説明

ダッシュボードアッパ構造

【課題】水と空気を確実に分離し、小型化を図り、取り入れた吸気の流れの抵抗を減少させて吸気効率を向上させたダッシュボードアッパ構造を提供する。
【解決手段】ダッシュボードアッパ構造は、排水通路37の上方に車幅方向に延びる排水溝41を設けた。吸気通路38は、排水通路37とは独立した空間を形成した通路であり、外気を取り入れる吸気開口部42を有している。また車両側面視、閉断面形状を、エンジンルーム22の左右の上部をなすアッパサイドメンバに両端を接合した上部クロスプレート隔壁部材32と、アッパサイドメンバに両端を接合した下部クロスプレート隔壁部材33と、アッパサイドメンバ26に両端を接合したエンジンルーム上部隔壁部材34とで形成して、吸気開口部42に対向する仕切り壁を設けることによって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室に外気を取り入れるために開けた開口を有するダッシュボードアッパ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダッシュボードアッパ構造には、前窓ガラスに連なるカウルトップパネルの上面部に外気取り入れ用の開口部を開けているものがある。
この構造は、カウルトップパネルが空気雨水通路の上部及び前壁を形成し、空気雨水通路の下部及び後壁をダッシュアッパパネルが形成している。
そして、ダッシュアッパパネルに排水通路及び連通する通風口を開けた隔壁部材で仕切った外気導入口を開けているので、排水通路を流れる水が外気導入口に入らないというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、空気雨水通路を外気と水が流れるので、水量が増加したり流れが雪やごみで滞ると、水が隔壁部材の通風口から入るおそれがある。
また、カウルトップパネルの開口部から入る水を確実に分離する(流速を下げて水滴を落下させる)ために空気雨水通路(吸気通路)を大きくする必要がある。
さらに、外気導入口の周縁に雨水浸入防止用の縦状フランジが形成されているため、流れる空気が干渉し、流れに対する抵抗が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2616084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水と空気を確実に分離し、小型化を図り、取り入れた吸気の流れの抵抗を減少させて吸気効率を向上させたダッシュボードアッパ構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明では、車両のエンジンルームと車室とを隔絶するダッシュボードロアの上方に設けた車幅方向に延びる排水通路と、車室の空気調節用の外気を導く吸気通路と、を備えたダッシュボードアッパ構造において、排水通路の上方に車幅方向に延びる排水溝を設け、吸気通路は、排水通路とは独立した空間を形成した通路であり、外気を取り入れる吸気開口部を有していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明では、吸気通路は、車両側面視、閉断面形状であり、この閉断面形状を、排水通路を車両の上方へ向いている面に設けてエンジンルームの左右の上部をなすアッパサイドメンバに両端を接合した上部クロスプレート隔壁部材と、アッパサイドメンバに両端を接合した下部クロスプレート隔壁部材と、エンジンルーム上部隔壁部材とで形成して、閉断面形状の空間に吸気開口部に対向する仕切り壁を設けることによって形成され、エンジンルーム上部隔壁部材は、ダッシュボードロアとエンジンルームをカバーするフードの後端との間に配置されて、上部クロスプレート隔壁部材の前部及び下部クロスプレート隔壁部材の前縁に溶接部で接合していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、吸気開口部は車体側面に設けられて、吸気開口部の近傍に且つ、吸気通路の下方にブロアーを設けていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、吸気通路の一部を形成している下部クロスプレート隔壁部材にブロアー連通開口部を開け、且つ、ブロアー連通開口部の角を下部クロスプレート隔壁部材に対して段差の無い平坦に形成していることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明では、吸気通路は、樹脂製のダクト部材であり、排水通路の下方に配置されて、吸気開口部にダクト部材の入口部を嵌合していることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、排水通路の上方に排水溝を形成したフロントカウルトップを備え、排水通路を形成した上部クロスプレート隔壁部材の前隔壁接合部と前隔壁接合部に接合するフロントカウルトップの前接合部との間にシール部材を設けて、前隔壁接合部に前接合部を接合機構で接合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、ダッシュボードロアの上方に設けた排水通路と、車室の空気調節用の外気を導く吸気通路と、を備えたダッシュボードアッパ構造において、排水通路の上方に車幅方向に延びる排水溝を設け、吸気通路は、排水通路とは独立した空間を形成した通路であり、外気を取り入れる吸気開口部を有しているので、雨水や洗車に使用する水と空気が確実に分離される。
その結果、雨水と吸気開口部から取り入れた吸気との分離を考慮してダッシュボードアッパ構造(カウルエアボックス)の断面積を形成する必要がなく、ダッシュボードアッパ構造の小型化を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、吸気通路は、閉断面形状を上部クロスプレート隔壁部材と、下部クロスプレート隔壁部材と、エンジンルーム上部隔壁部材とで形成して、閉断面形状の空間に仕切り壁を設けることによって形成され、エンジンルーム上部隔壁部材は、ダッシュボードロアとフードの後端との間に配置されて、上部クロスプレート隔壁部材の前部及び下部クロスプレート隔壁部材の前縁に溶接部で接合しているので、エンジンルーム上部隔壁部材がダッシュボードロアとフードの後端との間まで車両後方へ後退し、ダッシュボードアッパ構造の小型化を図ることができる。
【0014】
また、エンジンルーム上部隔壁部材を上部クロスプレート隔壁部材に接合して閉断面形状とすることによって、車体前部の強度を向上させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、吸気開口部は車体側面に設けられて、吸気開口部の近傍に且つ、吸気通路の下方にブロアーを設けているので、吸気開口部に雨水などの水が入ることなく外気を吸引することができる。
【0016】
また、ブロアーまでの吸気通路の長さは短くなり、吸気通路の小型化および吸気効率の向上を図ることができる。
【0017】
請求項4に係る発明では、吸気通路の一部を形成している下部クロスプレート隔壁部材にブロアー連通開口部を開け、且つ、ブロアー連通開口部の角を下部クロスプレート隔壁部材に対して段差の無い平坦に形成しているので、ブロアー連通開口部の角において水を堰き止める壁(立ち上げた高さのある縁)がないという利点がある。
その結果、ブロアーへ向かう吸気がブロアー連通開口部の角を通過するときに、水を堰き止める壁との干渉による流れの抵抗が発生しないため、吸気の流れの抵抗を減少させることができ、吸気効率が向上する。
【0018】
請求項5に係る発明では、吸気通路は、樹脂製のダクト部材であり、排水通路の下方に配置されて、吸気開口部にダクト部材の入口部を嵌合しているので、吸気開口部からダクト部材の出口部を接続するブロアー連通開口部まで吸気を導く壁を形成する必要がないという利点がある。
仮に、ブロアー連通開口部を開けた下部クロスプレート隔壁部材が排水通路を兼ねたとすると、排水通路と完全に隔離できる。
【0019】
また、吸気を導く鋼板製の壁を形成する必要が無く、ダッシュボードアッパ構造の更なる小型化と軽量化を図ることができる。
【0020】
請求項6に係る発明では、上部クロスプレート隔壁部材の前隔壁接合部とフロントカウルトップの前接合部との間にシール部材を設けて、前隔壁接合部に前接合部を接合機構で接合したので、前接合部と前隔壁接合部との間から排水通路に満ちた水がエンジンルーム内に漏れず、適切な排水が確保されるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1に係るダッシュボードアッパ構造の斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】ダッシュボードアッパ構造の下部クロスプレート隔壁部材の斜視図である。
【図5】ダッシュボードアッパ構造を車両の右から見た斜視図である。
【図6】図5の6矢視図である。
【図7】図6の7矢視図である。
【図8】実施例2に係るダッシュボードアッパ構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、実施例1、実施例2で詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
実施例1に係るダッシュボードアッパ構造は、図1〜図3に示すように、車室11の前のカウルエアボックス12に採用されている。車両14の前窓ガラス15が取付けられ、車室11の空気を調節するときに外気を取り入れることができる構造である。
【0024】
車両14は、車体16のフロントボデー17、カウルエアボックス12、このカウルエアボックス12に配置したワイパ装置21を有する。また、前窓ガラス15、エンジンルーム22、エンジンルーム22をカバーするフード23、フロントフェンダ24を有する。
【0025】
フロントボデー17は、左右のアッパサイドメンバ26、エンジンルーム22と車室11を隔絶するダッシュボードロア27、左のアッパサイドメンバ26に一端を接合し右のアッパサイドメンバ26に他端を接合したカウルエアボックス12を有する。
【0026】
カウルエアボックス12は、フロントカウルトップ31と、上部クロスプレート隔壁部材32と、下部クロスプレート隔壁部材33と、エンジンルーム上部隔壁部材34と、を備える。
なお、これら(31〜34)は、ダッシュボードアッパ構造を主体にするとダッシュボードアッパ構造にも含まれる。
【0027】
次に、ダッシュボードアッパ構造を図1〜図7で説明する。
ダッシュボードアッパ構造は、車両14のエンジンルーム22と車室11とを隔絶するダッシュボードロア27の上方に設けた車幅方向(X軸方向)に延びる排水通路37と、車室11の空気調節用の外気を導く吸気通路38と、を備える。
【0028】
そして、排水通路37の上方に車幅方向に延びる排水溝41(図3)を設けた。
吸気通路38は、排水通路37とは独立した空間を形成した通路であり、外気を取り入れる吸気開口部42を有している。
【0029】
吸気通路38は、車両14側面視(図3の視点)、閉断面形状である。
この閉断面形状が、排水通路37を車両14の上方へ向いている面に設けてエンジンルーム22の左右の上部をなすアッパサイドメンバ26に両端を接合した上部クロスプレート隔壁部材32と、アッパサイドメンバ26に両端を接合した下部クロスプレート隔壁部材33と、アッパサイドメンバ26に両端を接合したエンジンルーム上部隔壁部材34とで形成されている。
そして、吸気通路38は、この閉断面形状で車幅方向に延びる空間を吸気開口部42に対向する仕切り壁43を設けることによって形成されている。
【0030】
エンジンルーム上部隔壁部材34は、ダッシュボードロア27とエンジンルーム22をカバーするフード23の後端45との間に配置されて、上部クロスプレート隔壁部材32の前部46及び下部クロスプレート隔壁部材33の前縁47に溶接部で接合している。
溶接部は、スポット溶接を施すことによって形成されるナゲットである。鋼板の熱影響部を含めてもよい。
【0031】
吸気開口部42は車体側面48に設けられて、カバー部材(少なくともフロントフェンダ24)で隠されている。後で詳しく説明する。
【0032】
また、ダッシュボードアッパ構造は、吸気開口部42の近傍に且つ、吸気通路38の下方にブロアー51を設けている。
【0033】
さらに、ダッシュボードアッパ構造は、吸気通路38の一部を形成している下部クロスプレート隔壁部材33にブロアー連通開口部52を開け、且つ、ブロアー連通開口部52の角53を下部クロスプレート隔壁部材33に対して段差の無い平坦に形成している。
【0034】
その上、ダッシュボードアッパ構造は、排水通路37の上方に排水溝41を形成したフロントカウルトップ31を備える。
そして、排水通路37を形成した上部クロスプレート隔壁部材32の前隔壁接合部54とこの前隔壁接合部54に接合するフロントカウルトップ31の前接合部55との間にシール部材56を設けて、前隔壁接合部54に前接合部55を接合機構57で接合した。
【0035】
接合機構57は、任意であり、前隔壁接合部54に前接合部55をシール部材56を介在させて一体的に接合するものであればよい。ここでは、挟むクランプ部材を用いたが、他に、ねじ類(ボルト、ナット)、接着剤、ピン、クリップなどを挙げることができる。
【0036】
次に、ダッシュボードアッパ構造を詳しく説明していく。
ダッシュボードアッパ構造は、既に述べたが、閉断面形状を、フロントカウルトップ31でカバーされた上部クロスプレート隔壁部材32、下部クロスプレート隔壁部材33、エンジンルーム上部隔壁部材34で形成している。
【0037】
フロントカウルトップ31は、車両14側面視(図3の視点)、傾斜した前窓ガラス15の外面に重なり接合したガラス接合端61が前窓ガラス15に平行に形成されている。このガラス接合端61に連続して中央カバー部62をほぼ水平に形成した。
【0038】
この中央カバー部62に連続して傾斜カバー部63が前窓ガラス15にほぼ平行に、エンジンルーム22の内方へ向かって下がるように傾斜させて形成されている。そのため、雨水はエンジンルーム22へ向かう。
【0039】
傾斜カバー部63にほぼ直交する前壁カバー部64がフード23の後端45へ向かって近接する高さで形成されている。そして、この前壁カバー部64と傾斜カバー部63とで形成されたV字状の溝が、エンジンルーム22へ向かう水を車両14の左右へ導く排水溝41である。
【0040】
このように、フロントカウルトップ31は、ガラス接合端61、中央カバー部62、傾斜カバー部63、前壁カバー部64に外気を取り入れる孔や開口を開けていないものである。
【0041】
前壁カバー部64の先端には、フードシール体66を取付けた。このフードシール体66は、フード23の後端45に、フード23を閉じたときに押圧されて、密着する。そして、防水機能、防音機能を発揮する。
【0042】
なお、前壁カバー部64を立設している傾斜カバー部63の前端がフロントカウルトップ31の前接合部55であり、シール部材56を上部クロスプレート隔壁部材32とで押圧し、圧縮している。
【0043】
上部クロスプレート隔壁部材32は、車両14側面視(図3の視点)、傾斜した前窓ガラス15の内面に重なり接合したガラス接合部71が前窓ガラス15に平行に形成されている。このガラス接合部71に連続して排水通路37が形成され、この排水通路37に連続して前壁部72が立設している。
【0044】
前壁部72に連ねほぼ直交する前隔壁接合部54がエンジンルーム22へ向かって延びている。
排水通路37の底部にエンジンルーム上部隔壁部材34の上端を接合し、エンジンルーム上部隔壁部材34の下端を、エンジンルーム上部隔壁部材34のほぼ真下に立設しているダッシュボードロア27に下部クロスプレート隔壁部材33を挟んで接合している。
【0045】
下部クロスプレート隔壁部材33は、ダッシュボードロア27に重ねて接合した前縁47が形成され、この前縁47を設けたプレート本体74が形成され、このプレート本体74に連ねてエンジンルーム上部隔壁部材34に対向する下部後壁部75が形成され、上部クロスプレート隔壁部材32に接合している。
【0046】
プレート本体74にブロアー連通開口部52を開けた。ブロアー連通開口部52は、角53に連なって立つ縁(図8の縁94参照)の無いものである。そして、ブロアーケース77の流入口78が接続されている。
【0047】
吸気開口部42は、詳しくは、右のアッパサイドメンバ26のインナパネル81に開けられ、右のアッパサイドメンバ26のアウタパネル82で隠され、さらにフロントフェンダ24で隠されている。
なお、吸気開口部42やブロアー連通開口部52を車両14の右に設けたが、車両14の左に設けることも可能である。
【0048】
吸気開口部42は車体側面48に設けられて、カバー部材で隠されている。
「車体側面48」とは、車両14側面視で見えるフロントボデー17の側面で、且つ、フロントフェンダ24より内側に設けたられた部位である。例えば、アッパサイドメンバ26のインナパネル81の面である。
【0049】
カバー部材は、ここでは、アッパサイドメンバ26のアウタパネル82及びアウタパネル82より車両14の外側に設けられ車両14の外観(外面)を形成しているフロントフェンダ24であり、合計2枚の鋼板である。
「隠されている」とは、車両14の近傍から車両14を目視しときに見えないということ。
【0050】
次に、ダッシュボードアッパ構造の作用を説明する。
ダッシュボードアッパ構造では、図1〜図3に示す通り、雨水や洗車に使う水はフロントカウルトップ31に設けた排水溝41に矢印a3のように向かって流れ、排水溝41によって矢印a4のように左右に排水されるので、フロントカウルトップ31から下の吸気通路38に水は入らない。
【0051】
一方、ブロアー51を作動させると、吸気開口部42から外気が矢印a5のように取り入れられるので、雨水の無い外気のみを取り入れることができる。
具体的には、吸気開口部42はアッパサイドメンバ26のほぼ垂直なインナパネル81に開けられ、少なくともフロントフェンダ24でカバーされているので、雨水や洗車に使う水はフロントフェンダ24によって吸気開口部42から入らない。
【0052】
その結果、雨水と取り込んだ空気(吸気)を分離する必要が無く、すなわち、流路を長くして流れる過程で水を落とす必要が無く、ダッシュボードアッパ構造、言い換えるとカウルエアボックス12の容積(断面積(図3の視点))を、従来の二点鎖線で示すパネルを車室11へ距離Eだけ寄せることによって、小さくすることができる。
【0053】
また、ダッシュボードアッパ構造は、図3、図5に示すように、前窓ガラス15とフロントカウルトップ31との隙間から水がしみ込む場合を考慮し、水が矢印a6のように入ると、排水通路37によって水を左右に矢印a7のように排水する。
【0054】
さらに、ダッシュボードアッパ構造は、吸気開口部42から導入した空気は吸気通路38によってブロアー連通開口部52に達し、ブロアー連通開口部52から矢印a8のように向きを変えて導かれる。その際、流れる空気は、下部クロスプレート隔壁部材33(プレート本体74)に沿って矢印a8のように流れるので、ブロアー連通開口部52の角53の障害物による流れの乱れが発生しない。
その結果、ブロアー連通開口部52の形状によって吸気に発生する抵抗が非常に小さくなり、吸気効率が向上する。
【実施例2】
【0055】
次に、実施例2に係るダッシュボードアッパ構造を図8で説明する。上記図1〜図7に示す実施例1と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0056】
実施例2に係るダッシュボードアッパ構造では、吸気通路は、樹脂製のダクト部材91であり、排水通路37の下方に配置されて、吸気開口部42Bにダクト部材91の入口部92を嵌合していることを特徴とする。
【0057】
そして、ダクト部材91の出口部93をブロアー連通開口部52Bに接続した。
ブロアー連通開口部52Bは、角に下部クロスプレート隔壁部材33B(プレート本体74B)から立ち上げた縁94が形成されている。
吸気開口部42Bは、所望の半径で開けたものである。
【0058】
ダクト部材91は、吸気開口部42Bに嵌る半径で形成した入口部92に連ねて円筒状のダクト直管95が形成され、ダクト直管95に連続してダクトエルボ96が形成されている。
このダクトエルボ96に出口部93がブロアー連通開口部52Bの縁94に嵌る形状に形成されている。
【0059】
下部クロスプレート隔壁部材33Bの前後の長さ(Y軸方向)は、実施例1の下部クロスプレート隔壁部材33より小さい。
上部クロスプレート隔壁部材32Bの前後の長さ(Y軸方向)は、実施例1の上部クロスプレート隔壁部材32より小さい。
【0060】
なお、実施例2に係るダッシュボードアッパ構造では、エンジンルーム上部隔壁部材34及び仕切り壁43を設けていないが、設けてもよい。
【0061】
実施例2に係るダッシュボードアッパ構造は、実施例1に係るダッシュボードアッパ構造と同様の作用、効果を発揮する。
【0062】
さらに、実施例2に係るダッシュボードアッパ構造では、吸気開口部42Bからブロアー連通開口部52Bまで吸気を導く鋼板製の壁(エンジンルーム上部隔壁部材34及び仕切り壁43)を形成する必要がない。その結果、ダッシュボードアッパ構造の更なる小型化と軽量化を図ることができる。
【0063】
なお、実施例1のエンジンルーム上部隔壁部材34及び仕切り壁43と同様のものを設けると、実施例1と同等の強度まで強度を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のダッシュボードアッパ構造は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0065】
11…車室、14…車両、22…エンジンルーム、23…フード、24…カバー部材(フロントフェンダ)、27…ダッシュボードロア、31…フロントカウルトップ、32…上部クロスプレート隔壁部材、33…下部クロスプレート隔壁部材、34…エンジンルーム上部隔壁部材、37…排水通路、38…吸気通路、41…排水溝、42…吸気開口部、42B…吸気開口部、43…仕切り壁、45…フードの後端、46…上部クロスプレート隔壁部材の前部、47…下部クロスプレート隔壁部材の前縁、48…車体側面、51…ブロアー、52…ブロアー連通開口部、53…ブロアー連通開口部の角、54…上部クロスプレート隔壁部材の前隔壁接合部、55…フロントカウルトップの前接合部、56…シール部材、57…接合機構、91…ダクト部材、92…ダクト部材の入口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルームと車室とを隔絶するダッシュボードロアの上方に設けた車幅方向に延びる排水通路と、前記車室の空気調節用の外気を導く吸気通路と、を備えたダッシュボードアッパ構造において、
前記排水通路の上方に車幅方向に延びる排水溝を設け、
前記吸気通路は、前記排水通路とは独立した空間を形成した通路であり、外気を取り入れる吸気開口部を有していることを特徴とするダッシュボードアッパ構造。
【請求項2】
前記吸気通路は、前記車両側面視、閉断面形状であり、この閉断面形状を、前記排水通路を車両の上方へ向いている面に設けて前記エンジンルームの左右の上部をなすアッパサイドメンバに両端を接合した上部クロスプレート隔壁部材と、前記アッパサイドメンバに両端を接合した下部クロスプレート隔壁部材と、エンジンルーム上部隔壁部材とで形成して、前記閉断面形状の空間に前記吸気開口部に対向する仕切り壁を設けることによって形成され、
前記エンジンルーム上部隔壁部材は、前記ダッシュボードロアと前記エンジンルームをカバーするフードの後端との間に配置されて、前記上部クロスプレート隔壁部材の前部及び前記下部クロスプレート隔壁部材の前縁に溶接部で接合していることを特徴とする請求項1記載のダッシュボードアッパ構造。
【請求項3】
前記吸気開口部は車体側面に設けられて、
前記吸気開口部の近傍に且つ、前記吸気通路の下方にブロアーを設けていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のダッシュボードアッパ構造。
【請求項4】
前記吸気通路の一部を形成している下部クロスプレート隔壁部材にブロアー連通開口部を開け、且つ、該ブロアー連通開口部の角を前記下部クロスプレート隔壁部材に対して段差の無い平坦に形成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のダッシュボードアッパ構造。
【請求項5】
前記吸気通路は、樹脂製のダクト部材であり、前記排水通路の下方に配置されて、前記吸気開口部に前記ダクト部材の入口部を嵌合していることを特徴とする請求項1記載のダッシュボードアッパ構造。
【請求項6】
前記排水通路の上方に前記排水溝を形成したフロントカウルトップを備え、
前記排水通路を形成した上部クロスプレート隔壁部材の前隔壁接合部と該前隔壁接合部に接合する前記フロントカウルトップの前接合部との間にシール部材を設けて、前記前隔壁接合部に前記前接合部を接合機構で接合したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のダッシュボードアッパ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−66710(P2012−66710A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213468(P2010−213468)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】