説明

チェックポイントキナーゼの阻害剤

本発明は、CHK1活性を阻害する縮合ピラゾールを含む化合物を提供する。本発明は、このような阻害的化合物を含む組成物及び癌の治療を必要とする患者に前記化合物を投与することによってCHK1活性を阻害する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細胞周期のチェックポイントは、細胞周期の遷移の順序及びタイミングを調節する制御経路である。細胞周期のチェックポイントは、DNA複製及び染色体分離などの重要な現象が高い精度で完結されることを保証する。これらの細胞周期のチェックポイントの制御は、腫瘍細胞が多くの化学療法及び放射線照射に応答する様式の重要な決定要因である。多くの有効な癌療法は、DNAに損傷を引き起こすことによって機能するが、これらの因子に対する耐性は、なお、癌の治療における重大な制約となっている。薬物耐性の幾つかの機序のうち、重要な機序は、チェックポイント経路の重大な活性化の制御を通じて、細胞周期の進行を抑制することに起因する。これは、修復のための時間を与えるために細胞周期を停止させ、修復を促進するための遺伝子の転写を誘導することにより、即座の細胞死を回避する。例えば、G2チェックポイントでのチェックポイントの停止を無効にすることによって、DNA損傷によって誘導された腫瘍の細胞死を相乗的に増強し、耐性を回避することが可能であり得る。
【0002】
ヒトCHK1は、cdc2/サイクリンBの活性化を抑制し、有糸分裂を開始することに関与し得るホスファターゼcdc25のセリン216をリン酸化することによって細胞周期の停止を制御する上で役割を果たす。従って、CHK1の阻害は、DNA修復が完了する前に有糸分裂を開始し、これにより腫瘍の細胞死を引き起こすことによってDNA損傷因子を増強するはずである。
【0003】
CHK1(Chek1とも称される。)の阻害剤である新規化合物を提供することが、本発明の目的である。
【0004】
CHK1の阻害剤である新規化合物を含む医薬組成物を提供することも、本発明の目的である。
【0005】
CHK1活性のこのような阻害剤を投与することを含む、癌を治療するための方法を提供することも、本発明の目的である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、CHK1活性を阻害する縮合ピラゾールを含む化合物を提供する。本発明は、このような阻害的化合物を含む組成物、及び癌の治療を必要とする患者に、前記化合物を投与することによってCHK1活性を阻害する方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の化合物は、CHK1の活性の阻害において有用である。本発明の第一の実施形態において、CHK1活性の阻害剤は、式A:
【0008】
【化5】

(aは0又は1であり;bは0又は1であり;mは0、1又は2であり;nは0、1、2、3又は4であり;
環Zは、アリール及びヘテロアリールから選択され;
は、H、オキソ、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、(C=O)−C10アルケニル、(C=O)−C10アルキニル、COH、ハロ、OH、O−Cペルフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)−Cシクロアルキル、S(O)NR、SH、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、Rから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
は、H、オキソ、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、(C=O)−C10アルケニル、(C=O)−C10アルキニル、COH、ハロ、OH、O−Cペルフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)−Cシクロアルキル、S(O)NR、SH、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、Rから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
は、オキソ、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、(C=O)−C10アルケニル、(C=O)−C10アルキニル、COH、ハロ、OH、O−Cペルフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)−Cアシクロアルキル、S(O)NR、SH、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、Rから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
は、H、オキソ、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、(C=O)−C10アルケニル、(C=O)−C10アルキニル、COH、ハロ、OH、O−Cペルフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)−Cシクロアルキル、S(O)NR、SH、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、Rから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
’’は、H、オキソ、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、(C=O)−C10アルケニル、(C=O)−C10アルキニル、COH、ハロ、OH、O−Cペルフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)−Cシクロアルキル、S(O)NR、SH、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、Rから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
は、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、(C=O)ヘテロシクリル、COH、ハロ、OH、CNO−Cペルフルオロアルキル、O(C=O)NR、オキソ、CHO、(N=O)R、S(O)NR、SH、S(O)−(C−C10)アルキル又は(C=O)−Cシクロアルキルであり、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル及びシクロアルキルは、R6aから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
6aは、(C=O)(C−C10)アルキル、O(C−C)ペルフルオロアルキル、(C−C)アルキレン−S(O)、オキソ、OH、ハロ、CN、(C−C10)アルケニル、(C−C10)アルキニル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルキレン−アリール、(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、(C−C)アルキレン−N(R、C(O)R、(C−C)アルキレン−CO、C(O)H及び(C−C)アルキレン−COHから選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロシクリルは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)C−Cアルキル、オキソ及びN(Rから選択される最大3個の置換基で場合により置換されており;
及びRは、H、(C=O)O−C10アルキル、(C=O)O−Cシクロアルキル、(C=O)Oアリール、(C=O)Oヘテロシクリル、C−C10アルキル、アリール、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、ヘテロシクリル、C−Cシクロアルキル、SO及び(C=O)NRから独立に選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル及びアルキニルは、R6aから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており、又はR及びRは、これらが結合している窒素とともに、各環中に3−7員を有し及び前記窒素の他に、N、O及びSから選択される1個若しくは2個の追加の複素原子を場合により含有する単環式若しくは二環式複素環を形成することが可能であり、前記単環式若しくは二環式複素環は、R6aから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
は、H、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、アリール又はヘテロシクリルであり;並びに
は、独立に、H、(C−C)アルキル、アリール、ヘテロシクリル、(C−C)シクロアルキル、(C=O)OC−Cアルキル、(C=O)C−Cアルキル又はS(O)である。)
又は医薬として許容されるその塩若しくは立体異性体によって表される。
【0009】
本発明の第二の実施形態において、CHK1活性の阻害剤は、式B:
【0010】
【化6】

(他の全ての置換基及び変数は、第一の実施形態において定義されているとおりである。)
又は医薬として許容されるその塩若しくは立体異性体によって表される。
【0011】
本発明の第三の実施形態において、CHK1活性の阻害剤は、式C:
【0012】
【化7】

(他の全ての置換基及び変数は、第一の実施形態において定義されているとおりである。)
又は医薬として許容されるその塩若しくは立体異性体によって表される。
【0013】
本発明の第四の実施形態において、CHK1活性の阻害剤は、式D:
【0014】
【化8】

(他の全ての置換基及び変数は、第一の実施形態において定義されているとおりである。)
又は医薬として許容されるその塩若しくは立体異性体によって表される。
【0015】
本発明の第五の実施形態において、CHK1活性の阻害剤は、Rが、プロピル−NRから選択され;前記プロピルは、1つ又はそれ以上のRで場合により置換されており;
及びRが、H、(C=O)O−C10アルキル、(C=O)O−Cシクロアルキル、(C=O)Oアリール、(C=O)Oヘテロシクリル、C−C10アルキル、アリール、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、ヘテロシクリル、C−Cシクロアルキル、SO及び(C=O)NRから独立に選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル及びアルキニルは、R6aから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており、又はR及びRが、これらが結合している窒素とともに、各環中に3−7員を有し及び前記窒素の他に、N、O及びSから選択される1個若しくは2個の追加の複素原子を場合により含有する単環式若しくは二環式複素環を形成することが可能であり、前記単環式若しくは二環式複素環が、R6aから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;並びに
他の全ての置換基及び変数が、第一の実施形態において定義されているとおりである、式D又は医薬として許容されるその塩若しくは立体異性体によって表される。
【0016】
本発明の具体的化合物は、
5−(3−アミノプロピル)−3−メチル−2,5−ジヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−8);又は医薬として許容されるその塩若しくは立体異性体である。
【0017】
本発明のTFA塩は、
5−(3−アミノプロピル)−3−メチル−2,5−ジヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−8);又はその立体異性体である。
【0018】
本発明の化合物は、(「E.L.Eliel and S.H.Wilen,Stereochemistry of Carbon Compounds,John Wiley&Sons,New York,1994,pages 1119−1190」に記載されているように)不斉中心、キラル軸及びキラル平面を有することがあり、ラセミ体、ラセミ混合物及びそれぞれのジアステレオマーとして存在する場合があり、光学異性体を含む全ての可能な異性体及びこれらの混合物が、本発明に含まれる。さらに、本明細書に開示されている化合物は、互変異性体として存在することがあり、互変異性構造が一つだけ図示されている場合でも、本発明の範囲には、両方の互変異性形態が包含されるものとする。
【0019】
任意の変数(例えば、R、R、R6aなど)が任意の構成要素中に2回以上現れる場合、各出現時におけるその定義は、他のあらゆる出現と独立である。また、置換基及び変数の組み合わせは、かかる組み合わせが安定な化合物を与える場合にのみ許容される。置換基から環系に引かれた線は、表記の結合が置換可能な環原子の何れに付着してもよいことを表している。環系が二環式である場合、前記結合は、二環式部分の各環上の適切な原子の何れかに結合されるものとする。
【0020】
化学的に安定で、容易に利用可能な出発物質から、本分野において公知の技術及び以下に示されている方法によって、容易に合成できる化合物を提供するために、本発明の化合物上の置換基及び置換パターンは当業者によって選択され得ることが理解される。置換基自体が2個以上の基で置換されている場合、これらの複数の基は、安定な構造をもたらす限り、同一の炭素又は別異の炭素上に存在し得るものと理解される。「1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換された」という用語は、「少なくとも1つの置換基で場合により置換された」という用語と等価であると解釈すべきであり、このようなケースにおいて、好ましい実施形態は、0から3個の置換基を有する。
【0021】
1つ又はそれ以上のSi原子は、化学的に安定で、容易に利用可能な出発物質から、本分野において公知の技術によって、容易に合成できる化合物を提供するために、本発明の化合物中に当業者によって取り込まれ得ることが理解される。
【0022】
本明細書において使用される「アルキル」は、炭素原子の指定された数を有する、分枝及び直鎖の飽和脂肪族炭化水素基の両方を含むものとする。例えば、「C−C10アルキル」におけるような、C−C10は、直鎖又は分枝配置で、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素を有する基を含むものと定義される。例えば、「C−C10アルキル」は、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどを含む。「シクロアルキル」という用語は、炭素原子の指定された数を有する単環式飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、「シクロアルキル」には、シクロプロピル、メチル−シクロプロピル、2,2−ジメチル−シクロブチル、2−エチル−シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれる。
「アルコキシ」は、酸素架橋を通じて結合された、炭素原子の表記の数を有する環状又は非環状アルキル基の何れかを表す。従って、「アルコキシ」は、上記アルキル及びシクロアルキルの定義を包含する。
【0023】
炭素原子の数が指定されていない場合、「アルケニル」という用語は、2から10個の炭素原子と、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する、直鎖、分枝又は環状の非芳香族炭化水素基を表す。好ましくは、1個の炭素−炭素二重結合が存在し、最大4個の非芳香族炭素−炭素二重結合が存在し得る。従って、「C−Cアルケニル」とは、2から6個の炭素原子を有するアルケニル基を意味する。アルケニル基には、エテニル、プロペニル、ブテニル、2−メチルブテニル及びシクロヘキセニルが含まれる。前記アルケニル基の直鎖、分枝又は環状部分は、二重結合を含有することができ、置換されたアルケニル基が表記されている場合には、置換されることができる。
【0024】
「アルキニル」という用語は、2から10個の炭素原子と、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する、直鎖、分枝又は環状の炭化水素基を表す。最大3個の炭素−炭素三重結合が存在し得る。従って、「C−Cアキキニル」とは、2から6個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する。アルキニル基には、エチニル、プロピニル、ブチニル、3−メチルブチニルなどが含まれる。アルキニル基の直鎖、分枝又は環状部分は、三重結合を含有することができ、置換されたアルキニル基が表記されている場合には、置換されることができる。
【0025】
一部の例では、置換基は、(C−C)アルキレン−アリールなど、ゼロを含む炭素の範囲で定義され得る。アリールがフェニルである場合、この定義は、フェニル自体及び−CHPh、−CHCHPh、CH(CH)CHCH(CH)Phなどを含む。
【0026】
本明細書において使用される「アリール」とは、各環中に最大7個の原子を有し、少なくとも一つの環が芳香族である、あらゆる安定な単環式又は二環式炭素環を意味するものとする。このようなアリール要素の例には、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アンスリル又はアセナフチルが含まれる。アリール置換基が二環式であり、一つの環が非芳香族である場合には、結合は芳香環を介するものと理解される。
【0027】
本明細書において使用されるヘテロアリールという用語は、各環中に最大7個の原子を有し、少なくとも1つの環が芳香族であり、並びにO、N及びSからなる群から選択される1から4個までの複素原子を含有する安定な単環式又は二環式環を表す。本定義の範囲に属するヘテロアリール基には、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンが含まれるが、これらに限定されない。以下の複素環の定義に関しては、「ヘテロアリール」は、あらゆる含窒素ヘテロアリールのNオキシド誘導体を含むものと理解される。ヘテロアリール置換基が二環式であり、一つの環が非芳香族であり、又は複素原子を含有しない場合には、結合は、それぞれ、芳香環又は含複素原子環を介するものと理解される。
【0028】
当業者によって理解されるように、本明細書において使用される「ハロ」又は「ハロゲン」には、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードが含まれるものとする。本明細書において使用される「複素環」又は「ヘテロシクリル」という用語は、O、N及びSからなる群から選択される1から4個の複素原子を含有する4員から10員の芳香族又は非芳香族複素環を意味するものとし、二環式の基が含まれる。
従って、「ヘテロシクリル」には、上記のヘテロアリール、並びにそのジヒドロ及びテトラヒドロ類縁体が含まれる。「ヘテロシクリル」のさらなる例には、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル及びテトラヒドロチエニル、並びにこれらのN−オキシドが含まれるが、これらに限定されるものではない。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子を介して、又は複素原子を介して行われ得る。
【0029】
特段の定義がなければ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリル置換基は、非置換であり、又は非置換であり得る。例えば、(C−C)アルキルは、OH、オキソ、ハロゲン、アルコキシ、ジアルキルアミノ又はヘテロシクリル(モルホリニル、ピペリジニルなど)から選択される1、2又は3個の置換基で置換されてもよい。この場合、一方の置換基がオキソであり、他方がOHであれば、以下のもの:−(C=O)CHCH(OH)CH、−(C=O)OH、−CH(OH)CHCH(O)などが定義に含まれる。
【0030】
ある種の例において、R及びRは、これらが結合している窒素とともに、各環中に4−7員を有し並びに前記窒素の他に、N、O及びSから選択される1個若しくは2個の追加の複素原子を場合により含有する単環式若しくは二環式複素環を形成し、前記複素環は、R6aから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されている。このようにして形成され得る複素環の例には、以下のもの:
【0031】
【化9】

が含まれるが(但し、これに限定されるものではない。)、複素環は、R6aから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されることを銘記されたい。
【0032】
式Cの実施形態において、nは0、1又は2である。
【0033】
式Cの別の実施形態において、nは0である。
【0034】
式Cの別の実施形態において、RはCHである。
【0035】
式Cの別の実施形態において、R
【0036】
【化10】

である。
【0037】
式Cの別の実施形態において、RはCHであり、及びRは、
【0038】
【化11】

である。
【0039】
式Dの実施形態において、nは0、1又は2である。
【0040】
式Dの別の実施形態において、nは0である。
【0041】
式Dの別の実施形態において、RはCHである。
【0042】
式Dの別の実施形態において、Rは、
【0043】
【化12】

である。
【0044】
式Dの別の実施形態において、RはCHであり、及びRは、
【0045】
【化13】

である。
【0046】
式Dの別の実施形態において、Rは(C−C)アルキル、OH及びハロゲンから選択される。
【0047】
本発明には、式Aの化合物の遊離形態並びに医薬として許容されるそれらの塩及び立体異性体が含まれる。本明細書中に例示されている単離された具体的な化合物の幾つかは、アミン化合物のプロトン化された塩である。「遊離形態」という用語は、非塩形態のアミン化合物を表す。包含される医薬として許容される塩には、本明細書中に記載されている具体的な化合物に対して例示される単離された塩のみならず、式Aの化合物の遊離形態の、医薬として許容される典型的な全ての塩も含まれる。記載されている具体的な塩化合物の遊離形態は、本分野で公知の技術を用いて単離することができる。例えば、前記遊離形態は、希NaOH水溶液、炭酸カリウム、アンモニア及び炭酸水素ナトリウムなどの、適切な希塩基水溶液で前記塩を処理することによって、再生することができる。遊離形態は、極性溶媒中での溶解度など、ある種の物理特性が、それらの各塩形態と若干異なる場合があるが、酸塩及び塩基塩は、本発明の目的に対して、それらの各遊離形態とそれ以外の点で医薬的に等価である。
【0048】
本発明の化合物の医薬として許容される塩は、塩基性部分又は酸性部分を含有する本発明の化合物から、慣用の化学的方法によって合成することができる。一般に、塩基性化合物の塩は、イオン交換クロマトグラフィーによって調製され、又は、遊離塩基を、適切な溶媒若しくは溶媒の様々な組み合わせ中で、所望の塩を形成する無機酸若しくは有機酸の化学量論的な量若しくは過剰量と反応させることによって調製される。同様に、酸性化合物の塩は、適切な無機塩基又は有機塩基との反応によって形成される。
【0049】
従って、本発明の化合物の医薬として許容される塩には、塩基性の本発明の化合物を無機酸又は有機酸と反応させることによって形成される、本発明の化合物の無毒な慣用の塩が含まれる。例えば、無毒な慣用の塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導される塩;及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)などの有機酸から調製される塩が含まれる。
【0050】
本発明の化合物が酸性である場合には、適切な「医薬として許容される塩」は、無機塩基及び有機塩基を含む、医薬として許容される無毒の塩基から調製される塩を表す。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、亜マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが含まれる。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩である。医薬として許容される無毒の有機塩基から誘導される塩には、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの、一級、二級及び三級アミン、天然に存在する置換されたアミンを含む置換されたアミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂の塩が含まれる。
【0051】
上記医薬として許容される塩及びその他の典型的な医薬として許容される塩の調製は、「Berg et al.,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977:66:1−19」にさらに詳しく記載されている。
【0052】
生理的条件下では、化合物中の脱プロトン化された酸性部分(カルボキシル基など)は、陰イオンとなることができ、この電荷は、次いで、プロトン化又はアルキル化された塩基性部分(四級窒素原子など)の陽イオン電荷に対して内部的に打ち消され得るので、本発明の化合物は、内部塩又は双性イオンとなり得る可能性を秘めていることにも留意すべきである。
【0053】
用途
本明細書に記載されている化合物、組成物及び方法は、特に、癌の治療に有用と考えられる。本発明の化合物、組成物及び方法によって治療され得る癌には、心臓:肉腫(血管肉腫、繊維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、繊維腫、脂肪腫及び奇形腫;肺:気管支癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(膵管腺癌、インシュリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、繊維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮癌、奇形腫、胎生期癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞腫、繊維腫、繊維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝臓癌(肝細胞癌)、胆管腫、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、繊維肉腫、悪性繊維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫、骨軟骨腫(osteochronfroma)(骨軟骨腫(osteocartilaginous exostoses))、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液繊維腫、類骨骨腫及び巨細胞腫;神経系:頭蓋骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性膠芽腫、乏突起膠腫、シュワン腫、網膜芽腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、前腫瘍子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺腫、ムチン性嚢胞腺癌、分類されていない癌腫]、顆粒膜細胞腫、セルトーリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、繊維肉腫、悪性黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫)、乳房;血液:血液(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、あざ 形成異常母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚繊維腫、ケロイド、乾癬;並びに副腎:神経芽細胞腫が含まれるが、これらに限定されるものではない。従って、本明細書で使用される「癌細胞」という用語には、上記症状の何れか一つに罹患した細胞が含まれる。
【0054】
本発明の化合物、組成物及び方法によって治療され得る癌には、乳癌、前立腺癌、大腸癌、肺癌、脳腫瘍、精巣癌、胃癌、膵臓癌、皮膚癌、小腸癌、大腸癌、咽喉癌、頭部及び頸部癌、口腔癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、甲状腺癌及び血液癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明の化合物は、癌を治療するのに有用である医薬を調製する上でも有用である。
【0056】
本発明の化合物は、単独で、又は、医薬組成物中の医薬として許容される担体、賦形剤若しくは希釈剤と組み合わせて、標準的な医薬慣行に従って、哺乳動物(ヒトを含む)に投与され得る。本化合物は、経口的に、又は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸及び局所投与経路など、非経口的に投与することができる。
【0057】
活性成分を含有する医薬組成物は、経口用途、例えば、錠剤、トローチ剤、舐剤、水性又は油性懸濁液剤、分散性散剤又は顆粒剤、エマルジョン、硬若しくは軟カプセル剤、又はシロップ剤若しくはエリキシル剤として、適切な形態とすることができる。経口で使用することが意図された組成物は、医薬組成物の製造の分野で公知の何れかの方法に従って調製することができ、このような組成物は、医薬として上品で、口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、着香剤、着色剤及び防腐剤からなる群から選択される1つ又はそれ以上の薬剤を含有することができる。錠剤は、錠剤の製造に適切である、医薬として許容される無毒の賦形剤と混合された活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;顆粒化剤及び崩壊剤、例えば、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン又はアラビアゴム、及び潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクとすることができる。錠剤は被覆されていなくてもよく、又は薬物の不快な味を隠すために、若しくは消化管内での崩壊及び吸収を遅らせ、これによってさらに長時間にわたる持続作用をもたらすために、公知の技術によって被覆することもできる。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはヒドロキシプロピルセルロースなどの、味を隠す水溶性物質、又はエチルセルロース、酢酸酪酸セルロースなどの時間遅延物質を使用し得る。
【0058】
経口用製剤は、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混合されている硬質ゼラチンカプセル剤、又は活性成分が、ポリエチレングリコールなどの水溶性担体若しくはオイル媒体、例えば、落花生油、流動パラフィン若しくはオリーブオイルと混合されている軟質ゼラチンカプセル剤として与えることもできる。
【0059】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適する賦形剤と混合された活性物質を含有する。このような賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアラビアゴムであり;分散剤又は湿潤剤は、天然に存在するホスファチド、例えば、レシチン、又はアルキレンオキシドの脂肪酸との縮合産物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、又はエチレンオキシドの長鎖脂肪酸アルコールとの縮合産物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなどのエチレンオキシドの脂肪酸由来部分エステル及びヘキシトールとの縮合産物、又はエチレンオキシドの脂肪酸由来部分エステル及びヘキシトール無水物との縮合産物、例えば、モノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。水性懸濁液は、1つ又はそれ以上の防腐剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はn−プロピル、1つ又はそれ以上の着色剤、1つ又はそれ以上の着香剤及びスクロース、サッカリン又はアスパルテームなどの1つ又はそれ以上の甘味剤も含有し得る。
【0060】
油性懸濁液は、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはココナッツ油、又は液体パラフィンなどの鉱物油中に活性成分を懸濁することによって調合され得る。油性懸濁液は、濃縮剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有し得る。口当たりのよい経口調製物を提供するために、上述のものなどの甘味剤、及び着香剤を添加することができる。これらの組成物は、ブチル化ヒドロキシアニソール又はα−トコフェロールなどの抗酸化剤を添加することによって保存することができる。
【0061】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散可能な粉末及び顆粒は、分散又は湿潤剤、懸濁剤及び1又はそれ以上の防腐剤と混合された活性な化合物を与える。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は、既述されたものが例として挙げられる。追加の賦形剤、例えば、甘味剤、着香剤及び着色剤も存在し得る。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することによって保存することができる。
【0062】
本発明の医薬組成物は、水中油エマルジョンの形態とすることもできる。油相は、植物油、例えば、オリーブ油若しくはラッカセイ油、若しくは鉱物油、例えば、液体パラフィン、又はこれらの混合物とすることができる。適切な乳化剤は、天然のホスファチド、例えば、ダイズレシチン、及び脂肪酸と無水ヘキシトールから誘導されるエステル又は部分エステル、例えば、ソルビタンモノオレアート、及び前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合産物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートとすることができる。エマルジョンは、甘味料、着香剤、防腐剤及び抗酸化剤を含有することもできる。
【0063】
シロップ及びエリキシルは、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はスクロースとともに調合され得る。かかる製剤は、粘滑薬、防腐剤、着香剤及び着色剤並びに抗酸化剤を含有することもできる。
【0064】
前記医薬組成物は、無菌注射用水性液剤の形態とすることができる。使用され得る許容可能なビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル溶液及び等張の塩化ナトリウム溶液がある。
【0065】
無菌注射用調製物は、活性成分が油相に溶解されている、無菌の注射用水中油ミクロエマルジョンとすることもできる。例えば、まず、ダイズ油及びレシチンの混合物中に活性成分を溶かすことができる。次いで、油溶液を水とグリセロール混合物中に導入し、処理を施して、ミクロエマルジョンを形成させる。
【0066】
注射可能な溶液又はミクロエマルジョンは、局所ボーラス注射によって、患者の血流中に導入することができる。あるいは、本発明の化合物の一定循環濃度を維持するように、溶液又はミクロエマルジョンを投与することが有用であり得る。このような一定濃度を維持するために、連続静脈内送達装置を使用し得る。このような装置の例は、Deltec CADD−PLUSTMモデル5400静脈内ポンプである。
【0067】
前記医薬組成物は、筋肉内及び皮下投与のために、無菌注射用水性又は油性懸濁液の形態とすることができる。この懸濁液は、適切な上記分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、公知の方法に従って調合され得る。無菌の注射可能な調製物は、非経口的に許容される無毒の希釈剤又は溶媒中の無菌注射可能溶液又は懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液とすることもできる。さらに、無菌の不揮発性油は、溶媒又は懸濁媒体として慣用される。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドなどの、任意の無刺激性不揮発性油が使用され得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に用途を見出す。
【0068】
式Aの化合物は、薬物を直腸投与するために、坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、常温では固体であるが、直腸温では液体であり、このため、直腸内で融解して薬物を放出し得る適切な非刺激性賦形剤と薬物を混合することによって調製することができる。かかる材料には、カカオバター、グリセリン化されたゼラチン、硬化植物油、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルが含まれる。
【0069】
局所に使用する場合は、式Aの化合物を含有するクリーム剤、軟膏剤、ゼリー剤、液剤又は懸濁液剤などが使用される。(本願では、局所適用は、洗口及びうがいを含むものとする。)。
【0070】
本発明の化合物は、適切な鼻内ビヒクル及び送達装置の局所使用を通じて、又は、当業者に周知の経皮パッチの形態を用いた、経皮経路を通じて、鼻内形態で投与することができる。経皮送達系の形態で投与するために、もちろん、投薬は、投薬計画を通じて、断続的に行われるのではなく、継続的に行われ得る。本発明の化合物は、カカオバター、グリセリン化されたゼラチン、硬化植物油、様々な分子量のポリエチレングリコールの混合物及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルなどの基剤を使用し、坐剤として送達することもできる。
【0071】
本発明の組成物が、ヒト患者に投与される場合、一日投薬量は、処方医によって決定されるのが通常であり、投薬量は、一般に、年齢、体重及び各患者の反応、並びに患者の症候の重度に応じて変動する。
一実施形態において、CHK1の阻害剤の適切な量が、癌に対する治療を行っている哺乳動物に投与される。投与は、約0.1mg/kg体重/日と約60mg/kg体重/日の間、又は0.5mg/kg体重/日と約40mg/kg体重/日の間の阻害剤の量で行われる。本発明の組成物を含む別の治療的用量は、CHK1の阻害剤約0.01mgから約1000mgまでを含む。別の実施形態において、用量は、CHK1の阻害剤約1mgから約1000mgまでを含む。
【0072】
本発明の化合物は、治療剤、化学療法剤及び抗癌剤と組み合わせても有用である。本明細書に開示されている化合物と、治療剤、化学療法剤及び抗癌剤との組み合わせは、本発明の範囲に属する。このような薬剤の例は、「Cancer Principles and Practice of Oncology by V. T. Devita and S. Hellman (editors), 6th edition (February 15,2001), Lippincott Williams & Wilkins Publishers」に見出すことができる。当業者であれば、関与する薬物と癌の具体的な特徴に基づいて、何れの薬剤の組み合わせが有用であるか識別できる。このような薬剤には、以下のもの、すなわち、エストロゲン受容体調節物質、アンドロゲン受容体調節物質、レチノイド受容体調節物質、細胞毒性/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤及びその他の血管新生阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスホナート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療剤、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を妨害する薬剤並びに細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤が含まれる。本発明の化合物は、放射線療法とともに投与すると、特に有用である。
【0073】
「エストロゲン受容体調節物質」とは、機序を問わず、エストロゲンの受容体への結合を妨害又は阻害する化合物をいう。エストロゲン受容体調節物質の例には、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラン、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノアート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン及びSH646が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
「アンドロゲン受容体調節物質」とは、機序を問わず、アンドロゲンの受容体への結合を妨害又は阻害する化合物をいう。アンドロゲン受容体調節物質の例には、フィナステリド及び他の5α−還元酵素阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール及び酢酸アビラテロンが含まれる。
【0075】
「レチノイド受容体調節物質」とは、機序を問わず、レチノイドの受容体への結合を妨害又は阻害する化合物をいう。このようなレチノイド受容体調節物質の例には、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチナミド及びN−4−カルボキシフェニルレチナミドが含まれる。
【0076】
「細胞毒性/細胞抑制剤」とは、主として、細胞の機能を直接妨害することによって、細胞死を引き起こし、若しくは細胞増殖を阻害する化合物、又は、細胞の有糸分裂を阻害し、若しくは妨害する化合物をいい、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレート物質、低酸素状態で活性化される化合物、微小管阻害剤/微小管安定化剤、有糸分裂キネシンの阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、有糸分裂の進行に関与するキナーゼの阻害剤、増殖因子及びサイトカインシグナル伝達経路に関与するキナーゼの阻害剤、代謝拮抗物質、生物反応修飾物質、ホルモン/抗ホルモン治療剤、造血成長因子、モノクローナル抗体によって標的誘導された治療剤、トポイソメラーゼ阻害剤、プロテオソーム阻害剤、ユビキチンリガーゼ阻害剤及びオーロラキナーゼ阻害剤が含まれる。
【0077】
細胞毒性剤/細胞抑制剤の例には、セルテネフ(sertenef)、カケクチン(cachectin)、イフォスファミド(ifosfamide)、タソネルミン(tasonermin)、ロニダミン(lonidamine)、カルボプラチン(carboplatin)、アルトレタミン(altretamine)、プレドニムスチン(prednimustine)、ジブロモダルシトール(dibromodulcitol)、ラニムスチン(ranimustine)、フォテムスチン(fotemustine)、ネダプラチン(nedaplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、テモゾロミド(temozolomide)、ヘプタプラチン(heptaplatin)、エストラムスチン(estramustine)、インプロスルファン・トシラート(improsulfan tosilate)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ニムスチン(nimustine)、ジブロスピジウム・クロリド(dibrospidium chloride)、プミテパ(pumitepa)、ロバプラチン(lobaplatin)、サトラプラチン(satraplatin)、プロフィロマイシン(profiromycin)、シスプラチン(cisplatin)、イロフルベン(irofulven)、デキシフォスファミド(dexifosfamide)、シス−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)プラチナ(cis−aminedichloro(2−methyl−pyridine)platinum)、ベンジルグアニン(benzylguanine)、グルフォスファミド(glufosfamide)、GPX100,(トランス、トランス、トランス)−bis−mu−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−mu−[ジアミン−プラチナ(II)]bis[ジアミン(クロロ)プラチナ(II)]テトラクロリド、ジアリジジニルスペルミン(diarizidinylspermine)、三酸化ヒ素(arsenic trioxide)、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン(zorubicin)、イダルビシン(idarubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ビサントレン(bisantrene)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、ピラルビシン(pirarubicin)、ピナファイド(pinafide)、バルルビシン(valrubicin)、アムルビシン(amrubicin)、アンチネオプラストン(antineoplaston)、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アナマイシン(annamycin)、ガラルビシン(galarubicin)、エリナファイド(elinafide)、MEN10755及び4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシン(WO 00/50032を参照。)、Rafキナーゼ阻害剤(Bay43−9006)及びmTOR阻害剤(WyethのCCI−779など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
低酸素状態で活性化される化合物の例は、チラパザミン(tirapazamine)である。
【0079】
プロテオソーム阻害剤の例には、ラクタシスチン及びMLN−341(Velcade)が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
微小管阻害剤/微小管安定化剤の例には、パクリタキセル、ビンデシン硫酸、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン(3’,4’−didehydro−4’−deoxy−8’−norvincaleukoblastine)、ドセタキソール(docetaxol)、リゾキシン(rhizoxin)、ドラスタチン(dolastatin)、ミボブリン・イセチオナート(mivobulin isethionate)、オーリスタチン(auristatin)、セマドチン(cemadotin)、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン(vinflunine)、クリプトフィシン(cryptophycin)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド(2,3,4,5,6−pentafluoro−N−(3−fluoro−4−methoxyphenyl)benzenesulfonamide)、無水ビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロピル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポチロン(例えば、米国特許第6,284,781号及び6,288,237号を参照。)及びBMS188797が含まれる。一実施形態において、エポチロンは、微小管阻害剤/微小管安定化剤に含まれない。
【0081】
トポイソメラーゼ阻害剤の幾つかの例は、トポテカン(topotecan)、ハイカプタミン(hycaptamine)、イリノテカン(irinotecan)、ルビテカン(rubitecan)、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソ−ベンジリデン−チャルトレウシン(chartreusin)、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[デ]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ラルトテカン(lurtotecan)、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、エトポシドホスファート、テニポシド、ソブゾキサン(sobuzoxane)、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン(asulacrine)、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロオキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソギノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−デ]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オンおよびジメスナ(dimesna)である。
【0082】
有糸分裂キネシン、特にヒト有糸分裂キネシンKSPの阻害剤の例は、PCT公開公報WO 01/30768及びWO 01/98278、並びに係属中の米国特許出願第60/338,779号(2001年12月6日出願)、第60/338,344号(2001年12月6日出願)、第60/338,383号(2001年12月6日出願)、第60/338,380号(2001年12月6日出願)、第60/338,379号(2001年12月6日出願)及び第60/344,453号(2001年11月7日)に記載されている。一実施形態において、有糸分裂キネシンの阻害剤には、KSPの阻害剤、MKLP1の阻害剤、CENP−Eの阻害剤、MCAKの阻害剤及びRab6−KIFLの阻害剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」の例には、SAHA、TSA、オキサムフラチン、PXD101、MG98及びスクリプタイドが含まれるが、これらに限定されない。他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤に関するさらなる参考文献は、以下の原稿;「Miller, T.A. et al. J. Med. Chem. 46(24):5097−5116 (2003)」に見出し得る。
【0084】
「有糸分裂の進行に関与するキナーゼの阻害剤」には、オーロラキナーゼの阻害剤、Polo様キナーゼの阻害剤(PLK;特に、PLK−1の阻害剤)、bub−1の阻害剤及びbub−R1の阻害剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。「オーロラキナーゼ阻害剤」の例は、VX−680である。
【0085】
「抗増殖剤」には、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、及びINX3001などのアンチセンスRNA及びDNAオリゴヌクレオチド、並びにエノシタビン(enocitabine)、カルモフール(carmofur)、テガフール(tegafur)、ペントスタチン(pentostatin)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、トリメトトレキサート(trimetrexate)、フルダラビン(fludarabine)、カペシタビン(capecitabine)、ガロシタビン(galocitabine)、シタラビンオクオスファート(cytarabineocfosfate)、フォステアビンナトリウム水和物(fosteabine sodium hydrate)、ラルチトレキセド(raltitrexed)、パルチトレキシド(paltitrexid)、エミテフール(emitefur)、チアゾフリン(tiazofurin)、デシタビン(decitabine)、ノラトレキセド(nolatrexed)、ペメトレキセド(pemetrexed)、ネルザラビン(nelzarabine)、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナシジン(ecteinascidin)、トロキサシタビン(troxacitabine)、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン(alanosine)、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−l,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン(swainsonine)、ロメトレキソール(lometrexol)、デクスラゾキサン(dexrazoxane)、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、3−アミノピリジン−2−カルボキサルデヒドチオセミカルバゾン及びトラスツズマブなどの代謝拮抗剤が含まれる。
【0086】
モノクローナル抗体で標的に誘導される治療剤の例には、癌細胞特異的又は標的細胞特異的モノクローナル抗体に結合された細胞毒性剤又は放射性同位体を有する治療剤が含まれる。例には、Bexxarが含まれる。
【0087】
「HMG−CoA還元酵素阻害剤」は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA還元酵素の阻害剤を表す。使用され得るHMG−CoA還元酵素阻害剤の例には、ロバスタチン(lovastatin)(MEVACOR(R));米国特許第4,231,938号、第4,294,926号及び第4,319,039号を参照)、シンバスタチン(simvastatin)(ZOCOR(R));米国特許第4,444,784号、第4,820,850号及び第4,916,239号を参照)、プラバスタチン(pravastatin)(PRAVACHOL(R);米国特許第4,346,227号、第4,537,859号、第4,410,629号、第5,030,447号及び第5,180,589号を参照)、フルバスタチン(fluvastatin)(LESCOL(R);米国特許第5,354,772号、第4,911,165号、第4,929,437号、5,189,164号、第5,118,853号、第5,290,946号及び第5,356,896号を参照)、アトロバスタチン(atorvastatin)(LIPITOR(R);米国特許第5,273,995号、第4,681,893号、第5,489,691号及び第5,342,952号を参照)及びセリバスタチン(リバスタチン及びBAYCHOL(R)としても知られる。; 米国特許第5,177,080号参照)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法において使用され得る、これら及びその他のHMG−CoA還元酵素阻害剤の構造式は、「M. Yalpani, “Cholesterol Lowering Drugs”, Chemistry & Industry, pp. 85−89(5 February 1996)」の87ページ並びに米国特許第4,782,084号及び第4,885,314号に記載されている。本明細書において使用されるHMG−CoA還元酵素阻害剤という用語には、医薬として許容される全てのラクトン及び開環した酸の形態(すなわち、ラクトン環が開環されて、遊離酸を形成している。)並びにHMG−CoA還元酵素阻害活性を有する化合物の塩及びエステル形態が含まれ、従って、このような塩、エステル、開環した酸及びラクトン形態の使用は、本発明の範囲に含まれる。
【0088】
「プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤」は、ファルネシル−タンパク質転移酵素(FPTase)、ゲラニルゲラニル−タンパク質転移酵素I型(GGPTase−I)及びゲラニルゲラニル−タンパク質転移酵素II型(GGPTase−II、Rab GGPTaseとも称される。)などの、プレニル−タンパク質転移酵素の任意の一つ又は任意の組み合わせを阻害する化合物を表す。
【0089】
プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤の例には、以下の公報及び特許に記載されている。WO 96/30343、WO 97/18813、WO 97/21701、WO 97/23478、WO 97/38665、WO 98/28980、WO 98/29119、WO 95/32987、米国特許第5,420,245号、米国特許第5,523,430号、米国特許第5,532,359号、米国特許第5,510,510、米国特許第5,589,485号、米国特許第5,602,098号、欧州特許公報0 618,221、欧州特許公報 0 675 112、欧州特許公報 0 604 181、欧州特許公報0 696 593、WO 94/19357、WO 95/08542、WO 95/11917、WO 95/12612、WO 95/12572、WO 95/10514、米国特許第5,661,152号、WO 95/10515、WO 95/10516、WO 95/24612、WO 95/34535、WO 95/25086、WO 96/05529、WO 96/06138、WO 96/06193、WO 96/16443、WO 96/21701、WO 96/21456、WO 96/22278、WO 96/24611、WO 96/24612、WO 96/05168、WO 96/05169、WO 96/00736、米国特許第5,571,792号、WO 96/17861、WO 96/33159、WO 96/34850、WO 96/34851、WO 96/30017、WO 96/30018、WO 96/30362、WO 96/30363、WO 96/31111、WO 96/31477、WO 96/31478、WO 96/31501、WO 97/00252、WO 97/03047、WO 97/03050、WO 97/04785、WO 97/02920、WO 97/17070、WO 97/23478、WO 97/26246、WO 97/30053、WO 97/44350、WO 98/02436、及び米国特許第5,532、359号。プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤の血管新生に対する役割の例については、「European J. of Cancer, Vol. 35, No. 9, pp.1394−1401 (1999)」を参照されたい。
【0090】
「血管新生阻害剤」とは、機序を問わず、新しい血管の形成を阻害する化合物を表す。血管新生阻害剤の例には、チロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)及びFlk−1/KDR(VEGFR2)の阻害剤などのチロシンキナーゼ阻害剤、上皮由来、繊維芽細胞由来、又は血小板由来の増殖因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリンブロッカー、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサンポリサルフェート、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(アスピリン及びイブプロフェンのような非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)並びにセレコキシブ(celecoxib)及びロフェコキシブ(rofecoxib)のような選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤を含む。)(PNAS, Vol.89, p.7384(1992);JNCI, Vol.69, p.475(1982);Arch.Opthalmol., Vol.108, p.573(1990); Anat.Rec., Vol.238, p.68(1994); FEBS Letters, Vol.372, p.83 (1995);Clin, Orthop.Vol.313, p.76(1995);J.Mol.Endocrinol., Vol.16, p.107 (1996);Jpn.J.Pharmacol., Vol.75, p.105(1997);Cancer Res., Vol.57, p.1625(1997); Cell, Vol.93, p.705(1998) ; Intl.J.Mol.Med., Vol.2, p.715(1998);J.Biol.Chem., Vol.274, p.9116(1999))、ステロイド系抗炎症薬(コルチコステロイド、鉱質コルチコイド、デキサメタゾン、プレドニソン、プレドニソロン、メチルプレド、ベタメタゾンなど)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、アンギオテンシンIIアンタゴニスト(Fernandez et al., J. Lab. Clin. Med. 105:141−145(1985)を参照。)、及びVEGFに対する抗体(Nature Biotechnology, Vol. 17, pp. 963−968(October 1999); Kim et al., Nature, 362,841−844(1993); WO 00/44777;及びWO 00/61186を参照。)が含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
血管新生を調節又は阻害し、本発明の化合物と併用され得る他の治療剤には、凝固系及び繊維素溶解系を調節又は阻害する治療剤が含まれる(Clin. Chem. La. Med.38:679−692(2000)の総説を参照。)。凝固経路及び繊維素溶解経路を調節又は阻害する、このような治療剤の例には、ヘパリン(Thromb. Haemost. 80:10−23(1998)参照)、低分子量ヘパリン及びカルボキシペプチダーゼU阻害剤(活性トロンビン活性化可能繊維素溶解阻害剤[TAFIa]の別称でも知られる。)(Thrombosis Res. 101:329−354(2001)を参照)が含まれるが、これらに限定されない。TAFIa阻害剤は、U.S.Serial No.(米国出願) 60/310,927号(2001年8月8日出願)及び米国出願60/349,925号(2002年1月18日出願)に記載されている。
【0092】
「細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤」とは、細胞周期チェックポイントシグナルを伝達するタンパク質キナーゼを阻害することにより、DNA損傷剤に対して癌細胞を増感させる化合物を表す。このような薬剤には、ATR、ATM、Chk11及びChk12キナーゼの阻害剤並びにcdk及びcdcキナーゼ阻害剤が含まれ、具体例としては、7−ヒドロキシスタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(Cyclacel)及びBMS−387032が挙げられる。
【0093】
「受容体チロシンキナーゼ(RTK)を妨害する薬剤」とは、RTKを阻害し、従って、腫瘍発生及び腫瘍進行に関与する機序を阻害する化合物を表す。このような薬剤には、c−Kit、Eph、PDGF、Flt3及びc−Metの阻害剤が含まれる。さらなる薬剤には、「Bume−Jensen and Hunter, Nature, 411:355−365, 2001」に記載されているようなRTKの阻害剤が含まれる。
【0094】
「細胞増殖及び生存シグナル伝達経路の阻害剤」とは、細胞表面受容体の下流にあるシグナル伝達カスケードを阻害する化合物を表す。このような薬剤には、セリン/スレオニンキナーゼの阻害剤(WO 02/083064、WO 02/083139、WO 02/083140、WO 02/083138、WO 03/086279、WO 03/086394、WO 03/086403、WO 03/086404及びWO 04/041162に記載されているようなAktの阻害剤を含むが、これらに限定されない。)、Rafキナーゼの阻害剤(例えば、BAY−43−9006)、MEKの阻害剤(例えば、CI−1040及びPD−098059)、mTORの阻害剤(例えば、Wyeth CCI−779)及びPI3Kの阻害剤(例えば、LY294002)が含まれる。
【0095】
上述されているように、NSAIDとの組み合わせは、強力なCOX−2阻害剤であるNSAIDの使用に向けられる。本明細書において、細胞又はミクロソームアッセイによって評価された場合に、COX−2の阻害に対するIC50が1μM又はそれ未満であれば、NSAIDは強力である。
本発明は、選択的COX−2阻害剤であるNSAIDとの組み合わせも包含する。本明細書において、COX−2の選択的阻害剤であるNSAIDとは、細胞又はミクロソームアッセイによって評価されたCOX−1のIC50に対するCOX−2のIC50の比によって測定した場合に、COX−1に対するCOX−2阻害の特異性が少なくとも100倍であるNSAIDとして定義される。このような化合物には、米国特許第5,474,995号、米国特許第5,861,419号、米国特許第6,001,843号、米国特許第6,020,343号、米国特許第5,409,944号、米国特許第5,436,265号、米国特許第5,536,752号、米国特許第5,550,142号、米国特許第5,604,260号、米国特許第5,698,584号、米国特許第5,710,140号、WO 94/15932、米国特許第5,344,991号、米国特許第5,134,142号、米国特許第5,380,738号、米国特許第5,393,790号、米国特許第5,466,823号、米国特許第5,633,272号及び米国特許第5,932,598号に開示されている化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない(全て、参照により、本明細書に組み込まれる。)。
【0096】
本発明の治療法において特に有用なCOX−2の阻害剤は、3−フェニル−4−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−2−(5H)−フラノン;及び5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン;又は医薬として許容されるそれらの塩である。
【0097】
COX−2の特異的阻害剤として記載され、それ故、本発明において有用である化合物には、パレコキシブ、BEXTRA(R)及びCELEBREX(R)又は医薬として許容されるこれらの塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
血管新生阻害剤の他の例には、エンドスタチン、ウクライン、ランピルナーゼ、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクト−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジンアニリン(acetyldinanaline)、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル]メチル]−1H−1、2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミン、コンブレタスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペンタオースリン酸(sulfated mannopentaose phosphate)、7,7−(カルボニル−ビス−[イミノ−N−メチル−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホナート)、及び3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
上で使用したように、「インテグリンブロッカー」とは、生理的リガンドのαβインテグリンへの結合を選択的に拮抗し、阻害し、又は打ち消す化合物、生理的リガンドのαβインテグリンへの結合を選択的に拮抗し、阻害し、又は打ち消す化合物、生理的リガンドのαβインテグリン及びαβインテグリンの両方への結合を拮抗し、阻害し、又は打ち消す化合物、並びに毛細血管の内皮細胞上に発現された特定のインテグリンの活性を拮抗し、阻害し、又は打ち消す化合物を表す。本用語は、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンのアンタゴニストも表す。本用語は、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンの任意の組み合わせのアンタゴニストも表す。
【0100】
チロシンキナーゼ阻害剤の幾つかの具体例には、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス−(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリナミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン、STI571、CEP2563、4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタンスルホナート、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジンアミン及びEMD121974が含まれる。
【0101】
抗癌化合物以外の化合物との組み合わせも、本発明の方法に包含される。例えば、本明細書の特許請求の範囲に記載されている化合物の、PPAR−γ(すなわち、PPAR−ガンマ)アゴニスト及びPPAR−δ(すなわち、PPAR−デルタ)アゴニストとの組み合わせは、ある種の悪性腫瘍の治療において有用である。PPAR−γ及びPPAR−δは、核ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ及びδである。内皮細胞上へのPPAR−γの発現及び血管新生におけるその関与が、文献に報告されている(J. Cardiovasc. Pharmacol. 1998;31:909−913;J.Biol.Chem.1999;274:9116−9121;Invest. Ophthalmol Vis. Sci. 2000;41:2309−2317を参照。)。さらに最近になって、PPAR−γアゴニストが、VEGFに対する血管新生応答をインビトロで阻害することが示された;トログリタゾン及びロシグリタゾンのマレイン酸塩は何れも、マウスにおいて、網膜の新血管新生の発達を阻害する。(Arch. Ophthamol. 2001; 119:709−717)。PPAR−γアゴニスト及びPPAR−γ/αアゴニストの例には、チアゾリジンジオン(DRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾン及びピオグリタゾンなど)、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフロオロメチル−1,2−ベンズイソキサゾール−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(USSN 09/782,856に開示されている。)及び2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(USSN 60/235,708及び60/244,697に開示されている。)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
本発明の別の実施形態は、癌の治療用遺伝子療法と組み合わせた、本明細書に開示されている化合物の使用である。癌を治療するための遺伝子戦略の総説については、Hallら(Am. J. Hum. Genet. 61:785−789, 1997)及びKufeら(Cancer Medicine, 5th Ed, pp 876−889, BC Decker, Hamilton 2000)を参照されたい。遺伝子療法は、あらゆる腫瘍抑圧遺伝子を送達するために使用することができる。このような遺伝子の例には、p53(組換えウイルスを介した遺伝子導入によって送達することができる(例えば、米国特許第6,069,134号を参照。)。)、uPA/uPARアンタゴニスト(“Adenovirus−Mediated Delivery of a uPA/uPAR Antagonist Suppresses Angiogenesis−Dependent Tumor Growth and Dissemination in Mice,”Gene Therapy, August 1998;5(8):1105−13)」及びインターフェロンガンマ(J. Immunol. 2000;164:217−222)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
本発明の化合物は、固有の多剤耐性(MDR)、特に、輸送体タンパク質の高レベル発現を伴うMDRの阻害剤と組み合わせて、投与することもできる。このようなMDR阻害剤には、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853及びPSC833(valspodar)などの、p−糖タンパク質(P−gp)の阻害剤が含まれる。
【0104】
本発明の化合物は、単独で又は放射線療法とともに、本発明の化合物を使用することによって生じ得る悪心又は嘔吐(急性、遅延、晩発及び先行嘔吐を含む。)を治療するための制吐剤とともに使用し得る。嘔吐を予防又は治療する場合、本発明の化合物は、他の制吐剤、特に、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト(オンダンセトロン(ondansetron)、グラニセトロン(granisetron)、トロピセトロン(tropisetron)及びザチセトロン(zatisetron)など)、GABAB受容体アゴニスト(バクロフェンなど)、コルチコステロイド(Decadron(デキサメタゾンなど)、Kenalog、Aristocort、Nasalide、Preferid、Benecortenなど)又は米国特許第2,789,118号、第2,990,401号、第3,048,581号、第3,126,375号、第3,929,768号、第3,996,359号、第3,928,326号及び第3,749,712号に開示されているものなどこれら以外のもの、フェノチアジン(例えば、プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジン及びメソリダジン)などの抗ドーパミン作動薬、メトクロプラミド又はドロナビノールなど)とともに、使用し得る。別の実施形態では、本発明の化合物の投与時に生じ得る嘔吐を治療又は予防するために、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト及びコルチコステロイドから選択される制吐剤を用いた結合療法が開示される。
【0105】
本発明の化合物とともに使用するニューロキニン−1受容体アンタゴニストは、例えば、米国特許第5,162,339号、第5,232,929号、第5,242,930号、第5,373,003号、第5,387,595号、第5,459,270号、第5,494,926号、第5,496,833号、第5,637,699号、第5,719,147号;欧州特許公開0 360 390、0 394 989、0 428 434、0 429 366、0 430 771、0 436 334、0 443 132、0 482 539、0 498 069、0 499 313、0 512 901、0 512,902、0 514 273、0 514 274、0 514,275、0 514 276、0 515 681、0 517 589、0 520 555、0 522 808、0 528 495、0 532 456、0 533 280、0 536 817、0 545 478、0 558 156、0 577 394、0 585 913、0 590 152、0 599 538、0 610 793、0 634 402、0 686 629、0 693 489、0 694 535、0 699 655、0 699 674、0 707 006、0 708 101、0 709 375、0 709 376、0 714 891、0 723 959、0 733 632及び0 776 893;PCT国際特許公開WO 90/05525、90/05729、91/09844、91/18899、92/01688、92/06079、92/12151、92/15585、92/17449、92/20661、92/20676、92/21677、92/22569、93/00330、93/00331、93/01159、93/01165、93/01169、93/01170、93/06099、93/09116、93/10073、93/14084、93/14113、93/18023、93/19064、93/21155、93/21181、93/23380、93/24465、94/00440、94/01402、94/02461、94/02595、94/03429、94/03445、94/04494、94/04496、94/05625、94/07843、94/08997、94/10165、94/10167、94/10168、94/10170、94/11368、94/13639、94/13663、94/14767、94/15903、94/19320、94/19323、94/20500、94/26735、94/26740、94/29309、95/02595、95/04040、95/04042、95/06645、95/07886、95/07908、95/08549、95/11880、95/14017、95/15311、95/16679、95/17382、95/18124、95/18129、95/19344、95/20575、95/21819、95/22525、95/23798、95/26338、95/28418、95/30674、95/30687、95/33744、96/05181、96/05193、96/05203、96/06094、96/07649、96/10562、96/16939、96/18643、96/20197、96/21661、96/29304、96/29317、96/29326、96/29328、96/31214、96/32385、96/37489、97/01553、97/01554、97/03066、97/08144、97/14671、97/17362、97/18206、97/19084、97/19942及び97/21702;並びに英国特許公開2 266 529、2 268 931、2 269 170、2 269 590、2 271 774、2 292 144、2 293 168、2 293 169及び2 302 689に完全に記載されている。このような化合物の調製は、参照により本明細書に組み込まれる、上記特許及び公報に完全に記載されている。
【0106】
一実施形態において、本発明の化合物とともに使用するためのニューロキニン−1受容体アンタゴニストは、米国特許第5,719,147号に記載されている2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン、又は薬学的に許容されるこれらの塩から選択される。
【0107】
本発明の化合物は、貧血の治療において有用な薬剤とともに投与することもできる。このような貧血治療剤は、例えば、継続的な赤血球生成(eythropoiesis)受容体活性化因子(エポエチンαなど)である。
【0108】
本発明の化合物は、好中球減少症の治療において有用な薬剤とともに投与することもできる。このような好中球減少症治療剤は、例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)などの好中球の産生及び機能を制御する造血性増殖因子である。G−CSFの例には、フィルグラスチムが含まれる。
【0109】
また、本発明の化合物は、レバミソール、イソプリノシン及びZadaxinなどの、免疫増強薬とともに投与され得る。
【0110】
本発明の化合物は、ビスホスホナート(ビスホスホナート、ジホスホナート、ビスホスホン酸及びジホスホン酸を含むものと理解される。)とともに、骨癌を含む癌を治療又は予防するのにも有用であり得る。ビスホスホナートの例には、エチドロナート(Didronel)、パミドロナート(Aredia)、アレンドロナート(Fosamax)、リセドロナート(Actonel)、ゾレドロナート(Zometa)、イバンドロナート(Boniva)、インカドロナート又はシマドロナート、クロドロナート、EB−1053、ミノドロナート、ネリドロナート、ピリドロナート及びチルドロナート(医薬として許容される、これらの全ての塩、誘導体、水和物及び混合物が含まれる。)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0111】
本発明の化合物は、アロマターゼ阻害剤と組み合わせて、乳癌を治療又は予防するためにも有用であり得る。アロマターゼ阻害剤の例には、アナストロゾール、レトロゾール及びエキセメスタンが含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
本発明の化合物は、siRNA治療剤と組み合わせて、乳癌を治療又は予防するためにも有用であり得る。
【0113】
本発明の化合物は、γ−セクレターゼ阻害剤と組み合わせて、癌を治療又は予防するためにも有用であり得る。
【0114】
従って、本発明の範囲は、以下から選択される第二の化合物:エストロゲン受容体調節物質、アンドロゲン受容体調節物質、レチノイド受容体調節物質、細胞毒性/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管新生阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、固有多剤耐性の阻害剤、制吐剤、貧血の治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫増強薬、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスホナート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療剤、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を妨害する薬剤並びに細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤と組み合せた、本明細書の特許請求の範囲に記載された化合物の使用を包含する。
【0115】
本発明の化合物に関する「投与」及びその変形語(例えば、化合物を「投与する」)という用語は、化合物又は化合物のプロドラッグを、治療を必要としている動物の系内に導入することを意味する。本発明の化合物又はそのプロドラッグを、1つ又はそれ以上の他の活性剤(例えば、細胞毒性剤など)とともに与える場合、「投与」及びその変形語は、それぞれ、化合物又はそのプロドラッグと他の薬剤の同時導入及び順次導入を含むものと理解される。
【0116】
本明細書において使用される「組成物」という用語は、特定量の指定された成分を含む製品、及び、特定量の指定された成分の組合せから、直接又は間接的に得られる全ての製品を包含するものとする。
【0117】
本明細書において使用される「治療的有効量」という用語は、研究者、獣医、医師又はその他の臨床医によって求められている、組織、系、動物又はヒトでの生物的応答又は医薬的応答を惹起する活性化合物又は薬剤の量を意味する。
【0118】
「癌を治療する」又は「癌の治療」という用語は、癌性症状に罹患した哺乳動物に投与することを表し、並びに癌細胞を死滅させることによって癌性症状を緩和する効果に加えて、癌の増殖及び/又は転移の阻害をもたらす効果を表す。
【0119】
一実施形態において、第二の化合物として使用すべき血管新生阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、上皮由来増殖因子の阻害剤、繊維芽細胞由来増殖因子の阻害剤、血小板由来増殖因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリンブロッカー、インターフェロンα、インターロイキン12、ペントサンポリサルフェート、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマグリロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、又はVEGFに対する抗体から選択される。一実施形態において、エストロゲン受容体調節物質は、タモキシフェン又はラロキシフェンである。
【0120】
同じく、特許請求の範囲に含まれるのは、放射線療法と組み合わせて、及び/又はエストロゲン受容体調節物質、アンドロゲン受容体調節物質、レチノイド受容体調節物質、細胞毒性/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管新生阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、固有多剤耐性の阻害剤、制吐剤、貧血の治療に有用な薬剤、好中球減少症の治療に有用な薬剤、免疫増強薬、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスホナート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療剤、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を妨害する薬剤並びに細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤から選択される第二の化合物と組み合わせて、本発明の化合物の治療的有効量を投与することを含む、癌を治療する方法である。
【0121】
本発明のさらに別の実施形態は、パクリタキセル又はトラスツズマブと組み合わせて、本発明の化合物の治療的有効量を投与することを含む、癌を治療する方法である。
【0122】
本発明は、さらに、COX−2阻害剤と組み合わせて、本発明の化合物の治療的有効量を投与することを含む、癌を治療又は予防する方法を包含する。
【0123】
本発明は、本発明の化合物の治療的有効量と、エストロゲン受容体調節物質、アンドロゲン受容体調節物質、レチノイド受容体調節物質、細胞毒性/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質転移酵素阻害剤、HMG−CoA還元酵素阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管新生阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスホナート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療剤、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を妨害する薬剤並びに細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤から選択される第二の化合物と、を含む、癌を治療又は予防するのに有用な医薬組成物も包含する。
【0124】
特定されている全ての特許、公報及び係属中の特許出願は、参照により、本明細書中に組み込まれる。
【0125】
以下の化学の記述及び実施例で使用した略号は、次のとおりである。AEBSF(p−アミノエチルベンゼンスルホニルフルオリド);BSA(ウシ血清アルブミン);BuLi(n−ブチルリチウム);CDCl(クロロホルム−d);CuI(ヨウ化銅);CuSO(硫酸銅);DCE(ジクロロエタン又は1,2−ジクロロエタン);DCM(ジクロロメタン);DEAD(アゾジカルボン酸ジエチル);DMAP(4−ジメチルアミノピリジン);DMF(N,N−ジメチルホルムアミド);DMSO(ジメチルスルホキシド);DTT(ジチオスレイトール);EDTA(エチレン−ジアミン−四酢酸);EGTA(エチレン−グリコール−四酢酸);EtOAc(酢酸エチル);EtOH(エタノール);HOAc(酢酸);HPLC(高性能液体クロマトグラフィー);HRMS(高分解能質量分析);LCMS(液体クロマトグラフ−質量分析);LHMDS(リチウムビス(トリメチルシリル)アミド);LRMS(低分解能質量分析);MeOH(メタノール);MP−B(CN)H(マクロ多孔性シアノ水素化ホウ素);NaHCO(重炭酸ナトリウム);NaSO(硫酸ナトリウム);Na(OAc)BH(トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム);NHOAC(酢酸アンモニウム);NBS(N−ブロモスクシンアミノ);NMP(1−メチル−2−ピロリジノン);NMR(核磁気共鳴);PBS(リン酸緩衝化食塩水);PCR(ポリメラーゼ連鎖反応);Pd(dppf)([1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム);Pd(Ph(パラジウム(0)テトラキス−トリフェニルホスフィン);POCl(オキシ塩化リン);PS−DIEA(ポリスチレンジイソプロピルエチルアミン);PS−PPh(ポリスチレン−トリフェニルホスフィン);PTSA(p−トルエンスルホン酸);Selectfluor(1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボラート);TBAF(テトラブチルアンモニウムフルオリド);THF(テトラヒドロフラン);TFA(トリフルオロ酢酸);及びTMSCH(トリメチルシリルジアゾメタン)。
【0126】
本発明の化合物は、文献において公知であり、又は実験操作において例示されている他の標準的な操作に加えて、以下の反応スキーム中に示されている反応を用いることによって調製され得る。従って、以下の例示的な反応スキームは、列記されている化合物によって、又は例示目的のために使用されている具体的なあらゆる置換基によって限定されない。反応スキーム中に示されている置換基の付番は、特許請求において使用されている付番と必ずしも呼応するものではなく、しばしば、明確にするために、本明細書中の上記式Aの定義の下で場合により複数の置換基が許容される場合でも、単一の置換基が化合物に結合して示されている。
【0127】
本発明の化合物を生成するために用いた反応は、反応スキームIに示されている反応を利用することによって調製される。
【0128】
反応スキームの概要
反応スキームIに示されているように、置換されたアミノナフトエ酸は、エチルクロロアセタートと環化して、ナフトオキサジノン(A−1)を提供することができる。これらの潜在性求電子試薬は、アセト酢酸エチルのナトリウムアニオンと反応して、アクリラート(A−2)を提供することが可能である。ナトリウムメキトシドの処理を行うと、アクリラート(A−2)は、内部で環化及び脱カルボキシル化し、4−ヒドロキシベンゾキノリノン(A−3)を提供できる。マイクロ波加熱下において、ベンゾピラゾロキノリノン(A−4)をヒドラジン及び触媒性酸から形成できる。選択的保護がピラゾールの窒素上に生じ、N−BOC−ベンゾピラゾロキノリノン(A−5)を与え、これは、炭酸セシウムの存在下において、様々な臭化物によりアルキル化を行い、N−アルキル化された化合物(A−6)を与えることが可能である。次いで、TFAでBOC基を除去して、完全に合成されたベンゾピラゾロキノリノン(A−7)を得ることができる。
【0129】
【化14】

【0130】
実施例
提供されている実施例は、本発明を更に理解する補助を与えることを目的とする。使用されている具体的な物質、種及び条件は、本発明を更に例示するためのものであり、その合理的な範囲を限定することを意図したものではない。以下の表中に図示されている化合物を合成する際に使用される試薬は、市販されているか、又は当業者によって容易に調製される。
【0131】
【化15】

【0132】
5−(3−アミノプロピル)−3−メチル−2,5−ジヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−8)
2−エトキシ−4H−ナフト[2,3−d][1,3]オキサジン−4−オン(1−2)
−10℃で窒素下において、ピリジン(40mL)中の3−アミノ−2−ナフトエ酸(3.74g、20.0mmol、1当量)の溶液へ、クロロギ酸エチル(7.6mL、8.63g、79.5mmol、4.0当量)を1時間にわたり滴下した。反応物を、−10℃から室温で、20時間にわたって攪拌した。溶媒を減圧下で蒸発し、固体の残留物に水(100mL)を添加し、室温で1時間、混合物を撹拌した。沈殿物をろ過し、水で洗浄して、乾燥させ、2−エトキシ−4H−ナフト[2,3−d][1,3]オキサジン−4−オン(1−2)を黄褐色の固体として生成した。LRMSm/z(M+H)実測値242.2、理論値242.1。
【0133】
メチル(2Z)−2−アセチル−3−{3−[(エトキシカルボニル)アミノ]−2−ナフチル}−3−ヒドロキシプロプ−2−エノアート(1−3)
窒素下において、無水ベンゼン(250mL)中の水素化ナトリウム(95%)(01.00g、41.7mmol、2.1当量)の分散液へ、アセト酢酸メチル(6.5mL、7.00g、60.3mmol、3.1当量)を滴下し、室温で1時間、混合物を攪拌した。2−エトキシ−4H−ナフト[2,3−d][1,3]オキサジン−4−オン(1−2)(4.72g、19.5mmol、1.0当量)を添加し、室温で20時間攪拌しながら、反応を継続した。反応を水で停止し、有機層を分離して、水で3回抽出した。エマルジョン及び合わせた有機層を濃HClで酸性とし、20時間撹拌した。固体の沈殿をろ過し、乾燥させて、メチル(2Z)−2−アセチル−3−{3−[(エトキシカルボニル)アミノ]−2−ナフチル}−3−ヒドロキシプロプ−2−エノアート(1−3)を黄色の固体として生成した。LRMSm/z(M+H)実測値358.3、理論値358.1
3−アセチル−4−ヒドロキシ−ベンゾ[g]キノリン−2(1H)−オン(1−4)
室温で、窒素下において、ベンゼン(100mL)中の水素化ナトリウム(95%)(0.90g、37.5mmol、2.6当量)の分散液へ、メタノール(3.0mL、2.37g、74.1mmol、5.2当量)を滴下した。5分間攪拌した後、メチル(2Z)−2−アセチル−3−{3−[(エトキシカルボニル)アミノ]−2−ナフチル}−3−ヒドロキシプロプ−2−エノアート(1−3)(5.06g、14.2mmol、1。0当量)を添加し、72℃で20時間、反応を加熱した。溶媒を減圧下で蒸発させ、水(50mL)とともに固体の残留物を30分間懸濁し、続いて、更に30分間、1N HCl(100mL)とともに懸濁した。固体をろ過し、水(100mL)及びヘキサン(100mL)で洗浄し、乾燥させ、3−アセチル−4−ヒドロキシベンゾ[g]キノリン−2(1H)−オン(1−4)を、黄色の固体として生成した。LRMSm/z実測値(M+H)254.2、理論値254.1。
【0134】
3−メチル−2,5−ジヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−5)
DMA(30mL)中の、3−アセチル−4−ヒドロキシベンゾ[g]キノリン−2(1H)−オン(1−4)(3.95g、15.6mmol、1.0当量)、ヒドラジン(0.74mL、0.75g、23.4mmol、1.5当量)及び触媒性濃HCl(2滴)の混合物を、窒素下において、140℃まで55時間加熱した。溶液を冷却し、固体の沈殿物をろ過し、メタノール(100mL×3)で洗浄し、乾燥させて、3−メチル−2,5−ジヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−5)を黄褐色の固体として生成した。H NMR(500MHz,DMSO−d)δ11.14(s,1H),8.61(s,1H),7.97(d,1H,J=8.0Hz),7.85(s,1H,J=8.5Hz),7.70(s,1H),7.50(m,1H),7.41(m,1H),2.59(s,3H)。LRMSm/z(M+H)実測値250.2、理論値250.1。
【0135】
tert−ブチル3−メチル−4−オキソ−4,5−ジヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシラート(1−6)
0℃で、窒素下において、DMF(10mL)中の、3−メチル−2,5−ジヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−5)(1.2g、4.5mmol、1.0当量)の溶液に、BocO(1.1g、5.0mmol、1.1当量)、続いてDMAP(10mg、0.08mmol、0.02当量)を添加した。室温で一晩、反応を攪拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、ジエチルエーテル(3×75mL)で固体を洗浄して、乾燥させて、tert−ブチル3−メチル−4−オキソ−4,5−ジヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシラート(1−6)を白い固体として生成した。LRMSm/z(M+H)実測値350.4、理論値350.1。
【0136】
tert−ブチル5−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]プロピル}−3−メチル−4−オキソ−4,5−ジヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシラート(1−7)
DMF(5mL)中の、tert−ブチル3−メチル−4−オキソ−4,5−ジヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシラート(1−6)(0.1g、0.29mmol、1。0当量)及び炭酸セシウム(0.50g、1.5mmol、5.4当量)の混合物へ、N−(3−ブロモプロピル)カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.12g、0.50mmol、1.8当量)を添加し、室温で反応を攪拌した。20時間後、LC/MSにより、反応が55%完了したことが示されたので、アルキル化剤のさらに120mgを添加し、室温でさらに24時間、反応物を撹拌した。LC/MSにより、反応が完了したことが示され、塩基を除去するために反応をろ過し、逆相液体クロマトグラフィー(w/0.05%NHOHが存在するHO/CHCN勾配)によって精製し、tert−ブチル5−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]プロピル}−3−メチル−4−オキソ−4,5−ジヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシラート(1−7)を白い固体として生成した。LRMSm/z(M+H)実測値507.6、理論値507.3。
【0137】
5−(3−アミノプロピル)−3−メチル−2,5−ジヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−8)
CHCl(6mL)中の、tert−ブチル5−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]プロピル}−3−メチル−4−オキソ−4,5−ジヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシラート(1−7)(0.14g、0.28mmol、1.0当量)の溶液に、トリフルオロ酢酸(3mL)を添加し、室温で4時間、反応を攪拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、DMSO/NHOH中に残留物を溶解し、逆相液体クロマトグラフィー(w/0.05%NHOHが存在するHO/CHCN勾配)によって残留物を精製して、5−(3−アミノプロピル)−3−メチル−2,5−ジヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−8)を白い固体として生成した。H NMR(500MHz,MeOH−d4,TFA塩)δ8.65(s,1H),8.00(m,2H),7.97(s,1H)7.57(t,1H),7.52(t,1H),4.57(t,2H),3.06(t,2H),2.69(s,3H),2.26(t,2H)。LRMSm/z(M+H)実測値307.5、理論値307.2。
【0138】
実施例1−8
本発明の様々な特徴及び利点を更に例示するため、実施例が以下に提供されている。また、実施例は、本発明を実行するための有用な方法論も例示している。これらの実施例は、特許請求の範囲に記載されている本発明を限定するものでない。
【実施例1】
【0139】
リアルタイムPCRを使用したCHK1sv1の同定
化合物の阻害特性の決定を容易にするために、CHK1をコードするエキソン領域の「正常な」スプライシングのバリアントを同定するのが望ましい。特に、CHK1のC末端制御ドメインの喪失をもたらす天然のスプライシング変異を探索した。C末端の欠失が、CHK1へより大きなキナーゼ活性を付与する(Chen et al.,2000、Cell 100:681−692,Katsuragi and Sagata,2004,Mol.Biol.Cell.15:1680−1689)。エキソン2−8は、触媒キナーゼドメインをコードし、エキソン9は、リンカー領域をコードする。SQ及びC末端制御ドメインは、エキソン10−13内に存在する(Sanchez et al.,1997,277:1497−1501,Katsuragi and Sagata、2004,Mol.Biol.Cell.15:1680−1689)。リアルタイムPCR実験及びRT−PCRを用い、ヒトCHK1 mRNAの新規スプライスバリアントの存在を同定及び確認した。化合物の阻害特性を決定するのに有用なCHK1キナーゼアッセイで使用するために、CHK1阻害ドメインのC末端切断をコードする天然のスプライスバリアントを同定し、クローニングし、発現し、精製した。
【0140】
RT−PCR
RT−PCRベースのアッセイを使用して、エキソン8〜11に対応する領域中のCHK1 mRNAの構造が、ヒト精巣から抽出されたRNAについて決定された。ヒト精巣から単離された全RNAは、BD Biosciences Clontech(PAlo Alto、CA)から取得した。CHK1(NM 001274)中の基準エキソンコード配列のエキソン8及びエキソン11中の配列に相補的であるRT−PCRプライマーを選択した。CHK1 mRNAのヌクレオチド配列に基づいて、CHK1のエキソン8及びエキソン11のプライマーセット(以下、CHK18−11プライマーセット)は、「基準」CHK1 mRNA領域を表す478塩基対のアンプリコンを増幅すると予想された。CHK18−11プライマーセットは、エキソン9〜エキソン11の選択的スプライシングを有する転写物中の300塩基対のアンプリコンを増幅すると予想された。CHK1エキソン8のフォワードプライマーは、配列:5’ATCAGCAAGAATTACCATTCCAGACATC3’(配列番号1)を有し、CHK1エキソン11のリバースプライマーは、配列:5’CATACAACTTTTCTTCCATTGATAGCCC3’(配列番号2)を有する。
【0141】
ヒト精巣からの全RNAを、Qiagen,Inc.(Valencia,CA)のOne−Step RT−PCRキットを使用したワンステップの逆転写−PCR増幅プロトコルに供し、次のサイクル条件を用いた:
1)50℃で30分間
2)95℃で15分間
3)以下を35サイクル:
94℃で30秒間
63.5℃で40秒間
72℃で50秒間、次いで
72℃で10分間
RT−PCRの増幅産物(アンプリコン)を、2%アガロースゲル上でサイズ分画した。250〜350塩基対のアンプリコンに相当する選択された断片を、ゲルから手作業で抽出し、Qiagen Gel Extraction Kitで精製した。精製されたアンプリコンの断片を、CHK18−11プライマーセットを用いて再増幅し、これらのアンプリコンをアガロースゲル上でサイズ分画した。250〜350塩基対のアンプリコンに相当する断片を、ゲルから手作業で抽出し、Qiagen Gel Extraction Kitで精製した。精製されたアンプリコンの断片を、CHK18−11プライマーセットでもう一度再増幅した。アガロースゲル上のサイズ分画及び手作業による250〜350塩基対アンプリコンの抽出に続き、TAPO TAクローニングキット(Invitrogen,Carlsbad、CA)とともに提供される試薬及び指示書を使用して、精製されたアンプリコンの断片(Quiagen Gel Extraction Kit)をInvitrogen pCR2.1ベクター中にクローニングした。次いで、1プレートにつき440コロニーのプールを、15のプレート上へ、計6600のクローンを配置した。各プレートからのプールされた440のコロニーからDNAを抽出し、リアルタイムPCRの鋳型として使用した。
【0142】
リアルタイムPCR/TAQman
CHK1の基準タンパク質(NP 001265)に対して選択的にスプライシングされたイソフォームの存在を決定するために、リアルタイムPCRアッセイを使用した。
【0143】
CHK1sv1のイソフォームを検出するために使用されるTAQmanプライマー及びプローブを、予め設定された混合物として設計及び合成した(Applied Biosystems、Foster City、CA)。CHK1の基準形態(配列番号3、4及び5)及びCHK1sv1イソフォーム(配列番号6,7及び8)を検出するために使用されるTAQmanプライマー及びプローブの配列を表1に示す。5’末端の6−FAMフルオロフォア(FAM)及び3’末端の非蛍光性消光物質(NFQ)で、スプライス連結部特異的プローブを標識した。TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems、Foster City、CA)を使用し、ヒト精巣のcDNAに対して、リアルタイムPCRを実施した。TAQman反応は、以下のものを含有した。
【0144】
96ウェルフォーマット 384ウェルフォーマット
12.5μl 5μl TAQman Universal MasterMix
1.25μl 0.5μl プライマー−プローブミックス
6.25μl 2.5μl H
5μl 2μl DNA
【0145】
【表1】

【0146】
ABI Prism 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems、Foster City,CA)で、TAQman反応を実施した。熱サイクリング条件は、50℃で2分間、95℃で10分間、並びに95℃で15分間及び60℃で1分間の40サイクルであった。Sequence Detector Software(SDS)(Applied Biosystems、Foster City、CA)により、蛍光発光のデータ分析を実行した。
【0147】
TAQmanアッセイの結果は、15プレートのうち13プレート由来のプールされたDNAが、選択的エキソン9〜エキソン11のスプライス連結部に相当するクローンを有するように見受けられることを示した。440のコロニーに相当するこれらの陽性プールの1つから得たDNAを使用して、細菌宿主細胞を形質転換した。クローンは、1プレートにつき55のコロニーのプール中、合計12のプレート上に播種した。12の各プレート上のコロニーを再度プールし、TAQmanアッセイのために使用した。12のプレートうち1つから得た、プールされたDNAは、選択的エキソン9〜エキソン11のスプライス連結部を表すクローンを有しているように見受けられた。TAQmanアッセイを使用して、この陽性プレート上の55のコロニーを個別にスクリーニングし、1つのクローンが、選択的エキソン9〜エキソン11のスプライン連結部を有しているとして同定された。次いで、CHK1エキソン8のフォワードプライマー(配列番号1)及び5’TGCATCCAATTTGGTAAAGAATCG3’の配列を有する、異なるエキソン11のリバースプライマー(配列番号9)を使用して、各末端から、この陽性クローンを配列決定した。
【0148】
クローンの配列分析により、これは、CHK1異核RNAのエキソン9のエキソン11への選択的スプライシングに対する予想配列と合致すること、すなわち、エキソン10のコード配列が完全に存在しないことが明らかとなった。
【実施例2】
【0149】
CHK1sv1のクローニング
リアルタイムPCR、RT−PCR及び配列データは、CHK1タンパク質、NP 001265をコードする正常なCHK1の基準mRNA配列NM 001274に加えて、CHK1 mRNAの新規スプライスバリアント形態が精巣組織及びMOLT−4並びにDaudi細胞系中にも存在することを示している。
【0150】
酵母中の組換え媒介プラスミド構築を使用して、実施例1で同定されたCHK1sv1のスプライスバリアントを含むヌクレオチド配列を有するクローンを単離した。2つのプライマー対の組を使用して、CHK1sv1のmRNAコード配列の全体を増幅及びクローニングした。CHK1sv1の場合には、リアルタイム定量的PCR分析は、このスプライスバリアント形態の転写物が非常に低いレベルで存在することを示した。CHK1sv1をクローニングするために、所望のエキソン9〜エキソン11のスプライス連結部を作出にするように設計された80塩基対リンカーを用いる、酵母での更なる組換え工程によって、基準CHK1(NM 001274)のコード配列を含有するクローンを改変した。
【0151】
CHK1sv1に対応する完全長クローンの単離のために、5’「フォワード」プライマー及び3’「リバース」プライマーを設計した。5’「フォワード」のCHK1sv1プライマーは、5’TTACTGGCTTATCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGGAGTCATGGCAGTGCCCTTTGT3’(配列番号10)のヌクレオチド配列及びCHK1 mRNA(NM 001274)のエキソン2に相補的な配列を有するように設計した。3’「リバース」のCHK1sv1プライマーは、5’TAGAAGGCACAGTCGAGGCTGATCAGCGGGTTTAAACTCATGCATCCAATTTGGTAAAGAATCG3’(配列番号11)のヌクレオチド配列及びCHK1 mRNA(NM 001274)のエキソン11に相補的な配列を有するように設計された。イタリック体で示されるプライマー配列の5’末端における40のヌクレオチドは、PCRアンプリコン中に組み込まれ、酵母での、その後のプラスミドの組換え事象を容易にした「尾部」である。これらのCHK1sv1の「フォワード」及び「リバース」プライマーは、基準CHK1 mRNA(NM 001274)のコード配列を増幅すると予想され、次いで、これは、CHK1sv1特異的配列を作製するために、その後の組換えクローニング工程において使用された、
RT−PCR
逆転写(RT)及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の組み合わせを用いて、CHK1sv1のcDNA配列をクローニングした。更に具体的には、Superscript II(Gibco/Invitrogen、Calsbad、CA)及びオリゴd(T)プライマー(RESGEN/Invitrogen、Huntsville、AL)を使用し、Superscript IIの製造者の指示書に従って、MOLT−4細胞系のmRNA(BD Biosciences Clontech、Palo Alto、CA)約25ngを逆転写した。PCRのために、完了したRT反応物1μlを、水40μl、10X緩衝液5μl、dNTP1μl及びClontech(Palo Alto、CA)のAdvantage 2PCRキットからの酵素1μlに添加した。CHK1sv1に対するCHK1sv1「フォワード」及び「リバース」プライマー(配列番号10、11)を用いて、Gene Amp PCR System 9700(Applied Biosystems、Foster City、CA)中で、PCRを行った。最初の94℃で1分の変性後、94℃で30秒の変性、続いて63.5℃で40秒のアニーリング及び72℃で50秒の合成を使用し、増幅の35サイクルを実行した。PCRの35サイクルに続き、72℃で10分間伸長した。次いで、反応物50μlを4℃に冷やした。生じた反応産物10μlを、臭化エチジウム(Fisher Biotech、Fair Lawn、NJ)0.3μg/mlで染色された1%アガロース(Invitrogen、Ultra pure)ゲル上で走行させた。ゲル中の核酸バンドを紫外線光ボックスで可視化して写真撮影し、CHK1 mRNAの場合に、PCRが、予期されるサイズの産物(約1243塩基対の産物)をもたらすどうか判断した。QIAquick Gel抽出キット(Qiagen、Valencia、CA)、続いてキットとともに提供されたQIAquick PCR精製プロトコルを使用して、MOLT−4細胞から得たPCR反応物50μlの残りを精製した。Universal Vacuum System 400(Savantから)に取り付けられたSpeed Vac Plus(SC110A、Savant、Holbrook、NYから)中で、中温で約30分間乾燥させることにより、精製プロトコルから取得された産物の約50μlを約6μlに濃縮した。
【0152】
CHK1sv1の完全長クローンのクローニング及び構築並びに酵母の形質転換
Raymond et al.(2002、Genome Res.12:190−197)によってすでに記載されているものと同様のシクロヘキシミドに基づいたカウンター選択スキームを使用して、酵母での相同的組換えクローニングによる完全長CHK1sv1クローンの構築を実行した。
【0153】
前述されたCHK1sv1のフォワード及びリバース「尾部付き」プライマー及び発現ベクターを使用して作製された1243塩基対のCHK1アンプリコン間での相同的組換えによる完全長CHK1sv1の完全長クローンの構築を、酵母細胞中へこれらの断片を同時形質転換することにより実行した。80塩基対のオリゴヌクレオチドリンカーを用いた後続の組換え工程は、CHK1sv1のエキソン9〜エキソン11のスプライス連結部を作製した。後続のパラグラフに記載されている全ての酵母形質転換工程は、電気穿孔により実行した(Raymond et al.,2002 Genome Res.12:190−197)。
【0154】
酵母株CMY1−5(Mata、URA3Δ、CYH2)100μlの同時形質転換により、1243塩基対CHK1の精製されたアンプリコン1μgを、SrfI消化されたpCMR11の100ng中へ直接クローニングした。1μg/mlのシクロヘキシミドを含有するUra欠損培地プレート上で(Sigma、St.Louis、MO)、Ura、シクロヘキシミド耐性コロニーを選択した。標準的な酵母培地を使用した(Sherman,1991,Methods Enzymol.194:3−21)。CHK1クローンを含有する酵母細胞培養からの全DNAを使用して、大腸菌をクロラムフェニコール(Sigma、St.Louis、MO)耐性に形質変換し、Hoffman and Winston(1987 Gene 57:267−72)に記載されているように、組換えプラスミドの大量を調製した。プレートから、2X LB培地2mL中へコロニーを採取した。これらの液体培養を37℃で一晩インキュベートした。Qiagen(Valncia、CA)のQiaquick Spin Miniprepキットを使用して、プラスミドDNAをこれらの培養から抽出した。
【0155】
【表2】

【0156】
CHK1sv1クローンを構築するために、エキソン9〜エキソン11の選択的スプライシングの領域を包含する、表3に示されている80塩基対リンカー1μg(配列番号12、13)及びBamHI消化されたCHK1/pCMR11クローン100ngを使用して、シクロヘキシミド感受性酵母菌株100μlを同時形質転換した。リンカー及びCHK1/pCMR11クローン間での重複DNAは、ほとんどの酵母形質転換体が正しく構築されたコントラストを有することを表している。続いて行われるE.コリの調製及び形質転換のために、Ura、シクロヘキシミド耐性コロニーを選択した。制限消化によって、E。コリから抽出されたプラスミドDNAを分析して、CHK1sv1クローン中に、エキソン9のエキソン11への選択的スプライシングが存在することを確認した。8つのCHK1sv1クローンを配列決定して同一性を確認し、複数の系でのタンパク質発現のために、適切な配列を有するクローンを使用する。
【0157】
【表3】

【0158】
CHK1sv1ポリヌクレオチドの概要
CHK1sv1 mRNA(配列番号14)のポリヌクレオオチドコード配列は、基準CHK1タンパク質(NP 001265)と同様のCHK1sv1タンパク質(配列番号15)をコードするオープンリーディングフレームを含有するが、基準CHK1 mRNA(NM 001274)の完全長コード配列のエキソン10に対応する178塩基対領域によってコードされるアミノ酸を欠如している。178塩基対領域の欠失は、基準CHK1タンパク質のリーディングフレームと比較すると、タンパク質翻訳リーディングフレームのシフトをもたらし、CHK1sv1に特有であるカルボキシ末端ペプチド領域(配列番号15中では、イタリック体で記されている。)を作製する。フレームシフトもエキソン9/エキソン11のスプライス連結部の29ヌクレオチド下流に、未成熟な終止コドンをもたらす。従って、CHK1sv1タンパク質は、エキソン10によってコードされたアミノ酸領域に対応する内部59アミノ酸領域を喪失しており、基準CHK1(NP 001265)と比較すると、未成熟な終始コドンの下流のヌクレオチドによりコードされるアミノ酸も欠如している。エキソン10は、CHK1のSQ/TQドメインをコードし、エキソン11−13は、自己疎阻害領域(Sanchez et al.,1997,Science 277:1497−1501,Katsuragi and Sagata,2004,Mol.Biol.Cell.15:1680−1689)をコードする。自己阻害領域の欠失は、CHK1キナーゼドメインに恒常的な活性を付与するのに対して、ST/TQドメインも除去されると、CHK1の酵素活性が低下する(Ng et al.,J.Biol.Chem.279:8808−8819)。
【0159】
【表4】

【実施例3】
【0160】
CHK1sv1タンパク質の発現
バキュロウイルスの遺伝子発現ベクター系により、昆虫細胞でのタンパク質発現が可能になるが、これは安価であり、簡単に維持できる。産生されるタンパク質は、哺乳動物細胞中のタンパク質と同様の品質である(Miller,1998,Biotechnology 10:457−465,Miller,1989,Bioessays 11:91−95)。昆虫細胞中でのバキュロウイルス発現ベクターを用いたタンパク質発現の方法は、当技術分野において公知であり、技術は、「O’Reilly et al.,Baculovirus Expression Vectors−A Laboratory Manual,W.H.Freeman and Co.,New York、1992」及び「Baculovirus Expression Vector System Instruction Manual,6th edition,Pharmingen,San Diego,1999」の中で論じられている。
【0161】
昆虫細胞発現のためのCHK1sv1のクローニング
CHK1sv1/バキュロウイルストランスファーベクター構築物を作製するために、表5に列挙されているプライマー(配列番号16、17)を使用して、CHK1sv1/pCMR11クローン(実施例2を参照)をPCRに対する鋳型として使用し、CHK1sv1(配列番号14)のコード配列を増幅した。配列番号16によって表されるプライマーは、ATG開始コドンのすぐ上流に最適な翻訳開始配列を含有し、及びアンプリコン中に取り込まれる上流のEcoRI制限部位を含有する。配列番号17によって表されるプライマーは、CHK1sv1コード配列のC末端の6つのヒスチジン残基及びCHK1sv1アンプリコン中に取り込まれるEagI制限部位をコードする配列を含有する。このCHK1sv1アンプリコンを、1%アガロースゲル上で走行させた。CHK1sv1の場合において、予期されるサイズの選択されたアンプリコンの断片(CHK1sv1の場合には、約994塩基対の産物)で、ゲルから手作業で抽出し、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて精製した。精製されたアンプリコンの断片を、EcoRI及びEagIで消化した。EcoRI及びEagIで消化し、アルカリホスファターゼで脱リン酸化されたバキュロウイルストランスファーベクターpVL1393(Pharmingen、San Diego、CA)中に、EcoRI/EagI消化されたアンプリコンを連結した。次いで、CHK1sv1/pVL1939の構築物をE.コリの菌株DH5α中に形質転換した。アンピシリン耐性コロニーから選択され抽出されたプラスミドDNAを配列決定して同一性を確認し、昆虫細胞中でのタンパク質発現のために、適切な配列を有するクローンを使用した。
【0162】
【表5】

【0163】
CHK1sv1の昆虫細胞発現
CHK1sv1/pVL1393構築物を、直鎖化されたAcNPV BaculoGold DNA(Pharmingen、San Diego、CA)とともに、SF9昆虫細胞(Invitrogen、Carlsbad、CA)中に、同時形質移入した。終点希釈により、個々の組換えウイルスを選択した。ウイルスのクローンを増幅して、高力価の原株を取得した。これらのウイルス原株を、小規模なSF9培養におけるタンパク質発現テストに対して使用し、CHK1sv1の組換えタンパク質の産生を検証した。CHK1sv1のタンパク質発現に対して、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、形質移入されたSF9細胞溶解物を分析した。抗CHK1抗体(G4抗体、Santa Cruz Biotechnology,Inc)を使用した、クマシー染色又はウエスタンブロッティングにより、CHK1sv1タンパク質を可視化した。発現に基づいて、大規模なCHK1sv1発現のために、個々のウイルスを選択した。リットル規模での組換えタンパク質発現のために、EX細胞401の無血清培地(JRH Scientific、Lenexa,KS)中でSF9の懸濁培養物を27℃で増殖させ、細胞あたり0.3のウイルスの感染多重度を用いて、組換えウイルス原株に感染させた。ウイルスの形質移入の72時間後、感染したSF9培養物を採集し、遠心分離によりペレット化した。ペレットは、−70℃で保管した。
【0164】
CHK1sv1の組換えタンパク質の精製
1μMのミクロシスチン(Sigma、St.Louis、MO)、10μMのシペルメトリン(EMD Biosciences、San Diego、CA)を含有するB−PERタンパク質抽出試薬(Pierce、Rockford、IL)及びEDTA−free Protease Inhibitor Cocktail(Roche Diagnostics、Mannheim、Germany)(1錠/50mlの溶解緩衝液)を用いて、昆虫細胞のペレットを溶解した。タンパク質精製中の全操作を4℃で行った。溶解緩衝液中に細胞を再懸濁し、45分間攪拌した。次いで、DNAseI(Roche)を、200U/mlの最終濃度の細胞に添加し、細胞懸濁液を更に30分間攪拌した。30,000gで30分間、溶解した細胞懸濁液を遠心分離した。溶解上清のデカンテーションを行い、30,000gで30分間、遠心分離した。清澄化された上清10mlの各々に対し、Talon金属アフィニティ樹脂(Clontech、Palo Alto、CA)の1mlのベッド容積を添加して、懸濁液を45分間攪拌した。アフィニティ樹脂/溶解物懸濁液を、5000gで3分間遠心分離し、次いで上清を廃棄した。樹脂の5倍容積を使用して、緩衝液A(50μMのトリス、pH8.0、250mMのNaCl)で、アフィニティ樹脂を4回洗浄した。洗浄した樹脂を、緩衝液A中に2倍のスラリーとして再懸濁し、クロマトグラフィーカラム中に充填した。樹脂を充填したカラムを、緩衝液Aの6倍ベッド容積で洗浄した。緩衝液A中の段階的なイミダゾール勾配を使用して、CHK1sv1のHisタグ付きタンパク質をカラムから溶出する。2倍ベッド容積の画分中のイミダゾール濃度は、5、10、20、30、40、50及び60mMであった。Amicon Ultra 15 Centrifugal Filter Device、30,000の公称分子量限界(Millipore、Billerica,MA)を使用して、溶出画分を濃縮した。濃縮された酵素画分をグリセロール中に50%希釈し、−20℃で保存した。ポリアクリルアミドゲル電気泳動に続いて、抗CHK1抗体(G4抗体、Santa Cruz Biotechnology,Inc)を用いたクマシー染色又はウエスタンブロッティングを使用して、CHK1sv1のHisタグ付きタンパク質の存在について、画分を分析した。以下の節に記載されているキナーゼアッセイを使用して、カラム画分のCHK1sv1キナーゼ活性を測定した。
【実施例4】
【0165】
CHK1sv1キナーゼアッセイ
合成ペプチド基質を使用して、CHK1sv1活性をインビトロでアッセイした。Homogenous Time−Resolved Fluorescence(HTRF)アッセイシステム(Park et al.,1999、Anal.Biochem.269:94−104)を使用して、ホスホペプチド産物を定量した。反応混合物は、40mMのHEPES、pH7.3、100mMのNaCl、10mMのMgCl、2mMのジチオスレイトール、0.1%BSA、0.1mMのATP、0.5μMのペプチド基質及び0.1nMのCHK1sv1酵素を、最終容量40μl中に含有した。ペプチド基質は、アミノ酸配列のアミノ末端−GGRARTSSFAEPG−カルボキシ末端(SynPep、Dublin CA)(配列番号18)を有し、N末端がビオチン化されている。キナーゼ反応物を22℃で30分間インキュベートし、次いでユーロピウムキレート(Perkin Elmer、Boston、MA)で標識された60μlのStop/Detection緩衝液(40mMのHEPES,pH7.3、10mMのEDTA、0.125%Triton X−100、1.25%BSA、250nMのPhycoLink Streptavidin−Allophycocyanin(APC)Conjugate(Prozyme、San Leandro、CA)、及び0.75nMのGSK3α抗ホスホセリン抗体(Cell Signaling Technologies、Beverly、MA、カタログ番号9338)を用いて停止させた。22℃で2時間、反応物を平衡化させ、相対蛍光単位をDiscoveryプレートリーダー(Packard Biosciences)上で読み取った。上記の反応物中で阻害剤化合物をアッセイし、化合物のIC50を測定する。1nM〜100μMの範囲に及ぶ半対数希釈系列として、DMSO中に溶解された化合物1μLを、各40μlの反応物に添加した。化合物の濃度範囲及び4パラメーターのシグモイドフィットを使用して作製された滴定曲線にわたって、HTRF蛍光単位として読み取られた相対的リン基質の形成を測定する。
【0166】
本発明における具体的化合物を上記アッセイにおいて検査し、基質に対して50μM以下のIC50を有することを発見した。
【実施例5】
【0167】
細胞中のCHK1自己リン酸化の阻害
DNA損傷に応答するCHK1の自己リン酸化をモニタリングすることにより、細胞中のCHK1の阻害能について、阻害剤化合物をアッセイした。H1299細胞(ATCC、Manassas,VA)を培地(10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI1640、10mMのHEPES、2mMのL−グルタミン、1x非必須アミノ酸及びペニシリン−ストレプトマイシン)で増殖させる。T−75フラスコから細胞をプールし、計数し、2ml培地中のウェルあたり200,000万個の細胞で6つのウェルディッシュ中に接種し、インキュベートする。DMSO中の1000倍の作業原液から、DMSO中の化合物の段階希釈系列又はDMSO対照を各ウェルに加え、37℃で2時間インキュベートする。2時間のインキュベーション期間の後、薬剤処理された全細胞(高用量のウェルの1つを除く)及びDMSO対照ウェルの1つへ、100nMのカンプトテシン(EMD Biosciences、San Diego、CA)を、PBS中の200倍の作業原液から添加する。カンプトテシンとともに4時間のインキュベーションを行った後、各ウェルを氷冷したPBSで一回洗浄し、溶解緩衝液300μL(50mMのトリス(pH8.0)、150mMのNaCl、50mMのNaF、1%NP−40、0.5%デオキシコール酸、0.1%SDS、0.5μMのNaVO及び1XProtease Inhibitor Cocktail Complete−EDTAなし(Roche Diagnostics、Mannheim、Germany))を各ウェルに添加する。4℃で10−15分間、プレートを振盪し、次いで1.5mlのマイクロ遠心管に溶解物を移し、−80℃で冷凍する。溶解物を氷上で融解し、15,000xgで20分間の遠心分離により清澄化し、清浄な管に上清を移す。
【0168】
5倍の試料ローディング緩衝液5μLの添加及び100℃での5分間の熱変性により、ゲル電気泳動のために試料(20μL)を調製する。トリス/グリシンのSDS−ポリアクリルアミドゲル(10%)中で試料を電気泳動し、タンパク質をPVDF上に移す。次いで、TBS中の3%BSA中で、ブロットを1時間ブロックし、ホスホ−Ser−296CHK1(Cell Signaling Technologies−カタログ番号2346)に対する抗体を使用してプローブする。西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合二次抗体(ヤギ抗ウサギ、Jackson Labs−カタログ番号111−035−046)を用いて、結合した抗体を可視化し、化学増強(ECL−プラス、Amersham、Piscataway、NJ)を増強する。62.5mMのトリスHCl、pH6.7、2%SDS及び100μMになる2−メルカプトエタノール中において、55℃で30分間、インキュベーションすることにより、一次抗体セットを除去した後、CHK1モノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology Inc.、カタログ番号SC−8408)を使用して、全CHK1に対して、ブロットを再プローブする西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヒツジ抗マウスIgG(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ、カタログ番号NA931)を使用して、CHK1モノクローナルを検出し、化学発光(ECL−プラス、Amersham)を増強する。ECL露光フィルムをスキャンし、ImageQuantソフトウェアを用いて特異的バンドの強度を定量化する。全CHK1に対して標準化されたホスホ−CHK1(Ser296)信号のレベルについて滴定を評価して、IC50値を計算する。
【実施例6】
【0169】
チェックポイントエスケープアッセイにおける阻害剤の機能的活性
DNA損傷の停止
細胞中でのCHK1阻害剤の機能的活性を測定するために、DNA損傷によって誘発された細胞周期の停止を抑止する能力について、化合物をアッセイする。アッセイは、DNA損傷剤カンプトテシンによってもたらされた細胞周期停止後にM期に入る細胞量の指標として、細胞のホスホヌクレオリンのレベルを測定する。
【0170】
10%ウシ胎仔血清が補充されたRPMI640培地中に、5000細胞/ウェルの密度で、H1299細胞(ATCC、ManassaVA)を播種する。5%COにおいて、37℃で24時間のインキュベーションした後、200nMの最終濃度になるようにカンプトテシンを添加し、16時間インキュベートする。200nMのカンプトテシン及び332nMのノコドゾールを加えた増殖培地中の検査化合物の段階希釈系列の等容量(最終濃度:50nm/ml)を添加し、37℃でのインキュベーションを8時間継続する。ウェルから培地を除去し、50μLの溶解緩衝液(20mMのHEPES、pH7.5、150mMのNaCl、50mMのNaF、1%Triton X−100、10%グリセロール、1xProteinase Inhibitor Cocktail(Roche Diagnostics、Mannheim、Germany)、1μl/mlのDNaseI(Roche Diagnostics)、300μMのオルトバナジウム酸ナトリウム、1μMのミクロシスチン(Sima、St.Louis、MO)を添加する。溶解緩衝液を加えたプレートを4℃で30分間振盪し、20分間凍結(−70℃)させる。IGEN Origen技術(Bio Veris Corp.、Gaithersburg、MD)を使用して、細胞溶解物中のホスホヌクレオリンレベルを測定する。
【0171】
細胞溶解物中のホスホヌクレオリンの検出
Origen Biotin−LC−NHS−Ester(Bio Veris Corp.)を使用し、製造会社によって記載されたプロトコルを用いて、4E2抗ヌクレオリン抗体(Research Diagnostics Inc.,Flanders,NJ)をビオチン化した。ルテニル化キット(BioVeris Corp.,カタログ番号110034)を使用し、製造会社によって記載されたプロトコルに従い、ヤギ抗マウス抗体(Jackson Immuno Research、West Grove、PA)を、ルテニル化した。96ウェルプレートの各ウェルへ、細胞溶解物25μL(上記)とともに2μg/mlのビオチン化された4E2抗ヌクレオリン抗体及び0.4mg/mlのストレプトアビジンでコーディングされた常磁性Dynabeads(BioVeris Corp.)を含有する抗体緩衝液25μL(リン酸緩衝化生理食塩水pH7.2、1%ウシ血清アルブミン、0.5%Tween−20)を添加する。抗体及び溶解物を室温で1時間振盪しながらインキュベートする。次に、抗体緩衝液(上記)50μL容量中の抗ホスホヌクレオリンTG3抗体50ng(Applied NueroSolutions Inc.、Vernon Hills、IL)を、溶解物混合物の各ウェルへ添加し、室温で30分間インキュベーションを継続する。最後に、抗体緩衝液中のルテニル化されたヤギ抗マウス抗体の240ng/ml溶液25μLを各ウェルに添加し、室温で3時間インキュベーションを継続する。溶解物の抗体混合物をBioVeris M−シリーズM8アナライザー中で読み取り、化合物依存性のホスホヌクレオリンの増加に対するEC50を測定する。
【実施例7】
【0172】
他の生物学的アッセイ
CHK1の発現及び精製:標準バキュロウイルスベクター及びGIBCOTM Invitrogenから購入した(Bac−to−Bac(R))昆虫細胞発現システムを使用して、アミノ末端にグルタチオンS−トランスフェラーゼを有する融合タンパク質(GST−CHK1)として、組換えヒトCHK1を発現することができる。グルタチオンセファローズ(Amersham Biotech)を使用して、製造会社によって記載された標準的な手順を用いて、昆虫細胞中で発現された組換えタンパク質を精製することが可能である。
【0173】
CHK1の蛍光偏光アッセイ:キナーゼ活性をモニタリングするために、蛍光偏光を用いてCHK1のキナーゼ阻害剤を同定することができる。このアッセイでは、10nMのGST−CHK1を用い、5mMの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES、pH6.5)、5mMの塩化マグネシウム(MgCl)、0.05%Tween(R)−20、1μMのアデノシン5’三リン酸(ATP)、2mMの1,4−ジチオ−DL−スレイトール(DTT)、1μMのペプチド基質(Biotin−ILSRRPSYRKILND−遊離酸)(配列番号:19)、10nMのペプチド基質トレーサー(フルオレシン−GSRRP−pS−YRKI−遊離酸)(pS=リン酸化されたセリン)(配列番号:20)、Cell Signalling Technologies(Beverly,MA)から購入した未精製マウス腹水から、Protein Gセファロース上で精製された60ngの抗ホスホ−CREB(S133)マウスモノクローナルIgG、4%ジメチルスルホキシド(DMSO)及び30μMの阻害剤化合物を含有する。室温で140分間、反応物をインキュベートし、25mMのEDTA(pH8.0)の添加により終了した。停止された反応物を、室温で120分間インキュベートし、標準のフルオレシン設定を用いて、Molecular Devices/LJLBiosystems AnalystTM AD(Sunnyvale、CA)を使用して、蛍光偏光値を測定する。
【0174】
CHK1のSPAろ過アッセイ:アッセイ(25μ.)は、10nMのGST−CHK1、10mMのMES、2mMのDTT、10mMのMgCl、0.025%のTween(R)−20、1μMのペプチド基質(Biotin−ILSRRPSYRKILND−遊離酸)(配列番号:19)、1μMのATP、0.1μCi33P−γ−ATP(New England Nuclear、NEN)を含有し、室温で90分間反応させる。50mMのEDTA、6.9mMのATP、0.5mgのシンチレーション近接アッセイ(SPA)ビーズ(Amersham Biosciences)を含有するリン酸緩衝化生理食塩水55μlを添加することにより、反応を停止する。室温で10分間、ペプチド基質をビーズに結合させ、続いてPackard GF/B Unifilterプレート上でろ過し、リン酸緩衝化生理食塩水で洗浄する。乾燥させたプレートをTopsealTM(NEN)で密閉し、33Pに対する標準設定を用いたPackard Topcount(R)シンチレーションカウンターを使用して、33Pをペプチド基質に取り込む。
【0175】
CHK1のFlashPlate(R)キナーゼアッセイ:アッセイ(25μl)は、8.7GST−CHK1、10mMのMES、0.1mMのエチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA、pH8.0)、2mMのDTT、0.05%のTween20、3μMのペプチド基質(Biotin−ILSRRPSYRKILND−遊離酸)(配列番号:19)、1μMのATP、0.4μCi33P−γ−ATP(NEN)及び4%DMSOを含有する。反応物を室温で30分間インキュベートし、50mMのEDTA50μlで停止する。ストレプトアビジンで被覆されたFlashPlate(R)(NEN)に、反応物90μlを移し、室温で1時間インキュベートする。プレートを0.01%Tween−20及び10mMのピロリン酸ナトリウムを含有するリン酸緩衝化生理食塩水で洗浄する。プレートを乾燥させ、TopsealTM(NEN)で密閉し、標準設定を用いたPackard Topcount(R)NXTTMシンチレーションカウンターを使用して、ペプチド基質中に取り込まれた33Pの量を測定する。
【0176】
CHK1のDELFIA(R)キナーゼアッセイ:アッセイ(25μl)は、25mMのトリス、pH8.5、20%のグリセロール、50mMの塩化ナトリウム(NaCl)、0.1Surfact−Amps(R)20、1μMのペプチド基質(Biotin−GLYRSPSMPEN−アミド)(配列番号:21)、2mMのDTT、4%のDMSO、12.5μMのATP、5mMのMgClを含有する6.4mMのGST−CHK1を使用しており、室温で30分間反応させる。1%のBSA、10mMのトリス、pH8.0、150mMのNaCl及び100mMのEDTAを含有する100μlの停止緩衝液で反応を停止する。停止した反応物(100μl)を、96ウェルNeutrAvidinプレート(Pierce)に移して、室温で30分間のインキュベーション中にビオチンペプチド基質を捕捉する。ウェルを洗浄し、Cell Signalling Technology(Beverly,MA)から得た21.5ng/mlの抗ホスホ−Ser216−Cdc25cウサギポリクローナル抗体及び292ng/mlのユーロピウム標識抗ウサギ−IgGを含有する100μlのPerkinElmer Wallac Assay Bufferと、室温で1時間反応させる。ウェルを洗浄し、エンハンスメント溶液(100μl)(PerkinElmer Wallac)の添加により、結合した抗体からユーロピウムを放出させ、製造会社の標準設定を用いたWallac Victor2TMを使用して検出を行う。
【0177】
上記のCHK1 FlashPlate(R)キナーゼアッセイにおいて、本発明の化合物を検査し得る。
【0178】
WSTアッセイ:線形成長曲線を与える密度で、72時間、HT29、HCT116(5000細胞/ウェル)又は他の細胞を、96ウェルの清浄なボトムプレートへ接種する(75μl)。適切な培地中、無菌状態下で、細胞を培養し、HT29及びHCT116の場合、この培地は、10%のウシ胎仔血清(FBS)を含有するMcCOY’s 5Aである。細胞の最初の接種に続き、5%COで、37℃にて17〜24時間、細胞をインキュベートし、その際、48時間以内に少なくとも80%の細胞の死滅をを引き起こすことが可能な点までの漸増濃度で、適切なDNA損傷剤(カンプトテシン、5−フルオロウラシル及びエトポシド)を添加する。全DNA損傷剤及び化合物添加の最終容量は、25μlである。アッセイは、最終1%未満のDMSOを含有する。DNA損傷剤の添加と同時に、細胞の死滅の強化を観察するために、CHK1の阻害剤化合物を、各DNA損傷剤滴定へ一定濃度で添加する。DNA損傷及びCHK1阻害剤化合物の添加に続いて、及び37℃、5%COでの3.5時間又は2.5時間のインキュベーション(OD450が測定される。)に続いて、製造会社に従い、47時間の時点でWST試薬(Roche)を添加することにより、上記の条件下での細胞の生存/死滅を測定する。
【0179】
本発明の化合物は、上記のアッセイにおいて、検査し得る。
【実施例8】
【0180】
他の生物学的アッセイ
本発明の化合物の生物学的活性を測定するために利用し得る他のアッセイには、以下の公報:WO04/080973、WO02/070494及びWO03/101444に記載されているアッセイが含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A:
【化1】

の化合物又は医薬として許容されるその塩若しくは立体異性体。
(aは0又は1であり;bは0又は1であり;mは0、1又は2であり;nは0、1、2、3又は4であり;
環Zは、アリール及びヘテロアリールから選択され;
は、H、オキソ、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、(C=O)−C10アルケニル、(C=O)−C10アルキニル、COH、ハロ、OH、O−Cペルフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)−Cシクロアルキル、S(O)NR、SH、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、Rから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
は、H、オキソ、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、(C=O)−C10アルケニル、(C=O)−C10アルキニル、COH、ハロ、OH、O−Cペルフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)−Cシクロアルキル、S(O)NR、SH、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、Rから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
は、オキソ、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、(C=O)−C10アルケニル、(C=O)−C10アルキニル、COH、ハロ、OH、O−Cペルフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)−Cアシクロアルキル、S(O)NR、SH、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、Rから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
は、H、オキソ、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、(C=O)−C10アルケニル、(C=O)−C10アルキニル、COH、ハロ、OH、O−Cペルフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)−Cシクロアルキル、S(O)NR、SH、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、Rから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
’’は、H、オキソ、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、(C=O)−C10アルケニル、(C=O)−C10アルキニル、COH、ハロ、OH、O−Cペルフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)−Cシクロアルキル、S(O)NR、SH、S(O)−(C−C10)アルキル及び(C=O)ヘテロシクリルから選択され、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル及びヘテロシクリルは、Rから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
は、(C=O)−C10アルキル、(C=O)アリール、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、(C=O)ヘテロシクリル、COH、ハロ、CN、OH、O−Cペルフルオロアルキル、O(C=O)NR、オキソ、CHO、(N=O)R、S(O)NR、SH、S(O)−(C−C10)アルキル又は(C=O)−Cシクロアルキルであり、前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル及びシクロアルキルは、R6aから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
6aは、(C=O)(C−C10)アルキル、O(C−C)ペルフルオロアルキル、(C−C)アルキレン−S(O)、オキソ、OH、ハロ、CN、(C−C10)アルケニル、(C−C10)アルキニル、(C−C)シクロアルキル、(C−C)アルキレン−アリール、(C−C)アルキレン−ヘテロシクリル、(C−C)アルキレン−N(R、C(O)R、(C−C)アルキレン−CO、C(O)H及び(C−C)アルキレン−COHから選択され、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロシクリルは、R、OH、(C−C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)C−Cアルキル、オキソ及びN(Rから選択される最大3個の置換基で場合により置換されており;
及びRは、H、(C=O)O−C10アルキル、(C=O)O−Cシクロアルキル、(C=O)Oアリール、(C=O)Oヘテロシクリル、C−C10アルキル、アリール、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、ヘテロシクリル、C−Cシクロアルキル、SO及び(C=O)NRから独立に選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル及びアルキニルは、R6aから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており、又はR及びRは、これらが結合している窒素とともに、各環中に3−7員を有し及び前記窒素の他に、N、O及びSから選択される1個若しくは2個の追加の複素原子を場合により含有する単環式若しくは二環式複素環を形成することが可能であり、前記単環式若しくは二環式複素環は、R6aから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;
は、H、(C−C)アルキル、(C−C)シクロアルキル、アリール又はヘテロシクリルであり;並びに
は、独立に、H、(C−C)アルキル、アリール、ヘテロシクリル、(C−C)シクロアルキル、(C=O)OC−Cアルキル、(C=O)C−Cアルキル又はS(O)である。)
【請求項2】
他の全ての置換基及び変数が、請求項1において定義されているとおりである、
式B:
【化2】

の、請求項1に記載の化合物又は医薬として許容されるその塩若しくは立体異性体。
【請求項3】
他の全ての置換基及び変数が、請求項1において定義されているとおりである、式C:
【化3】

の、請求項2に記載の化合物又は医薬として許容されるその塩若しくは立体異性体。
【請求項4】
他の全ての置換基及び変数が、請求項1において定義されているとおりである、式D:
【化4】

の、請求項3に記載の化合物又は医薬として許容されるその塩若しくは立体異性体。
【請求項5】
が、プロピル−NRから選択され;前記プロピルは、1つ又はそれ以上のRで場合により置換されており;
及びRが、H、(C=O)O−C10アルキル、(C=O)O−Cシクロアルキル、(C=O)Oアリール、(C=O)Oヘテロシクリル、C−C10アルキル、アリール、C−C10アルケニル、C−C10アルキニル、ヘテロシクリル、C−Cシクロアルキル、SO及び(C=O)NRから独立に選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル及びアルキニルは、R6aから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており、又はR及びRが、これらが結合している窒素とともに、各環中に3−7員を有し及び前記窒素の他に、N、O及びSから選択される1個若しくは2個の追加の複素原子を場合により含有する単環式若しくは二環式複素環を形成することが可能であり、前記単環式若しくは二環式複素環は、R6aから選択される1つ又はそれ以上の置換基で場合により置換されており;並びに
他の全ての置換基及び変数が、請求項1において定義されているとおりである、式Dの、請求項4に記載の化合物又は医薬として許容されるその塩若しくは立体異性体。
【請求項6】
5−(3−アミノプロピル)−3−メチル−2,5−ジヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン;
である請求項1に記載の化合物又は医薬として許容されるその塩若しくは立体異性体。
【請求項7】
5−(3−アミノプロピル)−3−メチル−2,5−ジヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン;
である請求項1に記載の化合物のTFA塩又はその立体異性体。
【請求項8】
医薬担体を含み、及び請求項1に記載の化合物の治療的有効量をその中に分散された医薬組成物。
【請求項9】
癌の治療又は予防を必要とする哺乳動物中の癌の治療又は予防において有用な医薬の調製のための、請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物と医薬として許容される担体を組み合わせることによって作製される医薬組成物。

【公表番号】特表2008−531471(P2008−531471A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550433(P2007−550433)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/000152
【国際公開番号】WO2006/074207
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】