ダイナミックダンパー及びそれを装着した中空プロペラシャフト
【課題】中空シャフトの径の大小に関係なく、高い軸直角ばね特性を有し、低周波域から高周波域での共振特性を得て、金属部分を減らし、かつ非接着としてコストを下げ、装着容易なダイナミックダンパー及びそれを装着した中空プロペラシャフトを提供する。
【解決手段】中空シャフト内に遊嵌するダンパーマス両側に位置して中空シャフト内に固定する装着部材と、ダンパーマスと装着部材とを連結する一体的連結部材からなり、一体的連結部材は、装着部材にダンパーマスを弾性的に且つ互いに同一軸で連結すると共に、同一軸に傾斜した傾斜連結部と、これらを繋ぐ接続部でなることが特徴であり、これによって、装着部材と一体的連結部材との役割が分離でき、かつ非接着にでき、一体的連結部材の質量及び剛性を調整すれば、高い軸直角ばね特性を保持しつつ、広い範囲の周波数で共振特性を得て、製作容易でコスト安の製品が得られる。
【解決手段】中空シャフト内に遊嵌するダンパーマス両側に位置して中空シャフト内に固定する装着部材と、ダンパーマスと装着部材とを連結する一体的連結部材からなり、一体的連結部材は、装着部材にダンパーマスを弾性的に且つ互いに同一軸で連結すると共に、同一軸に傾斜した傾斜連結部と、これらを繋ぐ接続部でなることが特徴であり、これによって、装着部材と一体的連結部材との役割が分離でき、かつ非接着にでき、一体的連結部材の質量及び剛性を調整すれば、高い軸直角ばね特性を保持しつつ、広い範囲の周波数で共振特性を得て、製作容易でコスト安の製品が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車走行時の静粛性向上を図るための、ダイナミックダンパー及びそれを装着した中空プロペラシャフトに関するものであって、より詳しくは、中空シャフト内に遊嵌するダンパーマスと、このダンパーマス両側に位置して中空シャフト内に圧縮により固定する装着部材と、ダンパーマスと両側の装着部材とを連結する一体的連結部材とからなることで、低コスト且つ自動車走行特性により適切に対応できるようにしたダイナミックダンパー及びそれを装着した中空プロペラシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイナミックダンパーは、自動車の駆動力伝達に供する中空プロペラシャフト内に装着して、車体の振動を防止し自動車走行時の静粛性の向上を図り、加えて、中空プロペラシャフト自身の振動による金属疲労に随伴する強度低下を防止し、その耐久性を高めるためのものである。この中空プロペラシャフト用のダイナミックダンパーは、通常、図17に示すように、外周面にラバー53を貼り付けたアウターパイプ50と、このアウターパイプ50の軸芯に配置したダンパーマス51と、このダンパーマス51とアウターパイプ50との間に介在して両者を弾性的に連結するマウントラバー52と、を少なくとも有している。このダイナミックダンパーは、中空プロペラシャフト60に内設し、中空プロペラシャフト60の回転時に発生する振動を吸収し防振することで、中空プロペラシャフト60の振動を解消しようとするものである。
【0003】
上記のダイナミックダンパーは、通常、金型を加熱して所定の温度にし、予めダンパーマス51やアウターパイプ50を表面処理、化成処理し、さらに接着剤を塗布した後、金型に挿入しゴム素材を射出して加硫成形することにより、得られる。したがって、このダイナミックダンパーは、ダンパーマス51及びアウターパイプ50が、ラバー53及びマウントラバー52と一体化するメリットがあるものの、これを作製するのに長い時間がかかり、生産性が低く、コスト高となりやすい。このような状況に対処するものとして、以下のような技術が知られている。
【特許文献1】特開2004−108426号公報
【特許文献2】特開2004−156674号公報
【特許文献3】特開2002−235802号公報
【特許文献4】特開2002−235803号公報
【特許文献5】特開2005−48936号公報
【0004】
特許文献1のダイナミックダンパーは、図18に示すように、シャフト61の外周に設けるもので、ダンパーマス51aと、このダンパーマス51a及びシャフト61間に圧入する両側のマウントラバー52aとからなるものである。
【0005】
特許文献2のダイナミックダンパーは、図19に示すように、外周面に径方向に設けた2本の環状溝62を有するダンパーマス51bと、2本の環状溝62に圧入し固定保持されるリング状のマウントラバー52bとからなり、中空プロペラシャフト60に内設するものである。
【0006】
特許文献3のダイナミックダンパーは、図20に示すように、取付パイプ54と、この取付パイプ54の軸心部に配置されたダンパーマス51cと、これら取付パイプ54とダンパーマス51cとの間に配置されて弾性的に連結するマウントラバー52cとからなり
、マウントラバー52cの外側にアウターパイプ50cを配置し、このアウターパイプ50cを絞り加工した後、取付パイプ54の中にダンパーマス51cを圧入してなるものである。
【0007】
特許文献4のダイナミックダンパーは、図21に示すように、取付パイプ54と、この取付パイプ54の軸心部に配置されたダンパーマス51cと、これら取付パイプ54とダンパーマス51cとの間に配置されて弾性的に連結するマウントラバー52cとからなり
、取付パイプ54を樹脂製とすると共に、マウントラバー52cの内側に配置された樹脂製のインナーパイプ55と、マウントラバー52cの外側に配置された樹脂製のアウターパイプ56とを具備し、インナーパイプ55の中にダンパーマス51cを圧入してなるものである。
【0008】
特許文献5のダイナミックダンパーは、図22に示すように、筒状に形成されて外周面に径方向に凹溝57を有するマウントラバー52dと、この凹溝57に非接着で装着されたリング状のダンパーマス51dと、マウントラバー52dの内孔70に非接着で挿入配置された筒状部71とこの筒状部71の一端から径方向外方に向かってダンパーマス51dの内周面より外側に延出するフランジ部72とを有し、筒状部71の内孔71aに挿入された取付ボルト73を緊締することにより、振動体74の取付面とフランジ部72とでマウントラバー52dを挟持する状態に取り付けられる取付部材75と、から構成している。
【0009】
上述した特許文献1ないし5に記載の技術は、金具部分であるダンパーマスの表面処理、化成処理、接着剤の塗布処理などが必要なく、生産性を上げることが出来、ひいては低コストを実現できるという特徴を謳っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されたものは、マウントラバー52aにおけるシャフト61に固定する部分と共振特性を出す部分とが一体であるため、その部分が圧縮成分となり、この圧縮成分が共振周波数特性を司ることになって共振周波数が高くなり、低周波域での共振特性を得ることが難しくなる。それゆえ、低周波域での共振特性を得るには、マウントラバー52aの剛性を下げる必要があるが、材料に限界があり、現状では実現が難しい。
【0011】
また、特許文献2に記載されたものは、特許文献1と同様に生産性を上げることが出来、低コストを実現できるが、上記した特許文献1と同じ理由で低周波域での共振特性を得ることが出来ない。
【0012】
また、特許文献3に記載されたものは、金具部分である取付パイプ54、ダンパーマス51c、アウターパイプ50cの表面処理、化成処理、接着剤の塗布処理などが必要ないが、その一方で圧入するための器具と圧入工程が必要となり、生産性を上げたことにならず、実際には低コストを実現することは困難である。
【0013】
また、特許文献4に記載されたものは、特許文献3における取付パイプ54、アウターパイプ56を樹脂製としたに過ぎず、上記した特許文献3と同じ理由で生産性を上げたことにならず、この技術も、実質的には低コストを実現することは困難である。
【0014】
さらに、特許文献5に記載されたものは、ダンパーマス51dが中空であるが、マウントラバー52d及び取付部材75を圧入する工程があり、さらにマウントラバー52dを固定する部分と共振特性を出す部分とが一体となり、その部分が圧縮成分となって、この圧縮成分が共振周波数特性を司ることになって共振周波数が高くなり、特許文献1と同様に低周波域での共振特性を得ることが難しくなることになる。
【0015】
以上述べた従来技術の技術的問題点を踏まえて、本発明者は、中空シャフトの径の大小にかかわらず、高い軸直角ばね特性を有しつつ、低周波域から高周波域での共振特性を得ることが可能となり、かつダンパーマス以外の金属部分を無くしたダイナミックダンパーを開発し、特願2005−374893として特許出願を行なっている。
そして、上記出願後にさらに性能向上を目指して該技術を追試する過程で、ダンマスを中空にすることにより、両端を貫通する弾性体支持部が形成され、ストッパーとしてダンパーマス外周をゴム弾性体が覆うため、非接着でもダイナミックダンパーの機能を十分に果たすことができる点に着目し、本発明を完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、中空シャフト内に遊嵌するダンパーマスと、該ダンパーマス両側に位置して前記中空シャフト内に圧縮により固定する装着部材と、前記ダンパーマスと両側の装着部材とを連結する一体的連結部材とからなり、前記一体的連結部材は、両側の装着部材に前記ダンパーマスを、弾性的に且つ互いに同一軸となるように連結すると共に、前記同一軸に対して傾斜した傾斜連結部と、両側の傾斜連結部を繋ぐ接続部とからなることを特徴とするダイナミックダンパーが提供される。
【0017】
また、本発明によれば、前記一体的連結部材の接続部は、前記ダンパーマスにこれの軸方向に設けた孔を通した孔接続部であるダイナミックダンパーが提供される。
【0018】
また、本発明によれば、前記一体的連結部材の接続部は、前記ダンパーマス外周面上にほぼ等間隔に渡した少なくとも5条以上の凸条接続部であるダイナミックダンパーが提供される。
【0019】
また、本発明によれば、隣接する前記凸条接続部同士が円周方向に帯状に形成された橋絡部によって連接されてなる上記ダイナミックダンパーが提供される。
【0020】
また、本発明によれば、前記一体的連結部材の接続部は、前記孔接続部及び前記凸条接続部により構成したダイナミックダンパーが提供される。
【0021】
また、本発明によれば、前記一体的連結部材の傾斜連結部における前記同一軸に対する傾斜は、45±20度の範囲であるダイナミックダンパーが提供される。
【0022】
また、本発明によれば、前記装着部材の一方の輪径が他方の装着部材の輪径よりも小径にされてなるダイナミックダンパーが提供される。
【0023】
また、本発明によれば、前記装着部材の中空シャフトとの接触面に、円周上等間隔に軸方向に延びている切り欠きが3箇所以上形成されてなるダイナミックダンパーが提供される。
【0024】
また、本発明によれば、上記したダイナミックダンパーにおける両側の前記装着部材の内側端部間に位置する前記中空シャフトに、凹凸部を設けて、該凹凸部を前記中空シャフトに前記ダイナミックダンパーを挿入する際の位置決めとしたことを特徴とする中空プロペラシャフトが提供される。
【0025】
また、本発明によれば、上記したダイナミックダンパーにおける両側の前記装着部材の外側端部間に位置する前記中空シャフトに、前記装着部材の外側端部間距離Lより短い圧縮凹凸部を設けて、前記中空シャフトに前記ダイナミックダンパーを挿入した際、前記圧縮凹凸部により同一軸に対して傾斜してなる前記一体的連結部材を圧縮するようにしたことを特徴とする中空プロペラシャフトが提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明のダイナミックダンパーは、中空シャフト内に遊嵌するダンパーマスが傾斜してなる一体的連結部材の傾斜連結部にて両側の装着部材に連結しているため、傾斜連結部はせん断成分と圧縮成分とが支配的となり、この傾斜連結部の質量及び剛性を調整すれば、高い軸直角ばね特性を保持しながら低周波から高周波の広い範囲での共振特性を出すことができる。一方、この一体的連結部材に関わりなく中空シャフト内に装着部材にて圧縮固定することができる。したがって、中空プロペラシャフトにおける中空シャフトの径の大小にかかわらず、構造的に一体的連結部材や装着部材に傷が付かず耐久性を保持でき、高い軸直角ばね特性を有しつつ、低周波域から高周波域での共振特性を得ることが可能となり、その上、ダンパーマス以外の金属部分を無くし、且つ両側の傾斜連結部同士を接続部により繋ぐことで非接着となり、生産性を上げてコストを下げ得、中空シャフトへの装着も容易となる効果がある。
【0027】
また、一体的連結部材は、これのダンパーマスの孔を通した孔接続部により、両側の傾斜連結部同士を繋ぐことで、ダンパーマスと一体的連結部材とが非接着となり、上記した効果がより一層確実となる。
【0028】
また、一体的連結部材は、これのダンパーマス外周面上に渡した凸条接続部により、両側の傾斜連結部同士を繋ぐことで、ダンパーマスと一体的連結部材とが非接着となり、上記した効果がより一層確実となる。その上、中空シャフトが常用回転域を越えて振幅が異常に大となると、凸条接続部がストッパーとして機能し、中空シャフトの内壁に当たり一体的連結部材がそれ以上変形しない。したがって、エンジンの常用回転域での軸直角方向の防振機能を果たしつつ、常用回転域を大きく越え、加速度が大幅に増加しても同じく防振機能を果たし、且つ変形を抑制するから、充分な耐久性を有する。
【0029】
また、一体的連結部材は、上記した孔接続部及び凸条接続部により、両側の傾斜連結部同士を繋ぐことで、ダンパーマスと一体的連結部材とが非接着となり、上記した効果がより一層確実となる。その上、上記した凸条接続部によるストッパー機能もある。
【0030】
また、一体的連結部材の傾斜連結部は、せん断成分と圧縮成分とがより確実に支配的となって、上記した効果がより一層確実となる。
【0031】
また、装着部材の一方の輪径を他方の輪径よりも小径とするか、装着部材の中空シャフトの内周との接触面に、円周上等間隔に軸方向に延びている切り欠きを3箇所以上形成することにより、中空シャフトへの装着部材の装着がよりスムーズに行うことができる。
【0032】
また、中空プロペラシャフトにおける中空シャフトにダイナミックダンパーを挿入する際、その挿入位置を凹凸部により決めることにより、上記効果に加えて、中空シャフトにダイナミックダンパーを装着する操作が極めて容易となる。
【0033】
また、中空プロペラシャフトにおける中空シャフトにダイナミックダンパーを挿入した際、圧縮凹凸部により装着部材及び一体的連結部材のうち特に一体的連結部材の傾斜連結部を圧縮することになる。したがって、上記効果に加えて、この圧縮によりダイナミックダンパーの耐久性を向上させることができる。
【0034】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例】
【0035】
<実施例1>
図1は本発明のダイナミックダンパーを示す断面図、図2は本発明のダイナミックダンパーを中空プロペラシャフト内に装着する操作状態を示す断面図、図3は本発明のダイナミックダンパーを中空プロペラシャフト内に装着した状態を示す断面図である。
これらの図面において、本発明のダイナミックダンパー1は、中空プロペラシャフトにおける中空シャフト2内に遊嵌するダンパーマス3と、このダンパーマス3両側に位置して中空シャフト2内に圧縮により固定する装着部材4、5と、ダンパーマス3と両側の装着部材4、5とを連結する一体的連結部材7とからなり、この一体的連結部材7は、両側の装着部材4、5にダンパーマス3を、弾性的に且つ互いに同一軸6になるように連結すると共に、同一軸6に対して傾斜した傾斜連結部7a、7bと、両側の傾斜連結部7a、7bを繋ぐ接続部7cとからなるものであり、一体に成形されている。
【0036】
ダンパーマス3は、ある程度の重量が必要となるので、経済性から鋳鉄や鋼鉄が多く用いられる。装着部材4、5及び一体的連結部材7は、いずれも弾性体であるSBR(スチレン−ブタジエン共重合系合成ゴム)や天然ゴム、あるいはそれらの混合物が用いられる
。しかし、これら装着部材4、5及び一体的連結部材7は、従来技術のマウントラバー52とは異なり、装着部材4、5はラバー53を貼り付けたアウターパイプ50に相当し、一体的連結部材7はマウントラバー52に相当する、と言うことができる
【0037】
この実施例では、ダンパーマス3は、これの軸方向に孔8を設けて円環盤状であり、この孔8には、後述のとおり、一体的連結部材7の接続部7cとして孔接続部12が通り、装着部材4側の傾斜連結部7aと、装着部材5側の傾斜連結部7bとを繋ぎ一体としている。なお、ダンパーマス3の形状は、これに限定されるものではなく、後述するように、種々変わることができる。
【0038】
装着部材4、5は、円盤10に孔11を開けた円環盤状を成し、ダイナミックダンパー1を中空シャフト2内に装着保持する役目を担っている。すなわち、装着部材4、5の円盤10の外径は中空シャフト2の内径よりもやや大きく形成され、中空シャフト2内に装着部材4、5を圧入することで、強固に圧縮固定するから、この装着に関して一体的連結部材7にほとんど影響を及ぼすことがない。また、装着部材4、5の円盤10の周縁部をカットすることにより、中空シャフト2内にダイナミックダンパー1を圧入し易くしている。
【0039】
一体的連結部材7は、前記ダンパーマス3と装着部材4、5とを連結するものであり、
装着部材4側の傾斜連結部7aと装着部材5側の傾斜連結部7bとを、前記接続部7cにより繋ぎ一体としている。すなわち、この実施例の接続部7cは、ダンパーマス3の孔8を通る孔接続部12であり、これによって、傾斜連結部7aと7bとを繋ぎ一体としている。さらに、この実施例では、一体的連結部材7と装着部材4、5とが一体に形成されている。すなわち、装着部材4、5の円盤10の片側面とダンパーマス3の両側平面とは、傾斜した連続壁面形状、換言すれば傾斜連結部7a、7bにて連結されている。
【0040】
したがって、一体的連結部材7における傾斜連結部7a、7bは、せん断成分と圧縮成分とが支配的となり、傾斜連結部7a、7bの長さ、角度及び剛性を調整すれば、高い軸直角ばね特性を保持しながら、低周波から高周波の広い範囲での共振特性を出すことが可能となる。上述したように、装着部材4、5は、装着に関して一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bにほとんど影響を及ぼさないから、これら傾斜連結部7a、7bの上記特性も装着部材4、5により影響されずに得ることができる。
また、一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bが傾斜した連続壁面形状、換言すれば傘形状であるため、中空シャフト2内に装着する際に円盤状の装着部材4、5の倒れ防止に対しても寄与している。
【0041】
また、一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bの同一軸6に対する傾斜角度αは、45±20度の範囲である。この傾斜角度αの範囲内にある傾斜連結部7a、7bは、せん断成分と圧縮成分とが確実に支配的となり、高い軸直角ばね特性を保持しながら、低周波から高周波の広い範囲での共振特性を確実に出すことが出来る。一方、この傾斜角度αが25度より小さくなると、せん断成分と曲げ成分とが主流となり、高い軸直角ばね特性を保持できず、低周波寄りの共振特性しか得ることができないようになる。逆に、この傾斜角度αが65度より大きくなると、圧縮成分が主流となり、高い軸直角ばね特性を得られるが、高周波寄りの共振特性しか得ることができないようになる。以上の理由から同一軸6に対する傾斜角度αを45±20度に規定したが、より好ましい傾斜角度αは、45±10度の範囲である。
【0042】
上記構成のダイナミックダンパー1は、ダンパーマス3、装着部材4、5、一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bが同一軸6上となるように一体に作られる。なお、装着部材4、5、一体的連結部材7を同一のゴム素材とすれば、金型を使い射出成形などにより非接着で一気に製作が可能となり、接着に伴って金属部分であるダンパーマス3の表面処理、化成処理、接着剤塗布が必要なくなる。この製作されたダイナミックダンパー1は、図2、3に示すように、中空シャフト2内に圧入され使用されるが、この際もダイナミックダンパー1の同一軸6と中空シャフト2の軸13とを一致させることが重要である。
【0043】
そして、このような構成のダイナミックダンパー1であっても、図4に示すように、有効な吸振効果を期待できる周波数域を得ることができ、一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bの長さ、角度及び剛性を調整すれば、高い軸直角ばね特性を保持しながら、この周波数域を横軸方向に左右移動が可能となり、低周波から高周波の広い範囲での共振特性を出すことが出来る。
【0044】
次に、上記構成になるダイナミックダンパー1の作用について説明する。
まず、中空プロペラシャフトの中空シャフト2の径や回転数に適合するダイナミックダンパー1を選択し、中空シャフト2内にダイナミックダンパー1を圧入により装着する。この際、装着状態でダイナミックダンパー1の同一軸6と中空シャフト2の軸13とを一致させるようにする。ダイナミックダンパー1は、一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bに関わりなく中空ラシャフト2内に装着部材4、5が圧縮して固定するから、傾斜連結部7a、7bはせん断成分と圧縮成分とが支配的となる。その結果、高い軸直角ばね特性を保持しながら、低周波から高周波の広い範囲での共振特性を出すことが出来て、設計の自由度が著しく高まる。しかも、中空プロペラシャフトの径が小さくなっても、構造的に一体的連結部材7や装着部材4、5に傷が付かないから、耐久性を保持でき、さらにダンパーマス3以外の金属部分を無くすことが出来、加えて接着も必要ないから低コストが可能となる。
【0045】
次に、上記構成になるダイナミックダンパー1が中空プロペラシャフトの軸とわずかなズレが生じていると、中空プロペラシャフトの回転に伴い、遠心力が働く。中空プロペラシャフトが回転して、それが常用回転域内、例えば5000rpmであれば、一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bの歪みが少なく、ダンパーマス3上に、後述のように、等間隔に設置した複数条の凸条接続部14がストッパーの役割を果たし、凸条接続部14が中空シャフト2の内壁に当たることがなく、中空プロペラシャフトの静粛性を保持する。一方、中空プロペラシャフトの回転が常用回転域を越えて、例えば、7000rpmになると、傾斜連結部7a、7bの歪みが大きくなり、凸条接続部14が中空シャフト2の内壁に当たり、傾斜連結部7a、7bの歪みがそれ以上進まず、耐久性を確保すると共に、中空プロペラシャフトの静粛性も保持する。
【0046】
図5は中空プロペラシャフトにおける中空シャフト2の形状を示すものであり、その形状は、中空シャフト2に上記したダイナミックダンパー1を装着した際、両側の装着部材4、5の内側端部間に位置することになる中空シャフト2に、予め凹凸部15を設けておき、この凹凸部15を中空シャフト2にダイナミックダンパー1を圧入する際の位置決めとするものである。これにより、中空シャフト2にダイナミックダンパー1を圧入する際、その圧入位置を凹凸部15により決めることができて、装着操作が極めて容易となる。
【0047】
図6は中空シャフト2の他の形状を示すものであり、この形状は、中空シャフト2に上記したダイナミックダンパー1を装着した際、両側の装着部材4、5の外側端部間に位置することになる中空シャフト2に、装着部材4、5の外側端部間距離Lより短い圧縮凹凸部16を予め設けておき、この中空シャフト2にダイナミックダンパー1を圧入した際、この圧縮凹凸部16によりダイナミックダンパー1を圧縮するものである。これにより、装着部材4、5及び一体的連結部材7のうち特に傾斜連結部7a、7bを圧縮することになって、ダイナミックダンパー1の耐久性を向上させることができる。
【0048】
<実施例2>
図7ないし9は本発明の他のダイナミックダンパー1aを示し、このダイナミックダンパー1aと図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1との相違点は、ダンパーマス3aに孔8がなく、したがって孔接続部12もなく、その代わり、接続部7cとして、ダンパーマス3a外周面上にほぼ等間隔に渡した少なくとも5条以上の凸条接続部14を有して、一体的連結部材7Aを構成し、この凸条接続部14により、両側の傾斜連結部7a、7b同士を繋ぐ点にある。したがって、この凸条接続部14により、両側の傾斜連結部7a、7b同士を繋ぐことで、両側の装着部材4、5同士を連結するため、ダンパーマス3aと一体的連結部材7Aとを非接着とすることが出来る。
その上、中空シャフト2が常用回転域を越えて振幅が異常に大となると、両側の傾斜連結部7a、7bが歪み、凸条接続部14が中空シャフト2の内壁に当たり、ストッパーとして機能して一体的連結部材7Aの両側の傾斜連結部7a、7bがそれ以上変形しない。したがって、エンジンの常用回転域での軸直角方向の防振機能を果たしつつ、常用回転域を大きく越え、加速度が大幅に増加しても同じく防振機能を果たし、且つ変形を抑制するから、充分な耐久性を有する。その他の構成、作用は図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1と同様なので、図面に符号を付してその説明を省略する。
【0049】
<実施例3>
図10ないし12は、図7に示した実施例2の形態において、隣接する前記凸条接続部14同士が円周方向に帯状に形成された橋絡部17によって連接されてなるダイナミックダンパー1bの構成を示している。
橋絡部17は凸条接続部14同士を連接することによって凸条接続部の形状を安定化させ、本発明のダイナミックダンパー1bの機能を一層有効に発揮させるために有効であり、凸条接続部14と同じ材質で形成されていることが、一体的に連接される上で好ましい。橋絡部17の形状は特に限定されるものではないが、上記目的を一層有効にするためには、凸条接続部14の軸方向の中央部を中心とする帯状に形成されていることが好ましいく、その高さは凸条接続部14の高さとほぼ同じ程度であることが好ましい。
その他の構成、作用は図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1並びに図7ないし9に示すダイナミックダンパー1aと同様なので、図面に符号を付してその説明を省略する。
【0050】
<実施例4>
図13は本発明の他のダイナミックダンパー1cを示し、このダイナミックダンパー1cと図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1との相違点は、ダンパーマス3に孔8があり、したがって孔接続部12もあり、その上、ダンパーマス3外周面上にほぼ等間隔に渡した少なくとも5条の凸条接続部14も具備して接続部7cをなし、一体的連結部材7Bを構成して、これらの孔接続部12及び凸条接続部14により、両側の傾斜連結部7a、7b同士を繋ぐ点にある。この一体的連結部材7Bの孔接続部12及び凸条接続部14により、両側の傾斜連結部7a、7b同士を繋ぎ、両側の装着部材4、5同士を連結するから、ダンパーマス3aと一体的連結部材7Bとが非接着となり、さらに凸条接続部14があるから上記のようにストッパーとして機能する。すなわち、この実施例3は実施例1及び2を組み合わせたものとなる。その他の構成、作用は図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1並びに図7ないし9に示すダイナミックダンパー1aと同様なので、図面に符号を付してその説明を省略する。
【0051】
<実施例5>
図14は本発明の他のダイナミックダンパー1dを示し、このダイナミックダンパー1dと図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1との相違点は、装着部材4(5)の一方の輪径aが他方の装着部材5(4)の輪径bよりも小径にされていることにある。このように一方の装着部材の輪径が他方の装着部材の輪径よりも小径にされていることにより、小径にされている方の装着部材側から中空シャフト2に装着すれば、中空シャフト2内に装着が容易になり作業性が向上する。なお、小径にされている装着部材5(4)の輪径aは、中空シャフト2の内径よりも若干大きければ良く、装着部材4(5)の輪径bはそれよりも大径にされていても、ゴムの弾性あるいは装着部材の外周面に塗布する油の作用で、ダイナミックダンパー1dは中空シャフト2内に圧縮状態で装着される。
【0052】
<実施例6>
図15は本発明の他のダイナミックダンパー1eを示し、このダイナミックダンパー1eと図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1との相違点は、装着部材4,5の中空シャフト2との接触面に円周上等間隔に軸方向に延びている切り欠き9が3箇所以上形成されてなることにある。このダイナミックダンパー1eの切り欠き9も、中空シャフト2への装着性の向上に寄与するものであり、切り欠き9があることにより、装着時にダイナミックダンパー1eの装着部材4、5の外周と中空シャフト2の内周との接触面積が減少し、装着時の作業性を高めることができる。また、切り欠き9があることによって、成形工程において残存した圧入油や、塗装前の洗浄液が、この切り欠き9を介して流下するため、従来わざわざ行なっていた不要な残存液の除去作業が不要になり、且つ、材料費のコストダウンにも寄与する。
【0053】
切り欠き9の形成は、接触面に円周上等間隔に軸方向に延びていることが重要なのであって、その数はダイナミックダンパー1の大きさ、切り欠き9の幅や深さによっても異なるが、通常、円周上に等間隔に3箇所以上形成されていることが好ましい。ただし、例えば、切り欠き9が20箇所以上のように多過ぎれば、装着部材4、5との圧縮力が弱まるので、装着部材4、5との圧縮力が弱まらない範囲、具体的には3箇所以上20箇所以内の範囲内で好適な数を適宜採択すれば良い。
【0054】
図16に、非接着状態で構成される本発明のダイナミックダンパーの周波数特性と静ばね特性と、接着状態で構成されるダイナミックダンパーの周波数特性と静ばね特性を対比したグラフを示した。この図16からも分かるように、本発明のダイナミックダンパーは、特定の構成にすることにより、接着状態で構成されるダイナミックダンパーとほぼ同程度の周波数特性と静ばね特性を示していることが理解される。
【0055】
以上、本発明の実施例1ないし6を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更は適宜可能であることは理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のダイナミックダンパーは、非接着にして作製容易でありながら、中空プロペラシャフトの径の大小にかかわらず、高い軸直角ばね特性を有しつつ、低周波域から高周波域での共振特性を得たいような場合に利用可能性が高く、特に中空プロペラシャフトの径が小さく高速回転であるある場合に、利用可能性が極めて高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1のダイナミックダンパーを示す断面図である。
【図2】実施例1のダイナミックダンパーを中空プロペラシャフト内に装着する操作状態を示す断面図である。
【図3】実施例1のダイナミックダンパーを中空プロペラシャフト内に装着した状態を示す断面図である。
【図4】実施例1のダイナミックダンパーの周波数と共振倍率との特性図である。
【図5】実施例1のダイナミックダンパーを特殊形状の中空プロペラシャフトに装着した状態の断面図である。
【図6】実施例1のダイナミックダンパーを特殊形状の中空プロペラシャフトに装着した状態の断面図である。
【図7】本発明の実施例2のダイナミックダンパーを示す斜視図である。
【図8】実施例2のダイナミックダンパーを示す正面図である。
【図9】図8のX−X線に沿う断面図である。
【図10】本発明の実施例3のダイナミックダンパーを示す斜視図である。
【図11】実施例3のダイナミックダンパーを示す正面図である。
【図12】図11のY−Y線に沿う断面図である。
【図13】本発明の実施例4のダイナミックダンパーを示す断面図である。
【図14】本発明の実施例5のダイナミックダンパーを示す断面図である。
【図15】本発明の実施例6のダイナミックダンパーを示す断面図である。
【図16】接着と非接着の場合の特性を対比して示すグラフである。
【図17】従来例のダイナミックダンパーの例を示す断面図である。
【図18】従来例のダイナミックダンパーの例を示す断面図である。
【図19】従来例のダイナミックダンパーの例を示す断面図である。
【図20】従来例のダイナミックダンパーの例を示す断面図である。
【図21】従来例のダイナミックダンパーの例を示す断面図である。
【図22】従来例のダイナミックダンパーの例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,1a,1b,1c,1d:ダイナミックダンパー
2:中空シャフト
3:,3a,3b,51,51a,51b,51c,51d:ダンパーマス
4,5:装着部材
6:同一軸
7:7A,7B:一体的連結部材
7a,7b:傾斜連結部
7c:接続部
8,11:孔
9:切り欠き
10:円盤
12:孔接続部
13:軸
14:凸条接続部
15:凹凸部
16:圧縮凹凸部
17:橋絡部
50,50c,56:アウターパイプ
52,52a,52b,52c,52d,:マウントラバー
53,53a:ラバー
54:取付パイプ
55:インナーパイプ
57:凹溝
60:中空プロペラシャフト
61:シャフト
62:環状溝
70,71a:内孔
71:筒状部
72:フランジ部
73:取付ボルト
74:振動体
75:取付部材
α:一体的連結部材と軸との傾斜角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車走行時の静粛性向上を図るための、ダイナミックダンパー及びそれを装着した中空プロペラシャフトに関するものであって、より詳しくは、中空シャフト内に遊嵌するダンパーマスと、このダンパーマス両側に位置して中空シャフト内に圧縮により固定する装着部材と、ダンパーマスと両側の装着部材とを連結する一体的連結部材とからなることで、低コスト且つ自動車走行特性により適切に対応できるようにしたダイナミックダンパー及びそれを装着した中空プロペラシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイナミックダンパーは、自動車の駆動力伝達に供する中空プロペラシャフト内に装着して、車体の振動を防止し自動車走行時の静粛性の向上を図り、加えて、中空プロペラシャフト自身の振動による金属疲労に随伴する強度低下を防止し、その耐久性を高めるためのものである。この中空プロペラシャフト用のダイナミックダンパーは、通常、図17に示すように、外周面にラバー53を貼り付けたアウターパイプ50と、このアウターパイプ50の軸芯に配置したダンパーマス51と、このダンパーマス51とアウターパイプ50との間に介在して両者を弾性的に連結するマウントラバー52と、を少なくとも有している。このダイナミックダンパーは、中空プロペラシャフト60に内設し、中空プロペラシャフト60の回転時に発生する振動を吸収し防振することで、中空プロペラシャフト60の振動を解消しようとするものである。
【0003】
上記のダイナミックダンパーは、通常、金型を加熱して所定の温度にし、予めダンパーマス51やアウターパイプ50を表面処理、化成処理し、さらに接着剤を塗布した後、金型に挿入しゴム素材を射出して加硫成形することにより、得られる。したがって、このダイナミックダンパーは、ダンパーマス51及びアウターパイプ50が、ラバー53及びマウントラバー52と一体化するメリットがあるものの、これを作製するのに長い時間がかかり、生産性が低く、コスト高となりやすい。このような状況に対処するものとして、以下のような技術が知られている。
【特許文献1】特開2004−108426号公報
【特許文献2】特開2004−156674号公報
【特許文献3】特開2002−235802号公報
【特許文献4】特開2002−235803号公報
【特許文献5】特開2005−48936号公報
【0004】
特許文献1のダイナミックダンパーは、図18に示すように、シャフト61の外周に設けるもので、ダンパーマス51aと、このダンパーマス51a及びシャフト61間に圧入する両側のマウントラバー52aとからなるものである。
【0005】
特許文献2のダイナミックダンパーは、図19に示すように、外周面に径方向に設けた2本の環状溝62を有するダンパーマス51bと、2本の環状溝62に圧入し固定保持されるリング状のマウントラバー52bとからなり、中空プロペラシャフト60に内設するものである。
【0006】
特許文献3のダイナミックダンパーは、図20に示すように、取付パイプ54と、この取付パイプ54の軸心部に配置されたダンパーマス51cと、これら取付パイプ54とダンパーマス51cとの間に配置されて弾性的に連結するマウントラバー52cとからなり
、マウントラバー52cの外側にアウターパイプ50cを配置し、このアウターパイプ50cを絞り加工した後、取付パイプ54の中にダンパーマス51cを圧入してなるものである。
【0007】
特許文献4のダイナミックダンパーは、図21に示すように、取付パイプ54と、この取付パイプ54の軸心部に配置されたダンパーマス51cと、これら取付パイプ54とダンパーマス51cとの間に配置されて弾性的に連結するマウントラバー52cとからなり
、取付パイプ54を樹脂製とすると共に、マウントラバー52cの内側に配置された樹脂製のインナーパイプ55と、マウントラバー52cの外側に配置された樹脂製のアウターパイプ56とを具備し、インナーパイプ55の中にダンパーマス51cを圧入してなるものである。
【0008】
特許文献5のダイナミックダンパーは、図22に示すように、筒状に形成されて外周面に径方向に凹溝57を有するマウントラバー52dと、この凹溝57に非接着で装着されたリング状のダンパーマス51dと、マウントラバー52dの内孔70に非接着で挿入配置された筒状部71とこの筒状部71の一端から径方向外方に向かってダンパーマス51dの内周面より外側に延出するフランジ部72とを有し、筒状部71の内孔71aに挿入された取付ボルト73を緊締することにより、振動体74の取付面とフランジ部72とでマウントラバー52dを挟持する状態に取り付けられる取付部材75と、から構成している。
【0009】
上述した特許文献1ないし5に記載の技術は、金具部分であるダンパーマスの表面処理、化成処理、接着剤の塗布処理などが必要なく、生産性を上げることが出来、ひいては低コストを実現できるという特徴を謳っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されたものは、マウントラバー52aにおけるシャフト61に固定する部分と共振特性を出す部分とが一体であるため、その部分が圧縮成分となり、この圧縮成分が共振周波数特性を司ることになって共振周波数が高くなり、低周波域での共振特性を得ることが難しくなる。それゆえ、低周波域での共振特性を得るには、マウントラバー52aの剛性を下げる必要があるが、材料に限界があり、現状では実現が難しい。
【0011】
また、特許文献2に記載されたものは、特許文献1と同様に生産性を上げることが出来、低コストを実現できるが、上記した特許文献1と同じ理由で低周波域での共振特性を得ることが出来ない。
【0012】
また、特許文献3に記載されたものは、金具部分である取付パイプ54、ダンパーマス51c、アウターパイプ50cの表面処理、化成処理、接着剤の塗布処理などが必要ないが、その一方で圧入するための器具と圧入工程が必要となり、生産性を上げたことにならず、実際には低コストを実現することは困難である。
【0013】
また、特許文献4に記載されたものは、特許文献3における取付パイプ54、アウターパイプ56を樹脂製としたに過ぎず、上記した特許文献3と同じ理由で生産性を上げたことにならず、この技術も、実質的には低コストを実現することは困難である。
【0014】
さらに、特許文献5に記載されたものは、ダンパーマス51dが中空であるが、マウントラバー52d及び取付部材75を圧入する工程があり、さらにマウントラバー52dを固定する部分と共振特性を出す部分とが一体となり、その部分が圧縮成分となって、この圧縮成分が共振周波数特性を司ることになって共振周波数が高くなり、特許文献1と同様に低周波域での共振特性を得ることが難しくなることになる。
【0015】
以上述べた従来技術の技術的問題点を踏まえて、本発明者は、中空シャフトの径の大小にかかわらず、高い軸直角ばね特性を有しつつ、低周波域から高周波域での共振特性を得ることが可能となり、かつダンパーマス以外の金属部分を無くしたダイナミックダンパーを開発し、特願2005−374893として特許出願を行なっている。
そして、上記出願後にさらに性能向上を目指して該技術を追試する過程で、ダンマスを中空にすることにより、両端を貫通する弾性体支持部が形成され、ストッパーとしてダンパーマス外周をゴム弾性体が覆うため、非接着でもダイナミックダンパーの機能を十分に果たすことができる点に着目し、本発明を完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、中空シャフト内に遊嵌するダンパーマスと、該ダンパーマス両側に位置して前記中空シャフト内に圧縮により固定する装着部材と、前記ダンパーマスと両側の装着部材とを連結する一体的連結部材とからなり、前記一体的連結部材は、両側の装着部材に前記ダンパーマスを、弾性的に且つ互いに同一軸となるように連結すると共に、前記同一軸に対して傾斜した傾斜連結部と、両側の傾斜連結部を繋ぐ接続部とからなることを特徴とするダイナミックダンパーが提供される。
【0017】
また、本発明によれば、前記一体的連結部材の接続部は、前記ダンパーマスにこれの軸方向に設けた孔を通した孔接続部であるダイナミックダンパーが提供される。
【0018】
また、本発明によれば、前記一体的連結部材の接続部は、前記ダンパーマス外周面上にほぼ等間隔に渡した少なくとも5条以上の凸条接続部であるダイナミックダンパーが提供される。
【0019】
また、本発明によれば、隣接する前記凸条接続部同士が円周方向に帯状に形成された橋絡部によって連接されてなる上記ダイナミックダンパーが提供される。
【0020】
また、本発明によれば、前記一体的連結部材の接続部は、前記孔接続部及び前記凸条接続部により構成したダイナミックダンパーが提供される。
【0021】
また、本発明によれば、前記一体的連結部材の傾斜連結部における前記同一軸に対する傾斜は、45±20度の範囲であるダイナミックダンパーが提供される。
【0022】
また、本発明によれば、前記装着部材の一方の輪径が他方の装着部材の輪径よりも小径にされてなるダイナミックダンパーが提供される。
【0023】
また、本発明によれば、前記装着部材の中空シャフトとの接触面に、円周上等間隔に軸方向に延びている切り欠きが3箇所以上形成されてなるダイナミックダンパーが提供される。
【0024】
また、本発明によれば、上記したダイナミックダンパーにおける両側の前記装着部材の内側端部間に位置する前記中空シャフトに、凹凸部を設けて、該凹凸部を前記中空シャフトに前記ダイナミックダンパーを挿入する際の位置決めとしたことを特徴とする中空プロペラシャフトが提供される。
【0025】
また、本発明によれば、上記したダイナミックダンパーにおける両側の前記装着部材の外側端部間に位置する前記中空シャフトに、前記装着部材の外側端部間距離Lより短い圧縮凹凸部を設けて、前記中空シャフトに前記ダイナミックダンパーを挿入した際、前記圧縮凹凸部により同一軸に対して傾斜してなる前記一体的連結部材を圧縮するようにしたことを特徴とする中空プロペラシャフトが提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明のダイナミックダンパーは、中空シャフト内に遊嵌するダンパーマスが傾斜してなる一体的連結部材の傾斜連結部にて両側の装着部材に連結しているため、傾斜連結部はせん断成分と圧縮成分とが支配的となり、この傾斜連結部の質量及び剛性を調整すれば、高い軸直角ばね特性を保持しながら低周波から高周波の広い範囲での共振特性を出すことができる。一方、この一体的連結部材に関わりなく中空シャフト内に装着部材にて圧縮固定することができる。したがって、中空プロペラシャフトにおける中空シャフトの径の大小にかかわらず、構造的に一体的連結部材や装着部材に傷が付かず耐久性を保持でき、高い軸直角ばね特性を有しつつ、低周波域から高周波域での共振特性を得ることが可能となり、その上、ダンパーマス以外の金属部分を無くし、且つ両側の傾斜連結部同士を接続部により繋ぐことで非接着となり、生産性を上げてコストを下げ得、中空シャフトへの装着も容易となる効果がある。
【0027】
また、一体的連結部材は、これのダンパーマスの孔を通した孔接続部により、両側の傾斜連結部同士を繋ぐことで、ダンパーマスと一体的連結部材とが非接着となり、上記した効果がより一層確実となる。
【0028】
また、一体的連結部材は、これのダンパーマス外周面上に渡した凸条接続部により、両側の傾斜連結部同士を繋ぐことで、ダンパーマスと一体的連結部材とが非接着となり、上記した効果がより一層確実となる。その上、中空シャフトが常用回転域を越えて振幅が異常に大となると、凸条接続部がストッパーとして機能し、中空シャフトの内壁に当たり一体的連結部材がそれ以上変形しない。したがって、エンジンの常用回転域での軸直角方向の防振機能を果たしつつ、常用回転域を大きく越え、加速度が大幅に増加しても同じく防振機能を果たし、且つ変形を抑制するから、充分な耐久性を有する。
【0029】
また、一体的連結部材は、上記した孔接続部及び凸条接続部により、両側の傾斜連結部同士を繋ぐことで、ダンパーマスと一体的連結部材とが非接着となり、上記した効果がより一層確実となる。その上、上記した凸条接続部によるストッパー機能もある。
【0030】
また、一体的連結部材の傾斜連結部は、せん断成分と圧縮成分とがより確実に支配的となって、上記した効果がより一層確実となる。
【0031】
また、装着部材の一方の輪径を他方の輪径よりも小径とするか、装着部材の中空シャフトの内周との接触面に、円周上等間隔に軸方向に延びている切り欠きを3箇所以上形成することにより、中空シャフトへの装着部材の装着がよりスムーズに行うことができる。
【0032】
また、中空プロペラシャフトにおける中空シャフトにダイナミックダンパーを挿入する際、その挿入位置を凹凸部により決めることにより、上記効果に加えて、中空シャフトにダイナミックダンパーを装着する操作が極めて容易となる。
【0033】
また、中空プロペラシャフトにおける中空シャフトにダイナミックダンパーを挿入した際、圧縮凹凸部により装着部材及び一体的連結部材のうち特に一体的連結部材の傾斜連結部を圧縮することになる。したがって、上記効果に加えて、この圧縮によりダイナミックダンパーの耐久性を向上させることができる。
【0034】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例】
【0035】
<実施例1>
図1は本発明のダイナミックダンパーを示す断面図、図2は本発明のダイナミックダンパーを中空プロペラシャフト内に装着する操作状態を示す断面図、図3は本発明のダイナミックダンパーを中空プロペラシャフト内に装着した状態を示す断面図である。
これらの図面において、本発明のダイナミックダンパー1は、中空プロペラシャフトにおける中空シャフト2内に遊嵌するダンパーマス3と、このダンパーマス3両側に位置して中空シャフト2内に圧縮により固定する装着部材4、5と、ダンパーマス3と両側の装着部材4、5とを連結する一体的連結部材7とからなり、この一体的連結部材7は、両側の装着部材4、5にダンパーマス3を、弾性的に且つ互いに同一軸6になるように連結すると共に、同一軸6に対して傾斜した傾斜連結部7a、7bと、両側の傾斜連結部7a、7bを繋ぐ接続部7cとからなるものであり、一体に成形されている。
【0036】
ダンパーマス3は、ある程度の重量が必要となるので、経済性から鋳鉄や鋼鉄が多く用いられる。装着部材4、5及び一体的連結部材7は、いずれも弾性体であるSBR(スチレン−ブタジエン共重合系合成ゴム)や天然ゴム、あるいはそれらの混合物が用いられる
。しかし、これら装着部材4、5及び一体的連結部材7は、従来技術のマウントラバー52とは異なり、装着部材4、5はラバー53を貼り付けたアウターパイプ50に相当し、一体的連結部材7はマウントラバー52に相当する、と言うことができる
【0037】
この実施例では、ダンパーマス3は、これの軸方向に孔8を設けて円環盤状であり、この孔8には、後述のとおり、一体的連結部材7の接続部7cとして孔接続部12が通り、装着部材4側の傾斜連結部7aと、装着部材5側の傾斜連結部7bとを繋ぎ一体としている。なお、ダンパーマス3の形状は、これに限定されるものではなく、後述するように、種々変わることができる。
【0038】
装着部材4、5は、円盤10に孔11を開けた円環盤状を成し、ダイナミックダンパー1を中空シャフト2内に装着保持する役目を担っている。すなわち、装着部材4、5の円盤10の外径は中空シャフト2の内径よりもやや大きく形成され、中空シャフト2内に装着部材4、5を圧入することで、強固に圧縮固定するから、この装着に関して一体的連結部材7にほとんど影響を及ぼすことがない。また、装着部材4、5の円盤10の周縁部をカットすることにより、中空シャフト2内にダイナミックダンパー1を圧入し易くしている。
【0039】
一体的連結部材7は、前記ダンパーマス3と装着部材4、5とを連結するものであり、
装着部材4側の傾斜連結部7aと装着部材5側の傾斜連結部7bとを、前記接続部7cにより繋ぎ一体としている。すなわち、この実施例の接続部7cは、ダンパーマス3の孔8を通る孔接続部12であり、これによって、傾斜連結部7aと7bとを繋ぎ一体としている。さらに、この実施例では、一体的連結部材7と装着部材4、5とが一体に形成されている。すなわち、装着部材4、5の円盤10の片側面とダンパーマス3の両側平面とは、傾斜した連続壁面形状、換言すれば傾斜連結部7a、7bにて連結されている。
【0040】
したがって、一体的連結部材7における傾斜連結部7a、7bは、せん断成分と圧縮成分とが支配的となり、傾斜連結部7a、7bの長さ、角度及び剛性を調整すれば、高い軸直角ばね特性を保持しながら、低周波から高周波の広い範囲での共振特性を出すことが可能となる。上述したように、装着部材4、5は、装着に関して一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bにほとんど影響を及ぼさないから、これら傾斜連結部7a、7bの上記特性も装着部材4、5により影響されずに得ることができる。
また、一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bが傾斜した連続壁面形状、換言すれば傘形状であるため、中空シャフト2内に装着する際に円盤状の装着部材4、5の倒れ防止に対しても寄与している。
【0041】
また、一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bの同一軸6に対する傾斜角度αは、45±20度の範囲である。この傾斜角度αの範囲内にある傾斜連結部7a、7bは、せん断成分と圧縮成分とが確実に支配的となり、高い軸直角ばね特性を保持しながら、低周波から高周波の広い範囲での共振特性を確実に出すことが出来る。一方、この傾斜角度αが25度より小さくなると、せん断成分と曲げ成分とが主流となり、高い軸直角ばね特性を保持できず、低周波寄りの共振特性しか得ることができないようになる。逆に、この傾斜角度αが65度より大きくなると、圧縮成分が主流となり、高い軸直角ばね特性を得られるが、高周波寄りの共振特性しか得ることができないようになる。以上の理由から同一軸6に対する傾斜角度αを45±20度に規定したが、より好ましい傾斜角度αは、45±10度の範囲である。
【0042】
上記構成のダイナミックダンパー1は、ダンパーマス3、装着部材4、5、一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bが同一軸6上となるように一体に作られる。なお、装着部材4、5、一体的連結部材7を同一のゴム素材とすれば、金型を使い射出成形などにより非接着で一気に製作が可能となり、接着に伴って金属部分であるダンパーマス3の表面処理、化成処理、接着剤塗布が必要なくなる。この製作されたダイナミックダンパー1は、図2、3に示すように、中空シャフト2内に圧入され使用されるが、この際もダイナミックダンパー1の同一軸6と中空シャフト2の軸13とを一致させることが重要である。
【0043】
そして、このような構成のダイナミックダンパー1であっても、図4に示すように、有効な吸振効果を期待できる周波数域を得ることができ、一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bの長さ、角度及び剛性を調整すれば、高い軸直角ばね特性を保持しながら、この周波数域を横軸方向に左右移動が可能となり、低周波から高周波の広い範囲での共振特性を出すことが出来る。
【0044】
次に、上記構成になるダイナミックダンパー1の作用について説明する。
まず、中空プロペラシャフトの中空シャフト2の径や回転数に適合するダイナミックダンパー1を選択し、中空シャフト2内にダイナミックダンパー1を圧入により装着する。この際、装着状態でダイナミックダンパー1の同一軸6と中空シャフト2の軸13とを一致させるようにする。ダイナミックダンパー1は、一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bに関わりなく中空ラシャフト2内に装着部材4、5が圧縮して固定するから、傾斜連結部7a、7bはせん断成分と圧縮成分とが支配的となる。その結果、高い軸直角ばね特性を保持しながら、低周波から高周波の広い範囲での共振特性を出すことが出来て、設計の自由度が著しく高まる。しかも、中空プロペラシャフトの径が小さくなっても、構造的に一体的連結部材7や装着部材4、5に傷が付かないから、耐久性を保持でき、さらにダンパーマス3以外の金属部分を無くすことが出来、加えて接着も必要ないから低コストが可能となる。
【0045】
次に、上記構成になるダイナミックダンパー1が中空プロペラシャフトの軸とわずかなズレが生じていると、中空プロペラシャフトの回転に伴い、遠心力が働く。中空プロペラシャフトが回転して、それが常用回転域内、例えば5000rpmであれば、一体的連結部材7の傾斜連結部7a、7bの歪みが少なく、ダンパーマス3上に、後述のように、等間隔に設置した複数条の凸条接続部14がストッパーの役割を果たし、凸条接続部14が中空シャフト2の内壁に当たることがなく、中空プロペラシャフトの静粛性を保持する。一方、中空プロペラシャフトの回転が常用回転域を越えて、例えば、7000rpmになると、傾斜連結部7a、7bの歪みが大きくなり、凸条接続部14が中空シャフト2の内壁に当たり、傾斜連結部7a、7bの歪みがそれ以上進まず、耐久性を確保すると共に、中空プロペラシャフトの静粛性も保持する。
【0046】
図5は中空プロペラシャフトにおける中空シャフト2の形状を示すものであり、その形状は、中空シャフト2に上記したダイナミックダンパー1を装着した際、両側の装着部材4、5の内側端部間に位置することになる中空シャフト2に、予め凹凸部15を設けておき、この凹凸部15を中空シャフト2にダイナミックダンパー1を圧入する際の位置決めとするものである。これにより、中空シャフト2にダイナミックダンパー1を圧入する際、その圧入位置を凹凸部15により決めることができて、装着操作が極めて容易となる。
【0047】
図6は中空シャフト2の他の形状を示すものであり、この形状は、中空シャフト2に上記したダイナミックダンパー1を装着した際、両側の装着部材4、5の外側端部間に位置することになる中空シャフト2に、装着部材4、5の外側端部間距離Lより短い圧縮凹凸部16を予め設けておき、この中空シャフト2にダイナミックダンパー1を圧入した際、この圧縮凹凸部16によりダイナミックダンパー1を圧縮するものである。これにより、装着部材4、5及び一体的連結部材7のうち特に傾斜連結部7a、7bを圧縮することになって、ダイナミックダンパー1の耐久性を向上させることができる。
【0048】
<実施例2>
図7ないし9は本発明の他のダイナミックダンパー1aを示し、このダイナミックダンパー1aと図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1との相違点は、ダンパーマス3aに孔8がなく、したがって孔接続部12もなく、その代わり、接続部7cとして、ダンパーマス3a外周面上にほぼ等間隔に渡した少なくとも5条以上の凸条接続部14を有して、一体的連結部材7Aを構成し、この凸条接続部14により、両側の傾斜連結部7a、7b同士を繋ぐ点にある。したがって、この凸条接続部14により、両側の傾斜連結部7a、7b同士を繋ぐことで、両側の装着部材4、5同士を連結するため、ダンパーマス3aと一体的連結部材7Aとを非接着とすることが出来る。
その上、中空シャフト2が常用回転域を越えて振幅が異常に大となると、両側の傾斜連結部7a、7bが歪み、凸条接続部14が中空シャフト2の内壁に当たり、ストッパーとして機能して一体的連結部材7Aの両側の傾斜連結部7a、7bがそれ以上変形しない。したがって、エンジンの常用回転域での軸直角方向の防振機能を果たしつつ、常用回転域を大きく越え、加速度が大幅に増加しても同じく防振機能を果たし、且つ変形を抑制するから、充分な耐久性を有する。その他の構成、作用は図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1と同様なので、図面に符号を付してその説明を省略する。
【0049】
<実施例3>
図10ないし12は、図7に示した実施例2の形態において、隣接する前記凸条接続部14同士が円周方向に帯状に形成された橋絡部17によって連接されてなるダイナミックダンパー1bの構成を示している。
橋絡部17は凸条接続部14同士を連接することによって凸条接続部の形状を安定化させ、本発明のダイナミックダンパー1bの機能を一層有効に発揮させるために有効であり、凸条接続部14と同じ材質で形成されていることが、一体的に連接される上で好ましい。橋絡部17の形状は特に限定されるものではないが、上記目的を一層有効にするためには、凸条接続部14の軸方向の中央部を中心とする帯状に形成されていることが好ましいく、その高さは凸条接続部14の高さとほぼ同じ程度であることが好ましい。
その他の構成、作用は図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1並びに図7ないし9に示すダイナミックダンパー1aと同様なので、図面に符号を付してその説明を省略する。
【0050】
<実施例4>
図13は本発明の他のダイナミックダンパー1cを示し、このダイナミックダンパー1cと図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1との相違点は、ダンパーマス3に孔8があり、したがって孔接続部12もあり、その上、ダンパーマス3外周面上にほぼ等間隔に渡した少なくとも5条の凸条接続部14も具備して接続部7cをなし、一体的連結部材7Bを構成して、これらの孔接続部12及び凸条接続部14により、両側の傾斜連結部7a、7b同士を繋ぐ点にある。この一体的連結部材7Bの孔接続部12及び凸条接続部14により、両側の傾斜連結部7a、7b同士を繋ぎ、両側の装着部材4、5同士を連結するから、ダンパーマス3aと一体的連結部材7Bとが非接着となり、さらに凸条接続部14があるから上記のようにストッパーとして機能する。すなわち、この実施例3は実施例1及び2を組み合わせたものとなる。その他の構成、作用は図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1並びに図7ないし9に示すダイナミックダンパー1aと同様なので、図面に符号を付してその説明を省略する。
【0051】
<実施例5>
図14は本発明の他のダイナミックダンパー1dを示し、このダイナミックダンパー1dと図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1との相違点は、装着部材4(5)の一方の輪径aが他方の装着部材5(4)の輪径bよりも小径にされていることにある。このように一方の装着部材の輪径が他方の装着部材の輪径よりも小径にされていることにより、小径にされている方の装着部材側から中空シャフト2に装着すれば、中空シャフト2内に装着が容易になり作業性が向上する。なお、小径にされている装着部材5(4)の輪径aは、中空シャフト2の内径よりも若干大きければ良く、装着部材4(5)の輪径bはそれよりも大径にされていても、ゴムの弾性あるいは装着部材の外周面に塗布する油の作用で、ダイナミックダンパー1dは中空シャフト2内に圧縮状態で装着される。
【0052】
<実施例6>
図15は本発明の他のダイナミックダンパー1eを示し、このダイナミックダンパー1eと図1ないし図4に示すダイナミックダンパー1との相違点は、装着部材4,5の中空シャフト2との接触面に円周上等間隔に軸方向に延びている切り欠き9が3箇所以上形成されてなることにある。このダイナミックダンパー1eの切り欠き9も、中空シャフト2への装着性の向上に寄与するものであり、切り欠き9があることにより、装着時にダイナミックダンパー1eの装着部材4、5の外周と中空シャフト2の内周との接触面積が減少し、装着時の作業性を高めることができる。また、切り欠き9があることによって、成形工程において残存した圧入油や、塗装前の洗浄液が、この切り欠き9を介して流下するため、従来わざわざ行なっていた不要な残存液の除去作業が不要になり、且つ、材料費のコストダウンにも寄与する。
【0053】
切り欠き9の形成は、接触面に円周上等間隔に軸方向に延びていることが重要なのであって、その数はダイナミックダンパー1の大きさ、切り欠き9の幅や深さによっても異なるが、通常、円周上に等間隔に3箇所以上形成されていることが好ましい。ただし、例えば、切り欠き9が20箇所以上のように多過ぎれば、装着部材4、5との圧縮力が弱まるので、装着部材4、5との圧縮力が弱まらない範囲、具体的には3箇所以上20箇所以内の範囲内で好適な数を適宜採択すれば良い。
【0054】
図16に、非接着状態で構成される本発明のダイナミックダンパーの周波数特性と静ばね特性と、接着状態で構成されるダイナミックダンパーの周波数特性と静ばね特性を対比したグラフを示した。この図16からも分かるように、本発明のダイナミックダンパーは、特定の構成にすることにより、接着状態で構成されるダイナミックダンパーとほぼ同程度の周波数特性と静ばね特性を示していることが理解される。
【0055】
以上、本発明の実施例1ないし6を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更は適宜可能であることは理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のダイナミックダンパーは、非接着にして作製容易でありながら、中空プロペラシャフトの径の大小にかかわらず、高い軸直角ばね特性を有しつつ、低周波域から高周波域での共振特性を得たいような場合に利用可能性が高く、特に中空プロペラシャフトの径が小さく高速回転であるある場合に、利用可能性が極めて高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例1のダイナミックダンパーを示す断面図である。
【図2】実施例1のダイナミックダンパーを中空プロペラシャフト内に装着する操作状態を示す断面図である。
【図3】実施例1のダイナミックダンパーを中空プロペラシャフト内に装着した状態を示す断面図である。
【図4】実施例1のダイナミックダンパーの周波数と共振倍率との特性図である。
【図5】実施例1のダイナミックダンパーを特殊形状の中空プロペラシャフトに装着した状態の断面図である。
【図6】実施例1のダイナミックダンパーを特殊形状の中空プロペラシャフトに装着した状態の断面図である。
【図7】本発明の実施例2のダイナミックダンパーを示す斜視図である。
【図8】実施例2のダイナミックダンパーを示す正面図である。
【図9】図8のX−X線に沿う断面図である。
【図10】本発明の実施例3のダイナミックダンパーを示す斜視図である。
【図11】実施例3のダイナミックダンパーを示す正面図である。
【図12】図11のY−Y線に沿う断面図である。
【図13】本発明の実施例4のダイナミックダンパーを示す断面図である。
【図14】本発明の実施例5のダイナミックダンパーを示す断面図である。
【図15】本発明の実施例6のダイナミックダンパーを示す断面図である。
【図16】接着と非接着の場合の特性を対比して示すグラフである。
【図17】従来例のダイナミックダンパーの例を示す断面図である。
【図18】従来例のダイナミックダンパーの例を示す断面図である。
【図19】従来例のダイナミックダンパーの例を示す断面図である。
【図20】従来例のダイナミックダンパーの例を示す断面図である。
【図21】従来例のダイナミックダンパーの例を示す断面図である。
【図22】従来例のダイナミックダンパーの例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1,1a,1b,1c,1d:ダイナミックダンパー
2:中空シャフト
3:,3a,3b,51,51a,51b,51c,51d:ダンパーマス
4,5:装着部材
6:同一軸
7:7A,7B:一体的連結部材
7a,7b:傾斜連結部
7c:接続部
8,11:孔
9:切り欠き
10:円盤
12:孔接続部
13:軸
14:凸条接続部
15:凹凸部
16:圧縮凹凸部
17:橋絡部
50,50c,56:アウターパイプ
52,52a,52b,52c,52d,:マウントラバー
53,53a:ラバー
54:取付パイプ
55:インナーパイプ
57:凹溝
60:中空プロペラシャフト
61:シャフト
62:環状溝
70,71a:内孔
71:筒状部
72:フランジ部
73:取付ボルト
74:振動体
75:取付部材
α:一体的連結部材と軸との傾斜角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シャフト内に遊嵌するダンパーマスと、該ダンパーマス両側に位置して前記中空シャフト内に圧縮により固定する装着部材と、前記ダンパーマスと両側の装着部材とを連結する一体的連結部材とからなり、前記一体的連結部材は、両側の装着部材に前記ダンパーマスを、弾性的に且つ互いに同一軸となるように連結すると共に、前記同一軸に対して傾斜した傾斜連結部と、両側の傾斜連結部を繋ぐ接続部とからなることを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項2】
前記一体的連結部材の接続部は、前記ダンパーマスにこれの軸方向に設けた孔を通した孔接続部である請求項1記載のダイナミックダンパー。
【請求項3】
前記一体的連結部材の接続部は、前記ダンパーマス外周面上にほぼ等間隔に渡した少なくとも5条以上の凸条接続部である請求項1記載のダイナミックダンパー。
【請求項4】
隣接する前記凸条接続部同士が円周方向に帯状に形成された橋絡部によって連接されてなる請求項3記載のダイナミックダンパー。
【請求項5】
前記一体的連結部材の接続部は、前記孔接続部及び前記凸条接続部により構成した請求項1記載のダイナミックダンパー。
【請求項6】
前記一体的連結部材の傾斜連結部における前記同一軸に対する傾斜は、45±20度の範囲である請求項1ないし5のいずれか1項記載のダイナミックダンパー。
【請求項7】
前記装着部材の一方の輪径が他方の装着部材の輪径よりも小径にされてなる請求項1ないし6のいずれか1項記載のダイナミックダンパー。
【請求項8】
前記装着部材の中空シャフトとの接触面に、円周上等間隔に軸方向に延びている切り欠きが3箇所以上形成されてなる請求項1ないし7のいずれか1項記載のダイナミックダンパー。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のダイナミックダンパーにおける両側の前記装着部材の内側端部間に位置する前記中空シャフトに、凹凸部を設けて、該凹凸部を前記中空シャフトに前記ダイナミックダンパーを挿入する際の位置決めとしたことを特徴とする中空プロペラシャフト。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のダイナミックダンパーにおける両側の前記装着部材の外側端部間に位置する前記中空シャフトに、前記装着部材の外側端部間距離Lより短い圧縮凹凸部を設けて、前記中空シャフトに前記ダイナミックダンパーを挿入した際、前記圧縮凹凸部により同一軸に対して傾斜してなる前記一体的連結部材を圧縮するようにしたことを特徴とする中空プロペラシャフト。
【請求項1】
中空シャフト内に遊嵌するダンパーマスと、該ダンパーマス両側に位置して前記中空シャフト内に圧縮により固定する装着部材と、前記ダンパーマスと両側の装着部材とを連結する一体的連結部材とからなり、前記一体的連結部材は、両側の装着部材に前記ダンパーマスを、弾性的に且つ互いに同一軸となるように連結すると共に、前記同一軸に対して傾斜した傾斜連結部と、両側の傾斜連結部を繋ぐ接続部とからなることを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項2】
前記一体的連結部材の接続部は、前記ダンパーマスにこれの軸方向に設けた孔を通した孔接続部である請求項1記載のダイナミックダンパー。
【請求項3】
前記一体的連結部材の接続部は、前記ダンパーマス外周面上にほぼ等間隔に渡した少なくとも5条以上の凸条接続部である請求項1記載のダイナミックダンパー。
【請求項4】
隣接する前記凸条接続部同士が円周方向に帯状に形成された橋絡部によって連接されてなる請求項3記載のダイナミックダンパー。
【請求項5】
前記一体的連結部材の接続部は、前記孔接続部及び前記凸条接続部により構成した請求項1記載のダイナミックダンパー。
【請求項6】
前記一体的連結部材の傾斜連結部における前記同一軸に対する傾斜は、45±20度の範囲である請求項1ないし5のいずれか1項記載のダイナミックダンパー。
【請求項7】
前記装着部材の一方の輪径が他方の装着部材の輪径よりも小径にされてなる請求項1ないし6のいずれか1項記載のダイナミックダンパー。
【請求項8】
前記装着部材の中空シャフトとの接触面に、円周上等間隔に軸方向に延びている切り欠きが3箇所以上形成されてなる請求項1ないし7のいずれか1項記載のダイナミックダンパー。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のダイナミックダンパーにおける両側の前記装着部材の内側端部間に位置する前記中空シャフトに、凹凸部を設けて、該凹凸部を前記中空シャフトに前記ダイナミックダンパーを挿入する際の位置決めとしたことを特徴とする中空プロペラシャフト。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のダイナミックダンパーにおける両側の前記装着部材の外側端部間に位置する前記中空シャフトに、前記装着部材の外側端部間距離Lより短い圧縮凹凸部を設けて、前記中空シャフトに前記ダイナミックダンパーを挿入した際、前記圧縮凹凸部により同一軸に対して傾斜してなる前記一体的連結部材を圧縮するようにしたことを特徴とする中空プロペラシャフト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2008−25799(P2008−25799A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202112(P2006−202112)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
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