説明

ダイオキシン類汚染物の処理方法

【課題】ダイオキシン類汚染物を現地において、常温・常圧下で安全・安価に処理する方法を提供する。
【解決手段】ダイオキシン類汚染物が発生した原位置において、常温でダイオキシン分解性の無機粉体を主体とする分解剤を前記汚染物へ添加して、ダイオキシン濃度を3ng-TEQ/g以下に低減させることからなる、ダイオキシン類汚染物の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオキシン類汚染物の処理方法に関し、より詳細にはダイオキシン類汚染物が発生した原位置において簡易かつ安価に処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、コプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)などを総称したダイオキシン類は、主として一般廃棄物や産業廃棄物の焼却炉、廃熱利用装置、排ガス処理装置などの設備から、意図せずに発生する有機塩素系物質である。当該設備以外にも、不慮の事故によってダイオキシン類に汚染された施設や土壌、さらに焼却物の埋立て場などに蓄積されていることがある。このダイオキシン類が、土壌、焼却灰、飛灰など中に数百pg-TEQ/g〜1ng-TEQ/gという極微量でも含まれていると、人体や環境に対して影響を及ぼす可能性が高い。その理由は、ダイオキシン類が脂溶性かつ化学的に安定であって、大気、土壌、河川などの環境に放出されると、食物連鎖を通して生物体内に濃縮されるためである。
【0003】
近年、廃棄物焼却施設などから排出されるダイオキシン類による汚染が全国的に大きな問題となり、ダイオキシン類発生施設の改修、施設内に蓄積するダイオキシン類の一掃、ダイオキシン類に汚染された土壌の修復が行われている。そして、ダイオキシン類の排出基準が焼却能力4t以上の場合、0.1ng-TEQ/m以下と強化されたこともあって、多くの焼却炉が稼動停止となり、解体される。
【0004】
焼却炉の解体、撤去工事の際に多量の産業廃棄物が発生するが、1ng-TEQ/g以上のダイオキシン類を含む廃棄物は、産業廃棄物として処分の対象となる。特に3ng-TEQ/g以上の高濃度汚染物は、特別管理産業廃棄物に指定され、特定の施設で厳重に管理または処理されなければならない。この特別管理廃棄物の処理コストは非常に高価である。
【0005】
ダイオキシン類汚染物を特別管理産業廃棄物として保管するのではなく、無害化する技術が活発に提案されている。以下に代表的な無害化方法を列挙する。
(1)溶融固化法
溶融固化法とは、焼却灰などの廃棄物を約1200℃以上の高温条件下に曝して有害な有機物を燃焼させると共に、無機物を溶融し、その生成物を冷却してガラス質の溶融固化物や溶融スラグにする技術である。重金属の溶出防止とダイオキシン類の分解や削減に極めて有効な方法である。
(2) キルン焼却法
キルン焼却法は、反応槽による直接または間接加熱方式であって、ダイオキシン類汚染物を容器内500〜600℃の還元性雰囲気下で加熱し、脱塩素して無害化する方法である。
(3) 低温還元分解法
脱水処理したダイオキシン類汚染物を乾燥し、約350℃へ加熱して、ダイオキシン類を分解する。その際、反応槽内部を還元雰囲気にすると共に、触媒などを添加することによって、分解速度を高める。この方法では、ダイオキシン類をほぼ完全に分解することが可能である。
(4) 溶煤抽出法
この方法は、汚染物と抽出剤とを混合し、分離する工程を繰り返し、最終段階では純粋な抽出剤で抽出するものである。
(5) 鉄粉混合分解法
鉄粉などの反応性の高い粉体を、ダイオキシン汚染物の浄化に使用する方法である。
【0006】
汚染物を加熱分解させる(1)〜(3)の方法は、加熱や排気のための設備が必要であり、設備、管理コストがきわめて大である。汚染物が高含水率の場合には、一度乾燥させなげれば分解させることができないことも不利である。(4)の化学処理は、化学薬品のコストがかかる上に、二次的汚染物が発生する。(5)の鉄粉類を使用する方法は、鉄粉などの取扱いが難しく、粉じん爆発の危険性もある。よって現地で作業する場合には、相当な安全設備と注意が必要となる。
【0007】
上記のいずれの方法においても、汚染物が発生した個々の現場に熱処理または化学処理設備を設けることは、設備費や用地確保の点で難しい。一方で、排出先や中間処理工場の周辺環境影響の懸念などにより、ダイオキシン類汚染物、特に高濃度汚染物を原位置(オンサイト)で処理することが強く求められている。
【0008】
このような要望に応えて、原位置でなるべく常圧・常温に近い条件でダイオキシン類汚染物を無害化する方法がいくつか提案されている。
【特許文献1】特開2001−293103
【特許文献2】特開2001−310163
【特許文献3】特開2003−300037
【特許文献4】特開2004−313912
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前記特許公開公報に記載の発明と同じく、ダイオキシン類汚染物を現地において通常の環境条件下で処理する方法を指向すると共に、前記公報の発明と比較しても総合的に安全・安価で実用性の高い方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、以下の発明により、解決できることを見出した。すなわち、本発明は、ダイオキシン類汚染物が発生した原位置において、常温でダイオキシン分解性の無機粉体を主体とする分解剤を前記汚染物へ添加して、ダイオキシン濃度を3ng-TEQ/g以下に低減させることからなる、ダイオキシン類汚染物の処理方法である。
【0011】
前記無機粉体は、アルカリ土類金属またはその化合物であることが好ましく、さらにマグネシウムまたはその化合物であることが好ましい。
【0012】
前記分解剤と共に、鉄塩、ゼオライト、白金、酸化チタンの少なくとも一種の分解助剤を含有することが望ましい。
【0013】
本発明の処理方法は、水分を除去することなく湿式で行われる。そして、前記分解剤と共に、水または水分調整剤を添加することによって、最も適した水分下で効率よく処理することが可能である。
【0014】
本発明の処理方法は、前記低減化されたダイオキシン類汚染物を、現場外の管理型処分場などへ搬送し、あるいは低減化して無害になったものを原位置に埋めることで、総合的に安全・安価で実用性の高い処理方法を構築する。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明の処理方法は、ダイオキシン類汚染物を原位置(オンサイトともいう)で湿式に比較的緩和なレベルに浄化処理するものである。この特徴により、下記の効果が生まれる。
(1)高濃度ダイオキシン類汚染物が発生した原位置でその高濃度ダイオキシン類を処理する本発明の方法は、高濃度ダイオキシン類を系外へ散逸させる危険性を著しく減じる。
(2)本発明の湿式による処理方法は、排水、汚泥、スラッジ、スラリーなどの高含水率の汚染物から、低含水率の土壌まで広い範囲を対象とする。また、乾燥物であっても、水分を添加することによって、本発明の方法に適用可能である。また、油類、揮発性有機化合物(VOC)、重金属のような複合的な汚染にも使用することができる。本発明の処理方法は、特に汚泥、底質のような高含水率のダイオキシン類汚染物の処理に好適である。
(3)本発明の処理方法は、簡易な装置で実施可能であり、従来の熱処理設備のような大掛かりな装置を要しない。また、従来の乾燥や加熱に使用した多大なエネルギーも消費しないで済む。したがって、本方法は、設備コストと運営コストの両面で非常に有利である。
(4)本発明の処理方法は、化学処理法で一般に使用される活性炭や樹脂なども必要としないので、二次的汚染物を作らない。反応のpHは中性域にあるため、湿式処理後に中和処理なども必要ない。
(5)本発明の方法による最終生成物は、ダイオキン濃度が3ng-TEQ/g以下であり、その処分は容易である。すなわち、管理型処分場に保管しても、その管理コストは高濃度汚染物の場合と比べて安価である。したがって、本発明の処理方法は、最終処理物の管理コストを含めた総合評価においても有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、本発明の処理方法の対象となるダイオキシン類汚染物と、処理方法に使用する薬剤を説明する。本発明の処理方法の対象となるダイオキシン類汚染物は、ダイオキシン類を含有もしくは付着するものであれば特に限定されない。具体的には、焼却炉解体工事で回収される焼却灰や飛灰、工場跡地、管理型処分場などのリニューアル工事で発生する汚染土壌、これらの工事で発生する高含水率のダイオシン類含有汚泥と排水、河川、港湾などの底質の浄化工事で回収されるダイオキシン類含有汚泥などが該当する。本発明の処理方法は、高含水率のダイオシン類汚染汚泥をそのまま湿式で処理する点で乾燥工程を伴う従来技術よりも有利である。
【0017】
本発明の処理方法に使用するためのダイオキシン分解剤は、常温でダイオキシン分解性の無機粉体からなるものであれば、特に限定されない。典型的な無機粉体は、アルカリ土類金属またはその化合物である。
【0018】
アルカリ土類金属の例は、マグネシウム、カルシウムなどであり、そしてアルカリ土類金属化合物の具体例には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウムなどのマグネシウム化合物;酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどのカルシウム化合物;炭酸カルシウム・炭酸マグネシウム、酸化カルシウム・酸化マグネシウムのような複合金属化合物などである。
【0019】
上記無機粉体は、粉末状または粒子状である。その粒径は、通常、1〜1000μmであり、好ましくは1〜30μm、より好ましくは3.5〜10mmである。無機粉体の粒径が大きすぎると、接触率や反応率、反応時間などの面でダイオキシン類の分解(酸化還元)反応を有利に行うことができず、逆に小さすぎると、極小部分での反応が早くなるため、不均一となり易い面で不利である
【0020】
無機粉体は、ゼオライト、活性炭などの坦体や分散媒に坦持されたものを用いることも可能である。
【0021】
ダイオキシン類汚染物への無機粉体の添加量は、ダイオキシン類濃度により変化し得るが、典型的には、汚染物1000g当たり、無機粉体が1〜200gであり、好ましくは1〜100g、特に好ましくは5〜20gである。
【0022】
本発明の処理方法は、分解助剤として、硫酸第一鉄、硫化鉄、塩化第一鉄、酸化鉄などの鉄塩、ゼオライト、白金、酸化チタンの少なくとも一種を添加することができる。分解助剤の使用量は、化学的組成により変わり得るが、一般に、分解剤の使用量100gに対して、通常、1〜100g、好ましくは1〜20g、さらに好ましくは3〜5gである。
【0023】
現場で発生するダイオキシン類汚染物は、乾燥物、適度に含水した物、さらに高含水の物とさまざまである。本発明の方法は、水または水分調整剤の使用により、ダイオキシン類汚染物のすべての形態に対応可能である。乾燥した汚染物へは水を添加すればよい。添加手段は、噴霧、注入、散布などである。
【0024】
一方、高含水率の汚染物へは、吸水性の水分調整剤によって水分を適度に保つ。吸水性の水分調整剤としては、デンプン−アクリル酸共重合体架橋物、デンプン−アクリロニトリル共重合体の加水分解物、架橋ポリアクリル酸塩、ビニルエステルと不飽和カルボン酸類との共重合体ケン化物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体架橋物、架橋カルボキシメチルセルロース誘導体、アクリル酸−アクリルアミド共重合体架橋物、アクリルアミド共重合体の部分加水分解物、スルホン化ポリスチレン、ポリビニルアルコール類、ポリエチレンオキシド類、ポリビニルピロリドン類、アクリル酸・アクリル酸ソーダの各重合体のような水分吸収性樹脂(ゲル);乾燥した珪砂、ゼオライト、炭酸カルシウム、石膏が挙げられる。このうち、石膏が、反応性も高く、反応熱で温度を上昇させる点で好ましい。
【0025】
水分調整剤を添加した後のダイオキシン類汚染物の水分は、通常、0〜100%であり、好ましくは20〜75%、さらに好ましくは30〜55%に管理される。水分をこの範囲に調整することにより、ダイオキシン類と無機粉体との反応性を最大限に高めることができる。
【0026】
本発明の処理方法には、適宜、界面活性剤を添加するとよい。界面活性剤の例は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩などの陰イオン性界面活性剤;脂肪族第四級アンモニウム塩、脂肪族アミン塩、ピリジニウム塩などの陽イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤;カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、レシチンなどの両性界面活性剤などが挙げられる。
【0027】
これらの界面活性剤は、ダイオキシン類の分解速度を制御する機能を有する。すなわち、界面活性剤は、ダイオキシン類汚染物、特に汚泥中の空気の保持力を向上させると共に、ダイオキシン類汚染物と分解剤との反応速度が大きすぎた場合には、両者の間に皮膜を作って反応速度を制御し、逆に反応速度が小さすぎた場合には、ダイオキシン類汚染物と分解剤との親和性を改善して反応を速めるのに役立つ。
【0028】
本発明の浄化方法は、上記した分解剤、分解助剤、水分調整剤、界面活性剤の他に、適宜、その他の助剤を発明の目的を阻害しない範囲で使用してもよい。その例としては、セメント、キレート剤、pH調整剤(水酸化ナトリウム、硫酸など)である。
【0029】
ダイオキシン類分解のメカニズムは、以下のようなものと考えられるが、本発明を限定するものではない。すなわち、酸化マグネシウムなどの分解剤を高含水率のダイオキシン類汚染物へ添加すると、まず、酸化マグネシウムと水分との反応によって生成した水酸化マグネシウムが2,3,7,8-テトラクロロダイオキシンを還元し、3,4-ジクロロフェノールダイオキシンを生成する。次に、3,4-ジクロロフェノールダイオキシンのフェノール性水酸基がマグネシウムと反応して塩を作り、無害で不溶性の3,4-ジクロロフェノールダイオキシンマグネシウム塩に変わる。
【0030】
上記反応系は、下記の酸化還元反応:
【化1】

で表現することができる。
【0031】
本発明の処理方法では、酸化還元反応を促進するために、酸化還元反応の系へ酸素を供給することが好ましい。酸素は、空気あるいは酸素富化空気でよい。酸素富化空気の酸素の濃度は、好ましくは21.1%〜30%以上、特に好ましくは21〜25%である。酸素は、通常、通気管などで供給される。
【0032】
本発明の処理方法では、酸化還元反応を常温で行うが、30〜70℃程度の加熱も本発明に含まれる。
【0033】
本発明の処理方法で、ダイオキシン濃度を簡易処理レベル(3ng-TEQ/g以下)まで低減させるために、分解剤を添加してから、通常、24時間以上の反応時間を必要とすればよい。本発明の処理方法は、原位置においてダイオキシン類汚染物の汚染濃度を系外へ安全に搬送可能な3ng-TEQ/g以下まで低減させ、搬送された低濃度汚染物を簡易型保管場などで保管することによって、総合的に簡易、安全かつ安価な処理方法を構築する。
【0034】
次に、本発明の浄化方法の態様を、添付図面を用いて説明する。図1は、焼却炉やその煙道におけるダイオキシン類汚染物の処理方法を模式化したものである。ダイオキシン類は焼却炉内壁や煙道の表層近傍に偏在していることが多く、この態様は、高ダイオキシン濃度の表層部分に原位置で前記分解剤を添加する方法である。添加の方法には、散布、噴霧、注入、塗布などがある。
【0035】
次いで、低濃度汚染物を含む(あるいは無害化した)表層部分を高圧水で洗浄し、または高圧空気などで機械的に除去する。好ましくは、汚染されていた表層部分からにさらに10mm程度の深層まで除去する。回収した低濃度汚染物は、一箇所に回収した後、簡易型保管場などへ搬送すればよい。
【0036】
次に、本発明の浄化方法の別の実施態様を説明する。この態様では、工場跡地の汚染土壌、河川や港湾のダイオキシンで汚染された底質、処分場に保管された特別管理産業廃棄物などに含まれるダイオキシン類汚染物をバッチ式に処理する方法である。図2に、本発明の別の実施態様に用いる反応槽の概略図を示す。
【0037】
図2の反応容器1は、現地にて掘削したダイオキシン類汚染物(土壌や汚泥)を浄化するためにあり、いかなる形状、大きさのものであってもよい(図2ではドラム缶)。反応容器1は、例えば鉄、ステンレス、ガラス繊維強化プラスチックなどでできている。反応容器内部を加減圧する場合には鋼製がよい。
【0038】
反応容器1には、ダイオキシン類と分解剤との接触頻度を上げるために、攪拌手段2を設ける。攪拌手段2は、通常、パドル、二軸ニーダー、ディスクタービン翼、ミキサー、ホモジナイザーなどである。
【0039】
3は、反応容器へのダイオキシン類汚染物供給手段2である。図2では、ベルトコンベアを採用したが、バケットコンベア、ショベルなどでもよい。
【0040】
処理する汚染物は、細かいほど反応効率がよいため、適宜、粉砕しておくとよい。その粉砕手段(図示せず)は、攪拌、圧砕、ボールミルなどが任意に選ばれる。さらに、砂利、小石その他の異物の反応容器1への侵入を防止するため、適宜、図2示す篩(10〜20mm)や格子網のようなフィルター手段4を供給手段に付設しておくとよい。
【0041】
反応容器1へ分解剤を添加する分解剤供給手段5は、特に制限なく、通常、ポンプや噴霧機である。複数の分解剤からなる場合、別個に投入してもよく、あるいは、適宜の組み合わせで混合投入してもよい。
【0042】
前記態様と同じように、反応系内での酸化還元反応を促進するために、適宜、ダイオキシン類分解反応の場に酸素を供給することが好ましい。図2では、攪拌手段2が酸素の供給手段を兼ねている。反応系内の酸素富化濃度は、前記態様と同じである。
【0043】
この態様でも、反応は常温で行われるが、30〜70℃程度に加熱することも含む。また、反応は、常圧の通常の環境条件下で進行するが、さらに0.5〜3気圧に加減圧して行うことも可能である。
【0044】
分解剤を添加混合後、系を放置する時間は、前記態様と同じである。例えば、約24時間静置すると、ダイオキシン類濃度が3ng-TEQ/gまで低下した浄化物を得ることができる。
【0045】
浄化物排出手段6は、反応終了後、浄化された土壌を容器から取り出すための排出口である。
【0046】
上記の酸化還元反応は、中性のpH域(通常、5〜9、好ましくは6〜8)で行われる。したがって、本発明の処理方法は、反応容器に耐食性のものを用意する必要がなく、また、処理後の汚泥や排水を中和処理する必要もない。
【実施例】
【0047】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって制約されるものではない。
〔実施例1〕
(分解剤組成物の調製)
市販の酸化マグネシウム(試薬、粒径10μm)80gおよび硫酸第一鉄(試薬、粒径10μm)60gを混合し、ダイオキシン類分解剤組成物を調製した。
【0048】
高濃度ダイオキシン類汚染物として、ダイオキシン類(2,3,7,8-テトラクロロダイオキシン)を10ng-TEQ/g濃度にて含有する汚染土壌(水分0%)を用意した。
【0049】
上記組成で配合された分解剤15gを、上記汚染土壌100gへ一度に添加し、常温で混合した。混合後の土壌の水分は25%であった。
【0050】
混合して約7日放置した後、汚染土壌のダイオキシン類濃度を測定したところ、2.6ng-TEQ/gとなった(低減率74%)。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のダイオキシン類汚染物の処理方法に基づく処理工程を示した図である。
【図2】本発明の処理方法の別の実施態様に用いる反応槽の概略図である。
【符号の説明】
【0052】
1 反応容器
2 攪拌手段
3 汚染物供給手段
4 フィルター手段
5 分解剤供給手段
6 浄化物排出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオキシン類汚染物が発生した原位置において、常温でダイオキシン分解性の無機粉体を主体とする分解剤を前記汚染物へ添加して、ダイオキシン濃度を3ng-TEQ/g以下に低減させることからなる、ダイオキシン類汚染物の処理方法。
【請求項2】
前記無機粉体がアルカリ土類金属またはその化合物である、請求項1に記載のダイオキシン類汚染物の処理方法。
【請求項3】
前記無機粉体がマグネシウムまたはその化合物である、請求項1または2に記載のダイオキシン類汚染物の処理方法。
【請求項4】
前記分解剤と共に、鉄塩、ゼオライト、白金、酸化チタンの少なくとも一種からなる分解助剤を添加する、請求項1、2または3に記載のダイオキシン類汚染物の処理方法。
【請求項5】
前記分解剤と共に、水または水分調整剤を添加する、請求項1〜4のいずれか一種に記載のダイオキシン類汚染物の処理方法。
【請求項6】
低減化されたダイオキシン類汚染物を、現場外の管理型処分場などへ搬送することをさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のダイオキシン類汚染物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−281148(P2006−281148A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107173(P2005−107173)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【出願人】(500518201)松田技研工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】