説明

ダイナミックダンパ

【課題】内筒と質量部材との間を連結するゴム弾性材の厚さをより小さくすることができ、チューニング周波数の自由度を拡大することができるダイナミックダンパを提供する。
【解決手段】内筒12と、内筒12の外方に離間して配置された筒状の質量部材14と、内筒12と質量部材14との間を連結するゴム弾性材16とを備え、ゴム弾性材16は軸方向に陥没した環状の凹部18,19と、凹部18において内筒12と質量部材14とを連結する橋渡し部22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状の内筒と質量部材との間がゴム弾性材により連結されたダイナミックダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、例えば、車輪を支持する車輪支持部(ナックル)と車体との間を繋ぐスプリング構造のリーフスプリングにエンジンからの振動やタイヤから車体へ伝達される振動を抑制するためにダイナミックダンパが取り付けられている。
【0003】
この種のダイナミックダンパとしては、図9に示すように、円筒状の内筒102と、内筒102の外方に離間して同軸状に配置された質量部材104と、内筒102と質量部材104との間の軸方向中央部に加硫成形により形成され内筒102と質量部材104を連結するゴム弾性材106を備えたものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
このようなダイナミックダンパ100は、まず、ゴム弾性材106を形成する加硫成形金型内の所定位置に内筒102及び質量部材104を配置しておき、それらに加硫接着されるようにしてゴム弾性材106を一体成型することで作製される。そして、作製されるダイナミックダンパ100は、質量部材104の質量とゴム弾性材106のばね定数とを適宜設定することにより、抑制する共振周波数にチューニングされる。
【0005】
ところで、上記のようなダイナミックダンパ100において、軽い質量部材104を用いて抑制する共振周波数を比較的低い周波数にチューニングする場合には、ゴム弾性材106の厚さを非常に小さくしなければならないことがある。
【0006】
しかしながら、図10に示すように、ゴム弾性材106を加硫成形する成形型110では、内筒102と質量部材104との間隙にゴム材料を注入するゲート(注入ゲート)が設けられており、その注入ゲートが設けられている部分もゴム弾性材106の厚さに応じて薄く(狭く)なる。そのため、上記のようなダイナミックダンパ100では、低い周波数にチューニングする場合、ゴム弾性材106を成型する成形型110の注入ゲート112を狭い間隙の奥深く設けて内筒102と質量部材104との間にゴム材料を注入しなければならず、ゴム弾性材106の成型が極めて困難となる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−180574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題を考慮してなされたものであり、内筒と質量部材との間を連結するゴム弾性材の厚さをより小さくすることができ、チューニング周波数の自由度を拡大することができるダイナミックダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るダイナミックダンパは、内筒と、前記内筒の外方に離間して配置された筒状の質量部材と、前記内筒と前記質量部材との間を連結するゴム弾性材とを備え、前記ゴム弾性材は軸方向に陥没した環状の凹部と、前記凹部において前記内筒と前記質量部材とを連結する橋渡し部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明において、前記ゴム弾性材は、軸方向両端部に前記凹部と前記橋渡し部とを備え、軸方向一端部に設けられた前記橋渡し部と、軸方向他端部に設けられた前記橋渡し部とが、軸方向視において異なる位置に設けられてもよく、更に、前記ゴム弾性材は、軸方向一端部に径方向に相対向する一対の橋渡し部と、軸方向他端部に径方向に相対向する他の一対の橋渡し部とを備え、軸方向一端部に設けられた前記一対の橋渡し部が、軸方向他端部に設けられた前記他の一対の橋渡し部から軸回りに90度回転した位置に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、内筒と質量部材との間を連結するゴム弾性材の厚さをより小さくすることができ、チューニング周波数の自由度を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るダイナミックダンパの平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1に示すダイナミックダンパを製造する成形型の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るダイナミックダンパの平面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るダイナミックダンパの平面図である。
【図7】図6のC−C断面図である。
【図8】(a)が図6に示すダイナミックダンパの軸回りの共振周波数の分布を示す図であり、(b)が図1に示すダイナミックダンパの軸回りの共振周波数の分布を示す図である。
【図9】従来のダイナミックダンパの断面図である。
【図10】図9に示すダイナミックダンパを製造する成形型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態のダイナミックダンパ10は、例えば、自動車の車輪を支持する車輪支持部(ナックル)と車体との間を繋ぐスプリング構造のリーフスプリングに取り付けられ、エンジンからの振動やタイヤから車体へ伝達される振動を抑制するものである。
【0015】
このダイナミックダンパ10は、図1及び図2に示すように、内筒12と、内筒12の外方に離間して軸Oに同軸状に配置された筒状の質量部材14と、内筒12と質量部材14との間を弾性的に連結するゴム弾性材16とを備えている。
【0016】
内筒12は、鋼鉄等の金属により形成された円筒状の部材であり、リーフスプリングにダイナミックダンパ10を取り付けるためのボルト(不図示)が挿通される。質量部材14は、所定の質量になるように設定された炭素鋼等の金属等からなり、肉厚の円筒形状で軸方向に沿った長さが内筒12より短く設けられている。
【0017】
ゴム弾性材16は、内筒12と質量部材14との間に配設された所定形状のゴム材であり、具体的には、軸方向両端部に軸方向に沿って陥没した環状の凹部18,19と、軸方向両端部に設けられた凹部18,19の間において内筒12の外周面と質量部材14の内周面を連結する本体部20と、凹部18内に設けられた橋渡し部22とを備える。
【0018】
橋渡し部22は、本体部20より一体に軸方向へ突出形成されており、内筒12の外周面から質量部材14の内周面まで径方向に沿って設けられ内筒12と質量部材14とを連結している。本実施形態では、上記した橋渡し部22が軸方向一端部に設けられた凹部18内に1つ設けられている。
【0019】
このようなゴム弾性材16は、図3に示すように、ゴム弾性材16を成型する成形型50内に内筒12及び質量部材14をセットした状態で成形型50内にゴム材料を充填し、その後、加硫処理を行うことで、図1及び図2に示すような質量部材14の外表面を覆いつつ内筒12の外周面と質量部材14の内周面とを加硫接着している。
【0020】
より具体的には、成形型50は、例えば、互いに重ね合わせられる上型52と下型54とから構成されており、上型52と下型54との間にゴム弾性材16の形状に対応したキャビティ56が区画されている。
【0021】
上型52は、ゴム弾性材16の軸方向一端側を成型する型であり、ゴム弾性材16に環状の凹部18を形成するための凹部形成用突起58と、凹部18に設けられた橋渡し部22を形成するための橋渡し部形成用突起60とが設けられている。橋渡し部形成用突起60には、成形型50の外部よりキャビティ56に連通し、キャビティ56内にゴム材料を充填するための注入ゲート66が設けられている。また、上型52には、内筒12が挿入される内筒保持凹部62と、質量部材14の軸方向一端面に当接する当接部64が設けられている。
【0022】
下型54は、ゴム弾性材16の軸方向他端側を成型する型であり、ゴム弾性材16に環状の凹部19を形成するための凹部形成用突起59が設けられている。また、下型54には、内筒12が挿入される内筒保持凹部63と、質量部材14の軸方向他端面に当接する当接部65が設けられている。
【0023】
このような上型52及び下型54を用いて内筒12の外周面と質量部材14の内周面との間に凹部18,19及び橋渡し部22が形成されたゴム弾性材16を成型するには、まず、上型52及び下型54に設けられた内筒保持凹部62及び内筒保持凹部63に内筒12の端部を挿入してキャビティ56内に内筒12を保持させるとともに、上型52及び下型54に設けられた当接部64及び当接部65で質量部材14の軸方向端面から質量部材14を挟持することで、キャビティ56内に質量部材14を保持させる。これにより、キャビティ56には、質量部材14の中空部に内筒12が間隔をあけて挿入された状態で内筒12及び質量部材14とが位置決め固定されている。
【0024】
そして、キャビティ56に内筒12及び質量部材14を位置決め固定した状態で注入ゲート66よりキャビティ56に設けられた内筒12と質量部材14との間へゴム材料が注入されキャビティ56全体へ充填され、その後、加硫処理を行うことで、ゴム弾性材16によって内筒12と質量部材14とが連結されたダイナミックダンパ10が得られる。
【0025】
以上のように本実施形態のダイナミックダンパ10では、ゴム弾性材16に設けられた軸方向に陥没する凹部18に内筒12と質量部材14とを連結する橋渡し部22が本体部20から突出するように設けられている。これにより、成形型50において橋渡し部22を形成するための橋渡し部形成用突起60が、内筒12と質量部材14との間隙の奥深くへ挿入されることがないため、注入ゲート66を橋渡し部形成用突起60に設けることで、ゴム弾性材16の厚さを小さく設ける場合であっても、ゴム材料をキャビティ56へ注入しやすくゴム弾性材16を容易に所望の形状に成型することができる。その結果、本実施形態のダイナミックダンパ10によれば、ゴム弾性材16の厚さをより小さくすることができ、チューニング周波数の自由度を拡大することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図4及び図5を参照して説明する。
【0027】
本実施形態では、図4及び図5に示すように、内筒12と質量部材14との間に配設されたゴム弾性材16は、軸方向両端部に軸方向に沿って陥没した環状の凹部18,19と、軸方向両端部に設けられた凹部18,19の間において内筒12の外周面と質量部材14の内周面を連結する本体部20と、凹部18内に設けられた橋渡し部22と、凹部19内に設けられた橋渡し部23とを備える。
【0028】
橋渡し部23は、橋渡し部22と同様に、本体部20より一体に突出形成されており、内筒12の外周面から質量部材14の内周面まで径方向に沿って設けられ内筒12と質量部材14とを連結している。
【0029】
そして、軸方向一端部の凹部18に設けられた橋渡し部22が、軸方向他端部の凹部19に設けられた橋渡し部23からダイナミックダンパ10の軸Oの回りに所定角度だけ回転した位置、例えば、本実施形態では、180度回転した位置に設けられ、橋渡し部22及び橋渡し部23が軸方向視において異なる位置に設けられている。
【0030】
このような本実施形態のダイナミックダンパ10では、軸方向一端部に設けられた橋渡し部22が、軸方向他端部に設けられた橋渡し部23に対して軸方向視において異なる位置に設けられているため、ゴム材料の使用量を抑えつつゴム弾性材16の重量分布を軸方向及び軸Oを中心とする周方向にバランス良く配置することができ、ダイナミックダンパ10の軸O回りの共振周波数の分布の均一化を図ることができる。
【0031】
なお、上記した構成及び作用効果以外は第1の実施形態と同じであり、詳細な説明は省略する。
【0032】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、図6〜図8を参照して説明する。
【0033】
本実施形態では、図6及び図7に示すように、内筒12と質量部材14との間に配設されたゴム弾性材16は、軸方向両端部に軸方向に沿って陥没した環状の凹部18,19と、軸方向両端部に設けられた凹部18,19の間において内筒12の外周面と質量部材14の内周面を連結する本体部20と、凹部18内に設けられた一対の橋渡し部22a,22bと、凹部19内に設けられた他の一対の橋渡し部23a,23bとを備える。
【0034】
軸方向一端部の凹部18に設けられた一対の橋渡し部22a,22bは、互いに径方向に相対向する位置に内筒12の外周面から質量部材14の内周面まで径方向に沿って設けられ内筒12と質量部材14とを連結している。また、軸方向他端部の凹部19に設けられた他の一対の橋渡し部23a,23bは、上記した一対の橋渡し部22a,22bと同様、互いに径方向に相対向する位置に内筒12の外周面から質量部材14の内周面まで径方向に沿って設けられ内筒12と質量部材14とを連結している。
【0035】
そして、軸方向一端部の凹部18に設けられた一対の橋渡し部22a,22bが、軸方向他端部の凹部19に設けられた他の一対の橋渡し部23a,23bの配設位置からダイナミックダンパ10の軸Oの回りに90度回転した位置に設けられており、一対の橋渡し部22a,22bと他の一対の橋渡し部23a,23bとが、軸方向視において十字状に配置されている(図6参照)。
【0036】
本実施形態のダイナミックダンパ10と、上記した第1の実施形態のダイナミックダンパ10、つまり、軸方向一端部の凹部18のみに1つの橋渡し部22を設け、軸方向他端部の凹部19に橋渡し部を設けていないダイナミックダンパ10とについて、軸O回りの共振周波数の分布を測定した。
【0037】
具体的には、図8(a)は、本実施形態のダイナミックダンパ10に矢符A〜Dに示す4方向から振動を入力した場合の共振周波数を示し、図8(b)は、第1の実施形態のダイナミックダンパ10に矢符A〜Dに示す4方向から振動を入力した場合の共振周波数を示す。
【0038】
図8に示すように、本実施形態では、軸方向一端部の凹部18に径方向に相対向する一対の橋渡し部22a,22bと、軸方向他端部に径方向に相対向する他の一対の橋渡し部23a,23bとを備え、軸方向一端部に設けられた一対の橋渡し部22a,22bが、軸方向他端部に設けられた他の一対の橋渡し部23a,23bから軸Oの回りに90度回転した位置に設けられている。そのため、軸Oに対して偏心して配置された橋渡し部22a,22b,23a,23b同士が互いにゴム重量の片寄りを打ち消し合ってゴム弾性材16の重量分布を軸方向及び軸Oを中心とする周方向にバランス良く配置することができ、第1の実施形態に比べてダイナミックダンパ10の軸O回りの共振周波数の分布を均一にすることができた。
【0039】
なお、上記した構成及び作用効果以外は第1の実施形態と同じであり、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0040】
10…ダイナミックダンパ
12…内筒
14…質量部材
16…ゴム弾性材
18…凹部
19…凹部
20…本体部
22…橋渡し部
23…橋渡し部
50…成形型
52…上型
54…下型
56…キャビティ
58…凹部形成用突起
59…凹部形成用突起
60…橋渡し部形成用突起
62…内筒保持凹部
63…内筒保持凹部
64…当接部
65…当接部
66…注入ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と、前記内筒の外方に離間して配置された筒状の質量部材と、前記内筒と前記質量部材との間を連結するゴム弾性材とを備え、
前記ゴム弾性材は軸方向に陥没した環状の凹部と、前記凹部において前記内筒と前記質量部材とを連結する橋渡し部とを備えたことを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項2】
前記ゴム弾性材は、軸方向両端部に前記凹部と前記橋渡し部とを備え、
軸方向一端部に設けられた前記橋渡し部と、軸方向他端部に設けられた前記橋渡し部とが、軸方向視において異なる位置に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のダイナミックダンパ。
【請求項3】
前記ゴム弾性材は、軸方向一端部に径方向に相対向する一対の橋渡し部と、軸方向他端部に径方向に相対向する他の一対の橋渡し部とを備え、
軸方向一端部に設けられた前記一対の橋渡し部が、軸方向他端部に設けられた前記他の一対の橋渡し部から軸回りに90度回転した位置に設けられたことを特徴とする請求項2に記載のダイナミックダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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