説明

タンク部品の締結構造

【課題】貯留した内部ガスをタンク内に密封するためのシール部に傷が付くこと、あるいは口金部の内周部や当該タンク部品自体が損傷することを抑制する。
【解決手段】高圧タンク1の口金部2に締結されるタンク部品3の締結構造に関し、口金部2と締結されるためのねじ締結部4を備え、当該タンク部品3のうち口金部2に挿入される部分の少なくとも一部が弾性部材5によって一体的に被覆されている。ねじ締結部4の先端や当該タンク部品3の先端部分にテーパシール面5を備え、該テーパシール面5が弾性部材6によって一体的に覆われていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク部品の締結構造に関する。さらに詳述すると、本発明は、水素等の貯蔵に利用される高圧タンクにおいてねじを利用してバルブアッセンブリ等の部品を締結するための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
水素等の貯蔵に利用される高圧タンクとして、タンク開口部に設けられた口金部にバルブアッセンブリ(高圧バルブ等を内蔵した部品)を取り付ける構造のものが利用されている。また、口金部にバルブアッセンブリを取り付けるにあたっては、口金部のめねじ部分にバルブアッセンブリのおねじ部分を螺合させるというような単純なねじ構造を利用したタンク部品の締結構造が多く利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなタンク部品の締結構造の場合、例えば35MPa場合によって70MPaにも至るような高い内圧をねじ締結部だけでなく座面でも受けることになるため、バルブアッセンブリ等のタンク部品の締結荷重をそれに見合う程度にまで大きくする必要がある。また、貯留した内部ガスをタンク内に密封するためのシール部(例えば封止用シール部材が設けられる部分)がバルブアッセンブリの先端付近や口金部内周部のこれに対応する部分に設けられている。
【特許文献1】特開2005−291434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バルブアッセンブリを取り付けたりあるいは取り外したりする際、ねじ締結部とシール部の同軸度にずれが生じ、当該バルブアッセンブリの特に先端部で口金部の内周部に形成されているシール部やめねじ部を傷付けたり、あるいは当該タンク部品自体を損傷させたりしてしまうことがある。そうすると、シール部におけるシール性(シール性能ないしはシール能力)の低下を招来し、ガス密封性能が劣化するといった問題が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、貯留した内部ガスをタンク内に密封するためのシール部に傷が付くこと、あるいは口金部の内周部や当該タンク部品自体が損傷することを抑制できるようにしたタンク部品の締結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、本発明者は種々の検討を行った。例えば燃料電池システム用の水素用高圧タンクにおいては、バルブアッセンブリの先端付近と口金部の内周部との隙間が10〜20μmといった程度の極めて狭いクリアランスに設定されていることがある。したがってクリアランス管理が難しい、つまり、このような狭いクリアランスの下でタンク部品を傷付けずに取り扱うことが難しい場合がある。また、このように極めて狭いクリアランスの下では、同軸度が僅かにずれているだけでもバルブアッセンブリの一部(例えば先端付近)が口金部の内周部に当たって傷が付いたり損傷したりすることがありうる。
【0007】
そこで上述のごとき同軸度のずれについて本発明者がさらに検討すると、その要因として、表面に傷が付いていることや、おねじがめねじに噛み込みあるいは食い付いてしまった状態(以下、「かじり」と表現する)が生じていることが挙げられると考えた。すなわち、傷やかじりが生じていると軸力にばらつきが生じ、過大な軸力が作用してねじ面が破損したり、あるいはそこに軸力低下が加わってねじの緩みが生じたりする。また、例えばタンクに作用する内圧の影響により口金部が変形し、クリアランスが減少して金属どうしの接触が起こることもあり得る。
【0008】
以上から、本発明者は口金部の内周部分やタンク部品自体が損傷するのを効果的に抑えてシール部によるガス密封性能が劣化するのを抑制する、という観点から検討を重ね、かかる課題の解決に結び付く技術を知見するに至った。
【0009】
本発明はかかる知見に基づくものであり、高圧タンクの口金部に締結されるタンク部品の締結構造であって、前記口金部と締結されるためのねじ締結部を備え、当該タンク部品のうち前記口金部に挿入される部分の少なくとも一部が弾性部材によって一体的に被覆されていることを特徴とするものである。さらに、本発明では、前記ねじ締結部の先端にテーパシール面を備え、該テーパシール面が前記弾性部材によって一体的に覆われている、という締結構造とする。あるいは、当該タンク部品の先端部分にテーパシール面を備え、該テーパシール面が前記弾性部材によって一体的に覆われている、という締結構造ともする。
【0010】
このように、タンク部品のうち口金部に挿入される部分の少なくとも一部に一体的に被覆された弾性部材は、締結されたタンク部品と口金部との間に弾性変形した状態で介在しうる。このように金属どうしの間に弾性部材を介在させる、という構造をとる本発明によれば口金部の内周部や当該タンク部品自体が損傷するのを抑制することが可能となる。また、これにより、傷やかじりが生じないようにして軸力にばらつきが生じるのを抑え、結果として同軸度にずれが生じるのを抑制することができる。したがって、バルブアッセンブリを取り付けたりあるいは取り外したりする際、シール部に傷が付いてシール性が低下してしまうのを抑制することも可能となる。
【0011】
また、ねじ締結部の先端あるいはタンク部品(例えばバルブアッセンブリ)の先端にテーパシール面が設けられ、当該テーパシール面を弾性部材によって一体的に覆っている場合には、当該弾性部材が口金部に面当たりする構造とすることができる。しかも、この弾性部材はねじ締結部の先端、あるいは当該タンク部品の先端のテーパシール面を覆うものだから、タンク部品を口金部に取り付ける際、金属どうしが接触するのを回避するように介在し尚かつ弾性変形する部材として機能し、金属の表面に傷が生じるのを抑制する。また、テーパシール面と口金部の内周部との間で押圧された状態となった当該弾性部材は、ガスをタンク内に密封するためのシール部材としても機能する。換言すれば、ねじの先端部分あるいは当該タンク部品の先端部分がシール機能を発揮することになる。しかも、テーパ形状となっているから、Oリングなどの従来のシール部材よりもシールの面積を大きくとることが可能である。加えて、弾性変形した状態でタンク部品と口金部との間に介在した弾性部材は、ねじ締結部の緩み抵抗となって回り止めとしても機能しうる。
【0012】
以上のようなタンク部品の締結構造の場合、タンク部品の複数箇所にテーパシール面を備え、これらテーパシール面が前記弾性部材によって一体的に覆われていることも好ましい。この場合、より高いシール性を発揮することが可能である。
【0013】
さらに、前記弾性部材が熱収縮チューブであることも好ましい。テーパシール面を熱収縮チューブで被覆した場合、この熱収縮チューブからなる弾性部材が、口金部の内周部やタンク部品自体が損傷するのを抑えることができる。しかも、テーパ形状のシール面に熱収縮チューブを被覆した構造であるため、シールの面積を大きくとることが可能である。
【0014】
さらに、前記ねじ締結部が弾性コーティングされている締結構造も好ましい。この場合、ねじ締結部の軸方向で異なる弾性部材がコーティングされていることも好ましい。
【0015】
ねじ締結部が弾性コーティングされた締結構造、つまり弾性部材で被覆された締結構造の場合、当該ねじ締結部に作用する軸力や反力、拘束力といった種々の力を弾性コーティング部分で抑えることが可能となる。つまり、タンク部品を締め付けていき、やがて座面が接触すると軸力等の外力がねじ締結部に作用するが、本発明の場合、弾性コーティングされた部分が当該ねじ締結部と口金部(のめねじ部)との間に介在し、上記のような外力の作用を低減する。これによれば、タンク部品(バルブアッセンブリ)がシール部へと強く押し付けられることを抑え、傷が付くのを抑制することができる。また、例えばシール性に優れる弾性部材と耐久性に優れる弾性部材といったように、前記ねじ締結部の軸方向で異なる弾性部材がコーティングされているようにすればそれぞれの長所を組み合わせて活かすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、タンク部品を取り付ける際、口金部の内周部や当該タンク部品自体が損傷するのを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1〜図6に本発明にかかるタンク部品の締結構造の実施形態を示す。本発明にかかるタンク部品3の締結構造は、高圧タンク1の口金部2に取り付けられる例えばバルブアッセンブリなどのタンク部品(以下、バルブアッセンブリとだけ表現する場合がある)3を締結するためのものである。以下では、このようなバルブアッセンブリ(タンク部品)3の締結構造の一実施形態として、燃料電池自動車用の高圧水素タンクに適用した場合について説明することにする。
【0019】
まず、本実施形態における燃料電池システムの概略について示す(図1参照)。この燃料電池システム10は、燃料電池20と、酸化ガスとしての空気(酸素)を燃料電池20に供給する酸化ガス配管系30と、燃料ガスとしての水素ガスを燃料電池20に供給する燃料ガス配管系40と、システム全体を統括制御する制御部70と、を備えたシステムとして構成されている。
【0020】
燃料電池20は、例えば固体高分子電解質型で構成され、多数の単セルを積層したスタック構造を備えている。燃料電池20の単セルは、イオン交換膜からなる電解質の一方の面に空気極を有し、他方の面に燃料極を有し、さらに空気極及び燃料極を両側から挟みこむように一対のセパレータを有している。一方のセパレータの燃料ガス流路に燃料ガスが供給され、他方のセパレータの酸化ガス流路に酸化ガスが供給され、このガス供給により燃料電池20は電力を発生する。
【0021】
酸化ガス配管系30は、燃料電池20に供給される酸化ガスが流れる供給路11と、燃料電池20から排出された酸化オフガスが流れる排出路12と、を有している。供給路11には、フィルタ13を介して酸化ガスを取り込むコンプレッサ14と、コンプレッサ14により圧送される酸化ガスを加湿する加湿器15と、が設けられている。排出路12を流れる酸化オフガスは、背圧調整弁16を通って加湿器15で水分交換に供された後、最終的に排ガスとしてシステム外の大気中に排気される。
【0022】
燃料ガス配管系40は、燃料供給源としての高圧の水素タンク(本明細書では高圧タンクという)1と、高圧タンク1から燃料電池20に供給される水素ガスが流れる供給路22と、燃料電池20から排出された水素オフガス(燃料オフガス)を供給路22の合流点Aに戻すための循環路23と、循環路23内の水素オフガスを供給路22に圧送するポンプ24と、循環路23に分岐接続された排出路25と、を有している。
【0023】
高圧タンク1は、例えば35MPa又は70MPaの水素ガスを貯留可能に構成されている。高圧タンク1の主止弁26を開くと、供給路22に水素ガスが流出する。その後、水素ガスは、インジェクタ29により流量及び圧力を調整された後、さらに下流において機械式の調圧弁27その他の減圧弁により、最終的に例えば200kPa程度まで減圧されて、燃料電池20に供給される。主止弁26及びインジェクタ29は、図1において破線の枠線で示すバルブアッセンブリ3に組み込まれ、バルブアッセンブリ3が高圧タンク1に接続されている。
【0024】
供給路22の合流点Aの上流側には、遮断弁28が設けられている。水素ガスの循環系は、供給路22の合流点Aの下流側流路と、燃料電池20のセパレータに形成される燃料ガス流路と、循環路23とを順番に連通することで構成されている。排出路25上のパージ弁33が燃料電池システム10の運転時に適宜開弁することで、水素オフガス中の不純物が水素オフガスと共に図示省略した水素希釈器に排出される。パージ弁33の開弁により、循環路23内の水素オフガス中の不純物の濃度が下がり、循環供給される水素オフガス中の水素濃度が上がる。
【0025】
制御部70は、内部にCPU,ROM,RAMを備えたマイクロコンピュータとして構成される。CPUは、制御プラグラムに従って所望の演算を実行して、インジェクタ29の流量制御など、種々の処理や制御を行う。ROMは、CPUで処理する制御プログラムや制御データを記憶する。RAMは、主として制御処理のための各種作業領域として使用される。制御部70は、ガス系統(30,40)や図示省略の冷媒系統に用いられる各種の圧力センサや温度センサなどの検出信号を入力し、各構成要素に制御信号を出力する。
【0026】
続いて、本実施形態にかかるタンク部品の締結構造について説明する(図2等参照)。
【0027】
高圧タンク1は、当該高圧タンク1のボディを構成する密閉円筒状の本体の一端に口金部2が設けられた構造となっている(図2参照)。本体は、ガスが外部へ透過するのを抑制する内側の樹脂ライナ1aと、この樹脂ライナ1aの外側を覆う例えばCFRPあるいはGFRPからなるシェル1bとの二層構造となっている。また、高圧タンク1の本体内部は水素ガスを高圧で貯蔵する貯蔵空間1cとなっている(図2参照)。
【0028】
口金部2は、例えばステンレスなどの金属で形成され、タンク本体の球面状をした端壁部の中心に設けられている。また、この口金部2の内周面に形成されためねじを介して、バルブアッセンブリ3が当該口金部2にねじ込まれて着脱可能な状態で締結されるようになっている。
【0029】
バルブアッセンブリ3は、高圧タンク1におけるガス排出部を構成している部品である。図中では特に示していないが、直列に配置された高圧バルブやインジェクタを内蔵した構造となっている。また、このバルブアッセンブリ3のハウジングはアルミニウム合金製である。これらも特に図示していないが、このハウジングには、インジェクタ等以外に、安全弁(リリーフ弁、溶栓弁)や逆止弁など他のバルブが設けられてもよい。
【0030】
また、このようなバルブアッセンブリ3を高圧タンク1に着脱可能に取り付けるため、口金部2と締結させるためのねじ締結部4が設けられている(図2等参照)。ねじ締結部4は、バルブアッセンブリ3を口金部2に締結するために形成されている部位であり、より具体的には、口金部2の内周面のめねじに螺合するよう当該バルブアッセンブリ3の外周面に形成されたおねじである。例えば本実施形態の場合、バルブアッセンブリ3の一部は口金部2の内側に収まる細径部となっており、この細径部の途中に上述のようなねじ締結部4が形成されている(図2等参照)。
【0031】
さらに、本実施形態では、バルブアッセンブリ3のうち口金部2に挿入される部分(細径部)の少なくとも一部を弾性部材5によって一体的に被覆することとしている(図中では当該弾性部材自体、または弾性部材がコーティング等されて設けられた部分を符号5で示す)。このように、バルブアッセンブリ3のうち口金部2に挿入される部分の少なくとも一部に一体的に被覆された弾性部材5は、バルブアッセンブリ3と口金部2との間に弾性変形した状態で介在することができる(図2参照)。このようにして金属どうしの間に弾性部材5を介在させるという構造をとる本実施形態の高圧タンク1によれば、口金部2の内周部やバルブアッセンブリ3が損傷するのを抑制することが可能である。さらには、口金部2、バルブアッセンブリ3あるいはそのねじ締結部4に傷やかじりが生じないようにして軸力にばらつきが生じるのを抑えることも可能である。したがって、ねじ締結部4を含め、口金部2とバルブアッセンブリ3との間における同軸度にずれが生じるのを抑制することが可能となっている。したがって、本実施形態のごとき締結構造によれば、バルブアッセンブリ3を取り付けたりあるいは取り外したりする際、シール部に傷が付いてシール性が低下してしまうという問題が生じるのを回避することが可能である。
【0032】
また、本実施形態では、ねじ締結部4の端部(ねじ端)にテーパ形状のシール面6を設け、該テーパシール面6にゴムコーティングやゴムライニングといった処理を施し、弾性部材5によって一体的に覆うという構造としている(図2参照)。具体的には、口金部2の内周であってめねじ部の下端部にいわば擂り鉢状の傾斜面をもつ環状の受け用シール面2aを設けるとともに、バルブアッセンブリ3側のねじ締結部4の下端部であってこのシール面2aに対向する部分にはテーパ形状のシール面6aを設けている(図2(A)参照)。また、このシール面6aを、弾性部材5aにより一体的となるように被覆している。この場合、口金部2とバルブアッセンブリ3に形成されているシール部(シール面2a,6a)の間に弾性部材5(5a)が介在した状態でこれらタンク部品が締結されることになるから、これらシール部に傷が付いてシール性が低下してしまうという事態を抑制することができる。
【0033】
なお、シール部を複数設けることとしてシール性の向上を図ることが好ましい。例えば本実施形態では、バルブアッセンブリ3の先端(図2中における下端)部分にもシール部を形成してシール部を二重構造としている。具体的には、口金部2の内周であってバルブアッセンブリ3の先端が当接する部分にはいわば擂り鉢状の傾斜面をもつ環状の受け用シール面2bを設けるとともに、バルブアッセンブリ3の先端部であってこのシール面2bに対向する部分(いわば首下端面)にはテーパ形状のシール面6bを設けている(図2(A)参照)。また、このシール面6bを、弾性部材5bにより一体的となるように被覆している。この場合、口金部2とバルブアッセンブリ3に形成されているシール部(シール面2b,6b)の間に弾性部材5(5b)が介在した状態でこれらタンク部品が締結されることになるから、これらシール部に傷が付いてシール性が低下してしまうという事態を抑制することができる。
【0034】
また、上述したごとくバルブアッセンブリ3の先端部分(首下端面)にシール部(シール面6b)およびこれを覆う弾性部材5bを設けることは、シール部自体に傷が付くこと、あるいは口金部2の内周部やバルブアッセンブリ3自体が損傷することを効果的に抑制しうるという点で好ましい。すなわち、例えば口金部2の開口部からバルブアッセンブリ3を差し入れて取り付ける場合、仮に当該バルブアッセンブリ3の先端が口金部2の内周面に接触したとしても、当該先端を被覆している弾性部材5(5b)が傷や損傷が生じるのを抑えうる。つまり、換言すれば本実施形態ではねじ(あるいはねじを有するタンク部品)の先端自体をシール部として機能させることとしているから、特にタンク部品の取付け・取外し時において生じやすい傷や損傷を効果的に抑えうるという利点がある。
【0035】
さらに、バルブアッセンブリ3の先端部分(首下端面)に設けられたシール部(シール面6b)およびこれを覆う弾性部材5bは、従来のOリングのような軸シールとしての機能と、面シール(例えばメタルシールのようなもの)としての機能の両方を併せ持ったシールを構成することができる。
【0036】
また、締結時、一般的にはねじ締結部4の端部(ねじ端)の面に応力集中が作用することになるが、本実施形態の締結構造においては当該ねじ端面に弾性部材5(5a)が設けられており、当該部分に弾性を有した構造となっているから、このような応力の集中を緩和するという作用効果を得ることも可能である。
【0037】
しかも、本実施形態では各シール面2a,2b,6a,6bをテーパ状に形成し、比較的広い領域で面当たりするようにしているため、バルブアッセンブリ3を締め込むにつれて自動的に軸合わせも行われるなど、シール性を確保しやすいという利点がある。また、軸方向位置にかかわらずクリアランスの大きさとシール部材の大きさとでほぼシール力が決まっていた従来のシール構造(例えば口金部2とバルブアッセンブリ3の間にOリングを介在させるシール構造)とは異なり、本実施形態の締結構造によればバルブアッセンブリ3を締め込むにつれて弾性部材5の変形量が増しシール力が大きくなることになる。このため、バルブアッセンブリ3を締め込み終わるのとほぼ同時に所定のシール力が得られる点で特徴的である。また、口金部2とバルブアッセンブリ3との間に介在する弾性部材5は、これら口金部2やバルブアッセンブリ3との接触面積が従来構造(例えばOリングを利用したもの)よりも大きく、尚かつゴム材料等が利用されることによって高い摩擦係数を有しているものであるから、バルブアッセンブリ3が緩ないようにする緩み抵抗となり、一定の締結状態を維持する回り止めのように機能することもできる。さらに加えると、本実施形態の締結構造においては、従来のシール構造のように口金部2の内周面にOリングを接触させ引きずるようにして移動させるというような動作も不要である。
【0038】
なお、以上のようなバルブアッセンブリ3の製造、および口金部2への取付けの工程を概略的に示すと図3に示すとおりである。すなわち、外周にねじ締結部4を形成するなどの加工(バルブ加工)を経た後(図3(A)参照)、シール面6を構成する部位にゴム等の弾性材料を被覆する。例えば図2に示した本実施形態のバルブアッセンブリ3であれば、ねじ締結部4の端部(ねじ端)に設けられたテーパ形状のシール面6(6a)に弾性部材5(5a)を被覆し(図3(B)参照)、さらに、バルブアッセンブリ3の先端部に設けられたテーパ形状のシール面6(6b)に弾性部材5(5b)を被覆することになる(図3(C)参照)。ただしこれらは被覆の形態の好適例に過ぎず、例えば、図3(D)に示すような中間被覆、つまりねじ締結部4の端部(ねじ端)とバルブアッセンブリ3の先端部との中間付近に形成されたテーパ形状のシール面6に弾性部材5を被覆することとしてもよい。要は、ねじ締結部4の先端側、より具体的に表現するとねじ締結部4からバルブアッセンブリ3の先端までの領域に弾性部材5が一体的に被覆されたシール面6を形成することとすれば、傷や損傷が生じるのをより効果的に回避することが可能になるということである。以上のようにして弾性部材5が一体的となるように被覆されたバルブアッセンブリ3は、口金部2に嵌め込まれて締結される(図3(E)参照)。
【0039】
なお、図2では計2箇所にテーパ形状のシール面6(6a,6b)が形成された二重シール構造のバルブアッセンブリ3を例示したが、これはシール性の向上を図るための好適例に過ぎない。所定のシール性が確保されるのであればシール面6は1箇所でも構わない。また、そのシール面6を弾性部材5で被覆する形態は、図3に示したねじ端被覆、先端被覆、中間被覆など、適宜変更して構わない。
【0040】
ここで、上述した弾性部材5の材質を例示すると、例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、ブチルゴム、シリコーン、NBR(ニトリルブタジエンラバー)などを挙げることができる。また、ゴム材料で被覆する際の接着方法としては、上述したゴムライニング等の他、ゴム塗料などのスプレー塗布、ディスペンサによるコーティングなどを挙げることができる。
【0041】
あるいは、弾性部材5として熱収縮チューブを適用することもできる(図4参照)。上述したようなテーパシール面6を熱収縮チューブで被覆した締結構造によっても上述したのと同様の作用効果を得ることが可能である。また、熱収縮チューブを被覆するにあたっては、バルブアッセンブリ3のうち対象となるテーパシール面6に当該弾性部材(熱収縮チューブ)5を被せ(図4(A)参照)、熱風を吹き付けるなどして加熱し(図4(B)参照)、テーパシール面6に被せた状態で一体的にすることができる。これによれば、バルブアッセンブリ3の少なくとも一部を弾性部材5で一体的に被覆するに際し、比較的簡単な手法で済むという利点がある。
【0042】
以上、ここまではテーパ形状のシール面6を弾性部材5で一体的に被覆した締結構造について説明したが、別形態として、例えばねじ締結部4自体を弾性コーティングした構造とすることも好ましい(図5参照)。すなわち、ねじが形成されている部分を全体的に弾性コーティングすることにより、当該ねじ締結部4に作用する軸力や反力、拘束力といった種々の力をコーティング部分で抑え、あるいは緩和することが可能となる。つまり、タンク部品(バルブアッセンブリ3)を締め付けていき、やがて座面が接触すると軸力等の外力がねじ締結部4に作用するが、本実施形態の場合、弾性コーティングされた部分が当該ねじ締結部4と口金部2との間に介在し、上記のような外力の作用を低減する。また、当該弾性コーティングによって保護されるため、バルブアッセンブリ3および口金部2に傷が付きにくいという利点もある。さらには、ねじ全体へのコーティングにより密封性能、封止性能を向上させてより高いシール性を実現することが可能になる。さらに加えると、ねじ締結部4の表面における耐腐食性を向上させるための防食剤としての機能も期待できる。ねじ部が腐食すると強度低下や緩みが生じるおそれがあるが、防食機能が発揮されることによってこのような事態を抑制することが可能である。
【0043】
なお、ここでいう弾性コーティングの一例としては、ねじ締結部4の全面に対して液状のパッキンを塗布して形成したものを例示することができる。液状パッキンは流動性を有しているため、タンク部品の締結時に潤滑効果を発揮することが可能であり、当該締結時に生じることのあったかじりをこの潤滑効果によって抑え、あるいは解消することが可能である。また、硬化後における当該液状パッキンは、被覆層としてねじ締結部4を覆った状態となり、シール機能のみならず上述したような防食機能や外力を緩和する機能を発揮することができる。なお、ここで説明した液状パッキンは弾性コーティングの好適な一例に過ぎない。このようなものの他、ゴムコーティングあるいはゴムライニングを施すなど種々の手段を採用することが可能である。
【0044】
さらには、ねじ締結部4の軸方向で異なる材料を弾性コーティングすることも好ましい(図6参照)。例えば、シール性に優れる弾性部材(例えば図6中におけるゴムA)5と、耐久性に優れる弾性部材(例えば図6中におけるゴムB)5’といったように、ねじ締結部4の軸方向で異なる弾性部材(5,5’)をコーティングすることとすれば、それぞれの材料の長所を組み合わせて活かすことが可能な構造となる。例示すれば、使用環境の変化によって雰囲気温度が大きく変化するような場合には、高温下にて性能を発揮しやすいゴム材料と低温下にて性能を発揮しやすいゴム材料とを組み合わせることも好適である。
【0045】
また、ここまで説明したようにねじ締結部4の全体を弾性コーティングする場合、バルブアッセンブリ3側のみならず、口金部2の内周側にコーティングすることもできる。ここでは特に図示してはいないが、例えばバルブアッセンブリ3と口金部2の両方にコーティングすることにより、金属どうしが干渉しあうのを回避して傷付きや損傷が生じるのをより効果的に抑制することが可能である。
【0046】
以上の説明から明らかなように、従来は金属どうしの接触が傷発生の要因となっていたのに対し、本実施形態においてはこのような構造であることを逆に利用する、つまり、金属どうしが接触しあう部位をシール機能を有した弾性部材5で被覆し、これによって接触部位をシール面として活用できるようにしている。このような締結構造によれば、貯留した内部ガス密封用のシール部に傷が付くこと、あるいは口金部2の内周部やバルブアッセンブリ3の一部に傷が生じたり損傷したりすることを効果的に抑制することが可能となる。しかも、ねじ締結力を利用してシール性を発揮させる構造となっているから、高いシール性を実現し、尚かつこの状態を維持することも可能である。
【0047】
また、高圧タンク1を燃料電池システムに適用する場合等における実際問題として、協会等による指定を受けているものしか利用できないなど使用可能な材料に制限が課されていることがある。このため、このような状況下では材料強度を大幅に改善することが困難な場合が多く、所望の材料強度がなかなか得られないということも生じる。このような状況下、上述した締結構造は、タンク部品の強度を所定値以上とし、あるいは当該強度を維持できるようにし、さらには所定値以上のシール性をも実現することを可能とする構造として有用である。
【0048】
また、貯留した内部ガス密封用のシール部は、例えば35MPaまたは70MPaといった高圧で貯留される水素ガス等を密封するために利用されるものであり、一重あるいは二重等に配置されたOリングが多く利用されている状況にある。これに対し、ここまで説明した締結構造では、テーパ形状に一体化された弾性部材5を利用してシール部を構成することができるから、従前のOリングなどは省略することが可能となっている。
【0049】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述した実施形態では、熱収縮チューブからなる弾性部材5の一例として筒状のものを図示したが(図4参照)、この代わりに、テーパ形状のシール面6にあわせてあらかじめテーパ状に形成されている熱収縮性の部材を利用することももちろん可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態における燃料電池システムの概略を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す高圧タンクにおける口金部等の断面図であり、(A)は図中の上側丸で囲った部分の拡大図、(B)は図中の下側丸で囲った部分の拡大図である。
【図3】バルブアッセンブリの製造および取付け工程の概要を示す図であり、(A)はバルブアッセンブリの加工、(B)〜(D)はそれぞれねじ端、バルブアッセンブリの先端、バルブアッセンブリの中間位置での弾性部材の被覆、(E)はバルブアッセンブリの高圧タンク(口金部)への締結を示している。
【図4】テーパシール面に熱収縮チューブを被覆する工程の概要を示す図であり、(A)はバルブアッセンブリのうち対象となるテーパシール面に熱収縮チューブを被せるところ、(B)は熱風を吹き付けるなどして加熱するところ、(C)は熱収縮チューブをテーパシール面に被せた状態で一体的にするところをそれぞれ示している。
【図5】ねじ締結部を弾性コーティングした締結構造の一例を示す概略図である。
【図6】ねじ締結部の軸方向で異なる材料を弾性コーティングした締結構造の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0051】
1…高圧タンク、2…口金部、3…バルブアッセンブリ(タンク部品)、4…ねじ締結部、5…弾性部材、6…シール面(テーパシール面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧タンクの口金部に締結されるタンク部品の締結構造であって、
前記口金部と締結されるためのねじ締結部を備え、
当該タンク部品のうち前記口金部に挿入される部分の少なくとも一部が弾性部材によって一体的に被覆されている
ことを特徴とするタンク部品の締結構造。
【請求項2】
前記ねじ締結部の先端にテーパシール面を備え、該テーパシール面が前記弾性部材によって一体的に覆われていることを特徴とする請求項1に記載のタンク部品の締結構造。
【請求項3】
当該タンク部品の先端部分にテーパシール面を備え、該テーパシール面が前記弾性部材によって一体的に覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載のタンク部品の締結構造。
【請求項4】
前記弾性部材が熱収縮チューブであることを特徴とする請求項2に記載のタンク部品の締結構造。
【請求項5】
タンク部品の複数箇所にテーパシール面を備え、これらテーパシール面が前記弾性部材によって一体的に覆われていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタンク部品の締結構造。
【請求項6】
前記ねじ締結部が弾性コーティングされていることを特徴とする請求項1に記載のタンク部品の締結構造。
【請求項7】
前記ねじ締結部の軸方向で異なる弾性部材がコーティングされていることを特徴とする請求項6に記載のタンク部品の締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−278472(P2007−278472A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109011(P2006−109011)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】