説明

タッチパネル

【課題】絶縁信頼性を高めるとともに、組立作業を簡素化した上で高い外観性を実現することができるプロジェクテッドキャパシティブ方式のタッチパネルを提供すること。
【解決手段】本発明によるプロジェクテッドキャパシティブ方式のタッチパネル1は、一対の透明基材2、3と、一対の透明基材の一方2と他方3とを隔てる粘着材4と、一対の透明基材2、3の互いに対向する面に印刷された透明導電パターン5とを有するとともに、粘着剤4は透明粒子12を含み、透明粒子12は樹脂粒子又はガラス粒子であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、携帯電話、電子手帳、PDA(Personal Digital Assistance)等のモバイル用途の電子機器に用いられるプロジェクテッドキャパシティブのタッチパネルに適用されて好適な構造であって、絶縁信頼性の向上と見栄えの向上を図ることができる構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクテッドキャパシティブタイプのタッチパネルにおいて電極パターンを対向させて貼り付ける、例えば株式会社DMCの投影型静電容量方式タッチパネルEXCシリーズ等の構成がある。その構成は基材がガラスであり、電極間は接着剤又は粘着剤によって貼り合わされている。
【0003】
また、基材上にパターンニングされた電極パターンについてユーザから視た場合に、ダイヤパターン状の電極間の隙間により構成されるエッジ又はラインを判別しにくくして見栄えを向上することは、電極パターンが存在する基材側又は電極パターン自身にダミーパターンを設けて、隙間を小さくすることが例えば特許文献1において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−2958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、対向する電極間に接着剤又は粘着剤のみしか介在しない場合には、対向する電極相互間の絶縁性の確保が困難となり絶縁信頼性が低下するという問題が生じる。また、上述したような見栄え向上のためのダミーパターンを設けることは、貼り合わせにおける位置精度の向上が必要となり、組立方法を含む組立作業の煩雑化、複雑化を招くという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、絶縁信頼性を高めるとともに、組立作業を簡素化した上で高い外観性を実現することができるプロジェクテッドキャパシティブ方式のタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するため、本発明に係るタッチパネルは、
一対の透明基材と、
前記一対の透明基材の一方と他方とを隔てる粘着材と、
前記一対の透明基材の互いに対向する面に印刷された透明導電パターンと、を有するとともに、
前記粘着剤は透明基板を含み、当該透明基板は樹脂基材又はガラス基材であることを特徴とする。
【0008】
あるいは、本発明に係るタッチパネルは、
一対の透明基材と、
前記一対の透明基材の一方と他方とを隔てる粘着材と、
前記一対の透明基材の互いに対向する面に印刷された透明導電パターンと、
を有するとともに、前記粘着剤は透明粒子を含み、当該透明粒子は樹脂粒子又はガラス粒子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタッチパネルによれば、絶縁信頼性を高めるとともに、組立作業を簡素化した上で高い外観性を実現することができるプロジェクテッドキャパシティブ方式のタッチパネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1のタッチパネル1の動作原理を示す模式図である。
【図2】実施例1のタッチパネル1の一実施形態を示す模式図である。
【図3】実施例1のタッチパネル1の一実施形態を示す模式図である。
【図4】実施例1のタッチパネル1の一実施形態における透明導電パターンの配置態様を示す模式図である。
【図5】実施例2のタッチパネル11の一実施形態を示す模式図である。
【図6】実施例3のタッチパネル21の一実施形態を示す模式図である。
【図7】実施例4のタッチパネル31の一実施形態を示す模式図である。
【図8】実施例5のタッチパネル41の一実施形態を示す模式図である。
【図9】実施例5のタッチパネル41の一実施形態を示す模式図である。
【図10】実施例5のタッチパネル41の一実施形態を示す模式図である。
【図11】実施例6のタッチパネル51の一実施形態を示す模式図である。
【図12】実施例7のタッチパネル61の一実施形態を示す模式図である。
【図13】実施例7のタッチパネル61の一実施形態を示す模式図である。
【図14】実施例8のタッチパネル61の一実施形態を示す模式図である。
【図15】実施例8のタッチパネル61の一実施形態を示す模式図である。
【図16】実施例9のタッチパネル61の一実施形態を示す模式図である。
【図17】実施例10のタッチパネル61の一実施形態を示す模式図である。
【図18】実施例11のタッチパネル81の一実施形態を示す模式図である。
【図19】実施例11のタッチパネル91の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
本実施例1のタッチパネル1は、図1に示すように一般的なプロジェクテッドキャパシティブタイプのタッチパネルとしての基本構成を具備しており、ユーザの指の位置を検出するための検出態様と動作原理は以下の通りである。
【0013】
タッチパネル1は、図1上図に示すように、縦に延在される複数の電極102と、横に延在される複数の電極103を内部に有しており、電極102、103に順次交流の駆動電圧を印加するコントローラ104が、電極102、103に接続されている。
【0014】
タッチパネル1の上面に指が接近すると、縦横に延在される電極102、103間が導通するのではなく、図1中図に示すように、それぞれの電極102又は103と指との間の離隔距離が変化し、図1中下図に示すように、指が接近している電極の静電容量が増大することを、コントローラ104は、電圧変化に基づいて検出して指の座標を検出する。
【0015】
本実施例1のタッチパネル1のパネル構造は、図2の斜視図及び断面図に示す構成要素を含む。図2に示すように、タッチパネル1は、一対の長方形状の透明基材2、3と、一対の透明基材2、3の一方の透明基材2と他方の透明基材3とを隔てる粘着材4とを厚み方向に貼り合わせて有する。一対の透明基材の互いに対向する面には透明導電パターン5が印刷されている。透明基材2、3は例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等により構成される。なお、図1中においては、透明導電パターン5は一方の透明基材2に設置されたもののみを図示している。透明導電パターン5は、透明基材2、3上において縦横に延在されており、所謂ダイヤパターン形状を有している。
【0016】
透明導電パターン5は、透明基材2、3上にパターンニングされた銀ペーストパターン6に接続されており、透明基材3の銀ペーストパターン6は、フレキシブル基板7(例えばポリイミド材)の図2中左端部の端子に、直接的に接続される。透明基材2の銀ペーストパターン6は、フレキシブル基板7の端子に、例えば異方性導電体8(ACF及びACP:例えばタツタ電線(株)社製:熱可塑性異方導電性ボンディングペーストPCB−700)を介して接続される。なお、最表面側には予めHC層などをコーティングしたものを用いることも可能である。フレキシブル基板7の右方端は上述したコントローラ104に接続される。
【0017】
本実施例1のタッチパネル1は、図3の断面図に示す形態を有する。すなわち、タッチパネル1の含む粘着剤4は長方形状の透明基板9を厚み方向のほぼ中間に挟んで含み、厚み方向に二分割される。この透明基板9は樹脂基材又はガラス基材である。この透明基板9に用いられる樹脂基材は透明基材2、3と同様、PET、PC、PMMA等を用いることができる。なお、透明基板9の設置範囲は透明基材2、3の全体であっても、例えば全体から額縁部を除いた一部であってもよく、ヘイズ付与効果とコストダウンのトレードオフにより適宜決定される。ここで、額縁部とは図4に示すタッチパネル1の平面視において、例えば透明導電パターン5が存在しない縦横それぞれ所定の幅を有した外枠部分を指す。また、透明基板9の透明基材2、3に対向する両面にヘイズA/B(平行光線透過率A、拡散光線透過率B)を高くする光学層10が成膜されている。
【0018】
本実施例1のタッチパネル1によれば、透明基板9が絶縁体であることから、粘着剤4を隔てて対向する透明基材2上の透明導電パターン5と透明基材3上の透明導電パターン5との間の絶縁距離を確保して相互の電気的な絶縁性を高めることができる。また、透明基板9が粘着剤4とは屈折率が異なることを利用して、界面において散乱を積極的に発生させてヘイズを向上させて、ダイヤパターン状の透明導電パターン5相互間の隙間により構成されるエッジ又はラインを判別しにくくして見栄えを向上することができる。また、透明基板9を含むことにより光学層10の設置が容易となり、この光学層10によってもヘイズを向上させて、上述したエッジ又はラインを判別しにくくする効果をさらに高めることができる。また、主にヘイズを向上させ、透過性を低下させないため、例えばタッチパネルの背面側に位置するディスプレイの視認性はそのまま確保することができる。
【0019】
すなわち、本実施例1においては、従来技術のように、隣接する透明導電パターン5の間にダミーパターンを設けて、隙間を小さくする必要をなくして、貼り合わせにおける位置精度の確保を不要なものとして、組立方法を含む組立作業を簡素化することができる。従って、対向する透明導電パターン5相互間の絶縁性を確保して絶縁信頼性を高めるとともに、組立作業を簡素化した上で高い外観性を実現することができる。
【0020】
上述した実施例1においては、平板状の透明基板9を二の粘着剤4により厚み方向に挟み込む形態を採用しているが、透明基板9と透明粒子に置換することもできる。以下にそれについての実施例2について述べる。なお、実施例1に示した構成要素と同一又は類似する構成要素については同一の符号を付し、同一又は類似する構成要素と特徴事項に関して重複する説明は省略又は簡略化する。
【実施例2】
【0021】
図5の断面図に示すように、本実施例2のタッチパネル11においては、粘着剤4内に平均粒径3μm以下の粒状の透明粒子12(例えばガンツ化成(株)社製:ガンツパール(登録商標)GM-0205SやSI-020)例えば、練り込み等の手法により混入させる。透明粒子12の設置範囲についても、透明基材2、3の全体であっても、例えば全体から額縁部を除いた一部であってもよい。設置範囲は、ヘイズ付与効果とコストのトレードオフにより適宜決定される。また、粒径、粒径分布、含有率についてはヘイズ付与効果とコストのトレードオフとともに、タッチパネル11としての初期特性、耐久性、耐環境特性も考慮して適宜決定される。
【0022】
本実施例2のタッチパネル11によっても、実施例1と同様に、透明粒子12が絶縁体であることから、粘着剤4を隔てて対向する透明導電パターン5相互間の絶縁距離を確保して相互の電気的な絶縁性を高めることができる。また、透明粒子12が粘着剤4とは屈折率が異なること及び透明粒子12が球面状であって界面も球面状であることを利用して、界面において散乱を積極的に発生させてヘイズを向上させて、ダイヤパターン状の透明導電パターン5相互間の隙間により構成されるエッジ又はラインをユーザから視て判別しにくいものとして、製品としての見栄えを向上することができる。
【0023】
また、本実施例2においても実施例1と同様に、従来技術において例示されるように隣接する透明導電パターン5の間にダミーパターンを設けて、隙間を小さくする必要をなくすことができる。つまり、透明基材2、3及び粘着剤4相互間の貼り合わせにおける位置精度向上も不要なものとして、組立方法を含む組立作業の煩雑化、複雑化を招くことをなくすことができる。
【0024】
上述した実施例2においては、粘着剤4については単一層のものを使用しているが、以下のように複数層からなるものに置換することもできる。以下にそれについての実施例3について述べる。なお、実施例1及び2に示した構成要素と同一又は類似する構成要素については同一の符号を付し、同一又は類似する構成要素と特徴事項に関して重複する説明は省略又は簡略化する。
【実施例3】
【0025】
図6の断面図に示すように、本実施例3のタッチパネル21においては、粘着剤24について、高分子粘着層25と低分子粘着層26をそれぞれ少なくとも一層含む分子勾配を有するものであって、高分子粘着層25が透明粒子12を含むこととしている。この粘着剤24は例えば、共同技研化学株社製の分子勾配膜(登録商標)200Y30や200A30である。
【0026】
高分子粘着層25を構成する高分子粘着剤は一般的に凝集力が強く、ダイカット性(ビク型等での切り出しやすさ)に優れるが、接着力が弱く、フィルム曲げ等に追従しやすい反面、剥がれやすい性質を持つ。一方、低分子粘着層26を構成する低分子粘着剤は一般的に凝集力が弱く、ダイカット性は高くないが、接着力が強いという特性を有する。この粘着剤24は、高分子粘着剤の凝集力とフィルム曲げの追従性と低分子粘着剤の接着力を兼ね備えた特性を有している。
【0027】
本実施例3においては、低分子粘着剤を透明基材2、3に対向する側に配置し、高分子粘着剤つまり高分子粘着層25内に、透明粒子12を練り込み等の手法により含有している。これらのことにより、貼り合わせにおける接着力を弱めることなく、透明粒子12によるヘイズ付与効果により、透明導電パターン5のエッジ又はラインを目立たなくさせることができる。なお、透明粒子12については適宜有色であってもよい。
【0028】
なお、粘着剤の粘着力についてはタッチパネルの貼り合わせに要求される比較的低い値に設定してリワーク性を高めることもできる。以下それについての実施例4について述べる。なお、実施例3に示した構成要素と同一又は類似する構成要素については同一の符号を付し、同一又は類似する構成要素と特徴事項に関して重複する説明は省略又は簡略化する。
【実施例4】
【0029】
図7の断面図に示すように、本実施例4のタッチパネル31においては、粘着剤34は粘着力が所定値以下であるものであって、一旦貼り合わせた後、リワークが必要となった場合に、無理なく引きはがし可能で再粘着可能なものとしている。粘着剤34としては例えばメークリンゲル(登録商標:共同技研化学(株)社製MG20や412D50)を用いる。この粘着剤34にも上述した透明粒子12を含有させる。
【0030】
本実施例4によれば、粘着剤34を再粘着可能なものとすることによって、粘着剤貼り付け時のリワーク性を高めることができる。また、貼り付け時に気泡等が発生した場合でも、オートクレーブ(高温高圧下で化学反応を起こさせる耐熱耐圧密閉容器)等を用いることなく粘着剤34を速やかに引きはがして、気泡等を除去することが可能となる。
【0031】
なお、上述した実施例1においては、粘着剤を透明基材2及び3の全体に併せた長方形状としているが、額縁部のみに設けることもできる。以下それについての実施例5について述べる。なお、実施例1に示した構成要素と同一又は類似する構成要素については同一の符号を付し、同一又は類似する構成要素と特徴事項に関して重複する説明は省略又は簡略化する。
【実施例5】
【0032】
図8上図の斜視図に示すように、本実施例5のタッチパネル41においては、粘着剤44はタッチパネル41の額縁部に対応する額縁形状を有するとともに、額縁形状の内側に画成される内部空間42が外部に対して密閉されるものとしている。なお、内部空間42には図9の断面図に示すように、空気や窒素等の不活性ガス45が封入されてもよいし、図10の断面図に示すように、シリコーンオイルやグリコール等の粘性液体46が封入されてもよい。
【0033】
すなわち、図8下図の断面図に示すように、額縁部以外には粘着剤44が存在せず、内部空間42が存在することとなるため、ユーザがタッチパネル41を操作する場合に、ユーザの指による入力に対して、タッチパネル41の表面が変位して、ユーザに押し下げ感を付与することが可能となる。不活性ガス45の種類、粘性液体46の種類は、要求される押し下げ感の特性に基づいて適宜決定される。
【0034】
なお、図8においては内部空間42と外部を密閉する形態を示しているが、空気を内部空間42に封入する場合には、外部の気圧の影響により内部空間42が膨張あるいは縮小することを防止するため、内部空間42と外部とを図示しない貫通孔を介して連通することとしてもよい。この貫通孔は例えば粘着剤44に設けることができる。
【0035】
上述した実施例2においては、フレキシブル基板7を用いて図1に示したコントローラ104の制御基板の接続を行う形態を示したが、このフレキシブル基板7を透明基材2により一体的に形成することもできる。以下それについての実施例6について述べる。
【実施例6】
【0036】
本実施例6のタッチパネル51のパネル構造は、図11の斜視図及び断面図に示す構成要素を含む。図11に示すように、タッチパネル51は、一対のほぼ長方形状の透明基材52、53と、一対の透明基材52、53の一方の透明基材52と他方の透明基材53とを隔てる粘着剤54と、一対の透明基材の互いに対向する面に印刷された透明導電パターン55、56とを厚み方向に貼り合わせて有する。図11中下側の一方の透明基材52は右方に延びる延長部52aを有している。粘着剤54は実施例2と同様の透明粒子12を含有している。
【0037】
透明導電パターン55は、透明基材52上にパターンニングされた銀ペーストパターン57に接続されており、透明導電パターン56は、透明基材53上にパターンニングされた銀ペーストパターン58に接続されている。
【0038】
図11に示すように、本実施例6のタッチパネル51においては、一対の透明基材52、53の他方の透明基材53が含む透明導電パターン56が銀ペーストパターン58及び異方性導電体59を介して一対の透明基材52、53の一方の透明基材52の銀ペーストパターン60(配線パターン)に接続されるとともに、一方の透明基材52の銀ペーストパターン60を有する部分である延長部52aが制御基板接続用ケーブルをなしている。延長部52aには銀ペーストパターン60に加えて、銀ペーストパターン57も延在している。
【0039】
本実施例6によれば、実施例1〜5に示したフレキシブル基板7を不要なものとして、部品点数の削減を図ることができる。また、延長部52aについては、透明基材52の製造段階にて構成することが可能であるため、タッチパネル51の製造工程を簡略化することができる。
【0040】
上述した実施例1〜6のタッチパネルにおいては、組立途中及び組立後の意図しない静電気放電による電極パターン(透明導電パターン)や銀ペーストパターン等に過電流が流れて不具合が発生することに対しては特に対策は施されていない。プロジェクテッドキャパシティブタイプのタッチパネルにおいて、電極パターンの面同士は絶縁性を確保することが望ましく、基材両面に電極パターンを設ける構造や、基材の片面に電極パターンを重ねて構成する構造や、一対の基材の対向する面に電極パターンを対向させて貼り付ける構成が存在している。
【0041】
タッチパネル製造時の例えば基材取扱時、印刷時、貼り合わせ時、不良検査時などを含む各工程や、各工程の間において基材や粘着剤などに例えば静電気による帯電が発生すると、この帯電を除去するための例えば接地作業等の作業が増大して、作業効率が低下することが懸念される。また、製造時及び使用時の双方において帯電が発生すると電極パターンや銀ペーストパターン等を始めとした導体部分への過電流による悪影響が懸念される。
【0042】
絶縁性の確保と帯電防止を両立させるにあたっては、タッチパネルの表面抵抗を適切な範囲に設定する必要があるが、従来技術においては適切な手法や構造は提案されていなかった。以下にそれらについて提示する実施例について述べる。
【実施例7】
【0043】
図12の斜視図及び断面図は、実施例7の基本構成を示す。本実施例7のタッチパネル61のパネル構造は、一対の長方形状の透明基材62、63と、一対の透明基材62、63の一方の透明基材62と他方の透明基材63とを隔てる粘着材64とを厚み方向に貼り合わせて有する。一対の透明基材の互いに対向する面には透明導電パターン65が印刷されている。透明基材62、63は例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等により構成される。透明導電パターン65は、透明基材62、63上において縦横に延在されており、所謂ダイヤパターン形状を有している。
【0044】
透明導電パターン65は、透明基材62、63上にパターンニングされた銀ペーストパターン66に接続されており、透明基材62の銀ペーストパターン66は、フレキシブル基板67(例えばポリイミド材)の図12中左端部の上側の端子に、異方性導電体68(ACF及びACP:例えばタツタ電線(株)社製:熱可塑性異方導電性ボンディングペーストPCB−700)を介して接続され、透明基材63の銀ペーストパターン66は、フレキシブル基板67(例えばポリイミド材)の図12中左端部の下側の端子に、異方性導電体68を介して接続される。なお、最表面側には予めHC層などをコーティングしたものを用いることも可能である。本実施例7では透明導電パターン65が対向する形態を示すが、上述した片面配置でブリッジ構造を含むものや、両面配置の構造においても基本的な構成は同等である。
【0045】
本実施例7においては、図13の断面図に示すように、透明導電パターン65を有する透明基材62、63(基材)の全体又は全体の額縁部を除く部分である第一部分に含有される帯電防止剤69を含むこととしている。なお、帯電防止剤69を全体に含むことは帯電防止を最優先する場合に好適であり、額縁部を除く部分に含むことは帯電防止とともにコストダウンを図る場合に好適である。
【0046】
ここで、帯電防止剤69の具体例について述べる。帯電防止剤69は、界面活性剤、イオン電導型コーティング剤、親水性ポリマー、親水性モノマー、炭素又は金属又は導電性酸化物の導電性フィラー又は導電性ポリマーの群から選ばれる1又は2以上の物質であることとする。
【0047】
ここで、前述した炭素とは、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイト、グラフェンの群から選ばれる1又は2以上の物質であってもよく、前述した金属は、Ag、Al、Au、Bi、Co、Cr、Cu、Fe、In、Ni、Pd、Snの群から選ばれる1又は2以上の物質であってもよい。また、前述した導電性酸化物は、ITO(InドーピングSn)、ZnO、βGa、SnOの群から選ばれる1又は2以上の物質であってもよい。さらに、前述した導電性ポリマーは、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系の群から選ばれる1又は2以上の物質であってもよい。これらのことに加えて帯電防止剤69が含まれる層である透明基材62、63の厚みを均一に制御することにより、帯電防止処理がなされた透明基材62、63(基材)の外面の表面抵抗は10〜1013Ω/sq(単位面積当たりの抵抗値を指す。)に設定される。
【0048】
上述した帯電防止剤69のうち、導電性を有するものはタッチパネル61内における接地経路を構成して帯電した電荷を大地に逃す機能を有し、界面活性剤、イオン導電型コーティング剤、親水性ポリマー、親水性モノマー等の導電性を有しないものは、例えばイオン交換や電子の吸収、放出等の化学的な作用に基づいて帯電した電荷を大気に逃す機能を主に有している。
【0049】
本実施例7のタッチパネル61によれば、上述したように耐電防止剤69を含むことにより、タッチパネル内の電極間の絶縁性を確保しつつ、帯電した電荷を逃す経路を確保して、帯電そのものを発生しにくいものとし、帯電が発生しても直ちに接地経路により放電させて帯電を解消することができる。これにより、主に銀ペーストパターン66や透明導電パターン65などの部品に過電流が発生することを防止して不具合を未然に防止することができる。
【0050】
特に、絶縁性のみを考慮した表面抵抗である1014Ω/sq値以上に対して、本実施例7では表面抵抗を10〜1013Ω/sqに設定することにより、製造時、使用時の帯電を適宜放電により逃して、作業効率の改善と不具合の防止を図ることができるとともに、放電時の電流についても適切な値に制御して、過電流を防止することができる。
【0051】
上述した実施例7においては、帯電防止剤69を含有させる範囲を透明基材62、63としたが、含有範囲はこれ以外の箇所とすることもできる。以下それについての実施例8について述べる。なお、実施例7と共通する構成要素については同一の符号を付している。
【実施例8】
【0052】
図14の断面図に示すように、本実施例8のタッチパネル61においては、透明基材62、63(基板)の透明導電パターン65の背面側の下地面全体又は下地面全体の額縁部を除く部分である第二部分70に含有される帯電防止剤を含むこととしている。また、図15の断面図に示すように、本実施例8のタッチパネル61においては、透明導電パターン65の表面全体又は表面全体の額縁部を除く部分である第三部分71に含有される帯電防止剤を含むこととしてもよい。
【0053】
なお、本実施例8において、図14に示した第二部分70、図15に示した第三部分71において帯電防止剤は透明基材62(基材)に対して塗布又は成膜されることとしてもよい。また、実施例7の図13で示した第一部分と、本実施例8の第二部分70、第三部分71のうち少なくとも二の組合せに帯電防止剤が含有されることとしてもよい。
【0054】
本実施例8によれば、透明導電パターン65により近接又は隣接した領域に帯電防止剤を配置することができるので、実施例7で述べた帯電防止を、特に銀ペーストパターン66や透明導電パターン65において、より効果的に行うことができる。
【0055】
上述した帯電防止剤は粘着剤64に含有させることもできる。以下それについての実施例9について述べる。ここでも、実施例7と共通する構成要素については同一の符号を付している。
【実施例9】
【0056】
図16の断面図に示すように、本実施例9のタッチパネル61においては、基材つまり透明基材62、63を一対有して、基材を隔てる粘着剤64を有し、粘着剤64に帯電防止剤69が含有されることとしている。
【0057】
本実施例9によれば、透明導電パターン65及び銀ペーストパターン66に対向する側の、つまり反対側の基材から電流が流れることをより効果的に防止して、帯電防止を図ることができる。また、透明導電パターン65及び銀ペーストパターン66が設置される基材側からの電流に対しても、放電させる接地経路を内側に設定することで、より効果的に放電させることができる。
【0058】
上述した帯電防止剤はタッチパネルの外面側にも含有させることもできる。以下それについての実施例10について述べる。ここでも、実施例7と共通する構成要素については同一の符号を付している。
【実施例10】
【0059】
図17の断面図に示すように、本実施例10のタッチパネル61においては、基材つまり透明基材62、63のタッチパネル61の外面側の積層される層の層面全体又は額縁部を除く上下一対の第四部分72に帯電防止剤が含有されることとしている。
【0060】
本実施例10によれば、まず上側の第四部分72に帯電防止剤を含有することにより、ユーザの指の帯電に起因する放電に対して、電流を速やかに大地又は大気に逃すことができる。また、下側の第四部分72に耐電防止剤を含有することにより、放電が背面側のディスプレイに対してなされることを防止することができる。
【0061】
上述した耐電防止剤は、実施例1に示した構成と適宜組み合わせることもできる。以下にそれについての例示を示す実施例11について述べる。実施例1と共通する構成要素については同一の符号を付している。
【実施例11】
【0062】
図18の断面図に示すように、本実施例11のタッチパネル81においては、実施例1に示したように粘着剤4の厚み方向の中央に透明基板9を含む構成に加えて、透明基材2及び透明基材3に帯電防止剤69を含有させている。
【0063】
また、図19の断面図に示すように、本実施例11のタッチパネル91においては、実施例1に示した粘着剤4内に透明粒子12を含有する構成に加えて、透明基材2及び透明基材3に帯電防止剤69を含有させてもよい。
【0064】
図18又は図19に示すいずれの形態においても、透明導電パターン5のエッジ又はラインを判別しにくくして見栄えを向上するとともに、帯電防止を図ることができる。
【0065】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、タッチパネルに関するものであり、絶縁信頼性を高めるとともに、組立作業を簡素化した上で高い外観性を実現することができるプロジェクテッドキャパシティブ方式のタッチパネルを提供することができるので、特には小型の電子機器、すなわち携帯電話、電子手帳、PDA等に搭載されるタッチパネルに適用して有益なものである。
【符号の説明】
【0067】
1 タッチパネル
2 透明基材
3 透明基材
4 粘着剤
5 透明導電パターン
6 銀ペーストパターン
7 フレキシブル基板
8 異方性導電体
9 透明基板
10 光学膜
11 タッチパネル
12 透明粒子
21 タッチパネル
24 粘着剤
25 高分子粘着層
26 低分子粘着層
31 タッチパネル
34 粘着剤
41 タッチパネル
42 内部空間
44 粘着剤
45 不活性ガス
46 粘性流体
51 タッチパネル
52 透明基材
52a 延長部
53 透明基材
54 粘着剤
55 透明導電パターン
56 透明導電パターン
57 銀ペーストパターン
58 銀ペーストパターン
59 異方性導電体
60 銀ペーストパターン(配線パターン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の透明基材と、前記一対の透明基材の一方と他方とを隔てる粘着材と、前記一対の透明基材の互いに対向する面に印刷された透明導電パターンとを有するとともに、前記粘着剤は透明基板を含み、当該透明基板は樹脂基材又はガラス基材であることを特徴とするプロジェクテッドキャパシティブ方式のタッチパネル。
【請求項2】
一対の透明基材と、前記一対の透明基材の一方と他方とを隔てる粘着材と、前記一対の透明基材の互いに対向する面に印刷された透明導電パターンとを有するとともに、前記粘着剤は透明粒子を含み、当該透明粒子は樹脂粒子又はガラス粒子であることを特徴とするプロジェクテッドキャパシティブ方式のタッチパネル。
【請求項3】
前記粘着剤は高分子粘着層と低分子粘着層をそれぞれ少なくとも一層含む分子勾配を有するものであって、当該高分子粘着層が前記透明粒子を含むことを特徴とする請求項2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記粘着剤は粘着力が所定値以下のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記粘着剤は額縁部に対応する額縁形状を有するとともに、当該額縁形状の内側に画成される内部空間が外部に対して密閉される又は貫通孔を介して連通されることを特徴とする請求項4に記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記内部空間は不活性ガスが封入されることを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記内部空間は粘性液体が封入されることを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記一対の透明基材の他方が含む前記透明導電パターンが異方性導電体を介して前記一対の透明基材の一方の配線パターンに接続されるとともに、前記一対の透明基材の一方の当該配線パターンを有する部分が制御基板接続用ケーブルをなすことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のタッチパネル。
【請求項9】
透明導電パターンを有する基材と、当該基材の全体又は当該全体の額縁部を除く部分である第一部分、前記基板の前記透明導電パターンの背面側の下地面全体又は当該下地面全体の前記額縁部を除く部分である第二部分、前記透明導電パターンの表面全体又は当該表面全体の前記額縁部を除く部分である第三部分の少なくともいずれか、に含有される帯電防止剤を含むことを特徴とするプロジェクテッドキャパシティブ方式のタッチパネル。
【請求項10】
前記第二部分、前記第三部分において前記帯電防止剤は前記基材に対して塗布又は成膜されることを特徴とする請求項9に記載のタッチパネル。
【請求項11】
前記第一部分、前記第二部分、前記第三部分のうち少なくとも二の組合せに前記帯電防止剤が含有されることを特徴とする請求項9又は10に記載のタッチパネル。
【請求項12】
前記基材を一対有して、当該基材を隔てる粘着剤を有し、当該粘着剤に前記帯電防止剤が含有されることを特徴とする請求項9又は10に記載のタッチパネル。
【請求項13】
前記基材の前記タッチパネルの外面側の積層される層の層面全体又は前記額縁部を除く第四部分に前記帯電防止剤が含有されることを特徴とする請求項9又は10に記載のタッチパネル。
【請求項14】
前記帯電防止剤は、界面活性剤、イオン電導型コーティング剤、親水性ポリマー、親水性モノマー、炭素又は金属又は導電性酸化物の導電性フィラー又は導電性ポリマーの群から選ばれる1又は2以上の物質であることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載のタッチパネル。
【請求項15】
前記炭素が、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイト、グラフェンの群から選ばれる1又は2以上の物質であることを特徴とする請求項14に記載のタッチパネル。
【請求項16】
前記金属は、Ag、Al、Au、Bi、Co、Cr、Cu、Fe、In、Ni、Pd、Snの群から選ばれる1又は2以上の物質であることを特徴とする請求項14に記載のタッチパネル。
【請求項17】
前記導電性酸化物は、ITO、ZnO、βGa、SnOの群から選ばれる1又は2以上の物質であることを特徴とする請求項14に記載のタッチパネル。
【請求項18】
前記導電性ポリマーは、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系の群から選ばれる1又は2以上の物質であることを特徴とする請求項14に記載のタッチパネル。
【請求項19】
前記基材の外面の表面抵抗が10〜1013Ω/sqであることを特徴とする請求項9〜18に記載のタッチパネル。
【請求項20】
一対の透明基材と、前記一対の透明基材の一方と他方とを隔てる粘着材と、前記一対の透明基材の互いに対向する面に印刷された透明導電パターンとを有するとともに、前記粘着剤は透明基板を含み、当該透明基板は樹脂基材又はガラス基材であって、当該基材の全体又は当該全体の額縁部を除く部分である第一部分、前記基板の前記透明導電パターンの背面側の下地面全体又は当該下地面全体の前記額縁部を除く部分である第二部分、前記透明導電パターンの表面全体又は当該表面全体の前記額縁部を除く部分である第三部分の少なくともいずれか、に含有される帯電防止剤を含むことを特徴とするプロジェクテッドキャパシティブ方式のタッチパネル。
【請求項21】
一対の透明基材と、前記一対の透明基材の一方と他方とを隔てる粘着材と、前記一対の透明基材の互いに対向する面に印刷された透明導電パターンとを有するとともに、前記粘着剤は透明粒子を含み、当該透明粒子は樹脂粒子又はガラス粒子であって、前記基材の全体又は当該全体の額縁部を除く部分である第一部分、前記基板の前記透明導電パターンの背面側の下地面全体又は当該下地面全体の前記額縁部を除く部分である第二部分、前記透明導電パターンの表面全体又は当該表面全体の前記額縁部を除く部分である第三部分の少なくともいずれか、に含有される帯電防止剤を含むことを特徴とするプロジェクテッドキャパシティブ方式のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−185751(P2012−185751A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49651(P2011−49651)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】