1のスペーサ部材より小さい粒径の第2のスペーサ部材を混入することによって引き回し電極の高さ方向の凹凸や、うねりを無くし引き回し電極の電極部、配線部のそれぞれの高さを一定とすることができる。また、引き回し電極の電極部と、電極部の外側に隣接して配置される配線部またはシール材との縦方向または横方向に対向する間隔とがほぼ同一となるように構成すると共に、シール剤に混入するシール材内スペーサ部材の粒径と引き回し電極の配線部に混入される第2スペーサ部材の粒径とをほぼ等しい値に設定することで、凸状に湾曲した上基板の頂点がほぼ直線状になり、直線性(リニアリティ)の誤差を小さくすると共に押圧荷重を均一化することができる。
【0028】
また、上下基板の隅部近傍に引き回し電極の電極部と配線部、及び配線部同士を電気的に接続する繋ぎ電極部を設け、この繋ぎ電極部にはスペーサ部材を混入せず、その高さを第2のスペーサ部材より低い値に設定することによって、上基板の4辺に対応する湾曲面が交差する4箇所の隅部に発生する直線状の角部をなくし、なだらかな曲面に形成することができる。これによって、上基板の4箇所の隅部の押圧荷重の上昇を緩和し、隅部の有効エリアを拡大することができる。
この結果、アナログ入力がより正確に出来、操作性を向上させることができる。さらに、ニュートンリング環の発生を防止し、耐久性に優れたタッチパネルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図1から図9に基づいて本発明の実施形態におけるタッチパネルについて説明する。図1は本実施形態におけるタッチパネルを示す模式図で、図1(a)は上基板側から透視した平面図、図1(b)は図1(a)のF−F断面図である。また、図2、図3は図1におけるA部の部分拡大図、図4は図1におけるB部の部分拡大図、図5は図1におけるC部の部分拡大図である。また、図6は下基板の平面図、図7は上基板の平面図、図8は下基板の引き回し電極の部分断面図、図9は上基板の引き回し電極の部分断面図である。本実施形態におけるタッチパネルはシール材と引き回し電極の形状、配置に特徴があり、その他の基本的な構成は従来技術と類似している。したがって従来技術と同様の構成要素については同一番号を付与し説明を省略する。
【0030】
図1に示すように、タッチパネル40は、上基板31と下基板41とを透明電極3、13同士が互いに対向するようにシール剤27を介して配置し、上下基板31、41の周辺部が一定間隔を保つように、シール剤27で貼着され一体化されている。シール剤27は、エポキシ樹脂接着剤等が選択され、スクリーン印刷等の方法で幅0.5mm、厚さ30μmで印刷され、上下基板の張り合わせ工程において焼成され幅1.5mm、厚さ10μmに形成される。又、このシール剤27には、シール材内スペーサ部材22として粒径が10μmの大きさのプラスチックボールが分散されており、このスペーサ部材22もって上基板31と下基板41との周辺部を10μmの間隔に保持する役目を成している。
【0031】
下基板41は図1、図6に示すように厚みが1.1mmのソーダガラス板からなり、このソーダガラス板に透明電極3と、透明電極3の対向する両辺にそれぞれ電気的に接続される引き回し電極24、25とが形成されている。引き回し電極24、25はシール剤27の内周に沿うように配置され、その一端が下基板41の一辺においてまとめられ、FPC19の端部と接続されている。透明電極3は、厚みが50〜4000オングストローム程度のITO膜をスパッタリング或いはCVD等により成膜し、エッチング加工によりパターン形成される。
【0032】
更に、透明電極3の表面上には、ドットスペーサ48がマトリックス状に配列されている。ドットスペーサ48は、大きさが30〜40μm程度の円形の形状で、基板からの高さが3〜5μm程度に設定されている。更に、ドットスペーサ48同士の中心間距離は4〜5mm程度に設定されている。このドットスペーサ48はエポキシ樹脂系の紫外線硬化型樹脂をマトリックス状に印刷し、紫外線を照射して硬化させ形成される。さらに、下基板41のFPC19の取付部付近には後述する上基板31の引き回し電極34、35に導通接続を行うため接続電極46、47が形成されている。
【0033】
引き回し電極25は、透明電極3の一方の辺に接触している電極部25aと、透明電極3と離間しシール材27の内周に沿って配置される配線部25b、25eと、FPC19に接続するための配線部25fと、電極部25aと配線部25bとを電気的に接続する繋ぎ電極部25c、配線部25bと配線部25eとを電気的に接続する繋ぎ電極部25dとを有している。この繋ぎ電極部25c、25dは上下基板31、41の隅部近傍に配置される。また、引き回し電極24は、透明電極3の一方の辺に対向する辺に接触している電極部24aと、FPC19に接続するための配線部24bとを有する。
【0034】
引き回し電極24、25は銀粉等の導電性金属粉を熱硬化性のエポキシ樹脂に混入したインクからなる銀ペースト膜をスクリーン印刷法等により印刷し、130℃で約60分焼成して形成される。この引き回し電極25の電極部25aには図8(a)に示すようにガラス、樹脂のボール、ファイバーからなり粒径12μmの大きさの第1のスペーサ部材32が混入添加されており、この第1のスペーサ部材32をもって電極部25aを12μmの高さで一定に保つ役目を成している。また、電極部25aの銀ペースト膜部分29aは焼成した時に高さにばらつきが生じるため、焼成した状態における銀ペースト膜部分29aの高さcの値を第1のスペーサ部材32の高さnの値の1/2〜2/3の範囲となるようにスクリーン印刷時の銀ペースト膜部分の高さを調整する。本実施形態においては、焼成した状態における銀ペースト膜部分29aの高さcの値を6〜8μmの範囲に形成した。また、引き回し電極24の電極部24aは、図示していないが電極部25aと同様に、第1のスペーサ部材32が混入添加され12μmの一定の高さに形成される。
【0035】
また、引き回し電極25の配線部25bには図8(b)に示すようにガラス、樹脂のボール、ファイバーからなり粒径10μmの大きさの第2のスペーサ部材23が混入添加されており、この第2のスペーサ部材23をもって配線部25bを10μmの高さで一定に保つ役目を成している。また、配線部25bの銀ペースト膜部分29bは焼成した時に高さにばらつきが生じるため、焼成した状態における銀ペースト膜部分29bの高さdの値を第2のスペーサ部材23の高さmの値の1/2〜2/3の範囲となるようにスクリーン印刷時の銀ペースト膜部分の高さを調整する。本実施形態においては、焼成した状態における銀ペースト膜部分29bの高さdの値が5〜6μmの範囲となるように形成した。また、電極部25eは、図示していないが電極部25bと同様に、第2のスペーサ部材23が混入添加され10μmの一定の高さに形成される。
【0036】
尚、FPC19に接続するための配線部24b、25fには第2のスペーサ部材23を混入せず、高さ5〜6μmの範囲に形成した。また、繋ぎ電極部25b、25dにはスペーサ部材23を混入せず、シール材27の高さ10μmより低い高さに設定され本実施例においては5〜6μmの範囲に形成した。
【0037】
次に引き回し電極24、25の形成方法について説明する。まず、繋ぎ電極部25c、25d、配線部24b、25f、接続電極46、47の銀ペースト膜を所定のパターンでスクリーン印刷法等により印刷形成する。この時、繋ぎ電極部25c、25dの両端部は対応する電極部または配線部と重なるように延長配置される。この銀ペースト膜は前述したように銀粉等の導電性金属粉を熱硬化性のエポキシ樹脂に混入したインクからなり、スペーサ部材は混入されていない。
【0038】
次に配線部25b、25eの銀ペースト膜を所定のパターンにスクリーン印刷法等により印刷形成する。この時、配線部25bの両端部が繋ぎ電極部25c、25dの端部にそれぞれ重なるように印刷する。同様に、配線部25eの両端部が繋ぎ電極部25d、配線部25fの端部にそれぞれ重なるように印刷形成する。この重なる部分の大きさは電気的に接続できる大きさに設定する。この銀ペースト膜には前述したように粒径10μmの第2のスペーサ部材が混入添加されている。
【0039】
次に、電極部24a、25aの銀ペースト膜を所定のパターンにスクリーン印刷法等により印刷形成する。この時、電極部25aの一端が繋ぎ電極部25cの端部と重なるように印刷する。また、電極部24aの一部に配線部24bの端部が重なるように印刷形成する。この重なる部分の大きさは前述のように電気的に接続できる大きさに設定する。この銀ペースト膜には前述したように粒径12μmの第1のスペーサ部材が混入添加されている。その後、130℃で約60分焼成して、引き回し電極24、25が形成される。
【0040】
上基板31は図1、図7に示すように厚みが0.2mmで材質がホウケイ酸ガラス等のマイクロガラス板からなり、透明電極13が形成されており、この透明電極13の対向する両辺のそれぞれに接続する引き回し電極34、35が形成されている。この引き回し電極34、35の一端は下基板41のFPC19の取付部付近に設ける接続電極46、47に導通接続されるように延長配置されている。
【0041】
このき回し電極34、35は、透明電極13の一方の辺に接触している電極部34aと、透明電極13と離間しシール材27の内周に沿って配置される配線部34b、35bと、電極部34aと配線部34bとを電気的に接続する繋ぎ電極部34cと、電極部35aと配線部35bとを電気的に接続する繋ぎ電極部35cとを有している。
【0042】
引き回し電極34、35は前述の下基板41の引き回し電極24、25と同様にスクリーン印刷法等により印刷し、焼成して形成される。この引き回し電極35の電極部35aには図9(a)に示すようにガラス、樹脂のボール、ファイバーからなり粒径12μmの大きさの第1のスペーサ部材32が混入添加されており、この第1のスペーサ部材32をもって電極部35aを12μmの高さで一定に保つ役目を成している。また、電極部35aの銀ペースト膜部分39aは焼成した時に高さにばらつきが生じるため、焼成した状態における銀ペースト膜部分39aの高さcの値を第1のスペーサ部材32の高さnの値の1/2〜2/3の範囲となるようにスクリーン印刷時の銀ペースト膜部分の高さを調整する。本実施形態においては、焼成した状態における銀ペースト膜部分39aの高さcの値を6〜8μmの範囲に形成した。また、引き回し電極34の電極部34aは、図示していないが電極部35aと同様に、第1のスペーサ部材32が混入添加され12μmの一定の高さに形成される。
【0043】
また、引き回し電極35の配線部35bには図9(b)に示すようにガラス、樹脂のボール、ファイバーからなり粒径10μmの大きさの第2のスペーサ部材23が混入添加されており、この第2のスペーサ部材23をもって配線部35bを10μmの高さで一定に保つ役目を成している。また、配線部35bの銀ペースト膜部分39bは焼成した時に高さにばらつきが生じるため、焼成した状態における銀ペースト膜部分39bの高さdの値を第2のスペーサ部材23の高さmの値の1/2〜2/3の範囲となるようにスクリーン印刷時の銀ペースト膜部分の高さを調整する。本実施形態においては、焼成した状態における銀ペースト膜部分39bの高さdの値が5〜6μmの範囲となるように形成した。また、電極部34bは、図示していないが電極部35bと同様に、第2のスペーサ部材23が混入添加され10μmの一定の高さに形成される。
【0044】
尚、繋ぎ電極部34c、35cにはスペーサ部材23を混入せず、シール材27の高さ10μmより低い高さに設定される。本実施例において5〜6μmの範囲に形成した。
【0045】
引き回し電極34、35の形成方法は、前述の引き回し電極24、25の場合と同様であるが、簡単に説明する。まず、繋ぎ電極部34c、35cの銀ペースト膜を所定のパターンでスクリーン印刷法等により印刷形成する。この銀ペースト膜にはスペーサ部材は混入されていない。
【0046】
次に配線部34b、35bの銀ペースト膜を所定のパターンにスクリーン印刷法等により印刷形成する。この時、配線部34b、35bの一端が繋ぎ電極部34c、35cのそれぞれの一端と重なるように印刷する。この重なる部分の大きさは電気的に接続できる大きさに設定する。この銀ペースト膜には前述したように粒径10μmの第2のスペーサ部材が混入添加されている。
【0047】
次に、電極部34a、35aの銀ペースト膜を所定のパターンにスクリーン印刷法等により印刷する。この時、電極部34a、35aの一端が繋ぎ電極部34c、35cのそれぞれの他端と重なるように印刷する。この重なる部分の大きさは電気的に接続できる大きさに設定する。この銀ペースト膜には前述したように粒径12μmの第1のスペーサ部材が混入添加されている。その後、130℃で約60分焼成して、引き回し電極34、35が形成される。
【0048】
上下基板31、41の引き回し電極の電極部34a、35a、24a、25aに混入添加する第1のスペーサ部材32の添加割合は10〜20容量%の範囲が好ましい。また、上下基板31、41の引き回し電極の配線部34b、35b、25b、25eに混入添加する第1のスペーサ部材32の添加割合も同様に10〜20容量%の範囲が好ましく、多すぎると上下基板31、41の引き回し電極34、35、24、25の導電性に支障が生じるため好ましくない。
【0049】
また、第1、第2のスペーサ部材32、23として金、銀、銅などの導電被膜が形成された導電ボールを用いると上下基板31、41の引き回し電極34、35、24、25の導電信頼性の面でより好ましい。
【0050】
この上下基板31、41は上基板31の引き回し電極34、35及び下基板41の引き回し電極24、25が方形配置となるように対向配置されシール剤27で貼着されている。シール材27には粒径が10μmのシール材内スペーサ部材22が混入され上下基板31、41の周辺部が10μmの一定間隔を保つように形成される。また、上下基板31、41の引き回し電極の電極部34a、35a、24a、25aには粒径が12μmの第1のスペーサ部材32が混入され、その高さはシール材27の高さ10μmより大きく12μmの一定の高さに形成されている。また、引き回し電極の電極部24aの外側に配置される配線部35b、引き回し電極の電極部35aの外側に配置される配線部25b、配線部35bの外側に配置される配線部25eには粒径が10μmの第2のスペーサ部材23が混入され高さ10μmの一定の高さに形成されている。
【0051】
また、上基板31の引き回し電極34の電極部34aと電極部34aの外側に配置されるシール材27との横方向に対向する間隔b、下基板41の引き回し電極25の電極部25aと電極部25aの外側に配置されるシール材27との縦方向に対向する間隔b、上基板31の引き回し電極35の電極部35aと電極部35aの外側に配置される下基板41の引き回し電極25の配線部25bとの横方向に対向する間隔b、及び下基板41の引き回し電極24の電極部24aと電極部24aの外側に配置される上基板31の引き回し電極34の配線部34bとの縦方向に対向する間隔bがほぼ同一となるように配置される。
【0052】
さらに引き回し電極25、34の隅部には繋ぎ電極25c、25d、34cがシール材27より低い高さに形成されている。また、シール材27は内周の4隅が略直角に形成されている。このように内周の隅部27aを略直角に形成するには、エポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷等の方法で下基板41の周囲に沿って印刷形成する時、エポキシ樹脂接着剤の印刷パターンの内周の隅部に凹部を設ける。この凹部の大きさを適正に設定することにより、上下基板31、41を貼合わせる工程において加熱、加圧することによってエポキシ樹脂接着剤が押しつぶされ凹部にエポキシ樹脂接着剤が流れ込む。これによってシール材27の内周の隅部27aが略直角に形成される。
【0053】
このように、シール材27の内周の隅部27aを略直角に形成し、引き回し電極25、34の隅部に設ける繋ぎ電極25c、25d、34cをシール材27より低い高さに形成することによって、上基板31の隅部における湾曲形状に関係するシール材27の内周と引き回し電極25、34の電極部との間隔の値を電極部とシール材27または配線部との縦方向または横方向に対向する間隔より大きくすることができる。
【0054】
この結果、図1(b)に示すように上下基板31、41を貼合わせたときに上基板31は外側に湾曲し全周に亘って均一な形状になる。この上下基板の貼り合わせ方法は、上基板31の上面外周部に額縁状の合い紙を載置して押圧する。これは合い紙の弾力性を利用するものであるが従来技術と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0055】
次に貼り合わされた上基板の湾曲形状について図2、図3、図4、図5を用いて説明する。図2(a)は図1におけるA部の部分拡大平面図、図2(b)は図2(a)のG−G断面図、図3(a)は図2(a)のJ−J断面図、図3(b)は図2(a)のH−H断面図である。また、図4は図1におけるB部の部分拡大平面図、図5は図1におけるC部の部分拡大平面図である。
【0056】
図2(a)に示すように図1におけるA部においては基板の一方の辺(図の上辺)でシール材27と引き回し電極25の電極部25aとが縦方向の間隔bで配置されている。この一方の辺における上基板31の湾曲形状は、図2(b)に示すように引き回し電極25の電極部25aとシール材27との対向する間隔bと、電極部25aの高さとシール材27の高さとの差、即ち、第1のスペーサ部材32の粒径nとシール材内スペーサ部材22の粒径mとの差tの値によって決められる。したがって、間隔bと、差tとの値を適正に設定することによって上基板31における湾曲形状の適正な傾斜角Qの値を得ることができる。
【0057】
また、図2(a)における基板の他方の辺(図の右辺)では引き回し電極35の電極部35aの外側に引き回し電極25の配線部25bが横方向の間隔bで配置されている。さらに配線部25bの外側にシール材27が配置されている。この他方の辺における上基板31の湾曲形状は、図3(a)に示すように引き回し電極35の電極部35aと引き回し電極25の配線部25bとの対向する間隔bと、電極部35aの高さと配線部25bの高さとの差、即ち、第1のスペーサ部材32の粒径nと第2のスペーサ部材3の粒径mとの差tの値によって決められる。
【0058】
したがって、この間隔bと、差tとの値を上下基板の全周に亘って一定に保持することによって上基板31の凸状の湾曲形状の傾斜角Qの値をほぼ一定とすることができ、均一な湾曲形状を得ることができる。尚、第1のスペーサ部材32の粒径nと第2のスペーサ部材23の粒径mとの差t、及び第1のスペーサ部材32の粒径nとシール材内スペーサ部材22の粒径mとの差tの値は1〜5μmの範囲に設定することが好ましく本実施形態においては2μmに設定した。
【0059】
また図2(a)における基板の隅部ではシール材27の内周の隅部27aが略直角に形成され、シール材27の内周に沿って隣接配置されている引き回し電極25の繋ぎ電極部25cが略円弧状に形成されている。さらに繋ぎ電極部25cの内側に引き回し電極35の電極部35aの端部が配置されている。この隅部においては図3(b)に示すように繋ぎ電極部25cの高さeの値は5〜6μmでとシール材27の高さ、即ち、シール材内スペーサ部材22の粒径mの値10μmより小さい値に設定されている。このためこの電極部35aの端部とシール材27の隅部27aとの間隔aの値は、引き回し電極35の電極部35aと引き回し電極25の配線部25bとの横方向に対向する間隔b、及びシール材27と引き回し電極25の電極部25aとの縦方向に対向する間隔bの値より大きくなる。
【0060】
基板31の隅部における傾斜角Pの値は、引き回し電極35の電極部35aの端部とシール材27の内周の隅部27aとの対向する間隔aと、電極部35aの高さとシール材27の高さとの差、即ち、第1のスペーサ部材32の粒径nとシール材内スペーサ部材22の粒径mとの差tの値によって決められる。したがって、基板31の隅部における傾斜角Pの値が図2(b)、図3(a)に示す基板31の縦方向及び横方向における湾曲面の傾斜角Qの値より小さくなる。この結果、略角錐台形状に湾曲した上基板31の2辺に対応する斜面同士が交差する斜面隅部に発生する直線上の角部をなくし、なだらかな曲面に形成することができる。
【0061】
尚、基板31の隅部における傾斜角P及び基板31の横方向、縦方向における湾曲面の傾斜角Qの値は、1mm当たり0.0015〜0.006mmの傾斜の範囲に設定することが好ましい。この傾斜角Qの値が0.0015mmより小さいと、ニュートンリング環が視認されるようになり好ましくない。また、0.006mmより大きいと上基板31の湾曲の高さが大きくなり強い押圧力が必要となる。従って傾斜角Qの値を上記範囲とすることで、指に殆ど力の負担を欠けずタッチパネルを操作することができる。
【0062】
次に図1のB部について説明する。図4に示すように基板B部の隅部ではシール材27の内周の隅部27aが略直角に形成され、シール材27の内周に沿って隣接配置されている引き回し電極25、34の電極部25a、34aのそれぞれの端部が円弧状に形成されている。これによってシール材27の内周の隅部27aと電極部25a、34aの端部外周との間隔aの値が、シール材27と電極部34aとの横方向に対向する間隔b、及びシール材27と電極部25aとの縦方向に対向する間隔bの値より大きくなる。このため前述のA部と同様に基板31のB部の隅部における傾斜角の値が基板31の横方向及び縦方向における湾曲面の傾斜角の値より小さくなる。この結果、略角錐台形状に湾曲した上基板31の2辺に対応する斜面同士が交差する斜面隅部に発生する直線上の角部をなくし、なだらかな曲面に形成することができる。
【0063】
図1におけるA部と対角に位置する隅部においては、A部の引き回し電極25に対して引き回し電極34が配置されている点が異なるだけで他は同様であり説明を省略するが、A部と同様に上基板31の2辺に対応する斜面が交差する斜面隅部をなだらかな曲面に形成することができる。
【0064】
次に図1のC部について説明する。図5に示すように基板のC部の隅部ではシール材27の内周の隅部27aが略直角に形成されている。このシール材27の内周に沿って隣接配置されている引き回し電極25のの繋ぎ電極部25dが略円弧状に形成され、繋ぎ電極部25dの内側に引き回し電極35の繋ぎ電極部35cが略円弧状に形成されている。さらに繋ぎ電極部35cの内側に引き回し電極24の電極部24aの端部が略円弧状に形成されている。繋ぎ電極25d、35cの高さは5〜6μmとシール材27の高さ10μmより小さい値に設定されている。このため、電極部24aの端部とシール材27の隅部27aとの間隔aの値が、引き回し電極35の電極部35aと引き回し電極25の配線部25bとの横方向に対向する間隔b、及び引き回し電極24の電極部24aと引き回し電極35の配線部35bとの縦方向に対向する間隔bの値より大きくなる。これによって、前述のA部と同様にC部の隅部における傾斜角の値が基板31の横方向及び縦方向における湾曲面の傾斜角の値より小さくなる。この結果、前述のA部と同様に略角錐台形状に湾曲した上基板31の2辺に対応する斜面同士が交差する隅部をなだらかな曲面に形成することができる。
【0065】
以上のように本実施形態におけるタッチパネル40は、引き回し電極の電極部24a、25a、34a、35aに第1のスペーサ部材32を混入し、引き回し電極の配線部25b、25e、34b、35bに第2のスペーサ部材23を混入することによって引き回し電極の高さ方向の凹凸や、うねりを無くし引き回し電極の電極部、配線部のそれぞれの高さを一定とすることができる。
【0066】
さらに、引き回し電極の電極部24a、25a、34a、35aと、電極部35a、24aの外側に隣接して配置される配線部25b、34b、及び電極部25a、34aの外側に隣接して配置されるシール材27との縦方向または横方向に対向する間隔bとがほぼ同一となるように構成すると共に、シール剤27に混入するシール材内スペーサ部材22の粒径と引き回し電極の配線部に混入される第2スペーサ部材23の粒径とをほぼ等しい値に設定する。このように引き回し電極の電極部と電極部の外側に隣接して配置される配線部またはシール材との間隔を略全周に亘ってほぼ同一に設定すると共に、電極部24a、25a、34a、35aの高さを12μmで一定とし、電極部の外側に隣接して配置される配線部25b、34b、35b及びシール材27の高さを10μmと一定に保持することによって、上基板31の凸状湾曲が均一な形状となり凸状に湾曲した上基板31の頂点がほぼ直線状となり、直線性(リニアリティ)の誤差を小さくすると共に押圧荷重を均一化することができる。
【0067】
また、上下基板31、41の隅部近傍に引き回し電極の電極部と配線部、及び配線部同士を電気的に接続する繋ぎ電極部25c、25d、34c、35cを設け、この繋ぎ電極部にはスペーサ部材を混入せず、その高さを5〜6μmとし、第2のスペーサ部材23の高さ10μmより低い値に設定することによって、上基板31の隅部における傾斜角の値が基板31の横方向及び縦方向における湾曲面の傾斜角の値より小さくなる。これによって、上基板31の4辺に対応する湾曲面が交差する4箇所の隅部に発生する直線状の角部をなくし、上基板31の湾曲形状をなだらかな曲面に形成することができる。この結果、上基板31の4箇所の隅部の押圧荷重の上昇を緩和し、隅部の有効エリアを拡大することができる。また、ニュートンリング環の発生を防止し耐久性に優れたタッチパネルを実現することができる。
【0068】
尚、本実施形態においては上基板にマイクロガラス板を使用した例で説明したが、これに限定されるものではなく他のガラス板、透明樹脂板を使用する場合においても適応することができる。
【0069】
また、引き回し電極の隅部に配置される繋ぎ電極の形状については略円弧状の形状を例に説明したが、これ限定されず略直角の形状に形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態におけるタッチパネルを示す模式図で、図1(a)は上基板側から透視した平面図、図1(b)は図1(a)のF−F断面図である。
【図2】図1におけるA部の部分拡大図で、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のG−G断面図はである。
【図3】図2(a)における断面図で、図3(a)は図2(a)のJ−J断面図、図3(b)は図2(a)のH−H断面図である。
【図4】図1におけるB部の部分拡大平面図である。
【図5】図1におけるC部の部分拡大平面図である。
【図6】本発明の実施形態における下基板を示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態における上基板を示す平面図である。
【図8】本発明の実施形態における下基板の引き回し電極の部分拡大断面図である。
【図9】本発明の実施形態における上基板の引き回し電極の部分拡大断面図である。
【図10】第1の従来技術におけるタッチパネルを示す模式図で、図10(a)は上基板側から透視した平面図、図10(b)は図10(a)のA−A断面図、図10(c)は図10(a)のB−B断面図である。
【図11】第2の従来技術におけるタッチパネルを示す模式図で、図11(a)は上基板側から透視した平面図、図11(b)は図11(a)のX−X断面図である。
【図12】図11におけるA部を示す部分拡大平面図である。
【図13】図12におけるの断面図を示し、図13(a)は図12のC−C断面図、図13(b)は図12のD−D断面図である。
【図14】第2の従来技術におけるタッチパネルを示す模式図で、図14(a)は平面図、図14(b)は図14(a)のE−E断面図である。
【図15】第2の従来技術における上基板の湾曲形状の傾斜角を説明するための図である。
【図16】第2の従来技術におけるタッチパネルのデータ入力時の上基板の変形状態を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
3、13 透明電極
19 FPC
22 シール材内スペーサ部材
23 第2のスペーサ部材
24、25 引き回し電極
24a、25a 電極部
24b、25b、25e、25f 配線部
25c、25d 繋ぎ電極部
27 シール剤
27a シール材内周の隅部
29a、29b 銀ペースト膜部分
31 上基板
32 第1のスペーサ部材
34、35 引き回し電極
34a、35a 電極部
34b、35b 配線部
34c、35c 繋ぎ電極部
39a、39b 銀ペースト膜部分
40、50 タッチパネル
41 下基板
46、47 接続電極
48 ドットスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極と引き回し電極とを設けた上下一対の基板を所定の隙間を持たせて対向配置し、絶縁性のシール材で前記上下基板の外周域を周回して接合してなるタッチパネルにおいて、
前記引き回し電極は前記透明電極の一辺に接触している電極部と、前記透明電極と離間し前記シール材の内周に沿って配置される配線部と、該配線部と前記電極部、または配線部同士を電気的に接続する繋ぎ電極部とを有し、少なくとも前記電極部と、該電極部の外側に配置される前記配線部または前記シール材との縦方向または横方向に対向する間隔とがほぼ同一で、前記電極部は第1のスペーサ部材を有し、前記配線部は前記第1のスペーサ部材より粒径の小さい第2のスペーサ部材を有し、前記シール材が前記第2のスペーサ部材とほぼ等しい粒径のシール材内スペーサ部材を有することを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記第1のスペーサ部材の粒径と前記第2のスペーサ部材の粒径との差が1〜5μmの範囲に設定されていることを特徴とする請求項lに記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記引き回し電極の電極部に含有されている第1のスペーサ部材および前記引き回し電極の配線部に含有されている第2のスペーサ部材の含有率が10〜20容量%の範囲に設定されていることを特徴とする請求項lまたは請求項2記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記引き回し電極の電極部に含有されている第1のスペーサ部材および前記引き回し電極の配線部に含有されている第2のスペーサ部材が金、銀、銅などの導電被膜が形成された導電粒からなることを特徴とする請求項lから請求項3のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記シール材は内周の4隅が略直角に形成されていることを特徴とする請求項l記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記引き回し電極の繋ぎ電極の高さの値は前記シール材の高さより小さい値に設定されていることを特徴とする請求項1記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記上基板の傾斜は1mm当たり0.0015〜0.006mmの傾斜であることを特徴とする請求項1記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記上基板はガラス板からなることを特徴とする請求項1記載のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−48548(P2006−48548A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231615(P2004−231615)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】