説明

タービン動翼の補修方法

【課題】溶接に起因した割れの発生を抑制したタービン動翼の補修方法を提供することにある。
【解決手段】タービン動翼先端部のフィンの損傷を補修するタービン動翼の補修方法であって、フィンの損傷箇所を肉盛溶接し(ステップS2)、フィンと肉盛溶接の境界領域をピーニング処理(ステップS4)した後に溶体化処理(ステップS6)してタービン動翼のフィンの損傷を補修するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン動翼の補修方法に関し、特に発電用ガスタービン動翼を補修する場合に適用すると有効である。
【0002】
タービンでは、複数の円板(ディスク)が回転軸の軸方向に配置される。これらの円板の外周には、多数のタービン動翼が円周方向に隣接して植え込まれる。軸方向の前後で隣接するタービン動翼間には、タービン動翼の外側を覆うケーシングに設けられた静翼が配置される。これらタービン動翼及び静翼間を高温の燃焼ガスが流れることにより、タービン動翼と共に回転軸が回転駆動され、例えば圧縮機の駆動及び発電機の駆動が行われている。
【0003】
動翼の外側の上記ケーシング側には、動翼先端とのクリアランスを決定する部品があり、この部品は、万が一のクリアランス制御の誤差等により、動翼と接触することがあっても、動翼の損傷を最小とするよう、摩耗しやすいハニカムで構成されていたり、削れ易い特殊なコーティングが施されたりしていることが多い。
【0004】
このクリアランスが大きいと、ガスがその間から漏れ、タービンの効率が落ちる。
よって、理想的には、クリアランスは小さい方が良い。一方、クリアランスを小さくしようとすると、上記に示したような部品の接触リスクが増えることとなるが、近年、効率向上の必要性が増加している影響から、クリアランスはできるだけ小さくしたい要求が高くなっており、必然的に、上記のような接触リスクが増加する傾向にある。
【0005】
上述したタービン動翼として、例えば、図6に示すように、翼部51の先端部(図6中における翼部51の上端部)51aにフィン52が設けられたタービン動翼50が挙げられる。このように翼部51の先端部51aにフィン52を設けることで、タービン動翼50と上述したケーシング側の部品とのクリアランスをできるだけ小さくなるように調整している。
【0006】
上述したようにタービン動翼は高温環境に曝されているため、酸化等の経年劣化や、運転時の熱膨張に起因して生ずるケーシング側部品との接触により、フィンが損傷してしまう場合がある。その場合には、図7に示すように、溶接熱源41でワイヤなどの形態で供給される溶接材料42を母材53上に肉盛溶接してフィンを補修している(例えば、特許文献1参照)。このとき、母材53上に溶接金属54が肉盛溶接される。母材53は、溶接熱源41からの熱により溶融境界56よりも上方側では溶融し、その下方側は熱の影響を受ける熱影響部55となる。
【0007】
【特許文献1】特開平10−80767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、タービン動翼はγ'(Ni3(Al,Ti))強化型の超合金であるNi基超合金で製造されている。一般に、Ni基超合金に含まれる、アルミニウムやチタンは、溶接時の高温割れ感受性を高めるとされており、よって、Al,Ti含有量が多いほど、言い換えるとγ’量の多いほど、溶接時の高温割れが生じやすい。
【0009】
一方、一般的に、フィン部は、先端部分のため、翼本体程の強度が必要ないことが多く、この場合、タービン動翼のフィンを補修する場合には、強度を若干、犠牲にしてAl,Tiの含有量を少なくし、溶接性を向上させた、母材とは違う溶接材料を用いて肉盛補修溶接されることがある。このように、溶接材料側で溶接性改善を図ると、溶接金属そのものでの割れ(図8の凝固割れ57など)は回避できることが多い。
【0010】
一方、含有量が多いと溶接に不適なアルミニウムやチタンを多く含む母材53に溶接金属54を溶接したときに、図8に示すように、熱影響部55近傍にて、液化割れ58が生じやすい。液化割れは、粒界部分に存在している金属炭化物が母材と共晶を作って融点の低い化合物(低融点化合物)が液化し、熱応力や、γ’析出時の、粒内体積収縮等によって、液化している粒界に、引張がかかることで、生ずるとされている。すなわち、溶接で高温になったフィンと肉盛溶接の境界領域が冷えていくと、その周囲からNi基超合金が徐々に凝固していき、その中心部で低融点化合物が最後に凝固していくこととなる。そのため、前述した溶融境界領域の液化領域に引張応力が集中し、その力が大きいと割れ(高温割れ)が生じてしまう。ただし、液化割れもフィン部のような、拘束の小さな箇所では、許容欠陥以内に収まることが多い。
【0011】
さらに、肉盛溶接後に溶接箇所の強度を出すために溶体化処理が行われている。この処理により、ガンマプライム相をタービン動翼全体に均一に析出させて、タービン動翼の強度を出すようにしている。この溶体化処理にて、タービン動翼を加熱していくと、フィンと肉盛溶接の境界領域内の低融点化合物がその周りにあるNi基超合金よりも先に溶融し、前述した引張応力の作用により割れが生じてしまうことがあった。一種の再熱割れと言える。
【0012】
この割れが生じるメカニズムは、例えば図9および図10に示すように推定されている。なお、この図10にて、矢線は引張残留応力の大きさを示す。
図10(a)に示すように、母材53と母材53との間に母材と共晶を生じ、低融点化合物を作る析出物(炭化物など)60が存在する。このとき、溶接により生じた引張残留応力61a,61bは、所定の大きさで存在するが、一般に、溶接後の残留応力は、材料の降伏応力程度あるとするのが通説である。続いて、タービン動翼に対して溶体化処理が行われる。具体的には、図9に示すように、タービン動翼は、T1(=粒界液化温度)よりも高く、母材53の融点T2よりも低い温度まで加熱処理される。このとき、図10(b)に示すように、析出物60の未反応領域60bの周辺部近傍で液化して液化領域60aが生じる。このときも、材料はまだリラクゼーションしておらず、引張残留応力61a,61bは、溶体化処理前と同じ大きさで存在する。
【0013】
よって、溶接金属自体を割れ難い材料とすることで、溶接金属部では割れ感受性を軽減することができ、液化割れも、フィン部のような拘束の小さな箇所では、施工条件の工夫により、許容欠陥以下のダメージに抑えることが期待できるのに対し、熱影響部での熱処理時の再熱割れを抑制することは困難であった。
【0014】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑み提案されたもので、溶接に起因した割れの発生を抑制したタービン動翼の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決する第1の発明に係るタービン動翼の補修方法は、タービン動翼先端部のフィンの損傷を補修するタービン動翼の補修方法であって、前記フィンの損傷箇所を肉盛溶接し、前記フィンと前記肉盛溶接の境界領域をピーニング処理した後に溶体化処理してタービン動翼のフィンの損傷を補修することを特徴とする。
【0016】
上述した課題を解決する第2の発明に係るタービン動翼の補修方法は、第1の発明に係るタービン動翼の補修方法であって、前記ピーニング処理が、ハンマー式のピーニング装置により行われることを特徴とする。
【0017】
上述した課題を解決する第3の発明に係るタービン動翼の補修方法は、第1または第2の発明に係るタービン動翼の補修方法であって、前記ピーニング処理が、前記肉盛溶接の境界領域の両側部で行われることを特徴とする。
【0018】
上述した課題を解決する第4の発明に係るタービン動翼の補修方法は、第1乃至第3の発明の何れか一つに係るタービン動翼の補修方法であって、前記フィンと前記肉盛溶接との境界領域を溶体化処理した後に当該境界領域の一部を除去する除去加工が行われることを特徴とする。
【0019】
上述した課題を解決する第5の発明に係るタービン動翼の補修方法は、第4の発明に係るタービン動翼の補修方法であって、前記除去加工が、放電による加工であることを特徴とする。
【0020】
上述した課題を解決する第6の発明に係るタービン動翼の補修方法は、第1乃至第5の発明の何れか一つに係るタービン動翼の補修方法であって、前記タービン動翼のフィンが、平面フィンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明に係るタービン動翼の補修方法によれば、タービン動翼先端部のフィンの損傷を補修するタービン動翼の補修方法であって、前記フィンの損傷箇所を肉盛溶接し、前記フィンと前記肉盛溶接の境界領域をピーニング処理した後に溶体化処理してタービン動翼のフィンの損傷を補修することにより、フィンと肉盛溶接の境界領域に圧縮残留応力が付与され、この境界領域に生じた引張残留応力が低減される。その結果、フィンと肉盛溶接の境界領域での割れの発生が抑制される。よって、溶接に起因した割れの発生が抑制される。
【0022】
第2の発明に係るタービン動翼の補修方法によれば、前記ピーニング処理が、ハンマーによるピーニング処理であることにより、この処理自体が容易であるため、フィンと肉盛溶接の境界領域のみを適切に処理できる。すなわち、翼面や翼根部分をマスキングしたり、翼面や翼根への影響を考えて、条件を軽減したり、する必要なく、十分な処理が可能となる。よって、この境界領域に対して圧縮残留応力を適切に付与して、当該境界領域の引張残留応力を確実に低減できる。その結果、フィンと肉盛溶接の境界領域での割れの発生を確実に抑制できる。
【0023】
第3の発明に係るタービン動翼の補修方法によれば、前記ピーニング処理が、前記フィンと前記肉盛溶接の境界領域の両側部で行われることにより、その処理時間が短縮されてその処理費用の増加が抑制される。
上記ピーニング処理により、割れ発生リスクはかなり軽減するが、動翼材は通常、鋳造で製作されており、粒界部分の微量元素の偏析や、上述の炭化物の析出状態等は、粒界の場所場所により、違いがあると考えられ、よって、高温割れしやすさも、粒界により異なる。よって、中には、非常に割れ感受性の高い粒界部分もあり、ピーニング処理をしても、微細な割れに関しては、完全に抑制できないケースも考えられる。
【0024】
第4の発明に係るタービン動翼の補修方法によれば、前記フィンと前記肉盛溶接との境界領域を溶体化処理した後に当該境界領域の一部を除去する除去加工が行われることにより、フィンと肉盛溶接の境界領域に生じた小さな割れや、ピーニング操作により生じた微小な凹凸や微小な塑性加工にともなう変質層などがある場合であっても、すべて除去される。その結果、これら小さな割れや凹凸や変質層などに起因した損傷の発生が抑制される。
【0025】
第5の発明に係るタービン動翼の補修方法によれば、前記除去加工が、放電による加工であることにより、除去加工を確実に行うことができる。フィンと肉盛溶接の境界領域に小さな割れや凹凸や変質層などがある場合であっても、これら小さな割れや凹凸や変質層などがより確実に除去される。その結果、これら小さな割れや凹凸や変質層などに起因した割れの発生がより一層抑制される。
【0026】
第6の発明に係るタービン動翼の補修方法によれば、前記タービン動翼のフィンが、平面フィンであることにより、ピーニング処理を確実に行うことができる。よって、フィンと肉盛溶接の境界領域への圧縮残留応力の付与を確実に行うことができる。その結果、溶接時に生じた引張残留応力をより一層確実に低減できる。これにより、溶接に起因した割れの発生がより確実に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に係るタービン動翼の補修方法の最良の形態について、図面に基づき具体的に説明する。
【0028】
[第一の実施形態]
本発明に係るタービン動翼の補修方法をガスタービン動翼の平面フィンの補修に適用した場合の第一の実施形態につき図1〜3を用いて説明する。
図1は、タービン動翼の補修方法のフローチャートであり、図2はピーニング処理の説明図である。図3は、肉盛溶接の境界領域の説明図である。なお、図3中の矢線の長さは、引張残留応力の大きさを示す。
【0029】
本実施形態に係るタービン動翼の補修方法では、図1に示すように、最初にガスタービン動翼の溶接前手入れが行われる(ステップS1)。例えば、溶接部近傍に付着した異物やろう材、コーティング等が除去される。これにより、溶接不良の発生が抑制される。また、溶接のための専用の治具がフィンに取付けられる。続いて、ステップS2に進み、肉盛溶接が行われる。すなわち、ガスタービン動翼のフィンに溶接金属が肉盛溶接される。溶接方法としては、例えばマイクロプラズマ溶接などが挙げられるが、TIG溶接、レーザ溶接等他の代替工法でもよい。このとき、図3(a)に示すように、肉盛溶接により熱の影響を受けた熱影響部(金属炭化物が母材と共晶して作られる低融点化合物を含む)15に対して、母材13側および溶接金属側への引張残留応力21a,21bが生じる。
【0030】
続いて、ステップS3に進み、溶接後手入れが行われる。具体的には、タブや専用治具の取り外しや、肉盛溶接により熱の影響を受けた箇所(熱影響部)の手入れが行われる。
【0031】
続いて、ステップS4に進み、ピーニング処理が行われる。ピーニング処理は、ハンマー式のピーニング装置により行われる。この処理は、図2に示すように、肉盛溶接により熱影響を受けた熱影響部15の両側部で行われる。これにより、フィンと肉盛溶接の境界領域に対して圧縮残留応力が付与される。よって、このフィンと肉盛溶接の境界領域における引張残留応力22a,22bは、図3(b)に示すように、溶接処理時に生じた引張残留応力21a,21bと比べて低減される。
【0032】
続いて、ステップS5に進み、ガスタービン動翼の表面割れ検査が行われる。この表面割れ検査としては、例えば、蛍光浸透探傷による検査などが挙げられる。これにより、ガスタービン動翼の表面割れの有無が検査される。
【0033】
続いて、ステップS6に進み、ガスタービン動翼に対して溶体化処理が行われる。このとき、図3(c)に示すように、熱影響部15の周囲辺部近傍の一部で上述した粒界析出物が母材と共晶を形成して液化領域15aが生じる。他方、熱影響部15の中心部では、上述した析出物の未反応領域15bとなっている。このときの熱影響部15における引張残留応力22a,22bは、ピーニング処理時の引張残留応力22a,22bと同じ大きさであり、液化領域開口するのに必要な引張応力よりも低くなっているので、割れ発生につながらない。ピーニング処理無しでは、このときに大きな引張応力が残っているので、液化粒界での割れが生じてしまう。ピーニング処理材では、加熱初期に割れが生じないので、そのうち、時間がたつと、材料が高温のためリラクゼーションして、残留応力が完全に除去されるため、割れの危険性はなくなる。冷却時には、ガンマプライム相が析出して、粒内が強化されると同時に、粒界に引張が生ずる。ただし、熱処理の場合は、溶接の冷却過程等と異なり、翼全体が加熱冷却されるため、局所的な熱応力は生じにくく、γ’析出による引張のみでは、冷却時の液化割れの可能性は、溶接時よりも低いと考えられる。
すなわち、熱処理前に適切なピーニング処理を実施し、引張残留応力を低減しておくことによって、残留応力が開放される前の加熱過程で生ずる、割れを回避することができる。
【0034】
続いて、ステップS7に進み、ガスタービン動翼の表面割れ検査が行われ、終了となる。このステップS7におけるガスタービン動翼の表面割れ検査は、上述したステップS5におけるタービン動翼の表面割れ検査と同様の検査である。これにより、溶体化処理後にガスタービン動翼の表面割れの発生の有無が検査される。
【0035】
よって、上述したタービン動翼の補修方法によれば、フィンの損傷箇所を肉盛溶接した後に、フィンと肉盛溶接の境界領域をピーニング処理することによりに当該境界領域に圧縮残留応力が付与され、当該境界領域に生じた引張残留応力が低減される。その結果、フィンと肉盛溶接の境界領域での割れの発生が抑制される。よって、溶接に起因した割れの発生が抑制される。
【0036】
ピーニング処理が、ハンマー式のピーニング装置により行われることにより、この処理自体が容易であるため、フィンと肉盛溶接の境界領域のみを適切に処理できる。よって、この境界領域に対して圧縮残留応力を適切に付与して、当該境界領域の引張残留応力を確実に低減できる。その結果、フィンと肉盛溶接の境界領域での割れの発生を確実に抑制できる。
【0037】
ピーニング処理が、フィンと肉盛溶接の境界領域の両側部で行われることにより、その処理時間が短縮されてその処理費用の増加が抑制される。
【0038】
ガスタービン動翼のフィンが平面フィンであることにより、ピーニング処理を確実に行うことができる。特に、ハンマー式のピーニング装置によりピーニング処理を行う場合には、このピーニング処理を確実に行うことができる。よって、フィンと肉盛溶接の境界領域への圧縮残留応力の付与を確実に行うことができる。その結果、溶接時に生じた引張残留応力をより一層確実に低減できる。これにより、溶接不良に起因した割れの発生がより確実に抑制される。
【0039】
なお、上記では、ガスタービン動翼のフィンの補修に適用した場合を説明したが、ガスタービン以外のタービン動翼のフィンの補修に適用することも可能である。タービン動翼のフィンの補修に適用した場合も、上述したガスタービン動翼のフィンの補修に適用した場合と同様な作用効果を奏する。
【0040】
[第二の実施形態]
本発明に係るタービン動翼の補修方法をガスタービン動翼のフィンの補修に適用した場合の第二の実施形態につき図4および図5を用いて具体的に説明する。
図4は、タービン動翼の補修方法のフローチャートである。図5は、除去、成形加工処理の説明図である。
【0041】
本発明の第二の実施形態に係るタービン動翼の補修方法は、上述した本発明の第一の実施形態に係るタービン動翼の補修方法にてステップS7の表面割れ検査の後に他の処理を追加したものであり、それ以外は同じ手順を有する。
本発明の第二の実施形態に係るタービン動翼の補修方法において、上述した本発明の第一の実施形態に係るタービン動翼の補修方法と同一手順には同一符号を付記しその説明を省略する。
【0042】
本発明の第二の実施形態に係るタービン動翼の補修方法では、図4に示すように、ステップS7にてガスタービン動翼の表面割れ検査を行った後に、ステップS11に進み、除去、成形加工が行われる。この除去、成形加工としては、放電加工やグラインダーによる切削加工などが挙げられる。具体的には、図5に示すように、放電加工により、熱影響部15の表面の一部を除去して、新しいフィン部31が形成される。これにより、フィンと肉盛溶接の境界領域である熱影響部15の表面に小さな割れやピーニングに伴う凹凸や塑性加工にともなう変質層などがある場合であっても、これら小さな割れや凹凸や変質層などが除去される。その結果、これら小さな割れや凹凸や変質層などに起因した割れの発生が抑制される。新しいフィン部31は、元のフィン厚さに対して除去分だけうすくなるが、シール性能としては問題がない。
【0043】
続いて、ステップS12に進み、加工後手入れが行われる。すなわち、新しいフィン部31と母材13との継ぎ目が滑らかになるように処理される。続いて、ステップS13に進み、ガスタービン動翼の表面割れ検査が行われ、終了となる。このガスタービン動翼の表面割れ検査は、上述したステップS5、S7と同様のガスタービン動翼の表面割れ検査である。これにより、ガスタービン動翼の表面割れの有無が検査される。
【0044】
よって、上述したタービン動翼の補修方法によれば、溶体化処理S6を行った後に除去、成形加工S11を行うことにより、上述した第一の実施形態に係るタービン動翼の補修方法と同様な作用効果を奏する他、フィンと肉盛溶接の境界領域である熱影響部15の表面に小さな割れやピーニングに伴う凹凸や変質層などがある場合であっても、これら小さな割れや凹凸や変質層などが除去される。その結果、これら小さな割れや凹凸や変質層などに起因した割れの発生が抑制される。
【0045】
また、除去、成形加工が、放電による加工であることにより、除去、成形加工を確実に行うことができる。フィンと肉盛溶接の境界領域の表面に小さな割れや凹凸や変質層などがある場合であっても、これら小さな割れや凹凸や変質層などがより確実に除去される。その結果、これら小さな割れや凹凸や変質層などに起因した割れの発生がより一層抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るタービン動翼の補修方法の第一の実施形態のフローチャートである。
【図2】本発明に係るタービン動翼の補修方法の第一の実施形態におけるピーニング処理の説明図である。
【図3】本発明に係るタービン動翼の補修方法の第一の実施形態における肉盛溶接の境界領域の説明図である。
【図4】本発明に係るタービン動翼の補修方法の第二の実施形態のフローチャートである。
【図5】本発明に係るタービン動翼の補修方法の第二の実施形態における除去、成形加工処理の説明図である。
【図6】タービン動翼の一例を示す図である。
【図7】従来のタービン動翼の補修方法の説明図である。
【図8】従来のタービン動翼の補修方法における肉盛溶接の境界領域の説明図である。
【図9】従来のタービン動翼の補修方法における熱処理時の温度履歴を示すグラフである。
【図10】従来のタービン動翼の補修方法における肉盛溶接の境界領域の説明図である。
【符号の説明】
【0047】
10,30 ガスタービン動翼
11 翼部
11a 先端部
12 フィン
13 母材
14 溶接金属
15 熱影響部
16 ピーニング処理
31 新しいフィン部
S2 肉盛溶接
S4 ピーニング処理
S11 除去、成形加工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン動翼先端部のフィンの損傷を補修するタービン動翼の補修方法であって、
前記フィンの損傷箇所を肉盛溶接し、前記フィンと前記肉盛溶接の境界領域をピーニング処理した後に溶体化処理してタービン動翼のフィンの損傷を補修する
ことを特徴とするタービン動翼の補修方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたタービン動翼の補修方法であって、
前記ピーニング処理は、ハンマー式のピーニング装置により行われる
ことを特徴とするタービン動翼の補修方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたタービン動翼の補修方法であって、
前記ピーニング処理は、前記フィンと前記肉盛溶接の境界領域の両側部で行われる
ことを特徴とするタービン動翼の補修方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載されたタービン動翼の補修方法であって、
前記フィンと前記肉盛溶接との境界領域を溶体化処理した後に当該境界領域の一部を除去する除去加工が行われる
ことを特徴とするタービン動翼の補修方法。
【請求項5】
請求項4に記載されたタービン動翼の補修方法であって、
前記除去加工は、放電による加工である
ことを特徴とするタービン動翼の補修方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載されたタービン動翼の補修方法であって、
前記タービン動翼のフィンは、平面フィンである
ことを特徴とするタービン動翼の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−191716(P2009−191716A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32648(P2008−32648)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】