説明

タンクキャップ

【課題】トルクリミッタ機構における空回りをさせるための荷重の調整を容易に行わせることができるとともに、キャップ本体を精度よく空回りさせることができるタンクキャップを提供する。
【解決手段】アウタ1aとボディ1b及びケース1cとを組み付けて成るキャップ本体1と、回転方向に所定荷重以上の負荷が付与された際アウタ1aをボディ1b及びケース1cに対して相対的に回転させて空回りさせるトルクリミッタ機構とを具備したタンクキャップにおいて、トルクリミッタ機構は、コイルバネS4にて付勢されたロックピン8と、キャップ本体1の回転方向に対してロックピン8と係止可能とされた凸部1acとを有し、アウタ1aに所定荷重以上の負荷が付与されるとロックピン8がコイルバネS4の付勢力に抗して変位し、凸部1acとの係止が解かれることによりキャップ本体1が空回りし得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶における燃料タンク(特に小型船舶における燃料タンク)は、持ち運びが容易な可搬式とされていることが多く、その可搬式の燃料タンクの給油口に取り付けられるタンクキャップには、通常、キャップ本体が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させる連通孔と、使用者が操作手段(操作ノブ)を操作することにより当該連通孔を閉塞状態又は開放状態とし得る手動開閉弁とが配設されている。
【0003】
このようなタンクキャップとして、外側部材と内側部材とを組み付けて成るとともに燃料タンクの給油口を覆いつつ回転させて取り付け可能とされたキャップ本体と、キャップ本体に対して回転方向に所定荷重以上の負荷が付与された際、外側部材を内側部材に対して相対的に回転させて当該キャップ本体を空回りさせるトルクリミッタ機構とを具備したものが汎用的に用いられている。
【0004】
かかるタンクキャップに適用される従来のトルクリミッタ機構は、内側部材から一体的に延設された樹脂から成る延設部と、外側部材に形成されて延設部の先端と回転方向に係止可能な凸部とを有して構成されている。そして、キャップ本体を回転させると、延設部が凸部と係止しているため、外側部材と内側部材とが一体的に回転して給油口に取り付けられる一方、回転の過程において所定荷重以上の負荷が付与されると、凸部に押圧された延設部が樹脂の可撓性によって撓み、その先端と凸部との係止が解かれて空回りするので、過負荷による破損が回避されるようになっている。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のタンクキャップにおいては、そのトルクリミッタ機構が延設部における樹脂の撓みを利用して空回りを行わせているので、空回りをさせるための荷重を調整する際、延設部と一体成形された樹脂部全体(内側部材全体の場合もある)を成形し直さなければならず、コストが嵩んでしまうという問題があった。また、外気の温度変化に応じて樹脂の撓み具合が変化してしまうことから、空回りをさせるための荷重が外気温度によって変化してしまう虞があり、キャップ本体を精度よく空回りさせるのが困難となってしまうという不具合もあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、トルクリミッタ機構における空回りをさせるための荷重の調整を容易に行わせることができるとともに、キャップ本体を精度よく空回りさせることができるタンクキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、外側部材と内側部材とを組み付けて成るとともに、燃料タンクの給油口を覆いつつ回転させて取り付け可能とされたキャップ本体と、該キャップ本体に対して回転方向に所定荷重以上の負荷が付与された際、前記外側部材を前記内側部材に対して相対的に回転させて当該キャップ本体を空回りさせるトルクリミッタ機構とを具備し、前記燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップにおいて、前記トルクリミッタ機構は、前記内側部材に配設され、コイルバネにて付勢された係止部材と、前記外側部材に形成され、前記キャップ本体の回転方向に対して前記係止部材と係止可能とされた凸部とを有し、前記外側部材に所定荷重以上の負荷が付与されると前記係止部材が前記コイルバネの付勢力に抗して変位し、前記凸部との係止が解かれることにより前記キャップ本体が空回りし得ることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のタンクキャップにおいて、前記トルクリミッタ機構は、前記係止部材における前記凸部との係止面が所定角度傾斜して成るとともに、当該係止部材における前記係止面の反対面が回転方向に対して略垂直とされたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のタンクキャップにおいて、前記係止部材は、前記キャップ本体の回転軸と略平行な方向に延びたピン状部材から成ることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載のタンクキャップにおいて、前記キャップ本体に形成され、当該キャップ本体が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させ得る連通孔と、前記キャップ本体に配設され、第1位置と第2位置との間で操作可能な操作手段と、該操作手段の操作に伴って上下動し、当該操作手段が前記第1位置にあるとき前記連通孔を閉塞状態とするとともに当該操作手段が前記第2位置にあるとき当該連通孔を開放状態とする手動開閉弁と、前記連通孔を閉塞状態にて維持するとともに、前記燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合及び設定値より低い場合、その圧力を利用して前記連通孔を自動的に開放状態とし得る自動開閉弁とを具備するとともに、前記手動開閉弁及び自動開閉弁は、前記連通孔と略同軸状に配設され、且つ、前記トルクリミッタ機構は、前記手動開閉弁及び自動開閉弁の周囲位置において環状に複数形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、トルクリミッタ機構は、内側部材に配設され、コイルバネにて付勢された係止部材と、外側部材に形成され、キャップ本体の回転方向に対して係止部材と係止可能とされた凸部とを有し、外側部材に所定荷重以上の負荷が付与されると係止部材がコイルバネの付勢力に抗して変位し、凸部との係止が解かれることによりキャップ本体が空回りし得るので、トルクリミッタ機構における空回りをさせるための荷重の調整を容易に行わせることができるとともに、キャップ本体を精度よく空回りさせることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、トルクリミッタ機構は、係止部材における凸部との係止面が所定角度傾斜して成るとともに、当該係止部材における係止面の反対面が回転方向に対して略垂直とされたので、キャップ本体の締め付け方向への回転時には、係止部材の傾斜面によって当該係止部材をコイルバネの付勢力に抗して変位させることにより、キャップ本体を空回りさせて過負荷が付与されるのを防止できると共に、当該締め付け方向と逆方向への回転時には、係止部材の反対面が凸部と係止して外側部材と内側部材との一体的な回転が保持される。従って、請求項2の発明におけるトルクリミッタ機構は、トルクリミッタ機能とラチェット機能とを兼ね備えることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、係止部材は、キャップ本体の回転軸と略平行な方向に延びたピン状部材から成るので、キャップ本体の径方向(幅方向)に対する大型化を回避してタンクキャップの小型化を図ることができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、手動開閉弁及び自動開閉弁は、連通孔と略同軸状に配設され、且つ、トルクリミッタ機構は、手動開閉弁及び自動開閉弁の周囲位置において環状に複数形成されたので、連通孔の開閉動作をよりスムーズ且つ確実に行わせることができるとともに、タンクキャップの更なる小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るタンクキャップを示す平面図であって、(a)操作ノブが第2位置にある状態(b)操作ノブが第1位置にある状態を示す図
【図2】同タンクキャップを示す正面図
【図3】同タンクキャップを示す側面図
【図4】図2におけるIV−IV線断面図(操作手段が第1位置にある状態)
【図5】図2におけるIV−IV線断面図(操作手段が第2位置にある状態)
【図6】図1におけるVI−VI線断面図
【図7】同タンクキャップにおける自動開閉弁(連通孔を閉塞状態に維持した状態)を示す断面図
【図8】同タンクキャップにおける自動開閉弁(燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合)を示す断面図
【図9】同タンクキャップにおける自動開閉弁(燃料タンク内部の圧力が設定値より低い場合)を示す断面図
【図10】同タンクキャップを示す分解斜視図
【図11】同タンクキャップ内に配設されたトルクリミッタ機構におけるピン状部材(係止部材)を示す模式図
【図12】同タンクキャップ内に配設されたトルクリミッタ機構における凸部を示す模式図
【図13】同タンクキャップにおけるトルクリミッタ機構の作用を説明する図であって、キャップ本体が締め付け方向に回転する過程で凸部にピン状部材(係止部材)が係止した状態を示す模式図
【図14】同タンクキャップにおけるトルクリミッタ機構の作用を説明する図であって、キャップ本体が締め付け方向に回転する過程で凸部に対するピン状部材(係止部材)の係止が解除された状態を示す模式図
【図15】同タンクキャップにおけるトルクリミッタ機構の作用を説明する図であって、キャップ本体が締め付け方向と反対方向に回転する過程で凸部に状部材(係止部材)が係止した状態を示す模式図
【図16】同タンクキャップが適用される燃料タンクを示す模式図
【図17】同燃料タンクの給油口に本タンクキャップを取り付けた状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るタンクキャップは、図16に示す如き船舶における可搬式の燃料タンクTの給油口Taに取り付け可能なものである。かかる燃料タンクTは、内部に所定容量の燃料を収容可能とされており、持ち運ぶ際に把持可能な把持部Tcと、船舶から延設されたホース等と接続されて内部の燃料を排出してエンジン側に供給可能な排出部Tbとが形成されている。
【0017】
本タンクキャップは、図17に示すように、燃料タンクTの給油口Taに螺合にて取り付けられて当該給油口Taを開閉し得るもので、図1〜12に示すように、キャップ本体1と、連通孔aと、操作手段としての操作ノブ2と、手動開閉弁3と、自動開閉弁としての第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7と、トルクリミッタ機構(ロックピン8及び凸部1ac)とから主に構成されている。キャップ本体1は、給油口Taを覆いつつ取り付け可能なもので、外側部材としてのアウタ1aと、内側部材としてのボディ1b及びケース1cとを組み付けて一体形成して成るものである。
【0018】
アウタ1a(外側部材)は、例えば傘状に形成された樹脂成形品から成るもので、その中央頂部には操作ノブ2が取り付けられる突出部1aaが一体的に形成されている。この突出部1aaには、後述する連通孔aと通じる開口部1aeが形成されているとともに、操作ノブ2が回動する際に摺動する傾斜面1abが形成されている。ボディ1b(内側部材)は、図6に示すように、ボルトBにてケース1cと一体的に組み付けられるとともに、図4、5に示すように、アウタ1aに形成された爪部1adと係止可能な切欠部1baを有して成るものである。
【0019】
而して、ボルトBにて一体的に組み付けられたボディ1b及びケース1c(内側部材)は、爪部1adを切欠部1baに係止させて組み付けられており、アウタ1a(外側部材)に対して所定寸法の回転を許容しつつ抜け止めが図られている。尚、符号P1〜P3は、パッキン部材を示しており、これらパッキン部材P1〜P3にて所望部位をシールしている。また、符号1bbは、ボディ1bに形成されたネジ部を示しており、図17に示すように、このネジ部1bbを給油口Taの外縁部に形成されたネジ部Taaに螺合させることにより、本タンクキャップ全体が当該給油口Taに取り付け可能とされている。
【0020】
また、キャップ本体1には、紐やチェーン等から成る紐状部材Wの一端が取り付けられた取付プレート9が組み付けられている。この取付プレート9は、所定部位に鍔部を有する板状部材から成り、キャップ本体1に対して相対的な回動が許容されて組み付けられており、当該鍔部に紐状部材Wの一端が固定されている。かかる紐状部材Wの他端は、例えば燃料タンクTの把持部Tcに結び付けられて固定可能とされており、当該燃料タンクTの給油口Taから本タンクキャップを取り外した際、当該タンクキャップを燃料タンクTに連結させておくことができるようになっている。
【0021】
連通孔aは、キャップ本体1のボディ1bに形成された孔から成り、キャップ本体1が給油口Taに取り付けられた状態で燃料タンクT内部と外部とを連通させ得る(具体的には、後述の手動開閉弁3及び自動開閉弁6、7が開状態のとき燃料タンクT内部と外部とを連通させ得る)ものである。この連通孔aは、本タンクキャップの略中心軸に沿って形成されており、その開口縁部近傍には、シール手段としてのOリング4が配設されている。
【0022】
操作ノブ2(操作手段)は、キャップ本体1の上部に配設され、第1位置(図1(b)で示す「CLOSE位置」)と第2位置(同図(a)で示す「OPEN位置」)との間で回動操作可能なものである。この操作ノブ2には、傾斜面1ab(図10参照)と対峙する摺動面2aが形成されており、回動操作される際、傾斜面1ab上を摺動して突出部1aaに対して上下動し得るよう構成されている。即ち、操作ノブ2は、傾斜面1ab上を摺動して上下動しつつ第1位置と第2位置との間で回動操作可能とされているのである。
【0023】
更に、操作ノブ2には、開口部1aeに挿通した挿通部2cが形成されており、この挿通部2cに切欠2bが形成されている。かかる切欠2bには、手動開閉弁3に形成された爪部3aが係止されており、操作ノブ2の回動操作と連動して手動開閉弁3が動作し得るようになっている。この手動開閉弁3は、操作ノブ2の回動操作に伴って上下動し、当該操作ノブ2が第1位置(「CLOSE位置」)にあるとき連通孔aを閉塞状態とするとともに当該操作ノブ2が第2位置(「OPEN位置」)にあるとき当該連通孔aを開放状態とするものである。
【0024】
具体的には、手動開閉弁3には、Oリング4と当接又は離間可能とされるとともにキャップ本体1内に配設されたコイルバネS1と当接した弁部3bが形成されており、当該コイルバネS1にて手動開閉弁3及び操作ノブ2が常時下方へ付勢されて組み付けられている。そして、弁部3bがOリング4と当接(コイルバネS1にてOリング4を押圧)した状態となると、連通孔aが閉塞状態となり、当該弁部3bがOリング4から離間した状態となると、連通孔aが開放状態となるよう構成されている。尚、コイルバネS1の上端には、プレート5が介装されており、操作ノブ2の回動操作時、当該操作ノブ2がプレート5上を摺動し得るようになっている。
【0025】
即ち、操作ノブ2が第1位置(「CLOSE位置」)にあるとき、弁部3bがコイルバネS1の付勢力にてOリング4を押圧した状態となって連通孔aを閉塞状態とするとともに、操作ノブ2を第2位置(「OPEN位置」)に向かって回動操作すると、当該操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して上昇する過程で手動開閉弁3が連動して上昇し、弁部3bがコイルバネS1の付勢力に抗してOリング4から離間した状態となって連通孔aを開放状態とするのである。
【0026】
反対に、第2位置(「OPEN位置」)にある操作ノブ2を第1位置(「CLOSE位置」)に向かって回動操作すると、当該操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して下降する過程で手動開閉弁3が連動して下降し、弁部3bがコイルバネS1の付勢力にてOリング4を押圧した状態となって連通孔aを閉塞状態とする。このようにして、操作ノブ2が傾斜面1ab上を摺動して上下動する過程で手動開閉弁3を連動させて上下動させ、連通孔aを任意に開閉し得るようになっているのである。
【0027】
自動開閉弁(6、7)は、連通孔aを閉塞状態にて維持するとともに、燃料タンクT内部の圧力が設定値(上限値α)より高い場合及び設定値(下限値β)より低い場合、その圧力を利用して連通孔aを自動的に開放状態とし得るものであり、第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7で構成されている。これら第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7は、ケース1cに形成された収容部C1内に収容されており、当該収容部C1の下端部には開口C1aが形成されている。
【0028】
第1自動開閉弁6は、燃料タンクT内部の圧力が設定値(上限値α)より高い場合に連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第2自動開閉弁7が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)とし得るもので、コイルバネS2で下方に常時付勢された部品6aと、該部品6aに付与された付勢力で下方に常時付勢されるとともに中央の軸方向に貫通孔6baが形成された部品6bとで主に構成されている。
【0029】
部品6bの下面は、通常時、図7に示すように、収容部C1の段部及び第2自動開閉弁7の上面にそれぞれ当接され、その当接部位においてシールし得るようになっている。第2自動開閉弁7は、燃料タンクT内部の圧力が設定値(下限値β)より低い場合に連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第1自動開閉弁6が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)とし得るもので、コイルバネS3で上方に常時付勢された部品から成る。而して、燃料タンクT内部の圧力が上限値α以下であり且つ下限値β以上である場合、図7に示すように、第2自動開閉弁7が第1自動開閉弁6の部品6bの下端と当接してシールされるため、開口C1aと連通孔aとが連通しない状態とされる。
【0030】
そして、燃料タンクT内部の圧力が上限値αより高くなると、図8に示すように、その圧力によって第1自動開閉弁6が第2自動開閉弁7にて下方から押圧されて上昇し、部品6bの下面と段部Dとの間に隙間を形成する。これにより、開口C1aと連通孔aとが連通した状態となり、連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第2自動開閉弁7が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)として、内部の過大な圧力を外部に逃がすことができる。
【0031】
また、燃料タンクT内部の圧力が下限値βより低くなると、図9に示すように、その圧力によって第2自動開閉弁7がコイルバネS3の付勢力に抗して下降し、部品6bの下面と第2自動開閉弁7との間に隙間を形成する。これにより、開口C1aと連通孔aとが貫通孔6baを介して連通した状態となり、連通孔aを開放状態(即ち、手動開放弁3及び第2自動開閉弁7が開状態のとき、連通孔aが燃料タンクT内部と外部とを連通した状態)として、内部の負圧を解消することができる。
【0032】
上記実施形態によれば、連通孔aを閉塞状態にて維持するとともに、燃料タンクT内部の圧力が設定値より高い場合及び設定値より低い場合、その圧力を利用して連通孔aを自動的に開放状態とし得る自動開閉弁(6、7)を具備したので、通常時(燃料タンク内部が設定値(上限値α)より高い場合及び設定値(下限値β)より低い場合以外)においては、操作ノブ2を第2位置(連通孔aを開放状態とする位置)として燃料タンクTを使用する際、連通孔aを閉塞状態として燃料の揮発を抑制することができる。
【0033】
また、自動開閉弁は、燃料タンクT内部の圧力が設定値(上限値α)より高い場合に連通孔aを開放状態とし得る第1自動開閉弁6と、当該燃料タンクT内部の圧力が設定値(下限値β)より低い場合に連通孔aを開放状態とし得る第2自動開閉弁7とを具備したので、燃料タンクT内部の圧力が高い場合と低い場合とで、連通孔aを開放状態とするそれぞれの設定値(即ち、上限値α及び下限値β)を容易に設定できる。
【0034】
ここで、本実施形態においては、ボディ1b(内側部材)側に配設された係止部材としてのロックピン8(ピン状部材)と、アウタ1a(外側部材)側に形成された凸部1acとで構成されたトルクリミッタ機構が配設されており、アウタ1a(外側部材)に所定荷重以上の負荷が付与されると、当該アウタ1aが内側部材(ボディ1b及びケース1c)に対して相対的に回転することにより、キャップ本体1が空回りし得るようになっている。
【0035】
より具体的には、ボディ1b(内側部材)における所定部位には、コイルバネS4及びロックピン8(係止部材)を収容した収容部C2が複数形成されており、それぞれのロックピン8がコイルバネS4によって上方に付勢されつつ配設されている。このロックピン8(コイルバネS4も同様)は、図11に示すように、ボディ1b(内側部材)に対して円環状に複数(本実施形態においては4つ)配設されており、コイルバネS4の付勢力より大きな荷重(所定荷重)が付与されると、当該コイルバネS4が圧縮されるのに伴って変位(下降)するよう設定されている。
【0036】
また、本実施形態に係るロックピン8(係止部材)は、図4、5に示すように、キャップ本体1の回転軸(図中上下方向に延びる軸)と略平行な方向に延びたピン状部材から成るものとされている。更に、本実施形態に係るロックピン8の先端は、図13に示すように、凸部1acとの係止面8aが所定角度傾斜して成るとともに、その係止面8aと反対面8b(ロックピン8の先端における係止面8aと反対側の面)が回転方向(図13の矢印方向)に対して略垂直とされている。一方、アウタ1a(外側部材)におけるロックピン8の先端(上端)に対応する位置には、図12に示すように、下方に突出した複数の凸部1acが平面視で環状に一体形成されており、当該ロックピン8の先端が係止し得るようになっている。
【0037】
そして、アウタ1a(外側部材)を手で掴みながら締め付け方向に回転させて本タンクキャップを燃料タンクTの給油口Taに取り付ける際、図13で示すように、ロックピン8の先端が係止面8aにて凸部1acと係止しているため、当該アウタ1aと共にボディ1b及びケース1c(即ち、タンクキャップ全体)が連れ回しされるよう設定されているとともに、連れ回しの過程で過大な荷重が加わる(設定荷重以上が付与される)と、図14で示すように、ロックピン8がコイルバネS4の付勢力に抗して変位(下降)し、凸部1acとの係止が解かれるようになっている。これにより、アウタ1a(外側部材)がボディ1b及びケース1c(内側部材)に対して空回りすることとなり、過大な荷重の付与による破損等が防止されることとなる。
【0038】
また、アウタ1a(外側部材)を手で掴みながら締め付け方向とは反対方向に回転させて本タンクキャップを燃料タンクTの給油口Taに取り付ける際、図15で示すように、ロックピン8の反対面8bが凸部1acと係止してアウタ1a(外側部材)とボディ1b及びケース1c(内側部材)との一体的な回転が保持されるようになっている。即ち、本実施形態に係るトルクリミッタ機構は、締め付け方向にアウタ1aを回転する際、キャップ本体1の空回りが可能とされて過負荷が付与されるのを防止し得るとともに、締め付け方向と反対方向にアウタ1aを回転する際、アウタ1a(外側部材)とボディ1b及びケース1c(内側部材)との一体的な回転が保持されるようになっており、所謂ラチェット機能を備えているのである。
【0039】
一方、本実施形態においては、手動開閉弁3、第1自動開閉弁6(部品6a及び部品6b)及び第2自動開閉弁7は、連通孔aと略同軸状に配設されており、トルクリミッタ機構(ロックピン8及び凸部1ac)は、当該手動開閉弁3及び自動開閉弁(第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7)の周囲位置において環状に複数形成されている。これにより、手動開閉弁3、第1自動開閉弁6(部品6a及び部品6b)及び第2自動開閉弁7を連通孔aと略同軸状に配設することにより、連通孔aの開閉動作をよりスムーズ且つ確実に行わせることができるとともに、トルクリミッタ機構を当該手動開閉弁3及び自動開閉弁(第1自動開閉弁6及び第2自動開閉弁7)の周囲位置において環状に複数形成することにより、キャップ本体1内のスペースを有効活用することができ、タンクキャップの更なる小型化を図ることができる。
【0040】
尚、手動開閉弁3の開放圧力は、自動開閉弁(6、7)の開放圧力(弁が強制的に開状態とされる圧力)よりも大きく設定されている。これにより、操作ノブ2を第1位置(連通孔aを閉塞状態とする位置)として燃料タンクTを持ち運びする際、燃料タンクT内部の圧力が設定値を超えてしまった場合でも連通孔aが意図せず開放してしまうのを防止することができる。
【0041】
本実施形態によれば、トルクリミッタ機構は、アウタ1a(内側部材)に配設され、コイルバネS4にて付勢されたロックピン8(係止部材)と、ボディ1b(外側部材)に形成され、キャップ本体1の回転方向に対してロックピン8(係止部材)と係止可能とされた凸部1acとを有し、ボディ1b(外側部材)に所定荷重以上の負荷が付与されるとロックピン8(係止部材)がコイルバネS4の付勢力に抗して変位し、凸部1acとの係止が解かれることによりキャップ本体1が空回りし得るので、トルクリミッタ機構における空回りをさせるための荷重の調整を容易に行わせることができるとともに、キャップ本体1を精度よく空回りさせることができる。
【0042】
即ち、トルクリミッタ機構における空回りをさせるための荷重の調整を行うには、ロックピン8(係止部材)を付勢するためのコイルバネS4を任意のバネ係数を有するものに変更すれば足り、当該荷重調整を容易に行わせることができ、且つ、アウタ1a(外側部材)に所定荷重以上の負荷が付与されるとロックピン8(係止部材)がコイルバネS4の付勢力に抗して変位し、凸部1acとの係止が解かれることによりキャップ本体1が空回りし得るので、外気温度等にあまり影響されず、キャップ本体1を精度よく空回りさせることができるのである。
【0043】
更に、本実施形態に係るトルクリミッタ機構は、ロックピン8(係止部材)における凸部1acとの係止面8aが所定角度傾斜して成るとともに、当該ロックピン8(係止部材)における係止面8aと反対面8bが回転方向に対して略垂直とされたので、キャップ本体1の締め付け方向への回転時(図13、14参照)には、ロックピン8(係止部材)の傾斜面によって当該ロックピン8(係止部材)をコイルバネS4の付勢力に抗して変位させることにより、キャップ本体1を空回りさせて過負荷が付与されるのを防止でき、当該締め付け方向と逆方向への回転時(図15参照)には、ロックピン8の係止面8aと反対面8bが凸部1acと係止してアウタ1a(外側部材)とボディ1b及びケース1c(内側部材)との一体的な回転が保持される。従って、本実施形態におけるトルクリミッタ機構は、トルクリミッタ機能とラチェット機能とを兼ね備えることができる。
【0044】
また更に、係止部材としてのロックピン8は、キャップ本体1の回転軸と略平行な方向に延びたピン状部材から成るので、キャップ本体1の径方向(幅方向)に対する大型化を回避してタンクキャップの小型化を図ることができる。尚、本実施形態においては、操作ノブ2(操作手段)が第1位置と第2位置との間で操作されると手動開閉弁3が上下動して連通孔aを開閉(開放状態又は閉塞状態)し得るので、従来の如くネジ形状同士を噛み合わせて両者を螺合させて手動開閉弁を開閉するものに比べ、当該連通孔aの開閉操作を容易に行わせることができるとともに、当該連通孔aの開閉状態を目視にて容易に確認させることができる。
【0045】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば操作ノブ2を有さないもの或いは手動開閉弁3及び自動開閉弁6、7といった開閉弁を有さないものにも適用することができる。トルクリミッタ機構を構成する係止部材は、ロックピン8に代えてキャップ本体1の径方向(幅方向)に延設されたピン状部材としてもよく、その場合、コイルバネS4は図4、5中水平方向に延びて配設され、同方向にピン状部材が付勢されることとなる。
【0046】
また、本実施形態においては、手動開閉弁3と共に自動開閉弁6、7が配設されているが、手動開閉弁3のみ(操作手段の操作に伴って上下動し、当該操作手段が第1位置にあるとき連通孔を閉塞状態とするとともに当該操作手段が第2位置にあるとき当該連通孔を開放状態とする他の形態の手動開閉弁のみであってもよい)を配設するようにしてもよい。更に、本実施形態においては、可搬式の燃料タンクの給油口に取り付けられるものに適用されているが、船舶(車両などの他の乗り物であってもよい)に固定式の燃料タンクの給油口に取り付けるものに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
トルクリミッタ機構は、内側部材に配設され、コイルバネにて付勢された係止部材と、外側部材に形成され、キャップ本体の回転方向に対して係止部材と係止可能とされた凸部とを有し、外側部材に所定荷重以上の負荷が付与されると係止部材がコイルバネの付勢力に抗して変位し、凸部との係止が解かれることによりキャップ本体が空回りし得るタンクキャップであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 キャップ本体
1a アウタ(外側部材)
1b ボディ(内側部材)
1c ケース(内側部材)
2 操作ノブ(操作手段)
3 手動開閉弁
4 Oリング
5 プレート
6 第1自動開閉弁
7 第2自動開閉弁
8 ロックピン(係止部材)
9 取付プレート
a 連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側部材と内側部材とを組み付けて成るとともに、燃料タンクの給油口を覆いつつ回転させて取り付け可能とされたキャップ本体と、
該キャップ本体に対して回転方向に所定荷重以上の負荷が付与された際、前記外側部材を前記内側部材に対して相対的に回転させて当該キャップ本体を空回りさせるトルクリミッタ機構と、
を具備し、前記燃料タンクの給油口に取り付け可能なタンクキャップにおいて、
前記トルクリミッタ機構は、
前記内側部材に配設され、コイルバネにて付勢された係止部材と、
前記外側部材に形成され、前記キャップ本体の回転方向に対して前記係止部材と係止可能とされた凸部と、
を有し、前記外側部材に所定荷重以上の負荷が付与されると前記係止部材が前記コイルバネの付勢力に抗して変位し、前記凸部との係止が解かれることにより前記キャップ本体が空回りし得ることを特徴とするタンクキャップ。
【請求項2】
前記トルクリミッタ機構は、前記係止部材における前記凸部との係止面が所定角度傾斜して成るとともに、当該係止部材における前記係止面の反対面が回転方向に対して略垂直とされたことを特徴とする請求項1記載のタンクキャップ。
【請求項3】
前記係止部材は、前記キャップ本体の回転軸と略平行な方向に延びたピン状部材から成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のタンクキャップ。
【請求項4】
前記キャップ本体に形成され、当該キャップ本体が給油口に取り付けられた状態で燃料タンク内部と外部とを連通させ得る連通孔と、
前記キャップ本体に配設され、第1位置と第2位置との間で操作可能な操作手段と、
該操作手段の操作に伴って上下動し、当該操作手段が前記第1位置にあるとき前記連通孔を閉塞状態とするとともに当該操作手段が前記第2位置にあるとき当該連通孔を開放状態とする手動開閉弁と、
前記連通孔を閉塞状態にて維持するとともに、前記燃料タンク内部の圧力が設定値より高い場合及び設定値より低い場合、その圧力を利用して前記連通孔を自動的に開放状態とし得る自動開閉弁と、
を具備するとともに、前記手動開閉弁及び自動開閉弁は、前記連通孔と略同軸状に配設され、且つ、前記トルクリミッタ機構は、前記手動開閉弁及び自動開閉弁の周囲位置において環状に複数形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のタンクキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−230796(P2011−230796A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102505(P2010−102505)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】