説明

ダビングシステム

【課題】通常再生速度と異なる速度でダビング処理を行うことができるダビングシステムを提供する。
【解決手段】記録装置10において、MPEG−TSのパケット列を通常再生速度と異なる速度で転送するためのタイムスタンプをそれそれのMPEG−TSパケットに記述したアイソクロナスパケットを生成して、このアイソクロナスパケットを、IEEE1394シリアルバス15を介して記録装置20に送信し、記録装置20において、記録装置10から受信したアイソクロナスパケットに含まれるMPEG−TSのパケット列の各パケットに設定されているタイムスタンプを、通常再生速度のタイムスタンプに変更して記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置間での符号化データのダビングを行うダビングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像、音声情報の世界における映像、音声のデジタル化、および映像、音声データの圧縮技術の向上により、VTRをはじめとするテープ記録から、DVDディスク、ハードディスク等のディスク記録への移行が急速に行われつつある。
【0003】
また、近年、記録媒体としてハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)を使用するハードディスクレコーダが普及してきている。さらに、ハードディスクドライブとDVDドライブとが混在するハードディスク&DVDハイブリッドレコーダが普及してきており、放送を一旦ハードディスクドライブに記録し、保存したいコンテンツのみを選択してDVDにダビングするという用途に用いられている。
【0004】
しかし、地上波デジタル放送や、BSデジタル放送等で配信されているHD(High Definition)放送の場合、高画質を謳っているため、その記録レートは通常15〜25Mbps程度ある。そのため、DVDディスクの容量では、放送の高画質をそのままバックアップすることができない。したがって、HD放送をそのまま保存したい場合には、記録装置を外部の装置と接続し、外部の装置へのダビングを行い、バックアップを行うことが一般的に行われている。
【0005】
通常、記録装置間の接続には、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394デジタルインターフェースが用いられており、すでに、IEEE1394を通して、コンテンツのダビングを行うことができる記録装置が多数発売されている。
【0006】
しかし、従来のダビングシステムにおいて、IEEE1394を通してのダビング処理の速度は、通常再生速度と同速度に限定されていた。つまり、記録データのダビング処理を行うためには録画時間と同じ時間がかかっていた。
【0007】
そこで、VCRとディスク状記録媒体などを使用した装置間での符号化データ列の高速ダビングに関する技術が特許文献1に開示されている。この技術では、再生系となるハードディスク部において、通常再生のN倍速のクロック周波数に基づいて符号化データ列を読み出し、記録系となるデジタルVCR部において、再生系から読み出され入力される符号化データ列に通常のN倍速の基準クロックを用いてタイムスタンプを付加する。そして、磁気テープの再生走行速度の基準となるコントロール信号を正規周波数のN倍の周期で書き込みながら、正規記録時のN倍速で磁気テープを送るとともに、通常記録時と同じ速度でシリンダを回転させながら記録することにより、高速ダビングを実現している。
【特許文献1】特開2002−100115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示された技術を用いてダビングを行う場合、転送スピードの設定が通常再生速度のN倍速(Nは正の整数)に限定される。また、通常再生速度のN倍速の時間軸となるタイムスタンプを作成する基準クロック作成部が必要となるため、特殊なハードウェアを追加することになり、装置の構成が複雑になるという問題があった。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、通常再生速度と異なる速度でダビング処理を行うことができるダビングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のダビングシステムは、第1の記録装置と、この第1の記録装置との間で符号化データのダビングを行う第2の記録装置とを備えるダビングシステムにおいて、前記第1の記録装置は、符号化データのパケット列を記録する第1の記録手段と、前記第2の記録装置との間で通信を行う第1の通信手段と、この第1の通信手段を介した前記第2の記録装置との情報交換により、前記第2の記録装置との間の通信におけるデータ転送速度の範囲を調べ、このデータ転送速度の範囲からデータ転送速度を決定し、この決定したデータ転送速度から、前記第1の記録手段に記録された符号化データのパケット列の各パケットの転送間隔を算出する転送間隔算出手段と、この転送間隔算出手段で算出された前記転送間隔に基づいて、前記第1の記録手段に記録された符号化データのパケット列をこの符号化データの通常再生速度と異なる速度で転送するための時間情報を前記パケット列の各パケットに記述するとともに、前記パケット列を前記第1の通信手段を介して前記第2の記録装置へ送信するための送信用パケットを生成する送信用パケット生成手段とを備え、前記第2の記録装置は、前記第1の記録装置との間で通信を行い、前記送信用パケット生成手段で生成された送信用パケットを受信する第2の通信手段と、この第2の通信手段で受信した前記送信用パケットに含まれる符号化データのパケット列の各パケットに前記送信用パケット生成手段で記述された時間情報を、前記符号化データの通常再生速度の時間情報に変更する時間情報変更手段と、この時間情報変更手段で時間情報が変更された前記符号化データのパケット列を記録する第2の記録手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のダビングシステムによれば、第1の記録装置において、記録された符号化データのパケット列を通常再生速度と異なる速度で転送するための時間情報を記述した送信用パケットを生成し、この送信用パケットを第2の記録装置に送信し、第2の記録装置において、受信した送信用パケットに含まれる符号化データのパケット列の各パケットに記述されている時間情報を、通常再生速度の時間情報に変更して記録するので、符号化データのパケット列を通常再生速度と異なる速度で転送して転送後に再生速度を復元することができ、簡単な構成のシステムで通常再生速度と異なる速度でダビング処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のダビングシステムを実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態に係るダビングシステムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施の形態のダビングシステムは、ダビング元としての記録装置10と、ダビング先としての記録装置20とを備え、記録装置10と記録装置20とは、IEEE1394シリアルバス15を介して接続されている。
【0014】
記録装置10は、入出力デジタルインターフェース(I/F)部11と、符号化データ列処理部12と、記録再生部13と、制御部14とを備える。
【0015】
入出力デジタルインターフェース(I/F)部11は、IEEE1394デジタルインターフェースからなり、IEEE1394シリアルバス15を介して、符号化データのパケット列を入出力する。
【0016】
符号化データ列処理部12は、記録再生部13に格納された符号化データのパケット列を通常再生速度と異なる速度で転送するための時間情報を記述した送信用パケットを生成して入出力デジタルI/F部11に出力する。記録再生部13は、符号化データのパケット列を格納する。
【0017】
制御部14は、入出力デジタルI/F部11を介した記録装置20とのネゴシエーションにより、記録装置20との間の通信におけるデータ転送速度の範囲を調べ、このデータ転送速度の範囲からデータ転送速度を決定し、このデータ転送速度から、符号化データのパケット列を記録装置20に転送するための転送間隔を算出する。また、制御部14は、装置に設けられた各部を制御する。
【0018】
記録装置20は、入出力デジタルインターフェース(I/F)部21と、符号化データ列処理部22と、記録再生部23と、制御部24とを備える。
【0019】
入出力デジタルインターフェース(I/F)部21は、IEEE1394デジタルインターフェースからなり、IEEE1394シリアルバス15を介して、符号化データのパケット列を入出力する。
【0020】
符号化データ列処理部22は、入出力デジタルI/F部21を介して記録装置10で生成された送信用パケットが入力されると、この送信用パケットに記録装置10で記述された時間情報を、通常再生速度の時間情報に変更して記録再生部23に出力する。記録再生部23は、符号化データ列処理部22からのパケットを記録、再生する。制御部24は、装置に設けられた各部を制御する。
【0021】
次に、本実施の形態に係るダビングシステムの動作並びに高速ダビング処理の手順について説明する。
【0022】
本実施の形態では、記録装置10と記録装置20とは、IEEE1394シリアルバス15を介してMPEG−TS(Moving Picture Experts Group-Transport Stream)パケットを通信、記録するものとする。
【0023】
図2はダビングを行う際の記録装置10における符号化データ列出力処理の手順を示すフローチャートである。以下、その処理手順について説明する。
【0024】
まず、ステップS110では、記録装置10の制御部14は、入出力デジタルI/F部11を介して接続相手である記録装置20と通信を行い、MPEG−TSのパケット列の転送を行うにあたって、記録装置10と記録装置20との間において許されるデータ転送速度の範囲を調べる。転送速度の範囲は、入出力デジタルI/F部11を介しての記録装置20とのネゴシエーションにより決定する。
【0025】
次に、ステップS120では、制御部14は、ステップS110で決定したデータ転送速度の範囲から、ダビング処理におけるデータ転送速度を決定する。
【0026】
次に、ステップS130では、制御部14は、ステップS120で決定したデータ転送速度と、転送するMPEG−TSパケットのサイズに基づいて、MPEG−TSのパケット転送間隔を算出する。
【0027】
次に、ステップS140では、制御部14は、記録再生部13に記録されたMPEG−TSのパケット列から、IEEE1394でデータを送信するためのアイソクロナスパケットを生成するように、符号化データ列処理部12を制御する。
【0028】
図3(a)はアイソクロナスパケットのフォーマットを示す図、図3(b)はアイソクロナスパケット中のMPEG−TSパケットを示す図である。図3(a)に示すように、アイソクロナスパケットは、アイソクロナスパケットヘッダ31と、MPEG−TSパケット32a,32b,…とを含む。そして、MPEG−TSパケット32a,32b,…には、図3(b)に示すように、時間情報を記述できるSPH部321が設けられている。
【0029】
アイソクロナスパケットを生成する際、符号化データ列処理部12は、ステップS130で算出したMPEG−TSのパケット転送間隔に基づいて、それぞれのMPEG−TSパケット32a,32b,…のSPH部321に、時間情報を示すタイムスタンプを記述する。
【0030】
そして、制御部14は、符号化データ列処理部12で作成されたアイソクロナスパケットを、ステップS120で決定したデータ転送速度で記録装置20へ出力するように入出力デジタルI/F部11を制御する。
【0031】
次に、ステップS150では、制御部14は、記録再生部13に記録されているダビング対象のMPEG−TSのパケット列の出力が完了したかどうかを判断し、出力が完了した(YES)場合は、符号化データ列出力処理を終了する。出力が完了していない(NO)場合は、ステップS140に戻り、以降の処理を繰り返す。以上が、符号化データ列出力処理の手順である。
【0032】
図4は、ダビングを行う際の記録装置20における符号化データ列入力処理の手順を示すフローチャートである。以下、その処理手順について説明する。
【0033】
まず、ステップS210において、記録装置20の制御部24は、入出力デジタルI/F部21において接続相手である記録装置10からアイソクロナスパケットを受信すると、受信したアイソクロナスパケットを符号化データ列処理部22に出力するように制御する。ここで受信したアイソクロナスパケットは、図3(a)に示すフォーマットになっているが、記録にはアイソクロナスパケットヘッダ31は不用である。
【0034】
そこで、ステップS220では、制御部24は、受信したアイソクロナスパケットからアイソクロナスパケットヘッダ31を除去するように符号化データ列処理部22を制御する。
【0035】
ここで、図3(b)に示すMPEG−TSパケットのSPH部321にはパケットのタイムスタンプが記述されているが、高速ダビングに際して、接続相手の記録装置10において、図2に示すフローチャートのステップS140でタイムスタンプの値は変換されている。
【0036】
そこで、ステップS230では、制御部24は、このタイムスタンプの値を、MPEG−TSの通常再生速度に合わせて変更するように符号化データ列処理部22を制御する。
【0037】
そして、ステップS240において、制御部24は、符号化データ列処理部22でタイムスタンプが変更されたMPEG−TSパケットを記録再生部23に記録するように制御する。
【0038】
ここで、上記のステップS140でのタイムスタンプの設定、およびステップS230でのタイムスタンプの変更について、図5を参照して説明する。図5(a)は元のMPEG−TSパケットのタイミングを示す図、図5(b)はステップS140で高速ダビングのためにタイムスタンプ値を変換した後のMPEG−TSパケットのタイミングを示す図、図5(c)は外部機器から送られてきたMPEG−TSパケットのタイムスタンプを、ステップS230で変更した後のMPEG−TSパケットのタイミングを示す図である。
【0039】
MPEG−TSでは、SPHのような個々のMPEG−TSパケットの先頭につけられたヘッダー部のタイムスタンプのほかに、MPEG−TSパケットの中にPCR(Program Clock Reference:プログラム時刻基準参照値)と呼ばれるタイムスタンプ値が記述されている。図5(a)〜(c)に示すように、MPEG−TSの中には、このPCRを持つパケット5a,5b,…と、PCRを持たないパケット6a,6b,…とがある。
【0040】
そして、MPEG−TSでは、このPCRの値によって、プログラムの通常再生速度が示される。つまり、PCRを持つパケット5a,5b,…のタイミングが等しければ、プログラムの通常再生速度は復元される。
【0041】
そこで、高速ダビングの際には、図2のステップS140においてそれぞれのMPEG−TSパケット32a,32b,…のSPH部321に記述するタイムスタンプは、図5(b)に示すように各パケット間の間隔が短くなるように設定する。これにより、データ転送速度を、MPEG−TSの通常再生速度よりも速くすることができる。また、タイムスタンプ値の設定により、ステップS110で調べられたデータ転送速度の範囲内であれば、データ転送速度を任意の速度に設定することができる。
【0042】
そして、このようにしてタイムスタンプの値が変換されたMPEG−TSを記録装置20が受信すると、図5(c)に示すように、PCRを持つパケット5a,5b,…の間隔が、図5(a)に示すPCRを持つパケット5a,5b,…の間隔と等しくなるように、ステップS230においてMPEG−TSパケットのタイムスタンプを変更する。これにより、プログラムの通常再生速度は復元される。
【0043】
このように、本実施の形態によれば、記録装置10において、MPEG−TSのパケット列を通常再生速度と異なる速度で転送するためのタイムスタンプをそれそれのMPEG−TSパケットに設定したアイソクロナスパケットを生成して、このアイソクロナスパケットを、IEEE1394シリアルバス15を介して記録装置20に送信し、記録装置20において、記録装置10から受信したアイソクロナスパケットに含まれるMPEG−TSのパケット列の各パケットに設定されているタイムスタンプを、通常再生速度のタイムスタンプに変更して記録するので、MPEG−TSのパケット列の転送速度を通常再生速度と異なる速度に設定でき、簡単な構成のシステムで、通常再生速度と異なる速度でダビング処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施の形態に係るダビングシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】符号化データ列出力処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】(a)はアイソクロナスパケットのフォーマットを示す図、(b)はアイソクロナスパケット中のMPEG−TSパケットを示す図である。
【図4】符号化データ列入力処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】(a)は元のMPEG−TSパケットのタイミングを示す図、(b)はタイムスタンプ値を変換した後のMPEG−TSパケットのタイミングを示す図、(c)はタイムスタンプを変更した後のMPEG−TSパケットのタイミングを示す図である。
【符号の説明】
【0045】
10,20 記録装置
11,21 入出力デジタルインターフェース(I/F)部
12,22 符号化データ列処理部
13,23 記録再生部
14,24 制御部
15 IEEE1394シリアルバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の記録装置と、この第1の記録装置との間で符号化データのダビングを行う第2の記録装置とを備えるダビングシステムにおいて、
前記第1の記録装置は、
符号化データのパケット列を記録する第1の記録手段と、
前記第2の記録装置との間で通信を行う第1の通信手段と、
この第1の通信手段を介した前記第2の記録装置との情報交換により、前記第2の記録装置との間の通信におけるデータ転送速度の範囲を調べ、このデータ転送速度の範囲からデータ転送速度を決定し、この決定したデータ転送速度から、前記第1の記録手段に記録された符号化データのパケット列の各パケットの転送間隔を算出する転送間隔算出手段と、
この転送間隔算出手段で算出された前記転送間隔に基づいて、前記第1の記録手段に記録された符号化データのパケット列をこの符号化データの通常再生速度と異なる速度で転送するための時間情報を前記パケット列の各パケットに記述するとともに、前記パケット列を前記第1の通信手段を介して前記第2の記録装置へ送信するための送信用パケットを生成する送信用パケット生成手段とを備え、
前記第2の記録装置は、
前記第1の記録装置との間で通信を行い、前記送信用パケット生成手段で生成された送信用パケットを受信する第2の通信手段と、
この第2の通信手段で受信した前記送信用パケットに含まれる符号化データのパケット列の各パケットに前記送信用パケット生成手段で記述された時間情報を、前記符号化データの通常再生速度の時間情報に変更する時間情報変更手段と、
この時間情報変更手段で時間情報が変更された前記符号化データのパケット列を記録する第2の記録手段と
を備えることを特徴とするダビングシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−250037(P2007−250037A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68901(P2006−68901)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】