説明

ダイラタンシー組成物

【課題】ダイラタンシー性を有し、保湿剤、マッサージ剤等の化粧料成分として、また衝撃吸収剤や自動車のクランク周りへの適用材料として好適な組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)油滴の平均粒径が0.2μm以下であり、油性成分と界面活性剤の質量割合が、油性成分:界面活性剤=10:1より大きく20:1以下の範囲にあるO/W型乳化物、
(B)重量平均分子量が20000以上300000未満の非イオン性水溶性高分子
0.1質量%以上5質量%未満
を含有するダイラタンシー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の配合成分、衝撃吸収剤等として有用な、ダイラタンシー性を示す組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性高分子の溶液は、一般に非ニュートン性を有しており、擬塑性を利用した塗料、チクソトロピー性を利用した練り歯磨き、インク、化粧クリーム等への応用がなされている。その中で、乳化組成物に添加される水溶性高分子は保護コロイド作用による乳化安定性の向上、粘性の付与などを目的としており、いずれもチクソトロピー性のゲル組成物の範疇に属している。
【0003】
しかし、このようなチクソトロピー性のゲル組成物をポンプ式容器に充填して使用すると、静置状態において高粘度のため、吐出が不能となる場合がある。仮に吐出できても、吐出の際に生じるひずみにより低粘度化され、液ダレが生ずる場合もある。また、静置状態において高粘度の液性は、内容物を最後まで吐出することが難しいという問題もあった。
【0004】
これに対し、特許文献1には、チクソトロピー性のゲルと全く異なる流動挙動をとるダイラタンシー性を有する組成物が開示されている。しかしながら、この組成物は、分子量が30万以上の水溶性高分子を用いているため、静止状態での粘度が非常に高い。このため、ポンプ式容器に充填して使用すると、内容物が高粘度であることから、ポンプにより吸い上げることが困難となり、容器中の液残りが生じてしまう。
【特許文献1】特開2002−317124
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来のゲル組成物とは全く異なる流動挙動をとる、比較的低分子量の水溶性高分子を利用したダイラタンシー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、特定のO/W型(水中油型)乳化物と水溶性高分子を組み合わせて用いると、静置状態では低粘度で、一定以上の強さの外力を加えると急激に粘度が増加し、力を除くと元に戻る、いわゆるダイラタンシー性を有する組成物が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)油滴の平均粒径が0.2μm以下であり、油性成分と界面活性剤の質量割合が、油性成分:界面活性剤=10:1より大きく20:1以下の範囲にあるO/W型乳化物、
(B)重量平均分子量が20000以上300000未満の非イオン性水溶性高分子
0.1質量%以上5質量%未満
を含有するダイラタンシー組成物を提供するものである。
【0008】
本発明において「ダイラタンシー」とは、一定周波数の下、ひずみ(変位振幅)を連続的に増加させたとき、あるひずみ以上で貯蔵弾性率(弾性項)の局部的増加が見られること、具体的には、組成物の動的粘弾性において、ひずみ100%以上の領域でその貯蔵弾性率(弾性項)の増加(ΔG')が、明らかに認められることをいう。より具体的には、ダイラタンシー係数が1を超えることをいう。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は、静置状態では低粘度であるが、一定以上の強さの外力を加えると急激に粘度が増加するダイラタンシー性に優れ、保湿剤、マッサージ剤等の化粧料、衝撃吸収剤、自動車のクランク周りへの適用材料などの広い分野で有用である。また、本発明のダイラタンシー組成物は、ポンプ式容器からの吐出性に優れ、吐出直後の液だれ、使用最後に内容物の液残りが生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いる成分(A)のO/W型乳化物は、油滴の平均粒径が0.2μm以下であり、油性成分と界面活性剤の比率が、油性成分:界面活性剤=10:1より大きく20:1以下の範囲のものである。
界面活性剤としては、イオン性界面活性剤が好ましく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれ、疎水基として、炭素数10〜24、特に炭素数12〜18のアルキル基、アルケニル基又はアシル基を有するものが好ましい。
【0011】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム等の高級脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン塩等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;N−ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;N−ミリストイル−N−メチルタウリンナトリウム、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;モノステアリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸モノナトリウム等のN−アシルグルタミン酸塩などが挙げられる。
【0012】
カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;塩化ジオクタデシルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩などが挙げられる。
【0013】
両性界面活性剤としては、例えば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシルメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0014】
イオン性界面活性剤のうち、アニオン界面活性剤が好ましく、特に、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルキル硫酸エステル塩が好ましい。
界面活性剤は、1種以上を用いることができ、O/W型乳化物中に、0.05〜9質量%、特に0.05〜4質量%含有するのが好ましい。
【0015】
O/W型乳化物の油相には、油性成分が含有され、油性成分としては、セラミド類、脂肪酸、高級アルコール等の両親媒性物質のほか、25℃で液体、半固体(ペースト)、固体の油性成分を用いることができる。
セラミド類としては、タイプI〜タイプIVの天然セラミド;脂肪酸アミド誘導体であるN−(2−ヒドロキシ−3−ヘキサデシロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルヘキサデカナミド、N−(2−ヒドロキシ−3−ヘキサデシロキシプロピル)−N−2−ヒドロキシエチルデカナミド等のセラミド類似体が挙げられる。
【0016】
脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等炭素数12〜24の飽和脂肪酸;イソステアリン酸、アンテイソステアリン酸等の炭素数12〜32の分岐脂肪酸;α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、エイコサトリエン酸、エイコサペンタエン酸、アラキドン酸等の炭素数12〜24の不飽和脂肪酸が挙げられる。
【0017】
高級アルコールとしては、炭素数12〜24のものが好ましく、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0018】
25℃で液体の油性成分としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素油;ジオクチルエーテル、エチレングリコールモノラウリルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル等のエーテル油;ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバチン酸ジイソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリカプロイン等のエステル油;イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の飽和分岐高級アルコール;ラウロイルラウリルアミン、ラウリン酸ブチルアミド等の高級脂肪酸アミド;オリーブ油、大豆油、綿実油等の油脂;ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン油;パーフルオロアルキルエチルリン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンリン酸、パーフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系油などが挙げられる。
【0019】
更に、25℃で固体又は半固体(ペースト状)の油性成分としては、例えば、脂肪族アミン誘導体が挙げられる。脂肪族アミン誘導体としては、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、これらのN−メチル体又はN,N−ジメチル体等のスフィンゴシン類;1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシ−2−プロパノール等が好ましい。また、コレステロール、硫酸コレステロール、ポリオキシエチレンコレステロール、スチグマステロール、エルゴステロール等のステロール類も使用することができる。
【0020】
O/W型乳化物中の油相には、油性成分を2種以上併用してもよく、更に、O/W型乳化物の粒子径を長期にわたり維持する目的で、油性成分中に両親媒性物質であるセラミド類、脂肪酸、高級アルコールの少なくとも1つを含有するのがより好ましい。なお、油性成分と界面活性剤の比率は、油性成分:界面活性剤=10:1より大きく20:1以下、好ましくは11:1〜16:1である。本発明のダイラタンシー組成物中には、組成物のひずみに対応した粘弾性が適度に得られるダイラタンシー性の点から、O/W型乳化物中、界面活性剤及び油性成分の合計量が2〜40質量%、特に5〜30質量%であるのが好ましい。
【0021】
O/W型乳化物の水相は、精製水のほか、各種水溶性成分を含有することができる。
O/W型乳化物は、上記のような水相及び油相を、界面活性剤を利用した液晶乳化法、D相乳化法、転相温度乳化法、又は機械的エネルギーを利用した高せん断乳化法等により製造することができ、特に、高濃度の乳化物の製造が可能な高せん断力乳化法で製造するのが好ましい。成分(A)は、25℃における粘度が100〜1000000mPa・s、特に100〜100000mPa・sであるのが好ましい。乳化物中に乳化分散する油滴の平均粒径は、0.2μm以下であり、0.01〜0.2μmであるのが好ましい。平均粒径は動的光散乱式装置で測定される。
【0022】
このような微細な油滴の乳化系を得るため、高せん断力による乳化は、最大せん断力が10000s-1以上、特に10000〜100000000s-1に相当するせん断力が得られる乳化機で行うのがよい。このような高せん断力は、既存の高圧乳化機、例えば、フィルミックス(特殊機化社製)、クレアミックス(エムテクニック社)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)、DeBEE2000(B.E.E.インターナショナル社製)等により得ることができる。
【0023】
例えば、噴射圧力を300〜3000kgf/cm2、温度を5〜50℃の範囲に設定することにより、所望のO/W型乳化物を得ることができる。ただし、上記の圧力・温度等の運転条件は装置の仕様により異なるものであって、特に限定されるものではない。また、通常の乳化方法で得た予備エマルションに同様の高せん断力処理を施すことにより、より効率的に所望の乳化系を得ることもできる。また、必要に応じて、この高せん断力処理を繰り返し行ってもよい。
【0024】
本発明で用いる成分(B)は非イオン性水溶性高分子である。イオン性水溶性高分子では、油滴の表面電荷の影響(例えば、イオン性水溶性高分子と油滴表面が同じ電荷(「+」と「+」、又は「−」と「−」)の場合による静電的な反撥、異なった電荷(「+」と「−」)の場合による凝集)によりダイラタンシー性の流動挙動は得られない。
【0025】
非イオン性水溶性高分子は、水溶性合成高分子、水溶性半合成高分子、水溶性天然高分子のいずれでも良い。
非イオン性の水溶性合成高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルメチルエーテル、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。
【0026】
非イオン性の半合成高分子としては、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、デンプン系(可溶性デンプン、メチルデンプン等)、アルギン酸プロピレングリコール等が挙げられる。
非イオン性の水溶性天然高分子としては、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、ゼラチン、カゼイン、デキストリン、キサンタンガム、プルラン、デンプン(トウモロコシデンプン等)等が挙げられる。
【0027】
成分(B)としては、ヒドロキシル基を有する非イオン性水溶性高分子が好ましい。更に、高分子の繰り返し単位の構造中にヒドロキシル基を0.1以上3未満含む非イオン性水溶性高分子が好ましく、特にポリビニルアルコール、メチルセルロースが好ましい。
【0028】
成分(B)の重量平均分子量は、20000以上300000未満、好ましくは20000〜200000であるのが、ダイラタンシー性を発現させる点、かつポンプ式容器での利便性から好ましい
【0029】
成分(B)は、本発明のダイラタンシー組成物中に、0.1質量%以上5質量%未満、好ましくは0.5〜3質量%含有するのが、組成物のひずみに対応した粘弾性が適度に得られるダイラタンシー性の点から好ましい。
【0030】
本発明のダイラタンシー組成物は、成分(A)、(B)のほか、水や、アルコール、多価アルコール等の溶剤、更に使用目的に応じて適宜使用される成分、例えば保湿剤、粉体、香料、色素、紫外線吸収剤、防腐剤、美白剤、植物エキス等を含有させ、これら成分を混合することにより、製造することができる。
【0031】
本発明のダイラタンシー組成物は、化粧品分野では化粧水、マッサージ剤、美容液等の化粧料、貼付剤、洗浄料として、その他、衝撃吸収剤、自動車のクランク周りへの適用材料などの多くの分野で利用される。特に、化粧料等に適用して、ポンプ式容器に充填して用いた場合には、容器からの吐出性に優れ、吐出後の液だれや容器底の液残りが生じない。
【0032】
本発明において、ダイラタンシー性とは、ダイラタンシー係数が1を超えることをいうが、中でもダイラタンシー係数が1.2以上のものが好ましい。
【0033】
本発明において、ダイラタンシー係数は、次の測定法に従って測定される。
装置:B型粘度計(例えば、TOKIMEC社製、B8L型粘度計、ローターNo.2、3又は4、回転数6r/min)
測定温度:25℃
粘度測定:(低粘度状態)30分〜7日間静置後の状態。
(高粘度状態)20秒間高振とう後の状態。
ダイラタンシー係数=(高粘度状態の粘度)/(低粘度状態の粘度)
【0034】
また、本発明のダイラタンシー組成物は、静置状態での粘度が低く、例えば、25℃における粘度は100以上60000mPa・s未満、好ましくは500以上50000mPa・s未満程度である。
本発明において、静置時の粘度は、次の測定法に従って測定される。
装置:B型粘度計(例えば、TOKIMEC社製、B8L型粘度計、ローターNo.2、3又は4、回転数6r/min)
測定温度:25℃
【実施例】
【0035】
製造例1(乳化物の製造)
表1に示す各組成を、80℃にてプロペラ攪拌(200r/min)で予備乳化した後、高圧乳化機マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)を用い、噴射圧力2100kgf/cm2のもとで3回処理を行い、O/W型乳化物1、2及び3を製造した。
得られたO/W型乳化物について、油滴の平均粒径を、堀場製作所社製、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500を用い、定法によりサンプルを調整することにより、測定した。粒径は平均メジアン粒径をいう。結果を表1に併せて示す。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1〜6、比較例1〜3
表2に示す組成のダイラタンシー組成物を製造し、ダイラタンシー係数を求め、ポンプ式容器からの吐出性、液だれ及び液残りを評価した。結果を表2に併せて示す。なお、ダイラタンシー係数の測定は以下の条件で行った。また、表に記載の分子量は、重量平均分子量である。
【0038】
低粘度状態:25℃にて7日間静置後、B型粘度計(TOKIMEC社製、B8L型粘度計)にて測定した。
高粘度状態:100mLのガラス瓶にサンプルを約80mL入れ、20秒間激しく手振りした直後、B型粘度計(TOKIMEC社製、B8L型粘度計)にて測定した。
【0039】
(評価方法)
各組成物を、ポンプ式容器に適量充填し、吐出性、吐出時の液だれ、容器底の液残りを下記の方法で評価した。ポンプ式容器は、吉野工業社製SP−200を用い、30mLのプラスチック製容器に各組成物を入れて評価した。
【0040】
(1)吐出性:
ポンプ式容器からの内容物の吐出について、下記基準により評価した。
○:問題なく内容物を吐出できる。
△:内容物を吐出できるが、時々吐出できない。
×:内容物を吐出できない。
【0041】
(2)液だれ:
ポンプ式容器から内容物を吐出させ、手の甲に置き、斜めに傾けたときの液だれを下記基準により評価した。
○:3秒以上液だれしない。
△:1秒以上3秒未満液だれしない。
×:直ちに液だれする。
【0042】
(3)液残り:
ポンプ式容器から内容物を連続的に最後まで吐出させたとき、容器底の液残りを下記基準により評価した。
○:液残りしない〜極僅かに液残りする。
△:僅かに液残りする。
×:液残りする。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例1〜6の組成物はいずれも、顕著なダイラタンシー性を示し、また、ポンプ式容器からの吐出性に優れ、吐出時の液だれや容器底の内容物の液残りも生じなかった。
【0045】
製造例2(乳化物の製造)
表3に示す各組成を、80℃にてプロペラ攪拌(200r/min)で予備乳化した後、高圧乳化機マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)を用い、噴射圧力2100kgf/cm2のもとで処理回数を変えることにより、乳化粒子径の異なるO/W型乳化物4、5及び6を製造した。得られたO/W型乳化物について、油滴の平均粒径を、製造例1と同様にして測定した。結果を表3に併せて示す。
【0046】
【表3】

【0047】
実施例7〜8、比較例4〜5
表4に示す組成のダイラタンシー組成物を製造し、実施例1〜6と同様にして、ダイラタンシー係数を求め、ポンプ容器からの吐出性、液だれ及び液残りを評価した。結果を表4に併せて示す。なお、表に記載の分子量は、重量平均分子量である。
【0048】
【表4】

【0049】
実施例7及び8の組成物は、顕著なダイラタンシー性を示し、また、ポンプ式容器からの吐出性に優れ、吐出時の液だれや容器底の内容物の液残りも生じなかった。
【0050】
実施例9
以下に示す組成のマッサージ剤を製造した。
(製法)
N−ステアロイル−L−グルタミン酸Na 1.6質量%、セラミド 3質量%、メチルポリシロキサン(6cs) 18質量%、グリセリン16.6質量%、精製水 53質量%を80℃にてプロペラ攪拌(200r/min)で予備乳化した後、50℃まで冷却し、エタノール 7.8質量%を添加する。予備乳化品を高圧乳化機マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)を用い、噴射圧力2100kgf/cm2のもとで3回処理を行い、O/W型乳化物を製造した。このO/W型乳化物 50質量%、ポリビニルアルコール 1質量%、精製水 49質量%を80℃にてプロペラ攪拌(200r/min)し、ポリビニルアルコールを溶解させた。その後、室温まで冷却して、マッサージ剤を製造した。
【0051】
(成分)
N−ステアロイル−L−グルタミン酸Na 0.8(質量%)
セラミド 1.5
メチルポリシロキサン(6cs) 9.0
グリセリン 8.3
エタノール 3.9
ポリビニルアルコール(分子量98000) 1.0
精製水 残量
合計 100.0
【0052】
O/W乳化物の油滴の平均粒径は、0.0652μmであった。また、得られたマッサージ剤のダイラタンシー係数は3.47、静置時の粘度は7200mPa・sであり、ポンプ式容器からの吐出性に優れ、吐出時の液だれや容器底の内容物の液残りも生じなかった。
【0053】
実施例10
以下に示す組成の美容液を、実施例9と同様にして製造した。
(成分)
N−ステアロイル−L−グルタミン酸Na 0.8(質量%)
防腐剤 0.1
メチルポリシロキサン(6cs) 10.5
グリセリン 8.3
エタノール 3.9
ポリビニルアルコール(分子量98000) 1.0
精製水 残量
合計 100.0
【0054】
O/W乳化物の油滴の平均粒径は、0.0784μmであった。また、得られた美容液のダイラタンシー係数は1.2、静置時の粘度は17000mPa・sであり、ポンプ式容器からの吐出性に優れ、吐出時の液だれや容器底の内容物の液残りも生じなかった。
【0055】
実施例11
次に示す組成の衝撃吸収剤を、実施例9と同様にして製造した。
(成分)
N−ステアロイル−L−グルタミン酸Na 0.8(質量%)
セラミド 2.5
メチルポリシロキサン(6cs) 9.0
グリセリン 8.3
エタノール 3.9
防腐剤 0.1
ポリビニルアルコール(分子量98000) 1.5
精製水 残量
合計 100.0
【0056】
O/W乳化物の油滴の平均粒径は、0.0947μmであり、得られた組成物のダイラタンシー係数は2.03、静置時の粘度は47200mPa・sであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)油滴の平均粒径が0.2μm以下であり、油性成分と界面活性剤の質量割合が、油性成分:界面活性剤=10:1より大きく20:1以下の範囲にあるO/W型乳化物、
(B)重量平均分子量が20000以上300000未満の非イオン性水溶性高分子
0.1質量%以上5質量%未満
を含有するダイラタンシー組成物。
【請求項2】
成分(B)が、ヒドロキシル基を有する非イオン性水溶性高分子である請求項1記載のダイラタンシー組成物。
【請求項3】
成分(B)が、繰り返し単位の構造中にヒドロキシル基を0.1以上3未満含む非イオン性水溶性高分子である請求項1又は2記載のダイラタンシー組成物。
【請求項4】
成分(B)が、ポリビニルアルコール又はメチルセルロースである請求項1〜3のいずれか1項記載のダイラタンシー組成物。
【請求項5】
ポンプ式容器に充填されている請求項1〜4のいずれか1項記載のダイラタンシー組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のダイラタンシー組成物からなる化粧料。

【公開番号】特開2007−277117(P2007−277117A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102810(P2006−102810)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】