説明

ダブルフォールド式乗物用シート

【課題】強度が強くかつ荷室空間を大きく確保し得るダブルフォールド式乗物用シートを提供する。
【解決手段】床面15側に前端部3dが回転可能に取付けられるシートクッション3と床面15側に下端部2dが回転可能に取付けられるシートバック2を有するダブルフォールド式乗物用シート1であって、シートクッション3の側面に沿って前後方向に延出しかつ床面15側に設けられる左右のサイドフレーム4を有し、該サイドフレーム4の後部4bにシートバック2の下端部2dが回転可能に取付けられる。左右のサイドフレーム4は、シートクッション3よりも側方において立設する立設部4a2〜4c2を有し、立設部4a2〜4c2は、シートクッション3が前方に回転しかつシートバック2が前方に倒れたダブルフォールド状態におけるシートバック2よりも側方に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面側に前端部が回転可能に取付けられるシートクッションと、床面側に下端部が回転可能に取付けられるシートバックを有するダブルフォールド式乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ダブルフォールド式乗物用シートは、例えば床面に取付けられる左右のスライドレールと、スライドレールに前端部が回転可能に取付けられるシートクッションと、スライドレールの後部に立設されるブラケット板と、ブラケット板に下端部が回転可能に取付けられるシートバックを有している。シートは、使用状態とフォールド状態に可変である。使用状態においてシートバックは床面に対して起立し、シートクッションはスライドレールの上方において水平に設置される。フォールド状態においてシートクッションは前端部を中心に前方に反転され、シートバックは前方に倒れてスライドレールの上方において水平に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−127820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、乗物の衝突時などに受け得る衝撃に耐え得るようにシートの強度をさらに強くしたいという要望がある。またダブルフォールド状態におけるシートバックの上面高さを低くして荷室空間を大きくしたいという要望もある。そこで本発明は、強度が強くかつ荷室空間を大きく確保し得るダブルフォールド式乗物用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備えるダブルフォールド式乗物用シートであることを特徴とする。請求項1に記載の発明によると、シートクッションの側面に沿って前後方向に延出しかつ床面側に設けられる左右のサイドフレームを有している。サイドフレームの後部にシートバックの下端部が回転可能に取付けられている。左右のサイドフレームは、シートクッションよりも側方において立設する立設部を有している。また立設部は、シートクッションが前方に回転しかつシートバックが前方に倒れたダブルフォールド状態におけるシートバックよりも側方に位置している。
【0006】
したがって前後方向に延出するサイドフレームを介してシートバックが床面側に取付けられる。そのため乗物が衝突して慣性力によって使用者の体重がシートバックに加わると、その力はシートバックからサイドフレームに伝わり、サイドフレームによって前後方向に分散されて受け止められ得る。またサイドフレームの立設部は、シートクッションよりも側方に位置している。そのためシートクッションを高くすることなくあるいはシートクッションの厚みを薄くすることなくサイドフレームの立設部を高くし得る。これによりサイドフレームによってシートを確実に補強することができる。またサイドフレームの立設部は、ダブルフォールド状態においてシートバックよりも側方に立設している。そのためサイドフレームに関わらずにフォールド状態のシートバックを低くでき、これによって乗物の荷室空間を大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】使用状態における乗物用シートの左側面図である。
【図2】ダブルフォールド状態における乗物用シートの左側面図である。
【図3】乗物用シートの一部分解斜視図である。
【図4】図1のIV―IV線断面矢視図である。
【図5】図2のV―V線断面矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態を図1〜5にしたがって説明する。図1、2に示すようにシート1は、ダブルフォールド式であって、床面15側に前端部3dが回転可能に取付けられるシートクッション3と、床面15側に下端部2dが回転可能に取付けられるシートバック2を有している。シートバック2とシートクッション3の下方には、左右のサイドフレーム4と左右のスライドレール7が設けられる。
【0009】
スライドレール7は、図1,3に示すように床面15に移動不能に取付けられるロアレール7aと、ロアレール7aにスライド可能に取付けられるアッパレール7bを有している。ロアレール7aとアッパレール7bの間には、これらをスライド不能にロックするロック機構7cが設けられている。左右のスライドレール7の前部間には、左右のロック機構7cに連結されるハンドル7dが設けられている。左右のロック機構7cは、ハンドル7dの前側を持上げることでロック解除状態になる。
【0010】
サイドフレーム4は、図3,4に示すようにシートクッション3に沿って前後方向に延出しており、前後部4a,4bと連結部4cを一体に有している。前後部4a,4bはアッパレール7bの前後部に取付けられ、連結部4cは前後部4a,4bを連結している。前後部4a,4bと連結部4cは、断面略L字状であって水平部4a1〜4c1と立設部4a2〜4c2を有している。
【0011】
前後部4a,4bの水平部4a1,4b1は、図3,4に示すようにアッパレール7bの上面に取付けられてアッパレール7bから側方(外方)に張出している。立設部4a2,4b2は、水平部4a1,4b1の外側縁に立設している。連結部4cの立設部4c2は、前後部4a,4bの立設部4a2,4b2間を延出し、これらを連結している。連結部4cの水平部4c1は、立設部4c2の下端部から内側に張出し、かつアッパレール7bよりも外側に位置している。
【0012】
図1,3に示すようにサイドフレーム4の後部4bには、リクライニング装置6を介してシートバック2が取付けられる。シートバック2は、図3,5に示すようにフレーム2aと、フレーム2aに装着されるパッド2bと、パッド2bの表面を覆う表皮2cを有している。フレーム2aは、左右のサイド部2a1と、サイド部2a1の上端部間を連結するアッパ部2a2と、サイド部2a1の下部間を連結するロア部2a3を有している。
【0013】
リクライニング装置6は、図3に示すようにリクライニング本体6aとアッパアーム6bとロアアーム6cを有している。リクライニング本体6aは、回転可能に重ねられる一対の円盤部材と、一対の円盤部材を回転不能にロックするロック機構を有している。円盤部材の一つにアッパアーム6bが取付けられ、他の一つにロアアーム6cが取付けられる。アッパアーム6bは、シートバック2のサイド部2a1の下端部にボルト12によって取付けられる。ロアアーム6cは、サイドフレーム4の後部4bの上端部にボルト12によって取付けられる。
【0014】
図3に示すように左右のリクライニング本体6aの間には、これらを連動させるための連結棒6dが設けられている。連結棒6dの一端部6d1は、リクライニング本体6aの一つから側方に突出しており、一端部6d1に操作レバー6eが取付けられる。操作レバー6eの先端部を持上げると、左右のリクライニング本体6aが略同時にロック解除状態になり、シートバック2がサイドフレーム4に対し回転可能になる。
【0015】
図3に示すように左右のサイドフレーム4の前部には、これらを連結する管状の前補強部材8が設けられる。左右のサイドフレーム4の後部には、これらを連結する管状の後補強部材9が設けられる。前補強部材8には、ヒンジ装置5によってシートクッション3が回転可能に取付けられる。後補強部材9には、使用状態においてシートクッション3の後部が載置される受部9aが形成されている。
【0016】
シートクッション3は、図3,4に示すようにフレーム3aと、フレーム3aに装着されるパッド3bと、パッド3bの表面を覆う表皮3cを有している。フレーム3aは、パイプ材であって環状に形成される。ヒンジ装置5は、シートクッション3から下方に延出する一対のレッグ5aと、前補強部材8から前方に延出するブラケット5dを有している。レッグ5aの下端部には、ピン5cによって連結部材5bが回転可能に取付けられ、連結部材5bはボルト12によってブラケット5dに固定される。したがってシートクッション3は、ピン5cを中心に前補強部材8に対して回転し得る。
【0017】
図1,3に示すように後補強部材9には、上側半分を潰した断面半円状の受部9aが形成されている。受部9aの略中心位置には、突部9bが装着されている。受部9aには、シートクッション3に設けられ他一対のブラケット3eが載置され得る。ブラケット3eは、フレーム3aの後部に設けられており、フレーム3aから下方に延出している。一対のブラケット3eは、突部9bの左右両側において受部9aの上に載置される。したがってシートクッション3の後部の下方への移動は受部9aによって規制され、左右方向の移動はブラケット3eと突部9bの協働によって規制される。
【0018】
図4,5に示すようにサイドフレーム4の外側位置には、サイドフレーム4の外側面を覆う側部カバー11が装着される。左右のスライドレール7の上方位置には、中央カバー10が取付けられる。中央カバー10は、左右のスライドレール7間を覆う平面部10aと、平面部10aの端部から起立してサイドフレーム4の内側面を覆う起立部10bを有している。
【0019】
シート1が図1,4に示す使用状態において、シートバック2はサイドフレーム4の後部において起立しかつ少し後傾している。シートバック2の後傾角度は、リクライニング装置6によって調整され得る。シートクッション3は、左右のスライドレール7と中央カバー10の上方において水平になっており、シートクッション3の後部が後補強部材9によって支持される。サイドフレーム4の立設部4a2〜4c2(図3参照)は、シートクッション3よりも左右外側に位置している。
【0020】
シート1が図2,5に示すダブルフォールド状態において、シートクッション3はヒンジ装置5のピン5cを中心に前方に回転して床面15に対して起立している。シートバック2は、リクライニング装置6によって前方に倒れて、スライドレール7と中央カバー10の上方において水平になっている。サイドフレーム4の立設部4a2〜4c2(図3参照)は、シートバック2よりも左右外側に位置している。
【0021】
以上のようにシート1は、図1,2に示すようにシートクッション3の側面に沿って前後方向に延出しかつ床面15側に設けられる左右のサイドフレーム4を有している。サイドフレーム4の後部4bにシートバック2の下端部2dが回転可能に取付けられている。左右のサイドフレーム4は、シートクッション3よりも側方において立設する立設部4a2〜4c2を有している。また立設部4a2〜4c2は、シートクッション3が前方に回転しかつシートバック2が前方に倒れたダブルフォールド状態におけるシートバック2よりも側方に位置している。
【0022】
したがって前後方向に延出するサイドフレーム4を介してシートバック2が床面15側に取付けられる。そのため乗物が衝突して慣性力によって使用者の体重がシートバック2に加わると、その力はシートバック2からサイドフレーム4に伝わり、サイドフレーム4によって前後方向に分散されて受け止められ得る。またサイドフレーム4の立設部4a2〜4c2は、シートクッション3よりも側方に位置している。そのためシートクッション3を高くすることなくあるいはシートクッション3の厚みを薄くすることなくサイドフレーム4の立設部4a2〜4c2を高くし得る。これによりサイドフレーム4によってシート1を確実に補強することができる。
【0023】
またサイドフレーム4の立設部4a2〜4c2は、ダブルフォールド状態においてシートバック2よりも側方に立設している。そのためサイドフレーム4に関わらずにフォールド状態のシートバック2を低くでき、これによって乗物の荷室空間を大きく確保することができる。あるいはシートバック2と荷室フロアとの段差を小さくすることができる。
【0024】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。
(1)図1に示すサイドフレーム4は、スライドレール7を介して床面15に取付けられている。しかしサイドフレームが床面にスライドレールを介さずに床面に取付けられても良い。あるいはサイドフレームが床面に取付けられたブラケットを介して床面に取付けられても良い。
(2)図1,2に示すシート1は、図1に示す使用状態と図2に示すダブルフォールド状態に可変であり、ダブルフォールド状態においてシートクッション3が床面15に対して起立している。しかしダブルフォールド状態においてシートクッションが反転、すなわち使用状態における上方を向く座面が下方を向く位置するまでシートクッションが回転していても良い。
(3)図1,3に示すシートクッション3の前端部3dは、サイドフレーム4に取付けられている。しかしシートクッションの前端部がサイドフレームを介することなく、スライドレールに取付けられても良い。あるいはスライドレールが設けられておらず、シートクッションの前端部が床面に取付けられても良い。
(4)図1に示すサイドフレーム4の前後長さは、シートクッション3の前後長さと略同じである。しかしサイドフレームの前後長さがシートクッションの前後長さの5割以上、好ましくは7割以上であっても良い。
(5)図1,4に示すシートクッション3の下面は、使用状態において後部を除いた大部分がサイドフレーム4よりも上方に位置している。しかしシートクッションの下面の大部分が使用状態においてサイドフレームの上端縁よりも低い位置にあっても良い。
(6)図1に示すシート1は、自動車等の車両に装着されているが、船舶や航空機等に装着されても良い。
【符号の説明】
【0025】
1…シート
2…シートバック
2d…下端部
3…シートクッション
3d…前端部
3e…ブラケット
4…サイドフレーム
4a1〜4c1…水平部
4a2〜4c2…立設部
5…ヒンジ装置
6…リクライニング装置
7…スライドレール
8…前補強部材
9…後補強部材
15…床面





【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面側に前端部が回転可能に取付けられるシートクッションと、前記床面側に下端部が回転可能に取付けられるシートバックを有するダブルフォールド式乗物用シートであって、
前記シートクッションの側面に沿って前後方向に延出しかつ前記床面側に設けられる左右のサイドフレームを有し、該サイドフレームの後部に前記シートバックの前記下端部が回転可能に取付けられ、
前記左右のサイドフレームは、前記シートクッションよりも側方において立設する立設部を有し、該立設部は、前記シートクッションが前方に回転しかつ前記シートバックが前方に倒れたダブルフォールド状態における前記シートバックよりも側方に位置することを特徴とするダブルフォールド式乗物用シート。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate