説明

ターボ分子ポンプ

【課題】 ポンプ本体の大型化を招くことなくポンプ本体と制御部とを一体化することができるターボ分子ポンプの提供。
【解決手段】 モータ8や磁気軸受を構成する電磁石61〜63等が設けられたベース2に電源収納部21を形成し、その電源収納部21に電源制御部を構成するDC電源部やインバータ部や軸受駆動回路等をそれぞれ収納するようにした。電源収納部21は、従来利用されていなかったベース2の電磁石63を含むアキシャル磁気軸受部分を囲む領域に形成されているため、ポンプ本体を大型化することなくポンプ本体と電源部とを一体化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気軸受式のターボ分子ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプにおいて、ポンプ本体とその制御装置とを一体化したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−173293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のターボ分子ポンプでは、単にポンプ本体の下側にさらに制御装置を配置する構成としているため、従来のポンプ本体だけの場合に比べて大型化してしまうという欠点が合った。そのため、より広いポンプ設置スペースが必要となり、ターボ分子ポンプが装着される装置の大型化を招いてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、回転体を軸支する磁気軸受をベースにより保持して成るポンプ本体と、そのポンプ本体を制御する制御部とを備えた磁気軸受式のターボ分子ポンプに適用され、回転体の軸方向下端面とポンプ本体の下端面との間の領域および回転体の外周面と磁気軸受の外周面との間の領域を満たすドーナツ形状領域に、制御部を設けたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のターボ分子ポンプにおいて、ベースのドーナツ形状領域に、制御部を収納する制御部収容スペースを形成したものである。
請求項3の発明は、請求項2に記載のターボ分子ポンプにおいて、ベースを磁気軸受が設けられた第1のベース部と制御部収容スペースが形成された第2のベース部とに分割し、第1のベース部と第2のベース部との間に断熱部を設けたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、回転体の軸方向下端面とポンプ本体の下端面との間の領域および回転体の外周面と磁気軸受の外周面との間の領域を満たすドーナツ形状領域に、制御部を設けたので、ポンプ本体の大型化を招くことなくポンプ本体と制御部とを一体化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は本発明によるターボ分子ポンプの実施の形態を示す図である。図1に示すポンプは磁気軸受式のターボ分子ポンプであり、ロータ5が固定されているシャフト7は、ラジアル磁気軸受を構成する電磁石61,62とアキシャル磁気軸受を構成する電磁石63とで非接触支持され、モータ8によって回転駆動される。電磁石61,62,63やモータ8が設けられているベース2には、電源・制御回路が設けられる電源収納部21が形成されている。ケーシング4に形成された吸気口フランジ4aを装置100のチャンバに固定することにより、ターボ分子ポンプ1が装置100に取り付けられる。
【0008】
ターボ分子ポンプ1のポンプ部は、回転翼91と固定翼92とで構成されるターボポンプ部9Aと、ターボポンプ部9Aの下流側(図示下側)に設けられた筒状のドラッグポンプ部9Bとによって構成される。磁気浮上状態のロータ5をモータ8により高速回転すると、吸気口フランジ4aの吸気口から吸入されたガスはターボポンプ部9Aおよびラッグポンプ部9Bにより図示下方に排気され、さらに、排気孔24を介してポンプ外へと排出される。排気孔24に設けられた排気口フランジ11にはバックポンプが接続される。
【0009】
ベース2に形成された電源収納部21は、電磁石63を含むアキシャル磁気軸受部分を囲むようにリング状に形成されている。すなわち、電源収納部21は、符号T1で示したロータ5の下端面とポンプ本体の下端面との間の領域であって、かつ、アキシャル軸受の外径T2とロータ5の外径T3との間の領域であるハッチングを施したドーナツ形状領域Rに形成されている。
【0010】
ケーシング4と同程度の外径を有するベース2において、アキシャル磁気軸受部分はベース2の中央に配置され、アキシャル磁気軸受部分の外径はベース2の外径に比べてほぼ半分程度である。従来のターボ分子ポンプでは、ベース2のこの部分には排気口フランジ11が設けられる排気孔24が形成される程度で、有効利用されていなかった。そして、従来の一体型ターボ分子ポンプでは、ポンプ本体のベースの下方に制御部を一体化していたので、ポンプ本体の高さ方向寸法が大きくなるという欠点を有していた。
【0011】
一方、本実施の形態のターボ分子ポンプ1では、有効利用されていなかったベース2のアキシャル磁気軸受部分の周囲に電源収容部21を形成し、その電源収容部21に電源制御部を構成するDC電源部やインバータ部や軸受駆動回路等をそれぞれ収納するようにした。DC電源部にはコネクタ22を介して交流電力が外部から供給される。ベース2の外表面には、電源用のコネクタ22の他にI/O用のコネクタなども設けられている。
【0012】
電源部とポンプ本体とが別々のターボ分子ポンプでは、電源部とポンプ本体とが中継用のケーブルを用いて接続されるが、本実施の形態では、電源収納部21内の回路部とベース2に設けられた電磁石61,62,63やモータ8とが中継ケーブルを用いずに直に接続される。また、電源収納部21に収納されるプリント基板23をリング形状やリング形の一部を欠いた形状とすることにより、基板1枚あたりの面積を大きくすることができる。そのため、プリント基板23の枚数を少なくすることができ、電源収納部21の容積をより小さくすることができる。
【0013】
なお、図1に示すターボ分子ポンプ1では、冷却水配管12a,12bが、ベース2のドラッグポンプ部9Bの近辺および電源収納部21の外周面にそれぞれ設けられている。これは、冷却水配管12aによりベース2のポンプ本体側を主に冷却し、冷却水配管12bによりベース2の電源収容部21が設けられた部分を主に冷却するようにしたものであるが、いずれか一方だけを設けて、それでベース2のポンプ本体側と電源収容部21が設けられた部分との両方を冷却するようにしても良い。
【0014】
ターボ分子ポンプを半導体製造装置等で使用する場合、プロセスガスの一部がポンプ内部に析出して堆積するのを防止するために、ポンプ本体を加熱して使用することがある。例えば、図1に示したターボ分子ポンプの場合であれば、ドラッグポンプ部9Bが設けられているベース2の外周やケーシング4の外周にヒータを取り付けて加熱することになる。冷却水配管12bはそのような使用を想定して設けられたものであり、冷却水配管12bで冷却することにより高温となっているポンプ本体側から電源部への熱伝達を阻止し、電源部が高温となるのを防止している。
【0015】
図2は上述したターボ分子ポンプ1の変形例を示す図である。図1に示したターボ分子ポンプ1では、モータ8や電磁石61〜63やドラッグポンプ部9Bの固定側が設けられているベース2の部材が、電源収納部21の壁部を直接形成していた。一方、図2に示すターボ分子ポンプ1’では、電源収納部21とモータ8等が設けられているベース2の部分との間に断熱領域を設けた。具体的には、ベース2を、電磁石61〜63やモータ8等が設けられたポンプベース部2Aと電源収納部21が形成された電源収納ベース部2Bとに分離し、電源用回路部品を電源収納ベース部2Bに収納した。電源収納ベース部2Bはボルト30によりポンプベース部2Aに接続されるが、ポンプベース部2Aと電源収納ベース部2Bとの間には断熱材からなるスペーサ31が設けられている。
【0016】
ただし、ポンプベース部2Aと電源収納ベース部2Bとは電気的接触が図られ、同電位に保たれる。例えば、プラズマ装置などにポンプ本体を取り付けた場合にはポンプ本体に放電するおそれがあるが、そのような場合であっても、ポンプベース部2Aと電源収納ベース部2Bとが同電位となっているので、放電の影響を受け難くなるという利点がある。
【0017】
このように、断熱性のスペーサ31を設けて隙間を形成したことにより、ターボ分子ポンプ1’のポンプ本体を加熱して使用する場合に、ポンプベース部2Aから電源収納ベース部2Bへの熱伝達を非常に低減することができる。さらに、電源収納ベース部2Bは冷却水配管12bを流れる冷却水により冷却されるため、図1に示したターボ分子ポンプと比べ温度上昇を効果的に防止することができる。なお、電源収納ベース部2B内の回路部とベース2に設けられた電磁石61,62,63やモータ8とは、図1の場合と同様に仲介ケーブルを介さず直に接続されている。
【0018】
上述したように、本実施の形態のターボ分子ポンプでは、ポンプ本体のベース部分に電源収容スペースを形成してそこに電源部品を収容するようにしたので、従来の一体型ターボ分子ポンプのようにポンプ本体の幅方向寸法や高さ方向寸法を大きくすることなく、ポンプ本体と電源との一体化をすることができる。また、ベースの電源部分と本体側部分との間に断熱領域を設けて本体側からの熱伝達を低減することで、電源部分の温度上昇を低減することができる。
【0019】
以上説明した実施の形態と特許請求の範囲の要素との対応において、ロータ5およびシャフト7は回転体を、電源収納部21は制御部収容スペースを、ポンプベース部2Aは第1のベース部を、電源収納ベース部2Bは第2のベース部を、スペーサ31およびそれにより形成される隙間は断熱部をそれぞれ構成する。なお、以上の説明はあくまでも一例であり、発明を解釈する際、上記実施の形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係に何ら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるターボ分子ポンプ1を示す図である。
【図2】変形例のターボ分子ポンプ1’を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1,1’ ターボ分子ポンプ
2 ベース
4 ケーシング
5 ロータ
7 シャフト
8 モータ
21 電源収納部
23 プリント基板
61〜63 電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体を軸支する磁気軸受をベースにより保持して成るポンプ本体と、そのポンプ本体を制御する制御部とを備えた磁気軸受式のターボ分子ポンプにおいて、
前記回転体の軸方向下端面と前記ポンプ本体の下端面との間の領域および前記回転体の外周面と前記磁気軸受の外周面との間の領域を満たすドーナツ形状領域に、前記制御部を設けたことを特徴とするターボ分子ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のターボ分子ポンプにおいて、
前記ベースの前記ドーナツ形状領域に、前記制御部を収納する制御部収容スペースを形成したことを特徴とするターボ分子ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載のターボ分子ポンプにおいて、
前記ベースを前記磁気軸受が設けられた第1のベース部と前記制御部収容スペースが形成された第2のベース部とに分割し、前記第1のベース部と前記第2のベース部との間に断熱部を設けたことを特徴とするターボ分子ポンプ。

【図1】
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【図2】
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