説明

タービンホイール、およびタービンホイールを製造するための方法

本発明は、タービンホイールブランク(2)からなるタービンホイール(1)であって、タービンホイール後部(3)を有し、かつアンダーカット(4)が設けられた遷移領域(5)を介してタービンホイール後部(3)に配置される溶接杭(Z)を有し、アンダーカット(4)がタービンホイールブランク(2)に既に設けられているタービンホイール(1)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載のタービンホイールに関し、および請求項3の前段に記載の、タービンホイールを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャのいわゆるロータは、タービンホイールと、タービンホイールの後部に配置された溶接杭を介してタービンホイールに連結することができるターボチャージャシャフトとを有する。前記連結のために、溶接工程(例えば摩擦溶接または電子ビーム溶接)を使用して、シャフトとタービンホイールとを互いに連結することが可能である。このような溶接工程用のタービンホイールTRは、図4および図5に非常に単純化した概略形態で示されている。タービンホイールTRは前記ホイール後部Rと溶接杭Zとを有し、この溶接杭Zは、鋳造工程後に、ピストンリング用の2つの凹部を有する破線SZに沿って機械的に加工される。破線SZの垂直領域は研削ゾーンの端部を構成する。さらに、図5によれば、アンダーカットFSは、別の加工ステップにおいて、ホイール後部Rと溶接杭との間の遷移部に形成され、このアンダーカットを図5から見ることができる。
【0003】
図6は、一例として、タービンホイールTRの一実施形態を示しており、このタービンホイールTRは、ホイール後部Rと、溶接工程によって、ターボチャージャの図6に(または図4および図5に)示されていないシャフトに連結することができる溶接杭Zとをやはり有する。原理から、前記ロータの例では、図5に示したようにアンダーカットを形成するための追加の加工が不要であるべきである。しかし、本発明に関連して行われた試験は、コーナーEが研削ゾーンとタービンホイールの非加工部との間の遷移部に形成されることを示しているが、これは、研削ディスクがホイール後部Rからの距離を維持しなければならず、この距離が次にロータと軸受ハウジングLGとの間の衝突をもたらすことがあるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、請求項1の前段に記載のタービンホイールと、請求項3の前段に記載の、タービンホイールを製造するための方法であって、溶接杭とタービンホイールのホイール後部との間の遷移領域にアンダーカットを形成するための追加の加工ステップを回避することが可能であるべきである方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は請求項1および請求項3の特徴によって達成される。
【0006】
本発明は、鋳造工程後に、いずれの場合も既にアンダーカットが設けられているタービンホイールブランクの遷移領域までの溶接杭の当該領域のみを機械的に加工すれば済むように、適切な鋳造工程によってアンダーカットをタービンホイールブランクに既に設けることができるという点で、驚くほど簡単な方法で上記の目的を達成する。その結果、従来技術とは対照的に、さらなる加工ステップが省略される。さらに、鋳造工程後、例えば研削ディスクによって加工される溶接杭の当該領域は、鋳造工程中に一体化されるアンダーカットを有する連続的な遷移領域を形成し、この連続的な遷移領域は、タービンホイールとロータシャフトとからなるロータの強度に対してプラスの効果を有する。
【0007】
従属請求項は本発明の有利な改良形態に関する。
【0008】
本発明のさらなる詳細、特徴および利点は、図面に基づく例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明によるタービンホイールの非常に単純化した概略図である。
【図1B】図1Aの楕円形で囲まれた細部Xの拡大図である。
【図2】タービンホイールブランクの図面である。
【図3】図2に対応する従来技術によるタービンホイールブランクの図面である。
【図4】本説明の導入部で認識される従来技術に関する図面である。
【図5】本説明の導入部で認識される従来技術に関する図面である。
【図6】本説明の導入部で認識される従来技術に関する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明によるタービンホイール1の非常に単純化した概略図を示しており、このタービンホイールは、ホイール後部3と、ホイール後部3に一体的に形成された溶接杭Zとを有する。ここでは、破線の両方向矢印で示した輪郭2は、鋳造工程、例えば精密鋳造工程によって製造することができるタービンホイールブランクを示している。
【0011】
タービンホイールブランク2を鋳造した後、タービンホイールブランク2は矢印「研削ゾーンの端部」まで加工され、ここで、矢印「研削ゾーンの端部」まで延びる破線の当該領域6は、完成したタービンホイール1について図1Aに見られる線の点7と8の輪郭を得るように、例えば研削工程によって除去され、この輪郭は、実施例では、ピストンリング(図1Aにはより詳細に図示せず)を保持するための2つの溝を備える。したがって、図1Aから理解できるように、図6を参照して説明したような軸受ハウジングLGとの衝突はもはや生じることはない。ここでは、図1Bによる細部Xは、破線6の除去による加工後の、円筒形領域9と、前記円筒形領域9に隣接するわずかな高さ10と、領域6をタービンホイールブランク2から除去するために領域9の下方に非常に短い距離にあり、したがって中心軸線からわずかにより短い距離にあるアンダーカット4とを示している。
【0012】
したがって、領域6の加工前のブランク2を示した図2から、遷移領域5のアンダーカットをより明確に見ることができる。ここでは、領域6は未だ除去されていないので、遷移領域のアンダーカット4がより目立っている。
【0013】
アンダーカット4の設計は、比較目的のために再度図3に示されている従来技術と比較してさらに明確である。前記図面から、遷移領域5が、引き続き加工される領域6から進むアンダーカットを有しないので、図4および図5を参照して説明したような加工がこの場合必要であることが明らかである。
【0014】
したがって、タービンホイール1を製造するための本発明による方法は、溶接杭Zとタービンホイール後部3とが設けられるタービンホイールブランク2の鋳造に制限され、上記のアンダーカット4はタービンホイールブランク2の鋳造中に遷移領域5に形成される。
【0015】
したがって、完成したタービンホイール1をブランク2から製造するには、鋳造後に上記の領域6のみを加工すればよい。
【0016】
上記の開示に加えて、その開示を完成させるために、図1A、図1Bおよび図2がここに明示的に参照される。
【符号の説明】
【0017】
1 タービンホイール
2 タービンホイールブランク
3 タービンホイール後部
4 アンダーカット
5 遷移領域
6 除去すべき領域
7、8 完成したタービンホイール輪郭の端部
9 円筒形領域
10 高さ
TR タービンホイール
R ホイール後部
Z 溶接杭
SZ 破線
FS アンダーカット
LG 軸受ハウジング
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンホイールブランク(2)からなるタービンホイール(1)であって、
−タービンホイール後部(3)を有し、
−アンダーカット(4)が設けられた遷移領域(5)を介して前記タービンホイール後部(3)に配置される溶接杭(Z)を有する
タービンホイール(1)において、
−前記アンダーカット(4)が前記タービンホイールブランク(2)に既に設けられている
ことを特徴とするタービンホイール(1)。
【請求項2】
前記タービンホイールブランク(2)が精密鋳造部として形成されることを特徴とする請求項1に記載のタービンホイール。
【請求項3】
前記アンダーカット(4)が分割継手の分割フラッシュなしに形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のタービンホイール。
【請求項4】
タービンホイール(1)を製造するための方法であって、
−タービンホイール後部(3)と、遷移領域(5)を介して前記タービンホイール後部(3)に一体的に形成される溶接杭(Z)とを有するタービンホイールブランク(2)を鋳造するステップを含む方法において、
−前記タービンホイールブランク(2)の鋳造中に、アンダーカット(4)が前記遷移領域(5)に生成されることを特徴とする方法。
【請求項5】
精密鋳造工程が鋳造工程として使用されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶接杭(4)が、前記アンダーカット(4)の前に終端する領域(6)で機械的に加工されることを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
研削工程または旋削工程が製造工程として使用されることを特徴とする請求項6に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−520602(P2013−520602A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553933(P2012−553933)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2011/023868
【国際公開番号】WO2011/102984
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(500124378)ボーグワーナー インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】