説明

タンパク質又はペプチドの徐放送達用組成物

本発明は、制御様式でタンパク質又はペプチドを送達するためのデポーシステムのin−situ形成に適した新規液体組成物を提供する。本発明の組成物は、(a)疎水性非ポリマー担体材料;(b)疎水性非ポリマー材料を溶解させる水混和性の生体適合性有機溶媒;(c)1種以上の製剤性能増強化合物と共有結合したタンパク質又はペプチドを含む。本発明は、その組成物の製造方法及び使用方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質又はペプチドの徐放送達の分野、並びに、共有結合的に修飾され且つ疎水性非ポリマー担体材料とともに製剤化されるタンパク質又はペプチドの徐放送達に有用な組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性非ポリマー材料、特に高粘性非ポリマー液体材料が生理活性化合物の制御放出送達用の生分解性システムとして開示されている(Smith and Tipton,Pharmaceutical Research,13(9),S300,1996)。疎水性非ポリマー材料は通常、水に実質的に溶けない。疎水性非ポリマー材料は、37℃で少なくとも5,000cPの粘度を有し、周囲条件又は生理的条件下ではきちんと結晶化しない高粘性液体でありうる。該材料を小量の可塑化溶媒と混合すると、混合物は非ポリマー液体材料のみの粘度よりずっと低い粘度を有する。この低粘度溶液は容易に生理活性化合物と製剤化することができ、結果として生じる低粘度の液体製剤は対象の体に容易に投与されて高粘性デポー(depot)をin−situ形成することができる。
【0003】
疎水性非ポリマー液体担体材料を含む該in−situ形成デポーシステムの代表例は、米国特許第5,747,058号;第5,968,542号;第6,051,558号;及び第6,992,065号に開示さている。これらの特許に記載の組成物は、スクロースアセタートイソブチラート(SAIB)などの疎水性で高粘性の非ポリマー液体材料、水溶性又は水混和性有機溶媒、及び生理活性物質を含む。該組成物は容易に調製されて、低粘度溶液の形態で対象の体に投与することができる。体内に入ると、溶媒は周囲組織中に消散又は拡散し、非ポリマー材料の沈殿又は凝固をもたらして、生理活性物質を被包する高粘性ゲル、半固体、又は固体のデボーを形成する。そしてデボーの溶解、拡散、及び/又は分解によって生理活性物質が放出される。
【0004】
しかし、非ポリマー担体材料の疎水性のため、多くの生理活性薬、特に荷電及び極性特性を備えた親水性ペプチド及びタンパク質は、非ポリマー担体材料と相溶性がなく、不安定な液体製剤をもたらしうる。疎水性非ポリマー液体材料、ペプチド、及び有機溶媒を含む組成物は、周囲条件で短時間放置すると相分離を受けることが分かった。さらに、タンパク質又はペプチドは、その求核性のため、有機溶媒の溶液/懸濁液中の非ポリマー担体材料と相互作用又は反応しうる。この相互作用/反応により、非ポリマー担体材料の分解が促進されることとなり、タンパク質又はペプチドが化学的に改変されることもある。製剤中の担体材料及びタンパク質又はペプチドの不安定性が、妥当な貯蔵期間と、投与すると所望の放出特性を果たすために一貫したデポーを形成するための製剤の用途とを備えた適切な組成物の調製を妨げる。さらに、バースト放出はこのタイプの液体製剤の典型的特性である。制御できない初期バーストは、特に狭い治療指数を有するタンパク質又はペプチドにとって望ましくないことがある。該製剤における放出速度を調節するポリマー添加剤が開示されているが、これにより得られる結果は完全には満足のいくものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、これらの問題を解決し、かつ治療的に有効な量のタンパク質又はペプチドの長期間にわたる徐放送達に有用な組成物が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、制御された持続性様式でタンパク質又はペプチドを送達するためのデポーシステムのin−situ形成に適した新規液体組成物を提供する。本発明の組成物は、(a)疎水性非ポリマー担体材料;(b)前記疎水性非ポリマー材料を溶解させ、該組成物の粘度を下げて、調製及び投与の容易さを有意に促進する水混和性の生体適合性有機溶媒;及び(c)1種以上の製剤性能増強化合物と共有結合したタンパク質又はペプチドを含む。ここで、非ポリマー材料は実質的に水に溶けず、37℃で少なくとも5,000cPの粘度を有する高粘性液体であってよく、周囲条件又は生理的条件下ではきちんと結晶化しない。本発明の組成物は、所望の放出特性を達成するために、さらに必要に応じて添加剤を含む。本発明は、その組成物の製造方法及び使用方法をも提供する。
【0007】
従って、タンパク質又はペプチドは好ましくは、該タンパク質又はペプチドを安定化し、非ポリマー担体材料との相溶性を高め、かつタンパク質又はペプチドの放出プロファイルを改善する製剤性能増強化合物と共有結合している。好適な製剤性能増強化合物は、親水性、親油性、又は両親媒性のいずれかである。この化合物は小分子又はポリマーであってよい。好適な製剤性能増強化合物は、分解性又は非分解性結合を介してタンパク質又はペプチドと結合する。結果として生じる結合体(conjugate)は、好ましくは未修飾タンパク質又はペプチドそのものが持つ生物学的活性の一部又は全てを保持している。
【0008】
そして、この結合型タンパク質又はペプチドを疎水性非ポリマー担体材料と混合するか又は疎水性非ポリマー担体材料に分散させる。或いは、疎水性非ポリマー担体材料を好ましくは水溶性又は水混和性溶媒、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)又はエタノールと混合して低粘度溶液を形成する。その後、この低粘度溶液を用いて結合型タンパク質又はペプチドを溶解又は懸濁させて均質溶液又は均一懸濁液を形成する。典型的に、非結合型タンパク質若しくはペプチド又はその単純塩(例えば酢酸塩など)を含むこのような製剤は、急速な相分離を受ける。しかし、驚くべきことに、本発明のタンパク質又はペプチドと製剤性能増強化合物との共有結合を介した結合は、相分離を防止し、製剤の物理的安定性を維持できることが見出された。さらに、典型的に非結合型タンパク質若しくはペプチド又はその単純塩(例えば酢酸塩など)は、製剤化プロセス中及びその後の貯蔵中、化学分解に敏感である。本発明のタンパク質又はペプチドと製剤性能増強化合物との共有結合によって、このような化学分解を防止又は最小限にすることができることも分かった。本発明の組成物の化学的及び物理的安定性の向上により、所望の特性及び妥当な貯蔵有効期間を有する安定した製品の開発が可能となるであろう。
【0009】
本発明の液体組成物を対象の体内の生体液のような水性環境と接触させると、水溶性又は水混和性溶媒が周囲の水性流体又は体液中に消散又は拡散する。同時に、水不溶性の非ポリマー担体材料が沈殿又は凝固して、タンパク質又はペプチドを捕捉又は被包する高粘性ゲル、半固体、又は固体デポーを形成する。溶媒の急速な拡散のため、典型的に、デポー形成プロセス中にタンパク質又はペプチドの高い初期バースト放出が観察される。しかし、予想外に、タンパク質又はペプチドと製剤性能増強化合物との共有結合を介した結合が、非結合型タンパク質又はペプチドを含む製剤に比し、バースト作用を劇的に低減し、かつタンパク質又はペプチドの全体的な放出プロファイルを改善することが分かった。一旦デポーが形成されると、タンパク質又はペプチドは、非ポリマー担体材料の溶解、拡散及び/又は分解によって非ポリマーマトリックスから放出される。
【0010】
本発明によれば、組成物は任意に、タンパク質又はペプチドの所望放出プロファイルを達成するために、組成物を改変する添加剤を含んでよい。添加剤としては、限定するものではないが、バースト作用低減材料、放出速度調節剤、pH調整剤、抗酸化剤、可溶化剤などが挙げられる。添加剤は、生分解性又は非生分解性ポリマー、炭水化物又は炭水化物誘導体、有機又は無機化合物を含め、ポリマー材料又は非ポリマー材料であってよい。
【0011】
本発明の組成物は、注射器又は同様の装置を用いて投与され得る粘性若しくは非粘性の液体、又はゲルであってよい。皮下、筋肉内、腹腔内、又は皮内注射によって組成物を投与して、デポーをin−situ形成することができる。組成物を経口又は局所又は経粘膜投与することもできる。対象の体に投与すると、組成物の構成に応じて所望の時間、タンパク質又はペプチドの制御放出を持続することができる。非ポリマー担体材料と他の賦形剤を適切に選択すれば、数日〜数週間又は1年までの期間にわたってタンパク質又はペプチドの徐放の持続時間を制御することができる。
【0012】
添付図面と関連して検討した以下の詳細な説明から、本発明の他の目的及び特徴が明白になるであろう。しかし、図面は、例示目的のためだけのものであり、本発明の制限の定義として企図されたものでなく、本発明は添付の特許請求の範囲を参照すべきであることを理解すべきである。さらに、図面は、必ずしも縮尺率に合わせて描かれておらず、特に断らない限り、図面は、本明細書で述べる構造及び手順を単に概念的に説明することを意図していることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】製剤を室温で24時間放置した後に撮影した写真を示す。
【図2】(a)OCT−Ac;(b)PAL−PEG−BA−OCTを含むSAIB/NMP製剤からのオクトレオチドのin vitro放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、製剤性能増強化合物を用いたタンパク質又はペプチドの共有結合的修飾が、疎水性非ポリマー材料中のタンパク質又はペプチドの安定製剤の調製を可能にし、製剤化プロセスとその後の貯蔵中のタンパク質又はペプチドの分解/反応を防止又は最小限にし、かつタンパク質又はペプチドの徐放プロファイルを改善するという驚くべき発見に関する。この驚くべき発見が、持続性及び制御様式でタンパク質又はペプチドを送達するためのデポーシステムのin−situ形成に適した所望組成物の開発につながる。
【0015】
本発明は、(a)疎水性非ポリマー担体材料;(b)水混和性の医薬的に許容しうる溶媒;及び(c)1種以上の製剤性能増強化合物と共有結合したタンパク質又はペプチドを含む組成物を提供する。本発明の組成物は任意に、所望の放出特性を達成するための添加剤をさらに含んでよい。本発明は、その組成物の製造方法及び使用方法をも提供する。
【0016】
疎水性非ポリマー材料は、タンパク質又はペプチドの徐放を制御するための担体として用いられる。種々のタンパク質又はペプチドの徐放送達のために使用できる適切な医薬組成物を製造するために、当業者は種々の医薬的に許容しうる非ポリマー材料を利用することが出来る。疎水性非ポリマー送達システム及びその調製に関する特許の代表例として、参照によってその内容全体を本明細書に引用しものとする米国特許第5,736,152号;第5,888,533号;第6,120,789号;第5,968,542号;及び第5,747,058号が挙げられる。
【0017】
適切な非ポリマー担体材料としては、限定するものではないが、コレステリルエステル、例えばコレステリルステアラート;C16−C32モノ−、ジ−及びトリアシルグリセリド、例えばグリセリルモノオレアート、グリセリルモノリノレアート、グリセリルモノラウラート、グリセリルモノドコサノアート、グリセリルモノミリスタート、グリセリルモノジセノアート、グリセリルジパルミタート、グリセリルジドコサノアート、グリセリルジミリスタート、グリセリルジデセノアート、グリセリルトリドコサノアート、グリセリルトリミリスタート、グリセリルトリデセノアート、グリセリントリステアラート及びこれらの混合物;スクロース脂肪酸エステル、例えばスクロースジステアラート及びスクロースパルミタート;ソルビタン脂肪酸エステル、例えばソルビタンモノステアラート、ソルビタンモノパルミタート及びソルビタントリステアラート;脂肪アルコールと脂肪酸のエステル、例えばセチルパルミタート及びセテアリルパルミタート;リン脂質、例えばホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、及びこれらのリゾ誘導体(lysoderivative)など;スフィンゴシン及びその誘導体;スピンゴミエリン、例えばステアリル、パルミトイル、及びトリコサニルスピンゴミエリン;セラミド、例えばステアリル及びパルミトイルセラミド;グリコスフィンゴ脂質;並びにこれらの組合せ及び混合物が挙げられる。
【0018】
好ましい非ポリマー担体材料は、低い結晶性、非極性の特性を有し、かつ疎水性である当該材料である。さらに好ましくは、非ポリマー担体材料は粘性液体である。非ポリマー担体材料は、好ましくは疎水性で実質的に水に溶けず、かつ周囲条件又は生理的条件下できちんと結晶化しない、37℃で少なくとも5,000cPの粘度を有する。本明細書で使用する場合、「疎水性又は水に溶けない」という表現は、ある材料の25℃における水中の溶解度が1質量%未満であることを表す。「非ポリマー」という用語は、エステル形成に使用される酸部分に本質的に反復単位がないエステル又は混合エステルを表す。エステル又は混合エステルを形成するために使用される酸部分は、ダイマー、トリマー、テトラマー、及びペンタマーのような少数の反復単位(すなわちオリゴマー)を含んでよい。一般的に、酸部分中の反復単位は5未満でなければならない。
【0019】
特に、疎水性非ポリマー担体材料は、1種以上の非ポリマーエステル又は混合エスエルであってよい。エステルは典型的に、カルボン酸とエステル化する20個未満のヒドロキシル基を有するポリオールから形成される。適切なポリオールとしては、2〜24個の炭素を有する単官能性及び多官能性アルコール、糖アルコール、単糖、二糖、オリゴ糖、及びポリエーテルアルコールが挙げられる。さらに詳しくは、ポリオールは、ドデカノール、ヘキサンジオール、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、スクロース、イノシトール、ポリグリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)グリコール、ポリビニルアルコール等であってよい。
【0020】
疎水性非ポリマー担体材料を形成するために用いられるカルボン酸としては、2個より多くの炭素を有する有機酸、例えば脂肪酸が挙げられる。これらのカルボン酸は、飽和、不飽和、芳香族(アリール又はアリールアルキル)であってよく、線形又は分岐構造であってよい。これらのカルボン酸は、1つ以上のヒドロキル基又は他の基、例えばハロ、ニトロ等を有してもよい。さらに詳しくは、これらのカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、リポ酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、ε−ヒドロキシカプロン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、及び他の脂肪酸が挙げられる。
【0021】
疎水性非ポリマー担体材料は、好ましくは生分解性であり、如何なる非生体適合性又は毒性の代謝物をも生成しない。疎水性非ポリマー担体材料を水混和性溶媒と混合すると、有意に低粘度の溶液を得ることができる。溶液が低粘度であるため、容易にタンパク質又はペプチドと混ぜ合わせて本発明の組成物を調製することができる。低粘度は、組成物を対象の体に容易に投与することをも可能にする。疎水性非ポリマー担体材料対溶媒の比を容易に調整して所望粘度を得ることができる。
【0022】
好ましい実施形態では、疎水性非ポリマー担体材料として、スクロースアセタートイソブチラート(SAIB)が用いられる。SAIBは、2個の酢酸基及び6個のイソ酪酸基とエステル化したスクロースの混合エステルである。このエステルは完全に非結晶性であり、30℃で100,000cPを超える粘度を有する。わずかに温度を上げるか又は溶媒を添加することによって、エステルの粘度を劇的に下げることができる。SAIBは「Eastman Chemical Company,USA」から商業的に入手可能であり、かつ米国特許第2,931,802号に記載の手順に従って合成することができる。一実施形態では、SAIBを加熱し、少なくとも1つの製剤性能増強化合物と共有結合したタンパク質又はペプチドと混合して、懸濁液を調製することができる。或いは、SAIBを多数の生体適合性溶媒と混合することで容易にタンパク質又はペプチドと製剤化できる低粘度溶液となり、これにより注射用の溶液又は懸濁液を得ることができる。
【0023】
本発明の組成物で任意に使用するのに適した溶媒は、生体適合性で、水溶性又は水混和性又は水分散性である。溶媒は、25℃で水中、少なくとも1質量%の溶解度を有し、好ましくは少なくとも3質量%の溶解度を有し、さらに好ましくは少なくとも7質量%の溶解度を有する。疎水性非ポリマー担体材料と混ぜ合わせると、溶媒は非ポリマー担体材料のみの場合に比べて混合物の粘度を劇的に下げることができる。このような低粘度の液体組成物を徐放送達用のタンパク質又はペプチドとさらに製剤化することができる。適切な溶媒の非限定的な例としては、アセトン、ベンジルアルコール、ブチレングリコール、カプロラクタム、カプロラクトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、酢酸エチル、乳酸エチル、グリセロール、グリセロールホルマール、グリコフロール(テトラグリコール)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ポリエチレングリコール、PEG−300、PEG−400、メトキシポリエチレングリコール、mPEG−350、アルコキシポリエチレングリコール、プロピレンカルボナート、2−ピロリドン、トリアセチン、クエン酸トリエチル、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0024】
本明細書で使用する場合、ペプチドは、規定順序のα−アミノ酸の連鎖から形成された短いポリマーである。あるアミノ酸残基と次のアミノ酸残基との連結はアミド結合又はペプチド結合として知られる。タンパク質は、ポリペプチド分子である(又は複数のポリペプチドサブユニットから成る)。ペプチドは短く、ポリペプチド/タンパク質は長いという区別がある。本明細書では、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質は相互交換可能に使用され、同タイプの分子を表す。
【0025】
本発明の好適な生理活性タンパク質又はペプチドは、共有結合的に修飾可能な少なくとも1つの官能基を有し、かつそれらの生物学的活性の一部又は全てを保持するいずれのタンパク質又はペプチドをも包含する。本発明のタンパク質又はペプチドとして、限定するものではないが、オキシトシン、バソプレッシン、アドレノコルチコトロパ酸ホルモン(ACTH)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、プロラクチン、黄体ホルモン、黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアゴニスト、LHRHアンタゴニスト、成長ホルモン(ヒト、ブタ、及びウシを含む)、成長ホルモン放出因子、インスリン、インスリン様成長因子(IGF−I、IGF−II)、エリスロポイエチン(エリスロポイエチン活性を有する全てのタンパク質を含む)、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンジオテンシン、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、副甲状腺ホルモン(PTH)、神経成長因子(NGF)、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージ−コロニー刺激因子(M−CSF)、ヘパリナーゼ、血管内皮増殖因子(VEG−F)、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP−1、GLP−2)、エキセナチド(エキセンディン−3、エキセンディン−4など)、ペプチドYY(PYY)、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリン(その合成類似体及び薬理学的に活性なフラグメントを含む)、酵素、サイトカイン、抗体、ワクチン、抗生物質、糖タンパク質、卵胞刺激ホルモン、キョートルフィン、タフトシン(taftsin)、サイモポイエチン、サイモシン、サイモスチムリン、胸腺体液性因子、血清胸腺因子、コロニー刺激因子、モチリン、ボンベシン、ジノルフィン、ニューロテンシン、セルレイン、ウロキナーゼ、カリクレイン、サブスタンスP類似体及びアンタゴニスト、アンジオテンシンII、血液凝固因子VII及びIX、リゾチーム、グラミシジン、メラニン細胞刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、ヒト胎盤性ラクトゲン、トロンボポエチン(TPO)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、タンパク質合成刺激ペプチド、胃抑制ペプチド、血管作用性小腸ペプチド、血小板由来増殖因子、並びにこれらの合成類似体及び変態及び薬理学的に活性なフラグメントが挙げられる。
【0026】
好ましい態様では、タンパク質又はペプチドは、製剤性能増強化合物と共有結合している。この共有結合したタンパク質又はペプチドは、生物学的活性の一部又は全てを保持し、親薬剤の製剤性能を増強する。本明細書で使用する「製剤性能増強化合物」は、タンパク質又はペプチドに共有結合しうる化合物であり、結果として生じる結合体は、該タンパク質又はペプチドの生物学的活性の少なくとも一部を実質的に保持する。この結合型タンパク質又はペプチドは、非ポリマー担体材料との製剤化がより容易であり、結果として生じる製剤は、非結合型タンパク質又はペプチドを用いて得られる当該製剤に比べて均一かつ安定である。この結合が物理化学的安定性を高め、疎水性非ポリマー担体材料を含む送達システムからのタンパク質又はペプチドの放出プロファイルを改善する。タンパク質又はペプチドの共有結合的修飾は、in vivo動態(disposition)半減期の延長、抗原性及び免疫原性の低減、タンパク質分解に対する耐性、生物学的利用能の向上、並びに毒性の低減にもつながりうる。
【0027】
本明細書で使用する場合、「製剤性能増強化合物」という用語は、共有結合後に本発明の非ポリマー担体材料中のタンパク質又はペプチドの製剤性能を改善するいずれの分子をも意味する。この化合物は親水性、親油性、又は両親媒性であってよい。該化合物は、小分子又はポリマーであってよい。製剤性能増強化合物の判断基準は、共有結合的修飾後にタンパク質又はペプチドの生物学的活性の一部又は全てを保持すること、及び本発明の非ポリマー担体材料と製剤化するときに性能特性を改善することである。本発明の製剤性能増強化合物とタンパク質又はペプチドとの結合は、タンパク質又はペプチドの元の生物学的活性の少なくとも10%、好ましくはタンパク質又はペプチドの元の生物学的活性の少なくとも25%、さらに好ましくはタンパク質又はペプチドの元の生物学的活性の少なくとも50%を保持する。本発明の製剤性能増強化合物とタンパク質又はペプチドとの結合は、製剤の物理的及び化学的安定性を改善しながら、初期バースト放出を低減する。
【0028】
好ましい実施形態では、製剤性能増強化合物は、いずれの親水性ポリマーをも表す。親水性ポリマーは水溶性であり、線形又は分岐ポリマーであってよい。代表例として、限定するものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖、糖などが挙げられる。好ましくは、ポリマーの分子量は約200ダルトン〜約50,000ダルトンの範囲である。本発明で使う親水性ポリマーは典型的に、アミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、ホスファート又はヒドロキシル官能基を介して問題のタンパク質又はペプチドと共有結合させるために使用できる少なくとも1つの反応基を有する。先行技術には、結合及びペグ化の種々の方法が開示されている(米国特許第4,179,337号;第5,446,090号;第5,880,255号;及び第6,113,906号;M.J.Roberts,M.D.Bentley and J.M.Harris,Chemistry for peptide and protein PEGylation,Advanced Drug Delivery Reviews,2002,54(4),459−476.F.M.Veronese,Peptide and protein PEGylation:a review of problems and solutions,Biomaterials,2001,22,405−417)。これらの特許、刊行物及びそこで引用されている参考文献の全内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0029】
別の好ましい実施形態では、製剤性能増強化合物は疎水性又は親油性分子である。典型的に、親油性分子は、20℃にて水中の溶解度が1質量%未満である。好適な製剤性能増強化合物は、好ましくはC4-36−アルキル、C4-36−アルケニル、C4-36−アルカジエニル、トコフェロール及びステロイド性残基である。用語「C4-36−アルキル」、「C4-36−アルケニル」及び「C4-36−アルカジエニル」は、4〜36個の炭素原子の直鎖及び分岐鎖、好ましくは直鎖の飽和、一不飽和及び二不飽和の炭化水素を包含する意図である。好ましくは、親油性分子は、細胞膜に対して高い親和性を有し、かつアルブミン等の血漿タンパク質と相互作用して、非修飾タンパク質又はペプチドに比べて修飾タンパク質又はペプチドのin vivo半減期を延長することができる。さらに詳しくは、親油性の製剤性能増強化合物は、少なくとも4個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和ヒドロカルビル又はカルボン酸アシル基である。カルボン酸アシル基は、カプロイル、ラウリル(laurly)、パルミトイル、ステアロイル、オレイル、エイコサノイル、及びドクサノイルであってよい。ヒドロカルビルは、ヘキシル、ドデシル、及びオクタデシルであってよい。
【0030】
さらに別の好ましい実施形態では、製剤性能増強化合物はいずれの両親媒性分子をも包含する。用語「両親媒性」は、親油性及び親水性の両特性を有し、水にも親油性溶媒にも溶けるあらゆる分子を表す。本発明で使用する両親媒性分子は、親油性部分と親水性部分で構成される。親油性部分は、好ましくは上述したように天然の脂肪酸又はアルキル鎖である。親水性部分は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマー、ポリビニルピロリドン、多糖、糖などから選択される。親水性部分は、好ましくは1000未満のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール(PEG)である。親油性部分及び親水性部分のサイズと組成を調整して所望の両親媒性を得ることができる。
【0031】
タンパク質又はペプチドへの製剤性能増強化合物の共有結合が、未変性のタンパク質又はペプチドと比較して改良された治療効果をもたらしうる。典型的に、生理活性分子内のアミン基などの官能基と製剤性能増強化合物内の酸又は他の反応基との反応によって、該結合がなされ得る。或いは、分解性又は非分解性であってよいブリッジ、スペーサー、又は連結部分などの追加部分を介して、タンパク質又はペプチドと製剤性能増強化合物との結合が達成される。代表例は、先行技術に開示されている[例えば、日本国特許出願第1,254,699号;米国特許第5,693,609号、WO95/07931、米国特許第5,750,497号、及びWO96/29342。また、Hashimoto,M.,et al.,Pharmaceutical Research,6:171−176(1989)、及びLindsay,D.G.,et al.,Biochemical J.,121:737−745(1971)も参照されたい]。アシル化ペプチドのさらなる例が、WO98/08871、WO98/08872、及びWO99/43708で見つかる。これらの特許、刊行物及びそこで引用された参考文献の内容は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0032】
本発明の一実施形態では、パルミチン酸をN−ヒドロキシスクシンイミドで活性化してから、オクタペプチドであるオクトレオチド上のアミン基と反応させて、パルミチル親油性部分とペプチドの間のアミドリンカーを介した結合体を形成した。オクトレオチド上には2つの一級アミン基がある。両アミン基を同時に結合させ、又は反応条件、その後の分離を調整して一方のアミン基だけを選択的に結合させることができる。
【0033】
別の実施形態では、アルデヒド末端基を有する親油性化合物であるデカナールをオクトレオチド上のアミン基と反応させて、二級アミン結合を介して結合体を形成した。両アミン基を同時に結合させ、又は反応条件、その後の分離を調整することによって一方のアミン基だけを選択的に結合させることができる。
【0034】
さらなる実施形態では、パルミチン酸をリゾチームにその6個のアミン基を介していくつかの比で結合させた。パルミチン酸対リゾチームの比が6未満の場合、リゾチーム上の結合部位は、各アミン基の反応性に応じてランダムでありうる。
【0035】
本発明によれば、親油性部分を最初に親水性部分に共有結合させて両親媒性分子を形成してもよい。本発明の両親媒性分子は、1つ以上の適切な官能基を有してよく、或いはペプチド又はタンパク質への共有結合に適した1つ以上の適切な官能基を有するように修飾してよい。好適な官能基は、ヒドロキシル基、アミノ基(一級アミノ基又は二級アミノ基)、チオール基、カルボキシル基、アルデヒド基、イソシアナト基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基、ハロゲン化アリル基、ハロゲン化ベンジル基、置換ハロゲン化ベンジル基、及びオキシラニル基から選択される。
【0036】
エステル基、アミド基、二級又は三級アミン基、カルバマート基、スルホナート基、スルファート基、ホスファート基、ホスホナート基、又はエーテル基を介して、タンパク質又はペプチドを直接又は間接的に1つ以上の両親媒性部分と結合させてもよい。
【0037】
好ましくは、タンパク質又はペプチドは、(a)親水性部分及び(b)親油性部分を含む1種以上の両親媒性分子と共有結合する。このとき、両親媒性分子の親水性と親油性の釣り合った特性が、生体液又は水溶液中で適切な溶解度を有する結合体を与える。
【0038】
さらに好ましくは、タンパク質又はペプチドは、(a)線形ポリエチレングリコール部分及び(b)親油性部分を含む1種以上の両親媒性分子と共有結合する。このとき、タンパク質又はペプチド、ポリエチレングリコール及び親油性部分は、親油性環境又は細胞膜との相互作用に利用可能な親油性部分を外部に有するように立体構造的に配置されている。このような両親媒性により修飾したタンパク質又はペプチドは、非結合型タンパク質又はペプチドに比し、in vitro及びin vivoの両方で非ポリマー担体材料との反応に対して高い化学的耐性を有する。
【0039】
好ましくは、両親媒性分子は下記一般構造を有する。
L−S−(OC24mOH (式1)
式中、Lは、好ましくはC4-36−アルキル、C4-36−アルケニル、C4-36−アルカジエニル、トコフェロール及びステロイド性残基から選択される親油性部分であり、Sは、エステル基、アミド基、二級又は三級アミン基、カルバマート基、スルホナート基、スルファート基、ホスファート基、ホスホナート基、又はエーテル基の群から選択されるリンカーであり、mは、1〜1000の範囲である。ポリエチレングリコール(PEG)−脂質結合体、例えば1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[カルボキシ(ポリエチレングリコール)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[マレイミド(ポリエチレングリコール)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[PDP(ポリエチレングリコール)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[アミノ(ポリエチレングリコール)等をタンパク質又はペプチドと結合させてもよい。
【0040】
一実施形態では、16個の炭素のアルキル基を、エーテル結合を介してポリエチレングリコール分子に共有結合させた。結果として生じる両親媒性分子は、1個のヒドロキシル基を有し、これを活性化又は誘導体化して、タンパク質又はペプチド上の適切な官能基と反応させることができる。本発明の一実施形態では、両親媒性分子をアルデヒド末端基を有するように誘導体化した。次に両親媒性分子を、オクトレオチド上のアミン基と反応させた後NaCNBH3で還元反応を行って、オクトレオチドと共有結合させた。オクトレオチドの両アミン基は同時に結合するか、或いは反応条件、その後の分離を調整することによって一方のアミン基だけを選択的に結合させることができた。未結合オクトレオチドの電荷特性を変えない二級アミンを介して結合体を形成した。この性質がタンパク質又はペプチドの活性を保持するのに役立ちうる。
【0041】
別の実施形態では、両親媒性分子モノパルミチルポリ(エチレングリコール)(Mn約1124)を4−ニトロフェニルクロロホルマートで活性化した。次にこの両親媒性分子を、オクトレオチド上のアミン基との反応を介してオクトレオチドに共有結合させた。オクトレオチド上の両アミン基は同時に結合するか、或いは反応条件、その後の分離を調整して一方のアミン基だけを選択的に結合させることができた。
【0042】
本発明によれば、1種以上の製剤性能増強化合物で共有結合的に修飾されたタンパク質又はペプチドとして、例えば、修飾されたタンパク質又はペプチドの医薬的に許容しうる塩及び複合体が挙げられる。修飾はタンパク質又はペプチド上の1つ以上の部位であってよい。このようなタンパク質又はペプチドとしては、例えば、部位特異的に修飾されたタンパク質又はペプチド及び単一部位及び複数部位修飾されたタンパク質又はペプチドの混合物も含まれる。
【0043】
「医薬的に許容しうる塩」とは、タンパク質又はペプチド中のいずれかの1つ以上の荷電基といずれかの1つ以上の医薬的に許容しうる無毒カチオン又はアニオンとの間に形成される塩を意味する。有機及び無機塩として、例えば、塩酸、硫酸、スルホン酸、酒石酸、フマル酸、臭化水素酸、グリコール酸、クエン酸、マレイン酸、リン酸、コハク酸、酢酸、硝酸、安息香酸、アスコルビン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、炭酸などの酸、或いは例えば、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、又はマグネシウムから調製される塩が挙げられる。
【0044】
本発明によれば、組成物は必要に応じて、タンパク質又はペプチドの所望の放出プロファイルを達成するために組成物を改変する添加剤を含む。添加剤を含めて放出速度を調節し、タンパク質又はペプチドを安定化することができる。好適な添加剤はいずれのポリマー又は非ポリマー材料であってもよく、生分解性又は非生分解性ポリマー、炭水化物又は炭水化物誘導体、有機又は無機化合物が挙げられる。添加剤は、例えば、抗酸化剤、pH安定剤、抗刺激剤、分散剤、充填剤、結合剤などとして作用しうる。
【0045】
いくつかの好適な添加剤が、参照によってその内容全体を本明細書に引用したものとする米国特許第5,747,058号に記載されている。好ましくは、好適な添加剤は、生体適合性及び/又は生分解性ポリマーである。該ポリマーとして、限定するものではないが、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカルボナート、ポリホスホエステル、ポリオキサエステル、ポリオルトカルボナート、ポリホスファゼン、スクシナート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ヒアルロン酸並びにこれらのコポリマー、ターポリマー及び混合物が挙げられる。
【0046】
本発明によれば、組成物は、必要に応じて還元剤、抗酸化剤、及びフリーラジカルスカベンジャーを含んで組成物を安定化させてもよい。非限定的な例としては、システイン又はメチオニン、d−αトコフェロールアセタート、dl−αトコフェロール、アスコルビルパルミタート、ブチル化ヒドロキシアニドール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシキノン、ブチルヒドロキシアニソール、ヒドロキシコマリン、ブチル化ヒドロキシトルエン、セファルム、エチルガラート、プロピルガラート、オクチルガラート、ラウリルガラート、プロピルヒドロキシベンゾアート、トリヒドロキシブチロフェノン、ジメチルフェノール、ジ−tert−ブチルフェノール、ビタミンE、及びレシチンである。
【0047】
従って、本発明の組成物は、疎水性非ポリマー担体材料、任意的な医薬的に許容しうる有機溶媒、製剤性能増強化合物と共有結合したタンパク質又はペプチド、及び必要に応じて添加剤を含む。
【0048】
本発明の組成物は、移植すると、タンパク質又はペプチドの制御された徐放用の粘性ゲル又は固体のデポーをもたらす。制御放出は、組成物の構成に応じて所望期間持続させうる。非ポリマー担体材料及び他の成分を適切に選択すれば、徐放期間を数日から数カ月の所望期間に制御することができる。
【0049】
本発明の組成物を調製及び投与する好ましい方法では、タンパク質又はペプチドを製剤性能増強化合物で共有結合的に修飾する。結合体中のタンパク質又はペプチド対製剤性能増強化合物のモル比は、タンパク質又はペプチドの性質によって、例えば、1:1〜1:10で変化する。共有結合したタンパク質又はペプチドは、妥当な期間の貯蔵に適した単相製剤として、疎水性非ポリマー担体材料及び任意的な医薬的に許容しうる溶媒及び他の任意的な添加剤と混ぜ合わされてよい。
【0050】
本発明の組成物の別の好ましい調製では、共有結合したタンパク質又はペプチドと、組成物の残りの成分とを異なる容器(すなわち、注射器)に別々に詰めてよい。対象の体内の移植部位に投与する直前に容器の内容物を組成物の残りの成分と混ぜ合わてよい。
【0051】
本発明によれば、組成物は好ましくは均一溶液又は均質懸濁液である。投与前の製剤の均一性の維持は、生理活性物質の制御放出送達用の一貫したデポーシステムを得るために非常に重要である。実際には、製剤の再現性のある調製及びデポーシステムのin situ形成を可能にするためには、製剤の均一性を少なくとも1時間維持しなければならない。5mlのガラス試験管中の製剤の上部と底部のタンパク質又はペプチドの比又は分布を測定することによって、本明細書で使用する均一性を決定する。比が1.0に等しい場合、製剤は完全な均一性を有する。比が1.0より小さい場合、それは相分離が起こることを示唆している。好ましくは、組成物は少なくとも1時間0.9の均一性を維持し、さらに好ましくは、組成物は少なくとも24時間0.9の均一性を維持し、最も好ましくは、組成物は少なくとも7日間0.9の均一性を維持する。
【0052】
本発明によれば、組成物は、組成物の総質量に対して質量で約10%〜約99.5%、好ましくは25%〜95%の疎水性非ポリマー材料を含む。組成物は、約0%〜約50%の医薬的に許容しうる溶媒、約0.1%〜約40%のタンパク質又はペプチドをも含む。組成物は、さらに約1%〜約25%の添加剤を含む。
【0053】
好ましい実施形態では、疎水性非ポリマー担体材料としてスクロースアセタートイソブチラート(SAIB)が用いられ、溶媒としてNMPが選択される。ペプチド又はタンパク質は、オクトレオチド、又はグリカゴン様ペプチド−1(GLP−1)から成る群より選択される。好ましくはタンパク質又はペプチドを両親媒性分子と結合させる。結果として生じる結合体をSAIB/NMP溶液と混ぜ合わせて持続性送達製剤を形成する。
【0054】
本発明によれば、タンパク質又はペプチドの徐放送達が望ましい対象の体に、本明細書に記載の組成物を投与することができる。本明細書で使用する場合、用語「対象」は、温血動物、好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを包含するものとする。
【0055】
本明細書で使用する場合、「投与する」という用語は、対象の所望位置に組成物を送達するのに適したいずれかの径路で、対象に組成物(例えば、医薬製剤)を施すこと、送達すること又は適用することを意味するものとする。組成物を局所的に、皮下、筋肉内、腹腔内、又は皮内注射で投与し、また経口、直腸、膣、又は鼻腔投与によって、タンパク質又はペプチドによる種々の疾患の治療用の既知パラメーターに基づいた所望用量のタンパク質又はペプチドを与えることができる。
【0056】
「制御された徐放送達」という表現は、本明細書で使用する場合、例えば、投与後一定期間、好ましくは少なくとも数日〜数週間又は数カ月にわたるタンパク質又はペプチドのin vivoでの連続的送達を包含する。例えば、経時的に持続する該薬剤の治療効果によって、タンパク質又はペプチドの制御された徐放送達を実証することができる(例えば、オクトレオチドでは、経時的に持続するIGF−1の抑制によって該ペプチドの持続性送達を実証することができる)。或いは、経時的にin vivoでペプチドの存在を検出することによって、オクトレオチドの持続性送達を実証してもよい。
【0057】
この出願では、液体医薬組成物についての特許請求の範囲に記載の種々の実施形態は、必要なら変更を加えて、該組成物を形成するための方法及びインプラントを形成するための方法に対しても想定されている。
【実施例】
【0058】
以下の実施例は、本発明の組成物及び方法を例証するものであり、如何なる場合にも本発明を限定することを意味しない。以下の実施例は、本発明に従う有用な薬物送達システムを作り上げる方法を単に教示するものと解釈すべきである。
【0059】
実施例1. パルミトイル−オクトレオチド(PAL−OCT)の調製
100μLのトリエチルアミン(TEA)を含む1mLの無水DMSOに50mgのオクトレオチドアセタートを溶かした。40.2mgのパルミチン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Mw:353.50)を3mLの無水DMSOに溶かしてペプチド溶液に加えた。反応を室温で3時間進行させた。混合物をジエチルエーテル中に注いでパルミトイル化オクトレオチドを沈殿させた。沈殿物をジエチルエーテルで2回洗浄してから真空下で乾燥させた。結果として生じたアシル化ペプチドは白色粉末の形態だった。
【0060】
実施例2. パルミトイル−オクトレオチド(PAL−OCT)の調製
100μLのTEAを含む1000μLの無水DMSOに50mgのオクトレオチドアセタートを溶かした。17.1mgのパルミチン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Mw:353.50)を3mLの無水DMSOに溶かし、直接注入によってペプチド溶液に加えた。反応を室温で一晩進行させた。混合物をジエチルエーテル中に注いでパルミトイル化オクトレオチドを沈殿させた。沈殿物をジエチルエーテルで2回洗浄してから真空下で乾燥させた。結果として生じたアシル化ペプチドな白色粉末の形態だった。
【0061】
実施例3. デカナール−オクトレオチド(DCL−OCT)の調製
0.1M酢酸緩衝液(pH5)中ナトリウムシアノボロヒドリド(Mw:62.84,NaCNBH3)(2.51mg)の20mM溶液2mLに50mgのオクトレオチドを溶かした。13.7mgのデカナール(Mw:156.27)(OCT:DCL=1:2)を直接注入によってペプチド溶液に加えた。反応を4℃で一晩進行させた。遠心分離で混合物を分離した。沈殿したDCL−OCTを凍結乾燥させた。
【0062】
実施例4. パルミトイル−リゾチーム(PAL−Lyz,3:1)の調製
200μLのTEAを含む1000μLの無水DMSOに302mgのリゾチーム(Mw:14,500)を溶かした。18.25mgのパルミチン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Mw:353.50)を3mLの無水DMSOに溶かし、直接注入によってタンパク質溶液に加えた。反応を室温で一晩進行させた。ジエチルエーテル中でPAL−Lyzを沈殿させ、最終生成物を有機溶媒の除去後に凍結乾燥させた。
【0063】
実施例6. パルミトイル−リゾチーム(PAL−Lyz,5:1)の調製
50mgのリゾチーム(Mw:14,500)を水に溶かし、pHを9.58に調整した。溶液を凍結乾燥させた。次に乾燥粉末を3mLのDMSOに溶かした。次いでパルミチン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Mw:353.50)の無水DMSO中の20mg/mL溶液322μLを直接注入によってタンパク質溶液に加えた。反応を4℃で一晩進行させた。ジエチルエーテル中でPAL−Lyzを沈殿させ、最終生成物を有機溶媒の除去後に凍結乾燥させた。
【0064】
実施例7. パルミトイル−リゾチーム(PAL−Lyz,13:1)の調製
50mgのリゾチーム(Mw:14,500)を水に溶かし、pHを9.58に調整した。溶液を凍結乾燥させた。次に乾燥粉末を3mLのDMSOに溶かした。次いでパルミチン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Mw:353.50)の無水DMSO中20mg/mL溶液799μLを直接注入によってタンパク質溶液に加えた。反応を4℃で一晩進行させた。ジエチルエーテル中でPAL−Lyzを沈殿させ、最終生成物を有機溶媒の除去後に凍結乾燥させた。
【0065】
実施例8. パルミトイル−リゾチーム(PAL−Lyz)の調製
2%のデオキシコラート(DOC)を含むPBS(pH 8.0)中のPAL−NHSにリゾチームを加える。混合物を37℃で6時間インキュベートする。混合物を遠心分離して未反応PAL−NHSを除去する。生成物を0.15%のDOCを含むPBSに対して48時間透析する(PAL−NHS:リゾチーム=15:1)。
【0066】
実施例9. モノパルミチルポリ(エチレングリコール)−ブチルアルデヒド、ジエチルアセタールの調製
モノパルミチルポリ(エチレングリコール)(平均Mn約1124)(5.0g,4.45mmoles)とトルエン(75mL)の混合物を、減圧下で共沸蒸留によってトルエンを除去することによって乾燥させた。乾燥モノパルミチルポリ(エチレングリコール)を無水トルエン(50mL)に溶かし、これにTHF中のカリウムtert−ブトキシドの20%(w/w)溶液(4.0ml,6.6mmoles)と4−クロロブチルアルデヒドジエチルアセタール(0.96g,5.3mmoles,MW:180.67)を加えた。混合物をアルゴン雰囲気下100〜105℃で一晩撹拌した。室温に冷却した後、混合物をろ過し、150mlのエチルエーテルに0〜5℃で加えた。沈殿生成物をろ別し、減圧下で乾燥させた。
【0067】
実施例10. オクトレオチドのN−末端アミン基におけるモノパルミチルポリ(エチレングリコール)との結合(PAL−PEG−BA−OCT)
典型的調製では、201.6mgのモノパルミチルポリ(エチレングリコール)−ブチルアルデヒド、ジエチルアセタール(PAL−PEG−BADA)を10mLの0.1Mリン酸(pH 2.1)に溶かし、結果として生じた溶液を50℃で1時間加熱してから室温に冷ました。1NのNaOHを用いて溶液のpHを5.5に調整し、結果として生じた溶液を、3.5mLの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH 5.5)中の195.3mgのオクトレオチドの溶液に加えた。1時間後、18.9mgのNaCNBH3を加えて濃度を20mMとした。反応を室温で一晩続けた。次に、2000ダルトンのMWカットオフを有する膜で反応混合物を透析するか、又はC−18カラムを備えた分取HPLC上に反応混合物を装填した。精製された結合型オクトレオチドは主に、1つの一級アミン(リジン)と1つの二級アミン(N−末端)を有する単一化合物だった。
【0068】
実施例11. オクトレオチドを含む製剤の調製及びin vitro特徴づけ
オクトレオチドアセタート(OCT−Ac)とオクトレオチドの結合体(PAL−PEG−BA−OCT)粉末をNMPに溶かした。次に種々形態のオクトレオチドを含む溶液をNMP中のSAIB溶液(90%w/w)と徹底的に混合した。表1に示すように、全ての製剤についてオクトレオチド含量は約6%だった。
【0069】
【表1】

【0070】
上で調製した製剤を室温で放置した(約22℃)。所定時点で、製剤の外観を記録し、上澄部と底部の両組成物それぞれの一定分量を収集し、オクトレオチド含量についてHPLCで分析した。直接観察又は上澄部のオクトレオチド含量と底部組成物のオクトレオチド含量の比を利用して製剤の物理的安定性を決定した。比が1.0に等しい場合、製剤は均一であり、安定している。比が1.0より小さい場合、相分離が起こることを示唆している。
【0071】
OCT−AcをSAIB/NMP溶液と混ぜ合わせると、即座に相分離が起こった。分厚い固体沈殿物が観察され、不均質な製剤が得られた。分厚い凝集体が沈殿し、経時的に底部に黄色の粘着性相を形成した。この不均質製剤は針を塞ぐであろうから注射に適さない。PAL−PEG−BA−OCTをSAIB/NMP溶液と混ぜ合わせると、清澄溶液が得られたので、注射に適している。
【0072】
図1は、製剤を室温で24時間放置した後に撮影した写真を示す。OCT−Acを含む製剤では明らかな相分離が起こったが、PAL−PEG−BA−OCTを含む製剤では起こらなかった。表2に示すように、2日後、底部相中のオクトレオチドの濃度は上部相中のオクトレオチドの濃度の約20倍だった。5日後にはこの比が0.03未満に減少した。驚くべきことに、PAL−PEG−BA−OCTを含む製剤では相分離が観察されなかった。さらに、OCT−Acを含む製剤では、底部相中でわずかに多くのNMPが観察された。
【0073】
【表2】

【0074】
さらに、オクトレオチドは、OCT−Acを含む製剤では安定でないことが分かった。表3に示すように、成分を混ぜ合わせるとすぐに、オクトレオチドの不純物の発生が起こった。2時間後、約4%のオクトレオチドが分解又は反応した。上澄部のオクトレオチドの半分より多く及び底部相のオクトレオチドの20%より多くが7日後に分解した。これはこのシステムが該ペプチドの持続性送達に適さないことを示唆している。しかし、予想外に、PAL−PEG−BA−OCTを含む製剤からは、室温で3カ月後でさえ、オクトレオチドの分解がほとんど又は全く検出されなかった(表3)。PAL−PEG−BA−OCTを含む製剤では、相分離が観察されなかった。
【0075】
【表3】

【0076】
実施例12. 種々の製剤からのオクトレオチドのin vitro放出
オクトレオチドアセタート(OCT−Ac)及びオクトレオチド結合体(PAL−PEG−BA−OCT)粉末をNMP中のSAIB溶液(90%w/w)と混合することによって製剤を調製した。表4に示すように、オクトレオチド含量は、各製剤中約6%だった。
【0077】
【表4】

【0078】
OCT−Acを含む製剤の物理的不安定性により生じる製剤調製直後のin vitro放出を調査した。in vitro放出のため一定分量の懸濁液を使用した。オクトレオチドを含む各製剤約0.1mLを4mLのガラスバイアル中の3mLの放出緩衝液(PBS 7.4、0.1%のナトリウムアジド含有)に注入した。バイアルを37℃でインキュベートし、種々の時点でサンプリングした。各時点で、2mLの放出媒体を除去して2mLの新鮮な放出媒体を加えた。YMC−Pack ODS−120Aカラムを用いてHPLCで収集サンプルをペプチドの濃度と完全性について分析した。各製剤について三通りのサンプルを用いた。
【0079】
図2に示すように、OCT−Acを含む製剤からのOCTの放出は、非常に高い初期バースト放出を示した。60%より多くのオクトレオチドが24時間以内で放出され、2週間後には90%より多くのオクトレオチドが放出された。しかし、驚くべきことに、PAL−PEG−BA−OCTを含む製剤からのOCTの放出は、ほとんど初期バースト放出を示さなかった。PAL−PEG−BA−OCTを含む製剤からは24時間以内で5%未満のオクトレオチドが放出され、その後は経時的に漸次放出だった。
【0080】
実施例13. ポリエチレングリコール結合GM−CSFの調製
以下のようにGM−CSFをポリエチレングリコール(PEG)に共有結合させることができる:100mgのGM−CSFを10mlのpH7.5のリン酸緩衝液に室温で溶かす。次に100mgのトレシル−モノメトキシ−ポリエチレングリコール(MW=5000ダルトン)を加え、混合物を1時間撹拌する。未反応GM−CSF及びペグ化GM−CSFフラクションを未反応トレシル−モノメトキシ−ポリエチレングリコールからゲルクロマトグラフィーで分離する。次にペグ化GM−CSFを100mMのトリス緩衝液中に透析し、濃度を50mg/mlに調整する。
【0081】
実施例14. ポリエチレングリコール結合ヒトインスリン(PEG−インスリン)の調製
以下のようにヒトインスリンをポリエチレングリコールで共有結合的に修飾した:200uLのTEAを含む4mLの無水DMSOに116mgの組換えヒトインスリンを溶かす。1gのmPEG(5000)−SPAを10mLの無水DMSOに溶かして直接注入でインスリン溶液に加える。90%よりも多くののタンパク質がペグ化されるまで室温で一晩(>10時間)反応を進行させる。2回エーテルからの沈殿によって未反応PEG及びペグ化インスリンを分離する。最終生成物をRP−HPLCで分析する。
【0082】
実施例15. ペグ化リゾチーム(PEG−Lyz)の調製
ホウ酸緩衝液(20mM,pH9.0)中のリゾチーム溶液(0.4%w/v,5mL)を4℃に冷却した。このタンパク質溶液に209mgのMPEG−SS(MW:2000,11モル過剰)をゆっくり加えた。エンド・ツー・エンドローテーションで4℃にて反応を一晩進行させ、10モル過剰のグリシンを添加して停止させた。反応混合物を3500ダルトンの孔径膜を用いてDI水に対して透析した。透析サンプルを如何なる添加剤も添加していない水中で凍結乾燥させて−20℃で貯蔵した。
【0083】
本発明は、単に例として提示される上記実施形態によって制限されず、添付の特許請求の範囲によって定義される保護範囲内で種々の方法で修正されうる。
【0084】
従って、本発明の好ましい実施形態に当てはまるように本発明の基本的な新規特徴を示し、記載し、指摘したが、当然のことながら、当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、例示した装置の形態及び詳細、並びにそれらの操作に種々の省略及び置換及び変更を行なうことができる。例えば、同一結果を得るための実質的に同一の手段で実質的に同一の機能を果たす当該要素及び/又は方法工程の全ての組合せが本発明の範囲内であることを明確に意図している。さらに、本発明のいずれかの開示形態又は実施形態と関連して示し、及び/又は述べた構造及び/又は要素及び/又は方法工程は、設計選択の一般的事項としていずれの他の開示又は記載又は示唆した形態又は実施形態にも組み込まれうるものであることを認識すべきである。従って、本明細書に添付された特許請求の範囲によって示されるようにのみ制限されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質又はペプチドの徐放用組成物であって、
(a)疎水性非ポリマー担体材料;
(b)水混和性の医薬的に許容しうる溶媒;及び
(c)1種以上の製剤性能増強化合物と共有結合したタンパク質又はペプチド
を含む、組成物。
【請求項2】
前記疎水性非ポリマー担体材料が、低い結晶性及び非極性の特性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記疎水性非ポリマー材料が、周囲条件又は生理的条件下できちんと結晶化せず、37℃で少なくとも5,000cPの粘度を有する液体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記疎水性非ポリマー担体材料が、1種以上の非ポリマーエステル又は混合エステルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記疎水性非ポリマー担体材料が、カルボン酸とエステル化している20個未満のヒドロキシドル基を有するポリオールから形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記カルボン酸が、脂肪酸などの2個より多くの炭素を有する有機酸を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記疎水性非ポリマー担体材料が、スクロースアセタートイソブチラート(SAIB)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記医薬的に許容しうる溶媒が、水中25℃で少なくとも1質量%の混和性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記医薬的に許容しうる溶媒が、ベンジルアルコール、カプロラクタム、カプロラクトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、乳酸エチル、グリセロール、グリセロールホルマール、グリコフロール(テトラグリコール)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ポリエチレングリコール、PEG−300、PEG−400、メトキシポリエチレングリコール、mPEG−350、アルコキシポリエチレングリコール、プロピレンカルボナート、トリアセチン、クエン酸トリエチル、及びこれらの組合せから成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記タンパク質又はペプチドが、オキシトシン、バソプレッシン、アドレノコルチコトロパ酸ホルモン(ACTH)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、プロラクチン、黄体ホルモン、黄体ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアゴニスト、LHRHアンタゴニスト、成長ホルモン(ヒト、ブタ、及びウシを含む)、成長ホルモン放出因子、インスリン、インスリン様成長因子(IGF−I、IGF−II)、エリスロポイエチン(エリスロポイエチン活性を有する全てのタンパク質を含む)、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンジオテンシン、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、副甲状腺ホルモン(PTH)、神経成長因子(NGF)、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージ−コロニー刺激因子(M−CSF)、ヘパリナーゼ、血管内皮増殖因子(VEG−F)、骨形成タンパク質(BMP)、hANP、グルカゴン様ペプチド(GLP−1、GLP−2)、エキセナチド(エキセンディン−3、エキセンディン−4など)、ペプチドYY(PYY)、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリン(その合成類似体及び薬理学的に活性なフラグメントを含む)、酵素、サイトカイン、抗体、ワクチン、抗生物質、糖タンパク質、卵胞刺激ホルモン、キョートルフィン、タフトシン、サイモポイエチン、サイモシン、サイモスチムリン、胸腺体液性因子、血清胸腺因子、コロニー刺激因子、モチリン、ボンベシン、ジノルフィン、ニューロテンシン、セルレイン、ウロキナーゼ、カリクレイン、サブスタンスP類似体及びアンタゴニスト、アンジオテンシンII、血液凝固因子VII及びIX、リゾチーム、グラミシジン、メラニン細胞刺激ホルモン、甲状腺ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、パンクレオザイミン、コレシストキニン、ヒト胎盤性ラクトゲン、トロンボポエチン(TPO)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、タンパク質合成刺激ペプチド、胃抑制ペプチド、血管作用性小腸ペプチド、血小板由来増殖因子、並びにこれらの合成類似体及び変態及び薬理学的に活性なフラグメント及び医薬的に許容しうる塩から成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記性能増強化合物が親水性、親油性又は両親媒性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記性能増強化合物が小分子又はポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記性能増強化合物が、水溶性であり且つ線形又は分岐ポリマーであるいずれかの親水性ポリマーである、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記性能増強化合物が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖、糖などから成る群より選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記性能増強化合物が、C4-36−アルキル、C4-36−アルケニル、C4-36−アルカジエニル、トコフェロール及びステロイド性残基を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記性能増強化合物が、下記一般構造:
L−S−(OC24mOH (式1)
(式中、Lは、好ましくはC4-36−アルキル、C4-36−アルケニル、C4-36−アルカジエニル、トコフェロール及びステロイド性残基から選択される親油性部分であり、Sは、エステル基、アミド基、二級又は三級アミン基、カルバマート基、スルホナート基、スルファート基、ホスファート基、ホスホナート基、又はエーテル基の群から選択されるリンカーであり、mは、1〜1000の範囲である)
を有する両親媒性分子である、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
前記両親媒性分子の前記親油性部分は、ラウリル、パルミトイル、ステアロイル、オレイル、エイコサノイル、及びドクサノイルを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記タンパク質又はペプチドが、(a)線形ポリエチレングリコール部分及び(b)親油性部分を含む1種以上の両親媒性分子と共有結合しており、前記タンパク質又はペプチド、ポリエチレングリコール部分及び親油性部分は、親油性環境又は細胞膜との相互作用に利用可能な親油性部分を外部に有するように立体構造的に配置されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記タンパク質又はペプチドと性能増強化合物の結合体中のタンパク質又はペプチド対性能増強化合物のモル比が、前記タンパク質又はペプチドの性質に応じて1:1〜1:10で変化する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記疎水性非ポリマー担体材料がスクロースアセタートイソブチラート(SAIB)であり、前記医薬的に許容しうる溶媒がN−メチル−2−ピロリドン(NMP)であり、前記タンパク質又はペプチドが両親媒性分子と結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記生理活性物質が、オクトレオチド又はグリカゴン様ペプチド−1(GLP−1)から成る群より選択される、請求項20に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−511087(P2011−511087A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545992(P2010−545992)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/033217
【国際公開番号】WO2009/100216
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(508218132)キューピーエス リミテッド ライアビリティ カンパニー (4)
【Fターム(参考)】