タフテッドカーペット用基布
【課題】 織基布であっても、斜め方向に変形しにくく、意匠性を表現するのに優れたタフテッドカーペット用基布を提供することを課題とする。
【解決手段】 織基布に不織布を、接着層を介して貼着することによって、織基布が斜め方向に変形しにくくし、さらに、織基布の横糸を紡績糸にすることによって、意匠性を基布にもたせ、パイル糸の間から基布を見せることによって、低目付のタフテッドカーペットであっても、外観品位のあるカーペットが得られることを見出し、本発明に到達した。
【解決手段】 織基布に不織布を、接着層を介して貼着することによって、織基布が斜め方向に変形しにくくし、さらに、織基布の横糸を紡績糸にすることによって、意匠性を基布にもたせ、パイル糸の間から基布を見せることによって、低目付のタフテッドカーペットであっても、外観品位のあるカーペットが得られることを見出し、本発明に到達した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、タフテッドカーペット用の基布に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来から、ポリプロピレン等のフラットヤーンからなる織布帛をタフテッドカーペット用の基布として用い、該基布にパイル糸がタフティング機によって植設された表皮層の裏面に、樹脂又はゴムラテックスを塗布した接着剤層によりパイル糸と基布を固着するタフテッドカーペットはよく知られている。
【０００３】
フラットヤーンからなる織布帛をタフテッドカーペット用の基布として用いた場合、パイル糸の保持性がよく、表皮層の裏面に接着剤を塗布しパイル糸と基布を固着するまでの工程で、パイルが抜けてしまったり、浮いたりすることが少ないので、多くのタフテッドカーペットに使われている。
【０００４】
しかしながら、フラットヤーンからなる織基布は、斜め方向に変形しやすく、タフティング機でパイル糸が植設された以降の工程で、織り目が斜めになったり（斜行）、曲がったり（湾曲）して、外観品位の劣るものとなることがあり、注意して加工しなければならなかった。特に、横方向に直線状の柄の加工の場合は、織基布に斜め方向の力がかかるのを極力避けなければならず、難易度の高い加工となっていた。
【０００５】
この問題を解決すべく、特許文献１では、長繊維からなる不織布を部分的に熱圧着したものを作成し、織物からなる基布に該不織布を積層して、パイル糸をタフティングすることが開示されている。
【０００６】
また、特許文献２においては、高融点ポリオレフィン層と低融点ポリオレフィン層とからなる複合フラットヤーンからなる織布帛をタフテッドカーペット用の基布として用い、パイル糸を植毛した後に、二次加工時の加熱によって経糸と横糸の交点が低融点ポリオレフィンで溶着され、寸法安定性に優れ、裁断面に基布のほつれを発生させないタフテッドカーペットを提供している。
【特許文献１】特開２００５−２９０６０６号公報
【特許文献２】特開平１１−２６２４４３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、特許文献１では、長繊維からなる不織布を部分的に熱圧着したものを作成するので、装置が大がかりになり、高価な不織布となる。また、不織布と織基布を積層することから、タフティング機に不織布と織基布を仕掛けるための装置を必要としたり、タフティング機上で不織布と織基布が不安定で皺等が入りやすく品質上問題があり実用的ではなかった。また、特許文献２においては、二次加工時の加熱によって経糸と横糸の交点を固定するため、タフティング機でパイル糸が植設された以降の二次加工で加熱されるまでの工程での変形に対しては無力であった。本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、斜め方向に変形しにくく、意匠性を表現するのに優れたタフテッドカーペット用基布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、織基布に不織布を、接着層を介して貼着することによって、斜め方向に変形しにくくし、さらに、織基布の横糸を紡績糸にすることによって、意匠性を基布にもたせ、パイル糸の間から基布を見せることによって、低目付のタフテッドカーペットであっても、外観品位のあるカーペットが得られることを見出し、本発明に到達した。上記課題を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【０００９】
［１］織基布に不織布を、接着層を介して貼着したことを特徴とするタフテッドカーペット用基布。
【００１０】
［２］前記織基布は、経糸と横糸を組み合わせた模様柄とした織基布で、前記不織布はパンチング不織布からなり、前記織基布に合成樹脂又はゴムラテックスを５０〜４００ｇ／ｍ２塗布して前記接着層としたことに特徴のある前項１に記載のタフテッドカーペット用基布。
【００１１】
［３］前記織基布は、経糸が透明なフラットヤーンからなり、横糸が紡績糸からなることに特徴のある前項１または２に記載のタフテッドカーペット用基布。
【発明の効果】
【００１２】
［１］の発明では、織基布に不織布を、接着層を介して貼着するので、織基布に斜め方向に力がかかっても変形しにくくなり、同時に不織布のクッション性が織基布に付与される。これによって、該タフテッドカーペット用基布を直線的な柄の多いタフテッドカーペットの基布として使用すれば、加工工程で変形することもなく、タフトした時の柄形状のままで各工程を通過することができ、加工難易度を下げることができる。また、不織布のクッション性が織基布に付与されることから、そのまま敷物として使用することもできる。
【００１３】
［２］の発明では、前記織基布は、経糸と横糸を組み合わせた模様柄とした織基布であるので、意匠性のある基布となり、パイル糸を植設したときに、パイル糸の間から基布の見えるようなパイル長としてやれば、基布の柄とパイルが一体となった独特な柄の風合いをかもし出すタフテッドカーペットを得ることができる。また、前記不織布はパンチング不織布からなっているので、タフティング機のニードルの貫通抵抗も少なく、ニードルによる不織布繊維の破壊も少ないので、織基布と厚みのある不織布を重ねても十分タフトすることができる。また、前記織基布に合成樹脂又はゴムラテックスを５０〜４００ｇ／ｍ２塗布して前記接着層としているので、接着層が十分な層を形成するまでには到らないため、タフティング機のニードルの貫通抵抗を極力少なくなるように、織基布と不織布を張り合わすことができる。このため、タフト中に、織基布と不織布がずれることもなく、一枚の基布のようにしてタフトすることができ、タフティング機に二本の基布を仕掛けるための装置を必要としない。
【００１４】
［３］の発明では、前記織基布は、経糸が透明なフラットヤーンからなり、横糸が紡績糸からなるので、織基布としてよく使われている経糸横糸ともにオレフィン系のフラットヤーンからなる織基布と比較して、テカリ感がなく、暖かな触感の基布とすることができ、不織布を貼着すれば、不織布のクッション性が付与されそのまま敷物として使用することもできる。また、パイル糸の間から基布の見えるようなパイル規格とすれば、基布のテカリ感のない外観品位をたもったタフテッドカーペットを得ることができる。また、横糸の紡績糸をパイル糸と同じ糸とすれば、パイル糸と基布表面が一体化し、低目付のカーペットであってもパイル糸と基布との違和感の少ない風合いのタフテッドカーペットを得ることができる。また、横糸の紡績糸に色糸を用いて横ストライプの柄とし、パイル糸に何色かの色糸をストライプ状にタフトすれば、基布表面とパイル糸のストライプ柄が一体化し、格子状の柄として、低目付であってもパイル糸と基布との違和感の少ない、質感のあるタフテッドカーペットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
次に、この発明に係るタフテッドカーペット用基布の一実施形態を図面に基づいて説明する。図１で示すように、経糸２と横糸３で織られた織基布の下側に接着層４を介して不織布５が貼着されている。織基布の組織は特に限定されず、平織り、綾織、朱子織、変形組織等の織基布であればかまわない。また、経糸２と横糸３ともどのような糸でもかまわない。例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維等の熱可塑性繊維、またこれら各繊維の複合化繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン等の再生繊維、麻、綿等の天然繊維、あるいはこれらの混綿したものを挙げることができるが、経糸としてはポリエステル系繊維やポリプロピレン系繊維のフラットヤーン（透明）が一般に多く使われていて好ましい。また、横糸としては着色されて、糸表面に毛羽のある紡績糸からなるものがより好ましい。横糸を紡績糸とすることにより、織基布のタッチ感が柔らかく暖かいものとなり、経糸２と横糸３が共にフィラメント糸である場合よりは敷物として好適である。
【００１６】
例えば綿を横糸として使用した場合、綿は、吸水性があり、夏向けの薄いカーペットとして好適で、不織布を貼着してそのまま敷物として使用することもできる。また、低目付で柄を表現するカーペットにおいて、パイル糸を綿にしたとき、基布の横糸も綿にすれば、パイル糸の間から見える基布の表面もパイル糸と同素材となり、ポリエステル系繊維やポリプロピレン系繊維のフラットヤーンのようなテカリ感がなく、低目付でも外観品位のあるものとなる。
【００１７】
また織基布として、横糸を二色にして横方向にストライプ二色の模様柄の基布を作成し不織布を貼着して得たタフテッドカーペット用基布に、パイル糸（一色）をタフティング機で植設して上から見ると、図２のようにパイル糸のストライプ列の間から、横ストライプ二色の基布が見え全体として独特な柄の風合いをかもし出すタフテッドカーペットが得られる。（図２参照）
【００１８】
本発明のタフテッドカーペット用基布を構成する不織布５としては、どのようなものでもよいが、タフティング機のニードルの貫通の際に抵抗が少なく、クッション性のあるものが好適で、ポリエステルのニードルパンチ不織布で目付５０〜４００ｇ／ｍ２程度のものがよい。
【００１９】
前記織基布と不織布を合成樹脂又はゴムラテックスで張り合わす方法は、ロールコーター法、スプレー法等、公知の方法で合成樹脂又はゴムラテックスを塗布し張り合わして乾燥すればよく特に限定するものではないが、タフティング機のニードルの貫通抵抗を極力少なくするように、合成樹脂又はゴムラテックスの塗布量としては５０〜４００ｇ／ｍ２塗布するのが好ましい。（なお、本発明において合成樹脂又はゴムラテックスの塗布量は、Ｗｅｔ重量で固形分は５０質量％である。）
【００２０】
前記合成樹脂又はゴムラテックスとしては、特に限定されないが、例えば合成樹脂としてはアクリル系、ウレタン系、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）等の樹脂が挙げられる。ゴムラテックスのゴム成分としてはＳＢＲ（スチレン−ブタジエンゴム）、ＮＢＲ（アクリロニトリル−ブタジエンゴム）、ＭＢＲ（メチルメタクリレート−ブタジエンゴム）あるいは天然ゴム等が挙げられる。
【実施例】
【００２１】
次に、この発明の具体的実施例を列記する。
＜実施例１＞
基布としては、経糸密度１８本／インチ、横糸密度１６本／インチの平織り組織で、ポリプロピレンのフラットヤーンを経糸（４００ｄｔｅｘ 色 透明）とし、横糸として綿とレーヨンの混綿糸（番手２／８．５ 色 白 白二本撚り）と、綿とレーヨンの混綿糸（番手２／８．５ 色 グレー 白、黒二本撚り）を２ｃｍ１０ｃｍの巾で交互に横糸を交換し図２のような横方向にストライプ柄の平織りの織基布（目付１２０ｇ／ｍ２）を得た。次に、この基布に接着層としてＳＢＲラテックスを１００ｇ／ｍ２をスプレー塗布し、ポリエステルのニードルパンチ不織布（目７０ｇ／ｍ２）を貼り合わせ、１２０℃の条件下で５分間乾燥してタフテッドカーペット用基布を得た。次に、この基布を１／５ループゲージのタフティング機にセットし、パイル糸として、綿とレーヨンの混綿糸（番手２／８．５ 色 白 二本撚り）を、タフト規格、３９ステッチ／１０ｃｍ パイル長３．５ミリ パイル目付け２９０ｇ／ｍ２としてタフトした。さらに、パイルと基布を固着するためにバッキング工程で、裏面に接着剤層としてＳＢＲラテックスをローラーコーティングし、さらにその下側にポリエステル繊維からなる目付７０ｇ／ｍ２の不織布からなる２ｎｄ基布を貼着させ、１２０℃の条件下で１０分間乾燥して図２のように、綿とレーヨンの混綿糸の白とグレーのストライプ柄がパイルの間から横方向に真っ直ぐに見える柄カーペットを得ることができた。
【００２２】
＜実施例２＞
実施例１において、接着層としてＳＢＲラテックスを３８０ｇ／ｍ２をスプレー塗布した以外は、実施例１と同様にして図２のような柄カーペットを得た。実施例１のときよりも、タフティング機のニードルの貫通抵抗が大きく、タフティング機の振動と音が大きくなったが、問題なくタフトすることができた。できあがったカーペットは実施例１と同様に横方向に真っ直ぐに見える柄カーペットを得ることができた。
【００２３】
＜実施例３＞
実施例１において、基布としては、経糸密度１８本／インチ、横糸密度１６本／インチの平織り組織で、経糸横糸ともにポリプロピレンのフラットヤーンを（４００ｄｔｅｘ 色 透明）とした以外は実施例１と同様にしてタフテッドカーペット用基布を得た。次に、この基布を１／５ゲージのハイローループ柄のタフティング機にセットし、パイル糸として、赤の白のポリエステル原着糸（２９００ｄｔｅｘ）を用い、タフト規格、２９ステッチ／１０ｃｍ、パイル長１０／５ミリ、パイル目付け７２０ｇ／ｍ２として赤と白の格子柄でタフトし、実施例１と同様にバッキング工程で加工した。できあがったカーペットは実施例１と同様に横方向、縦方向ともに真っ直ぐに見える格子柄のカーペットを得ることができた。
【００２４】
＜比較例１＞
実施例１において、基布としてニードルパンチ不織布を貼り合わせない以外は、実施例１と同様にして図２のような柄カーペットを得た。実施例１のときよりも、白とグレーのストライプ柄が曲がって見え、外観品位に劣るものであった。
【００２５】
＜比較例２＞
実施例１において、基布として織基布にニードルパンチ不織布を重ねただけで、ＳＢＲラテックスで貼り合わさなかった以外は、実施例１と同様にして図２のような柄カーペットを得た。実施例１のときよりも、白とグレーのストライプ柄が曲がって見え、外観品位に劣るものであった。
【００２６】
＜比較例３＞
実施例１において、接着層としてＳＢＲラテックスを５００ｇ／ｍ２をローラーコーティングした以外は、実施例１と同様にしてタフテッドカーペット用基布を得、タフト使用としたが、タフティング機のニードルの貫通抵抗が大き過ぎて機械へ付加がかかり、タフトすることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】この発明の一実施形態に係る基布の断面概略図である。
【図２】本発明の、横方向にストライプ二色の模様柄の基布に、パイル糸（一色）をタフティング機で植設し上から見た写真である。（実施例１）
【図３】一般的なタフテッドカーペットの概略断面図である。
【符号の説明】
【００２８】
１・・タフテッドカーペット用基布
２・・経糸
３・・横糸
４・・接着層
５・・不織布
６・・パイル糸
７・・基布
８・・表皮層
９・・接着剤層
１０・・２ｎｄ基布
【技術分野】
【０００１】
本発明は、タフテッドカーペット用の基布に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来から、ポリプロピレン等のフラットヤーンからなる織布帛をタフテッドカーペット用の基布として用い、該基布にパイル糸がタフティング機によって植設された表皮層の裏面に、樹脂又はゴムラテックスを塗布した接着剤層によりパイル糸と基布を固着するタフテッドカーペットはよく知られている。
【０００３】
フラットヤーンからなる織布帛をタフテッドカーペット用の基布として用いた場合、パイル糸の保持性がよく、表皮層の裏面に接着剤を塗布しパイル糸と基布を固着するまでの工程で、パイルが抜けてしまったり、浮いたりすることが少ないので、多くのタフテッドカーペットに使われている。
【０００４】
しかしながら、フラットヤーンからなる織基布は、斜め方向に変形しやすく、タフティング機でパイル糸が植設された以降の工程で、織り目が斜めになったり（斜行）、曲がったり（湾曲）して、外観品位の劣るものとなることがあり、注意して加工しなければならなかった。特に、横方向に直線状の柄の加工の場合は、織基布に斜め方向の力がかかるのを極力避けなければならず、難易度の高い加工となっていた。
【０００５】
この問題を解決すべく、特許文献１では、長繊維からなる不織布を部分的に熱圧着したものを作成し、織物からなる基布に該不織布を積層して、パイル糸をタフティングすることが開示されている。
【０００６】
また、特許文献２においては、高融点ポリオレフィン層と低融点ポリオレフィン層とからなる複合フラットヤーンからなる織布帛をタフテッドカーペット用の基布として用い、パイル糸を植毛した後に、二次加工時の加熱によって経糸と横糸の交点が低融点ポリオレフィンで溶着され、寸法安定性に優れ、裁断面に基布のほつれを発生させないタフテッドカーペットを提供している。
【特許文献１】特開２００５−２９０６０６号公報
【特許文献２】特開平１１−２６２４４３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかしながら、特許文献１では、長繊維からなる不織布を部分的に熱圧着したものを作成するので、装置が大がかりになり、高価な不織布となる。また、不織布と織基布を積層することから、タフティング機に不織布と織基布を仕掛けるための装置を必要としたり、タフティング機上で不織布と織基布が不安定で皺等が入りやすく品質上問題があり実用的ではなかった。また、特許文献２においては、二次加工時の加熱によって経糸と横糸の交点を固定するため、タフティング機でパイル糸が植設された以降の二次加工で加熱されるまでの工程での変形に対しては無力であった。本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、斜め方向に変形しにくく、意匠性を表現するのに優れたタフテッドカーペット用基布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、織基布に不織布を、接着層を介して貼着することによって、斜め方向に変形しにくくし、さらに、織基布の横糸を紡績糸にすることによって、意匠性を基布にもたせ、パイル糸の間から基布を見せることによって、低目付のタフテッドカーペットであっても、外観品位のあるカーペットが得られることを見出し、本発明に到達した。上記課題を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【０００９】
［１］織基布に不織布を、接着層を介して貼着したことを特徴とするタフテッドカーペット用基布。
【００１０】
［２］前記織基布は、経糸と横糸を組み合わせた模様柄とした織基布で、前記不織布はパンチング不織布からなり、前記織基布に合成樹脂又はゴムラテックスを５０〜４００ｇ／ｍ２塗布して前記接着層としたことに特徴のある前項１に記載のタフテッドカーペット用基布。
【００１１】
［３］前記織基布は、経糸が透明なフラットヤーンからなり、横糸が紡績糸からなることに特徴のある前項１または２に記載のタフテッドカーペット用基布。
【発明の効果】
【００１２】
［１］の発明では、織基布に不織布を、接着層を介して貼着するので、織基布に斜め方向に力がかかっても変形しにくくなり、同時に不織布のクッション性が織基布に付与される。これによって、該タフテッドカーペット用基布を直線的な柄の多いタフテッドカーペットの基布として使用すれば、加工工程で変形することもなく、タフトした時の柄形状のままで各工程を通過することができ、加工難易度を下げることができる。また、不織布のクッション性が織基布に付与されることから、そのまま敷物として使用することもできる。
【００１３】
［２］の発明では、前記織基布は、経糸と横糸を組み合わせた模様柄とした織基布であるので、意匠性のある基布となり、パイル糸を植設したときに、パイル糸の間から基布の見えるようなパイル長としてやれば、基布の柄とパイルが一体となった独特な柄の風合いをかもし出すタフテッドカーペットを得ることができる。また、前記不織布はパンチング不織布からなっているので、タフティング機のニードルの貫通抵抗も少なく、ニードルによる不織布繊維の破壊も少ないので、織基布と厚みのある不織布を重ねても十分タフトすることができる。また、前記織基布に合成樹脂又はゴムラテックスを５０〜４００ｇ／ｍ２塗布して前記接着層としているので、接着層が十分な層を形成するまでには到らないため、タフティング機のニードルの貫通抵抗を極力少なくなるように、織基布と不織布を張り合わすことができる。このため、タフト中に、織基布と不織布がずれることもなく、一枚の基布のようにしてタフトすることができ、タフティング機に二本の基布を仕掛けるための装置を必要としない。
【００１４】
［３］の発明では、前記織基布は、経糸が透明なフラットヤーンからなり、横糸が紡績糸からなるので、織基布としてよく使われている経糸横糸ともにオレフィン系のフラットヤーンからなる織基布と比較して、テカリ感がなく、暖かな触感の基布とすることができ、不織布を貼着すれば、不織布のクッション性が付与されそのまま敷物として使用することもできる。また、パイル糸の間から基布の見えるようなパイル規格とすれば、基布のテカリ感のない外観品位をたもったタフテッドカーペットを得ることができる。また、横糸の紡績糸をパイル糸と同じ糸とすれば、パイル糸と基布表面が一体化し、低目付のカーペットであってもパイル糸と基布との違和感の少ない風合いのタフテッドカーペットを得ることができる。また、横糸の紡績糸に色糸を用いて横ストライプの柄とし、パイル糸に何色かの色糸をストライプ状にタフトすれば、基布表面とパイル糸のストライプ柄が一体化し、格子状の柄として、低目付であってもパイル糸と基布との違和感の少ない、質感のあるタフテッドカーペットを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
次に、この発明に係るタフテッドカーペット用基布の一実施形態を図面に基づいて説明する。図１で示すように、経糸２と横糸３で織られた織基布の下側に接着層４を介して不織布５が貼着されている。織基布の組織は特に限定されず、平織り、綾織、朱子織、変形組織等の織基布であればかまわない。また、経糸２と横糸３ともどのような糸でもかまわない。例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維等の熱可塑性繊維、またこれら各繊維の複合化繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン等の再生繊維、麻、綿等の天然繊維、あるいはこれらの混綿したものを挙げることができるが、経糸としてはポリエステル系繊維やポリプロピレン系繊維のフラットヤーン（透明）が一般に多く使われていて好ましい。また、横糸としては着色されて、糸表面に毛羽のある紡績糸からなるものがより好ましい。横糸を紡績糸とすることにより、織基布のタッチ感が柔らかく暖かいものとなり、経糸２と横糸３が共にフィラメント糸である場合よりは敷物として好適である。
【００１６】
例えば綿を横糸として使用した場合、綿は、吸水性があり、夏向けの薄いカーペットとして好適で、不織布を貼着してそのまま敷物として使用することもできる。また、低目付で柄を表現するカーペットにおいて、パイル糸を綿にしたとき、基布の横糸も綿にすれば、パイル糸の間から見える基布の表面もパイル糸と同素材となり、ポリエステル系繊維やポリプロピレン系繊維のフラットヤーンのようなテカリ感がなく、低目付でも外観品位のあるものとなる。
【００１７】
また織基布として、横糸を二色にして横方向にストライプ二色の模様柄の基布を作成し不織布を貼着して得たタフテッドカーペット用基布に、パイル糸（一色）をタフティング機で植設して上から見ると、図２のようにパイル糸のストライプ列の間から、横ストライプ二色の基布が見え全体として独特な柄の風合いをかもし出すタフテッドカーペットが得られる。（図２参照）
【００１８】
本発明のタフテッドカーペット用基布を構成する不織布５としては、どのようなものでもよいが、タフティング機のニードルの貫通の際に抵抗が少なく、クッション性のあるものが好適で、ポリエステルのニードルパンチ不織布で目付５０〜４００ｇ／ｍ２程度のものがよい。
【００１９】
前記織基布と不織布を合成樹脂又はゴムラテックスで張り合わす方法は、ロールコーター法、スプレー法等、公知の方法で合成樹脂又はゴムラテックスを塗布し張り合わして乾燥すればよく特に限定するものではないが、タフティング機のニードルの貫通抵抗を極力少なくするように、合成樹脂又はゴムラテックスの塗布量としては５０〜４００ｇ／ｍ２塗布するのが好ましい。（なお、本発明において合成樹脂又はゴムラテックスの塗布量は、Ｗｅｔ重量で固形分は５０質量％である。）
【００２０】
前記合成樹脂又はゴムラテックスとしては、特に限定されないが、例えば合成樹脂としてはアクリル系、ウレタン系、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）等の樹脂が挙げられる。ゴムラテックスのゴム成分としてはＳＢＲ（スチレン−ブタジエンゴム）、ＮＢＲ（アクリロニトリル−ブタジエンゴム）、ＭＢＲ（メチルメタクリレート−ブタジエンゴム）あるいは天然ゴム等が挙げられる。
【実施例】
【００２１】
次に、この発明の具体的実施例を列記する。
＜実施例１＞
基布としては、経糸密度１８本／インチ、横糸密度１６本／インチの平織り組織で、ポリプロピレンのフラットヤーンを経糸（４００ｄｔｅｘ 色 透明）とし、横糸として綿とレーヨンの混綿糸（番手２／８．５ 色 白 白二本撚り）と、綿とレーヨンの混綿糸（番手２／８．５ 色 グレー 白、黒二本撚り）を２ｃｍ１０ｃｍの巾で交互に横糸を交換し図２のような横方向にストライプ柄の平織りの織基布（目付１２０ｇ／ｍ２）を得た。次に、この基布に接着層としてＳＢＲラテックスを１００ｇ／ｍ２をスプレー塗布し、ポリエステルのニードルパンチ不織布（目７０ｇ／ｍ２）を貼り合わせ、１２０℃の条件下で５分間乾燥してタフテッドカーペット用基布を得た。次に、この基布を１／５ループゲージのタフティング機にセットし、パイル糸として、綿とレーヨンの混綿糸（番手２／８．５ 色 白 二本撚り）を、タフト規格、３９ステッチ／１０ｃｍ パイル長３．５ミリ パイル目付け２９０ｇ／ｍ２としてタフトした。さらに、パイルと基布を固着するためにバッキング工程で、裏面に接着剤層としてＳＢＲラテックスをローラーコーティングし、さらにその下側にポリエステル繊維からなる目付７０ｇ／ｍ２の不織布からなる２ｎｄ基布を貼着させ、１２０℃の条件下で１０分間乾燥して図２のように、綿とレーヨンの混綿糸の白とグレーのストライプ柄がパイルの間から横方向に真っ直ぐに見える柄カーペットを得ることができた。
【００２２】
＜実施例２＞
実施例１において、接着層としてＳＢＲラテックスを３８０ｇ／ｍ２をスプレー塗布した以外は、実施例１と同様にして図２のような柄カーペットを得た。実施例１のときよりも、タフティング機のニードルの貫通抵抗が大きく、タフティング機の振動と音が大きくなったが、問題なくタフトすることができた。できあがったカーペットは実施例１と同様に横方向に真っ直ぐに見える柄カーペットを得ることができた。
【００２３】
＜実施例３＞
実施例１において、基布としては、経糸密度１８本／インチ、横糸密度１６本／インチの平織り組織で、経糸横糸ともにポリプロピレンのフラットヤーンを（４００ｄｔｅｘ 色 透明）とした以外は実施例１と同様にしてタフテッドカーペット用基布を得た。次に、この基布を１／５ゲージのハイローループ柄のタフティング機にセットし、パイル糸として、赤の白のポリエステル原着糸（２９００ｄｔｅｘ）を用い、タフト規格、２９ステッチ／１０ｃｍ、パイル長１０／５ミリ、パイル目付け７２０ｇ／ｍ２として赤と白の格子柄でタフトし、実施例１と同様にバッキング工程で加工した。できあがったカーペットは実施例１と同様に横方向、縦方向ともに真っ直ぐに見える格子柄のカーペットを得ることができた。
【００２４】
＜比較例１＞
実施例１において、基布としてニードルパンチ不織布を貼り合わせない以外は、実施例１と同様にして図２のような柄カーペットを得た。実施例１のときよりも、白とグレーのストライプ柄が曲がって見え、外観品位に劣るものであった。
【００２５】
＜比較例２＞
実施例１において、基布として織基布にニードルパンチ不織布を重ねただけで、ＳＢＲラテックスで貼り合わさなかった以外は、実施例１と同様にして図２のような柄カーペットを得た。実施例１のときよりも、白とグレーのストライプ柄が曲がって見え、外観品位に劣るものであった。
【００２６】
＜比較例３＞
実施例１において、接着層としてＳＢＲラテックスを５００ｇ／ｍ２をローラーコーティングした以外は、実施例１と同様にしてタフテッドカーペット用基布を得、タフト使用としたが、タフティング機のニードルの貫通抵抗が大き過ぎて機械へ付加がかかり、タフトすることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】この発明の一実施形態に係る基布の断面概略図である。
【図２】本発明の、横方向にストライプ二色の模様柄の基布に、パイル糸（一色）をタフティング機で植設し上から見た写真である。（実施例１）
【図３】一般的なタフテッドカーペットの概略断面図である。
【符号の説明】
【００２８】
１・・タフテッドカーペット用基布
２・・経糸
３・・横糸
４・・接着層
５・・不織布
６・・パイル糸
７・・基布
８・・表皮層
９・・接着剤層
１０・・２ｎｄ基布
【特許請求の範囲】
【請求項１】
織基布に不織布を、接着層を介して貼着したことを特徴とするタフテッドカーペット用基布。
【請求項２】
前記織基布は、経糸と横糸を組み合わせた模様柄とした織基布で、前記不織布はパンチング不織布からなり、前記織基布に合成樹脂又はゴムラテックスを５０〜４００ｇ／ｍ２塗布して前記接着層としたことに特徴のある請求項１に記載のタフテッドカーペット用基布。
【請求項３】
前記織基布は、経糸が透明なフラットヤーンからなり、横糸が紡績糸からなることに特徴のある請求項１または２に記載のタフテッドカーペット用基布。
【請求項１】
織基布に不織布を、接着層を介して貼着したことを特徴とするタフテッドカーペット用基布。
【請求項２】
前記織基布は、経糸と横糸を組み合わせた模様柄とした織基布で、前記不織布はパンチング不織布からなり、前記織基布に合成樹脂又はゴムラテックスを５０〜４００ｇ／ｍ２塗布して前記接着層としたことに特徴のある請求項１に記載のタフテッドカーペット用基布。
【請求項３】
前記織基布は、経糸が透明なフラットヤーンからなり、横糸が紡績糸からなることに特徴のある請求項１または２に記載のタフテッドカーペット用基布。
【図１】
【図３】
【図２】
【図３】
【図２】
【公開番号】特開２００８−１２５８５７（Ｐ２００８−１２５８５７Ａ）
【公開日】平成２０年６月５日（２００８．６．５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−３１５０７２（Ｐ２００６−３１５０７２）
【出願日】平成１８年１１月２２日（２００６．１１．２２）
【出願人】（３９００１４４８７）住江織物株式会社 (294)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年６月５日（２００８．６．５）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年１１月２２日（２００６．１１．２２）
【出願人】（３９００１４４８７）住江織物株式会社 (294)
【Ｆターム（参考）】
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