説明

タール含有ガスの改質用触媒及びその製造方法、並びにタール含有ガスの改質方法

【課題】石炭やバイオマス等の炭素質原料を熱分解した時に発生し、重質鎖式炭化水素又は縮合多環芳香族炭化水素等のタールを含むと共に硫化水素を高濃度で含む粗ガス又は精製ガスを、触媒存在下で、高性能且つ安定的に軽質炭化水素に転換するタール含有ガスの改質方法を提供する。
【解決手段】aM・bNi・cMg・dO(式中、aは質量%であり、0.01%〜20%、b、c、dは、モル比であり、b+c=1、0.01≦b≦0.99、0.01≦c≦0.99、dは、酸素が陽性元素と電気的中性を保つのに必要な数、Mは、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウムから選ばれる少なくとも1種類の元素。)で表される複合酸化物、また必要に応じてシリカ、アルミナのうち少なくとも1種から選ばれる酸化物との複合酸化物からなることを特徴とするタール含有ガスの改質用触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素質原料を熱分解した際に発生するタール含有ガスを改質する方法であって、水素、一酸化炭素、メタンを中心とするガスへ変換するタール含有ガスの改質方法と、そこで用いられるタール含有ガスの改質用触媒の製造方法、及びタール含有ガスの改質用触媒が劣化した際の再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼業は、我が国の総エネルギー消費量の約1割を占めるエネルギー多消費産業であるが、高炉法一貫製鉄プロセスの内、約4割が未利用廃熱である。その内、回収され易いが従来は利用されていない熱源として、コークス炉から発生する高温の未精製COG(コークス炉ガス、以下、粗COG)の顕熱がある。
【0003】
この粗COGの顕熱の回収技術として、従来から間接熱回収を主体とする方法が特許文献1及び2に提案され、コークス炉上昇管内部、又は、上昇管部と集気管部の間に伝熱管を設け、この伝熱管内部に熱媒体を循環流通させて顕熱を回収する方法が開示されている。しかし、これらの方法では、伝熱管外表面への発生COGに随伴するタール、軽油等の付着、炭化・凝集による緻密化が進行し、経時伝熱効率の低下・熱交換効率低下という問題が不可避である。
【0004】
これら問題点を解決する技術として、伝熱管外表面に結晶性アルミノシリケート、結晶性シリカ等の触媒を塗布し、触媒を介してタール等の付着物を低分子量の炭化水素に分解し、伝熱効率を安定維持する方法が、特許文献3に開示されている。しかし、この方法も粗COG顕熱の間接熱回収技術の域を出ず、また、タール等の重質炭化水素の分解生成物がガス燃料等として利用し易い軽質炭化水素になるかどうか等、全く考慮されていない。さらには、粗COG中に含有する高濃度の硫化水素等の触媒被毒性硫黄化合物成分による分解活性の経時劣化の影響についても検討されていない。
【0005】
高温で生成する反応性ガスにその顕熱を利用して、触媒存在下、直接化学反応を導入して化学エネルギーに転換する技術は殆どなく、従来、高温ガスの顕熱は間接的に回収されて、若しくは全く利用されず、冷却されたガスを種々処理をして利用するケースが殆どである。ただ、粗COGが顕熱を有しているといっても、硫黄化合物の含有量が2000ppmを越え、タール等の重質炭化水素の分解反応に関する触媒反応設計の観点からは極めて実現が困難と考えられ、これまで、特許文献4に記載されているように、検討はされていたが、改質活性は必ずしも十分とはいえなかった。
【0006】
また、エネルギー変換触媒は、硫黄被毒や炭素析出を受け易いため、上記高濃度硫黄化合物を含んだ雰囲気下、炭素析出を起こし易い縮合多環芳香族主体のタールの分解反応に適する触媒を製造することが困難であった。また、一旦反応を進行させて性能劣化した後、再生のため空気燃焼することにより、担持金属粒子のシンタリング(粗大化)が起こり易く、再生による活性の再現を実現することも困難であった。
【0007】
また、粗COG中に含まれる不純物(H2S、COS、芳香族炭化水素、タール、ダスト等)を常法による精製(例えば、特許文献5)をしたもの(以下精製COG)は、都市ガス等の燃料や、化学合成用の原料として使用されてきている。さらに、コークス炉ガスを用いてメタノール合成プラントを建設する際には、常法による精製ガスは、低級炭化水素や芳香族炭化水素が低濃度だが残留しており、それらが改質装置の触媒の失活を起こす恐れがあるため、それを避けるべく、市販の触媒を用いたプレリフォーミングを行った後、改質装置で合成ガスを製造する製造システムが開示されている(例えば、特許文献6)。しかしながら、後段の合成ガスを製造する改質装置に用いる触媒については言及されていない等、粗COGや精製COGの改質触媒に関してはこれまで検討されていなかった。
【0008】
一方、炭化水素の改質用原料として一般に用いられるメタンの改質用触媒としては、古くから数多くの研究がなされており、例えば、メタンの部分酸化触媒としては、非特許文献1のように、ニッケル、マグネシウム、アルミニウムの溶液から沈殿物を経由して製造される触媒、メタンの水蒸気又は二酸化炭素による改質用触媒としては、特許文献7のように、ニッケル、マグネシウム、カルシウムで構成される酸化物に第3B族元素、第4A族元素、第6B族元素、第7B族元素、第1A族元素及びランタノイド元素の少なくとも一種を混合した触媒が検討されている。
【0009】
また、メタンを主成分とする低級炭化水素との水蒸気改質触媒としては、特許文献8のように、マグネシウム、アルミニウム、ニッケルを構成元素とし、且つ、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Zn、Co、Ce、Cr、Fe、Laから選ばれる一種又は二種以上の元素を含有する触媒が検討されている。
【0010】
また、非特許文献2のように、メタンの二酸化炭素、スチーム及び酸素によるトリリフォーミング反応用としてセリア、ジルコニア、及びセリアジルコニア化合物へのNi担持触媒と共に、セリアジルコニア化合物へのマグネシア及びNi担持触媒が検討されている。
【0011】
一方、都市ガス、イソオクタン、灯油、プロパン等の原料中に硫黄分を含み且つ比較的に低級な炭化水素から燃料電池用水素を発生する触媒としては、特許文献9のように、アルミニウムとマグネシウムからなる多孔質担体に珪素、ジルコニウム、セリウム、チタン、アルミニウム、イットリウム、スカンジウム、第1A族元素、第2A族元素から選ばれる少なくとも1種類以上の元素の酸化物が検討されており、さらに、プロパン、ブタン、都市ガス等の低級炭化水素からの水素製造触媒として、特許文献10のように、マグネシウム、アルミニウム、ニッケルを構成元素とし、且つ珪素を含有する触媒等が提案、開示されている。
【0012】
しかし、これらの触媒の対象となる炭化水素は、いずれも低級且つ鎖式炭化水素で分解し易く、且つ、原料中に含まれる触媒毒となり得る硫黄分は、特許文献9に示されているような、高々50ppm以下のものに限られており、これら公知の触媒では、タール含有ガスにおいて硫黄分が高濃度に含まれるガス雰囲気下、タール等重質炭化水素を改質することへの検討は全く行われていなかった。
【0013】
さらに、近年の地球温暖化問題により、二酸化炭素排出量削減の有効手段として、炭素質原料の一つであるバイオマス利用が注目されており、バイオマスの高効率エネルギー転換に関する研究が各所で行われている。また、昨今のエネルギー資源確保の観点から、過去精力的に行われてきた石炭の有効活用に関する研究も実用化に向けて見直されてきている。
【0014】
その中で、バイオマスの乾留で生成するタールをガス化して、粗ガス(未精製ガス)を生成し、その顕熱を利用する方法については、特に触媒を用いたタールの触媒改質を中心に、特許文献11のように貴金属を使用した複合酸化物を始めとして種々検討されているが、触媒寿命が短いという課題を有していた。
【0015】
また、特許文献12のように、Ni、Co、Feの内の1種又は2種以上の酸化物、Ce、Zr、Ti、Mgの内の1種又は2種以上の酸化物、及び、白金族元素をシリカ、アルミナのいずれかの担体へ担持した触媒が検討されているが、実用の観点からすると、改質活性並びに触媒寿命のさらなる改善が必要であるという課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特公昭59−44346号公報
【特許文献2】特開昭58−76487号公報
【特許文献3】特開平8−134456号公報
【特許文献4】特開2003−55671号公報
【特許文献5】特開2000−248286号公報
【特許文献6】特開2008−239443号公報
【特許文献7】特開2000−469号公報
【特許文献8】特開2006−61760号公報
【特許文献9】特開2007−313496号公報
【特許文献10】特開2008−18414号公報
【特許文献11】特開2005−53972号公報
【特許文献12】特開2008−132458号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】F.Basile et al., Stud. Surf. Sci. Catal., Vol.119(1998)
【非特許文献2】C.Song et al., Catalysis Today, Vol.98(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、石炭やバイオマス等の炭素質原料を熱分解したときに発生し、重質鎖式炭化水素や縮合多環芳香族炭化水素等からなるタールを含むと共に硫化水素を高濃度で含む粗ガス又は精製ガス等のタール含有ガスを、触媒存在下で、高性能且つ安定的に一酸化炭素、水素等の軽質化学物質に転換するタール含有ガスの改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、石炭やバイオマスを熱分解した際に発生する、硫化水素を高濃度で含むタール含有ガスについて、硫化水素を高濃度で含む粗ガスや精製ガスを触媒と接触させて、タール又はガス中の炭化水素成分を、一酸化炭素、水素等の軽質化学物質に転換する方法について鋭意検討した。その結果、触媒として、ニッケルとマグネシウムからなる固溶体酸化物に白金族元素を担持してなる金属酸化物を用いることにより、硫化水素を高濃度で含み、且つ縮合多環芳香族炭化水素等からなるタールを多く含む粗ガスや精製ガスを改質するにあたり、芳香族炭化水素を開環するのを促進して、一酸化炭素や水素等の軽質化学物質へ安定的に変換できることを見出して、発明を為すに至った。
【0020】
また、発明者等がさらに鋭意検討した結果、ニッケルとマグネシウムからなる固溶体酸化物に、シリカ、アルミナ、ゼオライトから選ばれる少なくとも1種類の酸化物を混合した複合酸化物に、白金族元素を担持してなる金属酸化物を用いることにより、硫化水素を高濃度で含み、且つ縮合多環芳香族炭化水素等からなるタールを多く含む粗ガスや精製ガスを改質するにあたり、芳香族炭化水素を開環するのを促進して、一酸化炭素や水素等の軽質化学物質へ安定的に変換できることを見出して、発明を為すに至った。
【0021】
また、発明者等がさらに鋭意検討した結果、ニッケル化合物、及び、マグネシウム化合物を含む混合溶液から共沈により沈殿物を生成し、当該共沈時又は前記沈殿物の生成後に、ケイ素成分又はアルミニウム成分を加えて少なくとも乾燥及び焼成することにより、活性種金属の微細析出が可能で高速反応が可能であり、析出した活性金属がマトリクス(母相)と強固に結合するためシンタリング(粗大化)し難く、活性低下を抑制可能であり、さらに析出した活性種金属を焼成によりマトリクスへ再度吸蔵でき、再生が可能である等の種々の特徴を有する固相晶析法に着眼した。
【0022】
予め活性種であるニッケル元素をマトリクスとなるマグネシア、シリカ又はアルミナ等と化合物化し、そこへ、さらにスピルオーバー効果を有する白金族元素を担持させることにより、比較的低温でもニッケルマグネシア固溶体からのNi粒の析出を促進して、タール等の重質炭化水素等の炭素析出を起こし易い成分を多量に含んだ過酷な状況の下でも、高い触媒活性を発揮して軽質炭化水素へ変換できる製造法を見出し、発明を為すに至った。
【0023】
加えて、発明者等がさらに鋭意検討した結果、ニッケル化合物、及び、マグネシウム化合物を含む溶液から共沈により沈殿物を生成し、当該共沈物を乾燥及び焼成してニッケル、及び、マグネシウムの酸化物を生成し、当該酸化物に、シリカ粉末と水、又は、シリカゾル、又は、アルミナ粉末と水、又は、アルミナゾル、又は、ゼオライト粉末と水を混合して混合物を生成し、当該混合物を少なくとも乾燥及び焼成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して製造された触媒は、タール含有ガスの改質活性が高く且つ長時間改質することができ、炭素析出や硫黄被毒により触媒性能が劣化しても、水蒸気又は空気の少なくともいずれかを接触させることで、再生することができ、この再生した触媒は、ほぼ劣化前の性能を保持していることを見出して、より長期に安定した運転が可能となるタール含有ガスの改質方法を為すに至った。
【0024】
さらに、発明者等が鋭意検討した結果、ニッケル化合物、マグネシウム化合物、及び、ケイ素化合物又はアルミニウム化合物の混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケル、マグネシウム、及び、ケイ素又はアルミニウムを共沈させて沈殿物を生成し、当該沈殿物を少なくとも乾燥及び焼成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して製造された触媒は、タール含有ガスの改質活性が高く且つ長時間改質することができ、炭素析出や硫黄被毒により触媒性能が劣化しても、水蒸気又は空気の少なくともいずれかを接触させることで、再生することができ、この再生した触媒は、ほぼ劣化前の性能を保持していることを見出して、より長期に安定した運転が可能となるタール含有ガスの改質方法を為すに至った。
【0025】
加えて、発明者等がさらに鋭意検討した結果、前記触媒は、タール含有ガスの改質の改質を長時間実施して、炭素析出や硫黄被毒により触媒性能が劣化しても、水蒸気又は空気の少なくともいずれかを接触させることで、再生することができ、この再生した触媒は、ほぼ劣化前の性能を保持していることを見出して、より長期に安定した運転が可能となるタール含有ガスの改質方法を為すに至った。
【0026】
以下に、その特徴を示す。
【0027】
(1)aM・bNi・cMg・dO
(式中、aは質量%であり、触媒全体に対して0.01%〜20%、b、c、dは、モル比であり、b+c=1、0.01≦b≦0.99、0.01≦c≦0.99、dは、酸素が陽性元素と電気的中性を保つのに必要な数、Mは、白金族であり、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウムから選ばれる少なくとも1種類の元素である。)
で表される複合酸化物であることを特徴とするタール含有ガスの改質用触媒である。また、
(2)前記複合酸化物に、シリカ、アルミナ、ゼオライトから選ばれる少なくとも1種類の酸化物を加えてなることを特徴とする(1)記載のタール含有ガスの改質用触媒である。また、
(3)前記シリカ、アルミナ、ゼオライトから選ばれる少なくとも1種類の酸化物の含有量が、複合酸化物全体に対し1〜90質量%であることを特徴とする(2)記載のタール含有ガスの改質用触媒である。また、
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質用触媒を用いることを特徴とするタール含有ガスの改質方法である。また、
(5)前記タール含有ガス改質用触媒の存在下又は還元後の前記触媒の存在下において、炭素質原料を熱分解した際に発生するタール含有ガス中の水素、二酸化炭素、及び、水蒸気を接触させて、前記タール含有ガス中のタールを改質してガス化することを特徴とする(4)に記載のタール含有ガスの改質方法である。また、
(6)前記タール含有ガス改質用触媒の存在下又は還元後の前記触媒の存在下において、炭素質原料を熱分解した際に発生するタール含有ガスに、外部から水素、二酸化炭素、水蒸気の少なくともいずれかを接触させて、前記タール含有ガスを改質してガス化することを特徴とする(4)又は(5)に記載のタール含有ガスの改質方法である。また、
(7)前記タール含有ガスが、硫化水素を含むタール含有ガスであることを特徴とする(4)〜(6)のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法である。また、
(8)前記水素、二酸化炭素、水蒸気の少なくともいずれかに、さらに酸素含有ガスを加えて、タール含有ガスに接触させることを特徴とする(4)〜(7)のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法である。また、
(9)前記タール含有ガスが、石炭を乾留したときに発生する乾留ガスであることを特徴とする(4)〜(8)のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法である。また、
(10)前記タール含有ガスが、コークス炉から排出されるコークス炉ガスであることを特徴とする(4)〜(9)のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法である。また、
(11)前記タール含有ガスが、木質系バイオマス、食品廃棄物系バイオマスの少なくともいずれかを乾留したときに発生する乾留ガスであることを特徴とする(4)〜(7)のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法である。また、
(12)(1)に記載のタール含有ガス改質用触媒の製造方法であって、
ニッケル化合物、マグネシウム化合物を含む混合溶液から共沈により沈殿物を生成し、当該沈殿物を少なくとも乾燥及び焼成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して改質用触媒を製造することを特徴とするタール含有ガスの改質に用いられる触媒の製造方法である。また、
(13)(2)又は(3)に記載のタール含有ガス改質用触媒の製造方法であって、
ニッケル化合物、マグネシウム化合物を含む混合溶液から共沈により沈殿物を生成し、当該共沈時又は前記沈殿物の生成後に、ケイ素又はアルミニウム成分を加えて、ニッケル、マグネシウム、及び、ケイ素又はアルミニウムを含有した混合物とし、当該混合物を少なくとも乾燥及び焼成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して改質用触媒を製造することを特徴とするタール含有ガスの改質に用いられる触媒の製造方法である。また、
(14)(2)又は(3)に記載のタール含有ガス改質用触媒の製造方法であって、
ニッケル化合物及びマグネシウム化合物の混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケル及びマグネシウムを共沈させて沈殿物を生成し、当該沈殿物を乾燥及び焼成してニッケル及びマグネシウムの酸化物を生成し、当該酸化物に、シリカ粉末と水、又は、シリカゾル、又は、アルミナ粉末と水、又は、アルミナゾル、又は、ゼオライト粉末と水を加えて混合して混合物を生成し、当該混合物を少なくとも乾燥及び焼成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して改質用触媒を製造することを特徴とするタール含有ガスの改質に用いられる触媒の製造方法である。また、
(15)白金族元素の溶液を担持する前の前記混合物を、乾燥、粉砕及び焼成、又は、乾燥、か焼、粉砕、成型及び焼成して触媒を製造することを特徴とする(13)記載のタール含有ガスの改質用触媒の製造方法である。また、
(16)(2)又は(3)に記載のタール含有ガス改質用触媒の製造方法であって、
ニッケル化合物及びマグネシウム化合物との混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケル及びマグネシウムを共沈させて沈殿物を生成し、当該沈殿物に、シリカ粉末と水、又は、シリカゾル、又は、アルミナ粉末と水、又は、アルミナゾル、又は、ゼオライト粉末と水を加えて混合して混合物を生成し、当該混合物を、少なくとも乾燥及び焼成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して改質用触媒を製造することを特徴とするタール含有ガスの改質に用いられる触媒の製造方法である。また、
(17)白金族元素の溶液を担持する前の、前記混合物を乾燥、粉砕及び焼成、又は、乾燥、か焼、粉砕、成型及び焼成して触媒を製造することを特徴とする(15)記載のタール含有ガスの改質用触媒の製造方法である。また、
(18)(2)又は(3)に記載のタール含有ガス改質用触媒の製造方法であって、
ニッケル化合物、マグネシウム化合物、及び、ケイ素化合物又はアルミニウム化合物の混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケル、マグネシウム、金属元素、及び、ケイ素又はアルミニウムを共沈させて沈殿物を生成し、当該沈殿物を少なくとも乾燥及び焼成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して改質用触媒を製造することを特徴とするタール含有ガスの改質に用いられる触媒の製造方法である。また、
(19)白金族元素の溶液を担持する前の、前記沈殿物を乾燥、粉砕及び焼成、又は、乾燥、か焼、粉砕、成型及び焼成して触媒を製造することを特徴とする(17)記載のタール含有ガスの改質用触媒の製造方法である。また、
(20)(4)〜(11)のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法を実施した後、炭素析出、硫黄被毒の少なくともいずれかにより性能劣化した前記触媒に、水蒸気又は空気の少なくともいずれかを接触させて、前記触媒を再生し、再び前記タール改質用触媒として用いることを特徴とするタール含有ガスの改質方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、石炭やバイオマスを熱分解した際に発生するタール含有ガスを、安定的に一酸化炭素、水素等の軽質化学物質へ転換することができる。特に、タール含有ガス中に、硫化水素を高濃度で含むタール含有ガスであっても、脱硫処理せずにそのまま触媒と接触させて、粗ガス中のタールを改質して、又は精製ガス中のタール及び炭化水素成分を改質して、タール含有ガスを一酸化炭素、水素等の軽質化学物質へ安定的に転換することができる。
【0029】
例えば、硫化水素を数十ppm〜2000ppm程度含有する粗COG、精製COGやバイオマス乾留ガス等のタール含有ガスに対しても、本発明の触媒により高効率で且つ安定に、改質反応によって軽質化学物質へと転換、及び改質用触媒の製造方法することができる。
【0030】
また、本発明の一形態によれば、タール含有ガスの改質後、水蒸気、又は空気の少なくともいずれかを反応後の触媒に接触させることにより、触媒を再生させて、この再生触媒を再度タール含有ガスの改質に使用することができ、触媒性能の劣化を抑えながら、長期に安定した運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】コークス炉からコークス炉ガスが排出される部分を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、具体例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0033】
本発明のタール含有ガスの改質方法で用いるタール含有ガス改質用触媒は、ニッケルとマグネシウムの固溶体酸化物に白金族元素を担持してなる複合酸化物である。また、必要に応じて、上記固溶体酸化物にケイ素又はアルミニウムが含有される複合酸化物に、白金族元素を担持してなる金属酸化物であり、その白金属元素は、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウムから選ばれる少なくとも1種類の元素である。
【0034】
この内、ニッケルが、重質炭化水素をガス中に存在又は外部より導入される水蒸気、水素、二酸化炭素との間で改質反応を進行させる主活性成分として機能する。タール含有ガス中に高濃度の硫化水素が共存した場合でも、上記ニッケル金属が触媒表面上でクラスター上に微細分散して、表面積が大きく、且つ、還元雰囲気下では、反応中に活性金属粒子が被毒を受けても、新たな活性金属粒子がマトリクス(マグネシアとの固溶相)から微細析出するために、硫黄被毒による活性低下の影響を受け難いと考えられる。
【0035】
このマトリクスの化合物から、還元雰囲気下、活性金属粒子を微細クラスター状に析出させることができる。また、縮合多環芳香族主体のタールも乾留直後の高温状態で反応性に富む状態であり、且つ、微細分散して高比表面積を持った高活性なニッケル金属と接触することにより、高効率に軽質炭化水素へ変換・分解するものと考えられる。
【0036】
また、析出したニッケルがマトリクスの化合物と強固に結合しているために、ニッケル粒子間での凝集(シンタリング)を抑制し、長時間の反応中でも触媒活性が低下し難い効果があると考えられる。従って、通常のマグネシア上にニッケルを担持しただけでは、固溶体相は表層のごく一部しか形成されず、Ni粒子が微細に析出するのが困難なため、内部まで十分均質に固溶体相を形成させる必要がある。
【0037】
また、ニッケル元素と化合物化した成分の内、マグネウムは、酸化物として存在して塩基性を示すため、二酸化炭素を吸着する機能を保有することにより、主活性成分元素上での炭化水素由来の析出炭素と反応して、一酸化炭素として酸化除去する役割を発揮するために、触媒表面を清浄に保ち、触媒性能を長期間安定に保持できると思われる。
【0038】
白金属元素(白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウムから選ばれる少なくとも1種類)は、ニッケル−マグネシウム固溶体酸化物には固溶せず、ニッケル−マグネシウム固溶体酸化物相の近傍に存在し、タール含有ガス中の高濃度の硫黄雰囲気下であっても、比較的低温下でも、白金族元素表面に吸着する水素原子がスピルオーバー効果により周囲へ拡散して、ニッケル−マグネシウム固溶体酸化物を還元してNi粒析出を促進することにより、タール含有ガス中のタールを始めとする芳香族炭化水素の軽質炭化水素へ、比較的低温から高効率、且つ、安定に変換する機能を発揮する役割を果たすと推察される。
【0039】
シリカ、アルミナ、又は、ゼオライトは、反応場としての担体の役割を果たすだけでなく、一部ニッケルマグネシウム化合物と反応して、ニッケルとマグネシウムを含む酸化物結晶相を細かく分断すること等により、各結晶相から表面に析出する活性種のニッケルが高度な分散状態になり、特に炭素析出の起点となり易いニッケルの偏在部分等が形成され難く、高い耐炭素析出性を発揮するような機能も果たすものと推察される。
【0040】
本発明でいう炭素質原料とは、熱分解してタールを生成する炭素を含む原料のことで、石炭並びにバイオマスやプラスチックの容器包装類等の構成元素に炭素を含む広範囲なものを指すが、中でも、バイオマスとは、林地残材、間伐材、未利用樹、製材残材、建設廃材、稲わら等の木質系廃棄物、又は、それらを原料とした木質チップ、ペレット等の二次製品や、再生紙として再利用できなくなった古紙等の製紙系廃棄物、農業残渣、厨芥類等の食品廃棄物、活性汚泥等を指す。
【0041】
また、炭素質原料を熱分解した際に発生するタールとは、熱分解される原料により性状が異なるが、炭素が5個以上含まれた常温で液体の有機化合物であって、鎖式炭化水素や芳香族炭化水素等からなる混合物を指し、石炭の熱分解であれば、例えば、ナフタレン、フェナンスレン、ピレン、アントラセン等の縮合多環芳香族等が主成分であり、木質系廃棄物の熱分解であれば、例えば、ベンゼン、トルエン、ナフタレン、インデン、アントラセン、フェノール等、食品廃棄物の熱分解であれば、例えば、上記以外にインドール、ピロール等の六員環又は五員環に窒素等の異種元素を含むヘテロ化合物も含まれるが、特にそれらに限定されるものではない。熱分解タールは、熱分解直後の高温状態ではガス状で存在する。また、ほぼ室温に冷却された精製COG中ではミスト状で存在する。
【0042】
なお、炭素質原料の熱分解方法としては、石炭を原料とする場合には一般にコークス炉が用いられ、バイオマスを原料とする場合には外熱式ロータリーキルンや移動床炉、流動床炉等を用いることができるが、特にこれらに限定するものではない。
【0043】
また、タール含有ガスを接触分解してガス化するタール含有ガスの改質反応は、重質炭化水素であるタールからメタン、一酸化炭素、水素等の軽質化学物質へ変換する反応であるが、反応経路が複雑で必ずしも明らかではないが、タール含有ガス中若しくは外部より導入する水素や水蒸気、二酸化炭素、酸素等との間で起こり得る水素化反応やスチームリフォーミング反応、ドライリフォーミング反応等が考えられる。
【0044】
これら一連の反応は吸熱反応のため、実機に適用した場合、反応器に入る高温の顕熱を有するガスが触媒層内で改質されて出口では温度が低下するが、より高効率にタール等の重質炭化水素成分を改質する場合には、必要に応じて空気若しくは酸素を触媒層内に導入することで、一部水素や炭化水素成分を燃焼させた燃焼熱で触媒層の温度をある程度保ちながら、さらに改質反応を進めることも可能である。
【0045】
次に、本発明のタール含有ガス改質用触媒の製造方法について説明する。
【0046】
本発明のタール含有ガスの改質方法で用いるタール含有ガス改質用触媒は、ニッケルとマグネシウムの固溶体酸化物、及び、ケイ素又はアルミニウムを含有した複合酸化物に白金属元素を担持した触媒(ここでいう白金属元素とは、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウムから選ばれる少なくとも1種類)であり、ニッケル化合物、及び、マグネシウム化合物の溶液から共沈により沈殿物を生成し、ろ過、乾燥、焼成して固溶体酸化物を形成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して製造することができる。
【0047】
また、本発明のタール含有ガスの改質方法で用いるタール含有ガス改質用触媒は、上記ニッケル及びマグネシウムを溶液から沈殿させた際、又は前記沈殿物の生成後に、さらにケイ素又はアルミニウム成分を加えて、ニッケル、マグネシウム、及び、ケイ素又はアルミニウムを含有した混合物とし、当該混合物を少なくとも乾燥及び焼成してニッケルマグネシア固溶体にシリカ、又は、アルミナが混合した複合酸化物を形成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して製造することができる。
【0048】
別の方法として、ニッケル化合物及びマグネシウム化合物の混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケル及びマグネシウムを共沈させて沈殿物を生成し、その沈殿物を乾燥及びか焼してニッケル及びマグネシウムの酸化物を生成し、その酸化物に、シリカ粉末と水、又は、シリカゾル、又は、アルミナ粉末と水、又は、アルミナゾル、又は、ゼオライト粉末と水を加えて混合して混合物を生成し、その混合物を少なくとも乾燥及び焼成してニッケルマグネシア固溶体にシリカ、又は、アルミナが混合した複合酸化物を形成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して製造することができる。また、詳しくは、この方法の中で、混合物を乾燥、粉砕した後に焼成する、又は、乾燥、か焼、粉砕、成型した後に焼成することができる。
【0049】
また、別の方法として、ニッケル化合物及びマグネシウム化合物の混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケルとマグネシウムを共沈させて沈殿物を生成し、その沈殿物に、シリカ粉末と水、又は、シリカゾル、又は、アルミナ粉末と水、又は、アルミナゾル、又は、ゼオライト粉末と水を加えて混合して混合物を生成し、その混合物を少なくとも乾燥及び焼成した後、さらにシリカ粉末と水、又は、シリカゾル、又は、アルミナ粉末と水、又は、アルミナゾル、又は、ゼオライト粉末と水を混合し、少なくとも乾燥及び焼成してニッケルマグネシア固溶体にシリカ、又は、アルミナが混合した複合酸化物を形成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して製造することができる。また、詳しくは、この方法の中で、混合物を乾燥、粉砕した後に焼成する、又は、乾燥、か焼、粉砕、成型した後に焼成することができる。
【0050】
さらに、別の方法として、ニッケル化合物、マグネシウム化合物、及び、ケイ素又はアルミニウム化合物の混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケル、マグネシウム、及び、ケイ素又はアルミニウムを共沈させて沈殿物を生成し、その混合物を少なくとも乾燥及び焼成してニッケルマグネシア固溶体にシリカ、又は、アルミナが混合した複合酸化物を形成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して製造することができる。また、詳しくは、この方法の中で、沈殿物を乾燥、粉砕した後に焼成する、又は、乾燥、か焼、粉砕、成型した後に焼成することができる。
【0051】
ここで、各製法における沈殿物の乾燥は、特に温度や乾燥方法を問わず、一般的な乾燥方法であればよい。乾燥後の共沈殿物は必要に応じて粗粉砕を行った後、焼成すれば良い(流動層等の乾燥により乾燥後の沈殿物が粉状を保っている場合は、粗粉砕は不要である)。
【0052】
尚、沈殿物の乾燥の前には、ろ過をしておくことが、乾燥の手間を少なくすることができ、好ましい。さらに、ろ過後の沈殿物は、純水等で洗浄しておくことが、不純物量を低減できることからより好ましい。
【0053】
また、上記混合物の焼成は、空気中で行うことができ、温度は700〜1300℃の範囲であれば良い。焼成温度が高いと混合物の焼結が進行し、強度は上昇するが、一方で比表面積が小さくなるために触媒活性は低下するため、そのバランスを考慮して決定するのが望ましい。焼成後は、そのまま触媒として使用することもできるが、プレス成型等で成型して成型物して使用することもできる。なお、乾燥と焼成の間に、か焼や成型工程も加えることができ、その場合、か焼は空気中で400〜800℃程度で行えば良く、成型は、プレス成型等で行えば良い。
【0054】
なお、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥した後の焼成は、上記と同様、空気中で行うことができ、温度は200〜600℃の範囲であれば良い。焼成温度が高いと、担持した白金族元素粒子が凝集して粗大化してしまって、スピルオーバー効果が十分発揮されず、一方、焼成温度が低いと、白金族元素の溶液からの化合物塩が完全に分解せずに残存してしまうため、白金族元素の粒子として形成されず、所望の効果を発揮できないため、そのバランスを考慮して決定するのが望ましい。
【0055】
このような製造方法で製造される触媒を用いることにより、炭素質原料を熱分解した際に発生する多量の硫化水素を含み、炭素析出を起こし易い縮合多環芳香族主体のタール含有ガスであっても、随伴するタール等の重質炭化水素を高効率に改質して、水素、一酸化炭素を主体とする軽質炭化水素に変換すること、また、触媒性能が劣化した際、水蒸気又は空気の少なくともいずれかを高温下で触媒に接触させることにより、触媒上の析出炭素や吸着硫黄を除去して触媒性能を回復させ長期間安定した運転が可能になる。
【0056】
また、これら製造法の中で、ニッケル化合物、マグネシウム化合物、白金属化合物、及び、ケイ素又はアルミニウム化合物の溶液を作成する際、水に対して溶解度の高い各金属化合物を用いることが適当であり、例えば、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、塩化物等の無機塩のみならず、酢酸塩、アセチルアセトナート塩等の有機塩も好適に用いられる。特に好ましくは、焼成後に触媒被毒になり得る不純物が残り難いと考えられる硝酸塩又は炭酸塩又は酢酸塩である。また、それらの溶液から沈殿物を形成する場合には、その際に用いる沈殿剤は上記溶液のpHをニッケル、マグネシウム、及び、ケイ素又はアルミニウムが主に水酸化物として沈殿する中性〜塩基性へ変化させるものであれば何でも用いることができるが、例えば、炭酸カリウム水溶液や炭酸ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液や水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液や尿素溶液等が好適に用いられる。
【0057】
上記の方法で製造されたタール含有ガス改質用触媒を用いることにより、炭素質原料を熱分解した際に発生する多量の硫化水素を含み、炭素析出を起こし易い縮合多環芳香族主体のタール含有ガスであっても、高い耐炭素析出性を示し、随伴するタール等の重質炭化水素を比較的低温から高効率に改質して、一酸化炭素、水素を主体とする軽質化学物質に経時劣化が少なく安定に変換することができる。
【0058】
また、本発明のタール含有ガス改質方法は、硫化水素含有雰囲気下でも安定して改質反応が進行するが、ガス中の硫化水素濃度は低ければ低いほど被毒されないため好ましく、4000ppm以下の濃度が好ましい。さらに3000ppm以下の濃度がより好ましい。
【0059】
さらに、本発明のタール含有ガス改質方法で用いるタール含有ガス改質用触媒は、主活性成分であるニッケル含有量が改質用触媒全体に対し1〜99原子量%であることが好ましい。1原子量%未満ではニッケルの改質性能が十分発揮されないため好ましくない。99原子量%を超える場合には、マトリクスを形成するマグネシウム、又は、ケイ素やアルミニウムの含有量が少ないため、触媒上に析出するニッケル金属の濃度が高く且つ粗大化し易いため、本反応条件下では性能の経時劣化の恐れがある。
【0060】
また、マグネシウム含有量は、1〜99原子量%であることが好ましい。1原子量%未満では、マグネシアの有する塩基性酸化物の性質を活かせないため、炭化水素の炭素析出を抑制し難く、触媒性能を長期間安定に保持し難くなる傾向があるため、1原子量%以上が好ましい。99原子量%を超える場合は、ニッケル、又は、ケイ素やアルミニウムの含有量が少なくなるため、触媒の改質活性を十分発揮できなくなる恐れがある。一方、1原子量%未満では、マグネシウムとニッケルの固溶体中のニッケル濃度が極端に高くなるため、固溶相から析出するニッケル粒が粗大化し易く、タール含有ガスの改質反応後での触媒上の炭素析出量が多くなる恐れがある。
【0061】
次に、白金属元素の含有量は0.01〜20質量%であることが好ましい。0.01質量%未満では、白金属酸化物のスピルオーバー効果により、ニッケルマグネシア固溶体酸化物からのニッケル粒の析出促進効果が発揮し難くなる恐れがあるため、0.01質量%以上が好ましい。20質量%を超える場合には、効果が飽和する一方で経済的でないため好ましくない。さらに好ましくは、10質量%以下である。
【0062】
さらに、ケイ素又はアルミナの含有量は20〜80質量%であることが好ましい。20質量%未満では、ニッケルマグネシア主体のセラミックスとなり、成型した際、強度が著しく低くなる傾向があるため、20質量%以上が好ましい。80質量%を超える場合には、主活性成分であるニッケルや炭素析出を抑制するマグネシアの割合が低くなるため、触媒の改質活性を十分発揮できなくなる恐れがある。尚、本発明の改質触媒は、ニッケル含有量が1〜90原子量%、マグネシウム含有量が1〜95原子量%、白金属元素含有量が0.01〜5質量%となるように製造することがさらに好ましい。
【0063】
ここで、本発明の改質触媒は、粉体、粒体又は成型体のいずれの形態としてもよく、成型体の場合には球状、シリンダー状、リング状、ホイール状、粒状等、さらに、金属又はセラミックスのハニカム状基材へ触媒成分をコーティングしたもの等いずれでもよい。
【0064】
また、各金属種の含有量を上記範囲になるように調製するためには、各出発原料を予め計算の上準備しておくことが好ましい。尚、一度触媒が狙いの成分組成となれば、それ以降はその時の配合で調製すればよい。
【0065】
また、上記の元素以外に触媒製造工程等で混入する不可避的不純物や触媒性能が変わらない他成分を含んでも構わないが、できるだけ不純物が混入しないようにするのが望ましい。
【0066】
尚、上記改質触媒を構成する各金属種の含有量の測定方法は、走査型高周波誘導結合プラズマ法(ICP)と呼ばれる方法を用いた。具体的には、試料を粉砕後、アルカリ融解剤(例えば、炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム等)を加えて白金坩堝内で加熱融解し、冷却後に塩酸溶液に加温下で全量溶解させる。その溶液をICP分析装置へインジェクションすると、装置内の高温プラズマ状態の中で試料溶液が原子化・熱励起し、これが基底状態に戻る際に元素固有の波長の発光スペクトルを生じるため、その発光波長及び強度から含有元素種、量を定性・定量することができる。
【0067】
次に、本発明の触媒を用いたタール含有ガス改質方法は、上述したタール含有ガス改質触媒存在下、又は、還元後の触媒存在下、炭素質原料を熱分解した際に発生するタール含有ガス中の、水素、二酸化炭素及び水蒸気を接触させて、タール含有ガスを改質してガス化するものである。
【0068】
また、タール含有ガス改質触媒存在下、又は、還元後の触媒存在下、炭素質原料を熱分解した際に発生するタール含有ガスに、前記水素、二酸化炭素、水蒸気の少なくともいずれかを加えて、タール含有ガスを改質してガス化するものである。
【0069】
ここで、タール含有ガス中のタールを接触改質してガス化するタールガス化反応は、反応経路が複雑で必ずしも明らかではないが、タール含有ガス中若しくは外部より導入する水素との間では、例えば、式1で表されるようなタール中縮合多環芳香族の水素化分解によるメタンを始めとする軽質炭化水素への転化反応が進行すると考えられる(式1ではメタンのみが生成される場合を記す)。また、タール含有ガス中若しくは外部より導入する二酸化炭素との間では、式2で表されるようなタール中縮合多環芳香族の二酸化炭素によるドライリフォーミングによる水素と一酸化炭素への転化反応が進行する。さらに、タール含有ガス中若しくは外部より導入する水蒸気との間では、式3で表されるようなスチームリフォーミング及び水性ガスシフト反応が進行する。また、タール含有ガス中タール以外の炭化水素成分についても、同様にして反応が進行する。
【0070】
mn+(2m−n/2)H2 → mCH4 (式1)
【0071】
mn+m/2CO2 → mCO+n/2H2 (式2)
【0072】
mn+2mH2O → mCO2+(m+n/2)H2 (式3)
【0073】
従って、メタン等高カロリーガスを製造する場合には、外部から水素を加えることが望ましい。また、水素や一酸化炭素を製造する場合には、外部から二酸化炭素を加えることが望ましい。さらに、水素をより多く製造する場合には、外部から水蒸気を加えることが望ましい。尚、タール以外の炭化水素成分も、上記の式1〜3に従って、反応が進行する。
【0074】
ここで、タール含有ガス改質用触媒は、還元することが好ましいが、反応中に還元が進行するため、還元しなくても良い。しかしながら、特に、タール含有ガス改質触媒が反応前に還元処理を必要とする場合、還元条件としては、本発明の触媒から活性金属であるニッケル粒子が微細クラスター状に析出するために、比較的高温で且つ還元性雰囲気にするのであれば特に制限されるものではないが、例えば、水素、一酸化炭素、メタンの少なくともいずれかを含むガス雰囲気下、又は、それら還元性ガスに水蒸気を混合したガス雰囲気下、又は、それらのガスに窒素等の不活性ガスを混合した雰囲気下であっても良い。また、還元温度は、例えば、500℃〜1000℃が好適であり、還元時間は、充填する触媒量にも依存し、例えば、30分〜4時間が好適であるが、充填した触媒全体が還元するのに必要な時間であればよく、特にこの条件に制限されるものではない。
【0075】
触媒反応器としては、触媒が粉末の場合には流動床形式や移動床形式等が、触媒が成型体であれば固定床形式や移動床形式等が好適に用いられ、その触媒層の入口温度としては、500〜1000℃であることが好ましい。触媒層の入口温度が500℃未満の場合は、タール及び炭化水素が水素、一酸化炭素を主体とする軽質炭化水素へ改質する際の触媒活性が殆ど発揮されないため、好ましくない。一方、触媒層の入口温度が1000℃を超える場合は、耐熱構造化が必要になる等、改質装置が高価になるため、経済的に不利となる。また、触媒層の入口温度は、550〜1000℃であることがより好ましい。尚、炭素質原料が石炭の場合には比較的高温で、バイオマスの場合には比較的低温で反応を進めることも可能である。
【0076】
ここで、炭素質原料を熱分解又は部分酸化して生成されるタール含有ガスが、コークス炉から排出される粗COGのような硫化水素濃度が非常に高いタール含有ガスでも、本発明によりガス中のタールや炭化水素を改質してガス化することができる。ここで、熱分解又は部分酸化とは、具体的には、乾留又は炭素質原料をガス化のために一部のみ酸化させてタール含有ガスを製造することをいう。
【0077】
現在のコークス炉では、炉内に原料の石炭を充填後、加熱・乾留してコークスを製造するが、図1に示すように、付随して発生するコークス炉ガスは、炉頂部の上昇管1と呼ばれる部分から安水2(アンモニア水)を噴霧して冷却後、集気管であるドライメーン4に集められる。しかしながら、ガス成分はコークス炉3の上昇管1で800℃程度の顕熱を保有しているにもかかわらず、安水2噴霧後には100℃以下まで急冷されてしまい、その顕熱を有効に利用できていないため、このガス顕熱を有効に利用し、且つ、タール含有ガスを水素、一酸化炭素等軽質炭化水素等の燃料成分に転換できれば、エネルギー増幅に繋がるばかりでなく、そこで生成される還元性ガス体積が大幅に増幅されることにより、例えば、鉄鉱石に適用して還元鉄を製造するプロセスが可能となれば、現在鉄鉱石をコークスにより還元する高炉プロセスで発生する二酸化炭素排出量を大幅に削減できる可能性がある。また、それを従来の燃料用途のみに用いるのでなく、有用物に変換可能であり、また、鉄鉱石の直接還元にも適する合成ガスに転換することにより、より高度なエネルギー利用に繋がる可能性がある。
【0078】
因みに、粗COG中に含まれるタールは、コークス炉装炭から窯出しまでの間で経時的に変化し、大凡0.1〜150g/Nm3の範囲で変動する。また、同様に、上記粗COGをコークス炉の上昇管で安水2を噴霧して冷却し、ドライメーン4で集められた後、常法で精製した精製COGは、プライマリークーラー、タール抽出器、電気集塵機等の処理を行って精製したとはいえ、大凡0.01〜0.02g/Nm3程度のタールが存在し、その後のファイナルクーラーで精製してもナフタレンを約0.2〜0.4g/Nm3、スクラバー処理をした後でも軽油分を5〜10g/Nm3程度含んでいる。そのタール含有ガスである精製COGを水素、一酸化炭素等軽質炭化水素等の燃料成分に転換できれば、粗COGの転換と同様、二酸化炭素排出量の削減や、燃料以外の有用物への変換等の可能性が期待できる。
【0079】
一方、触媒反応器に内蔵されるタール含有ガス改質触媒は、タール及び炭化水素成分から水素、一酸化炭素を主体とする軽質化学物質への転換時に触媒表面上に析出する炭素、もしくは前記熱分解工程で得られた熱分解ガス中に含まれる硫黄成分が触媒に吸着することで、触媒が性能劣化する。そこで、劣化した触媒を再生する方法として、触媒反応器へ水蒸気を導入し、水蒸気と炭素の反応により触媒表面の炭素を除去、もしくは、水蒸気と硫黄の反応により触媒に吸着した硫黄を硫化水素の形で除去することで、触媒を再生することが可能となる。
【0080】
また、水蒸気の一部又は全部を空気に変えて導入することで、空気中の酸素と炭素の燃焼反応により触媒表面の炭素を除去、もしくは酸素と硫黄の反応により触媒に吸着した硫黄を除去することで、触媒を再生することも可能となる。再生した触媒は、全量再使用することも可能であるし、また一部を新触媒に置き換えて使用することも可能である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【実施例1】
【0082】
硝酸ニッケルと硝酸マグネシウムを、ニッケルとマグネシウムの元素のモル比が1:9になるように精秤して、60℃の加温で混合水溶液を調製したものに、60℃に加温した炭酸カリウム水溶液を加えて、ニッケルとマグネシウムを水酸化物として共沈させ、スターラーで十分に攪拌した。その後、60℃に保持したまま一定時間攪拌を続けて熟成を行った後、吸引ろ過を行い、80℃の純水で十分に洗浄を行った。
【0083】
洗浄後に得られた沈殿物を120℃で乾燥し粗粉砕した後、空気中600℃で焼成し解砕して得られた粉末を、圧縮成形器を用いて3mmφの錠剤状にプレス成型し、錠剤成型体を得た。その成型体を空気中950℃で焼成を行い、Ni0.1Mg0.9Oの固溶体酸化物の触媒成型体を調製した。このようにして得られた触媒成型体に対して、金属換算で0.1質量%となるよう調整した塩化白金酸水溶液を含浸し、120℃で12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成することにより、0.1質量%Pt担持Ni−Mg系触媒成型体を調製した。また、その成型体の成分をICP分析で確認した結果、所望の成分であることを確認した。
【0084】
この触媒を60cm3用い、SUS製反応管の中央に位置するよう石英ウールで固定し、触媒層中央位置に熱電対を挿入し、これら固定床反応管を所定の位置にセットした。
改質反応を始める前に、まず反応器を窒素雰囲気下で800℃まで昇温した後、水素ガスを100mL/min流しながら30分間還元処理を行った。
【0085】
その後、コークス炉ガス(粗ガス)の模擬ガスとして水素:窒素=1:1、H2Sを表1に示す濃度、トータルで125mL/minになるよう各ガスを調整して導入し、常圧下、表1に示す各温度で8時間反応評価した。また、石炭乾留時発生タールの模擬物質として、タール中にも実際に含まれ且つ常温で粘度の低い液体物質である1−メチルナフタレンを代表物質として用い、精密ポンプで0.025g/minの流量で反応管へ導入した。また、S/C=3となるよう、純水を精密ポンプで0.1g/minの流量で反応管へ導入した。
【0086】
出口から排出された生成ガスを室温トラップ、氷温トラップを経由させて、各々ナフタレン、水分を除去した後、ガスクロマトグラフィー(ヒューレットパッカード製HP6890)に注入してTCD、FID分析を行った。改質反応の反応度合(1−メチルナフタレンの分解率)は、メタン選択率、CO選択率、CO2選択率、触媒上に堆積した炭素析出率で判断した。それらは出口ガス中の各成分濃度より、以下の式で算出した。
【0087】
メタン選択率(%)=(CH4の体積量)/(供給された1−メチルナフタレンのC供給量)×100
【0088】
CO選択率(%)=(COの体積量)/(供給された1−メチルナフタレンのC供給量)×100
【0089】
CO2選択率(%)=(CO2の体積量)/(供給された1−メチルナフタレンのC供給量)×100
【0090】
炭素析出率(%)=(析出炭素重量)/(供給された1−メチルナフタレンのC供給量)×100
【0091】
また、合わせて入口水素ガス体積に対する出口水素ガス体積の比(水素増幅率)も併記した。
【0092】
【表1】

【0093】
表1のNo.1〜3の結果、H2S濃度が2000ppmという高濃度に含まれる雰囲気下でも、模擬タールである1−メチルナフタレンの分解反応が進んでおり、本製造方法で作成した触媒は耐硫黄被毒性に強いことを示唆している。
【0094】
また、600℃、700℃等の低い反応温度でも、模擬タールの分解が比較的高く、炭素析出率が低い特性を発揮することが判った。さらに、特に反応温度の上昇に伴い分解率(メタン選択率+CO選択率+CO2選択率+炭素析出率)が高く、硫黄被毒性が高く炭素析出性の高い過酷な状況下であっても、1−メチルナフタレンの分解反応が進行していることが判る。さらに、模擬タールの分解率の上昇に伴い、水素増幅率も上昇したことから、1−メチルナフタレンを構成する炭素と結合した水素が触媒による分解に伴って水素分子に変換されたと考えられる。
【実施例2】
【0095】
硝酸ニッケルと硝酸マグネシウムを、ニッケルとマグネシウムの元素のモル比が1:9になるように精秤して、60℃の加温で混合水溶液を調製したものに、60℃に加温した炭酸カリウム水溶液を加えて、ニッケルとマグネシウムを水酸化物として共沈させ、スターラーで十分に攪拌した。
【0096】
その後、60℃に保持したまま一定時間攪拌を続けて熟成を行った後、吸引ろ過を行い、80℃の純水で十分に洗浄を行った。洗浄後に得られた沈殿物を120℃で乾燥し粗粉砕した後、空気中600℃で焼成(か焼)したものを解砕した後にビーカーに入れ、アルミナゾルを加えて攪拌羽を取り付けた混合器で十分混合したものを、なすフラスコに移してロータリーエバポレーターに取り付け、攪拌しながら吸引することで、水分を蒸発させた。
【0097】
なすフラスコ壁面に付着したニッケルとマグネシウムとアルミナの化合物を蒸発皿に移して120℃で乾燥、600℃でか焼後、粉末を圧縮成形器を用いて3mmφの錠剤状にプレス成型し、錠剤成型体を得た。その成型体を空気中950℃で焼成を行い、Ni0.1Mg0.9Oにアルミナが50質量%混合した触媒成型体を調製した。
【0098】
このようにして得られた触媒成型体に対して、金属換算で0.1質量%となるよう調整した塩化白金酸水溶液を含浸し、120℃で12時間乾燥させた後、500℃で3時間焼成することにより、0.1質量%Pt担持Ni−Mg−Al系触媒成型体を調製した。また、その成型体の成分をICP分析で確認した結果、所望の成分であることを確認した。この触媒成型体を用いて、実施例1と同様の条件で評価した。
【0099】
【表2】

【0100】
その結果、表2に示すように、表1と同様、低い反応温度でも模擬タールの分解率が比較的高く、炭素析出率が低い良好な特性を示すことが確認できた。
【実施例3】
【0101】
実施例2と同様に、硝酸ニッケル、硝酸マグネシウムをニッケルとマグネシウムのモル比が1:9になるように精秤して、60℃の加温で混合水溶液を調製したものに、60℃に加温した炭酸カリウム水溶液を加え、スターラーで十分に攪拌した。
【0102】
その後、60℃に保持したまま一定時間攪拌を続けて熟成を行った後、吸引ろ過を行い、80℃の純水で十分に洗浄を行った。その後、この沈殿物にアルミナゾルがアルミナとして50質量%になるように加えて攪拌羽を取り付けた混合器で十分混合したものを、なすフラスコに移してロータリーエバポレーターに取り付け、攪拌しながら吸引することで、水分を蒸発させた。
【0103】
なすフラスコ壁面に付着したニッケルとマグネシウムとアルミナの化合物を蒸発皿に移して120℃で乾燥、乳鉢で粉砕後、600℃でか焼した粉末を圧縮成形器を用いて3mmφの錠剤状にプレス成型し、錠剤成型体を得た。
【0104】
その成型体を空気中950℃で焼成を行い、Ni0.1Mg0.9Oにアルミナが50質量%混合した触媒成型体を調製した。また、この焼成体に実施例1と同様にして、白金を0.1質量%担持し、乾燥、焼成して触媒成型体を調製した。なお、その成型体の成分をICP分析で確認した結果、所望の成分であることを確認した。このようにして調製した触媒成型体を実施例1と同様の条件で評価した。
【0105】
【表3】

【0106】
その結果、表3に示すように、表2と同様、低い反応温度でも模擬タールの分解率が比較的高く、炭素析出率が低い良好な特性を示すことが確認できた。
【実施例4】
【0107】
ニッケル、マグネシウム、及びアルミニウムを含んだ水溶液から沈殿剤により沈殿物を作成、焼成する製法で調製した。即ち、硝酸ニッケル、硝酸マグネシウム、及び、硝酸アルミニウムを、ニッケルとマグネシウムの金属元素のモル比が実施例2と同じ1:9になるようにし、アルミナとして50質量%になるように計算して精秤し、60℃の純水に混合した混合溶液を調製したものに、実施例2と同様60℃に加温した炭酸カリウム水溶液を加え、スターラーで十分に攪拌した。
【0108】
その後、60℃に保持したまま一定時間攪拌を続けて熟成を行った後、吸引ろ過を行い、80℃の純水で十分に洗浄した。その後、この沈殿物を蒸発皿に移して120℃で乾燥、乳鉢で粉砕後、600℃でか焼した粉末を圧縮成型器を用いて実施例2と同様にプレス成型し、錠剤成型体を得た。
【0109】
その成型体を、空気中、950℃で焼成を行って触媒成型体を調製した。また、この焼成体に、白金アセチルアセトナートを用いる他は実施例2と同様にして、白金を0.1質量%担持し、乾燥、焼成して触媒成型体を調製した。なお、その成型体の成分をICP分析で確認した結果、所望の成分であることを確認した。このようにして調製した触媒成型体を実施例1と同様の条件で評価した。
【0110】
【表4】

【0111】
その結果、表4に示すように、表2、3と同様、低い反応温度でも模擬タールの分解率が比較的高く、炭素析出率が低い良好な特性を示すことが確認できた。
【実施例5】
【0112】
白金の代わりにルテニウムを用いる他は全て実施例2と同様にして、ニッケルとマグネシウムの比が1:9になるようにして固溶体酸化物を形成させるようにし、アルミナを50質量%、ルテニウムが0.1質量%となるように調製した。尚、その成型体の成分をICP分析で確認した結果、所望の成分であることを確認した。
【0113】
また、この触媒を実施例1と同様にして改質実験を行った結果、模擬タールの分解率は、600℃で28.6%、700℃で48.5%、800℃で88.2%を発現し、実施例2と同様、低い反応温度でも、模擬タールの分解率が比較的高く、炭素析出率が低い良好な特性を示すことが確認できた。
【実施例6】
【0114】
白金の代わりにパラジウムを用いる他は全て実施例2と同様にして、ニッケルとマグネシウムの比が1:9になるようにして固溶体酸化物を形成させるようにし、アルミナを50質量%、パラジウムが0.1質量%となるように調製した。尚、その成型体の成分をICP分析で確認した結果、所望の成分であることを確認した。
【0115】
また、この触媒を実施例1と同様にして改質実験を行った結果、模擬タールの分解率は、600℃で28.2%、700℃で48.0%、800℃で88.0%を発現し、実施例2と同様、低い反応温度でも、模擬タールの分解率が比較的高く、炭素析出率が低い良好な特性を示すことが確認できた。
【実施例7】
【0116】
白金の代わりにロジウムを用いる他は全て実施例2と同様にして、ニッケルとマグネシウムの比が1:9になるようにして固溶体酸化物を形成させるようにし、アルミナを50質量%、ロジウムが0.1質量%となるように調製した。尚、その成型体の成分をICP分析で確認した結果、所望の成分であることを確認した。
【0117】
また、この触媒を実施例1と同様にして改質実験を行った結果、模擬タールの分解率は、600℃で28.5%、700℃で48.3%、800℃で88.3%を発現し、実施例2と同様、低い反応温度でも、模擬タールの分解率が比較的高く、炭素析出率が低い良好な特性を示すことが確認できた。
【実施例8】
【0118】
ニッケル、マグネシウム、及び、アルミニウムの酸化物に白金を担持した酸化物の内、各金属元素の質量%が表5になるようにする以外は実施例2と同様にして、触媒成型体を調製した。尚、その成型体はニッケルとマグネシウムの固溶体酸化物が形成されており、また、その成分をICP分析で確認した結果、所望の成分であることを確認した。そこで、その成型体を30cm3用い、実験条件としては、実施例2のNo.5の条件で評価した。その結果を表5に示す。
【0119】
【表5】

【0120】
表5の結果、主活性成分であるNi質量が小さいものほど、1−メチルナフタレンの分解率は低く、水素増幅率も低くなり、Ni質量が1原子量%を下回るNo.13の場合には、分解率、水素増幅率共に低い結果となった。一方、Ni原子量%が大きくなるほど、分解率、水素増幅率も高くなった。しかし、Ni質量が95原子量%を超えるNo.21の場合には、炭素析出量が多い結果となった。
【0121】
また、No.15とNo.16を比較すると、ほぼ同等のNi原子量%であっても、アルミナ質量の違いにより、アルミナ成分が多い方が触媒活性は高かった。これは、アルミナ成分がニッケルマグネシア化合物相を微細に分断して、還元時に析出するNi金属粒子のサイズが小さくなり、反応表面積が大きくなったためと予想される。また、Mg原子量%が大きいものほど、炭素析出率が低くなった。さらに、Ruの質量%が多いほど、模擬タール分解率が高く、炭素析出率が低い結果となった。
【実施例9】
【0122】
実施例2と全く同様の触媒成型体を、固定床式反応器を用いて、還元を全く行わず、No.6の反応条件で、模擬タールの改質反応を行った。その結果、メタン選択率は2.6%、CO選択率は53.6%、CO2選択率は26.1%、炭素析出率は5.5%で、分解率は87.8%となり、水素増幅率は2.5倍となった。
【0123】
このように硫黄被毒を強く受け易く、炭素析出性の高い過酷な状況下であっても、本調製法で得られた触媒は、事前に還元処理をしなくても、模擬タールである1−メチルナフタレンの分解反応が進行していることが判る。
【実施例10】
【0124】
反応温度800℃、H2S濃度2000ppm、反応時にH2O、CO2及びO2を表6に示した各条件になるように導入した他は、実施例2と同様に触媒調製、評価を行った。その結果を表6に示す。尚、ここでH2O/C、CO2/C及びO2/CのCは供給された1−メチルナフタレンのC供給量を示す。
【0125】
【表6】

【0126】
表6の結果、外部からH2OやCO2やO2を導入することにより、実施例2のNo.6の結果と比較すると、改質反応が進むことが確認された。尚、O2を導入する場合、H2OによるスチームリフォーミングやCO2によるドライリフォーミングの吸熱を燃焼熱で熱補償できるため、実際の反応器を想定した場合、非常に有効な手法である。また、O2を導入することにより、炭素析出率がさらに低下した。
【実施例11】
【0127】
コークス炉をシミュレートできるバッチ炉に実際のコークス炉で使用している装入炭を80kg充填し、実コークス炉に合わせて昇温して、実コークス炉ガス及び随伴する実タールを発生させた。そのガスを吸引ポンプで捕集し、実験に用いた。
【0128】
また、ここで用いる触媒は、実施例2と同様にして、リング状に成型した。尚、その成型体はニッケルとマグネシウムの固溶体酸化物を形成していることを確認した。また、成型体の成分をICP分析で確認した結果、所望の成分であることを確認した。
【0129】
反応温度800℃になるよう昇温した電気炉内部に反応管を配置して、その中央部にこの触媒成型体を設置し、水素を10NL/minで2時間還元後、バッチ炉から捕集したガスを触媒層へ流すことにより、実コークス炉ガス及び随伴実タールの触媒分解活性を5時間継続して評価した。入口ガス流量は10NL/minで、触媒充填量は約1Lであった。尚、入口ガス組成は実コークス炉ガスとほぼ同じ組成であることをガスクロマトグラフィーで確認した。また、そのガス中には2400〜2500ppm含まれていることを確認した。
【0130】
尚、タール分解率は触媒層の入口と出口からガスをサンプリングし、秤量することにより評価した。その結果、タール分解率は平均90%、水素増幅率は平均で2.6倍まで到達した。尚、ここでいうタール分解率は触媒層入口ガス中タール質量に対する触媒層出口ガス中タール質量の割合から求めた数値である。
【実施例12】
【0131】
実施例2のNo.6の条件で8時間継続して反応を進行させた後、原料の投入を停止し、キャリアガスとしてN260mL/min、H2Oをガス換算で60mL/minの状況下で触媒層温度を800℃にして5時間保持して、触媒上に堆積した炭素や硫黄を除去した後、新たに実施例2と同じ条件で原料の投入を開始したところ、再生前の9割以上の活性を示すことが確認された。また、本試験における改質後のガス中の水素濃度も高く、水素、一酸化炭素、メタンが主成分のガスに変換されたことが確認された。
【実施例13】
【0132】
実施例12と同様、実施例2のNo.6の条件で8時間継続して反応を進行させた後、原料の投入を停止し、キャリアガスとしてN260mL/min、空気60mL/minの状況下で触媒層温度を800℃にして2時間保持して、触媒上に堆積した炭素や硫黄を除去した後、新たに実施例2と同じ条件で原料の投入を開始したところ、再生前の9割以上の活性を示すことが確認された。また、本試験における改質後のガス中の水素濃度も高く、水素、一酸化炭素、メタンが主成分のガスに変換されたことが確認された。
【実施例14】
【0133】
実施例2と同様にして調製した触媒1gを用いて、固定床反応器で、バイオマスとして杉の粉(約0.2mm、C:51.1%、H:5.9%、O:42.5%、N:0.1%、灰分:0.3%)のガス化を行った。
【0134】
杉の粉は、固定床反応器の上部よりN2をキャリアガスとして連続的に供給を行った。反応温度は、反応器外壁に取り付けた熱電対により制御した。生成ガスの流量は、石鹸膜流量計により測定し、ガス組成の分析はガスクロマトグラフを用いて行った。使用したガスクロマトグラフは、Shimadzu CG−14BでH2をTCD(モレキュラーシーブ13X)、それ以外の生成物はFID(ガスクロパック54)を用いて分析し、その記録はインテグレーター(Shimadzu クロマトパックCR−5A)で行った。
【0135】
反応器は、改質用触媒とチャー(析出した固体状の炭素成分)が別々に貯留されるデュアルベッド式を使用した。デュアルベッド式の利点として、バイオマスのガス化時に発生するチャーや灰分を直接触媒と接触させないため、触媒寿命の長期化が図れる。また、燃焼しても殆どCO2にしかならないチャーをガス化しないことによって、生成ガスの組成をより有用なものとすることができる。
【0136】
反応器の下流には、蒸気及びタールをトラップするために、氷を入れたデュワー瓶を設置した。
【0137】
試験条件は以下の通りである。改質用触媒量:1g、杉の粉供給速度:60mg/min(C:2191μmol/min、H:3543μmol/min、O:1475μmol/min、)、キャリアガスN2:60mL/min、H2O/C=0.5(H2O:1110μmol/min)、反応時間:15分、水素還元:500℃、30分間。
【0138】
改質用触媒の性能は、タール分解率(Tar−conv.%)、出口ガスのH2生成速度、出口ガス中の水素組成で判断し、それらは以下の式で算出した。尚、本試験条件で発生したバイオマスガス化ガスの生成速度並びにガス組成及び入口Tar量は表7に示す通りであり、そのガス中に含まれる硫化水素濃度は約20ppmであった。
【0139】
【表7】

【0140】
coke%=(コーク中のC原子量)/(供給されたバイオマスの総C原子量)×100
【0141】
char%=(チャー中のC原子量)/(供給されたバイオマスの総C原子量)×100
【0142】
tar%=(100−(C−conv.%)−(char%)−(coke%))
【0143】
入口Tar量(mg・min-1)=入口tar%×(供給されたバイオマスの総C供給速度)
【0144】
出口Tar量(mg・min-1)=出口tar%×(供給されたバイオマスの総C供給速度)
【0145】
Tar−conv.%=(1−(出口Tar量mg・min-1)/(入口Tar量mg・min-1)×100
【0146】
尚、コーク(coke)とは、改質用触媒表面に堆積した炭素、チャーとは、バイオマスの熱分解により生成されガス化されずに残った固定炭素分のことである。
【0147】
また、コーク中のC原子量、及びチャー中のC原子量の測定方法は以下の通りである。
【0148】
(コーク中C原子量)
1. 15分間の改質試験後、バイオマスの供給を停止し、反応器にN2を添加することで、反応器内のガスを追い払う。
2. O2を反応器1の上部より添加し、改質用触媒に発生したチャーの燃焼時に発生するCO、CO2の発生量をガスクロマトグラフで測定する。
3. CO、CO2発生量からチャー中のC原子量を算出する。
【0149】
(チャー中のC原子量)
1. コーク中のC量の測定完了後、反応器の上部からのO2の添加を停止し、反応器の下部からのO2を添加する。
2. コーク中C量測定と同様に、チャーの燃焼時に発生するCO、CO2の発生量をガスクロマトグラフで測定する。
3. CO、CO2発生量からチャー中のC原子量を算出する。
【0150】
以上のような固定床反応器において、反応温度を表8に示すように、550、600、650℃の各温度で15分間の改質試験を行ったところ、表8に示すような改質ガスの生成速度並びにガス組成及び出口Tar量・分解率の結果が得られ、表7と比較すると、いずれの反応温度でもタール分解率(Tar−conv.)が高く、且つ水素が大きく増幅され(水素ガス生成速度又は水素ガス組成)、高活性な性能を発揮することが確認された。
【0151】
【表8】

【実施例15】
【0152】
精製COGを用いた改質装置としては、通常の水素製造プラントの規模を縮小した以外は全く同一の試験プラントで、改質ガス流量が約400Nm3/h規模の設備を用いた。触媒充填反応管は、改質炉の中に約80mmφ、約10mのものを4本設置し、そこへ改質触媒として、実施例11で用いたのと同じリング状に成型した触媒をそれぞれ約25kg、合計で約100kgを充填した。
【0153】
その改質炉の天井に設置したバーナーを点火して、火炎が下方へ向かうダウンファイヤード形式により炉内を加熱し、その輻射熱で反応管を加熱する方式で所定の温度になるように昇温した。また、その高温の排ガスを熱交換器を通して、原料ガスである精製COGを加熱した。また、改質剤には水蒸気を用い、純水をボイラーで加熱した後、上記改質炉の排ガスとの熱交換で過熱蒸気にして精製COGと共に反応管上部から導入した。
【0154】
また、反応に先立ち、窒素ガスで約900℃、常圧の条件に整定した後、還元処理を行うべく、窒素から水素に水蒸気を混合したガス(水蒸気のモル比/水素のモル比=7)に切り替えて、約200Nm3/hで3時間保持した。
【0155】
得られた改質ガスは、反応管出口に設置した冷却器で冷却し、水分離器で水分を除去した後、ガスクロマトグラフィーでガス組成を分析した。
【0156】
ここで用いた原料ガスは、常法で精製した精製COGの後段に、酸化鉄(Fe23)系市販触媒(ズードケミー製、N−IDS)を充填した脱硫装置により、硫化水素の濃度を約0.5ppmまで脱硫したものを用いた。
【0157】
そのようにして脱硫した原料ガス、及び、改質剤としての水蒸気は、水蒸気のモル数と原料ガス中の炭化水素成分の炭素モル数との比(S/C)が1となるよう、各々約260Nm3/h、約80Nm3/h(約60kg/h相当)を反応管に導入した。また反応温度、圧力は、反応管の出口温度、圧力として約900℃、常圧となるように調整して約1000時間の運転を行った。その結果、改質後のガスとして、約400Nm3/hの合成ガスを安定して得ることができた。
【0158】
[比較例1]
実施例1と同じ実験手法で表2のNo.6の条件で触媒として工業触媒の一つであるズードケミー製ナフサ一次リフォーミング触媒(SC11NK;Ni−20質量%担持アルミナ)で改質試験を行ったところ、メタン選択率が2.5%、CO選択率が4.2%、CO2選択率が5.9%、炭素析出率が32.8%、分解率45.4%、水素増幅率が1.3倍となった。
【0159】
従って、工業触媒は、メチルナフタレンのガス成分への変換率が低い(12.6%)一方、炭素析出率が非常に高い結果となった。炭素析出率が非常に高いため、触媒寿命が短い恐れが十分あり、また、例え、反応後に再生処理を行ったとしても、高温又は長期間酸化処理を行う必要があるために、その際の大きな燃焼熱により、触媒活性粒子がシンタリングを引き起こして、再生後の性能がさらに低くなると予想される。
【0160】
[比較例2]
実施例11と同じ試験設備を用い、同一条件で、比較例1で用いた工業触媒(SC11NK)を反応管に設置して評価を行った。その結果、タール分解率は22%に止まり、水素増幅率も約1.5倍となり、工業触媒は、実コークス炉ガス、実タール下での評価でも、タール分解率が低いことが判明した。
【0161】
[比較例3]
1200℃で3時間かけて予備焼成したアルミナ(表面積:143m2/g)に、酸化ニッケル、酸化マグネシウムの前駆体である硝酸ニッケル、硝酸マグネシウムの混合水溶液をニッケル、マグネシウムの金属元素の原子比が実施例2と同じ1:9になるように調製し、さらに、アセチルアセトナートルテニウムを溶液としたものを加え、それら混合溶液をアルミナとして80質量%となるように含浸後、110℃で12時間かけて乾燥させ、その後500℃で3時間かけて焼成を行って触媒成型体を調製した。
【0162】
この触媒成型体の調製方法以外は全て実施例2のNo.6と同様にして、8時間の改質実験を行った。その結果、模擬タールの分解率は68.7%、炭素析出率は6.9%、水素増幅率は1.7倍と、中程度の触媒活性しか示さなかった。
【符号の説明】
【0163】
1 上昇管
2 安水
3 コークス炉
4 ドライメーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
aM・bNi・cMg・dO
(式中、aは質量%であり、触媒全体に対して0.01%〜20%、b、c、dは、モル比であり、b+c=1、0.01≦b≦0.99、0.01≦c≦0.99、dは、酸素が陽性元素と電気的中性を保つのに必要な数、Mは、白金族であり、白金、ルテニウム、パラジウム、ロジウムから選ばれる少なくとも1種類の元素である。)
で表される複合酸化物であることを特徴とするタール含有ガスの改質用触媒。
【請求項2】
前記複合酸化物に、シリカ、アルミナ、ゼオライトから選ばれる少なくとも1種類の酸化物を加えてなることを特徴とする請求項1記載のタール含有ガスの改質用触媒。
【請求項3】
前記シリカ、アルミナ、ゼオライトから選ばれる少なくとも1種類の酸化物の含有量が、複合酸化物全体に対し1〜90質量%であることを特徴とする請求項2記載のタール含有ガスの改質用触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質用触媒を用いることを特徴とするタール含有ガスの改質方法。
【請求項5】
前記タール含有ガス改質用触媒の存在下又は還元後の前記触媒の存在下において、炭素質原料を熱分解した際に発生するタール含有ガス中の水素、二酸化炭素、及び、水蒸気を接触させて、前記タール含有ガス中のタールを改質してガス化することを特徴とする請求項4に記載のタール含有ガスの改質方法。
【請求項6】
前記タール含有ガス改質用触媒の存在下又は還元後の前記触媒の存在下において、炭素質原料を熱分解した際に発生するタール含有ガスに、外部から水素、二酸化炭素、水蒸気の少なくともいずれかを接触させて、前記タール含有ガスを改質してガス化することを特徴とする請求項4又は5に記載のタール含有ガスの改質方法。
【請求項7】
前記タール含有ガスが、硫化水素を含むタール含有ガスであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法。
【請求項8】
前記水素、二酸化炭素、水蒸気の少なくともいずれかに、更に酸素含有ガスを加えて、タール含有ガスに接触させることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法。
【請求項9】
前記タール含有ガスが、石炭を乾留したときに発生する乾留ガスであることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法。
【請求項10】
前記タール含有ガスが、コークス炉から排出されるコークス炉ガスであることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法。
【請求項11】
前記タール含有ガスが、木質系バイオマス、食品廃棄物系バイオマスの少なくともいずれかを乾留したときに発生する乾留ガスであることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法。
【請求項12】
請求項1に記載のタール含有ガス改質用触媒の製造方法であって、
ニッケル化合物、マグネシウム化合物を含む混合溶液から共沈により沈殿物を生成し、当該沈殿物を少なくとも乾燥及び焼成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して改質用触媒を製造することを特徴とするタール含有ガスの改質に用いられる触媒の製造方法。
【請求項13】
請求項2又は3に記載のタール含有ガス改質用触媒の製造方法であって、
ニッケル化合物、マグネシウム化合物を含む混合溶液から共沈により沈殿物を生成し、当該共沈時又は前記沈殿物の生成後に、ケイ素又はアルミニウム成分を加えて、ニッケル、マグネシウム、及び、ケイ素又はアルミニウムを含有した混合物とし、当該混合物を少なくとも乾燥及び焼成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して改質用触媒を製造することを特徴とするタール含有ガスの改質に用いられる触媒の製造方法。
【請求項14】
請求項2又は3に記載のタール含有ガス改質用触媒の製造方法であって、
ニッケル化合物及びマグネシウム化合物の混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケル及びマグネシウムを共沈させて沈殿物を生成し、当該沈殿物を乾燥及び焼成してニッケル及びマグネシウムの酸化物を生成し、当該酸化物に、シリカ粉末と水、又は、シリカゾル、又は、アルミナ粉末と水、又は、アルミナゾル、又は、ゼオライト粉末と水を加えて混合して混合物を生成し、当該混合物を少なくとも乾燥及び焼成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して改質用触媒を製造することを特徴とするタール含有ガスの改質に用いられる触媒の製造方法。
【請求項15】
白金族元素の溶液を担持する前の前記混合物を、乾燥、粉砕及び焼成、又は、乾燥、か焼、粉砕、成型及び焼成して触媒を製造することを特徴とする請求項13記載のタール含有ガスの改質用触媒の製造方法。
【請求項16】
請求項2又は3に記載のタール含有ガス改質用触媒の製造方法であって、
ニッケル化合物及びマグネシウム化合物との混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケル及びマグネシウムを共沈させて沈殿物を生成し、当該沈殿物に、シリカ粉末と水、又は、シリカゾル、又は、アルミナ粉末と水、又は、アルミナゾル、又は、ゼオライト粉末と水を加えて混合して混合物を生成し、当該混合物を、少なくとも乾燥及び焼成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して改質用触媒を製造することを特徴とするタール含有ガスの改質に用いられる触媒の製造方法。
【請求項17】
白金族元素の溶液を担持する前の、前記混合物を乾燥、粉砕及び焼成、又は、乾燥、か焼、粉砕、成型及び焼成して触媒を製造することを特徴とする請求項15記載のタール含有ガスの改質用触媒の製造方法。
【請求項18】
請求項2又は3に記載のタール含有ガス改質用触媒の製造方法であって、
ニッケル化合物、マグネシウム化合物、及び、ケイ素化合物又はアルミニウム化合物の混合溶液に沈殿剤を添加して、ニッケル、マグネシウム、金属元素、及び、ケイ素又はアルミニウムを共沈させて沈殿物を生成し、当該沈殿物を少なくとも乾燥及び焼成した後、白金族元素を含んだ溶液を担持し、乾燥、焼成して改質用触媒を製造することを特徴とするタール含有ガスの改質に用いられる触媒の製造方法。
【請求項19】
白金族元素の溶液を担持する前の、前記沈殿物を乾燥、粉砕及び焼成、又は、乾燥、か焼、粉砕、成型及び焼成して触媒を製造することを特徴とする請求項17記載のタール含有ガスの改質用触媒の製造方法。
【請求項20】
請求項4〜11のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法を実施した後、炭素析出、硫黄被毒の少なくともいずれかにより性能劣化した前記触媒に、水蒸気又は空気の少なくともいずれかを接触させて、前記触媒を再生し、再び前記タール改質用触媒として用いることを特徴とするタール含有ガスの改質方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−212598(P2011−212598A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83527(P2010−83527)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】