説明

ダイレクトめっき用樹脂組成物およびめっき装飾製品。

【課題】
ダイレクトめっき法におけるPC/ABS系樹脂の電気銅めっき工程におけるめっき析出性とめっき密着強度のバランスおよび耐衝撃性、耐熱性など樹脂性能に優れたダイレクトめっき用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
ポリカーボネート樹脂(A)20〜80重量%およびゴム強化スチレン系樹脂(B)80〜20重量%からなる組成物において、該ゴム強化スチレン系樹脂(B)が、乳化重合にて製造されたゴム強化スチレン系樹脂(b−1)および塊状重合及び/又は溶液重合にて製造されたゴム強化スチレン系樹脂(b−2)からなるダイレクトめっき用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂とゴム強化スチレン系樹脂からなる、ダイレクトめっき用樹脂組成物に関するものである。詳しくは、該ゴム強化スチレン系樹脂として、乳化重合にて製造されたゴム強化スチレン樹脂と塊状重合及び/又は溶液重合にて製造されたゴム強化スチレン系樹脂とを使用してなる、ダイレクトめっき性、とりわけ電気銅めっき工程におけるめっき析出性とめっき密着強度のバランスおよび耐衝撃性、耐熱性などの樹脂性能に優れたダイレクトめっき用樹脂組成物、および該樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品にダイレクトめっきを施してなるめっき装飾製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂とABS系樹脂からなる組成物(以下、PC/ABS系樹脂と記す)は、耐衝撃性、耐熱性、成形加工性に優れることから、車輌用部品、家庭電化製品、事務機器部品をはじめとする多様な用途に使用されている。特に、車輌用部品等は大型化の傾向が見られ、形状がより複雑なデザインになる傾向にある。また、車輌重量の軽量化のために、成形品肉厚は薄肉化に設計される方向にあるため、成形加工性、耐衝撃性、および耐熱性などの性能に優れている材料が求められる。その選択肢の一つとしてPC/ABS系樹脂が採用されるケースが見られる。
加えて、これら用途において、意匠的に金属調外観を有し、かつ軽量化を求められる部品にはPC/ABS系樹脂に装飾用のめっきを施して使用する例が多い。従来、PC/ABS系樹脂のめっき処理工程は、一般に脱脂、化学エッチング、中和、触媒付与、活性化、無電解めっき、酸活性、電気めっきなどの工程からなる、いわゆるキャタリスト−アクセレーター法が主流である。しかしながら、この工法で用いられる無電解めっき液において、例えば無電解ニッケルめっき液には、還元剤として次亜リン酸塩を含有しているが、この次亜リン酸塩は環境問題に影響するため、リン規制対応や、高COD廃液であるため排水規制が非常に厳しく、廃水処理のコストが非常に高くなるという問題がある。また、pH調整として用いられているアンモニア臭気による作業環境の悪化も問題となっている。また同様に、無電解銅めっき液には、還元剤としてホルマリンが使用されているが、ホルマリンの使用は、種々の健康上及び環境問題上に悪影響を与える問題が指摘されている。さらに、このめっき液には、銅イオンをアルカリ溶液中に可溶化させるための強力な錯化剤が用いられるため、めっき液の廃水処理において、金属イオン除去のために廃水処理のコストが非常に高くなる等、種々の問題点を抱えている。
【0003】
これらキャタリスト−アクセレーター法における、健康上、及び地球環境に関わる法規制などへの対応、および安全な作業環境の確保などの要望から、めっき工法改善の一環として、無電解めっき浴を使用しないめっき法(ダイレクトめっき法、ダイレクトプレーティング法等と呼ばれている)が実用化に向けて検討が行われている。例えば、Pd−Snコロイド触媒法が、特開平7−11487号公報(特許文献1)、特開平11−61425号公報(特許文献2)等に開示されている。
【0004】
従来の樹脂めっき工法で用いられていたPC/ABS系樹脂も、一般的にはこれらダイレクトめっき法に用いられる場合があるが、ダイレクトめっき法の電気銅めっき工程においてPC/ABS系樹脂は成形品表面にめっきが析出し難く、スキップと表現されるめっきの未着部が発生し易いという傾向があり、特に製品形状の複雑な成形品においては、その傾向が極めて高くなるという問題がある。
特開2003−327817号公報(特許文献3)には、粒子径の異なる2種類のゴム状重合体を使用してなるABS系樹脂とPCからなるダイレクトめっき用樹脂組成物が提案されているが、所望の粒子径を有するゴム状重合体をそれぞれ製造する必要があるため製造プロセス上煩雑であり、特に大粒子径のゴム状重合体を製造するために多大な労力を要するという問題があり、まためっき析出性においても十分満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開平7−11487号公報
【特許文献2】特開平11−61425号公報
【特許文献3】特開2003−327817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ダイレクトめっき性、とりわけ電気銅めっき工程におけるめっき析出性とめっき密着強度のバランスおよび耐衝撃性、耐熱性などの樹脂性能に優れたダイレクトめっき用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題につき鋭意検討した結果、PC/ABS系樹脂において、意外にも特定の2種類の重合方法にて得られたABS系樹脂を使用することのみでこれら性能を満足することができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)20〜80重量%およびゴム強化スチレン系樹脂(B)80〜20重量%からなる組成物において、該ゴム強化スチレン系樹脂(B)が、乳化重合にて製造されたゴム強化スチレン系樹脂(b−1)および塊状重合及び/又は溶液重合にて製造されたゴム強化スチレン系樹脂(b−2)からなるダイレクトめっき用樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
ダイレクトめっき法におけるPC/ABS系樹脂のとりわけ電気銅めっき工程におけるめっき析出性とめっき密着強度のバランスおよび耐衝撃性、耐熱性などの樹脂性能に優れたダイレクトめっき用樹脂組成物が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明にて用いられるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、;“ビスフェノールA”から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0009】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビスビス(4−ヒドロキシジフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシジフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4‘−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3‘−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルファイド、4,4‘−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルファイドのようなジヒドロキシジアリールスルファイド類、4,4‘−ジヒドロキシジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4‘−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0010】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4‘−ジヒドロキシジフェニル類等を混合しても良い。
【0011】
さらに、上記のジヒドロキシジアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用しても良い。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン−2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−(4,4’−(4,4’−ヒドロキシジフェニル)シクロヘキシル)−プロパン等が挙げられる。なお、これらポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することが出来る。
【0012】
本発明にて使用されるゴム強化スチレン系樹脂(B)とは、乳化重合にて製造されたゴム強化スチレン系樹脂(b−1)および塊状重合及び/又は溶液重合にて製造されたゴム強化スチレン系樹脂(b−2)からなる混合物である。
【0013】
本発明における乳化重合にて製造されたゴム強化スチレン系樹脂(b−1)とは、公知の乳化重合法を用いてゴム状重合体のラテックス中に芳香族ビニル系化合物および共重合可能な他のビニル系化合物を加えて重合することにより得ることができる。
本発明にて用いられるゴム状重合体とは、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンブロック重合体、ブチルアクリレートあるいはエチルアクリレートを主成分とするアクリルゴム、エチレン−プロピレン(ジエン)重合体、シリコンゴム、塩素化ポリエチレン、ニトリルゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム等から選ばれた少なくとも1種である。特にポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンブロック重合体、ブチルアクリレートあるいはエチルアクリレートを主成分とするアクリルゴム、エチレン−プロピレン(ジエン)重合体が好ましく、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体が最も好ましい。
【0014】
本発明にて用いられる芳香族ビニル系化合物とは、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられ、単独あるいは混合して使用することができる。
また、共重合可能な他のビニル系化合物とは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系化合物、メチルメタアクリレート、メチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系化合物、マレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系化合物、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等の不飽和エポキシ化合物、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含有不飽和化合物等が例示され、それぞれ1種または2種以上混合して使用することができる。
【0015】

ゴム強化スチレン系樹脂(b−1)を構成する各成分の組成割合には特に制限はないが、ゴム状重合体10〜80重量%および芳香族ビニル系化合物20〜100重量%および共重合可能な他の化合物0〜80重量%からなる化合物(合計)90〜20重量%であることが好ましく、特に、ゴム状重合体10〜80重量%および芳香族ビニル系化合物20〜90重量%および共重合可能な他の化合物としてシアン化ビニル系化合物および/または(メタ)アクリル酸エステル系化合物10〜80重量%からなる化合物(合計)90〜20重量%であることが好ましい。
【0016】
本発明における塊状重合及び/又は溶液重合にて製造されたゴム強化スチレン系樹脂(b−2)とは、公知の塊状重合法及び/又は溶液重合法によりゴム状重合体を芳香族ビニル系化合物および必要に応じて共重合可能な他のビニル系化合物、さらには各種溶剤により溶解したものを重合して得られるものである。
ゴム強化スチレン系樹脂(b−2)を構成するゴム状重合体、芳香族ビニル系化合物および共重合可能な他のビニル系化合物としては、(b−1)の項で例示したものと同一のものを使用することができる。
ゴム強化スチレン系樹脂(b−2)を構成する各成分の組成割合には特に制限はないが、ゴム状重合体5〜30重量%と芳香族ビニル系化合物20〜100重量%および共重合可能な他の化合物0〜80重量%からなる化合物(合計)95〜70重量%であることが好ましく、特に、ゴム状重合体5〜30重量%と芳香族ビニル系化合物20〜90重量%および共重合可能な他の化合物としてシアン化ビニル系化合物および/または(メタ)アクリル酸エステル系化合物10〜80重量%からなる化合物(合計)95〜70重量%であることが好ましい。
【0017】
ゴム強化スチレン系樹脂(b−1)とゴム強化スチレン系樹脂(b−2)との組成比率(重量比)については特に制限はないが、めっき析出性、およびめっき密着強度の面より、99〜50/1〜50であることが好ましい。
また、本発明におけるダイレクトめっき用樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)20〜80重量%およびゴム強化スチレン系樹脂(B)80〜20重量%からなるものであるが、ポリカーボネート樹脂(A)20重量%未満では耐熱性や耐衝撃性が低下し、80重量%を超えるとめっき析出性、および成形加工性が低下するという面から好ましくない。
【0018】
なお、本発明においては、必要に応じてスチレン−アクリロニトリル共重合体(AS)、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(αMS−ACN)、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS)、メタクリル酸メチルーアクリロニトリル−スチレン共重合体(MAS)、スチレンーN−フェニルマレイミド共重合体(S−NPMI)、スチレン−N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル共重合体(S−A−NPMI)等の他の熱可塑性樹脂を配合してもよく、さらには酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、染料、顔料、可塑剤、難燃剤、離型剤等の公知の添加剤や補強材、充填材等を添加することができる。
【0019】
上記にて得られたダイレクトめっき用樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、ブロー成形等の公知の成形方法により成形され、得られた樹脂成形品は、ダイレクトめっき法にてめっきが施され、めっき装飾製品として本発明の効果が発現される。
なお、本発明のダイレクトめっき法は、健康上、及び地球環境に関わる法規制などへの対応、および安全な作業環境の確保などに配慮した、無電解めっき工程を用いないめっき法であれば特に制限はない。
【0020】
〔実施例〕
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中にて示す部および%は重量に基づくものである。
【0021】
ポリカーボネート樹脂(A):ホスゲンとビスフェノールAからなる粘度平均分子量20,500のポリカーボネート樹脂。
【0022】
ゴム強化スチレン系樹脂(B)
ゴム強化スチレン系樹脂(b−1):公知の乳化重合法により、樹脂中に分散するゴム状重合体としてポリブタジエン(重量平均粒子径0.36μm)40部を含み、スチレン42部およびアクリロニトリル18部からなる共重合体を製造した。
ゴム強化スチレン系樹脂(b−2):公知の塊状重合法により、樹脂中に分散するゴム状重合体としてポリブタジエン(重量平均粒子径0.45μm)10部、スチレン63部およびアクリロニトリル27部からなる共重合体を製造した。
ゴム強化スチレン系樹脂(b−i):公知の乳化重合法により、樹脂中に分散するゴム状重合体としてポリブタジエン(重量平均粒子径0.8μm(肥大化処理))40部を含み、スチレン42部およびアクリロニトリル18部からなる共重合体を製造した。
【0023】
〔実施例1〜4および比較例1〜4〕
上記のポリカーボネート樹脂(A)、およびゴム強化スチレン系樹脂(B)を表1に示す配合割合で混合し、50mm押出機(オーエヌ機械製)を用い、シリンダー温度250〜270℃にて溶融混合しペレット化した。得られたペレットにつき、射出成形機にて各種試験片を作成し、耐衝撃性、耐熱性、成形加工性、めっき密着強度、めっき析出性およびヒートサイクル性を測定した。
【0024】
耐衝撃性:ASTM D−256に準じてノッチ付きアイゾット衝撃試験を測定した。1/4インチ、23℃(単位:J/m)。
【0025】
耐熱性:ASTM D−648に準拠。1/4インチ、アニール無し、1.82MPa荷重(単位:℃)。
【0026】
成形加工性:ASTM D−1238に準じてメルトフローレイトを測定した。測定条件250℃、10kg(単位:g/10min)。
【0027】
めっき密着強度:射出成形機にてめっき用平板成形品(55×90×3mm)を成形し、以下の方法にてダイレクトめっきを施した後、析出しためっき膜の密着強度を、JIS H−8630に基づき、めっき成形品の金属膜に基材に達する1cm間隔の切傷を入れ、金属膜を垂直な方向に引き剥がす時の応力(N)で示した。
<めっき処理工程>上記のめっき用平板を40℃のCRPクリーナーに3分間浸し脱脂した。脱脂後の平板を30℃の水で水洗した後、67℃のエッチング液(クロム酸;400g/l、硫酸;200cc/l)に10分間浸しエッチングを行った。エッチング後の平板を30℃の水で2分間水洗した後、25℃のCRPレデューサーに3分間浸し中和処理を行った。中和後の平板を30℃の水で2分間水洗した後、25℃の塩酸に1分間プリディップし、続いて35℃のCRPキャタリストに6分間浸し、Pd−Snコロイド触媒化処理を行った。触媒化後の平板を30℃の水で2分間水洗した後、45℃のCRPセレクターA,Bに3分間浸して導体化処理を行った。導体化処理した平板を30℃の水で2分間水洗した後、CRPカッパーを用いた電気銅めっき浴に25℃で2時間、電流密度3A/dmの電流を通電して、膜厚50μmの電気銅めっき膜を平板に析出させた。電気銅めっき後の平板を30℃の水で水洗した後、電気銅めっきされた平板を80℃で2時間エージングし一晩放置させた。
【0028】
めっき析出性:射出成形機にてめっき用平板成形品(55×90×3mm)を成形し、長辺方向9mm毎に短辺方向に幅1mm長さ45mmの切込みを左右交互に入れ波形平板を作成し、以下の方法にてダイレクトめっきを施した後、めっき膜の析出度合いを、波形平板に析出しためっき膜の長さ:波形平板の段数、および、析出過程におけるめっき未着部(スキップ)の発生度合いを目視判定し、以下の判定基準にて判定した。○;スキップなしで良好。△;一部スキップが見られる状態。×;全体的にスキップが見られ不良。
<めっき処理工程>上記のめっき用平板を40℃のCRPクリーナーに3分間浸し脱脂した。脱脂後の平板を30℃の水で水洗した後、67℃のエッチング液(クロム酸;400g/l、硫酸;200cc/l)に10分間浸しエッチングを行った。エッチング後の平板を30℃の水で2分間水洗した後、25℃のCRPレデューサーに3分間浸し中和処理を行った。中和後の平板を30℃の水で2分間水洗した後、25℃の塩酸に1分間プリディップし、続いて35℃のCRPキャタリストに6分間浸し、Pd−Snコロイド触媒化処理を行った。触媒化後の平板を30℃の水で2分間水洗した後、45℃のCRPセレクターA,Bに3分間浸して導体化処理を行った。導体化処理した平板を30℃の水で2分間水洗した後、CRPカッパーを用いた電気銅めっき浴に25℃で5分間、電流密度2A/dmの電流を通電して、電気銅めっき膜を平板に析出させた。
【0029】
ヒートサイクル性:射出成形機にてめっき用平板成形品(55×90×3mm)、および額縁型成形品を成形し、以下の方法にてダイレクトめっきを施した後、−30℃(1hr)→23℃(0.5hr)→80℃(1hr)→23℃(0.5hr)の10サイクルを実施し、各めっき成形品外観に膨れ等の異常の有無を目視にて確認した。
<めっき処理工程>上記のめっき用平板を40℃のCRPクリーナーに3分間浸し脱脂した。脱脂後の平板を30℃の水で水洗した後、67℃のエッチング液(クロム酸;400g/l、硫酸;200cc/l)に10分間浸しエッチングを行った。エッチング後の平板を30℃の水で2分間水洗した後、25℃のCRPレデューサーに3分間浸し中和処理を行った。中和後の平板を30℃の水で2分間水洗した後、25℃の塩酸に1分間プリディップし、続いて35℃のCRPキャタリストに6分間浸し、Pd−Snコロイド触媒化処理を行った。触媒化後の平板を30℃の水で2分間水洗した後、45℃のCRPセレクターA,Bに3分間浸して導体化処理を行った。導体化処理した平板を30℃の水で2分間水洗した後、CRPカッパーを用いた電気銅めっき浴に25℃で15分間、電流密度2A/dmの電流を通電して、15μmの電気銅めっき膜を平板に析出させた。続いて一般的な装飾用電気めっき工程にて、半光沢ニッケル膜:6μm、光沢ニッケル膜:4μm、クロムめっき膜:0.1〜0.3μmを析出させた。
【0030】
これらの測定結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明における樹脂組成物は、ダイレクトめっき法におけるPC/ABS系樹脂のとりわけ電気銅めっき工程におけるめっき析出性とめっき密着強度のバランスおよび耐衝撃性、耐熱性などの樹脂性能に優れたダイレクトめっき用樹脂組成物であり、該樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品にダイレクトめっきを施してなる上記性能を有するめっき装飾製品が得られるものであり、産業上の利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)20〜80重量%およびゴム強化スチレン系樹脂(B)80〜20重量%からなる組成物において、該ゴム強化スチレン系樹脂(B)が、乳化重合にて製造されたゴム強化スチレン系樹脂(b−1)および塊状重合及び/又は溶液重合にて製造されたゴム強化スチレン系樹脂(b−2)からなることを特徴とするダイレクトめっき用樹脂組成物。
【請求項2】
ゴム強化スチレン系樹脂(B)が、ゴム状重合体と芳香族ビニル系化合物および共重合可能な他のビニル系化合物からなるものである請求項1記載のダイレクトめっき用樹脂組成物。
【請求項3】
ゴム強化スチレン系樹脂(b−1)とゴム強化スチレン系樹脂(b−2)との組成比率(重量比)が、99〜50/1〜50である請求項1または2に記載のダイレクトめっき用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3何れかに記載の樹脂組成物を成形してなる樹脂成形品にダイレクトめっきを施してなるめっき装飾製品。

【公開番号】特開2006−299089(P2006−299089A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122798(P2005−122798)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(399034220)日本エイアンドエル株式会社 (186)
【Fターム(参考)】