説明

ダイスの製造方法とダイスを備えるホットプレス装置

【課題】ホットプレス装置のダイスであって、高い耐クリープ性を持つダイスの製造方法を提供する。
【解決手段】中心軸に直交する平面による断面の外周縁が円形である中心部材13を用意する。次に、中心部材13の外周に、ドライ状態の炭素繊維19を巻き付けることにより、炭素繊維19でダイスの原形を作る。その後、中心部材13に巻き付けたドライ状態の炭素繊維19を加熱して炭素繊維19を収縮させることにより、中心部材13の外周を炭素繊維19が締め付ける力を増加させる。これにより、張力が増加した状態の炭素繊維19を加熱する。その後、ダイスを形成している炭素繊維19を、中心部材13から抜き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工材料を加熱しながら、互いに対向する一対のプレス部材で被加工材料をプレスする時に、プレス方向と直交する方向から被加工材料を押さえるように被加工材料を囲むリング状のダイスの製造方法に関する。
また、本発明は、ダイスを備えるホットプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットプレス装置は、被加工材料を、加熱しながらプレスすることにより成形する装置である。被加工材料は、粉末のセラミックスまたは金属であるが、他の材料(例えば、複合材)であってもよい。
【0003】
図1は、ホットプレス装置の構成例を示す。ホットプレス装置は、プレス部材21、23と加熱装置25とダイス27を備える。
【0004】
一対のプレス部材21、23は、被加工材料29をプレスする。例えば、一方のプレス部材21は、プレス方向に移動するラム31に押され、他方のプレス部材23側へ移動する。他方のプレス部材23は、他方のラム33によりプレス方向に支持されている。
【0005】
加熱装置25は、プレスされている被加工材料29を加熱する。加熱装置25は、例えば抵抗ヒータである。
【0006】
ダイス27は、被加工材料29を囲む内周面を有するリング状の型である。ダイス27は、一対のプレス部材21、23で被加工材料29をプレスする時に、プレス方向と直交する方向から被加工材料29を押さえる。
【0007】
ダイス27は、加熱装置25からの熱を被加工材料29に効率よく伝えることが好ましい。そのため、ダイス27には高熱伝導性が要求される。
また、プレス時に、ダイス27には引っ張り力が生じるため、ダイス27には耐クリープ性が要求される。
【0008】
上述したホットプレス装置のダイスは、例えば、下記の特許文献1、2に記載されている。また、本発明に部分的に関連する技術が、特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−1377号公報
【特許文献2】特許第4037934号
【特許文献3】特許第4315510号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特に大型の成型品を製作する場合には、ダイスの径方向厚みを抑えつつ、高い耐クリープ性を持つダイスが望まれる。近年において、より大型の成型品をホットプレス装置により製造することが求められている。大型(例えば、外径460mm)の成形品を製造する場合には、ダイスの耐クリープ性を確保するために、その径方向厚みが大きくなってダイスが大型化してしまう。その結果、ダイスの熱伝導性が低下するとともに、ダイスの取り扱いが不便になる。そのため、ダイスの径方向厚みを大きくすることなく、ダイスの高い耐クリープ性を得ることが望まれる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、ダイスの径方向厚みを大きくすることなく、ダイスの高い耐クリープ性が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明によると、被加工材料を加熱しながら、互いに対向する一対のプレス部材で被加工材料をプレスする時に、プレス方向と直交する方向から被加工材料を押さえるように被加工材料を囲むリング状のダイスの製造方法であって、
(A)中心軸に直交する平面による断面の外周縁が円形である中心部材を用意し、
(B)中心部材の外周に、ドライ状態の炭素繊維を巻き付けることにより、該炭素繊維でリング状のダイスの原形を作り、
(C)中心部材に巻き付けたドライ状態の前記炭素繊維を加熱して前記炭素繊維を収縮させることにより、中心部材の外周を前記炭素繊維が締め付ける力を増加させ、これにより、張力が増加した状態の前記炭素繊維を加熱し、
(D)その後、ダイスを形成している前記炭素繊維を、中心部材から抜き取る、ことを特徴とするダイスの製造方法が提供される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によると、前記中心部材は、炭素繊維強化炭素材または黒鉛で形成されている。
【0014】
また、本発明の好ましい実施形態によると、前記(C)において、前記炭素繊維を加熱する温度を、前記炭素繊維が最も収縮する第1温度まで上げ、その後、第1温度よりも高い第2温度まで上げる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によると、前記(B)において、前記中心部材の外周面に緩衝材を巻き、その上から前記炭素繊維を中心部材の外周に巻き付ける。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によると、前記(D)の後、前記ダイスの原形に対し、ピッチ含浸と熱間等方圧加圧加工と黒鉛化処理をこの順で行う。
【0017】
本発明によると、互いに対向し、被加工材料をプレスする一対のプレス部材と、
プレスされている被加工材料を加熱する加熱装置と、
プレス方向と直交する方向から被加工材料を押さえるように、被加工材料の外周面に接触して被加工材料を囲むリング状のダイスと、を備えるホットプレス装置であって、
前記ダイスは、上述の製造方法で製造されたものである、ことを特徴とするホットプレス装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
上述した本発明によると、中心部材に巻き付けたドライ状態の炭素繊維を加熱して炭素繊維を収縮させることにより、中心部材の外周を炭素繊維が締め付ける力を増加させる。すなわち、炭素繊維の張力を増加させる。この状態で炭素繊維を加熱する。これに関して、炭素繊維は、張力が生じている状態で加熱されると強度が向上する。
よって、上述した本発明の方法により、ダイスを形成する炭素繊維の強度を、従来よりも高めることができる。その結果、ダイスの径方向厚みを大きくしなくても、ダイスの高い耐クリープ性を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来のホットプレス装置の構成図である。
【図2】本発明の方法で製造されたダイスを用いたホットプレス装置の構成図である。
【図3】本発明の実施形態によるダイスの製造方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態によるダイスの製造方法の説明図である。
【図5】炭素繊維の加熱温度と、炭素繊維の線膨張率との関係を示すグラフである。
【図6】中心部材とダイスの変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0021】
図2(A)は、本発明の方法で製造されたダイス10を用いたホットプレス装置20の構成図である。
【0022】
ホットプレス装置20は、プレス部材3、5と加熱装置7とダイス10とを備える。
【0023】
一対のプレス部材3、5が、互いに対向するように設けられる。一対のプレス部材3、5は、粉末の被加工材料9をプレスする。図2(A)では、一方のプレス部材3(この図では、上側のプレス部材)は、一方のラム6(この図では、上ラム)により、他方のプレス部材5(この図では、下側のプレス部材)側へ押されて移動し、これにより、一対のプレス部材3、5で、被加工材料9をプレスする。この時、一方のプレス部材3から他方のプレス部材5に作用するプレス力は、他方のラム8(この図では、下ラム)により支持される。なお、被加工材料9は、本実施形態では粉末のセラミックスであるが、粉末の金属や他の材料(例えば、複合材)であってもよい。
【0024】
なお、一対のプレス部材3、5とダイス10により区画され被加工材料9が収容される収容空間に、図2(A)のように、1つまたは複数の円盤状のスペーサ部材11を配置してもよい。これにより、収容空間が、プレス方向に複数に分割され、分割された各空間に被加工材料9を収容できる。従って、1回のプレスで、分割された空間の数だけ、被加工材料9の成形品が得られる。
【0025】
加熱装置7は、一対のプレス部材3、5でプレスされている被加工材料9を加熱する。加熱装置7は、ダイス10の径方向外側から、ダイス10を介して被加工材料9を加熱するヒータであってよい。被加工材料9がセラミックスである場合には、加熱装置7は、セラミックスが焼結する温度(例えば、2000℃以上)に加熱する。
【0026】
ダイス10は、リング状の型である。ダイス10の内周面は、プレス時に、被加工材料9の外周面に接触して被加工材を囲むとともに、プレス方向と直交する方向から被加工材料9を押さえる。ダイス10は、本発明の実施形態による方法で製造される。図2(B)は、図2(A)のB−B線断面図であるが、ダイス10のみを示している。
【0027】
図3は、本発明の実施形態によるダイス10の製造方法を示すフローチャートである。
図4は、本発明の実施形態によるダイス10の製造方法の説明図である。
【0028】
ステップS1において、中心軸に直交する平面による断面の外周縁が円形である中心部材13を用意する。中心部材13は、円柱形または円筒形であってよい。好ましくは、中心部材13は、炭素繊維強化炭素材(C
/ C)または黒鉛で形成されている。炭素繊維強化炭素材または黒鉛で形成された中心部材13は、後述のステップS4において、2400℃〜2500℃に加熱されても溶けることがない。
好ましくは、中心部材13は、図4(A)に示すものであってよく、その両端部に拡径した鍔部15が設けられている。図4(A)において、右側の図は、左側の図のX−X線断面図である。
【0029】
ステップS2において、中心部材13の外周面13aに緩衝材17を巻く。図4の例では、ステップS2にて、図4(B)のように、2つの鍔部15の間において、中心部材13の外周面13aに緩衝材17を巻く。図4(B)において、右側の図は、左側の図のX−X線断面図である。好ましくは、緩衝材17は、中心部材13の外周面13aに巻きつけられる布状のものである。この場合、例えば、厚みが2mm〜3mmの緩衝材17を、2層〜3層程度、外周面13aに巻く。緩衝材17は、例えば、カーボンフェルトであってよい。緩衝材17により、後述のステップS4で炭素繊維19が切れることを防止できる。
【0030】
ステップS3において、中心部材13の外周面13aに巻かれた緩衝材17の上から、黒鉛化されていないドライ状態の炭素繊維19を中心部材13の外周に巻き付ける。これにより、該炭素繊維19でダイス10の原形を作る。この原形はドライ状態にある。炭素繊維19は、糸状のものであってよく、例えば、PAN(Polyacrylonitrile)系またはピッチ系の炭素繊維である。
図4の例では、ステップS3にて、図4(C)のように、2つの鍔部15の間において、中心部材13の外周(緩衝材17)に炭素繊維19を巻きつける。従って、2つの鍔部15が、炭素繊維19で形成されたダイス10の原形の中心軸C方向端面10aに接触した状態となる。図4(C)において、左側の図は、炭素繊維19を中心部材13の外周に巻いている途中の状態を示し、右側の図は、炭素繊維19を中心部材13の外周に巻き終わった状態を示す。なお、1本の炭素繊維19を中心部材13の外周に多重に巻き付けることにより、ダイス10の原形を作ってよい。
なお、ステップS3では、中心部材13の外周を炭素繊維19で適当な力で締め付けるように、中心部材13の外周に炭素繊維19を巻き付けるのがよい。
【0031】
ステップS4において、中心部材13に巻き付けたドライ状態の炭素繊維19を、不活性ガス中で、ヒータ(図示せず)で加熱して炭素繊維19を収縮させる。これにより、中心部材13の外周を炭素繊維19が締め付ける力を増加させ、この状態で炭素繊維19が当該ヒータで加熱される。すなわち、炭素繊維19が収縮する温度以上の温度まで炭素繊維19を加熱することにより、炭素繊維19の張力が増加した状態で炭素繊維19が加熱される。
これについて、ステップS4において加熱により収縮させられた炭素繊維19の張力は、ステップ3により中心部材13に巻かれた状態であってステップS4を行う直前の状態の炭素繊維19の張力よりも増加している。このように増加した張力が発生している炭素繊維19が加熱される。
【0032】
このようなステップS4により、炭素繊維19を焼成しつつ、炭素繊維19の強度を高める。
【0033】
好ましくは、ステップS4において、炭素繊維19を加熱する温度を、室温から、炭素繊維19が最も収縮する第1温度(例えば、1450℃〜1550℃の範囲内の温度)まで上げ、その後、引き続いて、炭素繊維19の黒鉛構造が発達する第2温度(例えば、2400℃〜2500℃の範囲内の温度)まで上げ、第2温度で、所定時間(例えば30分程度)、炭素繊維19を加熱して炭素繊維19の黒鉛構造を発達させる。なお、図5は、炭素繊維19の加熱温度と、炭素繊維19の膨張率(線膨張率)との関係を示すグラフである。図5の例では、炭素繊維19は、炭素繊維“トレカ”T300であり、まだ黒鉛化処理(例えば、2500℃での加熱を30分行う処理)をしていないものである。図5において、マイナスの線膨張率は、炭素繊維19が収縮していることを示し、1500℃付近において、炭素繊維19は最も収縮している。
第1温度で、炭素繊維19に発生する張力を最大限に増加させた状態とする。しかし、第1温度での加熱だけでは、炭素繊維19の黒鉛構造が不十分となるので、炭素繊維19の加熱温度をさらに第2温度まで上げることにより、炭素繊維19の黒鉛構造を発達させる。
【0034】
また、好ましくは、ステップS4において、炭素繊維19の加熱温度を、炭素繊維19の収縮が始まる温度(図5の例では1200℃弱)から、炭素繊維19の収縮状態が終わる温度(図5の例では2000℃程度)へ所定時間(例えば、4時間〜8時間の範囲内の時間)かけて上げる。これについて、時間に対する温度上昇率は、一定であってよい。
このような過程により、炭素繊維19に張力が発生した状態で、炭素繊維19を黒鉛化できる。その結果、引っ張り強度を高めた黒鉛化繊維19を得ることができる。
また、この過程に引き続いて、炭素繊維19の加熱温度を、炭素繊維19の収縮状態が終わる温度から、さらに、第2温度まで上げる。次いで、上述のように、第2温度で、所定時間(例えば30分程度)、炭素繊維19を加熱する。
【0035】
また、ステップS4では、炭素繊維19の収縮により、緩衝材17が、中心部材13の軸に向かう径方向に圧縮される。これにより、炭素繊維19に過大な張力が発生して炭素繊維19が切れることを防止できる。すなわち、炭素繊維19に発生する張力を、炭素繊維19が切れないように緩衝材17で調節することができる。
【0036】
ステップS5において、中心部材13から取り外した、ダイス10を形成している炭素繊維19(以下、ダイス形成繊維19という)にピッチ含浸を行う。例えば、温度200〜300℃の雰囲気下で、低軟化点ピッチをダイス10に真空含浸させる。
なお、中心部材13からの炭素繊維19の取り外しは、中心部材13から鍔部15を取り外した状態で、中心部材13の軸方向に行う。この取り外しは、緩衝材17が中心部材13に巻かれていることにより、比較的容易になる。
【0037】
ステップS6において、ピッチが含浸されたダイス形成繊維19に、HIP処理(熱間等方圧加圧加工)を行う。例えば、650℃の温度と1000kgf/cmの圧力の下で、ダイス形成繊維19に対し、HIP処理を行う。
【0038】
ステップS7において、ダイス形成繊維19に対し、黒鉛化処理を行う。例えば、温度2000〜2500℃の窒素ガス(N)あるいはアルゴンガス(Ar)雰囲気下に、ダイス形成繊維19を置くことにより、ダイス形成繊維19に対し黒鉛化処理を行う。
【0039】
このような、ステップS5、S6、S7を、繰り返して行う。これにより、ダイス10の組織を緻密化することができる。好ましくは、ステップS5、S6、S7を、3回以上、繰り返して行う。なお、ステップS5、S6、S7は、例えば、特許文献3に記載されているピッチ含浸とHIP処理と黒鉛化処理と同様の処理であってよい。
【0040】
その後、ステップS8において、機械加工によりダイス10の形状を整えてもよい。
【0041】
なお、ステップS2を省略してもよい。すなわち、ステップS4で、炭素繊維19に過大な張力が発生して炭素繊維19が切れない場合には、ステップS1の次に、上述のステップS3において、炭素繊維19を、中心部材13の外周面13aに直接巻き付けてもよい。
【0042】
上述した本発明の実施形態によるダイス10の製造方法によると以下の効果(1)〜(4)が得られる。
【0043】
(1)ステップS3で、中心部材13に巻き付けたドライ状態の炭素繊維19を、ステップS4で、加熱して炭素繊維19を収縮させることにより、中心部材13の外周を炭素繊維19が締め付ける力を増加させる。すなわち、炭素繊維19の張力を増加させる。この状態で炭素繊維19を加熱する。これに関して、炭素繊維19は、張力が生じている状態で加熱されると強度が向上する。この場合、当該張力が大きいほうが、炭素繊維19の強度が増加する。
よって、上述した本実施形態の製造方法により、ダイス10を形成する炭素繊維19の強度を、従来よりも高めることができる。その結果、ダイス10の径方向厚みを大きくしなくても、ダイス10の高い耐クリープ性を確保することが可能となる。
【0044】
(2)上述のステップS4において、炭素繊維19を加熱する温度を、室温から、炭素繊維19が最も収縮する第1温度(1500℃程度)まで上げ、その後、炭素繊維19の黒鉛構造が発達する第2温度(2400℃〜2500℃の範囲内の温度)まで上げることにより、炭素繊維19の強度を最も効果的に高めることができる。
この場合に、本実施形態の製造方法により製造されたダイス10は、370MPaの引っ張り強さを有していた。これに対し、従来のダイスでは、290MPa程度の引っ張り強さまでしか有していなかった。従って、本実施形態の製造方法により、耐クリープ性能(引っ張り強さ)を30%程度も高めることができる。
【0045】
(3)ステップS3において、樹脂が含浸されていないドライ状態の炭素繊維19を中心部材13の外周に巻き付けるので、炭素繊維19を均一に巻き付けることができる。すなわち、炭素繊維19に樹脂を含浸させた場合には、炭素繊維19に付着する樹脂の不均一性により、炭素繊維19の間隙が不均一となるが、本実施形態では、これを避けることができる。
【0046】
(4)炭素繊維19に樹脂が含浸されていないドライ状態のダイス10の原形に対して、ステップS4の熱処理を行うので、樹脂と共に炭素繊維19が収縮することにより樹脂層が割れて隙間ができることがない。
【0047】
本実施形態の製造方法により製造されたダイス10を用いたホットプレス装置20では、以下の効果(5)が得られる。
【0048】
(5)ダイス10の高い耐クリープ性が確保されるので、その分、ダイス10の径方向厚みを小さくしてダイス10を小型にすることができる。その結果、ダイス10の熱伝導性が向上するとともに、ダイス10の取り扱いが便利になる。
【0049】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0050】
例えば、中心部材13は、上述の実施形態では円柱形状または円筒形状のものであったが、その外周面13aがテーパ状であってもよい。すなわち、中心部材13は、その中心軸と直交する平面による断面の外周縁が円形であるが、図6(A)のように、当該円形の半径が、中心部材13における中心軸方向一端から中心軸方向他端側へ移行するにつれ次第に小さくなる。この場合には、本発明の方法で製造されたダイス10の内面はテーパ面となる。すなわち、図6(B)のように、ダイス10は、その中心軸Cと直交する平面による断面の内周縁10bが円形であるが、当該円形の半径が、ダイス10における中心軸C方向一端側から中心軸C方向他端側へ移行するにつれ次第に小さくなる。このようなダイス10を用いたホットプレス装置20でプレスされた被加工材料9は、ダイス10から抜き取り易くなる。なお、図6(B)において、右側の図は、左側の図のX−X線断面図である。
この場合に、上述のステップS2を省略してもよいが、ステップS2を省略しない場合には、ステップS2において、中心部材13の外周面13aに直交する方向における緩衝材17の厚みが、中心部材13の外周面13a全体にわたって一定となるように、中心部材13の外周面13aに緩衝材17を巻き付ける。
中心部材13の外周面13aをテーパ状にする場合における他の点は、上述と同じである。
【符号の説明】
【0051】
3、5 プレス部材、6 ラム、7 加熱装置、8 ラム、9 被加工材料、10 ダイス、10a ダイス原形の軸方向端面、11 スペーサ部材、13 中心部材.13a 中心部材の外周面、15 鍔部、17 緩衝材、19 炭素繊維、20 ホットプレス装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材料を加熱しながら、互いに対向する一対のプレス部材で被加工材料をプレスする時に、プレス方向と直交する方向から被加工材料を押さえるように被加工材料を囲むリング状のダイスの製造方法であって、
(A)中心軸に直交する平面による断面の外周縁が円形である中心部材を用意し、
(B)中心部材の外周に、ドライ状態の炭素繊維を巻き付けることにより、該炭素繊維でリング状のダイスの原形を作り、
(C)中心部材に巻き付けたドライ状態の前記炭素繊維を加熱して前記炭素繊維を収縮させることにより、中心部材の外周を前記炭素繊維が締め付ける力を増加させ、これにより、張力が増加した状態の前記炭素繊維を加熱し、
(D)その後、ダイスを形成している前記炭素繊維を、中心部材から抜き取る、ことを特徴とするダイスの製造方法。
【請求項2】
前記中心部材は、炭素繊維強化炭素材または黒鉛で形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のダイスの製造方法。
【請求項3】
前記(C)において、前記炭素繊維を加熱する温度を、前記炭素繊維が最も収縮する第1温度まで上げ、その後、第1温度よりも高い第2温度まで上げる、ことを特徴とする請求項1または2に記載のダイスの製造方法。
【請求項4】
前記(B)において、前記中心部材の外周面に緩衝材を巻き、その上から前記炭素繊維を中心部材の外周に巻き付ける、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載のダイスの製造方法。
【請求項5】
前記(D)の後、ダイスを形成している前記炭素繊維に対し、ピッチ含浸と熱間等方圧加圧加工と黒鉛化処理をこの順で行う、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のダイスの製造方法。
【請求項6】
互いに対向し、被加工材料をプレスする一対のプレス部材と、
プレスされている被加工材料を加熱する加熱装置と、
プレス方向と直交する方向から被加工材料を押さえるように、被加工材料の外周面に接触して被加工材料を囲むリング状のダイスと、を備えるホットプレス装置であって、
前記ダイスは、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたものである、ことを特徴とするホットプレス装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−39696(P2013−39696A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176651(P2011−176651)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(500302552)株式会社IHIエアロスペース (298)
【出願人】(000198329)株式会社IHI機械システム (27)
【Fターム(参考)】