説明

ターボファンエンジン

【課題】ファン動翼の下流側に形成される速度欠損領域や乱流がファン静翼に干渉することによって発生する騒音を低減する。
【解決手段】ダクトの流路断面における空気流れの速度分布を均一化して整流する整流手段20をファン動翼とファン静翼との間に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボファンエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターボファンエンジンでは、例えば特許文献1に示すように、ファン動翼が回転駆動されることによって空気流が形成され、この空気流の一部が圧縮されると共に燃料と混合されて混合気が生成される。そして、混合気が燃焼されることによって得られる高温ガスがノズルから噴射されることによって推力を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−345858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ターボファンエンジンでは、ファン動翼が回転駆動された際に、ファン動翼の下流側に速度欠損領域が形成されたり、境界層剥離による乱流が形成されたりする。
このような速度欠損領域や乱流は、ファン動翼から下流側に離間するに連れて解消する。しかしながら、ターボファンエンジンでは、ファン動翼の下流側に、流路(ダクト)に対して固定配置されるファン静翼が存在する。
そして、上述の速度欠損領域や乱流がファン静翼と干渉すると、騒音が発生する。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ターボファンエンジンにおいて、ファン動翼の下流側に形成される速度欠損領域や乱流がファン静翼に干渉することによって発生する騒音を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、回転駆動されるファン動翼と該ファン動翼の下流側にて固定配置されるファン静翼とをダクト内に備えるターボファンエンジンであって、ダクトの流路断面における空気流れの速度分布を均一化して整流する整流手段を上記ファン動翼と上記ファン静翼との間に備えるという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記整流手段が、網状部材であるという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記整流手段が、ダクト内の流れ方向から見て、上記ダクトの流路断面の全域を覆って設けられているという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記整流手段が、上記ダクト内の流れ方向から見て、上記ファン動翼のチップ側のみに設けられているという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第2の発明において、上記整流手段が、上記ダクト内の流れ方向から見て、上記ファン動翼のハブ側のみに設けられているという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、上記第2の発明において、上記整流手段が、上記ダクト内の流れ方向から見て、上記ファン動翼のチップ側とハブ側とのみに設けられ、上記ファン動翼のチップ側に設けられた整流手段と上記ファン動翼のハブ側に設けられた整流手段との間に隙間が設けられているという構成を採用する。
【0013】
第7の発明は、上記第4〜第6いずれかの発明において、上記整流手段が、上記空気流れとの衝突面が上記空気流れの流れ方向に対して傾斜された傾斜面とされているという構成を採用する。
【0014】
第8の発明は、上記第1〜第7いずれかの発明において、上記整流手段が、上記ダクトを形成する壁部材に収納可能とされているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ファン動翼とファン静翼との間に設けられる整流手段によって、ダクトの流路断面における空気流れの速度分布が均一化される。このため、ファン動翼の下流側に形成される速度欠損領域や乱流が整流手段によって解消されるあるいは小さくなる。この結果、速度欠損領域がファン静翼と干渉することを防止することができる。
したがって、本発明によれば、ターボファンエンジンにおいて、ファン動翼の下流側に形成される速度欠損領域や乱流がファン静翼に干渉することによって発生する騒音を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態におけるターボファンエンジンの概略構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態におけるターボファンエンジンの概略構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態におけるターボファンエンジンの概略構成を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態におけるターボファンエンジンの概略構成を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の第5実施形態におけるターボファンエンジンの概略構成を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態におけるターボファンエンジンの変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態におけるターボファンエンジンの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係るターボファンエンジンの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のターボファンエンジンS1の概略構成を模式的に示す断面図であり、(a)が側断面図であり、(b)が(a)のA−A線断面図である。
【0019】
図1に示すように、ターボファンエンジンS1は、アウターカウル1と、インナーカウル2と、ファン3と、低圧圧縮機4と、高圧圧縮機5と、燃焼器6と、高圧タービン7と、低圧タービン8と、シャフト9と、主ノズル10とを備えている。
【0020】
アウターカウル1は、ターボファンエンジンS1のなかで最も上流側に配置された円筒形部材であり、空気の流れ方向の上流端及び下流端が開口端とされ、上流端が空気取込口として機能するものである。
そして、アウターカウル1は、図1に示すように、その内部にインナーカウル2の上流側及びファン3を収容している。
【0021】
インナーカウル2は、アウターカウル1よりも小径の円筒形部材であり、アウターカウル1と同様に、空気の流れ方向の上流端及び下流端が開口端とされている。
このインナーカウル2は、ターボファンエンジンS1の主要部である低圧圧縮機4と、高圧圧縮機5と、燃焼器6と、高圧タービン7と、低圧タービン8と、シャフト9と、主ノズル10等を内部に収容している。
【0022】
そして、本実施形態においては、軸方向(図1の左右方向)においてインナーカウル2が存在しない領域ではアウターカウル1の内部空間が、軸方向においてインナーカウル2が存在する領域ではアウターカウル1とインナーカウル2で挟まれた空間が空気流の流れるダクト11として機能する。
【0023】
なお、インナーカウル2の内部は、アウターカウル1に取込まれた空気の一部及び燃焼器6で生成される高温ガスが通る流路(以下、コア流路と称する)とされている。
また、図1に示すように、アウターカウル1とインナーカウル2とは、空気の流れ方向から見て同心円状に配置されており、隙間を空けて配置されている。そして、アウターカウル1とインナーカウル2との隙間は、アウターカウル1内に取込まれた空気のうち、コア流路に流れこまない残部を外部に排出するバイパス流路とされている。
また、アウターカウル1及びインナーカウル2は、不図示のパイロンにより航空機の機体に取り付けられている。
【0024】
ファン3は、アウターカウル1内に流れ込む空気流を形成するものであり、シャフト9に固定される複数のファン動翼3aと、バイパス流路に配置される複数のファン静翼3bとを備えている。
なお、後に詳説するシャフト9は、空気の流れ方向から見て、半径方向に2つに分割されている。より詳細には、シャフト9は、芯部である中実の第1シャフト9aと、第1シャフト9aを囲って外側に配置される中空の第2シャフト9bとによって構成されている。
そして、ファン動翼3aは、シャフト9の第1シャフト9aに固定されている。
【0025】
低圧圧縮機4は、図1に示すように、高圧圧縮機5よりも上流側に配置されており、ファン3によってコア流路に送り込まれた空気を圧縮するものである。
この低圧圧縮機4は、シャフト9の第1シャフト9aに固定される動翼と、インナーカウル2の内壁に固定される静翼とを備えている。
なお、動翼4aは、環状に等間隔で複数配列されて1つの動翼列を構成している。また、静翼4bも環状に等間隔で複数配列されて1つの静翼列を構成している。そして、低圧圧縮機4では、空気の流れ方向において、静翼列から始まり、静翼列と動翼列とが交互に複数配置されている。
【0026】
高圧圧縮機5は、図1に示すように、低圧圧縮機4よりも下流側に配置されており、低圧圧縮機4から送り込まれた空気をさらに高圧に圧縮するものである。
この高圧圧縮機5は、シャフト9の第2シャフト9bに固定される動翼5aと、インナーカウル2の内壁に固定される静翼5bとを備えている。
なお、低圧圧縮機4と同様に、動翼5aは、環状に等間隔で複数配列されて1つの動翼列を構成している。また、静翼5bも環状に等間隔で複数配列されて1つの静翼列を構成している。そして、空気の流れ方向において、静翼列と動翼列とが交互に複数配置されている。
【0027】
燃焼器6は、高圧圧縮機5の下流側に配置されており、高圧圧縮機5から送り込まれる圧縮空気と、不図示のインジェクタから供給される燃料との混合気を燃焼することによって高温ガスを生成するものである。
【0028】
高圧タービン7は、燃焼器6の下流側に配置されており、燃焼器6から排出される高温ガスから回転動力を回収するものである。
この高圧タービン7は、シャフト9の第2シャフト9bに固定される複数のタービン動翼7aと、コア流路に固定される複数のタービン静翼7bとを備えており、タービン静翼7bに整流された高温ガスをタービン動翼7aで受けて第2シャフト9bを回転駆動する。
【0029】
低圧タービン8は、高圧タービン7の下流側に配置されており、高圧タービン7を通過した高温ガスからさらに回転動力を回収するものである。
この低圧タービン8は、シャフト9の第1シャフト9aに固定される複数のタービン動翼8aと、コア流路に固定される複数のタービン静翼8bとを備えており、タービン静翼8bによって整流された高温ガスをタービン動翼8aで受けて第1シャフト9aを回転駆動する。
【0030】
シャフト9は、空気の流れ方向に向いて配置される棒状部材であり、タービン(高圧タービン7及び低圧タービン8)にて回収された回転動力をファン3及び圧縮機(低圧圧縮機4及び高圧圧縮機5)に伝達するものである。
このシャフト9は、上述のように、半径方向に2つ分割されて、第1シャフト9aと、第2シャフト9bとによって構成されている。
そして、第1シャフト9aは、上流側に低圧圧縮機4の動翼4a及びファン3のファン動翼3aが取り付けられ、下流側に低圧タービン8のタービン動翼8aが取り付けられている。
また、第2シャフト9bは、上流側に高圧圧縮機5の動翼5aが取り付けられ、下流側に高圧タービン7のタービン動翼7aが取り付けられている。
【0031】
主ノズル10は、低圧タービン8のさらに下流側に設けられると共に、ターボファンエンジンS1の後方に向けて低圧タービン8を通過した高温ガスを噴射するものである。
そして、この主ノズル10から高温ガスが噴射される際の反作用によってターボファンエンジンS1の推力が得られる。
【0032】
そして、本実施形態のターボファンエンジンS1は、図1に示すように、ファン動翼3aとファン静翼3bとの間に、整流部材20(整流手段)が設置されている。
この整流部材20は、ファン動翼3a側からファン静翼3b側に空気を通気可能な網状部材から形成されており、ファン動翼3a側から供給される空気を分散させることによってダクト11の流路断面における空気流れの速度分布を均一化して整流するものである。
【0033】
また、本実施形態において整流部材20は、図1(b)に示すように、ダクト11内の流れ方向から見て、ダクト11の流路断面の全域を覆って設けられ、これによって半径方向の高さがダクト11の高さと一致する環状に形状設定されている。また、整流部材20の厚み(空気の流れ方向の厚み)は一定とされている。
【0034】
なお、整流部材20は、網目が矩形状のメッシュ状の網状部材であっても良いし、網目が正六角形状のハニカム状の網状部材であっても良い。
【0035】
そして、このような構成を有するターボファンエンジンS1においては、定常状態では、ファン3の駆動によってアウターカウル1内に空気が取込まれ、その一部がコア流路に流入する。
コア流路に流入した空気は、低圧圧縮機4及び高圧圧縮機5によって順次圧縮され、燃焼器6に供給される。
燃焼器6に供給された圧縮空気は、燃料と混合されて混合気とされる。そして、当該混合気が燃焼器6によって燃焼されることによって高温ガスが生成される。
燃焼器6において生成された高温ガスは、高圧タービン7及び低圧タービン8を通過して主ノズル10からターボファンエンジンS1の後方に噴射される。これによって推進力が得られる。
【0036】
なお、高温ガスが高圧タービン7を通過する際に、高圧タービン7によって回転動力が回収され、第2シャフト9bを介して高圧圧縮機5の動翼5aが回転駆動される。
また、高温ガスが低圧タービン8を通過する際に、低圧タービン8によって回転動力が回収され、第1シャフト9aを介して低圧圧縮機4の動翼4a及びファン3のファン動翼3aが回転駆動される。
【0037】
ここで、ターボファンエンジンS1が稼働されてファン動翼3aが回転駆動されると、ファン動翼3aの下流側に速度欠損領域や乱流が形成される。
これに対して、本実施形態のターボファンエンジンS1では、ファン動翼3aとファン静翼3bとの間に整流部材20が設置されており、整流部材20によって、ダクト11の流路断面における空気流れの速度分布が均一化される。このため、ファン動翼3aの下流側に形成される速度欠損領域や乱流が解消されるあるいは速度欠損領域や乱流が小さくなる。この結果、速度欠損領域や乱流がファン静翼3bと干渉することによって発生する騒音を低減することができる。
【0038】
また、本実施形態のターボファンエンジンS1においては、整流部材20が、網状部材からなる構成を採用しているため、簡素な構造で速度欠損領域や乱流の解消あるいは速度欠損領域や乱流を小さくすることができる。
【0039】
また、本実施形態のターボファンエンジンS1においては、整流部材20がダクト11内の流れ方向から見て、ダクト11の流路断面の全域を覆って設けられている。
このため、ダクト11の流路断面の全域において空気流れが整流され、確実に速度欠損領域や乱流の解消あるいは速度欠損領域や乱流を小さくすることができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0041】
図2は、本実施形態のターボファンエンジンS2の概略構成を模式的に示す断面図であり、(a)が側断面図であり、(b)が(a)のB−B線断面図である。
この図に示すように、本実施形態のターボファンエンジンS2は、上記第1実施形態のターボファンエンジンS1が備える整流部材20に換えて、チップ側整流部材20A(整流手段)を備えている。
【0042】
チップ側整流部材20Aは、図2に示すように、ダクト11内の流れ方向から見て、ファン動翼3aのチップ側(以下、単にチップ側と言う)のみに設けられた網状部材であり、半径方向の高さが一定とされた環状に形状設定されている。
【0043】
ファン動翼3aが回転駆動された場合には、ファン動翼3aのチップから渦が発生し、また特にファン動翼3aによって加速された空気流とダクト11内のチップ側の内壁面との境界層にて乱流が形成されやすい。
上記第1実施形態のように、ダクト11の流路断面の全域に対して整流部材20を設置する場合には、整流効果が高いものの、ダクト11の圧力損失が増大する。
これに対して、本実施形態のターボファンエンジンS2においては、チップ側のみにチップ側整流部材20Aが設けられているため、上述の空気流とダクト11内の内壁面との境界層にて乱流を整流しつつ、ダクト11の流路断面の圧力損失の増大を抑制することができる。
【0044】
なお、チップ側整流部材20Aの半径方向の高さが、ダクト11の高さの5%の高さであっても、騒音低減効果が得られる。
したがって、圧力損失の増大を出来る限り抑制しつつ騒音低減効果を得るためには、チップ側整流部材20Aの半径方向の高さをダクト11の高さの5%程度とすることが考えられる。
【0045】
(第3実施形態)
上記第2実施形態のターボファンエンジンS2がチップ側整流部材20Aを備えていたのに対して、本実施形態のターボファンエンジンS3は、図3に示すように、ハブ側整流部材20Bを備えている。
【0046】
ハブ側整流部材20Bは、図3に示すように、ダクト11内の流れ方向から見て、ファン動翼3aのハブ側のみに設けられた網状部材であり、半径方向の高さが一定とされた環状に形状設定されている。
【0047】
ファン動翼3aが回転駆動された場合には、上述のように特にファン動翼3aによって加速された空気流とダクト11内の内壁面との境界層にて乱流が形成されやすいことから、ダクト11のハブ側壁面近傍にも乱流が多く形成される。
これに対して、本実施形態のターボファンエンジンS3においては、ファン動翼3aのハブ側(以下、単にハブ側と言う)のみにハブ側整流部材20Bが設けられているため、ダクト11の流路断面の圧力損失の増大を抑制しながら騒音の低減を図ることができる。
【0048】
なお、ハブ側整流部材20Bの半径方向の高さが、ダクト11の高さの5%の高さであっても、騒音低減効果が得られる。
したがって、圧力損失の増大を出来る限り抑制しつつ騒音低減効果を得るためには、ハブ側整流部材20Bの半径方向の高さをダクト11の高さの5%程度とすることが考えられる。
【0049】
(第4実施形態)
本実施形態のターボファンエンジンS4は、図4に示すように、上記第2実施形態のターボファンエンジンS2が備えるチップ側整流部材20Aと、ハブ側整流部材20Bとを備えている。
つまり、本実施形態のターボファンエンジンS4は、整流のための網状部材が ダクト11内の流れ方向から見て、ファン動翼3aのチップ側とハブ側とのみに設けられ、ファン動翼3aのチップ側に設けられた網状部材とファン動翼3aのハブ側に設けられた網状部材との間に隙間が設けられている構成を有している。
【0050】
このような構成を有する本実施形態のターボファンエンジンS4によれば、上記第2実施形態のターボファンエンジンS2及び上記第3実施形態のターボファンエンジンS3と比較して、僅かにダクト11内の圧力損失が高まるものの、ダクト11のチップ側で発生した乱流とダクト11のハブ側で発生した乱流とが整流されるため、より大きな騒音低減効果を得ることができる。
【0051】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。なお、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0052】
図5は、本実施形態のターボファンエンジンS5の概略構成を模式的に示す断面図である。
この図に示すように、本実施形態のターボファンエンジンS5は、ダクト11のチップ側に設置されるチップ側整流部材20Cと、ダクト11のハブ側に設置されるハブ側整流部材20Dとを備えている。
これらのチップ側整流部材20Cとハブ側整流部材20Dとは、空気流れとの衝突面が空気流れの流れ方向に対して傾斜された傾斜面とされている。
このような形状を有するチップ側整流部材20Cとハブ側整流部材20Dとを備えるターボファンエンジンS5によれば、空気流がチップ側整流部材20Cとハブ側整流部材20Dとに衝突する際に急激に流れ方向が変化することを防止し、圧力損失が増大することを抑制することができる。
【0053】
なお、ターボファンエンジンにおいて、騒音の低減が求められるのは、特に離陸時及び着陸時であり、高度が高い巡航時にはあまり騒音の低減が必要とされていない。
このため、図5(b)に示すように、チップ側整流部材20Cとハブ側整流部材20Dとがアウターカウル1やインナーカウル2に収容される構成を採用しても良い。
このような構成を採用することによって、巡航時におけるダクト11内の圧力損失を低減させてターボファンエンジンの燃費を向上させることが可能となる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0055】
例えば、上記第2実施形態及び上記第4実施形態のチップ側整流部材20Aを上記第5実施形態のチップ側整流部材20Cに換えることも可能である。
また、上記第2実施形態及び上記第4実施形態のハブ側整流部材20Bを上記第5実施形態のチップ側整流部材20Dに換えることも可能である。
【0056】
また、上記実施形態において本発明の整流手段が網状部材である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、整流手段が、例えば、パンチングメタル等からなる他の形態を採用することも可能である。
【0057】
また、例えば、図6及び図7に示すように、上記第2実施形態のターボファンエンジンS2に対して、収納機構30を取り付けることによって、整流部材20Aをアウターカウル1(ダクトを形成する壁部材)に収納可能に構成することもできる。
なお、図6は整流部材20Aがダクト11内に配置された状態を示し、図7は整流部材20Aが収納された状態を示す。
そして、図6及び図7に示すように、収納機構30は、整流部材20Aを出し入れするための開閉扉31と、当該開閉扉31を移動させる第1アクチュエータ32と、連結部33を介して整流部材20Aを移動する第2アクチュエータ34及び第3アクチュエータ35を備えている。
なお、上記第2実施形態のターボファンエンジンS2に対して収納機構30を取り付ける場合には、アウターカウル1内は中空とされ、また整流部材20Aは周方向に複数に分割されている。
このような収納機構30を備えるターボファンエンジンS2によれば、図6及び図7に示すように、整流部材20Aをアウターカウル1内に収納することが可能となる。
同様に、ハブ側整流部材をインナーカウル内に収容してもよいし、流路全域を覆う整流部材をチップ側とハブ側に分割してそれぞれアウターカウルとインナーカウルに収納してもよい。
【符号の説明】
【0058】
S1〜S5……ターボファンエンジン、3a……ファン動翼、3b……ファン静翼、11……ダクト、20……整流部材(整流手段)、20A,20C……チップ側整流部材(整流手段)、20B,20D……ハブ側整流部材(整流手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるファン動翼と該ファン動翼の下流側にて固定配置されるファン静翼とをダクト内に備えるターボファンエンジンであって、
ダクトの流路断面における空気流れの整流手段を前記ファン動翼と前記ファン静翼との間に備えることを特徴とするターボファンエンジン。
【請求項2】
前記整流手段は、網状部材であることを特徴とする請求項1記載のターボファンエンジン。
【請求項3】
前記整流手段は、ダクト内の流れ方向から見て、前記ダクトの流路断面の全域を覆って設けられていることを特徴とする請求項2記載のターボファンエンジン。
【請求項4】
前記整流手段は、前記ダクト内の流れ方向から見て、前記ファン動翼のチップ側のみに設けられていることを特徴とする請求項2記載のターボファンエンジン。
【請求項5】
前記整流手段は、前記ダクト内の流れ方向から見て、前記ファン動翼のハブ側のみに設けられていることを特徴とする請求項2記載のターボファンエンジン。
【請求項6】
前記整流手段は、前記ダクト内の流れ方向から見て、前記ファン動翼のチップ側とハブ側とのみに設けられ、前記ファン動翼のチップ側に設けられた整流手段と前記ファン動翼のハブ側に設けられた整流手段との間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項2記載のターボファンエンジン。
【請求項7】
前記整流手段は、前記空気流れとの衝突面が前記空気流れの流れ方向に対して傾斜された傾斜面とされていることを特徴とする請求項4〜6いずれかに記載のターボファンエンジン。
【請求項8】
前記整流手段は、前記ダクトを形成する壁部材に収納可能とされていることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載のターボファンエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−241580(P2012−241580A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111280(P2011−111280)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】