説明

ダイヤモンドダイス

【課題】伸線加工時の抵抗の増大および断線を効果的に防止することが可能なダイヤモンドダイスを提供する。
【解決手段】ダイヤモンドダイスは、孔2を規定するように伸線の流れの上流側から下流側に向かってアプローチ部4、リダクション部5およびベアリング部6を有する。孔2の中心線に沿った断面における孔の形状において、アプローチ部4のうち最もリダクション部5側の開き角度が100°以上180°以下であり、リダクション部5の長さは0.2D以上1.0D以下(Dはベアリング部6の直径)であり、アプローチ部4とリダクション部5との境界には凸型の円弧面111が設けられており、その円弧面111の半径は20μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属線を伸線加工するためのダイヤモンドダイスに関し、より特定的には、ノンスリップ型伸線機で加工屑の出やすい線材を加工するのに適したダイヤモンドダイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、線径が数十μm以下の極細線を伸線加工する場合には、複数のダイスを用いたスリップ型伸線機が使用されている。しかしながら、近年では、ノンスリップ型の伸線機も使用されるようになってきている。
【0003】
スリップ型伸線機は、ノンスリップ型伸線機に比べて伸線装置が簡単でコンパクトにできる。しかしながら、金属線表面へ傷が付いたり、摩擦抵抗の変動に起因して張力が変化し断線したり、ダイスが摩耗しやすいなどの問題が生じやすい。このような問題を解決するために、キャプスタンと金属線との間の速度差を適正に設定した伸線方法がたとえば特開平11−239814号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
一方、ノンスリップ型伸線機は、金属線表面に傷が付きにくく、断線することも少ないが、伸線機が大型化したり、伸線加工中の金属線にかかるテンションを一定にするために非常に細かい制御が必要となる。これは、伸線加工中の金属線はダイスを通過する毎にその断面積が減少し、金属線の走行速度が速くなるため、テンションが不均一になりやすく、この問題に合せてテンションを細かく制御する必要があるためである。このような問題を解決するために、各伸線ダイスの減面率を任意に変更することが可能で、加工中の各伸線ダイスの減面率や引抜き力をリアルタイムにモニタし、伸線加工状態を常時チェックしながら加工できるノンスリップ型伸線機が、たとえば特開2005−103623号公報(特許文献2)で提案されている。
【0005】
さらに、上記のノンスリップ型伸線機をより改良したものとして、金属線にバックテンションを付与するダンサローラを伸線ダイスの伸線方向とほぼ平行に直線移動させるようにした伸線機がたとえば特許第3918132号公報(特許文献3)で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−239814号公報
【特許文献2】特開2005−103623号公報
【特許文献3】特許第3918132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の技術はいずれも伸線機に関する改良であり、金属線表面に傷が付きにくく断線を防止するための対策としてダイスを改良することに関しては言及されておらず、不十分な点があることも否めない。断線を防止するために、スリップ型伸線機を使用したとしても、たとえば金線のような金属線の伸線加工を行なうと、依然として断線する問題が発生する。これは、金線の加工においては加工屑が発生しやすく、しかも金線は粘りが大きいため、1つのダイスで加工されたときの加工屑が表面に付着したままで次のダイスに送られて加工孔に入り込み、ダイスの孔に加工屑が詰まって伸線抵抗が大きくなり、断線するためである。この現象は、各種金属線で発生するが、金線またはアルミニウム線などの粘りが大きい線材の加工では顕著に出る傾向がある。
【0008】
ダイヤモンドダイスをスリップ型伸線機に取付けて伸線加工を行なう場合は、金属線に加工屑が付着しても、金属線が次のダイスに送られる前にキャプスタンを通り、金属線とキャプスタンとの間で発生するスリップにより加工屑がある程度除去される。そのため、金属線が次のダイスに送られたときには表面に付着した加工屑は少なく、加工孔に詰まるという問題は生じにくいので、伸線抵抗も大きくなりにくく、断線も発生しにくいと考えられている。
【0009】
しかしながら、ノンスリップ型伸線機にダイヤモンドダイスを取付けて伸線加工を行なう場合には、上述のように、1つのダイヤモンドダイスで加工されたときの加工屑が表面に付着したままで次のダイヤモンドダイスに送られて加工孔に入り込みやすく、ダイヤモンドダイスの孔に加工屑が詰まって伸線抵抗が大きくなり、断線しやすくなる。
【0010】
そこで、この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、本発明は、金属線の加工屑がダイヤモンドダイスの孔に詰まりにくくすることで断線を防止し、特にノンスリップ型伸線機で使用した場合に、その伸線機の機能を最大に生かすことができるダイヤモンドダイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に従ったダイヤモンドダイスは、金属線の伸線加工を行なうための孔が設けられたダイヤモンドダイスであって、ダイヤモンドダイスは、孔を規定するように、伸線の流れの上流側から下流側に向かってアプローチ部、リダクション部およびベアリング部を有し、孔の中心線に沿った断面における孔の形状において、アプローチ部のうち最もリダクション部側の部分の開き角度が100°以上180°以下であり、リダクション部の長さは0.2D以上1.0D以下(Dはベアリング部の直径)であり、アプローチ部とリダクション部との境界には凸形の円弧面が設けられており、その円弧面の半径は20μm以下である。
【0012】
なお、アプローチ部とリダクション部との開く角度には大きな差があるため、その境界部には、半径が20μm以下の凸形の円弧面が設けられるが、上述のアプローチ部のうち最もリダクション部側の部分の開き角度は、上記円弧面を除いた最もリダクション部側の部分の開き角度を言う。
【0013】
このように構成された本発明に従ったダイヤモンドダイスでは、リダクション部の長さを0.2D以上1.0D以下として従来より短くし伸線加工時の抵抗を小さくするようにしている。
【0014】
伸線加工時には、ダイヤモンドダイスの周囲は潤滑効果を兼ねた加工液で満たされており、従来のダイヤモンドダイスのようにリダクション部の長さが長いものでは、前述したようにリダクション部の入口でリダクション部と線材との隙間に加工屑が溜まりやすく、溜まった加工屑が線材の動きに合せてリダクション部からベアリング部の方へ持ち込まれることになる。その結果、線材表面に加工屑が溶着して線径が太くなり、抵抗が大きくなって断線すると考えられる。
【0015】
本発明のダイヤモンドダイスで伸線加工を行なうと、加工屑が表面に付着したままの線材が加工孔に入ろうとし、リダクション部に接触し始めるときに、アプローチ部とリダクション部の境界にある極めて鋭利な凸形の円弧面の部分に加工屑が接触しやすい。そのため、一度加工屑が線材表面から離れることにより、周囲が加工液で満たされていてもリダクション部の入口側からアプローチ側に加工屑が流れやすくなる。そして、アプローチ部のうち最もリダクション部側の部分の開き角度は100°以上としているので、リダクション部からアプローチ部へ流れ出た加工屑はアプローチ部およびベル部へ流れて排出されやすくなり、再びリダクション部およびベアリング部へ加工屑が入り込みにくくなる。その結果、線材が溶着せず、伸線加工の抵抗が大きくならないので、線材が断線することを防止できる。
【0016】
好ましくは、アプローチ部よりも上流側のベル部をさらに備え、ベル部からアプローチ部にかけての形状は凹形の曲面となっている。
【0017】
より好ましくは、ベル部からアプローチ部にかけての形状を凹型の曲面形状とすることで、リダクション部の入口側からアプローチ部に流れてきた加工屑がアプローチ部で保持されやすくなり、リダクション部およびベアリング部へ加工屑が流れ込むことをより効果的に防止することができる。
【0018】
以上のようなダイヤモンドダイスは、ノンスリップ型伸線機による伸線加工に用いると非常に大きな効果が得られる。
【0019】
また、金線、銅線およびアルミニウム線のいずれかの伸線加工に用いると、非常に大きな効果が得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のダイヤモンドダイスによれば、金線およびアルミニウム線のような加工屑が発生しやすく、しかも溶着しやすい線材であっても、ノンスリップ型伸線機により断線をさせずに、効率よく高品質な伸線加工を行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1に従ったダイヤモンドダイスの孔の断面形状を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態2に従ったダイヤモンドダイスの孔の断面形状を示す図である。
【図3】比較例に従ったダイヤモンドダイスにおいて、孔の中心軸に沿った断面を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に従ったダイヤモンドダイスにおいて伸線加工時における状態を説明するための断面図である。
【図5】比較例に従ったダイヤモンドダイスにおいて伸線加工時における状態を説明するための断面図である。
【図6】この発明に従ったダイヤモンドダイスが用いられる伸線加工機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態では同一または相当する部分については同一の参照符号を付し、その説明については繰返さない。
【0023】
図1は、この発明の実施の形態1に従ったダイヤモンドダイスの孔の断面形状を示す図である。図1では、孔2の中心軸に沿った断面でダイヤモンドダイスを切断したときの孔2の断面形状を示している。図1の上側が線材の入口側である。ダイヤモンドダイス1の孔2は、上側からベル部3、アプローチ部4、リダクション部5、ベアリング部6、バックリリーフ部7およびエクジット部8により規定されている。
【0024】
ベル部3からアプローチ部4にかけては、アプローチ部4のうち最もリダクション部5側の位置の開き角度Aが100°以上180°以下となっており、リダクション部5の開き角度Bは5°以上30°以下、リダクション部5の長さは0.2D以上1.0D以下(Dはベアリング部6の直径)、ベアリング部6の長さは0.2D以上0.8D以下となっている。
【0025】
リダクション部5の長さは、従来のダイヤモンドダイスと比べて大幅に短くなっており、伸線加工される前の線材とダイヤモンドダイス1の孔2の内面との隙間が狭い部分はできるだけ少なくなるような形状となっている。リダクション部5とアプローチ部4との境界は、半径Rの大きさが20μm以下の円弧面111となっている。
【0026】
ベアリング部6は線材の伸線方向の軸に対して0°以上1.5°以下の部分、リダクション部5はベアリング部6の入口よりも線材の流れの上流側で円弧面111よりも下流側であり、アプローチ部4およびベル部3は、円弧面111よりも上流側をいう。
【0027】
図2は、この発明の実施の形態2に従ったダイヤモンドダイスの孔の断面形状を示す図であり、図2は、孔2の中心軸に沿った面で切断されたダイヤモンドダイスの断面を示す図である。実施の形態1と同様に、ダイヤモンドダイス1は、上側からベル部3、アプローチ部4、リダクション部5、ベアリング部6、バックリリーフ部7およびエクジット部8をそれぞれ有する。
【0028】
図1のダイヤモンドダイス1と同様に、実施の形態2に従ったダイヤモンドダイス1では、ベル部3からアプローチ部4にかけては、アプローチ部4のうち最もリダクション部5側の位置の開き角度Aが100°以上180°以下となっており、リダクション部5の開き角度Bは5°以上30°以下、リダクション部5の長さは0.2D以上1.0D以下(Dはベアリング部6の直径)、ベアリング部6の長さは0.2D以上0.8D以下となっている。ベル部3からアプローチ部4にかけての形状は、凹形の曲面112となっており、ベル部3の入口側の開き角度は100°よりも小さい角度になっている。図1では、ベル部3からアプローチ部4にかけての形状は、凸形の曲面113となっていたが、図2のような形状にすることで、伸線加工を行なった場合に、線材表面から離れた加工屑がアプローチ部4側へ排出され、この加工屑が凹形の曲面112形状からなるアプローチ部4部分で保持されやすくなる。その結果、加工屑が線材の動きに合せて線材とリダクション部5との間に入り込むことは図1のダイヤモンドダイス1以上に減少し、線材が断線するようなトラブルをより防止する効果が高くなる。リダクション部5とアプローチ部4との境界は、図1のダイヤモンドダイス1と同様に、半径Rの大きさが20μm以下の鋭利な凸形の曲面形状となっている。
【0029】
図3は、比較例に従ったダイヤモンドダイスにおいて、孔の中心軸に沿った断面を示す図である。図の上側が線材の入口側であり、孔に規定するように、上側からベル部3、アプローチ部4、リダクション部5、ベアリング部6、バックリリーフ部7、エクジット部8の順にそれぞれの部分が設けられる。一般的に使用される比較例に従ったダイヤモンドダイスの形状として、アプローチ部4の開き角度は40°以上60°以下、リダクション部5の開き角度は5°以上15°以下でその長さは100μm以上250μm以下、ベアリング部6の長さは10μm以上20μm以下とされる。
【0030】
このようなダイヤモンドダイス1をノンスリップ型伸線機に取付けて伸線加工を行なう場合には、1つのダイヤモンドダイス1で加工されたときの加工屑が線材の表面に付着したままで次のダイヤモンドダイス1へ線材が送られ、加工屑が孔2に詰まる。その結果伸線抵抗が大きくなり断線しやすくなる。
【0031】
図4は、この発明の実施の形態1に従ったダイヤモンドダイスにおいて伸線加工時における状態を説明するための断面図である。図4は、ダイヤモンドダイス1をノンスリップ型伸線機に取付けて伸線加工を行なっているときの加工部分周辺を示している。伸線加工される線材11の表面には加工屑12が付着したままでリダクション部5に送り込まれる。そしてこのときに、線材11表面に付着した加工屑12がリダクション部5とアプローチ部4との境界に形成された、鋭利な凸形の円弧面111の部分に接触することで線材11から加工屑12が離れ、リダクション部5と線材11との隙間が狭い部分は従来のダイヤモンドダイスを使用した場合に比べ、非常に少なくなる。その結果、加工屑12はアプローチ部4側へ排出されやすくなる。これにより、加工屑12が線材11の動きに合せて線材11とリダクション部5との間に入り込むことが大幅に減少し、加工屑12が線材11に溶着することがなくなる。したがって、伸線加工時の抵抗が大きくならずに安定し断線するなどのトラブルは極めて生じにくくなる。
【0032】
図5は、比較例に従ったダイヤモンドダイスにおいて伸線加工時における状態を説明するための断面図である。伸線加工される線材11の表面に加工屑12が付着したままでリダクション部5に送り込まれる。そして、線材11表面に付着した加工屑12がリダクション部5の面と接触することで一旦線材11からは離れるが、リダクション部5と線材11との間の隙間に溜まりやすく、溜まった加工屑12は線材11の動きに合せて線材11とリダクション部5との間に入り込むため、線材11に溶着しやすくなる。その結果、伸線加工時の抵抗が大きくなり、やがては断線する。
【0033】
図6は、この発明に従ったダイヤモンドダイスが用いられる伸線加工機を示す図である。図6を参照して、伸線加工機において、伸線加工される前の金属線である線材11は巻出ボビン13に巻かれており、線材11が送り出されて複数のキャプスタン15およびダイヤモンドダイス1a,1b,1cを通りながら伸線加工され、巻取ボビン14に巻取られる。また、線材11を送るために、キャプスタン15は駆動モータにより駆動され、ダイヤモンドダイス1a,1b,1cおよびその周囲は潤滑液で満たされている。ノンスリップ型の伸線機では、キャプスタン15の周速度を加工される線材11の走行速度と同じにしてキャプスタン15と線材11との間にスリップが生じない状態で線材11を駆動する。
【0034】
なお、スリップ型伸線機では、キャプスタン15の周速度を加工される線材11の走行速度よりも速くしてキャプスタン15と線材11との間にスリップを生じさせた状態で線材11を駆動させる。
【0035】
以上のような本発明に従ったダイヤモンドダイス1では、孔2を規定するように伸線の流れの上流側から下流側に向かってアプローチ部4、リダクション部5およびベアリング部6を有し、孔2の中心線に沿った断面における孔2の形状において、アプローチ部4のうちリダクション部5側の開き角度Aが100°以上180°以下であり、リダクション部5の長さは0.2D以上1.0D以下(Dはベアリング部6の直径)であり、アプローチ部4とリダクション部5との境界には凸形の円弧面111が設けられており、その円弧面の半径Rは20μm以下である。リダクション部5の開き角度は5°以上30°以下であることが好ましい。
【実施例】
【0036】
図1で示す形状のダイヤモンドダイスを、図6で示すノンスリップ型の伸線機に取付けて伸線の実験を行った。具体的には、図6で示すダイヤモンドダイス1aとして、図1で示すダイヤモンドダイス1を用い、図6中のダイヤモンドダイス1b,1cでは減面加工を行なわなかった。このとき、図6のダイヤモンドダイス1aのアプローチ部の開き角度A、リダクション部5の長さ、をさまざまに変更し、伸線前の線径を21μmとし、線速(伸線速度)を500m/minとし、線種を金線とし、円弧面111の半径Rを15μmとし、リダクション部5の開き角度Bを12°とし、ベアリング部6の直径Dを20μmとしたサンプルを用いて、伸線加工を行なった結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
また、アプローチ部4の開き角度Aおよび円弧面111の半径Rをさまざまに変更し、伸線前の線径を21μmとし、線速(伸線速度)を500m/minとし、線種を金線とし、リダクション長さを0.5Dとし、リダクション部5の開き角度Bを12°とし、ベアリング部6の直径Dを20μmとしたサンプルを用いて、伸線加工をした。その結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
表2の「…」は、リダクション部とアプローチ部の境界の円弧面111の半径Rが7、8、9、10、11、12、13、14、15、16μmのサンプルについての試験結果を示している。
【0041】
また、円弧面111の半径Rおよびリダクション長さをさまざまに変更し、伸線前の線径を21μmとし、線速(伸線速度)を500m/minとし、線種を金線とし、開き角度Aを140°とし、リダクション部5の開き角度Bを12°とし、ベアリング部6の直径Dを20μmとしたサンプルを用いて、伸線加工を行なった。その結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
表3の「…」は、リダクション部とアプローチ部の境界の円弧面111の半径Rが7、8、9、10、11、12、13、14、15、16μmのサンプルについての試験結果を示している。
【0044】
表1から表3により、アプローチ部4の開き角度Aは100°以上180°以下、リダクション部5の長さは0.2D以上1.0D以下、円弧面111の半径Rは20μm以下である必要があることがわかった。
【0045】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のダイヤモンドダイスは、ノンスリップ型伸線機で大きな効果が得られるが、スリップ型伸線機においても従来のダイヤモンドダイスを使用した場合に比べて、本発明の効果が得られる。
【符号の説明】
【0047】
1,1a,1b,1c ダイヤモンドダイス、3 ベル部、4 アプローチ部、5 リダクション部、6 ベアリング部、7 バックリリーフ部、8 エクジット部、11 線材、12 加工屑、14 巻取ボビン、15 キャプスタン、111 円弧面、112,113 曲面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線の伸線加工を行なうための孔が設けられたダイヤモンドダイスであって、
前記ダイヤモンドダイスは、前記孔を規定するように、伸線の流れの上流側から下流側に向かってアプローチ部、リダクション部およびベアリング部を有し、
前記孔の中心線に沿った断面における孔の形状において、アプローチ部のうち最もリダクション部側の部分の開き角度が100°以上180°以下であり、リダクション部の長さは0.2D以上1.0D以下(Dはベアリング部の直径)であり、前記アプローチ部と前記リダクション部との境界には凸型の円弧面が設けられており、その円弧面の半径は20μm以下である、ダイヤモンドダイス。
【請求項2】
前記リダクション部の開き角度は5°以上30°以下である、請求項1に記載のダイヤモンドダイス。
【請求項3】
ノンスリップ型伸線機による伸線加工に用いられる、請求項1または2に記載のダイヤモンドダイス。
【請求項4】
金線、銅線およびアルミニウム線のいずれかの伸線加工に用いられる、請求項1から3のいずれか1項に記載のダイヤモンドダイス。
【請求項5】
前記アプローチ部よりも上流側のベル部をさらに備え、前記ベル部から前記アプローチ部にかけての形状は凹形の曲面となっている、請求項1から4のいずれか1項に記載のダイヤモンドダイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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