説明

タービンロータ

【課題】タービンの性能の低下を抑制することができるタービンロータを提供する。
【解決手段】回転軸となるハブと、ハブの周面に設けられ、流入口から流入する作動流体を流出口へ向けて受け流す複数のタービン動翼と、を備え、各タービン動翼は、流入口から流出口に至るタービン動翼のシュラウド側縁部に沿ったラインをシュラウドラインとし、シュラウドラインは、回転軸に対する翼角度が、流入口から流出口へ向けて小さな変化となる入口側シュラウドラインLaと、入口側シュラウドラインLaの流出口側に連なり、入口側シュラウドラインLaよりも大きな変化となる中央シュラウドラインLbと、中央シュラウドラインLbの流出口側から流出口まで連なり、中央シュラウドラインLbよりも小さな変化となる出口側シュラウドラインLcと、で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、径方向から流入した作動流体を軸方向に流出させるラジアルタービンや斜流タービン等のタービンロータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、主軸周りに複数設置されるタービン動翼を備えたタービンインペラ(タービンロータ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。このタービンインペラのタービン動翼は、流体出口後縁部の羽根角のうち、ハブ部(ハブ側)とチップ部(シュラウド側)との間のミーン部の羽根角(主軸に対するキャンバー面の角度)βMEANが、チップ部の羽根角βTIP、ハブ部からミーン部までの距離RMEAN、及び、ハブ部からチップ部までの距離RTIPを変数として、所定の算出式に基づいて設定されている。これにより、ラジアルタービンの性能向上を図ることが可能なタービン動翼とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−133765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タービンは、上記のタービンロータを備えているが、このタービンロータの外側には、タービンロータのケーシングとなるシュラウドが配設されている。このとき、タービンロータのタービン動翼とシュラウドとの間には、タービンロータの回転を許容すべく、隙間が生じている。
【0005】
このとき、タービン動翼とシュラウドとの間に生じた隙間から、作動流体が漏洩してしまうと、タービンの性能は低下してしまう。作動流体が漏洩する原因として、タービン動翼は、その一方の面が正圧面、その他方の面が負圧面となっており、タービン動翼のシュラウド側において、正圧面と負圧面との圧力差が大きくなってしまうからである。具体的に、タービン動翼のシュラウド側において、負圧面上を流れる作動流体の流速が増大すると、負圧面の圧力が低下することにより、正圧面と負圧面との圧力差が大きくなる。そして、正圧面と負圧面との圧力差が大きくなると、タービンロータに流入した作動流体は、タービン動翼とシュラウドとの間に生じた隙間から漏洩し易くなるため、タービンは、作動流体が漏洩した分、その性能が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、タービンの性能を向上させることが可能なタービンロータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタービンロータは、流入口を介して径方向から流入した作動流体を、流出口を介して軸方向に流出させるタービンのタービンロータにおいて、回転軸を中心に回転可能なハブと、ハブの周面に設けられ、流入口から流入する作動流体を流出口へ向けて受け流す複数のタービン動翼と、を備え、各タービン動翼は、ハブに接続された基端側がハブ側となっており、自由端となる先端側がシュラウド側となっており、タービン動翼のシュラウド側縁部に沿った流入口から流出口へ至るラインをシュラウドラインとし、シュラウドラインは、回転軸に対する翼角度が、流入口から流出口へ向けて小さな変化となる第1シュラウドラインと、第1シュラウドラインの流出口側に連なり、第1シュラウドラインよりも大きな変化となる第2シュラウドラインと、第2シュラウドラインの流出口側から流出口まで連なり、第2シュラウドラインよりも小さな変化となる第3シュラウドラインと、で構成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第2シュラウドラインの翼角度の変化を、第1シュラウドラインおよび第3シュラウドラインの翼角度の変化に比して、大きくすることができる。ここで、翼角度とは、回転軸に対するシュラウドラインの傾斜角度である。このため、第2シュラウドラインにおけるタービン動翼の翼角度の変化を大きく、第1シュラウドラインおよび第3シュラウドラインにおけるタービン動翼の翼角度の変化を小さくすることができる。これにより、タービン動翼のシュラウド側の負圧面上を流れる作動流体の流速の増加を抑制できることから、タービン動翼のシュラウド側の負圧面における圧力の低下を抑制することができるため、正圧面と負圧面との圧力差を小さくすることができ、タービン動翼とシュラウドとの間の隙間から、作動流体が漏洩することを抑制することができる。
【0009】
この場合、第3シュラウドラインの翼角度の変化は、減少方向への変化となっていることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、流出口側におけるタービン動翼間の形状を、ノズル形状とすることができるため、タービン効率の向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明の他のタービンロータは、流入口を介して径方向から流入した作動流体を、流出口を介して軸方向に流出させるタービンのタービンロータにおいて、回転軸を中心に回転可能なハブと、ハブの周面に設けられ、流入口から流入する作動流体を流出口へ向けて受け流す複数のタービン動翼と、を備え、各タービン動翼は、ハブに接続された基端側がハブ側となっており、自由端となる先端側がシュラウド側となっており、タービン動翼のシュラウド側縁部に沿った流入口から流出口へ至るラインをシュラウドラインとし、シュラウドラインは、回転軸に対する翼角度が、流入口から流出口へ向けて大きな変化となる第1シュラウドラインと、第1シュラウドラインの流出口側から流出口まで連なり、第1シュラウドラインよりも小さな変化となる第2シュラウドラインと、で構成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、第1シュラウドラインの翼角度の変化を、第2シュラウドラインの翼角度の変化に比して、大きくすることができる。つまり、第1シュラウドラインにおけるタービン動翼の翼角度の変化を大きく、第2シュラウドラインにおけるタービン動翼の翼角度の変化を小さくすることができる。これにより、第2シュラウドラインにおけるタービン動翼の翼角度の変化を小さくすることで、第2シュラウドラインを直線に近づけることができ、タービン動翼のシュラウド側の負圧面上を流れる作動流体の流速の増加を抑制することができる。以上から、タービン動翼のシュラウド側の負圧面における圧力の低下を抑制することができるため、正圧面と負圧面との圧力差を小さくすることができ、タービン動翼とシュラウドとの間の隙間から、作動流体が漏洩することを抑制することができる。
【0013】
この場合、第1シュラウドラインの長さは、シュラウドラインの長さの1〜2割の長さとなっており、第2シュラウドラインの長さは、シュラウドラインの長さから第1シュラウドラインの長さを引いた、シュラウドラインの長さの8〜9割の長さとなっていることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、シュラウドラインの長さの1〜2割を第1シュラウドラインとし、8〜9割を第2シュラウドラインとすることで、第1シュラウドラインの長さを、第2シュラウドラインの長さに比して短くすることができる。これにより、第2シュラウドラインの長さを長くすることができるため、タービン動翼の第2シュラウドラインを、さらに直線に近づけることができる。
【0015】
この場合、第2シュラウドラインにおける翼角度の変化量となる翼転向角は、30°以下であることが、好ましい。
【0016】
この構成によれば、第2シュラウドラインにおける翼転向角を30°以下にすることで、タービン動翼のシュラウド側の負圧面上を流れる作動流体の流速の増速を好適に抑制することができる。
【0017】
この場合、シュラウドラインは、第1シュラウドラインが、流入口側のシュラウドラインとなる入口側シュラウドラインであり、第2シュラウドラインが、入口側シュラウドラインの流出口側から流出口まで連なる中央・出口側シュラウドラインであり、ハブの回転軸を含む断面となる子午断面において、入口側シュラウドラインの曲率は、中央・出口側シュラウドラインの曲率に比して、小さくなっていることが、好ましい。
【0018】
この構成によれば、入口側シュラウドラインの曲率を、中央・出口側シュラウドラインの曲率に比して小さくすることができる。これにより、中央・出口側シュラウドラインの曲率を大きくすることができるため、シュラウド側の負圧面側において、作動流体の流速の増加を抑制することができる。従って、タービン動翼のシュラウド側における負圧面の圧力の低下を抑制することができ、タービン動翼とシュラウドとの間の隙間から、作動流体が漏洩することを抑制することができる。なお、タービン動翼間には、流入口から流出口へ至る作動流体の流路が形成され、流路は、その流れ方向が径方向から転向部を介して軸方向へ転向しており、入口側シュラウドラインは、流入口から転向部までの間の長さとなっている。
【0019】
この場合、入口側シュラウドラインは、R状に形成される一方、中央・出口側シュラウドラインは、直線状に形成されていることが、好ましい。
【0020】
この構成によれば、入口側シュラウドラインをR状に形成し、中央・出口側シュラウドラインを直線状に形成することができるため、タービン動翼のシュラウド側における負圧面の圧力の低下をさらに抑制することができる。
【0021】
この場合、各タービン動翼の流入口側縁部に沿ったラインである流入口ラインは、回転軸に対し、回転方向へ傾いていることが、好ましい。
【0022】
この構成によれば、流入口から流入する作動流体をハブ側へ向かわせることができる。このため、作動流体がシュラウド側へ向かって集中的に流れることを抑制することができるため、タービン動翼とシュラウドとの間の隙間へ流れることを抑制することができ、これにより、隙間から作動流体が漏洩することを抑制することができる。
【0023】
この場合、回転軸に対する流入口ラインの傾斜角度は、10°〜25°であることが、好ましい。
【0024】
この構成によれば、流入口ラインの傾斜角度を好適なものとすることができるため、作動流体の漏洩を適切に抑制することができる。
【0025】
また、本発明の他のタービンロータは、流入口を介して径方向から流入した作動流体を、流出口を介して軸方向に流出させるタービンのタービンロータにおいて、回転軸を中心に回転可能なハブと、ハブの周面に設けられ、流入口から流入する作動流体を流出口へ向けて受け流す複数のタービン動翼と、を備え、各タービン動翼は、ハブに接続された基端側がハブ側となっており、自由端となる先端側がシュラウド側となっており、タービン動翼のシュラウド側縁部に沿ったラインをシュラウドラインとし、シュラウドラインは、流入口側のシュラウドラインとなる入口側シュラウドラインと、入口側シュラウドラインの流出口側から流出口まで連なる中央・出口側シュラウドラインと、で構成され、ハブの回転軸を含む断面となる子午断面において、入口側シュラウドラインの曲率は、中央・出口側シュラウドラインの曲率に比して、小さくなっていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、入口側シュラウドラインの曲率を、中央・出口側シュラウドラインの曲率に比して小さくすることができる。これにより、中央・出口側シュラウドラインの曲率を大きくすることができるため、シュラウド側の負圧面側において、作動流体の流速の増加を抑制することができる。従って、タービン動翼のシュラウド側における負圧面の圧力の低下を抑制することができ、タービン動翼とシュラウドとの間の隙間から、作動流体が漏洩することを抑制することができる。
【0027】
さらに、本発明の他のタービンロータは、流入口を介して径方向から流入した作動流体を、流出口を介して軸方向に流出させるタービンのタービンロータにおいて、回転軸を中心に回転可能なハブと、ハブの周面に設けられ、流入口から流入する作動流体を流出口へ向けて受け流す複数のタービン動翼と、を備え、各タービン動翼の流入口側縁部に沿ったラインである流入口ラインは、回転軸に対し、回転方向へ傾いていることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、流入口から流入する作動流体をハブ側へ向かわせることができる。このため、作動流体がシュラウド側へ向かって集中的に流れることを抑制することができるため、タービン動翼とシュラウドとの間の隙間へ流れることを抑制することができ、これにより、隙間から作動流体が漏洩することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のタービンロータによれば、各タービン動翼の形状を好適なものとすることができるため、タービンの性能向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、実施例1に係るタービンロータを備えたラジアルタービンを模式的に表した子午断面図である。
【図2】図2は、実施例1に係るタービンロータの外観斜視図である。
【図3】図3は、従来に係るタービンロータの外観斜視図である。
【図4】図4は、従来のタービンロータおよび実施例2のタービンロータのシュラウドラインおよびハブラインにおけるタービン動翼の翼角度の分布に関するグラフである。
【図5】図5は、実施例1のタービンロータおよび実施例2のタービンロータのシュラウドラインおよびハブラインにおけるタービン動翼の翼角度の分布に関するグラフである。
【図6】図6は、実施例2に係るタービンロータの外観斜視図である。
【図7】図7は、従来に係るタービンロータの流路内におけるタービン効率の分布図である。
【図8】図8は、実施例2に係るタービンロータの流路内におけるタービン効率の分布図である。
【図9】図9は、実施例2に係るタービンロータの翼転向角に応じて変化するタービン効率の損失に関するグラフである。
【図10】図10は、実施例3に係るタービンロータおよび従来に係るタービンロータのタービン動翼の子午断面図である。
【図11】図11は、実施例4に係るタービンロータの一部を示す外観斜視図である。
【図12】図12は、従来に係るタービンロータの一部を示す外観斜視図である。
【図13】図13は、実施例4の構成を適用した実施例2のタービン動翼、および従来のタービン動翼の周方向(θ方向)におけるそれぞれの翼角度の分布を表したグラフである。
【図14】図14は、実施例4の構成を適用した実施例1のタービン動翼、および実施例4の構成を適用した実施例2のタービン動翼の周方向(θ方向)におけるそれぞれの翼角度の分布を表したグラフである。
【図15】図15は、従来のタービンロータの流路内における作動流体の流線を表した子午断面図である。
【図16】図16は、実施例4のタービンロータの流路内における作動流体の流線を表した子午断面図である。
【図17】図17は、従来および実施例1に係るタービン動翼のシュラウド側における正圧面と負圧面との流速変化を示すグラフである。
【図18】図18は、従来および実施例1に係るタービン動翼のシュラウド側における正圧面と負圧面との圧力変化を示すグラフである。
【図19】図19は、従来および実施例2に係るタービン動翼のシュラウド側における正圧面と負圧面との流速変化を示すグラフである。
【図20】図20は、従来および実施例2に係るタービン動翼のシュラウド側における正圧面と負圧面との圧力変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付した図面を参照して、本発明に係るタービンロータについて説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0032】
図1に示すように、タービンロータ6は、ラジアルタービン1の一部を構成しており、ラジアルタービン1は、外殻となるタービンケーシング5と、タービンケーシング5の内部に配設されたタービンロータ6とで構成されている。
【0033】
タービンケーシング5は、その中央内部に配設されたタービンロータ6の回転軸Sの軸方向に流出口11が形成され、タービンロータ6の外側の周方向に渦巻状のスクロール12が形成されている。そして、スクロール12内を流れる作動流体は、スクロール12とタービンロータ6との間に形成された流入口13を介して径方向からタービンロータ6へ流入し、タービンロータ6を通過して、流出口11から流出する。
【0034】
タービンロータ6は、回転軸Sを中心に回転するハブ20と、ハブ20の周面に設けられると共に軸心から放射状に配設された複数のタービン動翼21と、を有しており、流入した作動流体を複数のタービン動翼21に受けて回転するよう構成されている。
【0035】
このとき、タービンケーシング5は、タービンロータ6のタービン動翼21に対向するシュラウド24を有しており、シュラウド24、ハブ20および各タービン動翼21により作動流体が流れる流路Rが区画されている。
【0036】
また、各タービン動翼21は、ハブ20の周面(ハブ面20a)に接続された固定端側(基端側)がハブ側となっており、シュラウド側に近接した自由端側(先端側)がシュラウド側となっている。また、図1に示すように、流入口13から流出口11に至るタービン動翼21のシュラウド側縁部に沿ったラインをシュラウドラインL2とし、流入口13から流出口11に至るタービン動翼21のハブ側縁部に沿ったラインをハブラインH2としている。このとき、各タービン動翼21とシュラウド24との間には、タービンロータ6が回転可能なように隙間Cが形成されている。
【0037】
従って、タービンロータ6の径方向から流入口13を介して作動流体が流入すると、流入した作動流体は流路Rを通過し、これにより、各タービン動翼21は、流入した作動流体を受けて回転する。このとき、流路Rを構成する一方のタービン動翼21のキャンバー面は正圧面21aとなっており、他方のタービン動翼21のキャンバー面は負圧面21bとなっている。換言すれば、各タービン動翼21の一方のキャンバー面が正圧面21aとなっており、他方のキャンバー面が負圧面21bとなっている。そして、流路Rを通過した作動流体は、流出口11から流出する。
【0038】
ここで、図2を参照して、実施例1のタービンロータ6のタービン動翼21を示すと共に、図3を参照して、従来のタービンロータ100のタービン動翼101を示す。また、図4および図5から、従来のタービンロータ100のタービン動翼101の形状と、実施例1のタービンロータ6のタービン動翼21の形状とを、後述する実施例2のタービンロータ30のタービン動翼32の形状を介して、間接的に比較する。以下、実施例1のタービンロータ6のタービン動翼21の特徴部分について説明する。
【0039】
図4には、従来のタービン動翼101におけるシュラウドラインL1およびハブラインH1と、実施例2のタービン動翼32におけるシュラウドラインL3およびハブラインH3とが描かれている。また、図5には、実施例1のタービン動翼21におけるシュラウドラインL2およびハブラインH2と、実施例2のタービン動翼32におけるシュラウドラインL3およびハブラインH3とが描かれている。
【0040】
従来のタービン動翼101は、流入口105から流出口106にかけて、回転軸Sに対するシュラウドラインL1の傾斜角度(翼角度β)の変化が徐々に増加している。次に、実施例2のタービン動翼32は、流入口34から流出口35にかけて、回転軸Sに対するシュラウドラインL3の傾斜角度(翼角度β)の変化が、流入口34側において大きく、中央および流出口35側において小さくなっている。そして、実施例1のタービン動翼21は、流入口13から流出口11にかけて、回転軸Sに対するシュラウドラインL2の傾斜角度(翼角度β)の変化が、流入口13側において小さく、中央において大きく、流出口11側において小さくなっている。
【0041】
一方、従来のタービン動翼101は、流入口105から流出口106にかけて、回転軸Sに対するハブラインH1の傾斜角度(翼角度β)が、流入口105側において略平坦となっており、中央および流出口106側において徐々に増加している。次に、実施例2のタービン動翼32は、回転軸Sに対するハブラインH3の傾斜角度(翼角度β)が、流入口34側から中央にかけて減少しており、中央から流出口35側にかけて増加している。そして、実施例1のタービン動翼21は、実施例2と同様に、回転軸Sに対するハブラインH2の傾斜角度(翼角度β)が、流入口13側から中央にかけて減少しており、中央から流出口11側にかけて増加している。
【0042】
具体的に、図4および図5を参照して、従来のタービン動翼101のシュラウドラインL1における翼角度βと、実施例1のタービン動翼21のシュラウドラインL2における翼角度βとについて説明する。図4および図5に示すグラフは、その横軸が、子午断面(回転軸Sを含む断面)におけるシュラウドラインの流入口13,105から流出口11,106までの長さとなっており、その縦軸が翼角度βとなっている。
【0043】
このとき、シュラウドラインL1,L2は、流入口13,105側における入口側シュラウドラインLa(第1シュラウドライン)と、流出口11,106側における出口側シュラウドラインLc(第3シュラウドライン)と、入口側シュラウドラインLaおよび出口側シュラウドラインLcの間の中央シュラウドラインLb(第2シュラウドライン)とで構成されている。具体的に、流入口13,105から流出口11,106へ至る作動流体の流路Rは、その流れ方向が径方向から転向位置D1を介して軸方向へ転向しており、入口側シュラウドラインLaは、流入口13,105から転向位置(転向部)D1までの間の長さとなっている。また、中央シュラウドラインLbは、転向位置D1から所定長さ離れた所定位置D2までの長さとなっている。そして、出口側シュラウドラインLcは、所定位置D2から流出口11,106までの間の長さとなっている。
【0044】
そして、入口側シュラウドラインLaの長さは、シュラウドラインL1,L2の長さの2割程度となっており、中央シュラウドラインLbの長さは、シュラウドラインL1,L2の長さの6割程度となっており、出口側シュラウドラインLcの長さは、シュラウドラインL1,L2の長さの2割程度となっている。
【0045】
図4のグラフを見るに、従来のタービン動翼101では、シュラウドラインL1の流入口105から流出口106にかけて、翼角度βの変化がほぼ一定の割合で減少している。すなわち、従来のタービン動翼101のシュラウド側における翼角度βは、流出口106へ向かうにつれて、回転軸Sに対し徐々に傾斜してゆく。具体的に、シュラウドラインL1における入口側シュラウドラインLaの単位長さあたりの翼転向角Δβと、中央・出口側シュラウドラインLbの単位長さあたりの翼転向角Δβとは、ほぼ同程度となっている。なお、翼転向角Δβとは、翼角度βの変化量であり、従来のタービン動翼101において、中央・出口側シュラウドラインLbにおける翼転向角Δβは、ほぼ40°となっている。
【0046】
一方、図5のグラフを見るに、実施例1のタービン動翼21では、シュラウドラインL2において、入口側シュラウドラインLaの翼角度βが減少方向に小さく変化し、中央シュラウドラインLbの翼角度βが増加方向に大きく変化し、出口側シュラウドラインLcの翼角度βが減少方向に小さく変化している。すなわち、実施例1のタービン動翼21のシュラウド側における翼角度βは、流入口13から転向位置D1へかけて、回転軸Sに対し傾斜角度を減少させながら傾斜してゆき、転向位置D1から所定位置D2へかけて、回転軸Sに対し傾斜角度を増加させながら傾斜してゆき、所定位置D2から流出口11へかけて、回転軸Sに対し傾斜角度を減少させながら傾斜してゆく。具体的に、中央シュラウドラインLbの単位長さあたりの翼転向角Δβは、入口側シュラウドラインLaおよび出口側シュラウドラインLcの単位長さあたりの翼転向角Δβに比して、大きくなっている。なお、実施例1のタービン動翼21において、入口側シュラウドラインLaの翼転向角Δβは、−2°程度となっており、中央シュラウドラインLbの翼転向角Δβは、25°程度となっており、出口側シュラウドラインLcの翼転向角Δβは、−10°程度となっている。
【0047】
以上の構成によれば、実施例1のタービンロータ6の入口側シュラウドラインLaの翼角度βの変化を、入口側シュラウドラインLaにおいて小さく、中央シュラウドラインLbにおいて大きく、出口側シュラウドラインLcにおいて小さくすることができる。この結果、タービン動翼21の負圧面21bのシュラウド側において、作動流体の流速の増加を抑制することができ、負圧面21bにおける圧力の低下を抑制することができる(詳細は後述)。このため、タービン動翼21の正圧面21aと負圧面21bとの圧力差を抑制することができ、タービン動翼21とシュラウド24との間の隙間Cから、作動流体が漏洩することを抑制することができる。以上により、作動流体の漏洩によるタービン効率の低下を抑制することができる。
【実施例2】
【0048】
次に、図6を参照して、実施例2に係るタービンロータ30について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。図6に示すように、実施例2のタービンロータ30は、実施例1とほぼ同様に構成されており、回転軸Sを中心に回転するハブ31と、ハブ31の周面に設けられると共に軸心から放射状に配設された複数のタービン動翼32と、を有しており、流入した作動流体を複数のタービン動翼32に受けて回転するよう構成されている。
【0049】
ここで、実施例2のタービンロータ30は、そのタービン動翼32のシュラウドラインL3が、実施例1のタービン動翼21のシュラウドラインL2と異なる形状となっている。以下、図4および図5を参照して、従来のタービン動翼101のシュラウドラインL1における翼角度βと、実施例2のタービン動翼32のシュラウドラインL3における翼角度βとについて説明する。
【0050】
実施例1で説明したように、シュラウドラインL1,L3は、流入口34,105側における入口側シュラウドラインLaと、流出口35,106側における出口側シュラウドラインLcと、入口側シュラウドラインLaおよび出口側シュラウドラインLcの間の中央シュラウドラインLbとで構成されている。そして、入口側シュラウドラインLaの長さは、シュラウドラインL1,L3の長さの2割程度となっており、中央シュラウドラインLbの長さは、シュラウドラインL1,L3の長さの6割程度となっており、出口側シュラウドラインLcの長さは、シュラウドラインL1,L3の長さの2割程度となっている。
【0051】
ここで、図5のグラフを見るに、実施例2のタービン動翼32では、シュラウドラインL3において、入口側シュラウドラインLaの翼角度βは、増加方向に大きく変化し、中央シュラウドラインLbおよび出口側シュラウドラインLcの翼角度βは、増加方向に小さく変化する。すなわち、実施例2のタービン動翼32のシュラウド側における翼角度βは、流入口34から転向位置D1へかけて、回転軸Sに対し傾斜角度を大きく増加させながら傾斜してゆき、転向位置D1から所定位置D2を介し流出口11へかけて、回転軸Sに対し傾斜角度を小さく増加させながら傾斜してゆく。具体的に、入口側シュラウドラインLaの単位長さあたりの翼転向角Δβは、中央シュラウドラインLbおよび出口側シュラウドラインLcの単位長さあたりの翼転向角Δβに比して、大きくなっている。なお、実施例2のタービン動翼32において、入口側シュラウドラインLaの翼転向角Δβは、18°程度となっており、中央シュラウドラインLbおよび出口側シュラウドラインLcの翼転向角Δβは、20°程度となっている。従って、実施例2のタービン動翼32において、入口側シュラウドラインLaが第1シュラウドラインに相当し、中央シュラウドラインLbおよび出口側シュラウドラインLcが第2シュラウドラインに相当する。
【0052】
次に、図7および図8を参照して、上記のように構成した従来のタービンロータ100を備えたラジアルタービンの性能と、実施例2のタービンロータ30を備えたラジアルタービンの性能とについて比較する。図7では、従来のタービンロータ100において、作動流体が流れる流路Rを、回転軸Sの軸方向を直交する切断面で切ったときのタービン効率の分布図を、作動流体の流れ方向に沿って4つ示している。この4つのタービン効率の分布図は、図示左側から1つ目が、流入口105におけるタービン効率の第1分布図W1となっており、図示左側から3つ目が、流出口106におけるタービン効率の第3分布図W3となっている。そして、図示左側から2つ目が、流入口105と流出口106との間のタービン効率の第2分布図W2となっており、図示左側から4つ目が、翼を出た後の最下流側の第4分布図W4となっている。
【0053】
第1分布図W1を見るに、タービン効率は、負圧面101bのシュラウド側において、効率が低い低効率領域E1が形成されており、第2分布図W2において、タービン効率は、負圧面101bのシュラウド側において、第1分布図W1に比して、低効率領域E1が拡大して形成されている。さらに、第3分布図W3において、タービン効率は、正圧面101aのシュラウド側においても、低効率領域E1が形成され、第4分布図W4において、タービン効率は、正圧面101aと負圧面101bとの間のシュラウド側において、低効率領域E1よりも効率の良い中効率領域E2が形成される。
【0054】
一方、図8では、実施例2のタービンロータ30において、作動流体が流れる流路Rを、回転軸Sの軸方向を直交する切断面で切ったときのタービン効率の分布図を、作動流体の流れ方向に沿って4つ示している。図8も、図7と同様に、図示左側から1つ目が、流入口13におけるタービン効率の第1分布図W1となっており、図示左側から3つ目が、流出口11におけるタービン効率の第3分布図W3となっている。そして、図示左側から2つ目が、流入口34と流出口35との間のタービン効率の第2分布図W2となっており、図示左側の4つ目が、翼を出た後の最下流側の第4分布図W4となっている。
【0055】
第1分布図W1を見るに、タービン効率は、負圧面32bのシュラウド側において、低効率領域E1が僅かに形成されているが、図7に示した従来のタービンロータ100に比して、小さくなっていることが分かる。また、第2分布図W2において、タービン効率は、負圧面32bのシュラウド側において、中効率領域E2が形成されている。さらに、第3分布図W3において、タービン効率は、正圧面32aのシュラウド側において、中効率領域E2が形成され、第4分布図W4において、タービン効率は、そのほぼ全域において、低効率領域E1および中効率領域E2が形成されておらず、中効率領域E2よりも効率の良い高効率領域E3となっている。これにより、実施例2のタービンロータ30は、従来のタービンロータ100に比して、効率の良いものとなっていることが分かる。
【0056】
次に、図9を参照して、実施例2のタービンロータ30のタービン動翼32の翼転向角Δβに応じて変化するタービン効率について説明する。図9において、縦軸は、タービン効率の損失率Δηであり、横軸は、中央・出口側シュラウドラインLb,Lcにおける翼転向角Δβとなっている。図9に示すように、中央・出口側シュラウドラインLb,Lcにおける翼転向角Δβが大きくなるにつれて、タービン効率の損失は大きくなってゆくことが分かる。このため、翼転向角Δβの角度が小さくなれば、タービン効率の損失を抑制することができる。
【0057】
ここで、従来のタービンロータ100は、翼転向角Δβが40°であり、実施例2のタービンロータ6は、翼転向角Δβが20°である。このとき、翼転向角Δβが30°であれば、タービン効率の損失は、従来のタービン効率の損失に比して半減させることができる。このため、翼転向角Δβが30°以下であれば、ラジアルタービン1の効率損失を十分に抑制することが可能である。
【0058】
以上の構成によれば、実施例2のタービンロータ30の中央・出口側シュラウドラインLb,Lcにおける単位長さ当たりの翼転向角Δβを、従来の構成に比して、小さくすることができる。これにより、中央・出口側シュラウドラインLb,Lcにおけるタービン動翼32をほぼ直線とすることができる。この結果、タービン動翼32の負圧面32bのシュラウド側において、作動流体の流速の増加を抑制することができ、負圧面32bにおける圧力の低下を抑制することができる(詳細は後述)。このため、タービン動翼32の正圧面32aと負圧面32bとの圧力差を抑制することができ、タービン動翼32とシュラウド24との間の隙間Cから、作動流体が漏洩することを抑制することができる。以上により、作動流体の漏洩によるタービン効率の低下を抑制することができる。
【0059】
また、シュラウドラインL3の長さの2割を入口側シュラウドラインLaとし、8割を中央・出口側シュラウドラインLb,Lcとすることで、中央・出口側シュラウドラインLb,Lcの長さを長くすることができるため、タービン動翼32の中央・出口側シュラウドラインLb,Lcを、さらに直線に近づけることができる。なお、実施例2では、シュラウドラインL3の長さの2割を入口側シュラウドラインLaとし、8割を中央・出口側シュラウドラインLb,Lcとしたが、シュラウドラインL3の長さの1割を入口側シュラウドラインLaとし、9割を中央・出口側シュラウドラインLb,Lcとしてもよい。
【0060】
さらに、中央・出口側シュラウドラインLb,Lcにおける翼転向角Δβを30°以下にすることで、従来に比して、タービン効率の損失を半減以下にすることができる。
【実施例3】
【0061】
次に、図10を参照して、実施例3に係るタービンロータ50について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。図10は、実施例3に係るタービンロータ50および従来に係るタービンロータ100のタービン動翼51,101の子午断面図である。実施例3のタービンロータ50は、子午断面において、そのタービン動翼51の入口側シュラウドラインLaがR状に形成され、中央・出口側シュラウドラインLbがほぼ直線状に形成されている。
【0062】
具体的に、図10を参照するに、その縦軸は、径方向における長さであり、横軸は、軸方向における長さである。そして、従来のタービン動翼101は、そのシュラウドラインL1が、下り斜面に形成されているが、実施例3のタービン動翼51は、そのシュラウドラインL4において、入口側シュラウドラインLaが小さな曲率に形成されると共に、中央・出口側シュラウドラインLb,Lcが、入口側シュラウドラインLaに比して、大きな曲率に形成される。このとき、子午断面における入口側シュラウドラインLaは、シュラウドラインL4の長さの2割であり、中央・出口側シュラウドラインLb,Lcは、シュラウドラインL4の長さの8割である。これにより、入口側シュラウドラインLaは、R状に形成され、中央・出口側シュラウドラインLb,Lcは、ほぼ直線状に形成される。
【0063】
以上の構成によれば、入口側シュラウドラインLaの曲率を、中央・出口側シュラウドラインLb,Lcの曲率に比して小さくすることができる。このため、中央・出口側シュラウドラインLb,Lcの曲率を大きくすることができ、中央・出口側シュラウドラインLb,Lcを、ほぼ直線状に形成することができる。これにより、タービン動翼51のシュラウド側の負圧面において、作動流体の流速の増加を抑制することができる。この結果、タービン動翼51の負圧面のシュラウド側において、作動流体の流速の増加を抑制することができ、負圧面における圧力の低下を抑制することができる(詳細は後述)。このため、タービン動翼51の正圧面と負圧面との圧力差を抑制することができ、タービン動翼51とシュラウド24との間の隙間から、作動流体が漏洩することを抑制することができる。以上により、作動流体の漏洩によるタービン効率の低下を抑制することができる。
【0064】
なお、実施例3の構成は、実施例1または実施例2の構成と組み合わせても良く、これにより、タービン効率の低下を好適に抑制することができる。
【実施例4】
【0065】
最後に、図11ないし図16を参照して、実施例4に係るタービンロータ70について説明する。なお、この場合も重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。図11は、実施例4に係るタービンロータ70の一部を示す外観斜視図であり、図12は、従来に係るタービンロータ100の一部を示す外観斜視図である。また、図13は、実施例4のタービン動翼71の構成を実施例2のタービン動翼32に適用した場合の周方向(θ方向)におけるタービン動翼の翼角度θの分布に関するグラフである。同様に、図14は、実施例4のタービン動翼71の構成を実施例1のタービン動翼21に適用した場合の周方向(θ方向)におけるタービン動翼の翼角度θの分布に関するグラフである。さらに、図15は、従来のタービンロータの流路内における作動流体の流線を表した子午断面図であり、図16は、実施例4のタービンロータ70の流路内における作動流体の流線を表した子午断面図である。実施例4のタービンロータ70は、そのタービン動翼71の流入口側縁部に沿ったラインである流入口ラインI2が、回転軸Sに対し、回転方向へ傾いている。
【0066】
具体的に、図12に示すように、従来の流入口ラインI1は、回転軸Sとほぼ同方向となるように形成されている。すなわち、図13に示すように、シュラウドラインL1の流入口105側の周方向における角度(翼角度θ)と、ハブラインH1の流入口105側の周方向における角度(翼角度θ)とが互いに同じ角度となっており、周方向において同位相となっている。これにより、ハブラインH1の流入口105からシュラウドラインL1の流入口105へ至る従来の流入口ラインI1は、周方向へ変位しないため、回転軸Sとほぼ同方向となっている。
【0067】
一方、実施例4のタービン動翼71の構成を適用した実施例2のタービン動翼32の流入口ラインI2は、図13および図14に示すように、実施例2のシュラウドラインL3の流入口側の周方向における翼角度θと、ハブラインH3の流入口側の周方向における翼角度θとの角度差が、20°〜22°程度となっており、周方向において異なる位相となっている。このため、ハブラインH3の流入口34からシュラウドラインL3の流入口34へ至る実施例3の流入口ラインI2は、周方向(回転方向)へ変位し、これにより、流入口ラインI2は、回転軸Sに対し、回転方向へ傾いている。
【0068】
そして、実施例4のタービン動翼71の構成を適用した実施例1のタービン動翼21の流入口ラインI2は、図14に示すように、実施例1のシュラウドラインL2の流入口側の周方向における翼角度θと、ハブラインH2の流入口側の周方向における翼角度θとの角度差が、12°程度となっており、周方向において異なる位相となっている。このため、ハブラインH2の流入口13からシュラウドラインL2の流入口11へ至る実施例1の流入口ラインI2は、周方向(回転方向)へ変位し、これにより、流入口ラインI2は、回転軸Sに対し、回転方向へ傾いている。
【0069】
次に、図15および図16を参照して、上記従来のタービンロータ100の流路R内を流れる作動流体の流れと、上記実施例4のタービン動翼71の構成を適用した実施例2のタービンロータ30の流路R内を流れる作動流体の流れと、について比較する。
【0070】
図15を見るに、従来のタービンロータ100において、流入口105から作動流体が流入すると、流入口105のシュラウド側から流入した作動流体は、シュラウドラインL1に沿って流れる。一方で、流入口105のハブ側から流入した作動流体は、ハブラインH1に沿わず、シュラウド側に向かって流れる。このため、流路R内を流れる作動流体は、流出口106のシュラウド側に集中する。これにより、シュラウド側の流出口106において、シュラウド24とタービン動翼101との間の隙間Cから、作動流体が漏洩し易い。
【0071】
一方、図16を見るに、実施例4のタービン動翼71の構成を適用した実施例2のタービンロータ32において、流入口34から作動流体が流入すると、流入口34のシュラウド側から流入した作動流体は、シュラウドラインL3に沿って流れる。一方で、流入口34のハブ側から流入した作動流体は、上流側のハブラインH3に沿って流れた後、シュラウド側に向かって流れる。このため、流路R内を流れる作動流体は、流出口35のシュラウド側に向かって流れるが、流入口34のハブ側から流入した作動流体が上流側のハブラインH3に沿って流れた分、従来に比して、流出口35のシュラウド側への作動流体の集中を抑制することができる。
【0072】
以上の構成によれば、流入口34から流入する作動流体をハブ側へ向かわせることができる。このため、作動流体がシュラウド側へ向かって、タービン動翼32とシュラウド24との間の隙間Cへ流れることを抑制することができ、これにより、隙間Cから、作動流体が漏洩することを抑制することができる。
【0073】
なお、実施例4では、シュラウドラインL2,L3の流入口13,34側の周方向における翼角度θと、ハブラインH2,H3の流入口13,34側の周方向における翼角度θとの角度差を12°および20°としたが、10°〜25°の間であれば、作動流体の漏洩を好適に抑制することができる。
【0074】
次に、図17ないし図20を参照して、実施例1に実施例4を組み合わせたタービンロータ6と、実施例2に実施例3および4を組み合わせたタービンロータ30と、をそれぞれ適用したラジアルタービンの性能について説明する。なお、これらのタービンロータについて、図示は省略する。
【0075】
先ず、実施例1に実施例4を組み合わせたタービンロータ6は、中央シュラウドラインLbの翼角度βの変化が、入口側シュラウドラインLaおよび出口側シュラウドラインLcの翼角度βの変化に比して大きくなっており、また、シュラウドラインL2の流入口側の翼角度θと、ハブラインH2の流入口側の翼角度θとの角度差が、12°程度となっている。ここで、図17は、従来および実施例1に係るタービン動翼のシュラウド側における正圧面と負圧面との流速変化を示すグラフであり、図18は、従来および実施例1に係るタービン動翼のシュラウド側における正圧面と負圧面との圧力変化を示すグラフである。
【0076】
図17は、その縦軸が、作動流体の流速となっており、その横軸が、子午断面における作動流体の流路の流入口から流出口までの距離となっている。図17を見るに、M1aが、従来のタービンロータ100のタービン動翼101のシュラウド側における負圧面101bの流速変化のグラフであり、M2aが、実施例1に実施例4を組み合わせたタービンロータ6のタービン動翼21のシュラウド側における負圧面21bの流速変化のグラフである。また、M3aが、従来のタービンロータ100のタービン動翼101のシュラウド側における正圧面101aの流速変化のグラフであり、M4aが、実施例1に実施例4を組み合わせたタービンロータ6のタービン動翼21のシュラウド側における正圧面21aの流速変化のグラフである。
【0077】
ここで、M3aおよびM4aは、その流速の変化が相互にほぼ同様の変化となっているのに対し、M1aおよびM2aは、その流速の変化が異なっている。具体的に、M1aは、その中程において、流速の変化が大きくなる一方で、M2aは、その中程において、流速の変化が、M1aに比して小さくなることが分かる。
【0078】
図18は、その縦軸が、作動流体の圧力となっており、その横軸が、子午断面における作動流体の流路Rの流入口から流出口までの距離となっている。図18を見るに、P1aが、従来のタービンロータ100のタービン動翼101のシュラウド側における負圧面101bの圧力変化のグラフであり、P2aが、実施例1に実施例4を組み合わせたタービンロータ6のタービン動翼21のシュラウド側における負圧面21bの圧力変化のグラフである。また、P3aが、従来のタービンロータ100のタービン動翼101のシュラウド側における正圧面101aの圧力変化のグラフであり、P4aが、実施例1に実施例4を組み合わせたタービンロータ6のタービン動翼21のシュラウド側における正圧面21aの圧力変化のグラフである。
【0079】
ここで、P3aおよびP4aは、その圧力の変化が相互にほぼ同様の変化となっているのに対し、P1aおよびP2aは、その圧力の変化が異なっている。具体的に、P1aは、その中程において、圧力が小さくなる一方で、P2aは、その中程において、圧力が、P1aに比して大きくなっている。これにより、P4aとP2aとの圧力差は、P3aとP1aとの圧力差に比して、小さくなることが分かる。
【0080】
次に、実施例2に実施例3および実施例4を組み合わせたタービンロータ30は、入口側シュラウドラインLaの翼角度βの変化が、中央・出口側シュラウドラインLb,Lcの翼角度βの変化に比して大きくなっており、また、子午断面において、タービン動翼の入口側シュラウドラインLaがR状に形成され、タービン動翼の中央・出口側シュラウドラインLb,Lcがほぼ直線状に形成されている。さらに、シュラウドラインL3の流入口側の翼角度θと、ハブラインH3の流入口側の翼角度θとの角度差が、20°程度となっている。ここで、図19は、従来および実施例2に係るタービン動翼のシュラウド側における正圧面と負圧面との流速変化を示すグラフであり、図20は、従来および実施例2に係るタービン動翼のシュラウド側における正圧面と負圧面との圧力変化を示すグラフである。
【0081】
図19は、その縦軸が、作動流体の流速となっており、その横軸が、子午断面における作動流体の流路Rの流入口から流出口までの距離となっている。図19を見るに、M1bが、従来のタービンロータ100のタービン動翼101のシュラウド側における負圧面101bの流速変化のグラフであり、M2bが、実施例2に実施例3および4を組み合わせたタービンロータ30のタービン動翼32のシュラウド側における負圧面32bの流速変化のグラフである。また、M3bが、従来のタービンロータ100のタービン動翼101のシュラウド側における正圧面101aの流速変化のグラフであり、M4bが、実施例2に実施例3および4を組み合わせたタービンロータ30のタービン動翼32のシュラウド側における正圧面32aの流速変化のグラフである。
【0082】
ここで、M3bおよびM4bは、その流速の変化が相互にほぼ同様の変化となっているのに対し、M1bおよびM2bは、その流速の変化が異なっている。具体的に、M1bは、その中程において、流速の変化が大きくなる一方で、M2bは、その中程において、流速の変化が、M1bに比して小さくなることが分かる。
【0083】
図20は、その縦軸が、作動流体の圧力となっており、その横軸が、子午断面における作動流体の流路Rの流入口から流出口までの距離となっている。図20を見るに、P1bが、従来のタービンロータ100のタービン動翼101のシュラウド側における負圧面101bの圧力変化のグラフであり、P2bが、実施例2に実施例3および4を組み合わせたタービンロータ30のタービン動翼32のシュラウド側における負圧面32bの圧力変化のグラフである。また、P3bが、従来のタービンロータ100のタービン動翼101のシュラウド側における正圧面101aの圧力変化のグラフであり、P4bが、実施例2に実施例3および4を組み合わせたタービンロータ30のタービン動翼32のシュラウド側における正圧面32aの圧力変化のグラフである。
【0084】
ここで、P3bおよびP4bは、その圧力の変化が相互にほぼ同様の変化となっているのに対し、P1bおよびP2bは、その圧力の変化が異なっている。具体的に、P1bは、その中程において、圧力が小さくなる一方で、P2bは、その中程において、圧力が、P1bに比して大きくなっている。これにより、P4bとP2bとの圧力差は、P3bとP1bとの圧力差に比して、小さくなることが分かる。
【0085】
以上から、実施例1に実施例4を組み合わせたタービンロータ6は、そのタービン動翼21のシュウラウド側における負圧面21b上を流れる作動流体の流速の変化が、従来に比して小さくなるため、P4aとP2aとの圧力差は、P3aとP1aとの圧力差に比して、小さくすることができる。同様に、実施例2に実施例3および4を組み合わせたタービンロータ30は、そのタービン動翼32のシュウラウド側における負圧面32b上を流れる作動流体の流速の変化が、従来に比して小さくなるため、P4bとP2bとの圧力差は、P3bとP1bとの圧力差に比して、小さくすることができる。これにより、タービン動翼21,32のシュラウド側の負圧面21b,32bにおいて、作動流体の流速の増加を抑制することができるため、シュラウド側の負圧面21b,32bの圧力の低下を抑制することができ、タービン動翼21,32とシュラウド24との間の隙間Cから、作動流体が漏洩することを抑制することができる。なお、上記のように、実施例1ないし4を適宜組み合わせることにより、作動流体の漏洩を好適に抑制することができる。また、実施例1ないし実施例4では、本発明をラジアルタービンに適用して説明したが、斜流タービンや軸流タービンに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明に係るタービンロータは、タービン動翼とシュラウドとの間に隙間が形成されたタービンロータに有用であり、特に、隙間からの作動流体の漏洩を抑制してタービン効率の向上を図る場合に適している。
【符号の説明】
【0087】
1 ラジアルタービン
5 タービンケーシング
6 タービンロータ
11 流出口
13 流入口
20 ハブ
21 タービン動翼
24 シュラウド
30 タービンロータ(実施例2)
32 タービン動翼(実施例2)
34 流入口
35 流出口
50 タービンロータ(実施例2)
51 タービン動翼(実施例2)
70 タービンロータ(実施例3)
71 タービン動翼(実施例3)
75 流入口(実施例3)
76 流出口(実施例3)
100 タービンロータ(従来)
101 タービン動翼(従来)
105 流入口(従来)
106 流出口(従来)
C 隙間
L1 シュラウドライン(従来)
L2 シュラウドライン(実施例1)
L3 シュラウドライン(実施例2)
H1 ハブライン(従来)
H2 ハブライン(実施例1)
H3 ハブライン(実施例2)
La 入口側シュラウドライン
Lb 中央シュラウドライン
Lc 出口側シュラウドライン
D1 転向位置
D2 所定位置
β 翼角度
Δβ 翼転向角
θ 翼角度
I1 流入口ライン(従来)
I2 流入口ライン(本発明)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口を介して径方向から流入した作動流体を、流出口を介して軸方向に流出させるタービンのタービンロータにおいて、
回転軸を中心に回転可能なハブと、
前記ハブの周面に設けられ、前記流入口から流入する前記作動流体を前記流出口へ向けて受け流す複数のタービン動翼と、を備え、
前記各タービン動翼は、前記ハブに接続された基端側がハブ側となっており、自由端となる先端側がシュラウド側となっており、
前記タービン動翼のシュラウド側縁部に沿った前記流入口から前記流出口へ至るラインをシュラウドラインとし、
前記シュラウドラインは、前記回転軸に対する翼角度が、前記流入口から前記流出口へ向けて小さな変化となる第1シュラウドラインと、前記第1シュラウドラインの前記流出口側に連なり、前記第1シュラウドラインよりも大きな変化となる第2シュラウドラインと、前記第2シュラウドラインの前記流出口側から前記流出口まで連なり、前記第2シュラウドラインよりも小さな変化となる第3シュラウドラインと、で構成されていることを特徴とするタービンロータ。
【請求項2】
前記第3シュラウドラインの翼角度の変化は、減少方向への変化となっていることを特徴とする請求項1に記載のタービンロータ。
【請求項3】
流入口を介して径方向から流入した作動流体を、流出口を介して軸方向に流出させるタービンのタービンロータにおいて、
回転軸を中心に回転可能なハブと、
前記ハブの周面に設けられ、前記流入口から流入する前記作動流体を前記流出口へ向けて受け流す複数のタービン動翼と、を備え、
前記各タービン動翼は、
前記ハブに接続された基端側がハブ側となっており、自由端となる先端側がシュラウド側となっており、
前記タービン動翼のシュラウド側縁部に沿った前記流入口から前記流出口へ至るラインをシュラウドラインとし、
前記シュラウドラインは、前記回転軸に対する翼角度が、前記流入口から前記流出口へ向けて大きな変化となる第1シュラウドラインと、前記第1シュラウドラインの前記流出口側から前記流出口まで連なり、前記第1シュラウドラインよりも小さな変化となる第2シュラウドラインと、で構成されていることを特徴とするタービンロータ。
【請求項4】
前記第1シュラウドラインの長さは、前記シュラウドラインの長さの1〜2割の長さとなっており、前記第2シュラウドラインの長さは、前記シュラウドラインの長さから前記第1シュラウドラインの長さを引いた、前記シュラウドラインの長さの8〜9割の長さとなっていることを特徴とする請求項3に記載のタービンロータ。
【請求項5】
前記第2シュラウドラインにおける前記翼角度の変化量となる翼転向角は、30°以下であることを特徴とする請求項3または4に記載のタービンロータ。
【請求項6】
前記シュラウドラインは、前記第1シュラウドラインが、前記流入口側のシュラウドラインとなる入口側シュラウドラインであり、前記第2シュラウドラインが、前記入口側シュラウドラインの前記流出口側から前記流出口まで連なる中央・出口側シュラウドラインであり、
前記ハブの回転軸を含む断面となる子午断面において、前記入口側シュラウドラインの曲率は、前記中央・出口側シュラウドラインの曲率に比して、小さくなっていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載のタービンロータ。
【請求項7】
前記入口側シュラウドラインは、R状に形成される一方、前記中央・出口側シュラウドラインは、直線状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のタービンロータ。
【請求項8】
前記各タービン動翼の前記流入口側縁部に沿ったラインである流入口ラインは、前記回転軸に対し、回転方向へ傾いていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタービンロータ。
【請求項9】
前記回転軸に対する前記流入口ラインの傾斜角度は、10°〜25°であることを特徴とする請求項8に記載のタービンロータ。
【請求項10】
流入口を介して径方向から流入した作動流体を、流出口を介して軸方向に流出させるタービンのタービンロータにおいて、
回転軸を中心に回転可能なハブと、
前記ハブの周面に設けられ、前記流入口から流入する前記作動流体を前記流出口へ向けて受け流す複数のタービン動翼と、を備え、
前記各タービン動翼は、
前記ハブに接続された基端側がハブ側となっており、自由端となる先端側がシュラウド側となっており、
前記タービン動翼のシュラウド側縁部に沿ったラインをシュラウドラインとし、
前記シュラウドラインは、前記流入口側のシュラウドラインとなる入口側シュラウドラインと、前記入口側シュラウドラインの前記流出口側から前記流出口まで連なる中央・出口側シュラウドラインと、で構成され、
前記ハブの回転軸を含む断面となる子午断面において、前記入口側シュラウドラインの曲率は、前記中央・出口側シュラウドラインの曲率に比して、小さくなっていることを特徴とするタービンロータ。
【請求項11】
流入口を介して径方向から流入した作動流体を、流出口を介して軸方向に流出させるタービンのタービンロータにおいて、
回転軸を中心に回転可能なハブと、
前記ハブの周面に設けられ、前記流入口から流入する前記作動流体を前記流出口へ向けて受け流す複数のタービン動翼と、を備え、
前記各タービン動翼の前記流入口側縁部に沿ったラインである流入口ラインは、前記回転軸に対し、回転方向へ傾いていることを特徴とするタービンロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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