説明

ダイラタンシー性流体組成物

【課題】 本発明の課題は、広い温度範囲で液状を保持し、保存安定性に優れ、機械的強度が大きく、せん断応力の増大に伴う粘性抵抗の変化量が非常に大きい、新規なダイラタンシー性流体を提供することにある。
【解決手段】 (A)〔RSiO3/2〕、〔RSiO2/2〕、〔RSiO1/2〕、〔SiO4/2〕から選択される一種あるいは二種以上の構造単位より成り、〔RSiO3/2〕単位が主成分である、有機溶剤に不溶な一次粒径が100nm〜1μmのシリコーンレジン粉末 100質量部(B)粒子分散剤 1.0〜100質量部(C)シリコーン媒体 10〜500質量部とからなるダイラタンシー性流体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高せん断力下で高粘性となり、低せん断力下で低粘性となるダイラタンシー性を示す流体に関する。このような流体は2個の近接して相対移動する物体間に配置され、高いずり速度のもとでは高いトルクを伝達し、低いずり速度のもとでは低いトルクを伝達するクラッチや防振装置などの作動流体として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、微細粒子を分散した液体においては、せん断力を加えると、低いせん断力下では低い粘性を示すが、加えるせん断力を増加させると、急激に高い粘性を示す現象、即ち、ダイラタンシー性を示すことが知られている。
【0003】
このダイラタンシー性は、粒子のパックキング状態が急激な外力により、一時的に変化することから起こる現象である。いま簡単のために、同じ大きさの球形粒子の集合を考えると、最密パックキングでは空隙率は26%である。この状態では、粒子間の空間を埋めるに足りるだけの液体を吸収すれば球形粒子の集合体は静かに流動することができる。しかし、いま、これに急激に強い外力が加えられると、球形粒子の集合は疎なパックキング状態に移行する。
【0004】
例えば、最疎パックキングでは、空隙率は48%であるから、その増大した空間に、上記液体が全部内部に吸い込まれてもまだ足りず、液体に浸されないで、擦れ合う粒子ができる
【0005】
ダイラタンシー性において、表面の液体が内部に吸い込まれて、体積が膨張し、流動性が失われて、脆い固体のような挙動をするのはこのためである。例を挙げれば、海岸の濡れた砂地を足で踏むと、砂粒の間隙が広がり、海水が砂の中へ吸い込まれて、砂地は乾いて見え、固くなる現象がこれであり、また、無機物の結晶沈澱を吸引濾過するときにもダイラタンシー現象が観察される。
【0006】
ダイラタンシー性を示す流体としてドイツBASF社のダイラタール(登録商標)が知られている。これはアクリル酸エステル−スチレン共重合体微粒子を水に分散させたものである。また、特開平8−281095号では、真球度1.1以下の無機化合物微粒子と液体とからなるダイラタンシー性を示す液体が報告されており、この請求項の中ではシリコーンオイルを使用することが記載されている。
【0007】
従来、公知のダイラタンシー性流体は、分散媒が水または揮発性の溶剤であるため、分散媒が低温では固化し、高温では揮発しやすいという問題があった。また、そこまで至らない場合でも、粘度変化が激しく、室温付近でしか使用できないといった問題があった。
【0008】
特開平8−281095号には媒体として“シリコーンオイル”の使用が記載されているものの、シリコーンオイルの詳細な記載がなく、しかも、シリコーンオイルを使用した場合の粒子分散剤の記載が無い。したがって、分散粒子が媒体のシリコーンオイルに親和しにくく、粒子を均一分散・高配合できず、また、沈降しやすく保存安定性に劣るといった欠点がある。
【0009】
また無機粒子、特にシリカなどの場合、その表面活性のため経時で擬似凝集がおこり流動性を失う場合がある。
【0010】
特開平10−251517号には平均粒子径が10〜40μmのシリコーンレジン粉末が使用されているが、粒径の大きい粉体は沈降しやすく保存安定性に劣る欠点がある。
【0011】
【特許文献1】特開平8−281095号公報
【特許文献2】特開平10−251517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、広い温度範囲で液状を保持し、保存安定性に優れ、機械的強度が大きく、せん断応力の増大に伴う粘性抵抗の変化量が非常に大きい、新規なダイラタンシー性流体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究した結果、〔RSiO3/2〕、〔RSiO2/2〕、〔RSiO1/2〕、〔SiO4/2〕から選択される一種あるいは二種以上の構造単位より成り、〔RSiO3/2〕単位が主成分である、有機溶剤に不溶な一次粒径が100nm〜1μmのシリコーンレジン粉末100質量部に対し、粒子分散剤1.0〜100質量部およびシリコーン媒体10〜500質量部とからなる組成物において、低せん断力下でゾル状となり、高せん断力下でゲル状となるダイラタンシー性流体を見出した。
【0014】
このダイラタンシー性流体は保存安定性に優れ、広い温度範囲で液状を保持し、機械的強度が大きく、せん断応力の増大に伴う粘性抵抗の変化量が大きいものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のダイラタンシー性流体は広い温度範囲で液状を保持し、保存安定性に優れ、機械的強度が大きく、せん断応力の増大に伴う粘性抵抗の変化量が大きいという優れた特性を有する。従って、本発明のダイラタンシー性流体はクラッチや防振装置などの作動液体として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明は、〔RSiO3/2〕、〔RSiO2/2〕、〔RSiO1/2〕、〔SiO4/2〕から選択される一種あるいは二種以上の構造単位より成り、〔RSiO3/2〕単位が主成分である、有機溶剤に不溶な一次粒径が100nm〜1μmのシリコーンレジン粉末100質量部に対し、粒子分散剤1.0〜100質量部およびシリコーン媒体10〜500質量部とからなる組成物において極めて特異的に優れたダイラタンシー性を発現することを見いだしたことに基づく。
【0017】
本発明を構成するシリコーンレジン粉末は100nm〜1μmであり、より好ましくは300〜900nmである。
粒径が大きすぎるとダイラタンシー性を示し難く、また粒子の分散が不安定となり、沈降してしまい、分散媒体と分離してしまう。粒径が小さすぎるとゾル状態下での粘度が増加し流動性が失われ、ダイラタンシー性を示し難く、好ましくない。
【0018】
本発明におけるシリコーンレジン粉末の表面状態は凹凸が少なく平滑であり、より球状に近いほど好ましい。
【0019】
本発明における粒径が1μm以下の単分散球状シリコーンレジン粉末は、特開平6−192426号公報に記載の公知の方法により製造することができる。即ち、A)〔SiO4/2〕の原料であるテトラアルコキシシランと、〔RSiO1/2〕の原料であるトリアルキルシラノールおよび〔RSiO3/2〕の原料であるオルガノトリアルコキシシラン、また必要に応じて〔RSiO2/2〕の原料であるジオルガノジアルコキシシランよりなるシラン混合物をアルカリ性物質の水溶液中で、加水分解、縮合させる工程、B)ついでこれにオルガノトリアルコキシシランを添加して引続き加水分解、縮合させる工程とからなることを特徴とする製造方法により、一次粒子の粒径が1μm以下で、平均粒径値からの粒径値のずれ幅が0.1μm以内の範囲である単分散状の球状シリコーン樹脂微粒子を容易な工程管理で効率よく製造することができる。
【0020】
かかる粒径が1μm以下の単分散球状シリコーンレジン粉末としては、X−52−854(信越化学工業(株)製商品名)、トスパール105(ジーイー東芝シリコーン(株)製商品名)として市販されているものなどを用いることができる。
【0021】
本願のシリコーンレジン粉末は表面を特に処理してないものでもよいが、粉末状態での凝集、吸湿を防止する目的で、パーフロロアルキル基含有シラザン及び炭素数1〜5の非置換の炭化水素基からなるシラザンで表面をシリル化処理してもかまわない。また、粒子の他の物性、不純物成分量等について特に限定しない。
【0022】
本発明における粒子分散剤はシリコーン媒体へのシリコーンレジン粉末の親和性を向上させ高配合化するために使用され、下記のシロキサン結合を有する分散剤を使用することが好ましい。
【0023】
下記一般式(1)記載のシロキサンである。
SiO(4−a−b)/2 (1)
〔但し、式中のRはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である炭素原子数1〜30の一価炭化水素基から選択される同種あるいは異種の有機基、Rはアルキレンオキシド基およびヒドロキシル基を有する置換基である。また、a、bはそれぞれ0.01≦a≦2.5、0.01≦b≦2.5であると共に、0.05<a+b≦3.0であり、c、dはそれぞれ2≦c≦5、0≦d≦100の整数である。〕
【0024】
一般式(1)中のRの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などを挙げることができる。
【0025】
また、式(1)で表されるシリコーン化合物の平均分子量は特に限定されるものではないが、500〜10,000であることが好ましく、特に1,000〜5,000であることが好ましい。
【0026】
本発明における(B)成分としての粒子分散剤の具体例としては、例えば下記一般式(2)、(3)で表されるポリシロキサンジオールが挙げられる。
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】


但し、Rは各々独立して、炭素数1〜8アルキル基またはアリール基を示す。具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、オクチル基が好ましく、アリール基としてはフェニル基が好ましい。また、Rは各々独立してアルキレン基或いはエステル結合又はエーテル結合を有する二価の置換基を示す。具体的には、エチレン基、トリメチレン基、2−オキサペンタメチレン基、3−オキサヘキサメチレン基等が好ましい。dは1≦d≦1000の整数である。
【0029】
さらに好ましくは下式で示される片末端ヒドロキシル基含有シリコーンオイルである。
【0030】
【化3】


(但し、式中のRは上記した基を示し、dは1≦d≦1000、cは2≦c≦5の整数である。)
【0031】
もう一つの本発明における(B)成分としての粒子分散剤の具体例としては、
(メタ)アクリルモノマーと片末端(メタ)アクリル基含有シロキサンとの共重合体である。本共重合体のシロキサン変性量としては30〜95重量%が好ましく、更に60〜90%が好ましい。
【0032】
かかる共重合体としては、下記一般式(4)で表される(メタ)アクリル基含有シロキサンと、下記一般式(7)で表される(メタ)アクリルモノマーとを共重合して得られる、アクリル−シリコーン系共重合体が挙げられる。
具体的には、下記一般式(4)で表される(メタ)アクリル基含有シロキサン化合物30〜95重量%、
【0033】
【化4】


[式中、Aは下記一般式(5)又は(6)
CH=C(R)COOR− (5)
CH=C(R)C− (6)
(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、nは3〜500の整数を表す。)で表されるラジカル重合性基、Rは、それぞれ同種あるいは異種でもよい、炭素数1〜30のアルキル基、アリール基、アラルキル基及びフッ素置換アルキル基から選択される有機基を表す。]
及び、下記一般式(7)で表される(メタ)アクリルモノマー70〜5重量%、
CH=C(R)COOR (7)
(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数1〜30のアルキル基を表す。)を共重合させて得られることを特徴とするアクリル−シリコーン系共重合体が挙げられる。
【0034】
一般式(4)で表されるラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物はシリコーンマクロモノマーと言われるものであり、片末端にのみラジカル重合性基を有する化合物である。ここでAはラジカル重合性を有する1価の有機基を表し、上記一般式(5)又は(6)で表すことができ、具体的には(メタ)アクリル酸メチル基、(メタ)アクリル酸プロピル基、(メタ)アクリル酸デシル基、スチリル基、α−メチルスチリル基などが例示される。Rの具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、トリフロロプロピル基、ノナフロロブチルエチル基等のフッ素置換アルキル基などが挙げられる。
【0035】
一般式(7)のアクリル系モノマーの具体例としては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソ−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等が挙げられるが、これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
上記一般式(4)及び(7)で表される化合物の共重合に使用される割合は、一般式(4)のラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物が30〜95重量%、好ましくは60〜90重量%、一般式(7)のアクリル系モノマーが5〜70重量%、好ましくは10〜40重量%である。
【0037】
分散媒体のシリコーンとしては環状または直鎖のジメチルシリコーンオイルまたはメチルフェニルシリコーンオイルが好ましく、更に好ましくは沸点が100℃より高く、粘度が10万mm/s以下のオイルが好ましい。沸点が100℃以下では揮発性が高く経時で重量減少し、組成およびダイラタンシー性が変化する。
【0038】
また、粘度が10万mm/s以上のオイルでは、シリコーンレジン粉末配合量を多くできず、結果的に低トルク時の粘度と高トルク時での粘度差が小さくなってしまう。
【0039】
(C)成分としての分散媒体のシリコーンとしては環状または直鎖のジメチルシリコーンオイルまたはメチルフェニルシリコーンオイルが好ましく、更に好ましくは沸点が100℃より高く、粘度が10万mm/s以下のオイルが好ましい。沸点が100℃以下では揮発性が高く経時で重量減少し、組成およびダイラタンシー性が変化する。また、粘度が10万mm/s以上のオイルでは、無機粒子配合量を多くできず、結果的に低トルク時の粘度と高トルク時での粘度差が小さくなってしまう。
【0040】
本発明のダイラタンシー性流体において、シリコーンレジン粉末100質量部に対する粒子分散剤の混合比率は1.0〜100質量部である。更に好ましくは2〜50質量部である。粒子分散剤の混合比率が少ないと、シリコーンレジン粉末の分散が悪く均一な流体組成物が得られない。また、逆に多すぎるとダイラタンシー特性が得られない。
【0041】
シリコーンレジン粉末100質量部に対するシリコーン媒体の好ましい混合比率は10〜500質量部であり、更に好ましくは20〜300質量部である。シリコーンオイル量が少ないと均一な流体組成物が得られず、また、逆に多すぎるとダイラタンシー特性が得られない。
【0042】
本発明の組成物は公知の方法で作ることができる。
(粒子への分散剤処理方法)
粒子分散剤は、公知の方法で粒子表面に処理することができる。例えば、以下の方法の中から適宜選択することが可能である。
(1)目的の粒子を、処理剤を配合した有機溶剤から選択される媒体中に分散して表面処理する方法。
(2)粒子と粒子処理剤を混合したのち、ボールミル、ジェットミルなどの粉砕器を用いて表面処理する方法。
処理剤を溶剤に配合し、粒子を分散させて表面に吸着させた後、乾燥させる処理方法。
【0043】
(油中粉体分散物の製造方法)
表面処理粒子分散物は公知の方法で作ることができる。例えば
(1)上記のごとくして得た分散剤処理シリコーンレジン粉末組成物をシリコーンオイル等の油剤中に添加して分散する方法。
(2)シリコーン媒体に粒子分散剤を溶解または分散し、これにシリコーンレジン粉末を添加してボールミル、ビーズミル、サンドミル、プラネタリーミキサ等の分散機器で混合する方法などによって容易に得ることができる。
【0044】
本発明のダイラタンシー性流体においては、流動性向上剤を添加して極性をコントロールすることにより、シリコーンレジン粉末の分散状態を変化させ、流動性を向上させることも可能である。
【0045】
更に、増稠剤、ゲル状物を添加して、チキソトロピック性を与えることにより、低せん断力下あるいは大気圧下で流れ難いグリース状物としてもよい。
【0046】
本発明のダイラタンシー性液体の製造方法としては、60℃以上の高温下で、シリコーンレジン粉末、粒子分散剤、シリコーン媒体とを、攪拌して均一に分散させるか、または、シリコーン媒体にシリコーンレジン粉末と粒子分散剤を、攪拌下、徐々に添加して分散させる方法が好ましい。
【0047】
本発明のダイラタンシー性流体組成物は、クラッチの様なトルク伝達装置や防振・免震装置などのダンパー材または作動液体として有用である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0049】
[実施例1]
ジメチルシロキサン〔信越化学工業(株)製商品名:KF96(10cs)〕25質量部と、下記式(7)で示される片末端カルビノール変性オイル5質量部との混合液に、シリコーンレジンパウダー[信越化学工業(株)製商品名:X−52−854](平均一次粒径=800nm)70質量部をプラネタリーミキサーにて混合し白色液体を得た。
【0050】
【化5】

【0051】
(実施例2)
デカメチルシクロペンタシロキサン30質量部と、実施例1と同じ式(7)で示される片末端カルビノール変性オイル5質量部との混合液に、シリコーンレジンパウダー[信越化学工業(株)製商品名:X−52−854](平均一次粒径=800nm)65質量部をプラネタリーミキサーにて混合し白色液体を得た。
【0052】
(実施例3)
ジメチルシロキサン〔信越化学工業(株)製商品名:KF96(20cs)〕30質量部と、実施例1と同じ式(7)で示される片末端カルビノール変性シロキサン5重量との混合液に、シリコーンレジンパウダー[信越化学工業(株)製商品名:X−52−854](平均一次粒径=800nm)65質量部をプラネタリーミキサーにて混合し白色液体を得た。
【0053】
(比較例1)
シリコーンレジンパウダー[信越化学工業(株)製商品名:KMP−590](平均一次粒径=2μm)65質量部と、デカメチルシクロペンタシロキサン30質量部、ならびに実施例1と同じ式(7)で示される片末端カルビノール変性シロキサン5質量部とを、プラネタリーミキサーにて混合し白色のペースト状物を得た。
【0054】
(比較例2)
デカメチルシクロペンタシロキサン15質量部と、、実施例1と同じ式(7)で示される片末端カルビノール変性オイル20質量部との混合液に、シリコーンレジンパウダー[信越化学工業(株)製商品名:KMP−590](平均一次粒径=2μm)65質量部をプラネタリーミキサーにて混合し白色ペースト状物を得た。
【0055】
以上の実施例1〜3、比較例1〜2で得られた各液体について、株式会社マルコム社製マルコム粘度計(型式PC−1TL)を用いて、25℃での粘度(単位Pa・s)を測定し、その結果を図1に示した。
【0056】
さらに実施例1で得られた液体について、株式会社マルコム社製マルコム粘度計(型式PC−1TL)を用いて、−5℃〜60℃での粘度(単位Pa・s)を測定し、その結果を図2に示した。
【0057】
実施例1〜3、比較例1〜2で得られた各液体について、25℃で1ヶ月後ならびに60℃で10日後の粒子の沈降度合いについて、目視で均一性を観測した。評価結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
(実施例の総括)
上記結果からわかるように、本発明の組成物ではローターが高速回転になるほど、高粘度化する、即ち、ダイラタンシー性が認められる。しかも、水を溶媒として使用する場合、水が固化する温度である−5℃においてもダイラタンシー性が発現されることが解る。また、60℃の高温においてもダイラタンシー性が認められる。また、保存安定性については、比較例では粒子が沈降しやすいのに対し、実施例では非常に沈降し難い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るダイラタンシー性液体の粘度変化図である。(実施例1〜3及び比較例1〜2)
【図2】本発明に係るダイラタンシー性液体の粘度変化図である。(実施例1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)〔RSiO3/2〕、〔RSiO2/2〕、〔RSiO1/2〕、〔SiO4/2〕から選択される一種あるいは二種以上の構造単位より成り、〔RSiO3/2〕単位が主成分である、有機溶剤に不溶な一次粒径が100nm〜1μmのシリコーンレジン粉末
100質量部
(B)粒子分散剤 1.0〜100質量部
(C)シリコーン媒体 10〜500質量部
とからなるダイラタンシー性流体組成物。
【請求項2】
請求項1記載の粒子分散剤がシロキサン結合を有する分散剤である請求項1記載のダイラタンシー性流体組成物。
【請求項3】
請求項2記載の粒子分散剤が下記一般式(1)記載のシロキサンである請求項1記載のダイランシー性流体組成物。
SiO(4−a−b)/2 (1)
〔但し、式中のRはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である炭素原子数1〜30の一価炭化水素基から選択される同種あるいは異種の有機基、Rはアルキレンオキシド基およびヒドロキシル基を有する置換基である。また、a、bはそれぞれ0.01≦a≦2.5、0.01≦b≦2.5であると共に、0.05<a+b≦3.0であり、c、dはそれぞれ2≦c≦5、0≦d≦100の整数である。〕
【請求項4】
請求項1記載のシリコーン媒体が環状または直鎖のジメチルシリコーンオイルまたはメチルフェニルシリコーンオイルである請求項1記載のダイラタンシー性流体組成物。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−2027(P2006−2027A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179531(P2004−179531)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】