説明

タンクおよびこれを備えたプリンタ

【課題】封止弁のずれを防止し、空気導入時の泡抜け性を改善して、記録ヘッドにインクを安定的に供給する。
【解決手段】プリンタの接続ユニット10にインクタンク100を装着した状態で、ジョイントベース140における筒状の規制体165の上部に開口部270を有した構成にする。これにより、供給管40がインク供給口105を通ってジョイントユニットの規制体内に挿入されたとき、大気と連通した供給管の空気導入口30から規制体内へ導入された空気が、開口部を通って規制体の外へ容易に抜ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタで用いられるインクを貯留するタンクおよび貯留されたインクを吐出して記録を行うインクジェットプリンタに関し、大量のインクを消費するインクジェットプリンタに用いられるタンクおよび該タンクを着脱可能に構成したインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
大量のインクを消費するタイプのインクジェットプリンタでは、インクタンクを据え置きタイプとする構成が採用される。この種のインクタンクを用いる場合、インクジェットプリンタ側に設けられたインク供給用の接続体の構成は大別して2種ある。
【0003】
1種は接続体として針状体を用い、インクタンクのインク供給口に設けられたゴムシールに対して針状体を突き刺しインク供給を行うタイプである。別の1種は接続体として管状体を用い、インクタンクのインク供給口には、弁体と該弁体をインク供給口に向かって付勢するばね状弾性部材とが内在する筒状の規制体が固定されており、管状体によって弁体をばね力に抗して移動させることでインク供給口を開放してインク供給を行うタイプである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-291246号公報
【特許文献2】国際特許WO 00/003877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された発明は上述した2種のうちの後者の一例であり、この構成ではインクは袋状のインク収納体に収納されており、インク供給に伴い袋状インク収納体が潰れていく。
【0006】
一方、特許文献2に記載された発明はその後者の別の例であり、この構成ではリジットな筐体にインクが直接収納されている。プリンタの接続体はインク導出口と空気の導入口を備え、インク導出口からインクが供給される際に、大気を空気導入口からインクタンク内に導入してインクの供給が行われている。
【0007】
特許文献2に示される実施例の図(本願明細書に添付の図14)によれば、メインタンク401とインクタンクユニット402との接続部における封止弁403とバネ404との関係において、封止弁403の上方が開口405になっていて封止弁403の上部が位置規制されていないため、封止弁403の開閉時に封止弁403の位置ずれが発生する可能性がある。結果、メインタンク401とインクタンクユニット402との接続部におけるシール性を維持することが困難であるという問題がある。
【0008】
その上、万が一誤って、インクタンク単体を落下させたとき、上記同様に封止弁が位置ずれを起こし、ユーザーや床などへのインクが飛び散る不具合が生ずる場合がある。
【0009】
上記問題については、特許文献1に開示された実施例の図(本願明細書に添付の図15)の構成と同じようにして、メインタンク401における封止弁403との接続部401aを延長させて封止弁403の上方の開口405を塞ぐことにより、上記問題を解消できる。
【0010】
しかし、特許文献2に開示されたような図14の構成例に、図15に示す封止弁501とばね502とを内在させた接続部503を適用した場合、封止弁上方に開口が無い構成になるので、インク導出(矢印P)と同時に空気導入(矢印Q)が行われるときの接続部503内からの泡抜け性が低下し、液体吐出記録部へ安定してインク供給ができない虞がある。
【0011】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、封止弁の位置ずれを防止し、空気導入時の接続部503内からの泡抜け性を改善して、記録ヘッドにインクを安定的に供給することができるタンク、及びそのタンクを備えたプリンタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の一つの態様は、
液体を収納する筐体と、液体供給口と、筐体内部に配され液体供給口に向って弾性部材によって付勢されて該液体供給口を閉じる弁体と、弾性部材および弁体を内包し弁体の動作を規制する規制体と、を備え、供給管が液体供給口を通って規制体の内側に挿入された状態で、該供給管から空気が筐体内に導入されるとともに該供給管から液体が導出されるタンクにおいて、
液体供給口は筐体の底面と隣接した側面に位置しており、規制体は筐体の底面に沿って延在し、かつ、鉛直方向の上部に開口部を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の態様は、
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
該液体吐出ヘッドで吐出する液体を収納する筐体、該筐体から外部へ液体を供給する液体供給口、筐体内部に配され液体供給口に向って弾性部材によって付勢されて該液体供給口を閉じる弁体、および弾性部材と弁体を内包し弁体の動作を規制する規制体を備えたタンクと、
タンクが接続される接続ユニットであって、タンクの接続時に液体供給口を通って規制体の内側に挿入される供給管を備え、該供給管は筐体内部から液体を液体吐出ヘッドへ導出する液体導出口と該液体の導出に伴い該筐体内部へ空気を導入する空気導入口とを有する接続ユニットと、
を含むプリンタにおいて、
液体供給口は筐体の底面と隣接した側面に位置しており、規制体は前記筐体の底面に沿って延在し、かつ、鉛直方向の上部に開口部を備えており、
供給管は鉛直方向に対して液体導出口を下方に、空気導入口を上方に配して構成されており、
タンクが接続ユニットに接続されて供給管が液体供給口を通って規制体の内側に挿入された状態において規制体の開口部が供給管の空気導入口に面するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、タンクの液体供給口を閉じるための弁体のずれ発生を防止し、タンクからの液体供給に伴う空気導入の際の泡抜け性を改善して、液体吐出ヘッドに液体を安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるインクジェットプリンタの構成を説明する模式図。
【図2】インクジェットプリンタにインクタンクを取り付けた状態を説明する模式図。
【図3】本発明によるインクタンクの構成を説明する分解斜視図。
【図4】本発明の実施例におけるインクタンクの筐体の形状を説明する斜視図。
【図5】本発明の実施例におけるインクタンクのジョイントユニットの構成を説明する模式図。
【図6】本発明の実施例におけるインクタンクの、図3の構成部品組立て後におけるA‐A断面を説明する模式図。
【図7】本発明の実施例におけるインクタンクの筐体の変形例を説明する斜視図。
【図8】本発明の実施例におけるインクタンクの物流時の変形状態を示す模式図。
【図9】本発明の実施例におけるインクタンクの筐体の溶着リブ付近を説明する模式図。
【図10】本発明の実施例におけるインクタンクの情報記憶媒体およびインク供給口と記録装置本体との接続について説明する模式図であり、インクタンクが着脱された直後の状態を示す図。
【図11】本発明の実施例におけるインクタンクの情報記憶媒体およびインク供給口と記録装置本体との接続において、インクタンクが装着される直前の状態を示す図。
【図12】本発明の実施例におけるインクタンクの情報記憶媒体およびインク供給口と記録装置本体との接続において、情報記憶媒体の取り付け位置がインクタンク装着方向に対して、鉛直の場合、装着される直前の状態を示す図。
【図13】本発明の実施例におけるインクジェットプリンタにインクタンクが取り付けられ、インク導出と同時に、インクタンク筐体内に空気が導入された状態を説明する模式図。
【図14】特許文献2に開示された従来のインクタンクを説明する模式図。
【図15】特許文献1に開示された従来のインクタンクにおける封止弁との接続部を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施例)
以下、本発明の第1の実施例について図面を参照して説明する。なお、インクを記録媒体に向かって吐出して記録を行うインクジェットプリンタおよびこれに用いられるインクタンクを例に挙げて説明するが、あくまで例示であり、例示の形状、構成および材料に対して本発明の思想を逸脱しない範囲であらゆる変更が可能である。また、図3と図4を除いた図においてインクタンクが表されているが、これは便宜上、図3と図4に示した本発明の実施例によるインクタンク構成を簡略化もしくは模式化した図であることに留意されたい。
【0017】
(プリンタ構成)
以下、図1、図2を用いて、本実施例におけるインクジェットプリンタ(以下、プリンタと略す)の構成について説明する。
【0018】
図1および図2に示されるプリンタ1には、インクタンク100を着脱可能に収容できる筐体としてのインクタンク接続ユニット10と、インクタンク100からインクを抜き出す液体導出口であるインク導出口20および空気を取り入れる空気導入口30を備えた供給管40と、抜き出したインクを記録ヘッド50へと供給するインクチューブ60と、インクタンクへ空気を取り入れる空気チューブ70とを備えている。液体吐出ヘッドである記録ヘッド50は記録媒体に向かってインク液滴を噴射もしくは吐出する複数のインク吐出用ノズルを備えたものである。
【0019】
インクチューブ60の途中にはポンプ80が配されており、ポンプ80の吸引動作により、インクタンク接続ユニット10に取り付けられたインクタンク100からインクを、インクチューブ60と供給管40を通じて抜き出す構成である。インクチューブ60においてポンプ80と供給管40の間には、第一の弁90が設けられ、インク供給時に開くようになっている。抜き出されたインクは、記録ヘッド50側に設けられたサブタンク120に貯留され、記録ヘッド50に送られる。
【0020】
供給管40に連結された空気チューブ70の、供給管40に連結された側とは反対側は、大気開放されており、必要に応じて、第二の弁110で開閉される構成になっている。
【0021】
プリンタ1が水平面に設置された状態において、インクタンク接続ユニット10の筐体の底面10aは水平に位置する。さらにインクタンク接続ユニット10は、筐体の側面10bに相対する側に、インクタンク10を出し入れ自在な開口10cを有する。開口10cには必要に応じて蓋部材などが付設されても良いことは言うまでもない。インクタンク100は開口10cからインクタンク接続ユニット10の筐体内部へ略水平方向に装着されるもので、この装着時に前側となる面で且つインクタンク底面100aに隣接する側面100bの側にインク供給口105を有している。
【0022】
さらに、先端側にインク導出口20と空気導入口30とを備えた供給管40が、インクタンク接続ユニット10の筐体の底面10aと隣接している側面10bから筐体内側へ突き出すように延在している。供給管40内にインク導出口20と空気導入口30を有する2つの流路を備えている。インク導出口20を持つ流路はインクチューブ60に接続され、空気導入口30を持つ流路は空気チューブ70に接続されている。
【0023】
供給管40のインク導出口20は供給管40の下部(略鉛直方向下側)に位置し、空気導入口30は供給管40の上部(略鉛直方向上側)に位置している。
【0024】
(インクタンク構成)
次に、図3〜図5を用いて、本実施例によるインクタンクの構成について説明する。図3は、図2に模式的に示したインクタンク100に相当する本実施例のインクタンクの分解斜視図であり、図4は本実施例のインクタンクの筐体の形状を斜視図で表し、図5は、図2に示した供給管40が接続されるインクタンク100のジョイントユニット310(図3)の部品構成をより理解しやすくするために模式図で示している。
【0025】
図3に示すようにインクタンク100は、大別して、インクを収納する筐体130と、プリンタ1と連結するジョイントユニット310と、筐体130およびジョイントユニット310を保護するカバー150と、で構成されている。ジョイントユニット310は複数の部品によって構成されるもので、各部品の詳細については後述する。
【0026】
インクタンク筐体
図4に示すように筐体130は、剛性があり直接インクなどの液体を収納可能で、底面部230と、底面部230と対向する上面部(不図示)と、それらに隣接し対向した複数の側面部(不図示)とを有する。また、インク供給口105側の面130aは、インクを注ぐための開口部160と、インク収納容積をアップするための複数の側面部285とを備えた形状であり、筐体130の開口部160には、ジョイントユニット310を構成するジョイントベース140(図3)が溶着される。
【0027】
インクタンク100の装着方向は、ユーザービリティ性を考慮して、置かれたプリンタ1に対して略水平方向にインクタンク100を装着できるようにされている。また、インクタンク100内のインク残りを極力少なくできるようにするため、図3および図5に示すように液体供給口であるインク供給口105に対応する開口部160がインクタンク100の筐体130の側面130aの最下部に設けられている。
【0028】
但し、インク供給口105をインクタンク100の筐体130の側面130aの最下部に設けた場合、インクタンク100の落下時におけるインク供給口105まわりの破損やインク漏れの可能性があるため、その周辺を覆うようにカバー150が取り付けられている。また、カバー150の底面でインクタンク100の一部を受けることにより、インクタンク装着時のタンクの姿勢が安定する。
【0029】
また、大量のインクを消費する大型のプリンタ1においては、インクタンク100の交換頻度を抑えるため、インクタンク100は大容量化してきており、タンク装着方向と直交する方向のインクタンク100の幅が広くなってきている。その場合、インク供給口105から該幅の端部までの距離が長くなり、プリンタ1へのインクタンク100の装着時において、インクを最後まで使いきれないで残るインク残量も多くなる。このインク残量を極力少なくするためには、タンク装着方向と直交する方向のタンク底面230の幅を狭くしたいが、あまり狭くしすぎるとタンク装着時のタンク姿勢が安定しなくなり、供給管40とインク供給口105との接続が確実に行われない可能性がある。その結果、接続部に余計な力がかかり、接続部からのインク漏れが生じたり、最悪の場合、供給管40が曲がったり、折れてしまうおそれがある。
【0030】
そこで、図4に示すように、タンク底面230の、開口部160とは反対側の端寄りに第一の突起部220が突設され、かつ、図6に示すようにタンク底面230が、インクタンク接続ユニット10内のタンク設置面(水平面である底面10a)に平行な仮想面(図6中の一点鎖線)に対して筐体130の開口部160側に傾斜して形成されている。これにより、インクを最後まで使いきれないで残るインク残量を少なくすることができる。
【0031】
さらに、タンク底面230の、開口部160側の端寄りに第二の突起部250を設けることで、第二の突起部250の側面をプリンタ1のロック部材(不図示)で係合し、プリンタ1に対してインクタンク100を固定することができる。
【0032】
本実施例では、インクタンク100のインクタンク接続ユニット10への挿入時に、第一の突起部220が引っ掛かることがないように、タンク挿入方向における第一の突起部220の斜面220aを出来るだけ長くして、装着のミスを防止している。
【0033】
また、図4では、第一の突起部220は、四角すい状に形成されているが、これに限らず、図7(a)〜(c)のような形状でもよい。
【0034】
図7(a)に示す第一の突起部221は、前述の第一の突起部220をリブ状に形成したものである。この場合、前述の第一の突起部220による筺体130の内部の凹みがなくなるため、インク残量を減らすことができる。
【0035】
図7(b)に示す第一の突起部222は、図7(a)の第一の突起部221と第二の突起部250を第一の突起部と同一高さのリブでつなぎ、かつ、第一の突起部221を把持部260側に伸ばした形状である。このように、リブ状の部位をタンク底面230のほぼ全域に設ければ、タンク底面230の剛性が上がり、タンク底面230の変形による使い切り時のインク残量の増加を抑制することができる。すなわち、図8のような、高温環境に長時間放置された時などに起こる、内部の空気の膨張による内圧の上昇やインクの重さによる底面230の変形(膨れ)が抑制され、インク溜り(図8中の斜線部F)の発生を防ぐことができる。
【0036】
さらに、図7(b)の構成によれば、第一の突起部222には斜面(図6中の符号220a、図7(a)中の符号221a)が形成されないため、第一の突起部222が引っ掛かることなく、スムーズに装着を行うことができる。
【0037】
しかし、このようなタンクを大容量化した場合、タンクを持ち運ぶ際にタンク底面230に手を添えることがあり、第一の突起部222の高さによっては、違和感を生じる場合がある。
【0038】
この場合、図7(c)のように、第一の突起部222の一部に凹部225を設けることで、持ち易くしてもよい。なお、凹部225がタンク底面230よりも出っ張ったリブを形成していれば、タンク底面230の剛性は確保され、インク残量の増加を抑制することができる。
【0039】
そして、図7(a)と図7(c)に示す斜面221aと222aは、前述した装着ミスを防止するために、図6に示す第一の突起部220の斜面220aと同様に、出来るだけ長くすることはいうまでもない。
【0040】
インクタンク100の筐体130の、開口部160が形成された側と対向する側には、把手部260が設けられており、持ち運び時やインクタンクユニットからタンクを取り外す際、ユーザーのハンドリング性を向上させている。把持部260は、筐体130に貫通穴を形成して作られている。
【0041】
本実施例では、把手部260を形成した貫通穴の周囲部は、インク収容可能な筐体内部と連通する中空体で構成されており、これらの中にもインクを充填可能であるため、その分インクタンク100のインク収納量を増大させることができる。
【0042】
さらに、把持部260に、図7に示すようなリブ261を複数本設けてもよい。これにより、把持部260の滑りを抑制し、ユーザーのハンドリング性をさらに向上させることが可能となる。
【0043】
ジョイントユニット(ジョイント部材)
インクタンク100の筐体130の開口部160にはジョイントユニット310が接合される。以下の説明では、図3に示すように筐体130にジョイントユニット310を取り付けた形態を筐体ユニット300と呼ぶこととする。
【0044】
ジョイントユニット310は、プリンタ1にインクを供給するインク供給口105を開閉する弁機構を内包して筐体130に取付けられる部材である。ジョイントベース140に設けられたインク供給口150に対応する開口には規制体165が設けられ、その内部にバネ170、バルブ180、およびシール部材190がこの順に組み込まれている。
【0045】
この構成についてさらに説明する。図5に示すように、ジョイントベース140は、弾性部材としてのバネ170と弁体としてのバルブ180を内在させ、かつ、バルブ180の動きを規制する有底筒形状の規制体165を有する。規制体165の部位はジョイントユニット310が筐体130に取り付けられた場合には、インクタンク100の内側に配置される。ジョイントベース140の規制体165が設けられている側とは反対の側には、規制体165の筒穴を取り囲むように設けられた環状リブ166を備えている。環状リブ166は規制体165の筒穴より大きい開口を形成している。シール部材190はこのような環状リブ166の内側に挿入されている。一方、規制体165内においては、バルブ180は、バネ170により付勢されてシール部材190へと押し付けられるように配されている。そのバネ170の力でシール部材190が環状リブ166から抜け出ないように環状リブ166にキャップ200を被せることで、シール部材190が固定されている。キャップ200の中心にはインク供給口となる開口が形成されている。
【0046】
なお、シール部材190は中心に穴が貫通した環状の構造であり、その外周部には突条リブが環状に設けられており(不図示)、ジョイントベース140の環状リブ166の内周に確実に密着することができる。この突条リブにより、シール部材190とジョイントベース140との気密性が確保される。
【0047】
このようにシール部材190をジョイントベース140に密着させて、且つ、バルブ180をシール部材190に確実に押し付けることで、筐体ユニット300内からのインク漏れならびに蒸発等によるインクの変性が抑制される。
【0048】
このシール部材190には、例えばブチルゴム等のゴム材や、エラストマー等の熱可塑性樹脂材など柔軟性のある材料などで構成されている。
【0049】
また、図5に示すようにインクタンク100がインクタンク接続ユニット10に装着される状態で、規制体165の、バネ170よりも上に位置される部分に、開口部270が設けられている。これにより、供給管40がインク供給口105を通ってジョイントユニット310の規制体165内に挿入されたとき、大気と連通した供給管40の空気導入口30から規制体165内へ導入された空気が、開口部270を通って規制体165の外へと容易に抜ける。つまり、開口部270を設けたことで空気の抜け性を良くしている。
【0050】
また、図3に示すように、ジョイントベース140には、インクタンク100内のインクに関する情報(例えばインクの物性、インク残量等)を記憶して外部との情報伝達を可能とする情報記憶媒体210が固定されている。そして、インクタンク接続ユニット10側の供給管40とインクタンク100側のインク供給口105との正確な位置合わせを行なうために、ジョイントベース140には位置決めガイド口280と位置決めガイド口290が配設され、インクタンク接続ユニット10にはこれらのガイド口に挿入される2つのガイドピン(不図示)が配設されている。なお、位置決めガイド口280,290は、インク供給口105に近いほど、その位置決め精度は向上する。
【0051】
また、図9に示すように、筐体130の開口部160の周縁にジョイントベース140を溶着するための溶着リブ320が突出するように形成されている。溶着リブ320による囲いよりも内側の位置に、ジョイントベース140上の情報記憶媒体210とインク供給口105が配置されている。これにより、プリンタ1側の電気コネクター(後述)や供給管40がジョイントユニット310(インクタンク100)に接続されたときにその接続方向に力が働いたとしても、筐体130の変形は起きない。なぜなら、本実施例において、溶着リブ320の突出方向の高さ分の肉厚で、より強固な状態を維持することができるためである。結果、プリンタ1側の電気コネクター(後述)および供給管40と、インクタンク100側の情報記憶媒体210およびインク供給口105との確実な接続が可能となり、電気接続の不具合やインク漏れの心配がなくなる。
【0052】
上記の情報記憶媒体210は、図10に示すように、インクタンク100がインクタンク接続ユニット10に装着された状態において、電気コネクター330との接続面(電気接続部)が上向きに向けられ、かつ、インク供給口105よりも上方に配置されている。その上、情報記憶媒体210のプリンタ1側の端部は、点線Rで図示するように、インク供給口105のキャップ200よりも飛び出た位置に配置されている。以上のような配置にすることで、インクタンク100の着脱時に、インク供給口105からインクが飛び散った場合でも、情報記憶媒体210の、電気コネクター330との接続面の裏側にインク供給口105があるため、情報記憶媒体210へのインク付着を防ぐことができる。
【0053】
さらに、図11に示すように、情報記憶媒体210の、電気コネクター330との接続面は電気コネクター330の接続方向に対して、斜めに配置されている。そうすることで、インクタンク100の水平方向への装着操作で、情報記憶媒体210の、電気コネクター330との接続面に対して電気コネクター330の接点部品を正面から接触させることができる。これにより、電気接続時における接点部品の移動量を少なくできるため、接続部分である電気コネクター330の接点部品の寿命を延ばすことが可能となる。結果、情報記憶媒体210へのインク付着防止と、電気コネクター330における接点部品の延命を同時に実現することができる。
【0054】
さらに、図12に示すように、情報記憶媒体210の電気コネクター330との接続面が電気コネクター330の接続方向に対して、鉛直方向の場合でも、電気コネクター330の接点部品の寿命を延ばすことが可能である。しかし、情報記憶媒体210へのインク付着に対処させることを考えた場合、図10の例のように、電気コネクター330との接続面を上向きに向けることがより好ましい。
【0055】
カバー
図3に示すように、筐体130の側面部285およびジョイントユニット310を保護するために、筐体130にはカバー150が取り付けられており、そのカバー150は誤装着防止のための複数の穴151を有している。
【0056】
本実施例のカバー150は、段差を有する平面部152を備えており、万が一誤ってインクタンクを落下した場合、インク供給口105が直接床面に当たらないような形状にされている。また、カバー150の材質は、接液性に関係がない部品なので、耐落下強度と耐熱性が高い樹脂アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンを用いている。
【0057】
次に、インクタンクの筐体130とジョイントユニット310の組み付けについて説明する。
【0058】
筐体130は開口部160を有し、開口部160の周縁には溶着リブ320が突設されており、そこにジョイントベース140を取り付け、ジョイントベース140と筐体130が溶着される。その後、バネ170、バルブ180、シール部材190、およびキャップ200がこの順にジョイントベース140の規制体165内に組み込まれて、筐体130とジョイントユニット310との組み付けが完了する。
【0059】
インク供給口105に対応している筐体130の部位に開口部160があり、この開口部160の内側にシール部材190とバルブ180とバネ170が配置されている。以上の構成により、インクタンク100は、実質的に密閉された構造となる。
【0060】
次に、図2および図13を用いて、プリンタ1のインクタンク100と接続する部分の構造について詳細に説明する。
【0061】
上記インクタンク100をプリンタ1のインクタンク接続ユニット10に装着すると、供給管40の先端が、シール部材190の開口にシール部材190を押し広げながら挿入されてバルブ180に当たる。
【0062】
このようにシール部材190を押し広げることで、供給管40とシール部材190とのシール性が確保された状態となる。
【0063】
この状態からさらに、インクタンク100をプリンタ1側(インクタンク接続ユニット10の筐体の側面10b側)へ押し込むと、供給管40によりバルブ180がインクタンク筐体130の内部に押し込まれ、供給管40の先端付近に設けられたインク導出口20および空気導入口30が、筐体130内のインクと繋がる。
【0064】
以上のように、インクタンク100をプリンタ1に装着すると、プリンタ1に備えられた供給管40の外周部とインクタンク100のシール部材190の内周部が密閉状態になる。結果、供給管40のインク導出口20および空気導入口30とインクタンク100の筐体130内とが連通される。
【0065】
このように構成する事で、インクの抜き出しと空気の取り入れを同一箇所で行なうことが出来るため、供給管40とシール部材190とのシール部位が1箇所となる。従って、供給管40とシール部材190との位置精度が出しやすくなり、インク漏れに対する信頼性を高めることが可能となる。
【0066】
以上の接続状態において、インク供給動作は次のステップにより行なわれる。
【0067】
図2および図13を用いて説明すると、ポンプ80の吸引動作から、インクタンク100を構成する筐体130内のインクは、プリンタ1の供給管40に配されたインク導出口20を通り、インクチューブ60を介して、サブタンク120に供給される。その際、図13に矢印Qで示すように筐体130からインクが排出されると同時に、図13に矢印Pで示すように空気がプリンタ1側の空気チューブ70を介して供給管40の空気導入口30から筐体130内へ導入することで安定したインク供給が可能となる。
【0068】
サブタンク120に供給されたインクは、サブタンク120を通じて記録ヘッド50に供給され、記録ヘッド50に設けられた複数インク吐出用ノズルから噴射される。
【0069】
以上に説明したように、本実施例によるインクタンクによれば、インクタンク100とプリンタ1側の供給管40との接続部において、バルブ開閉動作でのバルブ180の位置ずれを規制体165で規制することができる。その上、インクタンク100内への空気導入時の泡抜け性が改善され、記録ヘッド50にインクを安定的に供給することができる。また、万が一誤って、インクタンク100を床などに落とした場合でも、上記したようにバルブ180の位置ずれが規制体165で防止されるため、バルブ180とシール部材190とのシール性の信頼性も向上する。結果、ユーザーや床などへのインク飛び散りの心配も解消させられる。
【0070】
また、供給管40とシール部材190との間のシール部位が、インクタンクの挿入方向に直交する方向の径を締め付ける側へのシールとなっているため、インクタンク100のインクタンク接続ユニット10への装着ストロークに対して、安定したシール性を確保することが出来る。
【0071】
さらには本実施例のように、インク導出口と空気導入口をひとつの部品にまとめた接読ユニット構成とすることで、部品構成の簡素化によって記録装置のコストダウンが可能となる。
【0072】
なお、インクタンク接続ユニット10の供給管40は、必ずしも一体である必要は無く、別体の構成としても本願発明の効果は発揮されるものである。
【0073】
上記した実施例では、インクタンク100に対して供給管40の刺さる位置を筐体130の側面130aの最下部に配した構成を用いて説明したが、もちろん、必ずしも側面最下部である必要は無い。
【符号の説明】
【0074】
1 インクジェットプリンタ
10 接続ユニット
20 インク導出口
30 空気導入口
40 供給管
50 記録ヘッド
100 インクタンク
105 インク供給口
130 筐体
140 ジョイントベース
160 筐体の開口部
165 規制体
170 バネ
180 バルブ
190 シール部材
210 情報記憶媒体
230 タンク底面
270 規制体の開口部
310 ジョイントユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収納する筐体と、液体供給口と、前記筐体内部に配され前記液体供給口に向って弾性部材によって付勢されて該液体供給口を閉じる弁体と、前記弾性部材および前記弁体を内包し前記弁体の動作を規制する規制体と、を備え、供給管が前記液体供給口を通って前記規制体の内側に挿入された状態で、該供給管から空気が前記筐体内に導入されるとともに該供給管から液体が導出されるタンクにおいて、
前記液体供給口は前記筐体の底面と隣接した側面に位置しており、前記規制体は前記筐体の底面に沿って延在し、かつ、鉛直方向の上部に開口部を備えていることを特徴とするタンク。
【請求項2】
前記液体供給口は、前記供給管を挿入可能な穴を有するシール部材を備え、該シール部材には、該穴を閉じるように前記液体供給口に向って前記弾性部材によって付勢された前記弁体が当接することを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
前記供給管の先端は液体を導出する液体導出口と空気を導入する空気導入口とを備えており、
前記供給管が前記液体供給口を通って前記規制体の内側に挿入された状態で前記規制体の前記開口部が前記供給管の前記空気導入口に面する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項4】
前記筐体の前記側面は、電気接続部を持つ情報記憶媒体を固定した部位を有しており、該部位は、前記電気接続部が前記液体供給口の周縁よりも前記側面に対して外側に突出した位置にあるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項5】
前記部位は、前記情報記憶媒体の前記電気接続部が前記液体供給口に対して外に向くように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のタンク。
【請求項6】
前記部位は、前記情報記憶媒体の前記電気接続部が前記筐体の前記側面に対して傾斜して配置されるように形成されていることを特徴とする請求項5に記載のタンク。
【請求項7】
前記筐体の底面と隣接した側面に形成され、前記弾性部材および前記弁体を内包した前記規制体を前記筐体の内部に配置するための開口と、
該開口の周縁に対して接合された、前記液体供給口および前記情報記憶媒体を有するジョイント部材とを備え、
前記液体供給口および前記情報記憶媒体が前記開口の周縁による囲いの内側に位置することを特徴とする請求項4に記載のタンク。
【請求項8】
前記液体供給口は前記筐体の底面と隣接した側面における該底面の側の端部に位置しており、
前記タンクが水平面に置かれた状態で前記筐体の底面は前記液体供給口に向って液体が流れるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項9】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
該液体吐出ヘッドで吐出する液体を収納する筐体、該筐体から外部へ液体を供給する液体供給口、前記筐体内部に配され前記液体供給口に向って弾性部材によって付勢されて該液体供給口を閉じる弁体、および前記弾性部材と前記弁体を内包し前記弁体の動作を規制する規制体を備えたタンクと、
前記タンクが接続される接続ユニットであって、前記タンクの接続時に前記液体供給口を通って前記規制体の内側に挿入される供給管を備え、該供給管は前記筐体内部から液体を前記液体吐出ヘッドへ導出する液体導出口と該液体の導出に伴い該筐体内部へ空気を導入する空気導入口とを有する接続ユニットと、
を含むプリンタにおいて、
前記液体供給口は前記筐体の底面と隣接した側面に位置しており、前記規制体は前記筐体の底面に沿って延在し、かつ、鉛直方向の上部に開口部を備えており、
前記供給管は鉛直方向に対して前記液体導出口を下方に、前記空気導入口を上方に配して構成されており、
前記タンクが前記接続ユニットに接続されて前記供給管が前記液体供給口を通って前記規制体の内側に挿入された状態において前記規制体の前記開口部が前記供給管の前記空気導入口に面するように構成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項10】
前記筐体の前記側面は、電気接続部を持つ情報記憶媒体を固定した部位を有しており、該部位は、前記電気接続部が前記液体供給口の周縁よりも前記側面に対して外側に突出した位置にあるように形成され、かつ、前記電気接続部が前記筐体の前記側面に対して傾斜して配置されるように形成されており、
前記接続ユニットには前記電気接続部と接続される接点を備えた接続部分を有し、前記接続部分は、前記タンクの前記接続ユニットへの接続において前記部位の前記情報記憶媒体の前記電気接続部と接続されるように傾斜して配置されていることを特徴とする請求項9に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−224959(P2011−224959A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187156(P2010−187156)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】