説明

タングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法、その方法によって製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒及びその触媒を用いて遊離脂肪酸が含まれた廃食用油から遊離脂肪酸を除去する方法

【課題】 本発明は、廃食用油中に含まれた遊離脂肪酸を除去してバイオディーゼル油の製造原料として利用するための不均一係固体酸触媒であるタングステンオキサイドアルミナ触媒をより手軽く製造する方法、その方法によって製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒、及びその触媒を用いて廃食用油中に含まれた遊離脂肪酸を除去してバイオディーゼル油製造原料として使われるようにする方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明に従ったタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法は、アルミナを所定温度で前処理する段階;前処理後、アルミナ100重量部に対して5〜30重量部のタングステン酸を前記アルミナに混合し、水酸化アンモニウムの水溶液と窒酸を順次に添加して撹拌する段階;混合物を撹拌後、濾過し、乾燥する段階;及び塑性化する段階;
を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法、その方法によって製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒及びその触媒を用いて遊離脂肪酸が含まれた廃食用油から遊離脂肪酸を除去する方法に関し、特に、遊離脂肪酸が含まれた廃食用油から遊離脂肪酸を除去するのに使われる不均一係固体酸触媒(heterogeneous solid acid catalyst)のうち一つであるタングステンオキサイドアルミナ(Tungsten Oxide Alumina)触媒を製造する方法、その方法によって製造された触媒及びその触媒を用いて高效率で遊離脂肪酸を除去してバイオディーゼルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業の発展につれて、ディーゼルエンジンを含む産業機械が増加しつつ、ディーゼルエンジンを含む車両が生活必需品になっている。世界的に車両の生産が増加しているに伴って、車両の燃料として使われるディーゼル油の消費も増加している。
【0003】
ディーゼル油は、原油から得られた様々な燃料のうち、高燃費、低価格であり、二酸化炭素CO2の低減の面でも長所を有する。しかしながら、ディーゼル油は、このような長所を有する一方、原油から得られた他の燃料に比べ、燃焼後、大気汚染物質を多く発生するという問題点も有する。
【0004】
このような問題点を解決するため、ディーゼル油と物性が似ていながらも費用面に優れており、大気汚染を防止することができる代替燃料に対する多角的研究が行われている。なかでも、ディーゼル油と物性が似ていながら、大気汚染の発生をかなり減少させ、更に、CO2低減効果が大きい自然循環型エネルギーであるバイオディーゼル油について多くの研究が行われている。
【0005】
バイオディーゼル油は、植物性油、動物性脂肪のような油脂又は再生可能な廃食用油を酸触媒又はアルカリ触媒の存在下で、アルコールと反応して生成されるエステル化油である。バイオディーゼル油は、車両の燃料に使われる鯨油と物性が似ており、鯨油と混合して又は鯨油に代わってディーゼルエンジンに使うことができる。
【0006】
バイオディーゼルの生産工程では、純粋な天然食用油のような植物性油脂がバイオディーゼル油の原料として利用することができる。しかしながら、純粋な天然食用油は、バイオディーゼル油の原料としては良いが、バイオディーゼル油の製造時、費用が多くかかる。つまり、バイオディーゼル油は、上記のような長所を有する一方、生産単価が既存の鯨油より高い問題点がある。従って、バイオディーゼル油の生産コストを低減するため、純粋な天然食用油より低費用の廃食用油を原料として利用するバイオディーゼル油の必要性が台頭している。
【0007】
バイオディーゼル油の原料物質に水気と遊離脂肪酸との含量が多ければ、バイオディーゼル油の生産に使われるアルカリ触媒が非活性化し易く、水気による加水分解が発生する恐れがある。また、遊離脂肪酸とアルカリ触媒とが結合して生成された金属塩によって加水分解反応がより促進される。また、バイオディーゼル油を含んだ生成物に金属塩が多く生成すれば、バイオディーゼル油からの金属塩の分離、精製が難しくなり、多くの費用と時間を要するので、バイオディーゼル油の生産性が低下する問題点がある。
【0008】
結局、このような問題を解決するため、廃食用油を用いてバイオディーゼル油を製造する時、廃食用油に含まれた遊離脂肪酸を除去しなければならない。
【0009】
本発明に関する従来技術として米国特許公報第4,363,590号、第4,608,202号などには、大豆油、油彩油、コーンオイル、牛脂などを原料にしてバイオディーゼル油を生産する方法が開示されている。しかしながら、上記の文献に開示されている技術は、バイオディーゼル油の原料として廃食用油でなく、純粋な油脂を用いている。
【0010】
また、韓国公開特許公報第1999−0016815号(発明の名称:廃食用油を利用した自動車両燃料の製造方法)は、遊離脂肪酸の除去に関する内容は開示されていなく、但し、均一係塩基触媒を用いて、1段階の反応で廃食用油からバイオディーゼル油を製造することを開示している。
【0011】
また、韓国公開特許公報第2002−0040693号(発明の名称:廃油の再生方法及びその装置)は、触媒に関する内容は開示されていなく、吸着剤を用いて廃油から遊離脂肪酸を物理的に除去する方法が開示されているが、このような方法によっても遊離脂肪酸の除去後、吸着剤の分離工程を要する問題点がある。
【0012】
また、韓国公開特許公報第2004−0087625号(発明の名称:廃食用油中の遊離脂肪酸の除去方法)は、不均一係固体酸触媒のうち、SO2-/ZrO、Amberyst-15(Rohm&HaasInc、米国)、HPW1240、HPMo1240、HSiW1240、HGeW1240のようなヘテロポーリ酸(Heteropolyacid、HPA)、Cs-HPA(Cs2.50.5PW1240)、Cs-HPA(Cs2.50.5PW1240)で、Csの一部分がニッケル(Ni)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、フランシウム(Fr)のような1A族の元素に置換された置換塩(Cs1〜2.40.1〜1.50.5PW1240、Aは、1A族の元素)、SO2-/SiO、ゼオライト(Zeolite)などの触媒を用いて、遊離脂肪酸を除去する方法が開示されている。いろいろの触媒の中でSO2-/ZrO触媒が一番高い遊離脂肪酸の除去率を有しているが、この触媒の場合、製造過程に困難がある。
【0013】
一方、最近、新しい不均一係触媒であるタングステンオキサイドアルミナ(Tungsten Oxide Alumina)触媒が注目されている。このタングステンオキサイドアルミナ触媒は、廃食用油から遊離脂肪酸を除去する反応に相当な活性を有する長所がある点で、利用が期待されている触媒である。
【0014】
しかしながら、タングステンオキサイドアルミナ触媒は、その製造方法が複雑であり、難しいので、低費用で常用化するに困難がある。また、製造された触媒の酸の強さが劣り、反応活性が非常に低いという短所もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許公報第4,363,590号
【特許文献2】米国特許公報第4,608,202号
【特許文献3】韓国公開特許公報第1999−0016815号
【特許文献4】韓国公開特許公報第2002−0040693号
【特許文献5】韓国公開特許報第第2004−0087625号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した問題点を解決するため、本発明は、廃食用油中に含まれた遊離脂肪酸を除去してバイオディーゼル油の製造原料として利用するための不均一係固体酸触媒であるタングステンオキサイドアルミナ触媒をより手軽く製造する方法を提供することを課題とする。
【0017】
また、本発明は、廃食用油中に含まれた遊離脂肪酸を除去してバイオディーゼル油の製造原料として利用するための不均一係固体酸触媒であるタングステンオキサイドアルミナ触媒を提供することを他の課題とする。
【0018】
また、本発明は、不均一係固体酸触媒であるタングステンオキサイドアルミナ触媒を用いて廃食用油中に含まれた遊離脂肪酸を除去してバイオディーゼル油製造原料として利用する方法を提供すること更に他の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するための本発明の一つの特徴に従ったタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法は、アルミナを所定温度で前処理する段階;前処理後、アルミナ100重量部に対して5〜30重量部のタングステン酸を前記アルミナに混合し、水酸化アンモニウムの水溶液と窒酸を順次に添加して撹拌する段階;混合物を撹拌後、濾過し、乾燥する段階;及び塑性化する段階;を含む。
【0020】
本発明の他の特徴に従ったタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法は、撹拌段階が、水酸化アンモニウムの水溶液を添加してpH9〜12で、1〜5時間行い、窒酸を添加してpH3〜6で、2〜5時間撹拌を行う。
【0021】
本発明の更に他の特徴に従ったタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法は、乾燥段階で、110℃で、2〜10時間乾燥を行い、かつ、前記塑性化段階で、450〜550℃で、6〜10時間塑性化を行う。
【0022】
本発明の更に他の特徴に従ったタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法は、前処理段階が、400〜550℃で行う。
【0023】
本発明の更に他の特徴に従ったタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法は、アルミナが、粉末又はペレット形態である。
【0024】
本発明の一つの特徴に従ったタングステンオキサイドアルミナ触媒は、上記の方法によって製造され、酸の強さが強い。
【0025】
本発明の一つの特徴に従ったタングステンオキサイドアルミナ触媒を用いて廃食用油から遊離脂肪酸を除去する方法は、アルコールと、遊離脂肪酸が含まれた廃食用油を反応モルビ1:1〜1:12で混合する段階;廃食用油100ml当たり、請求項1乃至5のうち何れかの一項の方法によって製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒の1〜30gを添加して混合する段階;混合物を60〜250℃で、2〜12時間、100〜1200rpmで撹拌して、エステル化反応させ、廃食用油から遊離脂肪酸を除去する段階;遠心分離器を用いて廃食用油中に含まれたタングステンオキサイドアルミナ触媒を分離する段階;及び廃食用油からエステルとトリグリセロイドとを分離する段階;を含む。
【0026】
本発明の他の特徴に従ったタングステンオキサイドアルミナ触媒を用いて廃食用油から遊離脂肪酸を除去する方法は、トリグリセロイドとエステルとを分離する方法が、靜置法又は遠心分離法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によって遊離脂肪酸の含量が低くなった廃食用油は、その廃食用油を原料にしてバイオディーゼル油を製造する際、アルカリ触媒の非活性化を低減し、バイオディーゼルの歩留まりを向上すると共に、バイオディーゼル油の生産単価を低減することができる。
【0028】
また、本発明よって製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒は、その製造方法が簡単であり、高温でも高い活性を確保することができる。
【0029】
また、本発明によって製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒は、大量供給が容易であり、生産単価が低いので、工業的にも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造工程図である。
【図2】本発明によるタングステンオキサイドアルミナ触媒を用いた遊離脂肪酸の除去工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付の図面を参照しながら、本発明の実施例について以下に説明する。また、本発明を説明するにおいて、関連する公知機能又は公知構成に関する具体的な説明が本発明の要旨の理解の妨げになると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0032】
本発明は、バイオディーゼル油の製造原料として利用するために、廃食用油中に含まれた遊離脂肪酸を除去する不均一係固体酸触媒中のうち一つであるタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法及びその方法によって製造された触媒を特徴とする。
【0033】
また、本発明は、上述した製造方法によって製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒を用い、下記の反応式(1)に従って遊離脂肪酸とアルコールとを反応させ、エステル物質と水気とを生成するエステル化反応を通して、廃食用油中に含まれた遊離脂肪酸を除去する方法を特徴とする。
【0034】
RCOOH + R‘OH →RCOOR‘ + H
遊離脂肪酸 + アルコール → エステル + 水気
上記の反応式で、Rは、炭素数がC12〜C24であるアルキル基であり、R‘は、炭素数が1〜4であるアルキル基である。一方、上記の反応式で、遊離脂肪酸とアルコールとの反応によって生成されたエステル物質は、バイオディーゼル油として利用することができる。
【0035】
本発明に従ったタングステンオキサイドアルミナ触媒は、従来技術においてアルカリ触媒の存在下で遊離脂肪酸の除去が效率的でないという問題点を解決するために使われる酸触媒である。特に、生成物が生成した後、生成物と触媒との分離を容易にするために、不均一係固体酸触媒のうち一つであるタングステンオキサイドアルミナ触媒を利用することが望ましいので、本発明は、このようなタングステンオキサイドアルミナ触媒を手軽く製造する方法を提供する。
【0036】
本発明に従った反応物であるアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールのうち選択された何れかの一つ、あるいは、二つ以上が均一な比で混合された混合物を利用することができる。
【0037】
本発明においてタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法は、次の通りである。
【0038】
まず、粉末形態のアルミナ(Alumina)を用いて400〜550℃で前処理し、アルミナ100重量部に対して5〜30重量部のタングステン酸(Tungstic acid)を添加して撹拌する。この時、撹拌は、水酸化アンモニウム(Ammonium hydroxide)水溶液を添加し、pH9〜12で、1〜5時間、窒酸(Nitric acid)を添加し、pH3〜6で、2〜5時間行う。
【0039】
攪拌後、濾過した後、110℃で、2〜10時間乾燥した後、450〜550℃で、6〜10時間塑性化して、タングステンオキサイドアルミナ触媒を製造する。
【0040】
本発明に従った遊離脂肪酸の転換に使われるタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法は、遊離脂肪酸の転換分野に使われたことがなく、従来技術のタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法と異なり、アルミナ担体にタングステンを担持するにおいて二つの工程が追加され、かつ、タングステンの前駆体物質に差異がある。また、従来技術の方法によって製造された触媒の遊離脂肪酸の転換率は、本発明の製造方法によって製造された触媒の転換率に比べ、略1/2程度に非常に低い。
【0041】
また、アルミナは、粉末、あるいは、ペレット(pellet)形態の担体も充分に製造することができる。しかしながら、反応活性は、粉末形態が一番良い。
【0042】
400〜550℃で前処理を行う理由は、不純物を除去すると共に、詰まっていた気孔を開くためである。一般的に、400〜550℃で前処理するとき、効果が一番良い。
【0043】
アルミナ100重量部に対して5〜30重量部のタングステン酸を添加する理由は、タングステン酸の添加量が、5重量部より小さい場合、活性が非常に劣り、30重量部より大きい場合、担持量を増やしても触媒活性にほとんど変化がないからである。
【0044】
水酸化アンモニウムの水溶液の添加は、本発明に従った触媒の製造方法において非常に重要な部分である。アルミナ担体にタングステンをよく形成するために、触媒担持時、一時的に塩基状態にしければならないので、上記の水酸化アンモニウムの水溶液を添加し、pH9〜12にする。pH9〜12に限定した理由は、このpH範囲で本発明の触媒製造の効果が一番良いからである。
【0045】
また、水酸化アンモニウムの水溶液の添加は常温で行われる。よって、別途に温度を与えなくても良いので、触媒を大量製造する時、費用を低減することができる。また、1〜5時間程度なら、十分な反応が行われる。
【0046】
窒酸(Nitric acid)の添加は、本発明に従って触媒を製造するにおいて非常に重要な部分であり、アルミナ担体にタングステンをよく形成するために、触媒の担持時に一時的に塩基状態に変えた後、また窒酸を添加してpH3〜6の酸性状態に変えて担持する。この工程を行う理由は、本発明の触媒が固体酸触媒からである。固体酸触媒への活性、つまり、酸の強さを極大化するため、酸性状態に変えるのである。また、2〜5時間程度なら、十分な反応が行われる。
【0047】
濾過は、粉末形態のタングステンアルミナが含まれた溶液をフィルターによって濾すことで行う。
【0048】
濾過した後、110℃で、2〜10時間乾燥する理由は、十分に乾燥するためである。また、450〜550℃で、6〜10時間塑性化する理由は、このような温度及び時間で触媒がよく製造されるからである。つまり、アルミナ担体は、元々白色の粉末であり、タングステンがよく担持されたら黄色に変わるが、上記の温度範囲で元の色が明らかに現われる。
【0049】
本発明に従って製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒は、製造工程が簡単であり、特に、アルミナ担体は他の固体酸触媒においての担体より非常に低価であるから商業的な工程で大きい長所がある。また、本発明に従って製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒は、遊離脂肪酸の除去工程に適用されたことがない新規な触媒である。
【0050】
本発明に従って製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒の活性は、従来技術の方法によって製造された触媒より2倍以上である。
【0051】
本発明は、上述した方法によって製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒を用い、廃食用油から遊離酸を除去してバイオディーゼルを生産する方法を行う。
【0052】
まず、アルコールと廃食用油とを反応モル比1:1〜1:12で混合し、上述した方法によって製造された粉末形態のタングステンオキサイドアルミナ触媒を廃食用油100ml当たり1〜30g添加した後、60〜250℃で、2〜12時間、100〜1200rpmで撹拌し、バッチ(Batch)反応器を用いてエステル化反応させる。
【0053】
アルコールと廃食用油とを反応モル比1:1〜1:12で混合した理由は、反応モル比が上限値である1:12を超える場合、さらに増加しても反応活性に大きい影響がないからである。
【0054】
また、タングステンオキサイドアルミナ触媒を廃食用油100ml当たり1〜30g添加した理由は、廃食用油100ml当たり30gを超えて添加しても、更なる遊離脂肪酸の転換率の向上がないからである。
【0055】
60〜250℃で、2〜12時間、100〜1200rpmで撹拌した理由は、反応活性が良いからである。
【0056】
一方、バッチ反応器は、一実施例に過ぎず、他の反応器を使っても良い。
【0057】
上述した反応が終わった後、遠心分離機を用いて不均一係固体酸触媒を分離する。その後、生成物中に含まれた水気を蒸発によって除去する。生成物から水気を除去すると、エステルと廃食用油の主成分であるトリグリセロイドが残り、それを靜置法、遠心分離法のような公知方法を用いてエステルを分離する。
【0058】
エステルが分離された廃食用油は、遊離脂肪酸の含量が非常に低くなり、それをバイオディーゼル油の製造原料として使うことができる。
【0059】
また、エステルを分離した後、エステル化反応によって生成された生成物の酸価を測定することで、遊離脂肪酸の低減可否を測定する。
【0060】
本発明において酸価は、エステルを分離した廃食用油中に残った遊離脂肪酸を滴定法によって測定することで評価する。例えば、生成物10gの試料を取って、ベンゼン25mlとエタノール25mlとの混合溶液と交ぜた後、フェノールフタレイン指示薬の一滴を入れ、0.1N水酸化カリウム(KOH)で滴定し、要されたKOH量から酸価を計算する。
【0061】
一方、本発明は、上述した方法で遊離脂肪酸を除去した廃食用油をバイオディーゼル油の製造原料として使うことができる。
【0062】
以下は、本発明の望ましい実施例であるが、本発明の権利範囲はこのような実施例に限定されるのではない。
【実施例1】
【0063】
粉末形態のWO/Al触媒を製造するため、粉末形態のAl(入手先:Sigma−Aldrich)を担体として利用し、30wt%のアンモニウムメタトングステイト(Ammonium metatungstate、入手先:Sigma−Aldrich)を初期湿式方法(Incipient Wetness method)で添加した後、80℃で蒸発処理した。
【0064】
以後、1073Kで塑性化し、粉末形態のタングステンオキサイドアルミナ触媒を製造した。
【0065】
上記のアンモニウムメタトングステイトの担持量は、実験結果、25wt%が一番望ましいと確認された。
【実施例2】
【0066】
廃食用油として4%の遊離脂肪酸が含まれた大豆油(入手先:第一製糖)30g、メタノール2.5gの混合溶液に、実施例1で製造された触媒(WO/Al)15gを添加し、250℃で、2時間、800rpmの撹拌速度で、バッチ反応器を用いて下記の反応式(1)のように反応させた。
【0067】
RCOOH + R‘OH → RCOOR‘ + HO…(1)
遊離脂肪酸 + アルコール → エステル + 水気
上記の反応式(1)で、Rは、炭素数がC12〜C24であるアルキル基であり、R‘は、炭素数が1〜4であるアルキル基である。
【0068】
反応終了後、生成物を遠心分離し、不均一係固体酸触媒とエステルとを順次に分離した。
【0069】
エステルを分離した生成物10gの試料を、ベンゼン25mlとエタノール25mlとの混合溶液と混合した後、フェノールフタレイン指示薬の一滴を入れ、0.1NのKOHで適正滴定し、要されたKOH量から酸価を計算した。
【0070】
一方、4%の遊離脂肪酸が含まれた大豆油をアルコールと反応させる前、上述した条件で予め酸価を測定した。
【0071】
4%の遊離脂肪酸が含まれた大豆油の反応前の酸価と、上記の反応式(1)に従った反応後の酸価に関し、下記の式(2)のように遊離脂肪酸の除去率を測定した結果、遊離脂肪酸の除去率は、約85%と確認された。
【0072】
遊離脂肪酸の除去率(%)=((A−B)/A×100))…(2)
上記の式(2)のうち、Aは、4%遊離脂肪酸が含まれた大豆油の酸価であり、Bは、反応後の大豆油の酸価である。
【0073】
以上、本発明について例示的な実施形態に基づいて説明したが、本発明の技術分野に属する通常の知識を有する者であれば、本発明の範囲及び要旨を外れずに種々の変形及び変更が可能であることは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によって製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒は、大量供給が容易であり、生産単価が低い。本発明は、工業的に有利な長所を有する有用な発明であり、産業上の利用が大きく期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナを所定温度で前処理する段階;
前処理後、アルミナ100重量部に対して5〜30重量部のタングステン酸を前記アルミナに混合し、水酸化アンモニウムの水溶液と窒酸を順次に添加して撹拌する段階;
混合物を撹拌後、濾過し、乾燥する段階;及び
塑性化する段階;
を含むことを特徴とするタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法。
【請求項2】
前記撹拌段階は、水酸化アンモニウムの水溶液を添加してpH9〜12で、1〜5時間行い、窒酸を添加してpH3〜6で、2〜5時間撹拌を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥段階では、110℃で、2〜10時間乾燥を行い、かつ
前記塑性化段階では、450〜550℃で、6〜10時間塑性化を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法。
【請求項4】
前記前処理段階は、400〜550℃で行う、
ことを特徴とする請求項1に記載のタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法。
【請求項5】
前記アルミナは、粉末又はペレット形態である、
ことを特徴とする請求項1に記載のタングステンオキサイドアルミナ触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れかの一項の方法によって製造され、酸の強さが強いことを特徴とするタングステンオキサイドアルミナ触媒。
【請求項7】
アルコールと、遊離脂肪酸が含まれた廃食用油を反応モルビ1:1〜1:12で混合する段階;
廃食用油100ml当たり、請求項1乃至5のうち何れかの一項の方法によって製造されたタングステンオキサイドアルミナ触媒の1〜30gを添加して混合する段階;
混合物を60〜250℃で、2〜12時間、100〜1200rpmで撹拌して、エステル化反応させ、廃食用油から遊離脂肪酸を除去する段階;
遠心分離器を用いて廃食用油中に含まれたタングステンオキサイドアルミナ触媒を分離する段階;及び
廃食用油からエステルとトリグリセロイドとを分離する段階;
を含むことを特徴とするタングステンオキサイドアルミナ触媒を用いて廃食用油から遊離脂肪酸を除去する方法。
【請求項8】
前記トリグリセロイドとエステルとを分離する方法は、靜置法又は遠心分離法である、
ことを特徴とする請求項7に記載のタングステンオキサイドアルミナ触媒を用いて廃食用油から遊離脂肪酸を除去する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−167677(P2011−167677A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55981(P2010−55981)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(595065552)コリア インスティチュート オブ エナジー リサーチ (11)
【Fターム(参考)】