説明

タンパク質粉末組成物

【課題】再構成されたときに、安定性が増加したタンパク質飲料を形成しうるタンパク質粉末組成物、前記粉末組成物を生産するための方法及びその使用方法を提供する。
【解決手段】粉末組成物は約3〜約30%ペクチン(重量/タンパク質内容物の重量)を含み、前記ペクチンは50%エステル化の程度を有している。ペクチンはタンパク質ベースに吸着され、再構成の際、増加した安定性を有するタンパク質液体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な記載】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、タンパク質粉末組成物に関する。前記粉末組成物を、増加した安定性を有するタンパク質含有液体の形態に再構成することができる。前記粉末組成物は、タンパク質内容物(protein content)の約3〜約30%(重量/重量)ペクチンを含み、好ましくは前記ペクチンはタンパク質ベース(protein base)に吸着され、前記ペクチンは>50%のエステル化の程度を有している。また、本発明は、前記粉末組成物を生産するための方法及びその使用に関する。
【0002】
[発明の背景]
現在、タンパク質粉末組成物に関する必要性が増加しており、前記タンパク質粉末組成物は、液体(例えば、水)に添加または混合されて、タンパク質含有液体(例えば、タンパク質飲料などのヒトが消費するタンパク質含有液体)が生産される。その理由の1つは、スペースを必要とする重い液体組成物に関連する輸送コストである。別の理由は消費者の要求であり、簡単に短時間に(in an easy and fast way)、飲料(例えば、栄養飲料)を調製できることが要求されており、これは短時間で消費されうる。
【0003】
5.0未満のpHで、タンパク質飲料(例えば、ミルク飲料)に関して発生する一般的な現象は、タンパク質の沈殿(sedimentation)である、タンパク質はそれらの等電点付近のpHで不溶性となる。この現象が増幅されるのは、70゜C以上の温度での熱処理が、微生物活性を減少させる及び貯蔵寿命(shelf life)を増加させるために、生産物に適用された場合である。
【0004】
沈殿(これは望ましくないと考えられる)を阻止するために、他の技術の中でも特に高エステル ペクチン(high ester pectin)を製品に適切な用量(dosing)で添加する製造法(manufactures)を使用することができる。高エステルペクチンを使用した安定化は、例えば、文献(GRINDSTED(R) PECTIN AMD, Protein stabiliser for acidified beverages, A User's Guide, Danisco PB 2001-3e)に記載されており、その文献には異なるタイプのペクチンおよび生産物中のペクチンの至適な用量に関する指標の記載がある。タンパク質飲料(例えば、高エステル ペクチンを有するミルク飲料を含む酸性化飲料)を安定化する際に非常に重要な1つのポイントは、強い機械的な処理(典型的には50bar〜150bar以上の圧力での均質化処理)を適用することである。例えば、Glahnら(Conference Proceedings, London, October 1994, p 252-256, Food Ingredients Europe, Publisher:Process Press Europe, Maarssen)は、次の事項を示している。その事項とは、均質化処理を50bar〜150barで、ペクチンで安定化されたヨーグルト飲料に適用した場合(70゜Cで10min加熱処理後)、至適な安定性に必要とされた最小濃度は、最終産物の0.4%(重量)から0.2%未満に減少することである。同時に、ヨーグルト飲料の粘性は、劇的に減少する。ペクチンの安定化効果は、カゼインミセルまたは他のタンパク質凝集物の表面でのペクチン分子の静電的な吸着により説明され、これにより大きい凝集物におけるタンパク質粒子の凝集が妨げられる。
【0005】
そのことから、タンパク質含有液体のペクチンによる安定化〔これは、例えば、ヒトが消費するための、低いpHを有するタンパク質含有液体であり、例えば、酸性化飲料(acidifed drinks)である〕は、他のタイプの安定化剤〔例えば、カルボキシメチルセルロース、イナゴマメガム(locust bean gum)、カラゲーニン(carraghenans)またはキサン(xanthan)などのような親水コロイドガム〕による安定化とは異なっている。これらの安定化剤は、飲料の粘性を増加させること、及びこれによって不溶性粒子(例えば、タンパク質)の沈殿を阻止またはスローダウンすることにより安定性を保証する。
【0006】
US 4.289.789において、即席のヨーグルト飲料組成物が開示されており、そこでは、前記ヨーグルト飲料組成物は、前記飲料を安定化するためのシックナー(thickener)、前記シックナー、および親水コロイドガムを含む。前記シックナーは、カルボキシメチルセルロースまたは冷水可溶性ガム(cold water soluble gum)であってもよい。安定化は、前記ヨーグルト飲料の粘性の増加により得られる。従来技術は、飲料(例えば、低い粘性を有している酸性化飲料)のタンパク質の安定化のための解決法(solution)を提供していない。
【0007】
現在、ヨーグルトなどのタンパク質ベース(a protein base)およびペクチンを含むタンパク質粉末組成物を生産することが可能な方法は存在しなく;また、該方法は、前記粉末組成物を液体へと溶解することを可能とせしめる方法であり、ここで前記液体組成物は粘性が増加することなく、貯蔵寿命の間に沈殿することなく、均質(homogenous)に維持される。そのようなことから、上記の要求を達成するために、係る方法および係る新規タンパク質粉末組成物を発明する必要がある。
【0008】
[発明の概要]
本出願は改善されたタンパク質粉末組成物に関する(これは再構成されて、タンパク質含有液体を形成する)。前記液体は、増加した安定性(例えば、貯蔵の間の沈殿の減少)を有している。加えて、前記液体は、均質で、粘性が低く且つ安定に維持されている。前記タンパク質液体は、ヒトが消費する液体であり、例えば、スープ、ドレッシング、スポーツ飲料、栄養ドリンク(nutritional drink)、食事飲料、または療法的飲料(therapeutic drink)であってもよい。
【0009】
従って、第一側面において、本発明はタンパク質粉末組成物に関し、該タンパク質粉末組成物は約3〜約30%ペクチン(重量/タンパク質内容物の重量)を含み、前記ペクチンは>50%のエステル化の程度を有している。
【0010】
別の側面において、本発明はタンパク質粉末組成物から再構成されたタンパク質液体に関し、前記タンパク質液体は、スープ、ドレッシング、ミルク飲料、ミルクジュース飲料、バターミルク飲料、サワークリーム飲料、乳清ジュース飲料、カラスムギ飲料、ジュース飲料、および大豆飲料又はその組み合わせからなる群から選択される。
【0011】
更なる側面において、本発明は、タンパク質粉末組成物を調製する方法に関する。該タンパク質粉末組成物は、再構成されることにより、タンパク質含有液体を形成することが可能であり、該方法は、少なくとも1つのペクチン供給源を提供すること、少なくとも1つのタンパク質ベースを提供すること、前記ペクチン供給源と前記タンパク質供給源とを混合して、タンパク質粉末組成物を生産すること、前記タンパク質粉末組成物を均質化すること、および前記タンパク質粉末組成物を乾燥することの工程を含む。
【0012】
また、本発明は、本発明によるタンパク質粉末組成物の使用に関する。
【0013】
係る改善されたタンパク質粉末組成物は、液体(例えば、水)中に分散されることにより、引き続く均質化処理をすることなく、均質化タンパク質含有液体を提供し、この中で前記タンパク質ベースのタンパク質は貯蔵期間に安定である。
【0014】
[発明の詳細な記述]
「増加した安定性(increased stability)」の用語は、次の事項を意味する;その事項とは、タンパク質含有液体が、ペクチンに吸着されたタンパク質が沈殿すること又は貯蔵期間にタンパク質含有液体の粘性を変化させることなく、液体(例えば、水)中での分散後の均質化段階に維持されることである。
【0015】
「ペクチン」の用語は、植物材料からペクチンを分離することにより取得されるペクチン産物を意味する。ペクチン ステアリング物質(pectin staring material)は、好ましくは、柑橘類果実、リンゴ、砂糖大根、ヒマワリ頭部(sunflower heads)、野菜、または植物(例えば、リンゴ、砂糖大根、ヒマワリ、または柑橘類果実)からの廃棄物から好適に取得することができる。
【0016】
柑橘類果実の例は、ライム、レモン、グレープフルーツ、およびオレンジである。ペクチンは、構造的ポリ多糖(structural polysaccharide)であり、通常は植物細胞壁中でプロトペクチンの形態で見出される。ペクチンは、α-1-4結合型ガラクツロン酸残基を含み、これは少数の1,2結合型α-L-ラムノース ユニットで中断(interrupted)される。加えて、ペクチンは、高度に分枝状の領域を含み、その大半が交代性のラムノガラクツロナン鎖(an almost alternating rhamno-galacturonan chain)を有する。また、これらの高度に分枝状の領域は、他の糖単位〔例えば、D-ガラクトース、ララビノース(Larabinose)、およびキシロース〕を含有し、これはラムノース単位のC3もしくはC4原子またはガラクツロン酸単位のC2もしくはC3原子とのグリコシド結合により接着する。α-1-4結合型ガラクツロン酸残基の長鎖は、「スムース領域(smooth regions)」と称され、他方で高度に分枝状の領域は、一般に「ヘアリー領域(hairy regions)」と称される。
【0017】
「エステル化の程度(degree of esterification)」の用語は、ペクチンのポリガラクツロ酸鎖に含有される遊離カルボン酸基がエステル化されている(例えば、メチル化により)又は他の経路により非酸性にされている(例えば、アミド化により)範囲(extent)を意味する。50%以上のカルボキシル基がエステル化された場合、結果として生じるペクチンは、「高エステルペクチン(high ester pectin)」と称される。ペクチンがエステル化基を含有しない又は少数のエステル化基を含有する場合、一般にペクチン酸と称される。ペクチンの構造(特に、エステル化の程度)は、その物理的および/または化学的な特性を決定する。
【0018】
「吸着される(adsorbed)」の用語は、ペクチン粒子が化学的な相互作用により、タンパク質粒子の表面と結合することを意味する。
【0019】
「低い粘性(low viscosity)」の用語は、次の液体を意味する;その液体とは、タンパク質に関して、50mPas(milli-Pascal. Second;ミリパスカル秒)以下の粘性値〔例えば、25mPasを飲料ヨーグルトに関して(MSNFの8重量%)〕を有している液体であり、これはLVT Brookfiled(登録商標)粘度計(30rpm、S160spindleによる)により測定される。
【0020】
タンパク質粉末組成物の記載
本発明は、改善されたタンパク質粉末組成物に関する(前記タンパク質粉末組成物は、再構成されて、増加した安定性を有するタンパク質含有液体を形成し得る)。前記タンパク質含有液体は、飲料であってもよい。前記タンパク質ベースは任意の適切なタンパク質ベースでよく、これはタンパク質含有液体中での後のタンパク質の沈殿を最小化するために、安定化される必要がある。このことは、タンパク質ベース内のタンパク質に対するペクチンの吸着によって達成できる(以下に記載される方法などの適切な方法により)。改善されたタンパク質粉末組成物は、特定のpHを有しており、これは7未満である(例えば、約3.0〜約7.0)又は5.0未満のpHを有している(例えば、約3.0〜4.8、例えば、3.5〜約4.5)。
【0021】
pHの測定は、水中で粉末の10%(重量)溶液で実施される。
【0022】
再構成された液体は、貯蔵の間に均質に維持される。粘性は低く安定に維持され、液体内でタンパク質の限定量(limited amounts)の沈殿が発生する。本発明での改善は、次の事項である;その事項とは、本発明による再構成された液体の安定性が、前記組成物を乾燥させる前のペクチン添加により顕著に改善されることである。
【0023】
一態様によると、本発明は、タンパク質粉末組成物に関し、ここで前記粉末組成物は、タンパク質ベースに吸着された、約3〜約30%ペクチン(重量/タンパク質内容物の重量、タンパク質ベース)または約5〜約15%ペクチン(重量/タンパク質内容物の重量)を含む。
【0024】
前記ペクチンは、エステル化の程度>50%(例えば>60%または例えば>70%)を有している。前記ペクチンは、任意の適切なペクチン(例えば、高エステル ペクチン)であってもよい。Grindsted(登録商標) AMD 700 ranges(例えば、AMD783)は、DaniscoA/S(DK-8220 Brabrand, デンマーク)から入手された。特定の態様において、スクロースを使用して、組成物中のペクチンの分散を援助することができる。
【0025】
別の態様によると、前記タンパク質粉末組成物は、少なくとも1つの添加物を含み、これは糖、甘味剤、香料、着色剤、細菌培養物、果実、果実ジュース、または有機酸、ミネラル、またはビタミンからなる群から選択される。
【0026】
糖添加物の例は、グルコース、スクロース、および果糖、又はその混合物である。前記糖(sugar)または糖(sugars)は、0.1〜15%(重量/重量)の量で添加され得る。しかしながら、人工的な甘味剤で、前記糖を部分的に又は完全に置き換えてもよい。
【0027】
添加しえる細菌培養物の例は、共生(probiotic)細菌培養物または他の細菌培養物であり、これは再構成された飲料の食味および芳香に影響し得る。細菌培養物の例は、乳酸桿菌(Lactobacilli)である。
【0028】
果実および果実ジュースの例は天然および合成の双方であり、これは飲料の所望の最終的な食味に依存して選択され得る。果実または果実ジュースの例は、オレンジ、ブラックチェリー(black cherry)、パパイア、マンゴ、ブドウ、クランベリー、レモン、レモンライム、グレープフルーツである。状況に応じて、1以上の野菜抽出物を添加し得る(例えば、ニンジン抽出物)。
【0029】
有機酸の例は、アスコルビン酸、酢酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、またはリン酸である。また、酸性化は、スタータ培養物(starter culture)を用いることにより達成され、これは細菌または酵母のスタータ培養物(例えば、L.acidophilus、L.bulgaricus、B.bifida、S.thermophilus、またはKloeckera)である。
【0030】
1以上の添加物の選択は、最終的な飲料に及び飲料が充足することが要求される判定基準(例えば、ある種の食味、色、嗅覚、栄養的価値などを有していること)に依存する。
【0031】
本発明の別の利点は、次の事項である;その事項とは、付加的なシックナーを、安定な飲料(該飲料は、50mPAs以下の粘性を3%タンパク質濃度で又は25mPAs以下を3%タンパク質濃度で有している)を得るために添加する必要がないことである。付加的なシックナーを割愛することにより、前記粉末組成物を噴霧乾燥(spray dry)および混合することが容易となる。
【0032】
特定の態様によると、本発明は、酸性化(acidified)ミルク飲料または酸性化ミルクジュース飲料に関し、ここでタンパク質ベースの酸性化は、1以上の有機酸(例えば、クエン酸、乳酸、果実、野菜抽出物、または発酵した乳清)の添加により得られる。前記有機酸は、粉末の生産の前に添加される。
【0033】
タンパク質液体に関する適切なタンパク質ベースは、動物タンパク質または植物タンパク質であり、これらは、肉、ミルク、ジュース、大豆、カラスムギ、乳清、米、クルミ、ピーナッツ、ココナツ、ヨーグルト、又はその組み合わせからなる群の内に存在するものである。例えば、前記タンパク質ベースがヨーグルトである場合、前記ヨーグルトはTamineら(1985, Yoghurt science and technology, Pergamon press)にしたがって調製し得る。
【0034】
ペクチンの付加により、粘性を上昇させることなく、安定性を保証する可能性が提供される。また、シックナーの排除によって、タンパク質粉末組成物の噴霧乾燥が容易になる。
【0035】
再構成されたタンパク質液体は、ミルク飲料、ミルクジュース飲料、バターミルク飲料、乳清ジュース飲料、カラスムギ飲料、ジュース飲料、および大豆飲料、又はその組み合わせからなる群から選択されてもよい。前記タンパク質液体は、高、中、低、または非脂肪のタンパク質飲料であってもよい。形成されたタンパク質飲料は、液体(例えば、水、ジュース、またはミルク)または別の液体(スパークリングまたは非スパークリング)を添加し、撹拌して前記飲料を形成することにより容易に調製され得る。前記撹拌(agitation)は、約1500rpm以上の速度で実施できる。これは、例えば、SILVERSON(登録商標)L 4 R、500〜10000rpmの回転速度範囲により達成し得る。前記タンパク質飲料は、子供、乳児、高齢者、および筋肉を形作る人々のためのタンパク質飲料であってもよい。
【0036】
タンパク質粉末組成物の調製方法の記載
また、本発明は、タンパク質粉末組成物の調製方法に関する。前記タンパク質粉末組成物は、上記に記載されている。
【0037】
前記方法は、少なくとも1つのペクチン供給源および少なくとも1つのタンパク質ベースを提供する工程を含み、これらが混合されて、タンパク質粉末組成物が生産される。
【0038】
前記ペクチンは、別の成分(例えば、スクロース)と、前記タンパク質に添加される前にブレンドされてもよい。前記タンパク質粉末組成物は、乾燥物(dry)または液体(liquid)でもよい。
【0039】
前記タンパク質粉末組成物が乾燥物である場合、液体(例えば、水またはミルク)が混合される。
【0040】
前記タンパク質粉末組成物が、均質化工程に、そして引き続く乾燥工程に供されて、本発明のタンパク質粉末組成物が生産される。
【0041】
一態様によると、本発明は、特定の方法に関する;該方法において、ペクチンは、タンパク質ベースに、タンパク質内容物の約3〜約30重量%のペクチン又はタンパク質内容物の約5〜約15重量%の量で添加される。前記ペクチンは、均質化プロセスの間に前記タンパク質ベースのタンパク質に吸着され、このことにより前記タンパク質が液体内で後に沈殿することが妨げる。
【0042】
前記方法には、均質化の工程が含まれる。前記均質化は、高剪断液体ブレンダー(high-shear liquid blender)である、SILVERSON(登録商標) 4 LRなどで、又は高圧力ホモジナイザー(例えば、Dairy Processing Handbook, Tetra Pak Processing System Publisher, pages 116-118に記載されるような)で実施し得る。高圧力システムが好適であり、10MPaの圧力(好ましくは20MPa)を伴い、1もしくは2段階で、好ましくは50゜C以上の温度(しかし、必須ではない)で適用される。
【0043】
都合よく(Advantageously)、均質化を、乾燥工程と同時に、前記組成物を噴霧乾燥器のノズルを通じて噴霧することにより生じさせてもよい。
【0044】
付加的に、前記方法は乾燥させる工程を含み、前記乾燥させることは、凍結乾燥、流動床乾燥(fluid bed drying)、噴霧乾燥、またはドラム乾燥(drum-drying)或いはその組み合わせであってもよい。
【0045】
乾燥方法は、Razikら(Yoghurt:scientific grounds, technology, manufacture and preparations, P293-296. Technical Dairy Publishing House, 1978)に記載されている。しかしながら、特定の態様に関して、噴霧乾燥が好適である。
【0046】
乾燥が実施されて、タンパク質粉末組成物が達成される、このタンパク質粉末組成物は少なくとも85%(例えば、90%)の乾燥内容量(dry content)を有している。乾燥物は、タンパク質粉末組成物の保存を保証すること、および保存下での微生物による品質低下(spoilage)を避けることに関して十分である。
【0047】
前記方法には、タンパク質ベース(例えば、タンパク質粉末組成物に関して、上記で記載したタンパク質ベース)が含まれる。
【0048】
前記方法によって生産された(形成された)タンパク質粉末組成物は、タンパク質含有液体(例えば、上記のタンパク質含有液体)に再構成されてもよい。
【0049】
[例]
[例1]
102gの高エステル Grindsted(登録商標) AMD 783を、510gのスクロースと共に乾燥ブレンド(dry-blended)し、1500gの水(80゜C)に添加した。20kgの非脂肪ヨーグルトベース(14.5%固形分)を、この調製物と共に高い撹拌条件下でブレンドした。前記ヨーグルトベースは、Lactobacillus bulgaricumおよびStreptococcus thermophilusの株を含有しているヨーグルト培養物を用いて、4.3のpHまで濃縮ミルクを発酵させることにより調製した。ペクチン含有ヨーグルトベースを、2-工程 ホモジナイザーで、72barおよび36barで均質化した。均質化したペクチン含有ヨーグルトベースを、次に従来の噴霧乾燥機(該噴霧乾燥機は、235゜Cの入口温度および85〜90゜Cの出口温度を有する)で、90%の全体固形分(a total solid content)にまで噴霧乾燥した。
【0050】
[例2]
1. 検査サンプル
909gのヨーグルトベース(実施例1で調製した)を、800gスクロースと乾燥ブレンドし、次に8291gの水に45〜50゜Cで分散させ、pHを4.0にクエン酸の添加により調整し、調製物をSilverston(登録商標)ブレンダーモデルL4Rを用いて回転速度3000rpmで混合した。
【0051】
2. 参照サンプル
879gの参照ヨーグルト粉末(ペクチンの添加を除き、実施例1における条件と同一の条件下で調製された)を、28gの高エステル Grindsted(登録商標) AMD783および800gスクロースと乾燥ブレンドし、次に8291gの水に45〜50゜Cで分散させ、pHを4.0にクエン酸の添加により調整し、調製物をSilverston(登録商標)ブレンダーモデルL4Rを用いて回転速度3000rpmで混合した。
【0052】
前記検査サンプルおよび同じ成分から構成される前記参照サンプルは、同じタイプおよび内容量のペクチンを有していたが、次の事実のみ異なっていた;その事実とは、ペクチンが、前記ヨーグルトベースへと、前記検査サンプルの乾燥前に、および前記参照サンプルの乾燥後に添加されていたことである。前記検査サンプルおよび前記参照サンプルを、7日間の貯蔵(4゜C)後に分析した、その結果を以下の表1に示す。粘性をLVT Brookfiled(登録商標)粘度計(30rpm、S160spindleによる)で測定した。沈殿物をHeraus(登録商標)遠心機中で、1200rpmでの遠心分離の30分後での沈殿(deposit)として測定した。平均粒子サイズを、Malvern(登録商標)マスターサイザー(mastersizer)で測定した。
【表1】

【0053】
[例3]
1. 検査サンプル
17.6gのヨーグルトベース(実施例1で調製した)を、16gスクロースと乾燥ブレンドし、250mlの透明ボトルに注いだ。166gの水道水(20゜C)を、前記ボトルに添加した(これを30秒間正確に手で激しく振盪した)。
【0054】
2. 参照サンプル
実施例2で言及した参照ヨーグルト粉末の17g、0.56gの高エステル Grindsted(登録商標) AMD783ペクチン、および16gのスクロースを乾燥ブレンドすること、前記ブレンドを250ml透明ボトルに注ぐこと、および次に166mlの水道水(20゜C)を添加し、振盪することにより、同じ手順を反復した。
【0055】
水の添加および振盪を、検査および参照サンプルに関して同時に実施した。前記ボトルを、次に室温で静置した。10分後、次の事項が観察された。その事項とは、検査サンプルが、なおも均質で(相分離の痕跡無く)、他方で参照サンプルにおいて、凝結(flocculation)現象が明瞭に可視であったことである。30分後、検査サンプルは、なお均質であった。参照サンプルにおいて、2つの別個の相が認識され、それは液体の上部3分の1の透明相、および液体の下部3分の2の不透明白色相を有するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約3〜約30%ペクチン(重量/タンパク質内容物の重量)を含み、前記ペクチンは>50%のエステル化の程度を有しているタンパク質粉末組成物。
【請求項2】
約3〜約30%ペクチン(重量/タンパク質内容物の重量)がタンパク質ベースに吸着される、請求項1記載のタンパク質粉末組成物。
【請求項3】
約5〜約15%ペクチン(重量/タンパク質内容物の重量)がタンパク質ベースに吸着される、請求項2記載のタンパク質粉末組成物。
【請求項4】
前記タンパク質粉末組成物が7未満のpHを有する、請求項1〜3の何れか一項に記載のタンパク質粉末組成物。
【請求項5】
前記タンパク質粉末組成物は、再構成されて、増加した安定性を有するタンパク質液体を形成し得る、請求項1〜4の何れか一項に記載のタンパク質粉末組成物。
【請求項6】
上記の再構成されたタンパク質液体が、3%タンパク質濃度で50mPAs未満の粘性を有する均質な状態に維持される、請求項5記載のタンパク質粉末組成物。
【請求項7】
上記の再構成されたタンパク質液体が、3%タンパク質濃度で25mPAs未満の粘性を有する均質な状態に維持される、請求項6記載のタンパク質粉末組成物。
【請求項8】
ペクチンのエステル化程度が>60%である、請求項1〜7の何れか一項に記載のタンパク質粉末組成物。
【請求項9】
ペクチンのエステル化程度が>70%である、請求項8項記載のタンパク質粉末組成物。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載のタンパク質粉末組成物であって、前記タンパク質ベースが、肉、ミルク、ジュース、大豆、カラスムギ、乳清、米、クルミ、ピーナッツ、ココナツ、ヨーグルト、又はその組み合わせからなる群から選択されるタンパク質粉末組成物。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載のタンパク質粉末組成物から再構成されたタンパク質液体であって、前記タンパク質液体は、スープ、ドレッシング、ミルク飲料、ミルクジュース飲料、バターミルク飲料、サワークリーム飲料、乳清ジュース飲料、カラスムギ飲料、ジュース飲料、および大豆飲料又はその組み合わせからなる群から選択されるタンパク質液体。
【請求項12】
再構成されてタンパク質液体を形成するタンパク質粉末組成物を調製する方法であって;
a)少なくとも1つのペクチン供給源を提供することと、
b)少なくとも1つのタンパク質ベースを提供することと、
c)前記ペクチン供給源と前記タンパク質ベースとを混合して、タンパク質粉末組成物を生産することと、
d)前記タンパク質粉末組成物を均質化することと、および
e)前記タンパク質粉末組成物を乾燥することと、
を含む方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法であって、均質化および乾燥の工程が、1工程で実施される方法。
【請求項14】
請求項12〜13の何れか一項に記載の方法であって、前記ペクチン供給源が、別の成分(例えば、スクロース)とブレンドされる方法。
【請求項15】
請求項12〜14の何れか一項に記載の方法であって、前記ペクチン供給源を水性媒体(an aqueous media)に工程c)の前に溶解させる更なる工程が使用される方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法であって、前記水性媒体が、水およびミルクからなる群から選択される方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、b)におけるペクチン供給源が、タンパク質内容物の約3〜約30%(重量/重量)の含有量で提供される方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、b)におけるペクチン供給源が、タンパク質内容物の約5〜約15%(重量/重量)の含有量で提供される方法。
【請求項19】
請求項12〜18の何れか一項に記載の方法であって、a)におけるペクチン供給源が、>50%のエステル化の程度を有する方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法であって、a)におけるペクチン供給源が、>60%のエステル化の程度を有する方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法であって、b)におけるペクチン供給源が、>70%のエステル化の程度を有する方法。
【請求項22】
請求項12〜21の何れか一項に記載の方法であって、乾燥することが、流動床乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、またはドラム乾燥或いはその組み合わせからなる群から選択される方法。
【請求項23】
請求項12〜22の何れか一項に記載の方法であって、前記タンパク質ベースが、肉、ミルク、ジュース、大豆、カラスムギ、乳清、ヨーグルト、又はその組み合わせからなる群から選択される方法。
【請求項24】
請求項12〜23の何れか一項に記載の方法により生産されたタンパク質粉末組成物。
【請求項25】
請求項1〜10および24の何れか一項に記載のタンパク質粉末組成物または請求項11記載のタンパク質液体の使用。

【公開番号】特開2010−115199(P2010−115199A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−261149(P2009−261149)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【分割の表示】特願2006−500344(P2006−500344)の分割
【原出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【出願人】(505367257)
【Fターム(参考)】