説明

ダブルデッキエレベーター

【課題】かご機器の点検を、安全かつ効率良く行うことのできるダブルデッキエレベーターの提供。
【解決手段】昇降路内を昇降するかご枠2と、かご枠内に上下昇降可能に配置された上かご9と、上かご9の下方に配置された下かご10と、上かご9と下かご10を互いに上下反対方向にかご枠内で駆動するかご位置調整駆動装置11とを備え、着床する階床間の上下方向間隔に合わせて上下のかご間の上下方向間隔を変化させるダブルデッキエレベーターにおいて、昇降路壁1aの所定の高さ位置に固定される梁部材15a、16aと、梁部材に支持され、かご枠2の上梁2aと対向可能となる足場板15b、16bと、足場板に設けられる手摺り部材15c、16cとを有する点検台15、16を備え、点検台を足場としてかご枠に設置されるかご機器を点検するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下のかご間の上下方向間隔を調整可能なダブルデッキエレベーターに係り、特にかご機器の点検を行う際に用いられる点検台を備えたダブルデッキエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーター昇降路底部のピット、又は乗かご上から手の届かない位置にある昇降路内壁面に固定された機器(例えば制御盤)を点検する場合に、点検作業者の足場を確保する点検台装置として、従来、不使用時には、昇降路壁面に沿うように折り畳まれて昇降路内を昇降する昇降体とは干渉しない位置に収納され、昇降路内壁面に固定された機器の点検時には、引き出されて点検に際しての足場となる足場板を拡張可能に形成すると共に、足場板の拡張時に、手摺り部材を足場位置の拡張方向に傾倒、延設させることにより、拡張させた足場板に相応して手摺り部材を広い包囲範囲を形成するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年、着床する階床間の上下方向間隔に合わせて上下のかご間の上下方向間隔を変化させることのできるダブルデッキエレベーターが提案されている。この種のエレベーターにあっては、かご枠内に、このかご枠内を上下に昇降可能に配置された上かご及び下かごが設置されると共に、上かご及び下かごを駆動するためのかご位置調整駆動装置が設けられており、かご枠は比較的大きな高さ寸法を有すると共に、かご枠には保守点検を要するかご機器が多数設置されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−37604号公報(段落番号0018〜0027、図6)
【特許文献2】特開2001−122565号公報(段落番号0015〜0018、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1のものは、エレベーターの昇降路内機器の点検時に用いられる点検台装置であり、ダブルデッキエレベーターのかご機器の保守点検に適したものではなかった。
【0006】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、かご機器の点検を、安全かつ効率良く行うことのできるダブルデッキエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、昇降路内を昇降するかご枠と、このかご枠内に上下昇降可能に配置された上かごと、前記上かごの下方に配置された下かごと、前記上かごと前記下かごを互いに上下反対方向に前記かご枠内で駆動するかご位置調整駆動装置とを備え、着床する階床間の上下方向間隔に合わせて上下のかご間の上下方向間隔を変化させることのできるダブルデッキエレベーターにおいて、昇降路壁の所定の高さ位置に固定される梁部材と、この梁部材に支持され、前記かご枠の上梁と対向可能となる足場板と、この足場板に設けられる手摺り部材とを有する点検台とを備え、この点検台を足場として前記かご枠に設置されるかご機器を点検することを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明では、ダブルデッキエレベーターのかご枠に設置されるかご機器を点検する場合、まず、かご枠上に作業員が乗り込み、次いで、かご枠を移動させ、点検台の足場板とかご枠とを対向位置として点検台に乗り移る。そして、この点検台を足場としてかご枠に設置されるかご機器を点検する。このように、昇降路に設けた専用の点検台を用いて行うことにより、ダブルデッキエレベーターのかご機器の点検作業を安全かつ効率良く行うことができる。
【0009】
また、本発明は、前記足場板には、不使用時には、折り畳まれて前記かご枠とは干渉しない位置に収納され、点検時には、引き出されて前記上梁との間に架け渡される可動式の渡り板が設けられることを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明では、作業員がかご枠上から点検台に乗り移る際、渡り板を引き出し、点検台の足場板とかご枠の上梁との間に架け渡す。これによって、安全に点検台に乗り移ることができる。
【0011】
さらに、本発明は、複数のダブルデッキエレベーターが併設されたものにあって、一方のダブルデッキエレベーターの昇降路側に、他方のダブルデッキエレベーターの前記点検台の少なくとも前記梁部材が配置されることを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明では、一方のダブルデッキエレベーターの昇降路側に、他方のダブルデッキエレベーターの点検台の梁部材を配置することで、点検台の設置スペースを確保しつつ、互いの昇降路を近接させることが可能となり、省スペースの併設ダブルデッキエレベーターとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ダブルデッキエレベーターのかご機器の点検を、昇降路に設けた専用の点検台を用いて行うことにより、作業を安全かつ効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のダブルデッキエレベーターの全体概略構成図である。
【図2】本発明に係るダブルデッキエレベーターの第1の実施例を示す側面図である。
【図3】第1の実施例における点検台の側面図である。
【図4】本発明に係るダブルデッキエレベーターの第2の実施例を示す概略上面図である。
【図5】第2の実施例における概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るダブルデッキエレベーターの第1の実施例を図に基づき説明する。
【0016】
ダブルデッキエレベーターは、図1に示すように、昇降路1内を昇降するかご枠2と、一端がかご枠2に連結されてかご枠2を吊持する主索3と、この主索3の他端に連結されて吊持され、昇降路1内を前記かご枠2とは互いに上下反対に昇降するつり合いおもり4と、昇降路1上部の機械室5に設置されるとともに、主索3の中間部が巻き掛けられた主索3を駆動する駆動装置6と、機械室5にあって駆動装置6の近傍に配置され、主索3が巻き掛けられたそらせ車7と、機械室5に配置され、ダブルデッキエレベーターの運転を制御する制御装置8を有している。前記かご枠2内には、このかご枠2内を上下昇降可能に配置された上かご9と、上かご9の下方に配置された下かご10とが配置されている。
【0017】
かご枠2は、図2に示すように、上梁2a、一対の縦枠2b、2c、下梁2e、中間梁2dから形成されており、上梁2aの上部には防振ゴムを介してかご位置調整駆動装置11が載置され、このかご位置調整駆動装置11にはかご位置調整駆動シーブ11aが備えられている。そして、索状体であるかご位置調整ロープ12は、一端が上梁2aに弾性体13を介して固定され、上かご9の下部に取り付けられる2つの上かごプーリ9a、9bに巻き掛けられて上かご9を吊持し、かご位置調整駆動装置11のかご位置調整駆動シーブ11aに巻き掛けられる。その後、かご位置調整ロープ12は、下かご10の下部に取り付けられる2つの下かごプーリ10a、10bに巻き掛けられて下かご10を吊持し、他端が中間梁2dに弾性体14を介して固定される。
【0018】
このように構成されたダブルデッキエレベーターは、制御装置8によりかご位置調整駆動装置11を駆動させて、かご位置調整駆動シーブ11aを回転させるものであり、このかご位置調整駆動シーブ11aの回転により前記かご枠2内で上かご9と下かご10を互いに上下反対に駆動する。そして、図1に示すように、かご枠2が上方階にある場合は、乗り場階の間隔がH1のため、それに合わせて上かご9と下かご10との間隔を寸法H1に調整する。下方階の場合は、乗り場階の間隔がH2に変わるためそれに合わせて上かご9と下かご10との間隔をH2に変更する。
【0019】
そして、第1の実施例のダブルデッキエレベーターは、図2に示すように、昇降路1の図中右側に、第1の点検台15を備えると共に、昇降路1の図中左側の第1の点検台15の上方に、第2の点検台16を備えている。
【0020】
第1の点検台15は、図2及び図3に示すように、昇降路壁1aの所定の高さ位置に固定される梁部材15aと、この梁部材15aに支持され、かご枠2の上梁2aと対向可能となる足場板15bと、この足場板15bに設けられる手摺り部材15cとを備えている。また、足場板15bには、不使用時には、折り畳まれてかご枠2と干渉しない位置に収納され、点検時には、引き出されて上梁2aとの間に架け渡される可動式の渡り板15b1が設けられている。
【0021】
第2の点検台16も同様に、図2及び図3に示すように、昇降路壁1aの所定の高さ位置に固定される梁部材16aと、この梁部材16aに支持され、かご枠2の上梁2aと対向可能となる足場板16bと、この足場板16bに設けられる手摺り部材16cとを備えている。また、足場板16bには、不使用時には、折り畳まれてかご枠2と干渉しない位置に収納され、点検時には、引き出されて上梁2aとの間に架け渡される可動式の渡り板16b1が設けられている。
【0022】
第1の実施例にあって、かご枠2に設置されるかご機器を点検する場合、かご枠2上に、例えば3人の作業員が乗り込み、かご枠2を保守モードで上方に移動させ、下方に位置する第1の点検台15の足場板15bとかご枠2の上梁2aとを対向位置とする。この状態で可動式の渡り板15b1を引き出し、足場板15bと上梁2aとの間に架け渡し、1人の作業員が第1の点検台15に乗り移る。この第1の点検台15から作業員は、例えば上かご9及び下かご10を駆動するために掛け回されるかご位置調整ロープ12やプーリ9b、10bの点検を行う。
【0023】
この後、さらに、かご枠2を上昇させ、上方に位置する第2の点検台16の足場板16bとかご枠2の上梁2aとを対向位置とする。この状態で可動式の渡り板16b1を引き出し、この足場板16bと上梁2aとの間に架け渡し、他の1人の作業員が第2の点検台16に乗り移る。この状態で作業員は、第2の点検台16からかご位置調整駆動装置11の点検を行う。また、この状態でかご枠2を上昇させれば、かご位置調整ロープ12やプーリ9a、10aの点検を行うことができる。
【0024】
本実施例によれば、ダブルデッキエレベーターのかご機器の点検を、昇降路1に設けた専用の点検台15、16を用いて行うことにより、作業を安全かつ効率良く行うことができる。
【0025】
ここで、本発明に係るダブルデッキエレベーターの第2の実施例を図に基づき説明する。
【0026】
第2の実施例では、図4及び図5に示すように、第1のダブルデッキエレベーターAと第2のダブルデッキエレベーターBが併設されており、これらのダブルデッキエレベターA、Bは、先の図1同様上かご及び下かご(図示せず)を有し、昇降路1A、1B内を昇降するかご枠2A、2Bと、上かご及び下かごを駆動するかご位置調整駆動装置11A、11Bと、昇降路1A、1Bに立設され、かご枠2A、2Bを案内するかご枠ガイドレール16A、16Bとを備えている。
【0027】
そして、第2の実施例のダブルデッキエレベーターでは、第1のダブルデッキエレベーターAの昇降路1A側に、第2のダブルデッキエレベーターBの点検台26の梁部材26aが配置されていると共に、第2のダブルデッキエレベーターBの昇降路1B側に、第1のダブルデッキエレベーターAの点検台25の梁部材25aが配置されている。
【0028】
点検台25は、梁部材25aに支持され、かご枠2Aの上梁と対向可能となる足場板25bと、この足場板25bに設けられる手摺り部材25cとを備えている。また、足場板25bには、不使用時には、折り畳まれてかご枠2Aとは干渉しない位置に収納され、点検時には、引き出されてかご枠2Aの上梁との間に架け渡される可動式の渡り板25b1が設けられている。なお、この実施例では、足場板25b及び手摺り部材25cの一部も第2のダブルデッキエレベーターBの昇降路1B側に位置している。
【0029】
点検台26は、梁部材26aに支持され、かご枠2Bの上梁と対向可能となる足場板26bと、この足場板26bに設けられる手摺り部材26cとを備えている。また、足場板26bには、不使用時には、折り畳まれてかご枠2Bとは干渉しない位置に収納され、点検時には、引き出されてかご枠2Bの上梁との間に架け渡される可動式の渡り板26b1が設けられている。なお、この実施例では、足場板26b及び手摺り部材26cの一部も第1のダブルデッキエレベーターAの昇降路1A側に位置している。また、渡り板26b1は、図4に示すように、かご枠ガイドレール16Bを避けるように2分割となっている。さらに、前述した渡り板25b1も図示しないが同様に2分割の構成となっている。
【0030】
第2の実施例にあって、かご枠2A、2Bに設置されるかご機器を点検する場合、図に示すように、下方に位置し、第2のダブルデッキエレベーターBの昇降路1Bに梁部材25aが配置される点検台25から、第1のダブルデッキエレベーターAのかご位置調整駆動装置11Aの点検を行うと共に、上方に位置し、第1のダブルデッキエレベーターAの昇降路1Aに梁部材26aが配置される点検台26から、第2のダブルデッキエレベーターBのかご位置調整駆動装置11Bの点検を行う。
【0031】
第2の実施例によれば、一方のダブルデッキエレベーターの昇降路側に、他方のダブルデッキエレベーターの点検台の梁部材を配置することで、点検台25、26の設置スペースを確保しつつ、互いの昇降路1A、1Bを近接させることが可能となり、省スペースの併設ダブルデッキエレベーターとすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1、1A、1B 昇降路
2、2A、2B かご枠
2a 上梁
2b、2c 一対の縦枠
2d 中間梁
2e 下梁
3 主索
4 つり合いおもり
5 機械室
6 駆動装置
7 そらせ車
8 制御装置
9 上かご
9a、9b 上かごプーリ
10 下かご
10a、10b 下かごプーリ
11、11A、11B かご位置調整駆動装置
11a かご位置調整駆動シーブ
12 かご位置調整ロープ
13 弾性体
14 弾性体
15、16、25、26 点検台
15a、16a、25a、26a 梁部材
15b、16b、25b、26b 足場板
15b1、16b1、25b1、26b1 渡り板
15c、16c、25c、26c 手摺り部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降するかご枠と、このかご枠内に上下昇降可能に配置された上かごと、前記上かごの下方に配置された下かごと、前記上かごと前記下かごを互いに上下反対方向に前記かご枠内で駆動するかご位置調整駆動装置とを備え、着床する階床間の上下方向間隔に合わせて上下のかご間の上下方向間隔を変化させることのできるダブルデッキエレベーターにおいて、
昇降路壁の所定の高さ位置に固定される梁部材と、この梁部材に支持され、前記かご枠の上梁と対向可能となる足場板と、この足場板に設けられる手摺り部材とを有する点検台とを備え、この点検台を足場として前記かご枠に設置されるかご機器を点検することを特徴としたダブルデッキエレベーター。
【請求項2】
前記足場板には、不使用時には、折り畳まれて前記かご枠とは干渉しない位置に収納され、点検時には、引き出されて前記上梁との間に架け渡される可動式の渡り板が設けられることを特徴とした請求項1記載のダブルデッキエレベーター。
【請求項3】
複数のダブルデッキエレベーターが併設されたものにあって、一方のダブルデッキエレベーターの昇降路側に、他方のダブルデッキエレベーターの前記点検台の少なくとも前記梁部材が配置されることを特徴とした請求項1記載のダブルデッキエレベーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−86935(P2013−86935A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229842(P2011−229842)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(503180948)水戸エンジニアリングサービス株式会社 (33)
【Fターム(参考)】