説明

ダンパ装置

【課題】ダンパ装置において、スプリングを支持するシート部の摩耗を抑制して長寿命化を可能とすると共に、スプリングを直線状に保持することで長寿命化を可能とする。
【解決手段】相対回転可能なハブプレート101とガイドプレート107,108との間にスプリング114a,114b,114c,114dを介装して構成し、スプリング114a,114b,114c,114dの一端部をハブプレート101に支持する第1シート部116a,116b,116c,116dと、他端部をガイドプレート107,108に支持する第2シート部118a,118b,118c,118dを、スプリング114a,114b,114c,114dから受けるトルクに応じて第1支持面115a,115b,115c,115dと第2支持面117a,117b,117c,117dとが平行となるように弾性変形可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリングを介して互いに相対回転する第1回転部材及び第2回転部材を備え、例えば、エンジンの回転変動を吸収するスプリング式のダンパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なハイブリッド車両では、運転状態に応じてエンジン及び電気モータの駆動と停止を制御することにより、電気モータのトルクだけで車輪を駆動したり、エンジンと電気モータの両者のトルクにより車輪を駆動するようにしており、電気モータはバッテリに蓄積された電力により駆動することができ、このバッテリのエネルギが低下したときには、エンジンを駆動してバッテリの充電を行うようにしている。
【0003】
このハイブリッド車両の駆動装置は、エンジンと、ダンパ装置を介して伝達されるエンジン出力を第1モータジェネレータ(発電機)及び駆動輪側に機械的に分配する遊星歯車機構と、駆動輪側に回転力を加える第2モータジェネレータ(電気モータ)とを有している。そして、このエンジン、ダンパ装置、遊星歯車機構、第1モータジェネレータが同一軸線上において軸方向に並んで配設されていると共に、第2モータジェネレータはダンパ装置及び遊星歯車機構の外周側に同心に配設されている。
【0004】
上述したハイブリッド車両の駆動装置におけるダンパ装置は、エンジンの回転変動を吸収するものであり、スプリングを介して互いに相対回転する2つの回転部材から構成されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1に記載されたダンパーディスクでは、捩じり方向のトルク変動を吸収するためのトーションスプリングと、リテーニングプレート及びクラッチプレートと、スプラインハブと、一対のシート部材を有し、リテーニングプレート及びクラッチプレートとスプラインハブとの間に一対のシート部材を介してトーションスプリングが配置されており、このシート部材を、トーションスプリングの両端面が平行になり得るよう、窓孔の回転方向両端部に回動可能に支持している。
【0006】
【特許文献1】実開平05−045257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ダンパ装置では、スプリングがリテーニングプレート、クラッチプレート、スプラインハブの回転方向に沿って配設されており、エンジンの回転変動を適正に吸収するためには、スプリングが平行に伸縮することが望ましい。そのため、上述した従来のダンパーディスクでは、トーションスプリングが支持されるシート部材を、トーションスプリングの両端面が平行になるように窓孔に回動可能に支持している。
【0008】
ところが、トーションスプリングの伸縮時にシート部材が窓孔に対して摺動することから、ここに摩耗が発生してしまう。この摩耗を防止するために潤滑油を供給することが考えられるが、この場合、コストアップを生じてしまう。また、トーションスプリングが平行に伸縮するためには、シート部材が窓孔に対して円滑に回動しなければならず、高い製造精度が要求され、この点でもコストアップが生じてしまう。更に、シート部材を窓孔に対して移動可能に構成にすると、トーションスプリングが大きな伸縮量を必要とする場合、シート部材の大きな回転スペースが必要となり、装置が大型化してしまう。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するものであって、スプリングを支持するシート部の摩耗を抑制して長寿命化を可能とすると共に、スプリングを直線状に保持することで長寿命化を可能とするダンパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決してその目的を達成するために、本発明のダンパ装置は、同心の回転軸心を有し、スプリングを介して互いに相対回転する第1回転部材及び第2回転部材を備えるダンパ装置において、前記スプリングは、一端部が第1シート部を介して前記第1回転部材に支持され、他端部が第2シート部を介して前記第2回転部材に支持され、前記第1シート部及び前記第2シート部は、前記スプリングから受けるトルクに応じて第1支持面と第2支持面が平行となるように弾性変形可能である、ことを特徴とするものである。
【0011】
本発明のダンパ装置では、前記第1回転部材に第1窓部が形成され、前記第2回転部材に第2窓部が形成され、前記第1シート部が前記第1窓部の端面に支持され、前記第2シート部が前記第2窓部の端面に支持され、前記スプリングは、前記第1窓部及び前記第2窓部内に配置され、各端部が前記第1支持面及び前記第2支持面に支持されることを特徴としている。
【0012】
本発明のダンパ装置では、前記第1シート部が支持される前記第1窓部の端面は、前記第1回転部材の径方向に沿って形成され、前記第2シート部が支持される前記第2窓部の端面は、前記第2回転部材の径方向に沿って形成され、前記第1シート部及び前記第2シート部は、その厚さが前記各回転部材の外周側ほど厚くなるように形成されることを特徴としている。
【0013】
本発明のダンパ装置では、前記各回転部材の軸心から前記スプリングにおける前記各回転部材の外周側までの半径距離をR1、前記各回転部材の軸心から前記スプリングにおける前記各回転部材の軸心側までの半径距離をR2、前記スプリングの直線方向弾性係数をKcとすると、前記第1シート部及び前記第2シート部における前記各回転部材の外周側の剛性Ksrが下記数式、
Ksr=(R2×Kc)(R1−R2)
により設定されることを特徴としている。
【0014】
本発明のダンパ装置では、前記第1シート部及び前記第2シート部は、合成樹脂により製造されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のダンパ装置によれば、スプリングの一端部を第1シート部を介して第1回転部材に支持し、他端部を第2シート部を介して第2回転部材に支持し、第1シート部及び第2シート部を、スプリングから受けるトルクに応じて第1支持面と第2支持面が平行となるように弾性変形可能としたので、スプリングの伸縮に応じて、各シート部は弾性変形するだけで摺動することはなく、このシート部の摩耗を抑制して長寿命化を可能とすることができ、また、スプリングは、伸縮しても常時直線状に保持されることで長寿命化を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明に係るダンパ装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例に係るダンパ装置の正面図、図2は、本実施例のダンパ装置を表す図1のII−II断面図、図3は、本実施例のダンパ装置の要部概略図、図4は、本実施例のダンパ装置の作動を表す要部概略図、図5は、本実施例のダンパ装置が適用されたハイブリッド車両の駆動装置を表す概略構成図である。
【0018】
本実施例のダンパ装置が適用された車両は、ハイブリッド車両であって、動力源として、エンジンと電気モータと発電機が搭載されており、このエンジンと電気モータと発電機は、動力分配統合機構により接続され、エンジンの出力を発電機と駆動輪とに振り分けると共に、電気モータからの出力を駆動輪に伝達したり、減速機を介してドライブシャフトから駆動輪に伝達される駆動力に関する変速機として機能する。
【0019】
即ち、図5に示すように、本実施例のハイブリッド車両11は、エンジン12と、エンジン12の出力軸としてのクランクシャフト13の回転変動を吸収するダンパ装置14と、クランクシャフト13にこのダンパ装置14を介して接続された3軸式の動力分配統合機構15と、動力分配統合機構15に接続された発電可能なモータ(MG1)16と、動力分配統合機構15に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸17に取り付けられた減速ギヤ18と、この減速ギヤ18に接続されたモータ(MG2)19と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(以下、ハイブリッドECUという)20とを有している。
【0020】
エンジン12は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、このエンジン12の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)21により燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御などの運転制御指令を受けている。エンジンECU21は、ハイブリッドECU20と通信可能であり、ハイブリッドECU20からの制御信号によりエンジン12を運転制御すると共に必要に応じてエンジン12の運転状態に関するデータをハイブリッドECU20に出力する。
【0021】
動力分配統合機構15は、外歯歯車のサンギヤ22と、このサンギヤ22と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ23と、サンギヤ22に噛合すると共にリングギヤ23に噛合する複数のピニオンギヤ24と、複数のピニオンギヤ24を自転、且つ、公転自在に保持するキャリア25とを有し、サンギヤ22とリングギヤ23とキャリア25とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構15にて、キャリア25にはエンジン12のクランクシャフト13が、サンギヤ22にはモータ16が、リングギヤ23にはリングギヤ軸17を介して減速ギヤ18がそれぞれ連結されている。そして、モータ16が発電機として機能するときにはキャリア25から入力されるエンジン12からの動力をサンギヤ22側とリングギヤ23側にそのギヤ比に応じて分配し、モータ16が電動機として機能するときにはキャリア25から入力されるエンジン12からの動力とサンギヤ22から入力されるモータ16からの動力を統合してリングギヤ23側に出力する。リングギヤ23に出力された動力は、リングギヤ軸17からギヤ機構26及びデファレンシャルギヤ27を介して、最終的には車両の駆動輪28に出力される。
【0022】
モータ16及びモータ19は、いずれも発電機として駆動することができると共に、電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ29,30を介してバッテリ31と電力のやりとりを行う。インバータ29,30とバッテリ31とを接続する電力ライン32は、各インバータ29,30が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータ16,19いずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。従って、バッテリ31は、モータ16,19のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータ16,19により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ31は充放電されない。
【0023】
モータ16,19は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)33により駆動制御されている。モータECU33には、モータ16,19を駆動制御するために必要な信号、例えば、モータ16,19の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ34,35からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータ16,19に印加される相電流などが入力されており、モータECU33からは、インバータ29,30へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU33は、ハイブリッドECU20と通信しており、ハイブリッドECU20からの制御信号によってモータ16,19を駆動制御すると共に必要に応じてモータ16,19の運転状態に関するデータをハイブリッドECU20に出力する。
【0024】
バッテリ31は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)36によって管理されている。バッテリECU36には、バッテリ31を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ31の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ31の出力端子に接続された電力ライン32に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ31に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度などが入力されており、必要に応じてバッテリ31の状態に関するデータを通信によりハイブリッドECU20に出力する。なお、バッテリECU36では、バッテリ31を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
【0025】
また、車両には、駆動輪28に対応して油圧ブレーキ装置37が設けられている。この油圧ブレーキ装置37には、油圧制御装置38から調圧された制動油圧が供給されるようになっており、この油圧制御装置38は、ブレーキ用電子制御ユニット(以下、ブレーキECUという)39によって管理されている。ブレーキECU39には、油圧制御装置38を管理するのに必要な後述する信号が入力され。即ち、ブレーキECU39は、ハイブリッドECU20と通信しており、ハイブリッドECU20からの制御信号によって油圧制御装置38を駆動制御すると共に必要に応じて油圧制御装置38の運転状態に関するデータをハイブリッドECU20に出力する。
【0026】
ハイブリッドECU20は、CPU41を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU41の他に処理プログラムを記憶するROM42と、データを一時的に記憶するRAM43と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを有している。ハイブリッドECU20には、イグニッションスイッチ44からのイグニッション信号、シフトレバー45の操作位置を検出するシフトポジションセンサ46からのシフトポジション信号、アクセルペダル47の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ48からのアクセル開度、ブレーキペダル49の踏み込み量を検出するブレーキペダルストロークセンサ50からのペダルストローク、車速センサ51からの車速V、ステアリングホイール近傍に設けられたオートクルーズスイッチ52からの定速走行用のセット信号やキャンセル信号などが入力ポートを介して入力されている。
【0027】
また、ハイブリッドECU20は、前述したように、エンジンECU21、モータECU33、バッテリECU36、ブレーキECU39と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU21、モータECU33、バッテリECU36、ブレーキECU39と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0028】
このように構成された本実施例のハイブリッド車両11は、運転者によるアクセルペダル47の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸17に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求駆動力がリングギヤ軸17に出力されるように、エンジン12とモータ16とモータ19が駆動制御される。
【0029】
エンジン12とモータ16とモータ19の駆動制御としては、要求駆動力に見合う駆動力がエンジン12から出力されるようにエンジン12を駆動制御すると共に、エンジン12から出力される駆動力の全てが動力分配統合機構15とモータ16とモータ19とによってトルク変換されてリングギヤ軸17に出力されるように、モータ16及びモータ19を駆動制御するトルク変換運転モード、要求駆動力とバッテリ31の充放電に必要な電力との和に見合う駆動力がエンジン12から出力されるようにエンジン12を駆動制御すると共に、バッテリ31の充放電を伴ってエンジン12から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構15とモータ16とモータ19とによるトルク変換を伴って要求駆動力がリングギヤ軸17に出力されるようモータ16及びモータ19を駆動制御する充放電運転モード、エンジン12の駆動を停止してモータ19からの要求駆動力に見合う駆動力をリングギヤ軸17に出力するよう駆動制御するモータ運転モードなどがある。
【0030】
また、油圧制御装置38による油圧ブレーキ装置37の作動制御としては、要求制動力に見合う制動力が油圧ブレーキ装置37から出力されるように油圧制御装置38を作動制御する。即ち、ブレーキペダル49のペダルストロークに応じてドライバの要求制動力を検出し、この要求制動力に対してモータ19による回生ブレーキを実行し、要求制動力から回生制動力を減算した要求油圧制動力に基づいて油圧制御装置38を制御し、油圧ブレーキ装置37を作動する。
【0031】
ここで、上述したハイブリッド車両の駆動装置におけるダンパ装置14について詳細に説明する。
【0032】
本実施例のダンパ装置14において、図1及び図2に示すように、第2回転部材を構成するハブプレート101は、円盤形状をなし、中心部のハブ部102にスプライン孔103が形成されると共に、ハブ部102の外周にフランジ部104が一体に形成されている。そして、ハブプレート101は、このフランジ部104に周方向に均等間隔で4つの第1窓部105a,105b,105c,105dが周方向に沿って形成されると共に、外周部に切欠部(図示略)が形成されている。なお、ハブプレート101のスプライン孔103には、出力軸106のスプライン部106aが嵌合し、この出力軸106は、図5に示す動力分配統合機構15のキャリア25に連結されている。
【0033】
第1回転部材を構成する一対のガイドプレート107,108は、円盤形状をなし、中心部に嵌合孔109,110が形成されている。このガイドプレート107,108は、ハブプレート101のハブ部102に、各嵌合孔109,110がその両側から嵌合し、ガイドプレート107,108が連結ピン111により一体に連結されている。なお、この連結ピン111がハブプレート101の切欠部に遊嵌することで、ハブプレート101と各ガイドプレート107,108との所定角度以上の回動が規制されている。
【0034】
また、ガイドプレート107,108には、ハブプレート101の第1窓部105a,105b,105c,105dに対応して、周方向に均等間隔で4つの第2窓部112a,112b,112c,112d,113a,113b,113c,113dが周方向に沿ってそれぞれ形成されている。なお、このガイドプレート107の第2窓部112a,112b,112c,112dと、ガイドプレート108の第2窓部113a,113b,113c,113dは、同形状をなしている。
【0035】
ハブプレート101の第1窓部105a,105b,105c,105dと、各ガイドプレート107,108の第2窓部112a,112b,112c,112d,113a,113b,113c,113dは、その周方向における位置がほぼ同位置となっており、この第1窓部105a,105b,105c,105d及び第2窓部112a,112b,112c,112d,113a,113b,113c,113d内にスプリング(圧縮コイルスプリング)114a,114b,114c,114dが配設されている。即ち、ハブプレート101の第1窓部105a,105b,105c,105dにおける周方向の一方側の端面に第1支持面115a,115b,115c,115dを有する第1シート部116a,116b,116c,116dが装着されている。また、ガイドプレート107,108の第2窓部112a,112b,112c,112d,113a,113b,113c,113dにおける周方向の他方側の端面に第2支持面117a,117b,117c,117dを有する第2シート部118a,118b,118c,118dが装着されている。各スプリング113a,113b,113c,113dは、一端部が第1支持面115a,115b,115c,115dに着座し、他端部が第2支持面117a,117b,117c,117dに着座している。
【0036】
従って、ハブプレート101とガイドプレート107,108とは、スプリング114a,114b,114c,114dの付勢力により逆方向に付勢支持されており、連結ピン111と切欠部により、ハブプレート101とガイドプレート107,108は、所定の相対位置に位置決めされている。
【0037】
ハブプレート101のフランジ部104とガイドプレート107,108との間には、スラスト部材119,120が挟持された状態で介装されている。このスラスト部材119,120は、ハブプレート101またはガイドプレート107,108との摺動により所定のヒステリシストルクを生じさせるものである。
【0038】
フライホイール121は、円盤形状をなし、中心部にクランクシャフト13の端部が嵌合し、複数の締結ボルト122により連結されている。ガイドプレート107,108は、外周部が一対のリング形状をなす連結部材123,124により摩擦材(トルクリミッタ)125を介して挟持されており、この連結部材123,124は外周部が密着した状態で連結ピン126により一体に連結されると共に、複数の連結ボルト127によりフライホイール121の外周部に固定されている。
【0039】
このように構成されることから、ハブプレート101とガイドプレート107,108とフライホイール121は、同心の回転軸心を有することとなり、ハブプレート101とガイドプレート107,108は、スプリング114a,114b,114c,114dを介して互いに相対回転するようになっている。
【0040】
そして、本実施例にて、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dは、スプリング114a,114b,114c,114dから受けるトルクに応じて、第1支持面115a,115b,115c,115dと第2支持面117a,117b,117c,117dが平行となるように弾性変形可能となっている。
【0041】
この場合、図1及び図3に示すように、第1シート部116a,116b,116c,116dが支持される第1窓部105a,105b,105c,105dの端面は、ハブプレート101の径方向に沿って形成されている。また、第2シート部118a,118b,118c,118dが支持される第2窓部112a,112b,112c,112d,113a,113b,113c,113dの端面は、ガイドプレート107,108の径方向に沿って形成されている。そして、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dは、その厚さがハブプレート101及びガイドプレート107,108の外周側ほど厚くなるように、側面視が直角三角形に形成されている。
【0042】
具体的に、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dは、合成樹脂により製造される。第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dがハブプレート101及びガイドプレート107,108に装着され、両者の間にスプリング114a,114b,114c,114dが介装された状態で、第1支持面115a,115b,115c,115dと第2支持面117a,117b,117c,117dは、略平行となっている。
【0043】
この場合、図3に詳細に示すように、ハブプレート101及びガイドプレート107,108の軸心Oから、スプリング114a,114b,114c,114dにおけるハブプレート101及びガイドプレート107,108の外周側までの半径距離をR1、ハブプレート101及びガイドプレート107,108の軸心Oからスプリング114a,114b,114c,114dにおけるハブプレート101及びガイドプレート107,108の軸心側までの半径距離をR2、スプリング114a,114b,114c,114dの直線方向弾性係数をKcとすると、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dにおけるハブプレート101及びガイドプレート107,108の外周側の剛性Ksrは、下記数式により設定される。
【0044】
Ksr=(R2×Kc)(R1−R2)
【0045】
従って、図1及び図2に示すように、クランクシャフト13が回転すると、そのトルクは、フライホイール121を介してガイドプレート107,108に伝達され、この伝達されたトルクは、スプリング114a,114b,114c,114dを介してハブプレート101に伝達され、出力軸106に出力される。
【0046】
ガイドプレート107,108にトルクが伝達されていないとき、図3に示すように、ハブプレート101の第1窓部105a(105b,105c,105d)の端面と、ガイドプレート107,108の第2窓部112a,113a(112b,112c,112d,113b,113c,113d)の端面との角度は、θとなっている。このとき、第1シート部116a(116b,116c,116d)の第1支持面115a(115b,115c,115d)と、第2シート部118a(118b,118c,118d)の第2支持面117a(117b,117c,117d)は、略平行である。
【0047】
そして、トルクが、ガイドプレート107,108からスプリング114a,114b,114c,114dを介してハブプレート101に伝達されるとき、図4に示すように、この伝達トルクにより、スプリング114a,114b,114c,114dが収縮し、ハブプレート101の第1窓部105a(105b,105c,105d)の端面と、ガイドプレート107,108の第2窓部112a,113a(112b,112c,112d,113b,113c,113d)の端面との角度がθより小さいθとなる。
【0048】
すると、スプリング114a,114b,114c,114dの付勢力が増加することから、第1シート部116a(116b,116c,116d)と第2シート部118a(118b,118c,118d)がつぶされるように弾性変形する。即ち、第1シート部116a(116b,116c,116d)と第2シート部118a(118b,118c,118d)は、ハブプレート101及びガイドプレート107,108の外周側ほど厚くなるような三角形であることから、外周側ほど弾性変形しやすいものとなっている。そのため、第1シート部116a(116b,116c,116d)と第2シート部118a(118b,118c,118d)が変形しても、第1支持面115a(115b,115c,115d)と、第2支持面117a(117b,117c,117d)は、略平行な状態に維持される。
【0049】
その結果、スプリング114a,114b,114c,114dは、その伸縮状態、つまり、ストローク量に関係なく、常時、直線状に保持されることとなり、伸縮時に局部的な応力が作用することはなく、長寿命化が可能となる。また、スプリング114a,114b,114c,114dの伸縮に応じて、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dが摺動することはなく、摩耗が抑制される。
【0050】
このように本実施例のダンパ装置にあっては、相対回転可能なハブプレート101とガイドプレート107,108との間にスプリング114a,114b,114c,114dを介装して構成し、スプリング114a,114b,114c,114dの一端部を第1シート部116a,116b,116c,116dを介してハブプレート101に支持し、他端部を第2シート部118a,118b,118c,118dを介してガイドプレート107,108に支持し、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dを、スプリング114a,114b,114c,114dから受けるトルクに応じて第1支持面115a,115b,115c,115dと第2支持面117a,117b,117c,117dとが平行となるように弾性変形可能としている。
【0051】
従って、スプリング114a,114b,114c,114dの伸縮に応じて、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dは弾性変形するだけで摺動することはなく、この第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dの摩耗を抑制して長寿命化を可能とすることができ、また、スプリング114a,114b,114c,114dは、伸縮しても常時直線状に保持されることで長寿命化を可能とすることができる。
【0052】
また、本実施例のダンパ装置では、ハブプレート101に第1窓部105a,105b,105c,105dを成し、ガイドプレート107,108に第2窓部112a,112b,112c,112d,113a,113b,113c,113dを形成し、第1シート部116a,116b,116c,116dを第1窓部105a,105b,105c,105dの端面に支持し、第2シート部118a,118b,118c,118dを第2窓部112a,112b,112c,112d,113a,113b,113c,113dの端面に支持し、スプリング114a,114b,114c,114dを第1窓部105a,105b,105c,105d及び第2窓部112a,112b,112c,112d,113a,113b,113c,113d内に配置し、各端部を第1支持面115a,115b,115c,115dと第2支持面117a,117b,117c,117dに支持している。従って、装置のコンパクト化を可能とすることができる。
【0053】
また、本実施例のダンパ装置では、第1シート部116a,116b,116c,116dが支持される第1窓部105a,105b,105c,105dの端面を、ハブプレート101の径方向に沿って形成し、第2シート部118a,118b,118c,118dが支持される第2窓部112a,112b,112c,112d,113a,113b,113c,113dの端面を、ガイドプレート107,108の径方向に沿って形成し、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dの厚さが外周側ほど厚くなるように形成している。従って、簡単な構成で、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dの適正な弾性変形量を確保し、低コスト化を可能とすることができる。
【0054】
また、本実施例のダンパ装置では、ハブプレート101及びガイドプレート107,108の軸心Oから、スプリング114a,114b,114c,114dにおけるハブプレート101及びガイドプレート107,108の外周側までの半径距離をR1、ハブプレート101及びガイドプレート107,108の軸心Oからスプリング114a,114b,114c,114dにおけるハブプレート101及びガイドプレート107,108の軸心側までの半径距離をR2、スプリング114a,114b,114c,114dの直線方向弾性係数をKcとすると、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dにおけるハブプレート101及びガイドプレート107,108の外周側の剛性Ksrを下記数式により設定している。
Ksr=(R2×Kc)(R1−R2)
従って、容易に第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dの形状や材料を選定することができる。
【0055】
また、本実施例のダンパ装置では、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dを合成樹脂により製造している。従って、安価な材料で適正な弾性変形力を確保することができる。
【0056】
なお、上述した実施例では、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dを側面視が直角三角形になるように形成したが、この形状に限定されるものではない。即ち、第1シート部116a,116b,116c,116d及び第2シート部118a,118b,118c,118dは、好ましくは、その厚さがハブプレート101及びガイドプレート107,108の外周側ほど厚くなるように形成するとよい。
【0057】
また、上述した実施例では、本発明のダンパ装置をハイブリッド車両の駆動装置に適用して説明したが、トルクコンバータのクラッチ装置に適用しても有用である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明に係るダンパ装置は、スプリングから受けるトルクに応じてシート部の支持面が平行となるように弾性変形可能とすることで、スプリングを支持するシート部の摩耗を抑制して長寿命化を可能とすると共に、スプリングを直線状に保持することで長寿命化を可能とするものであり、いずれのダンパ装置に適用して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例に係るダンパ装置の正面図である。
【図2】本実施例のダンパ装置を表す図1のII−II断面図である。
【図3】本実施例のダンパ装置の要部概略図である。
【図4】本実施例のダンパ装置の作動を表す要部概略図である。
【図5】本実施例のダンパ装置が適用されたハイブリッド車両の駆動装置を表す概略構成図である。
【符号の説明】
【0060】
101 ハブプレート(第2回転部材)
105a,105b,105c,105d 第1窓部
107,108 ガイドプレート(第1回転部材)
112a,112b,112c,112d,113a,113b,113c,113d 第2窓部
114a,114b,114c,114d スプリング
115a,115b,115c,115d 第1支持面
116a,116b,116c,116d 第1シート部
117a,117b,117c,117d 第2支持面
118a,118b,118c,118d 第2シート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心の回転軸心を有し、スプリングを介して互いに相対回転する第1回転部材及び第2回転部材を備えるダンパ装置において、
前記スプリングは、一端部が第1シート部を介して前記第1回転部材に支持され、他端部が第2シート部を介して前記第2回転部材に支持され、
前記第1シート部及び前記第2シート部は、前記スプリングから受けるトルクに応じて第1支持面と第2支持面が平行となるように弾性変形可能である、
ことを特徴とするダンパ装置。
【請求項2】
前記第1回転部材に第1窓部が形成され、前記第2回転部材に第2窓部が形成され、前記第1シート部が前記第1窓部の端面に支持され、前記第2シート部が前記第2窓部の端面に支持され、前記スプリングは、前記第1窓部及び前記第2窓部内に配置され、各端部が前記第1支持面及び前記第2支持面に支持されることを特徴とする請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記第1シート部が支持される前記第1窓部の端面は、前記第1回転部材の径方向に沿って形成され、前記第2シート部が支持される前記第2窓部の端面は、前記第2回転部材の径方向に沿って形成され、前記第1シート部及び前記第2シート部は、その厚さが前記各回転部材の外周側ほど厚くなるように形成されることを特徴とする請求項2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記各回転部材の軸心から前記スプリングにおける前記各回転部材の外周側までの半径距離をR1、前記各回転部材の軸心から前記スプリングにおける前記各回転部材の軸心側までの半径距離をR2、前記スプリングの直線方向弾性係数をKcとすると、前記第1シート部及び前記第2シート部における前記各回転部材の外周側の剛性Ksrが下記数式、
Ksr=(R2×Kc)(R1−R2)
により設定されることを特徴とする請求項3に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記第1シート部及び前記第2シート部は、合成樹脂により製造されることを特徴とする請求項4に記載のダンパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−281563(P2009−281563A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136751(P2008−136751)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】