説明

タンゼンシャルベルトを駆動するリング精紡スピンドル

【課題】スピンドル軸受ハウジング及び押圧ローラの事前の組立を可能とするとともに、リング精紡スピンドルに対する押圧ローラの調節を容易にすること。
【解決手段】タンゼンシャルベルト11を駆動する、スピンドル軸受ハウジング1を備えたリング精紡スピンドル9であって、隣り合うリング精紡スピンドル間に設けられて該リング精紡スピンドル9のスピンドルワーブ10を押圧する、前記スピンドル軸受ハウジング1近傍に設けられた押圧ローラ12を備えて成る前記リング精紡スピンドル9において、前記スピンドル軸受ハウジング1に平面部17を設け、前記押圧ローラ12を支持する支持ブラケット16を前記平面部に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンゼンシャルベルトを駆動する、スピンドル軸受ハウジングを備えたリング精紡スピンドルであって、特に、隣り合うリング精紡スピンドル間に設けられて該リング精紡スピンドルのスピンドルワーブを押圧する、前記スピンドル軸受ハウジング近傍に設けられた押圧ローラを備えて成るリング精紡スピンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなタンゼンシャルベルトの駆動を行う駆動装置は押圧ローラを備えており、該押圧ローラによりタンゼンシャルベルトがスピンドルワーブに対して押圧される。
【0003】
公知の押圧ローラ(特許文献1参照)は対をなして1つ或いは複数の弾性要素に固定されている。尚、この弾性要素は、その中心部においてスピンドル台に載置されたブラケットに設けられている。ここで、押圧ローラは各第2のスピンドル間にのみ設けられているため、押圧ローラは、必ず4の倍数の本数のスピンドルを必要とするとともに、各スピンドル軸受ハウジングに設置・調整されなければならない。
【0004】
又、スピンドルと分離されてスピンドル台に固定された、単体としての押圧ローラが知られている(特許文献2,3参照)。これにおいても、押圧ローラは、タンゼンシャルベルトに対する適切な押圧力を保証するために、スピンドルの設置後に該スピンドルに関する調整が必要となってしまう。
【0005】
【特許文献1】独国特許第4432005号明細書
【特許文献2】独国特許第2851326号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第4237476号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的とする処は、スピンドル軸受ハウジング及び押圧ローラの事前の組立を可能とするとともに、リング精紡スピンドルに対する押圧ローラの調節を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、独立請求項に記載した特徴により解決される。
【発明の効果】
【0008】
押圧ローラを支持する支持ブラケットを固定するための平面部をスピンドル軸受ハウジングに設けたため、特に製造現場において、押圧ローラをそのリング精紡機における組付に関係なく設置することができる。
【0009】
又、調節補助部材を、スピンドル軸受ハウジングの平面部、及びこの平面部と共に機能する押圧ローラの支持ブラケットに設けたため、支持ブラケットを容易に所定位置に配置及び調整することができる。尚、本発明によれば、調節補助部材は複数の係合溝及びこれら複数の係合溝の何れかに係合する係合凸部で構成されている。
【0010】
ここで、係合溝をスピンドル軸受ハウジングの平面部に、係合凸部を押圧ローラの支持ブラケットにそれぞれ設けるのが好ましいが、係合溝を支持ブラケットに、係合凸部をスピンドル軸受ハウジングにそれぞれ設けても良い。
【0011】
そして、スピンドル軸受ハウジングにおいて押圧ローラが十分機能するその所定位置を特定するために、係合溝をリング精紡機に設けた少なくとも1つのリング精紡スピンドル間隔の半分の間隔をおいて相互に配置されている。そのため、押圧ローラを、リング精紡スピンドルの設置後、隣り合う2つのリング精紡スピンドルの中間に位置するようスピンドル軸受ハウジングに設けることができる。
【0012】
又、上記のように、押圧ローラの所定位置である、隣り合う2つのリング精紡スピンドルの中間位置をリング精紡スピンドル両側で得ようとする場合には、互いに隣り合う2つの群に分けて係合溝を配置し、該2つの群それぞれに属する係合溝を互いに逆の配置とする。
【0013】
更に、押圧ローラのタンゼンシャルベルト方向の間隔を調節してスピンドルワーブの押圧力を調整するために、適当な隙間ゲージを、スピンドル軸受ハウジングの設置面と押圧ローラを支持する支持ブラケットの設置面の間に設けている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1はスピンドル軸受ハウジングの側面図であり、図2はスピンドル軸受ハウジングの背面図である。
【0016】
好ましくはダイカスト法で製造された軽金属から成るスピンドル軸受ハウジング1は部分的に円筒状のブッシュ2,3を備えている。これらブッシュ2,3により、係止プレート4がボルト5及びナット6で締結され、スピンドル軸受ハウジング1がリング精紡機の支持枠内に設けられて互いに上下に重ねて配置されたスピンドル支持管7,8に固定される。
【0017】
又、スピンドル軸受ハウジング1内には、リング精紡スピンドル9の、ここでは単体として図示されていない軸受装置が設置されている。同様に、特に紡錘状の巻き糸を支持するリング精紡スピンドル9の上部も図示していない。このリング精紡スピンドル9はスピンドルワーブ10を備えており、このスピンドルワーブ10において、リング精紡スピンドル9はリング精紡機の他のリング精紡スピンドルと共にタンゼンシャルベルト11により駆動される。
【0018】
そして、タンゼンシャルベルト11がスピンドルワーブ10に与える必要な押圧力を得られるよう押圧ローラ12が使用される。この押圧ローラ12の軸受部材13は板バネ14及びスライダ15を介して支持ブラケット16に固定されており、この支持ブラケット16はその平面部17でスピンドル軸受ハウジング1に固定されている。
【0019】
又、押圧ローラ12をスピンドル軸受ハウジング1における所定位置に正確に設けられるよう、調節補助部材が設けられている。ここで、押圧ローラ12の所定位置は、当該押圧ローラ12とリング精紡スピンドル9のスピンドルワーブ10の接線の間隔、即ちブッシュ2,3の設置面と直角な方向の間隔と、当該押圧ローラ12と隣接するリング精紡スピンドルとの中心間距離、即ちブッシュ2,3の設置面と同じ方向の間隔とによって決定される。
【0020】
そして、上記押圧ローラ12とスピンドルワーブ10の接線の間隔は、スピンドル軸受ハウジング1側の設置面18と支持ブラケット16側の設置面18’の間に設置された破線で示す隙間ゲージ19によって所定間隔に設定される。又、このような間隔調節を行えるよう、平面部17はリング精紡スピンドル9の軸に対して直角となっている。尚、上記間隔調節において狭い許容範囲が要求されない場合には、スピンドル軸受ハウジング1の平面部17は更にタンゼンシャルベルト11の移動方向に対しても直角に設けても良い。
【0021】
ところで、押圧ローラ12の中心は、互いに隣り合う2本のリング精紡スピンドル9の間隔の中央を通る平面20内に設けられている。又、2つの群23,24に分けられた複数の係合溝22,22’,22”から成る上記調節補助部材がスピンドル軸受ハウジング1の平面部17に設けられており、支持ブラケット16の下部に設けられた係合凸部25がこれら係合溝22,22’,22”に係合する。
【0022】
ここで、係合溝22,22’,22”と係合凸部25の係合箇所は、82.5mm、75mm、70mmという3つのよく用いられるリング精紡スピンドル9の間隔に設定できるようになっているが、もちろんその他の数値、或いは3つ以上の数値に合わせて設定しても良い。
【0023】
而して、支持ブラケット16の下部に設けられた係合凸部25が例えば図2及び図3に示すように係合溝22に係合すると、押圧ローラ12の中心を通る上記平面20は、リング精紡スピンドル9同士の最小間隔の半分、即ち35mmの間隔をリング精紡スピンドル9の軸中心21との間に持つことになる。
【0024】
又、中央の係合溝22’は係合溝22と2.5mm隔たった位置にあり、係合凸部25がこの係合溝22’に係合すると、上記平面20のリング精紡スピンドル9の軸中心21からの間隔は、スピンドル同士の間隔が75mmであるときの半分である、37.5mmとなる。
【0025】
そして、最外端の係合溝22”は係合溝22’と3.75mm隔たった位置にあり、係合凸部25がこの係合溝22”と係合すると、上記平面20のリング精紡スピンドル9の軸中心21からの間隔は41.25mmとなる。
【0026】
ここで、更に隙間ゲージ19を用いれば、支持ブラケット16は、ナット27に螺合するボルト26により締結される。尚、このナット27は、スピンドル軸受ハウジング1内のガイド溝28でリング精紡スピンドル9方向に案内されている。
【0027】
又、平面部17上には係合溝22,22’,22”の第2の群24が、第1の群のものと順序を逆にして設けられている。そのため、押圧ローラ12はリング精紡スピンドル9に関して反対側に設けることも可能である。尚、係合溝22,22’,22”の両群23,24は互いに隔たって設けられているが、この間隔は係合凸部25の配置を考慮して決定される。
【0028】
そして、押圧ローラ12の高さ方向の調節は、支持ブラケット16に設けられたネジ29で高さ調節可能なスライダ15により行われる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】スピンドル軸受ハウジングの側面図である。
【図2】スピンドル軸受ハウジングの背面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 スピンドル軸受ハウジング
2,3 ブッシュ
4 係止プレート
5 ボルト
6,27 ナット
7,8 スピンドル支持管
9 リング精紡スピンドル
10 スピンドルワーブ
11 タンゼンシャルベルト
12 押圧ローラ
13 支持部材
14 板バネ
15 スライド部材
16 支持ブラケット
17 平面部
18,18’設置面
19 隙間ゲージ
20 平面
21 軸中心
22,22’,22”係合溝
23,24 群
25 係合凸部
26,29 ネジ
28 ガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンゼンシャルベルトを駆動する、スピンドル軸受ハウジングを備えたリング精紡スピンドルであって、
隣り合うリング精紡スピンドル間に設けられて該リング精紡スピンドルのスピンドルワーブを押圧する、前記スピンドル軸受ハウジング近傍に設けられた押圧ローラを備えて成る前記リング精紡スピンドルにおいて、
前記スピンドル軸受ハウジング(1)に平面部(17)を設け、前記押圧ローラ(12)を支持する支持ブラケット(16)を前記平面部に固定したことを特徴とするリング精紡スピンドル。
【請求項2】
前記支持ブラケット(16)を所定位置に配置させるための調節補助部材(22,22’,22”;18,18’,19)を、前記スピンドル軸受ハウジング(1)、及び前記押圧ローラ(12)の前記支持ブラケットに設けたことを特徴とする請求項1記載のリング精紡スピンドル。
【請求項3】
前記押圧ローラ(12)を支持する前記支持ブラケット(16)を固定した前記平面部(17)を、当該リング精紡スピンドル(9)に対して直角な平面内に配置したことを特徴とする請求項1記載のリング精紡スピンドル。
【請求項4】
前記調節補助部材を、前記タンゼンシャルベルト(11)の走行方向に直角な、複数の互いに平行な係合溝(22,22’,22”)及び該係合溝に係合する係合凸部(25)で構成したことを特徴とする請求項2又は3記載のリング精紡スピンドル。
【請求項5】
前記係合溝(22,22’,22”)を、隣り合う前記リング精紡スピンドル(9)の複数の異なる間隔の半分の間隔をおいて相互に配置したことを特徴とする請求項4記載のリング精紡スピンドル。
【請求項6】
互いに隣り合う2つの前記係合溝(22,22’,22”)の群(23,24)を設け、該2つの群それぞれに属する前記係合溝(22,22’,22”)の配置を互いに逆にしたことを特徴とする請求項4記載のリング精紡スピンドル。
【請求項7】
係合溝(22,22’,22”)を前記スピンドル軸受ハウジング(1)の前記平面部(17)に設けるとともに、係合凸部(25)を、前記押圧ローラ(12)を支持する前記支持ブラケット(16)に設けたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のリング精紡スピンドル。
【請求項8】
前記調節補助部材を、前記スピンドル軸受ハウジング(1)と、前記押圧ローラ(12)を支持する前記支持ブラケット(16)のそれぞれにおける、前記タンゼンシャルベルト(11)の走行方向に沿って延びる設置面(18,18’)及びこれらそれぞれの設置面間に配置した隙間ゲージ(19)で構成したことを特徴とする請求項2記載のリング精紡スピンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−513609(P2008−513609A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530645(P2007−530645)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009605
【国際公開番号】WO2006/029748
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(504011069)ザウラー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフト (17)
【Fターム(参考)】