説明

タービンステージのシュラウドセグメント

【課題】シュラウドセグメントを冷却すると共に作動気体の漏洩流の量を減らすガスタービンエンジンのタービン部用のシュラウドセグメントを提供する。
【解決手段】シュラウドセグメントが、前記タービン部の作動気体環状部に対して端壁を形成している。更に、前記セグメントは、当該セグメントを吹通るように、タービンブレードの列の先端に対して近接した隙間を提供している。使用中に、作動気体の漏洩流が、ブレード先端と当該セグメントとの間の前記隙間を通過する。前記セグメントは、複数の冷却孔と、当該冷却孔に対する各々の空気供給路と、を有している。前記冷却孔は、前記ブレード先端にスイープされるように、前記セグメントの気体打寄面の部分に渡って分配されている。前記冷却孔は、使用中に、気体打寄面に広がる冷却空気を伝送する。前記供給路は、前記伝送空気が前記作動気体の漏洩流に逆らうように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンのタービン部用のシュラウドセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、全体として符号10で示されているダクトファンガスタービンエンジンが、主要回転軸X−Xを有する。当該エンジンは、軸方向流れ順に、エアインテーク11と、推進ファン12と、中圧コンプレッサ13と、高圧コンプレッサ14と、燃焼装置15と、高圧タービン16と、中圧タービン17と、低圧タービン18と、コアエンジン排気ノズル19と、を備える。ナセル(nacelle)21が、エンジン10を全体に覆い、インテーク11と、バイパスダクトと、バイパス排気ノズル23と、を形成している。
【0003】
ガスタービンエンジン10は、インテーク11に入る空気が2つの空気流を生成するべく、ファン12によって加速される、というような従来の態様で作用する。第一空気流Aは、中圧コンプレッサ13に入っていき、第二空気流Bは、推進力を提供するべく、バイパスダクト22を通過する。中圧コンプレッサ13は、更なる圧縮が行われる高圧コンプレッサ14に空気流Aを伝送する前に、自身の内部に誘導された空気流Aを圧縮する。
【0004】
高圧コンプレッサ14から排気された圧縮空気が、燃焼装置15内に誘導される。燃焼装置15内で、当該圧縮空気が燃料と混合されて、当該混合物が燃焼される。次に、結果として生じる高熱の燃焼生成物は、付加的な推進力を提供するべく、ノズル19を通って排気される前に、高圧タービン16、中圧タービン17及び低圧タービン18を通って膨張し、これらを駆動させる。高圧タービン、中圧タービン及び低圧タービンは、適切な相互連結シャフトを介して、高圧コンプレッサ14、中圧コンプレッサ13及び推進ファン12をそれぞれ駆動させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスタービンエンジンの性能は、効率または比出力のどちらの観点から評価されても、タービンの気体温度を増加することによって改善される。従って、タービンを可能な限り最も高い温度で稼働することが所望されている。どんなエンジンサイクル圧縮比またはバイパス比にとっても、タービン進入気体温度を増加することは、更なる比推力(例えば単位空気質量流量あたりのエンジン推力)を生成する。しかしながら、タービン進入気体温度が増加するにつれて、非冷却タービンの寿命が下がり、より良い材料の開発と内部空気冷却の導入とを必要とする。
【0006】
近年のエンジンでは、高圧タービン気体温度は、ブレードやベーンの材料の融点より高いので、これらのエーロフォイル要素(airfoil)の内部空気冷却が必要となる。気流がエンジンを通過する間、動力が抜き取られるため、気流の平均温度は減少する。従って、気体が高圧部から中圧部及び低圧部を通って排気ノズルに向かって動く際には、エンジン構造の静的部及び回転部を冷却する要求は下がっている。
【0007】
図2は、典型的な単一ステージ冷却タービンの斜視図を示している。冷却空気流は、矢印によって示されている。
【0008】
内部対流や外部被膜は、気体経路要素−エーロフォイル、プラットフォーム、シュラウド及びシュラウドセグメント等−を冷却する主要な方法である。高圧タービンノズルガイドベーン31(NGVs)は、高温エンジンで最も多量の冷却空気を消費する。高圧ブレード32は、典型的にはNGV流れの約半分を利用する。HPタービン下流の中圧部及び低圧部は、進行的に減少する冷却空気を利用する。
【0009】
高圧タービンエーロフォイルは、コンプレッサからの高圧空気を利用することによって冷却される。前記高圧空気は、燃焼装置をバイパスに通して(迂回させて)、それ故に気体温度と比較して相対的に冷たくなっている。典型的な冷却空気温度は、800乃至1000Kであり、一方で、気体温度は、2100Kを越え得る。
【0010】
高熱のタービン要素を冷却するために利用されるコンプレッサからの冷却空気は、タービンから仕事を充分に取出すことに利用されるわけではない。従って、冷却流れを取出すことは、エンジンの稼働率に有効な効果をもたらすので、冷却空気を効率よく利用することが重要である。
【0011】
燃焼装置排気を削減するために、平坦な燃焼径方向特性に向けての流れと組合わされる気体温度レベルの増大は、NGVプラットフォーム33、ブレードプラットフォーム34及びシュラウドセグメント35(シュラウドライナーとしても知られている)を含む作動気体環状端壁によって体験される局所的な気体温度の増大をもたらす。しかしながら、前記端壁を冷却するために利用される空気の流れは、タービン効率にとってかなり有害であり得る。これは、冷却流れが主要作動気体流路に戻る際に、前記冷却流れに起因する高い混合損失によるためである。
【0012】
1つの選択は、プラットフォームまたはシュラウドセグメント要素の気体打寄壁の背面に対する冷却空気の衝突流れによって、当該プラットフォームまたはシュラウドセグメントを冷却することである。例えば、気体打寄壁から離間配置されて、基台に支持された孔を空けられたプレートが、衝突噴流を形成し得り、更に、使い尽くされた冷却流れは、前記要素の後縁で作動気体経路内に環流し得る。好ましくないことに、衝突噴流の制限された数は、非均一の熱交換分布を生成し得る。更に、使い尽くされた冷却流れと横断する流れは、前記要素の更に下流の位置で衝突噴流の効果を減少させ得る。また、作動気体経路内のレベルを越える冷却流れ圧力を維持する要求は、衝突噴流を横断する許容可能な圧力降下及びそれによる関連する熱交換レベルを削減する。
【0013】
このように、シュラウドセグメントでは、セグメントの気体打寄面に断熱障壁を提供する摩耗性被膜の利用に対する要請がある。対応するブレード先端に、当該摩耗性被膜内に入る「跡」の切除を容易にするべく、摩耗性被膜が付加され得る。前記摩耗性被膜は、セグメント内に入る熱流束を減少させる効果を立証する。しかしながら、それらの低い熱伝導性は、前記摩耗性被膜の厚さを横切って高い温度勾配を導入する。従って、気体打寄面はかなり高熱となり、保護されない場合には、前記摩耗性被膜の材料の焼結温度限界を超える温度に増加し得る。同様に、典型的には摩耗性被膜を前記セグメントに取付ける接着層は、前記摩耗性被膜と接着層混合物との間の境界が、前記摩耗性被膜を酸化させる、あるいは、前記摩耗性被膜を早期にぼろぼろにすることを防ぐべく、所定温度以下に維持される必要もある。
【0014】
前記摩耗性被膜の気体打寄面の温度を下げるべく、冷却空気の被膜層が、高熱の作動気体と前記摩耗性被膜との間に設けられ得る。これは、前記セグメントの表面に流出冷却を導くことによって達成され得る。図3は、摩耗性被膜と流出冷却とを有する典型的なシュラウドセグメントの斜視図である。前記セグメントは、鋳造合金本体40と、タービン支持ケーシングに取付けるための取付脚41と、上流縁42と、下流縁43と、羽根状または細長状密封漏洩制御溝44と、摩耗性表面被膜45と、摩耗性表面被膜の気体打寄面に冷却空気流を送る複数の流出冷却孔46と、を備える。前記冷却空気流は、気体打寄面に保護被膜を形成する。しかしながら、前記保護被膜は、前記気体打寄面と近接する高熱気体と混合する。高熱気体は、前記気体打寄面を流れるにつれて、発展的に熱くなっていく。前記保護被膜のこの劣化は、典型的には前記冷却孔からの距離とともに劣化する「被膜効力」として一般に表現される。
【0015】
被膜効力の高いレベルを達成しようとするために、前記壁と接触する気体の運動量と適合するべく、前記気体打寄面上に低い運動量を有する冷却空気を導入することが慣用されている。前記保護被膜の吹出率がかなり高い場合には、前記保護被膜は前記気体打寄面を吹払い、前記高熱気体と冷却流れとの間の混合は促進される。前記冷却孔は、流れが前記冷却孔を抜ける際に当該流れを拡散させるべく、扇状の開口として形成され得る。前記冷却孔の供給路の角度もまた、重要なパラメータである。一般的には、気体打寄面に対して前記供給路の直線がより狭い角度(例えば、エンジン軸に対して狭い半径方向角度)が、前記保護被膜が前記気体打寄面から分離していくようになることを妨げることに貢献する。
【0016】
シュラウドセグメントの気体打寄面は、タービンブレードの先端に近接した隙間を有しているが、それにもかかわらず、作動気体の漏洩流は、前記ブレード先端と前記セグメントとの間の間隙を通過する。前記漏洩流は、エンジン効率に対して好ましくなく、更に、冷却被膜に有害な影響のある圧力勾配を提供する。本発明は、シュラウドセグメント冷却空気はそのような漏洩流の量を減らすのに利用され得る、という認識に少なくとも部分的に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明の第一の特徴は、ガスタービンエンジンのタービン部用のシュラウドセグメントであって、 前記セグメントは、前記タービン部の作動気体環状部に対して端壁を形成し、前記セグメントは、当該セグメントを吹通るように、タービンブレードの列の先端に対して近接した隙間を提供すると共に、使用中にブレード先端と当該セグメントとの間の前記隙間を通過する作動気体の漏洩流を提供し、
前記セグメントは、複数の冷却孔と、当該冷却孔に対する各々の空気供給路と、を有し、前記冷却孔は、前記ブレード先端にスイープされるように、前記セグメントの気体打寄面の部分に渡って分配されており、前記冷却孔は、使用中に、気体打寄面に広がる冷却空気を伝送し、前記供給路は、前記伝送空気が前記作動気体の漏洩流に逆らう、というように構成されており、
前記ブレード先端の後縁にスイープされる前記冷却孔からの伝送空気の渦巻方向が、前記ブレード先端の前縁にスイープされる前記冷却孔からの伝送空気の渦巻方向に対して、エンジンの軸方向に向けて回転される、というように前記供給路が構成されていることを特徴とするシュラウドセグメントである。
【0018】
前記漏洩流に対する抵抗は、前記セグメントの被膜冷却効果に有害な影響を有し得るが、この不利益は、削減された漏洩流と関連する効率の向上によって、それを上回って埋合わされる。実際、漏洩流はそれ自体、被膜崩壊の原因となり得るが、削減された被膜効率は、いずれにしても許容し得る。更に、前記冷却空気が前記冷却孔から排出する前に、前記冷却空気に対する熱伝達を増加することによって、被膜効率におけるどんな損失も補うことができる。
【0019】
前記ブレード先端の後縁にスイープされる前記冷却孔からの伝送空気の渦巻方向が、前記ブレード先端の前縁にスイープされる前記冷却孔からの伝送空気の渦巻方向に対して、エンジンの軸方向に向けて回転される、というように前記供給路が構成されているおかげで、伝送空気渦巻方向を局所的漏洩流方向により良く調和させることができる。これは、典型的には、ブレード先端の後縁での漏洩流の局所的方向が、ブレード先端の前縁での漏洩流の局所的方向に対して、エンジンの軸方向に向かって回転させられるためである。
【0020】
前記シュラウドセグメントは、任意の一つ、あるいは、両立できる範囲で以下の選択的な特徴の任意の組合せを有し得る。
【0021】
各供給路の直線は、渦巻角度及び半径方向角度によって、エンジン軸に対して決定される。前記供給路の直線の渦巻角度は、対応冷却孔から伝送された冷却空気の渦巻角度、及び、これ故に当該伝送空気の渦巻方向を決定する(例えば、互いに等しい)。伝送空気が作動気体の漏洩流に逆らうように供給路を構成することは、所望の伝送空気渦巻方向を提供するべく、前記冷却孔の与えられた位置に対して、前記供給路の直線の渦巻角度を合わせることを典型的には伴う。
【0022】
好ましくは、各供給路は、前記伝送空気が各冷却孔における漏洩流の局所的な方向に少なくとも30°以内で逆らう渦巻方向を有するように、構成されている。
【0023】
前記ブレード先端の前縁にスイープされる前記冷却孔から、前記ブレード先端の後縁にスイープされる前記冷却孔に向かう前記エンジンの軸方向における動きが、10°乃至70°の範囲の角度で、好ましくは25°乃至55°、例えば30°の範囲の角度で、回転する際に、前記供給路は、各冷却孔からの伝送空気の渦巻方向がぶつかり合うように構成されている。
【0024】
ブレード先端によってスイープされる前記気体打寄面の一部が、少なくとも4つの、好ましくは少なくとも6つのまたは8つの、軸方向に間隔を空けて、周方向に延在している冷却孔の列を有し、各列は、各々の伝送空気の渦巻角度を有している(即ち、所定の列の全ての冷却孔の伝送空気回転方向が、エンジン軸に対する回転のもとで回転対称である)。より多くの冷却孔の列を有すれば、各冷却孔からの伝送空気が各冷却孔からのより小さい軸方向距離に拡がる漏洩流に逆らうように集中させ得る。換言すれば、一般的には、漏洩流の方向及び強さにおける変化が、狭く小さい軸方向距離になるにつれて、各冷却孔は、局所的漏洩流状態により良く「調和」される。このように、冷却孔の列の増加する数は、漏洩流全体により効果的に逆らうことをもたらす。各列の冷却孔及び各空気供給路は、当該列に沿って周方向に動く際にぶつかり合う伝送空気流量比における変動をもたらすように構成され得る。
【0025】
選択的に、少なくとも幾つかの隣接する周方向に延びる列の冷却孔は、周方向にずれてもよい。これは、例えば前記冷却が互いに重なり合うことがないように保証することによって、冷却孔の所望の角度及び間隔を許容することに貢献し得る。そのような構成は、前記シュラウドの外周全体に渡る改善された先端密封をもたらすことにも貢献し得る。
【0026】
典型的には、冷却孔からの伝送空気は、セグメントの被膜冷却が無い時に存在するであろう作動気体の漏洩流に対して、少なくとも20%だけ、好ましくは少なくとも30%または50%だけ、作動気体の漏洩流を減らし得る。
【0027】
本発明の更なる特徴は、第一の特徴によるシュラウドセグメントを有するタービン部を備えたガスタービンエンジンを提供する。
【0028】
本発明の特徴によると、ガスタービンエンジンのタービン部用のシュラウドセグメントを生産する方法であって、前記セグメントは、前記タービン部の作動気体環状部に対して端壁を形成し、前記セグメントは、当該セグメントを吹通るように、タービンブレードの列の先端に対して近接した隙間を提供すると共に、使用中に前記ブレード先端と当該セグメントとの間の前記隙間を通過する作動気体の漏洩流を提供する方法が提供される。当該方法は、前記供給路が、前記伝送空気が作動気体の漏洩流に逆らう、というように構成されており、前記ブレード先端の後縁にスイープされる前記冷却孔からの伝送空気の渦巻方向が、前記ブレード先端の前縁にスイープされる前記冷却孔からの伝送空気の渦巻方向に対して、エンジンの軸方向に向けて回転される、というように前記供給路が構成されていて、前記漏洩流を予測するべく、コンピュータによる流体動力学的な演算を実施する工程と、本明細書に明示されたシュラウドセグメントを生産する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ダクトファンガスタービンエンジンを通る概略長手方向横断面を示す。
【図2】典型的な単一ステージ冷却タービンの斜視図を示す。
【図3】摩耗性被膜と流出冷却とを有する典型的なシュラウドセグメントの斜視図を示す。
【図4】絶対座標系において従来のシュラウドセグメントの気体打寄面、及び、ブレードを通過する間の主気流に対して決定される空力的な筋線(aerodynamic streaklines)を示す。
【図5】ノズルガイドベーンの列及びそれに続くロータブレードの列の概略図を示す。
【図6】ブレードに対するCFD解析による回転座標系における先端を越える漏洩流気流を示す。
【図7】相対座標系において典型的な気体漏洩流角度を示す回転ブレードの概略を示す。
【図8】速度線を示す。
【図9】供給路が設けられた冷却孔を有するシュラウドセグメントの気体打寄面を概略的に示す。供給路の渦巻角度が、局所的な先端を越える漏れ流量の渦巻方向に合わせられている。
【図10】供給路が設けられた冷却孔を有するシュラウドセグメントの気体打寄面を概略的に示す。供給路の渦巻角度が、局所的な先端を越える漏れ流量の渦巻方向に合わせられている。
【図11】互い違いに配置された冷却孔列を有する点を除いて、図10に示すシュラウドセグメントに類似するシュラウドセグメントの気体打寄面を概略的に示す。
【図12】冷却孔列が一列に並んだ配置から互い違いの配置に発展的に変化する点を除いて、図10及び図11に示すシュラウドセグメントに類似するシュラウドセグメントの気体打寄面を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明による実施の形態が、添付の図面を参照して例として記述される。
【0031】
図4は、絶対座標系(即ち、非回転座標系)において従来のシュラウドセグメントの気体打寄面、及び、ブレードを通過する間の主気流に対して決定する空力的な筋線50(aerodynamic streaklines)を示す。筋線は、気体打寄面内に形成された冷却孔51から生じる。ブロック矢印Va1、Va2は、ブレード間通路の入口及び出口それぞれにおいてブレード間通路内の主気流(流れの半径方向要素を無視している)の方向を示している。冷却孔は、通路(破線で図示される)を有している。当該通路は、空気を冷却孔に供給し、エンジンの軸方向に対して渦を巻かないか(通路52)、エンジンの軸方向に対してある渦巻角度(通路53)になっている。伝送空気は、気体打寄面に渡って冷却被膜を形成している。
【0032】
好ましくないことに、シュラウドセグメントの気体打寄面に被膜を導入する場合、被膜の効果は、上流NGVエーロフォイル及び端壁形状によって実質的に生じる二次流れの強さに依存する。もう一つの重要な要素は、新たに形成された被膜を拭取って、前記冷却孔からの距離とともに進行的に縮小する従来の被膜跡の設置を妨げる、回転ブレード先端の存在である。このように、(例えば、供給路内の冷却空気によって取出される対流熱により強く頼ることによって、)気体温度がより低く有効な被膜保護範囲で適応可能ならば、被膜性能と引換えに削減されたブレード先端を越える漏洩を手に入れ得る。これは、同様に、削減された先端を越える損失及び削減されたブレード先端冷却要求に起因するステージ効率改善に繋がる。
【0033】
従って、本発明は、ブレード先端に渡って移動する漏洩流の量を減らすべく、シュラウドセグメント被膜冷却構造に変化を提供する。これは、作動気体がブレードの圧力表面から吸入表面に向かってブレード先端に渡って漏れようとする際に、作動気体の進行に逆らう「流体境界層」として、結果としてもたらされた被膜が作用するというような態様で、被膜冷却孔への供給路を構成することによって成し遂げられ得る。
【0034】
冷却空気流の軌跡が、先端を越える漏洩損失の観点から最適化されるというような態様で、冷却孔を配置して、供給路を設けるためには、静止座標系及び回転座標系両方におけるブレード先端での二次流れの流線を知ることが有効である。更に、冷却孔は、局所的に移動する先端を越える漏洩流の方向に直接的に逆らう周方向に延在する各列からの伝送空気の渦巻方向を伴って、当該周方向に延在する列に配置され得る。
【0035】
図5は、ノズルガイドベーン70の列及びそれに続くロータブレード71の列の概略図を示す。矢印は、(i)回転ブレードの回転方向U、(ii)絶対座標系(即ち、非回転座標系)において、回転ブレード列の入口及び出口それぞれでの主気流の方向Va1、Va2(iii)回転座標系において主気流の対応する方向Vr1、Vr2、を示す。回転座標系において先端を越える漏洩流の方向Vroが、破線によって概略的に図示される。比較のために、図6は、ブレードに対するCFD解析による回転座標系における先端を越える漏洩流気流を示す。
【0036】
図7は、典型的なブレードに対して先端を越える漏洩流角度を示す。図7に示される先端を越える漏洩流角度は、単なる典型的な流れ角度の代表である、と認められるであろう。図7に示される例では、多様な先端を越える漏洩角度(φ)が、ブレードの運動の方向に対して(即ち、シュラウドの局所的な周方向に対して)示されている。図7に示されるように、相対的流れ方向(Vro)は、ブレードの前縁から後縁に移動するにつれて、より軸方向になる。即ち、先端を越える漏洩角度(φ)は、前縁から後縁に向けて増加する。
【0037】
図7の例においては、先端を越える漏洩角度(φ)は、前縁での20度から後縁での70度に増加する。他の先端を越える漏洩流角度も、例えば、ブレード設計、他のエンジン要素の設計、先端クリアランス、及び、流れ状態に依存して認められ得るということが認識されるであろう。例えば、先端を越える漏洩角度(φ)は、前縁で20度より小さい場合もあり、後縁で70度より大きい場合もある。
【0038】
図7の例においては、先端を越える漏洩角度(φ)が前縁から後縁に増加する割合も、前縁からの距離が大きくなるにつれて増加する。そのように、ブレード先端の翼弦まわりの所定距離に対して、先端を越える漏洩角度(φ)における増加は、ブレードの前縁に向かうよりも、ブレードの後縁に向かう方が大きくなる。
【0039】
図8に示すように、各Vroに対して速度線が構築され得る。Vaoは、絶対座標系において結果として生じる先端を越える漏洩流ベクトルを示している。大きさが等しく、反対方向のベクトルVaoが、静止座標系において先端を越える漏洩流を妨げるのに必要とされるであろう局所的冷却流れの大きさと方向とを示している。Vroの方向及び大きさが、前記セグメントの前から後ろに変化するにつれて、Vaoの速度線の形状並びに当該大きさ及び方向が、セグメントの前から後ろに変化する。一般に、Vaoは、ブレードの前縁よりもブレードの後縁での方がエンジンの軸方向に近接している。
【0040】
図9は、シュラウドセグメントの気体打寄面80を概略的に示す。冷却孔81の9つの周方向に延びる列が、通過するブレード先端を吹通る前記気体打寄面の部分に渡って分配されている。各供給路は、冷却空気を冷却孔に供給している。冷却孔から送り出された冷却空気が、局所的に移動する先端を越える漏洩流の方向に逆らうように、各供給路は構成されている。種々の列の冷却孔の渦巻方向(ブロック矢印で図示されている)が、局所的なVaoに沿って方向付けられている。
【0041】
このように、Vaoが対応して軸方向に変化すると、伝送空気の渦巻角度は、列から列にかけて変化する。必要ならば、例えば製造を簡素化するために、漏洩流に逆らう少なくともいくつかの列の能力を下げる傾向にはなるが、隣接する冷却孔の列が同じ伝送空気の渦巻角度を共有できる。即ち、なぜならば、少なくともいくつかの列は、あまり良く局所的なVaoと整列されていない伝送空気の渦巻方向を提供することになるためである。
【0042】
伝送冷却流れの軌跡が、整列されておらず、ブレード先端を越える漏洩流に対して反対方向にある場合、伝送冷却流れの速度要素だけが、前記移動流れに逆らうであろう。このように、如何なるそのような不整列が、好ましくは約30度未満、より好ましくは20度未満、より好ましくは10度未満、より好ましくは5度乃至0度の間にある。
【0043】
図10は、図9に示すシュラウドセグメントに類似するシュラウドセグメントの気体打寄面80を概略的に示す。図10において、冷却孔81が先端を越える漏洩流に逆らうように、軸方向に向けて角度を向けられるにつれて、冷却孔81は、徐々に卵形になる。図10に示される角度Ωは、冷却孔81を通るように送られた空気の、ブレードの運動方向に対する(即ち、シュラウドの局所的周方向に対する)角度(即ち、Vao*の方向)を示している。
【0044】
図10に示される例では、伝送空気の角度は、下流方向で(即ち、ブレードの後縁にスイープされる領域に向けて)より軸方向になる。このように、角度Ωは、当該方向に増加する。典型的には、角度Ωは、シュラウドの上流端(即ち、ブレードの前縁によって打寄せられた領域の近傍にあるシュラウドの上流端)で、0度から30度の範囲、例えば2度から15度の範囲、例えば5度である。典型的には、角度Ωは、シュラウドの下流端(即ち、ブレードの後縁によって打寄せられた領域の近傍にあるシュラウドの下流端)で、15度から60度の範囲、例えば25度から45度の範囲、例えば35度である。しかしながら、他の実施の形態においては、伝送空気角度は、これらの範囲外にある場合もある。
【0045】
上述したように、記載された実施の形態においては、角度Ωは、下流方向に増加する。いくつかの実施の形態においては、角度Ωが増加する割合も、下流方向に増加する。
【0046】
図9及び図10に示される実施の形態においては、冷却孔81は、周方向列内に配置されている。しかしながら、別の実施の形態においては、冷却孔は、互い違いに配置されている。これは、周方向に隣接する冷却孔は、軸方向にオフセットされ得ることを意図する。そのような構成の例が、図11に示されている。そのような構成は、シュラウドの外周周りにより良い密封流れを提供し得る。そのような構成は、例えば隣接する冷却孔が相互作用を及ぼさないこと(即ち、互いを合体させないこと)を保証することによって、冷却孔が所望の角度及び間隔を有することを可能にさせる。
【0047】
別の実施の形態が図12に示されている。本実施の形態においては、上流端部にある冷却孔が、実質的に一列に並んでいる、即ち、冷却孔は、周方向列を形成している。冷却孔は、下流方向に徐々に互い違いになっていく。
【0048】
如何なる冷却孔の適切な配置も利用され得るということが認識されるであろう。更に、図10、11及び12に関してここに議論された孔81の特徴は、図9に示した実施の形態のような、全ての実施の形態に適用できる。
【0049】
冷却孔及び供給路は、所定の大きさで作られ得り、及び/または、より高い伝送空気流量割合が、より高い漏洩流量割合を有する軸方向位置で作られる、というように冷却孔の密度が変化する。このような態様で、伝送空気の局所的な運動量は、変化され得る。更に、流れの速度及び速度に由来する運動量は、供給圧力(フィード圧)の増加によって修正され得る。増加する冷却流れ割合がタービン効率に有害となり得るので、必要とされる伝送空気流量割合だけを増加することが有利である。
【0050】
周方向に変動するまたは「パルス発生する」流れの状況が、周方向に沿って冷却孔及び供給路の大きさ、並びに/または、孔の密度を変化させることによって、作られ得る。例えば、これは、周方向列に沿って交互に並ぶ孔における孔の直径を変化させること、あるいは、周方向列に沿って交互に並ぶ2、3または4個の冷却孔を有する交互に並ぶブロックにおける孔の直径を変化させることによって、成し遂げられ得る。ブレード先端は、前記振動流れに露出される。前記振動流れは、作動気体の先端を越える漏洩に対する抵抗を高めることができる。
【0051】
被膜冷却効果は、通過するブレード先端の間で、局所的Vao*の方向に沿って伝送空気の渦巻方向を整列させることによって幾分妥協されるが、上流NGVs及び端壁の幾何特性から第二流れによって徐々に生成された逆の圧力が、とにかく冷却被膜に有害な影響を与え得る。前記逆の圧力によって、冷却被膜が気体打寄面から分離されるようになる。このように、シュラウドセグメントの耐熱団結性を妥協することなしでブレード先端に渡って漏洩する高熱気体の量を減らすべく、使い尽くされた冷却空気を利用することが可能であることが理解される。先端を越える漏洩流を削減することは、ブレード先端に渡って移動する流体の混合された温度を局所的に削減する。これは、熱的にも空気力学的にも有利な効果を有する。更に、ブレード先端は、自身の完全性を維持するために、より少ない冷却を要求する。必要ならば、シュラウドセグメント冷却は、例えば供給路の長さを増加すること、及び/または、気体打寄面により浅い角度で供給路を案内すること(即ち、供給路の直線の半径方向要素を減少すること)によって、冷却空気に対する対流熱伝達を改善することによって、高められる。
【0052】
要するに、高圧タービンシュラウドセグメントは、受容可能な構成金属及び被膜温度を維持するべく、慣用の高いレベル(典型的には、対流)及び被膜冷却にますます依存している。しかしながら、特に通過する回転ブレード先端と結合した上流NGVエーロフォイル付近に設けられた強い第二の流れ領域が、被膜冷却効果に有害な効果を有している。回転ブレード先端を越える漏洩及び関連する混合損失を低減するべく(特に、混合損失が最も有害になりやすい終期吸引表面の近傍において)、不十分な被膜冷却効果を既に犠牲にしていることは、改善されたステージ効率及び最終的に明示的な燃料消費量のような、機能上の利益を提供できる。
【0053】
本発明は、上述した例示的な実施の形態と関連して述べられたが、多数の等価値の改良形態及び変形形態が、本開示を与えられた当業者にとって容易に認められる。従って、上記4つの本発明の例示的な実施の形態は、例証とみなされて、それに限定するものとみなされない。上述した実施の形態に対する多様な変形が、本発明の範囲から逸脱することなしでなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンのタービン部用のシュラウドセグメントであって、
前記セグメントは、前記タービン部の作動気体環状部に対して端壁を形成し、
前記セグメントは、当該セグメントを吹通るように、タービンブレードの列の先端に対して近接した隙間を提供すると共に、使用中にブレード先端と当該セグメントとの間の前記隙間を通過する作動気体の漏洩流を提供し、
前記セグメントは、複数の冷却孔(81)と、当該冷却孔に対する各々の空気供給路と、を有し、
前記冷却孔は、前記ブレード先端にスイープされるように、前記セグメントの気体打寄面(80)の部分に渡って分配されており、
前記冷却孔は、使用中に、気体打寄面に広がる冷却空気を伝送し、
前記供給路は、前記伝送空気が前記作動気体の漏洩流に逆らう、というように構成されており、
前記ブレード先端の後縁にスイープされる前記冷却孔からの伝送空気の渦巻方向が、前記ブレード先端の前縁にスイープされる前記冷却孔からの伝送空気の渦巻方向に対して、エンジンの軸方向に向けて回転される、というように前記供給路が構成されている
ことを特徴とするシュラウドセグメント。
【請求項2】
各供給路は、前記伝送空気が前記冷却孔における漏洩流の局所的な方向に少なくとも30°以内で逆らう渦巻方向を有するように、構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシュラウドセグメント。
【請求項3】
前記ブレード先端の前縁にスイープされる前記冷却孔から、前記ブレード先端の後縁にスイープされる前記冷却孔に向かう前記エンジンの軸方向における動きが、10°乃至70°の範囲の角度で回転する際に、前記供給路は、各冷却孔からの伝送空気の渦巻方向がぶつかり合うように構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のシュラウドセグメント。
【請求項4】
ブレード先端によってスイープされる前記気体打寄面の一部が、少なくとも4つの、軸方向に間隔を空けて、周方向に延在している冷却孔の列を有し、
各列は、各々の伝送空気の渦巻角度を有している
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシュラウドセグメント。
【請求項5】
少なくとも幾つかの隣接する周方向に延びる列の冷却孔は、周方向にずれている
ことを特徴とする請求項4に記載のシュラウドセグメント。
【請求項6】
冷却孔からの伝送空気は、セグメントの被膜冷却が無い時に存在するであろう作動気体の漏洩流に対して、少なくとも20%だけ作動気体の漏洩流を減らす
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のシュラウドセグメント。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のシュラウドセグメントを有するタービン部を備えた
ことを特徴とするガスタービンエンジン。
【請求項8】
ガスタービンエンジンのタービン部用のシュラウドセグメントを生産する方法であって、
前記セグメントは、前記タービン部の作動気体環状部に対して端壁を形成し、
前記セグメントは、当該セグメントを吹通るように、タービンブレードの列の先端に対して近接した隙間を提供すると共に、使用中に前記ブレード先端と当該セグメントとの間の前記隙間を通過する作動気体の漏洩流を提供し、
前記供給路は、前記伝送空気が作動気体の漏洩流に逆らう、というように構成されており、
前記ブレード先端の後縁にスイープされる前記冷却孔からの伝送空気の渦巻方向が、前記ブレード先端の前縁にスイープされる前記冷却孔からの伝送空気の渦巻方向に対して、エンジンの軸方向に向けて回転される、というように前記供給路が構成されている、
というシュラウドセグメントを生産する方法であって、
前記漏洩流を予測するべく、コンピュータによる流体動力学的な演算を実施する工程と、
請求項1乃至6のいずれかに記載のシュラウドセグメントを生産する工程と、
を備えたことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−47171(P2012−47171A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−168612(P2011−168612)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(590005438)ロールス‐ロイス、パブリック、リミテッド、カンパニー (21)
【氏名又は名称原語表記】ROLLS−ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】