説明

ターゲット容器を充填するための方法および装置

本発明の方法および装置は、測定された物質の用量をターゲット容器へ充填するための分配器具の助けにより、リザーバから所定の目標質量mの自由流動物質をターゲット容器に充填するように機能する。用量分配器具はバルブを備え、このバルブは、リザーバからターゲット容器への物質の流れの質量流速m・の可変調整を可能にする。用量分配器具は、さらに、充填プロセスの開示からの経過時間tを測定する手段と、ターゲット容器内の物質の質量を決定する秤と、バルブを制御するバルブ制御モジュールを備えるコントローラユニットと、を有する。コントローラユニットは調整モジュールを含み、望ましい質量流速m・が調整モジュールに記憶される。所定の時間tにおいて、質量流速m・(t)が望ましい質量流速m・よりも小さい場合、流速調整dm・=|m・ − m・(t)|により流速m・(t)は増加され、質量流速m・(t)が望ましい質量流速m・よりも大きい場合、流速調整dm・により、質量流速m・(t)が減少される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リザーバから自由流動物質の所定の目標量をターゲット容器に充填するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の充填装置は、たとえば製薬分野で必要とされるような少量の薬剤を分配するのに用いられる。ターゲット容器は、薬剤分配装置により分配される物質の量を計量するために、しばしば秤上にセットされ、物質は、後に所与の指示にしたがってさらに処理され得る。
【0003】
分配される物質は、たとえば、分配ヘッドに装備されるソース容器またはリザーバに保持される。分配される物質が、薬剤分配装置の開口部を通って外側に輸送されるならば、充填プロセスの終わりにおいて、物質の所定の目標量がターゲット容器により受け取られるようにすることが望ましい。ここで重要なことは、ターゲット容器内の実際の質量が、所定の目標量にできる限り正確に一致することである。さらに、重要なことは、充填プロセスをできるだけ迅速に行うことができることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当技術分野の技術水準において公知なものとして、分配される物質の量の容積測定に基づく薬剤分配方法がある。密度ρの物質において、可変開口の断面積Aのバルブ、および、これらのパラメータに関連し、物質の結果として外に流れる流速uから、ターゲット容器内の物質の質量mが以下の数式から得られる。
【0005】
【数1】

【0006】
特に、外に流れる流速uは、多くの影響因子に従属し、たとえば、バルブ開口の断面積A、リザーバ内の物質の充填高さhから得られる静止水圧、および、粉末の粒子サイズのような物質の流動学的特性などの影響を受ける。特に、流動学的特性は、しばしば、非常に複雑であり、また、正確さの程度が不明な影響因子の影響を受ける。たとえば、流れの遅滞量を考慮に入れるのは困難であり、これは、流動開始においてビンガム流体または粉体において生じる。特に、粉末状(pulverous)物質を充填する場合、たとえば粒子サイズ、水分含有量、個別の粒子の表面特定などの因子は大きな影響を与える。
【0007】
米国特許第4893262号明細書において、容器を充填するコントローラシステムが開示されている。このシステムは、いくつかの充填サイクルにわたるプロセスにおいて最適化され、質量の流れは、1つのサイクルから次へ最適化され、充填時間は、分配された質量が所定の目標質量にできるだけ正確に一致するまで調整される。このシステムは、主として、大きな量を充填するのに用いられ、正確さに関する要求は本発明のシステムのものよりもかなり低い。最適化がいくつかのサイクルにわたるという事実は、さらなる問題を示しており、所定の目標質量は、いくつかの試験サイクルの後にだけ必要な精度で実際に達成されるということである。これらの試験サイクルの間に分配される物質は、分配プロセスおよびターゲット容器からの回収において汚染される可能性があるので、もはや使用することができない。これは、特に分配される物質が高価なときに決定的な不利益である。
【0008】
正確であり且つ再現性を持って粒子の少量質量を分配する方法および装置が米国6987228号明細書に記載されている。この装置は、分配される粒子を保持するシーブ(篩)に付与されるエネルギーの量を制御するように機能するコントローラユニットを含む。シーブにエネルギーを付与することは、シーブ内の粒子の少量が、シーブの下に配置される秤上に落ちる効果を備える。秤により測定された重量に基づいて、コントローラユニットは、シーブに付与されるエネルギーの量を制御する。導入されるエネルギーは、分配されるべく残っている質量の関数として制御することができ、粒子の外へ流れる速度を変化させることができる。この構成は、シーブを使用するので粉体の形態の物質だけしか分配できないという問題がある。他の自由流動物質、特に液体に関しては、この方法は適当ではない。粉末状物質が分配される場合であっても、この方法には欠点が存在し、物質の粒子サイズに応じて異なるシーブを使用しなければならない。本質的な欠点は、重量信号の関数としてシーブに付与されるエネルギーの制御に関係する。秤の応答の時間遅れにより、充填プロセスは、秤の応答に十分な時間となる程度に十分にゆっくりと行わなければならない。結果として、充填プロセスは非常に長時間かかる。
【0009】
容器の充填を制御するシステムが米国特許第4762252号明細書に開示されている。充填プロセス中に質量の流速を決定するために、リザーバの重量の変化が測定される。この方法で決定される質量の流速は、望ましい流速と比較される。測定された流速が望ましい流速から大きく離れている場合、それに応じて質量の流速が調整される。この刊行物に説明されるシステムは、1時間ごとに約25kgから50kgを分配するのに適している。製薬分野で必要とされる少量サイズを充填する場合、高いレベルの正確さが必要とされ、わずかな測定の不正確さが充填質量に有意な影響を与え得る。同時に、充填プロセスは、できるだけ少ない時間で行うべきである。
【0010】
それゆえ、本発明の目的は、所定の少量の自由流動物質を正確に且つ再現性を持って分配でき、単純で、迅速且つ正確な方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、独立請求項に記載の特徴を備える方法および装置により解決される。さらに有利な実施形態が従属請求項に記載される。
本発明の方法および本発明の装置によれば、ターゲット容器は、物質の測定された用量をターゲット容器へ充填する分配装置の支援により、自由流動物質の所定の目標量mがリザーバから充填される。用量分配装置は、リザーバからターゲット容器への質量の流速
【0012】
【数2】

【0013】
の可変調整を可能にするバルブを備える。用量分配装置は、さらに、充填プロセスの開始からの経過時間tを測定する手段と、ターゲット容器内の物質の質量mを決定する秤と、バルブを制御するバルブ制御モジュールを備えるコントローラユニットと、を含む。コントローラユニットは調整モジュールを含み、望ましい質量流速
【0014】
【数3】

【0015】
が調整モジュール内に記憶される。時間tにおいて、質量流速
【0016】
【数4】

【0017】
が望ましい質量流速m・よりも小さいならば、流速m・(t)は、質量流速調整dm・=m・ − m・(t)だけ増加され、質量流速m・(t)が、望ましい質量流速m・よりも大きいならば、流速m・(t)は、質量流速調整dm・=m・(t) − m・ だけ減少される。
【0018】
いくつかの異なるパラメータが望ましい質量流速m・の決定に加わることが望ましい。
これらのパラメータの1つは遅延時間τである。遅延時間τは、質量の秤上への到達から秤上での質量値の指示までの時間間隔を示す。遅延時間τは測定により決定される。遅延時間τの大部分は、秤の特性に依存することが分かるであろう。さらに、周囲環境のパラメータは、遅延時間τに影響を与える。たとえば、低周波振動および/または微動は、遅延時間τの増加の原因となり得る。これは、遅延時間τの主要な要因は、秤に特有の測定遅延および環境パラメータであることを意味している。分配される物質の物理的な特性は、副次的な影響しかない。ターゲット容器内に分配される質量が、制限を越えないことを確保するために、望ましい質量流速m・の決定に遅延時間τを入れることができる。ここでの法則は、遅延時間τは、望ましい質量流速m・に反比例するということであり、すなわち、
【0019】
【数5】

【0020】
ということである。
望ましい質量流速の決定に考慮されるべきさらなるパラメータは、公差(tolerance)mである。公差mは、最大許容偏差を画定し、用量分配プロセスの最後におけるターゲット容器内の質量mが、目標質量mから最大許容公差だけ異なることを許容する。換言すれば、用量分配プロセスの最後におけるターゲット容器内の質量mは、以下の間でなければならない。
−m < m < m+m
公差mが大きいならば、与えられた公差m内にある最終的な質量の望ましい結果は、大きな質量流速m・が望まれる場合に可能となる。一方、公差mが小さい場合、望ましい質量流速m・は、質量mが与えられた公差m内になることを確保する程度に小さくなるように選択される必要がある。これは、望ましい質量流速m・が公差mに比例すべきことを導き、すなわち、
【0021】
【数6】

【0022】
を導く。
ターゲット容器内に分配される物質の最終質量mが、公差mを超えて目標質量mよりも大きい場合、すなわち、
m > m+m
の場合、これはオーバーシュートであると考えられる。過分に分配された物質は、ターゲット容器から多大な困難なく除去することができないので、交差mを超えることは厳格に防止される必要がある。また、ターゲット容器から物質を取り除くプロセスにおいて、汚染が生じることがあり、完全に避けるべきリスクがある。
【0023】
ターゲット容器に受け入れられる質量の超過を安全に防止するために、遅延時間τの間にターゲット容器内に分配される質量は公差mよりも小さくすべきであり、すなわち
・×τ ≦ m
とすべきである。
したがって、質量流速は、公差mを遅延時間τで除したもの以下でなくてはならない。
すなわち、
・ ≦ m/τ
でなければならない。
【0024】
望ましい質量流速m・の最大許容値はそれゆえ
・=m/τ
である。
【0025】
以下に説明するように、この最大値は、充填プロセスの最後におけるターゲット容器内の質量が予め画定された公差範囲内にあることを確保する。
遅延時間τは、環境パラメータに依存して充填プロセスの間に変化することがあるので、この遅延時間τの変化は、望ましい質量流速の調整を作成するのに用いることができる。
【0026】
調整モジュールは、望ましい質量流速m・を実際の質量流速m・(t)と比較し、この2つの値の間に差があるならば、調整モジュールは、実際の質量流速m・(t)を望ましい質量流速m・に適合させる。
【0027】
望ましい質量流速m・が充填プロセス全体にわたって維持されることを確保するために、調整モジュールは繰り返し用いられる。調整モジュールを等間隔で繰り返し動作させるのが特に有利である。
【0028】
システムが不安定になるのを防止するために、質量流速m・は、あまり早く変化するべきではない。それゆえ、前回の質量流速
【0029】
【数7】

【0030】
を新しい質量流速
【0031】
【数8】

【0032】
に以下の数式により入れることが有利である。
new・=(1−α)mold・ + α(mold・ − dm・)

係数αは、重み係数であり、ゼロから1までの所望の任意の値を使用することができ、すなわち、
【0033】
【数9】

【0034】
である。これは、質量流速m・をゆっくり変化させるという効果を備える。
目標質量mの超過を防止する1つの可能性は、実際の質量
【0035】
【数10】

【0036】
を計算することであり、これは、現在の質量流速m・(t)、秤により測定される重量信号m(t)、および遅延時間τに基づいて、ターゲット容器内の実際の質量を表し、以下の関係を用いて計算される。
m〜(t)=m(t)+τ×m・(t)
ターゲット容器内の実際の質量を示す計算された量m〜(t)に基づいて、正しい時間におけるバルブの閉鎖が開始され、それゆえ、目標質量mの超過が防止される。
【0037】
望ましい流速m・、それゆえ実際の質量流速m・(t)、が充填プロセスの最後に向かって小さくなるようにすれば、目標質量mの超過の危険はさらに低減される。
本発明による方法による方法および本発明による装置によれば、特に粉末状または液体状物質の充填に用途が見つけられる。自由流動物質は、一般に複雑な流動特性を備え、多くの場合、非ニュートン的な性質である。所望の目標質量は、典型的には0.5mgから5000mgの範囲である。しかし、この方法において、より小さなまたは大きな用量が可能である。
【0038】
有利な実施形態によれば、バルブは、円形断面の出口オリフィスと、閉鎖素子とを備える。出口オリフィスおよび閉鎖素子は同軸に配置される。閉鎖素子は、ハウジングに対する可動性を備え、共通軸を中心に回転し、また、出口オリフィスから出るように駆動され、また、出口オリフィスに引き戻されるように動作することができる。閉鎖素子は、円筒形の閉鎖部および出口通路部を備え、閉鎖素子の長さLに等しい閉鎖素子の並進運動により、バルブが開閉される。閉鎖素子の出口通路部は、直線変位が最小直線変位Lminより大きく、且つ、最大直線変位Lmaxよりも小さい場合に、物質が出口通路部を通って流れることができるように構成される。直線変位が最小直線変位Lminよりも小さい場合、または、最大直線変位Lmaxよりも大きい場合、円筒形閉鎖部により出口オリフィスは閉鎖され、物質は出口通路部を通過することができない。
【0039】
質量流速m・は、閉鎖素子の直線変位Lに正に相関する。
実際の質量流速m・に到達するために、重量信号m(t)の1回微分
【0040】
【数11】

【0041】
を決定することにより重量信号m(t)を使用することができる。
時間差Δt>0を任意に選択することができる。しかし、重量信号の統計的な変動が平滑化され、m・の値が結果として過度に変動しないように、Δtは十分に大きいものを選ぶことに注意されたい。過度な変動は、用量分配プロセスの不安定化を招くことがある。質量流速m・(t)の決定に際して、離散的な均一な時間間隔Δtを用いることが望ましい。バルブが開放されているとき、時間t1から、シーケンス
=t+i×Δt
による均一なステップΔtに従う時間tiにおける質量流速m・(ti)は以下の数式から決定される。
【0042】
【数12】

【0043】
理想的には、nは2から10までの正の整数である。より大きなnの値が用いられるならば、質量流速m・(ti)は、大きな時間間隔にわたって決定され、それにより、一方において、重量信号の統計的な変動を平滑化する。他方において、大きな時間間隔が用いられるならば、m・(ti)の値は、相対的にゆっくり応答し、質量流速の変化が相対的な速さで検出さされる。
【0044】
計算される質量流速m・(t)に基づいて、望ましい質量流速m・からの偏差
dm・=m・ − m・(t)
を決定することができ、質量流速m・(t)をそれに応じて調整することができる。
【0045】
バルブは閉鎖素子を等間隔の大きさΔLの直線ステップにおいて開閉することが望ましい。
理想的には、充填プロセスにおいて、決定は、物質が流れることを可能にする最小直線変位Lminから、および/または、最大直線変位Lmaxからなされる。さらに、充填プロセスの最後におけるものを示す実際の質量を決定することが実際的である。これらのパラメータは、記憶することができ、また、後の充填サイクルでコントローラユニットにより使用することができる。したがって、これらのパラメータは、一度決定すればよく、後の充填サイクルをより迅速に行うことができる。先行する充填サイクルのパラメータ値は、メモリモジュールに記憶することができ、特に、RFID(Radio Frequency Identification)タグに記憶することができ、後の充填サイクルで使用される。関連するリザーバにRFIDタブを固定することが有利であり、これにより、リザーバ内の物質と、RFIDタグに記憶されるデータとの間の直接的な関連付けを確保する。しかし、他のメモリ記憶媒体を用いることもできる。
【0046】
理想的には、第1充填サイクルのときにだけ用いられる手順において、バルブは、物質が流れはじめるまで、閉鎖素子の直線ステップ運動ΔLにおいて開放し、それにより最小直線変位Lminが定義される。最大直線変位Lmaxを決定するために、閉鎖素子は、最初にLmin+ΔLだけ最初に開放しており、その後、物質の流れが停止するまで等しい大きさΔLの直線ステップで運動し続け、それにより、最大直線変位Lmaxを定義する。最小直線変位Lminおよび最大直線変位Lmaxが分かったら、閉鎖素子は、所望のように開閉することができる。
【0047】
有利には、閉鎖素子の出口通路領域は、可変開口断面Aである。したがって、バルブを通る物質の流れの質量流速m・は、バルブの閉鎖素子の位置に正に相関する。理想的には、閉鎖素子の直線変位の長さLは、バルブの開口断面に直接的に相関し、すなわちA=A(L)である。バルブの設計に依存して、閉鎖素子の直線変位L、開口断面積A、および質量流速m・の間には、正比例関係があり、すなわち、
【0048】
【数13】

【0049】
である。
閉鎖素子の幾何学設計に基づいて、流速の直線変位Lへの依存性は、3次関数で表され、実験的に決定される。閉鎖素子の幾何形状の変更は、直線変位Lおよび質量流速の間の関係をも変化させ得る。
【0050】
しかし、この種の正比例は、通常は現実には達成されず、たとえば粒子サイズ、流れ運動の遅延した開始、または類似の要因のような物質の特性が正比例に坑するように作用する。しかし、大きな開口断面に関して大きな質量流速が得られるということが法則として考えられる。
【0051】
可変角速度ωで回転できる閉鎖素子を用いるのが有利であり、角速度ωは、バルブを通る質量流れの速度m・に正に相関する。
さらなる利点として、バルブは、既に開放しているバルブに対する可変タッピング周波数Fのタッピング機能を伝達するインパクト機構を備える。この場合、タッピング周波数Fは、バルブを通る質量流速m・に正に相関し、タッピング周波数Fの増加は、大きな質量流速m・を導く。タッピング衝突は、閉鎖素子の軸方向の横断とともに、平行に向けられる。
【0052】
さらに、タップは、バルブの閉鎖素子および/またはバルブのハウジングに対しても打つことができる。
回転運動およびタッピング動作の両者により利益が得られ、バルブの詰まりおよび/またはパウダーブリッジの形成が打ち消される。このようにして、粉末の自由流動特性が保持されまたは増強される。
【0053】
コントローラユニットは、部分的または全体としてコンピュータベースのシステムとして実現することができる。
以下において、添付図面に概略的に示された例を通じて、ターゲット容器を充填するための方法および装置が説明される。添付図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による、ターゲット容器を充填するための装置の概略図である。
【図2】バルブハウジングおよび閉鎖素子を備えるバルブを示す図である。
【図3】開口断面の理想化された時間プロファイルおよび質量流速の結果として生じる時間プロファイルを示すグラフである。
【図4】開口断面積A、タッピング周波数F、回転運動の速度ωのそれぞれにより、質量流速m・がどのように影響を受けるかを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1はターゲット容器100を示し、ターゲット容器100は、リザーバ200内に充填高さhで保持されている物質が、用量分配装置300により充填される。用量分配装置300は、充填プロセスの開示からの経過時間tを測定するための時間計測装置400に連結されており、測定される時間は、コントローラユニット600に伝達される。ターゲット容器100は秤500の上に配置され、ターゲット容器100内の物質の重量を測定できるようにする。重量信号、すなわち質量mを示す信号は、同様にコントローラユニット600に伝達される。コントローラユニット600の質量流れ計算モジュール610において、時間信号および質量信号は、互いに関連付けられ、用量分配プロセスの開始から測定された任意の時間tにおける質量m(t)を形成する。
【0056】
2つの連続的な地点の時間tおよび時間t−Δtにより決定される2つの質量値m(t−Δt)およびm(t)から、質量流速が以下のように決定される。
【0057】
【数14】

【0058】
このプロセスの目的は、ターゲット容器内で所望の質量が示されるまで、ターゲット容器100を望ましい質量流速m・で充填することである。理想的には、望ましい質量流速m・は、以下の条件に適合する。
・ < m/τ
ここで、mは、望まれるターゲット重量と実際の最終重量との間の乖離の公差値を示し、τは秤の遅延時間を示す。遅延時間τは秤に特有のパラメータであり、分配される物質の物理的特性から独立している。遅延時間τは、最初の充填サイクルの前に決定し、コントローラユニット600内に記憶することができる。
【0059】
遅延時間τは、秤500の技術的な特徴に依存し、また、周囲環境のパラメータに依存する。周囲パラメータは、充填プロセスの過程で変化することがあり、これは遅延時間τの変化の原因となり得る。この遅延時間τの変化は、連続的に決定することができ、望ましい質量流速m・を遅延時間τの変化に応じて適合させることができる。
【0060】
計算される質量流速m・(t)は調整モジュール620を通過し、測定値から決定された質量流速m・(t)は、望ましい質量流速m・と比較される。計算された質量流速m・(t)が、望ましい質量流速m・よりも小さい場合、質量流速m・はdm・だけ増加され、また、計算された質量流速m・(t)が望ましい質量流速m・よりも大きい場合、質量流速m・は、dm・だけ減少される。調整の後、実際の質量流速m・(t)は、望ましい質量流速m・に一致するべきである。調整モジュール620は、バルブ310に質量流速の調整のための信号を送る。実際の質量流速の決定は、充填サイクルの間に繰り返し実行され、必要であれば、質量流速m・(t)が調整される。実際の質量流速の決定および/または質量流速の調整は、等しい時間間隔で行うことができる。
【0061】
図2は、ハウジング311、および円形形状の開口断面を備える出口オリフィス312を備えるバルブ310を示す。閉鎖素子がバルブ310内に配置される。閉鎖素子313は、円筒形閉鎖部314および出口通路部315を備える。出口オリフィス312および閉鎖素子313は、共通の軸上に配置され、閉鎖素子313は、ハウジング311に対して可動性であり、共通軸を中心に回転し(円形の二方向矢印により示される)、共通の軸に沿って直線運動としてスライドする(直線の二方向矢印により示される)。したがって、閉鎖素子313は、出口オリフィス312に出入りするようにスライドすることができる。閉鎖素子313の回転運動350および直線運動340は、連結要素316を通じて閉鎖素子313に連結される駆動源の助けにより生じる。リセット素子318は、好ましくは閉鎖バネである。リセットバネの戻り過程は、停止部317により限界が定められる。
【0062】
閉鎖素子313とバルブハウジング311の間に、分配される物質のリザーバとして機能する中空の空間がある。閉鎖素子313の直線運動340は、分配される物質がリザーバ200から通過し、閉鎖阻止313の出口通路部315により、出口オリフィス312を通ってターゲット容器100に入ることができるように、道を開ける。
【0063】
バルブ310は、データを記憶するためのメモリモジュール320を含む。このメモリモジュール320において、たとえば、分配される物質の材料特性、先の充填プロセスからの流れパラメータ、および/またはたとえば遅延時間τのような秤の特性パラメータ、を記憶することができる。メモリモジュール320は、バルブハウジング311上またはその中に配置される。
【0064】
図3は、望ましい質量流速m・の時間プロファイルを示すグラフ1、さらに、本発明による充填プロセスの質量流速m・(t)の時間プロファイルを示すグラフ2、さらに、グラフ2の質量流速m・(t)から結果として生じる質量m(t)のグラフ3、を示している。
【0065】
ターゲット容器100内の質量がm(t)に到達する時間と図1、2により質量値が秤500により伝達される時間との間の遅延による遅延時間τが存在する。質量が秤500により指示されるとすぐに、質量流速m・(t)を決定することが可能である。充填プロセスの開始において、バルブ310は相対的に早く開放し、これは大きな質量流速m・(t)の結果を生じさせ、最初の遅延時間τの後に質量m(t)の急な上昇を生じさせる。しかし、開口断面Aがあまり大きいと、大きな質量流速m・(t)を導き、ターゲット容器100が急激に充填され、目標質量mの超過の危険が生じる。それゆえ、望ましい質量流速m・を減少させることにより、充填プロセスをゆっくりにすることが望ましく、これは、充填サイクルの終盤に近づくときに開口断面Aを小さくすることにより達成される。
【0066】
実際の質量流速m・(t)の望ましい質量流速m・との比較において、実際の質量流速m・(t)が望ましい質量流速m・よりも大きい場合、バルブ310の開口断面積Aを減少させることにより実際の質量流速m・(t)を減少させる。一方で、比較において、実際の質量流速m・(t)が望ましい質量流速m・よりも小さい場合、バルブ310の開口断面積Aを増加させることにより実際の質量流速m・(t)を増加させる。
【0067】
充填プロセスの最後に向かって、バルブの開口断面積Aを減少させて、質量流速m・(t)を小さくする。こうして、ターゲット容器100内の質量m(t)は、目標質量mにゆっくり近づき、目標質量mの超過を防止する。
【0068】
図4は、理想的な、開口断面積Aの時間プロファイル、タッピング周波数Fのステップ増加、充填プロセス中の角速度ωのステップ増加、を示す。理想的な場合、これらのパラメータの重ね合わせは、図示の質量流速m・のプロファイルを導く。これは、質量流速m・が、開口断面A、タッピング周波数F、角速度ωにより影響を受けることを明確に示している。
【0069】
本発明が、特定の実施形態を示すことにより説明されたが、本発明の知見に基づいて多数のさらなる変形形態を作成することができることが明らかである。たとえば、個別の実施形態の特徴を互いに組み合わせ、および/または、実施形態間で個別の機能を交換するなどすることで更なる多数の変形形態を作成することができる。
【符号の説明】
【0070】
100 ターゲット容器
200 リザーバ
300 用量分配装置
310 バルブ
311 バルブハウジング
312 バルブの出口開口
313 閉鎖素子
314 円筒形閉鎖部
315 閉鎖素子の出口通路部
316 連結要素
317 停止部
318 リセット素子
320 メモリモジュール
340 閉鎖素子の直線運動
350 閉鎖素子の回転運動
400 時間計測装置/機能
500 秤
600 コントローラユニット
610 質量流れ測定モジュール
620 調整モジュール
A 開口断面積
d 粒子サイズ
F タッピング周波数
h リザーバ内の物質の充填高さ
L 閉鎖素子の直線運動の長さ
min 物質が流れる最小直線変位
max 閉鎖素子の最大直線変位
m 質量
m・=dm/dt 質量流速
・ 望ましい質量流速
m〜(t) ターゲット容器内に存在する質量
ターゲット質量の公差
目標質量
t 充填プロセス中の時間の可変ポイント
充填プロセスの開示時間
充填プロセスの終了時間
ω 回転の角速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用量分配装置(300)によりリザーバ(200)から自由流動物質の所定の目標質量mをターゲット容器(100)に充填する方法であって、前記用量分配装置(300)は、前記ターゲット容器(100)に前記物質の測定された用量を充填するように機能し、前記用量分配装置(300)は、前記リザーバ(200)から前記ターゲット容器(100)へ流れる物質の、質量流速m・の可変設定を可能にするバルブ(310)と、充填プロセスの開始からの経過時間tを決定する時間計測装置(400)と、前記ターゲット容器(100)内に存在する物質の質量mを決定するための秤と、前記バルブ(310)を制御するためのコントローラユニット(600)と、を有し、前記コントローラユニット(600)は調整モジュール(620)を含み、望ましい質量流速m・が前記調整モジュール(620)に記憶され、さらに、時間tにおける質量流速m・(t)が、前記望ましい質量流速m・よりも小さい場合に、質量流速調整dm・だけ前記質量流速を増加させ、質量流速m・(t)が前記望ましい質量流速m・よりも大きい場合に、質量流速調整dm・だけ前記質量流速を減少させ、前記質量流速調整dm・は、望ましい質量流速m・と実際の質量流速m・(t)との差により形成され、前記目標質量mは公差m内にあり、
質量が前記秤に到達したときの時間と前記質量が前記秤により示された時間との間である遅延時間τが存在し、前記望ましい質量流速m・は、前記望ましい質量流速m・が、前記遅延時間τに逆比例するように選択され、前記望ましい質量流速m・は、前記公差mに正比例する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記調整モジュール(620)は、等時間間隔で繰り返し使用される、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、新しい質量流速mnew・の決定のために、前回の質量流速mold・を、以下の式
new・=(1−α)mold・ + α(mold・ ± dm・)
にしたがって前記決定に導入し、αはゼロから1までの任意の値とすることができる重み係数である、方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法であって、前記質量流速m・(t)は、前記秤(500)の信号の時間微分から決定される、方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法であって、前記バルブ(310)は、ハウジング(311)と、円形の開口断面積を備える出口オリフィス(312)と、閉鎖素子(313)と、を有し、前記出口オリフィス(312)および前記閉鎖素子(313)は、共通の軸上に配置され、前記閉鎖素子(313)は、前記ハウジングに対して前記共通の軸を中心に回転するように駆動され、且つ、前記共通の軸に沿う直線運動において、前記出口オリフィス(312)の内外へスライドするように駆動され、さらに、前記閉鎖素子(313)は、円筒形の閉鎖部(314)と出口通路部(315)とを有し、前記バルブ(310)は、前記閉鎖素子(313)の直線運動(340)により開閉される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記質量流速m・(t)の大きさは、前記閉鎖素子(313)の直線運動に対して正に相関する、方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の方法であって、前記バルブ(310)は、前記閉鎖素子(313)を等しい大きさΔLの直線ステップで運動させることにより開閉される、方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載の方法であって、充填プロセスの間に、前記物質が流れ始める、前記閉鎖素子(313)の最小直線変位Lmin、および/または、前記物質の流れが停止する、前記閉鎖素子(313)の最大直線変位Lmaxが決定され、これらのパラメータはメモリに記憶されて、後の充填プロセスにおける質量流速m・(t)の制御のために、前記コントローラユニット(600)によ
り使用される、方法。
【請求項9】
用量分配器具(300)によりリザーバ(200)から自由流動物質の所定の目標質量mをターゲット容器(100)に充填するように動作する装置であって、前記用量分配装置(300)は、前記ターゲット容器(100)に前記物質の測定された用量を充填するように機能し、前記用量分配装置(300)は、前記リザーバ(200)から前記ターゲット容器(100)へ流れる物質の、質量流速m・の可変設定を可能にするバルブ(310)と、充填プロセスの開始からの経過時間tを決定する時間計測装置(400)と、前記ターゲット容器(100)内に存在する物質の質量mを決定するための秤と、前記バルブ(310)を制御するためのコントローラユニット(600)と、を有し、前記コントローラユニット(600)は調整モジュール(620)を含み、望ましい質量流速m・が前記調整モジュール(620)に記憶され、さらに、時間tにおける質量流速m・(t)が、前記望ましい質量流速m・よりも小さい場合に、質量流速調整dm・だけ前記質量流速を増加させ、質量流速m・(t)が前記望ましい質量流速m・よりも大きい場合に、質量流速調整dm・だけ前記質量流速を減少させ、dm・は、望ましい質量流速m・と実際の質量流速m・(t)との差により形成され、前記目標質量mは公差m内にあり、
質量が前記秤に到達したときの時間と前記質量が前記秤により示された時間との間である遅延時間τが存在し、前記望ましい質量流速m・は、前記望ましい質量流速m・が、前記遅延時間τに逆比例するように選択され、前記望ましい質量流速m・は、前記公差mに正比例する、装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置であって、前記バルブ(310)は、ハウジング(311)と、円形の開口断面積を備える出口オリフィス(312)と、閉鎖素子(313)と、を有し、前記出口オリフィス(312)および前記閉鎖素子(313)は、共通の軸上に配置され、前記閉鎖素子(313)は、前記ハウジングに対して前記共通の軸を中心に回転する可動性を備え、且つ、前記共通の軸に沿う直線運動において前記出口オリフィス(312)の内外にスライドする可動性を備え、前記閉鎖素子(313)は、円筒形の閉鎖部(314)と出口通路部(315)とを有し、前記バルブ(310)は、前記閉鎖素子(313)の直線運動により開閉可能である、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、前記閉鎖素子(313)の前記出口通路部は、可変開口断面積Aを備え、前記閉鎖素子(313)の直線変位は、前記バルブ(310)の前記開口断面積Aに対して正に相関する、装置。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか一項に記載の装置であって、前記閉鎖素子(313)は、可変角速度ωで回転可能であり、前記角速度ωは、前記バルブ(310)を通る物質の流れの質量流速m・に対して正に相関する、装置。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか一項に記載の装置であって、前記バルブ(310)は衝突機構を有し、可変タッピング周波数Fのタップが、すでに開放しているバルブに対して向けられ、前記タッピング周波数Fは、前記バルブ(310)を通る物質の流れの質量流速m・に対して正に相関する、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−500984(P2012−500984A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524315(P2011−524315)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060524
【国際公開番号】WO2010/023111
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
【Fターム(参考)】