説明

ダイヤモンドホイール

【課題】高速度研削においても、研削液のキャリィ効果や速やかな切屑排出が得られると共に、研削点つまり接触円弧内への研削液の到達量を多くして十分な冷却効果が得られるダイヤモンドホイールを提供すること。
【解決手段】ダイヤモンドホイール1は、台金2の外周に、ダイヤモンド砥粒とボンド材との焼結からなる砥粒層8が周方向にセグメント状に隙間6をもって配列形成され、これら砥粒層8のセグメントとセグメントの間の上記各隙間6にボンド材の焼結からなるボンド層7A、7B、7C・・・が充填され、研削作用面4が周方向において、砥粒層8とボンド層7A、7B、7C・・・とが交互に配列して連続に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンドホイールの構造に関するものである。また、本発明は板ガラス、セラミックスなどの研削、研磨加工用として使用するダイヤモンドホイールである。さらに、自動車の窓ガラス用板ガラスの周縁エッヂの高速研削に使用するダイヤモンドホイールに係るものでもある。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2000−233374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、自動車用板ガラスの高速研削においては、ホイール周速度と送り速度が大きく、重研削となり、非常に研削抵抗が大きい。従って、多量の研削熱が生じ、「研削焼け」など熱的損傷の発生頻度が多くなる。
【0004】
よって、高速研削では、研削圏である接触円弧内をより効果的に冷却することが要求される。
【0005】
そこで、冷却効果を上げるひとつの方法として、接触円弧内に研削液を十分に到達させ、浸潤させるために、直角ノズル、フローティングノズル、導液シートなどいろいろな研削液用ノズルが考案されている。
【0006】
しかし、金属や非鉄金属の研削と比較した場合に、自動車用板ガラスの高速研削では、研削除去速度が非常に高く、かつ、切屑がパウダー状であるので、上記研削液用ノズルを用いた冷却効果は低いものである。また、自動車用板ガラスの形状は、複雑な自由曲線からなり、上記の研削液用ノズルの配置が研削点よりも離れた位置にしか設置できず、十分な効果が得られない。故に、現状では、研削液の供給量を可能な限り大きく、ノズル口を研削作用点、つまり接触円弧を直接狙うことが有利とされている。また、接触円弧内での冷却効果を上げる一般的な方法として、高チップポケット率のダイヤモンドホイール、研削作用面に溝またはスリットが形成されたセグメントタイプのダイヤモンドホイールの使用が有効とされている。高速研削時の研削液のキャリィ効果や速やかな切屑排出に大きく影響を与える。しかしながら、上記セグメントタイプのダイヤモンドホイールは、ホイール外周部近傍の連れ回り空気層の流速が大きく、高いホイール周速度では、冷却効率が逆に悪化する。供給される研削液が空気層の流速により遮られ、接触円弧内に十分に到達し得ないからである。
【0007】
そこで、本発明は、高速度研削においても、研削液のキャリィ効果や速やかな切屑排出が得られると共に、研削点つまり接触円弧内への研削液の到達量を多くして十分な冷却効果が得られるダイヤモンドホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダイヤモンドホイールは、台金の外周に、ダイヤモンド砥粒とボンド材との焼結からなる砥粒層が周方向にセグメント状に隙間をもって配列形成され、これら砥粒層のセグメントとセグメントの間の上記の各隙間にボンド材の焼結からなるボンド層が充填されて、研削作用面が周方向において、砥粒層とボンドとが交互に配列して連続に形成したことを特徴とする。
【0009】
上記ボンド材は特に限定されず、公知のメタルボンド、レジノイドボンド、ビトリファイドなどを使用することができる。また、ボンド層は耐磨耗の低い、すなわち削られ易い材質のものでもよい。さらに、上記ボンド層は、後述の本発明の作用効果、例えば、研削中にボンド層表面にポケットが生成されてゆくような作用を奏するなら、少々砥粒が入っていてよい。
【発明の効果】
【0010】
セグメントを形成する砥粒層のボンド表面と上部ボンド層の表面は研削作業中、互いに同程度に削り落とされてゆき、各セグメントの砥粒層のポケット表面には砥粒の突出しが、各ボンド層の表面にはポケットが生成される。即ち、作用面の周方向において、砥粒層の各セグメントの間に、深く滑らかで、確実なポケットが形成される。これら各ポケットには供給された研削液の流れ込みを受けてキャリー効果を生成すると共に、切屑の速やかな排出作用を発揮する。この点従来のセグメントタイプホイールと同作用を奏するが、従来のセグメントタイプホイールに比べ、砥粒層を形成する各セグメント部と隣り合う各セグメント間の隙間に充填された各ボンド層とは周方向において連続した研削作用面を保つ。このためホイールの高速度回転においても、ホイール外周近傍の連れ回り空気層の流速は従来のコンティニュアスホイール(砥粒層が連続した研削作用面をもつホイール)と同程度に保たれ、ノズルから狙った研削点への供給の研削液は上記連れ回りの空気層に遮られることなく研削点、つまり接触円弧内へ十分に到達、浸潤させることができる。従って、自動車用板ガラスの高速研削においての研削作用面での多量の研削熱の発生があって、良好に冷却効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、板ガラスの周縁エッヂを研削加工するストレートダイヤモンドホイールの断面図である。
【図2】図2は、図1に示すストレートダイヤモンドホイールの正面図である。
【図3】図3は、自動車用板ガラスの研削テストに使用したストレートダイヤモンドホイールのセグメントの分割割合及びボンド層の幅寸法を示す説明図である。
【図4】図4は、テスト結果を示す表図である。
【図5】図5は、カップタイプダイヤモンドホイールの正面図である。
【図6】図6は、図5に示すカップタイプダイヤモンドホイールの断面図である。
【図7】図7は、研削作業中において、ボンド層の表面に生成されるポケットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を示し、本発明の効果を明らかにする。
【0013】
第1図から第3図は板ガラスのエッヂを研削(面取り研削ともいう)するストレートダイヤモンドホイール1(ペンシルエッヂホイール)が示してある。
【0014】
第1図は断面を示したものであり、第2図は外周面に形成の研削作用面を示したものである。さて、本ダイヤモンドホイール1は台金2の外周面3に溝形状の研削作用面4が周方向に形成してある。
【0015】
この研削作用面4は、周方向において、砥粒層からなるセグメント5A、5B、5C・・・と、これら隣り合うセグメント5A、5B、5C・・・の間に形成した各隙間6に充填して形成されたボンド層7A、7B、7C・・・とが交互に配列して構成され、連続した研削作用面を形成している。研削作用面は在来のコンティニュアスなダイヤモンドホイールと同形状である。上記の各セグメント5A、5B、5C・・・はダイヤモンド砥粒とメタルボンド材との焼結からなる砥粒層8から形成されている。
【0016】
上記の各ボンド層7A、7B、7C・・・はメタルボンド材のみの焼結からなる。
【0017】
上記ボンド層7A、7B、7C・・・のボンド層は、砥粒層8のボンド材と同じ材質を使用してもよく、また、耐磨耗の低い、すなわち削られ易い材質のものでもよい。
【0018】
各セグメント5A、5B、5C・・・の間に形成した隙間6、即ち、各ボンド層7A、7B、7C・・・の周方向の幅寸法は、使用部分野に応じて適宜に定められる。
【0019】
また、第3図には、自動車用板ガラス用として制作した実施例のダイヤモンドホイールの一例が示してある。上記のボンド層7A、7B、7C・・・の幅寸法は、2ミリメートルである。そして、この本実施例のダイヤモンドホイール1Bと従来の板ガラス研削用のダイヤモンドホイールとの比較研削テストを行った結果が第4図に示されている。研削作用面つまり接触円弧内の有効冷却効果を有する範囲内での両ホイールの上限回転速度の計測である。
【0020】
第4図に示す結果によると、本発明実施例でのダイヤモンドホイールのほうが、在来の板ガラス研削ダイヤモンドホイールと比べ、より高速度域でも冷却効果を発揮することが判る。
【0021】
第5図及び第6図には、本発明を実施したメタルボンドからなるカップタイプのダイヤモンドホイールが示されている。
【0022】
また、本発明のダイヤモンドホイールはボンド材として公知のレジノイドボンド材を使用して、カップタイプのレシンダイヤホイールを実施化しても本発明の特有の効果を発揮する。
【0023】
本発明ダイヤモンドホイール1は、以上に説明したように、周方向において、砥粒層8からなるセグメント5A、5B、5C・・・とこれらセグメント5A、5B、5C・・・の隣り合う間に形成の隙間6A、6B、6C・・・に充填したボンド材のボンド層7A、7B、7C・・・との交互の配列により連続した研削作用面4が形成された構造を特徴とするものである。
【0024】
この結果、研削中、セグメント5A、5B、5C・・・を形成する砥粒層8のボンド部10とボンド層7A、7B、7C・・・とは研削作業中、互いに同程度、同径に削り落とされてゆき、各ボンド層7A、7B、7C・・・にはポケット11が生成される(第9図)。
【0025】
即ち、砥粒層8からなる各セグメント5A、5B、5C・・・どうしの間には、深く滑らかで、確実なポケット11が形成される。これら各ポケット11には供給された研削液の流れ込みを受けてキャリィー効果を生成すると共に、切屑を集め受け、ポケット8が研削圏を通りすぎると、外部へ放出する作用を発揮する。
【0026】
さらに、砥粒層を形成する各セグメント5A、5B、5C・・・部と隣り合う各セグメント間の隙間6に充填された各ボンド層7A、7B、7C・・・とは周方向に連続した研削作用面4を保つ。このため、ホイールの高速度回転においても、ホイール外周近傍の連れ回り空気層の流速は従来のコンティニュアスホイール(砥粒層が連続した研削作用面をもつホイール)と同程度に保たれ、ノズルから狙った研削点への供給の研削液は、上記連れ回りの空気層に遮られることなく、研削点、つまり接触円弧内へ十分に到達、浸潤させることができる。従って、自動車用板ガラスの高速研削においての研削作用面での多量の研削熱の発生があって、良好に冷却効果を発揮するものである。
【符号の説明】
【0027】
1 ダイヤモンドホイール
2 台金
3 外周面
4 研削作用面
5 セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台金の外周に、ダイヤモンド砥粒とボンド材との焼結からなる砥粒層が周方向にセグメント状に隙間をもって配列形成され、これら砥粒層のセグメントとセグメントの間の上記各隙間にボンド材の焼結からなるボンド層が充填され、研削作用面が周方向において、砥粒層とボンド層とが交互に配列して、連続に形成されたダイヤモンドホイール。
【請求項2】
ボンド材がメタルボンド材からなる請求項1に記載のダイヤモンドホイール。
【請求項3】
ボンド材がレジンボンド材からなる請求項1に記載のダイヤモンドホイール。
【請求項4】
台金がカップ状である請求項1から3のいずれか一項に記載のダイヤモンドホイール。
【請求項5】
台金の外周がペンシルエッジ状であって、ダイヤモンドホイールが面取り用である請求項1から3のいずれか一項に記載のダイヤモンドホイール。
【請求項6】
台金が円盤状であって、ダイヤモンドホイールがカッティング用である請求項1から3のいずれか一項に記載のダイヤモンドホイール。
【請求項7】
台金がストレート円盤状である請求項1から3のいずれか一項に記載のダイヤモンドホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−107204(P2013−107204A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−48524(P2013−48524)
【出願日】平成25年3月11日(2013.3.11)
【分割の表示】特願2007−208532(P2007−208532)の分割
【原出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【出願人】(000174220)坂東機工株式会社 (51)
【Fターム(参考)】